この6月15日にブラジル代表がコンフェデ杯の初戦を飾ったブラジリアのマネー・ガリンシャ・スタジアムのサポーターから、この試合に出席したジウマ・ロウセフ大統領に向けられたブーイングは、作家ネルソン・ロドリゲス氏の造語である「唸りたくなるほど当たり前(唸るようなブーイングをとらえての表現)」という言葉がこれほど、そしてかつてないほどに適切だった。元左翼活動家にして元労働者党(PT)党首を務め、メンサロン(買収工作疑獄)の被告として連邦最高裁判所(STF)に告発されているジョゼー・ジェノイーノ氏の弟で下院内におけるPT党のリーダー ジョゼ・ギマランエス氏は、「球技場に出席していると発表された政治家は誰であれ、ブーイングに見舞われるだろう」と、珍しく明快に分析して見せた。さらに、17日夜にリオデジャネイロのリオ・ブランコ大通りを占拠した群衆たちは、強烈な印象と事態の重大性を私たちに印象付けた。
実際のところサッカーファンは、政治家のスタジアム来場をあまり好まず、つまりサッカーチームのクラブスター選手や代表チームに注ぐファンの情熱を我が物のように利用し自己PRしたがる政治家らの来場を好まないのだ。ブラジルで開催されるFIFAのコンフェデ杯を通じて、テレビとラジオで口が滑った表現がさんざんパロディー化されたように、市民は(これもネルソンによって命名されたものであるが、サッカーシューズ「によって」ではなく)サッカーシューズ「の中で」国士たろうとするのもいいだろう。だが、自身の情熱の発露として、とりわけ、高額な観戦チケットを支払うためにさんざんに汗水を流した後に安直な扇動に走ることは許されない。
いずれにしても、この罵声が、2014年の大統領選で再選に意欲を見せるジウマ大統領の支持率で8パーセントポイント、同大統領への投票を考えている人が7パーセントポイント落ち込んだことに関係しているというのは魅力的であるに違いない。数字では依然として1次投票で同大統領が再選することを示しているが、支持率の下落傾向は、大統領府にとっては喜ばしいものではない。しかもさらに魅力的なことは、ブラジリアにおける野次が、国内12都市の路上を封鎖したデモと同列に扱われることだろう。街頭のデモは、大衆の間で不満が充満したことで全国的な広がりを持ち、PTと連立与党による大連立下の民主主義では中断されていた政治的対話のチャネルを構築した。
なぜ市民がこれほどまでに戦うのかについては明白な理由がないが、不平を街頭で騒ぎ立て、為政者と野党らがそれに耳を傾けるふりをするが与野党ともに実際には扉を閉ざし馬耳東風、デモ参加者はあらゆることに理由と理屈をくっつけて不満の声を上げている。グローボ局のドラマのシナリオ作家、アギナルド・シルヴァ氏は、ツイッター上で、インフレ率の半分にも満たない公共交通料金の値上げであり、しかもこの期間に人々の購買力が大きく伸びた中でわずか20センターボ値上がりすることに対して、人々が不満を爆発させて街を占拠するということに、違和感を感じているとツイートしている。
そう。そうだろう。しかしその前に、6月16日付けフォーリャ・デ・サンパウロ紙で掲載されたインタビューで、マーケッターのドゥーダ・メンドンサ氏が言及していることに注目すべきだ。。同氏は、「人々は、成果を上げることに慣れてしまった。何かが変わろうとしていることを感じ取ると、それまで獲得したものを、頭の中から消し去ってしまう。そして、もっと大きな要求をするようになる」と言う。これは同氏の個人的な見解として、2014年の大統領選が決選投票にもつれ込むリスクを予見したことについて言及したもので、しかも、その最大の対立候補は、連立与党ブラジル社会党(PSB)党首でもある、ペルナンブコ州のエドゥアルド・カンポス知事だと受け止めている。
上記は考慮すべき点であり、またさらに深刻な問題が残されている。そして、再選も含めて自身の在位のためジウマ大統領が信頼する連立与党は、この問題を良く理解している。マネー・ガリンシャでの野次の後、ブラジル民主運動党(PMDB)のナンバー2、エドゥアルド・クーニャ下院議長(リオデジャネイロ州選出)は、問題認識について正鵠を射たコメントを残した。「我々は、インフレに対する反動に見舞われている。連邦政府がなすべきことは、インフレを撲滅することだ」。この場合のリスクは、通貨の価値が薄れ、経済が崩壊しかねないことだ。
再選に当たってのジウマ大統領の命運は、彼女の後見人で、何らの役職も競わず政界トップに就任、また再選も果たしたルーラ元大統領と同様の政治戦略を行えるかどうか、ということは万人が認めるところである。その中身について、アフォンソ・セルソ・パストーレ元中銀総裁は、ベージャ誌のインタビューで明晰に分析している。同氏は、「我々は低成長の罠に落ち込んだ」という。そして、巨大な結び目を断ち切り、この束縛からブラジル国民を解き放つ必要があると指摘する。「インフレは昂進している。それも、広範囲にわたって上昇している。サービス業の料金調整は、依然として年間8%以上だ。これは、深刻な状況と言える」。
ジウマとギド・マンテガ財務大臣は、ドゥーダ・メンドンサ氏の警告に一定の注意を払うだろうが、サンパウロ大学(USP)教授であるパストーレ氏の意見と連立与党でインフレにより厳しい経済情勢に置かれているリオデジャネイロ州における同盟クーニャ氏の意見を聞き入れるのは、難しいだろう。クーニャのサバイバル本能一層の注意を払って、多くを語らないパストーレ元中銀総裁氏が、確実なことのみに限定してメッセージを発していることに気付くべきだ。
野党が非難され選挙で大統領が優位に立つような事件を闇雲に求めるような部下のご都合主義を、大統領が統制できるなら素晴らしいことだろう。だが、連邦政府の要職にある者たちは、大統領府総書記のジルベルト・カルバーリョ大臣が認めたように、何も判断材料を持ち合わせていない。と言うのも、コロル政権下で国家情報サービス局(SNI)を廃止して以後、社会運動に注意を払うにふさわしい諜報機関を設置していないのだ。だが、公共交通がいかに劣悪であるにせよ、むしろ目に映るのは、インフレが再び昂進することを懸念する大衆の意思表示、非効率で贅沢をむさぼり、そして無神経で汚職にまみれた国家の統治に対する市民の憤りである。ジェラルド・アルキミン知事が次の攻撃目標に設定され攻撃を受けるように望むことは無意味だ。なぜなら、この駆け引きでは、ジウマ・ロウセフ大統領の野心とフェルナンド・アダジ市長のキャリアも同じ土俵に上がっているからだ。それが判明するのは時間の問題だ。(2013年6月19日付けエスタード紙) ジョゼー・ネウマネ:ジャーナリストで詩人、作家。








