論評【メルコスルの敗北と銀行的外交手腕】

ロルフ・クンツ

ブラジルの外交にとっては厳しい舵取りを迫られ、また、低身長の人たちにとっては不快極まりない1週間だった。イスラエル政府は7月24日、ブラジルを外交では小人(小者)だと表現し、世界中の低身長の人々の感情を害した。この3日前には欧州委員会のジョゼー・マヌエル・ドゥラン・バローゾ委員長がブラジリアを訪問、まるで保護者のような口ぶりで、メルコスルと欧州連合(EU)の貿易協定の締結に向けてブラジル側の一層の努力を求めたばかりだった。この2つの出来事は、商業分野だけでなく地政学分野においても、ブラジルの外交政策がモラルハザードを来し破綻したことを、改めて証明した事例になった。より注目を集めて報道されたのは、ブラジリアとテルアビブの当局者の間で繰り広げられた批判合戦の方だったが、この2つのエピソードには同じ歴史的背景がある。

小人たちが旗揚げしたのは2003年のことで、当時は、現在のブラジルの外交状況と異なり、より知的で能率的、バランスがとれ、しかも適切なものになるはずだった。ブラジル以外の政府は、イスラエルから圧力を受けつつガザ地区への攻撃を停止又は緩和させるよう対応を求められたが、これらの国はいずれも、無難なトーンに終始した外交担当者のコメントに対して理由の説明どころか責任の所在についても明らかにせず、貧乏くじを引くようなことはしなかった。そこで、イスラエルが防衛と主張することへの正当性を示さないという「不適切な」暴力行為についてのみ反対しているのだと、ブラジルが釈明することになった。その上で、イスラエル側の反論が付け加えられた。つまり、ブラジルは国連加盟国のいずれとも外交関係を維持しており、したがって、仮に小人が存在するのなら、それは別の国であろう。釈明とオウム返しは、ルイス・アルベルト・フィゲイレド外務大臣が発言したものだ。丁重な態度で、外務大臣は、イスラエル当局者を毒づき罵倒するのを我慢した。

名優が分かりやすく反応したのだが、反発の理由は明らかにしなかった。このケースにおけるブラジルの意思表示は、その他の多くの事例と同様に、大統領府内の意思決定プロセスの不備と、これに続き外務省内でも同じ状態にあることをさらけ出した。配慮の利く新興国という立ち位置をかなぐり捨て、配慮されるべき世界の第3極を担っているのだという国際感覚に依拠したこのアマチュアリズムは、貿易外交の面でも、その素人ぶりを証明している。

ブラジルはラテンアメリカ最大の経済国であるが、この国の政府は、メルコスルとヨーロッパの貿易協定締結に向けた交渉を、大局的な視点から眺めることができずにいる。欧州委員会委員長は、「事実上全世界と自由貿易協定を締結している欧州連合がブラジルとは未締結というのは、私には、やや不条理なように思える」と、7月21日に発言している。

なぜ「やや不条理」なのか? それを理解するには、ブラジル経済の規模を考えるだけで十分だ。この部分については、イスラエルの当局者も同様に言及した。彼らは、外交的小人と呼ぶのと対比させるため、その前に、ブラジルを経済的な巨人と呼んだのだ。ドゥラン・バローゾ委員長のコメントにも、善意に基づいた同様の対比を含意している。

欧州員会委員長は、むしろ寛大ですらあった。仮に膠着する交渉への評価にまで踏み込んで発言していれば、この寛大なトーンは影を薄くしていただろう。不条理が極まりないのは、ブラジルのような規模を持つ国が、ペチズム(労働者党主導の大衆主義)とキルチネリズム(キルチネル大統領によるアルゼンチンの大衆主義)、ボリバル主義(反欧米的なベネズエラの社会主義)の陳腐な連帯に固執していることだ。

この連帯関係で陣頭指揮を執っているために、メルコスルは、総じて通商関係にほとんど関心のない国々が集まった南=南協定加盟国との関係を優先している。パレスチナとの親密化は、その政策の顕著な例だ。地域の自由貿易でアメリカが参加するものは、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領とネストル・キルチネル大統領によって拒否された。そこで次の数年間は、他の南米諸国の政府が、メルコスルを外してワシントンと貿易協定を交渉した。我が国は、米州大陸で重要な経済国の1つ、メキシコとすら、意欲的な交渉を進めていない。補完的な協定を交わすに止まり、その枠を超えていないのだ。

このほど太平洋同盟(チリとペルー、コロンビア、メキシコ)が結成され、改めて、メルコスルが外交的に停滞していると証明された。この2つの経済ブロックは、恐らく、統合を促進できるはずだ。しかもそれは、2014年1月にメキシコのエンリケ・ペナ・ニエト大統領がコメントしたように、メルコスルの国々がより開放的になるだけで良いのだ。1990年代に始まったEUとの交渉について言えば、足踏みを続けており、年内に進捗する兆しはない。メルコスルは、とりわけアルゼンチンが駄々をこねるために、相手方に評価してもらい議論の叩き台とする条件を、提示することができずにいる。

一方、ヨーロッパとアメリカは、大西洋をまたいだ自由貿易協定の締結に向けて交渉しているだけでなく、その他の国や地域とも新たな交渉を試みている。アジア諸国も、世界中と、より緊密な関係を構築すべく努力している。EUは加盟国を増加させ、周辺国はこの経済ブロックとの交易を謳歌している。世界貿易機関(WTO)の理事会がドーハ・ラウンドを復活させ再評価させようと試みる一方で、2国間あるいは2地域間の互恵関係の新たな枠組み作りが拡大し、構築されているのだ。

こうした状況にあってブラジルとメルコスルのパートナーの立ち位置は、次第に不利な方向へと傾斜を強めている。ブラジルは、貿易外交の方針として10年以上も前に、ドーハ・ラウンド重視の姿勢を取り、新興国と途上国と関係を緊密化する方針を固めた。WTOが主催したこの舞踏会では、多国間による大規模なラウンドが幾度となく催され、会議は踊ったが、進んでいない。ブラジルは部分的な貿易に関する合意こそ数は多いものの、他の舞踏会の招待状は手にしておらず、この会場の外で繰り広げられるパーティーを覗き見しながら、ぼんやりと静かに時を過ごす羽目に陥っている。

多くのブラジル財界関係者が、小人の貿易外交について外見上はすんなりと受け入れている。そして彼らは、新たな市場の開拓ではなく、この政策の延長線上にある保護貿易主義にこそ、より大きな関心がある様に見せている。だが一方で財界人は、より大きなビジネス・チャンスについては不満を表明しているのだ。

全国工業連合(CNI)は、連邦政府に対して2国間あるいは2地域間の貿易協定の締結に向けてより一層の努力を払うよう、過去2年で2度目の要望を出した。だが、メルコスルを振り切って進む以外に、この要求を遂行するのは不可能だろう。せいぜい、関税同盟というステータスを、消極的で規制の緩い自由貿易圏の条件に置き換えるのが関の山だ。だがそれ以前に、連邦政府は、世界の第3極や反ボリバル主義などという空想を捨て、国益というものが何を意味するのか再認識すべきだ。(2014年7月26日付けエスタード紙)

ロルフ・クンツ(ジャーナリスト)
 

 

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