パラグアイ大統領に就任するに当たって、オラシオ・カルテス新大統領は、演説で慎重に言葉を選び、メルコスルに言及しなかった。2012年6月のフェルナンド・ルーゴ前大統領の弾劾に伴い剝奪された資格を公式に回復することが可能であるが、パラグアイは、復帰を急いでいないどころか、復帰にもそれほど関心を示していないように思われる。
ルーゴ前大統領を弾劾後、パラグアイ国会は、この弾劾プロセスが同国の法律に沿ったものでありながら、ブラジルのジウマ・ロウセフ大統領とアルゼンチンのクリスチーナ・キルチネル大統領から、民主主義に敵対する行為という非難を受けた。そして反対に、メルコスルの民主規約を侵害したとされ、パラグアイは制裁を受けた。
クリスチーナ大統領に劣らずジウマ大統領も、パラグアイの国会がベネズエラのメルコスル加盟に抵抗していたのが理由で、同国を「蚊帳の外に置く」ことに大きな関心を持っていた。パラグアイという障害物がない今、メルコスルの設立メンバーである同国へ真正面からたちむかうように、ベネズエラは正式な加盟国として迎えられただけではなく議長国ともなっている。
カルテス大統領の就任でパラグアイの資格停止処分はテクニカルな意味では終了したが、同国は、同国国会がベネズエラの加盟を公式に拒否したことを含め、メルコスルへの復帰には障害があると主張する。メルコスルにおける決定にはしばしば全会一致の賛成を必要とするため、こうした不協和音は、明らかに困難な状況を生み出し、この経済圏の先行きに暗雲をもたらしている。
カルテス大統領は、ジウマ大統領とクリスチーナ大統領を前にして、パラグアイが地域協定と国際協定に「参加し、かつ参加していく」と断言した。さらに、「立場の相違の問題を悪化させないよう努力する」ともコメントした。アントニオ・パトリオタ外務大臣は、カルテス大統領の今回の演説について、パラグアイ新政府が同国のメルコスル復帰を交渉材料にしようとする「立ち位置」を示したと受け止めている。
だが実際には、同大統領の演説は、実に配慮に富んだものだった。カルテス大統領は、パラグアイが「暖かくも実りの多い相互関係」の維持を希望しているとコメントして、懸案については当事者間だけで解決を図る意思を示した。反対にカルテス新大統領は、就任に当たり、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を招待せず、当面はベネズエラと関係を修復する意思がないことも示した格好だ。
さらに、カルテス大統領の演説で、パラグアイがメルコスルにおいて偶発的に生じかねない縛りにとらわれることなく、理解しあえるパートナーと貿易協定を交渉するという自由な立場を歓迎していることも示唆した。その第1ステップは、コロンビアとチリ、メキシコ、ペルーが組織している環太平洋戦略的経済連携協定にオブザーバーとして参加することだ。メルコスルが迷走し、自由市場のことを帝国主義者の妄言だと見なす国をパートナーとして認める状態なのに対し、環太平洋戦略的経済連携協定は既に多くの欧州諸国も呼び込み、加盟国間の輸入税を90%引き下げることを発表している。しかも同協定に加盟する国々は、2011年にメルコスルを10%上回る輸出を記録している。ベネズエラと同国の悲惨なボリバル革命に場所を譲るためにブラジルとアルゼンチンに無視されたパラグアイは、どこに自国の立ち位置を求めるかについて、迷いはない。
したがって、パラグアイの観点からすれば、パラグアイ自身が経済圏そのものを必要としていないために、メルコスルへの復帰を急ぐ大きな理由もない。同国経済は2013年、南米大陸では最大となる、およそ12%の経済成長を達成する見込みだ。また、同国の輸出は2013年1―4月期に前年同期比40%増を記録した。
パラグアイは、輸出先国の多様化により牛肉輸出額でアルゼンチンを上回り、大豆では生産と輸出で世界有数の国である。しかも同国は、イタイプー水力発電所の電力供給を拡大する送電線の歓声に向けて作業中で、これに伴ってブラジルよりも安価に提供される電力で、現在ブラジルに拠点を置く工業部門を同国に誘致する可能性についても取り組んでいる。
これら様々な要因を背景に、パラグアイのエラディオ・ロイザガ新外務大臣は、同国の優先課題に言及する際、大統領と異なり単刀直入にコメントしている。曰く、「メルコスルは劣位事案だ」。(2013年8月17日付けエスタード紙)








