論評【ブラジルHDIの低調な推移】

スエリー・カルダス

ハイパー・インフレーションを脱して経済に安定と秩序を取り戻し、投資を拡大する条件を醸成し、国民の教育と保健により目を向け始めた1994年以降、ブラジルは、歴史的に社会経済面で大きな発展を記録した。だが、とりわけ失われた10年と呼ばれた時代(1980年から1990年、そしてコーロル政権下)を含めた1994年以前が社会指標の停滞期とするなら、これ以降は、落ち込みこそ記録はしなかったものの、その進捗は、ブラジル国民の期待やこの国の富を生み出す潜在能力と比して緩やかなものだった。その亀のような歩みは、国連開発計画(UNDP)が毎年まとめる人間開発指数(HDI)にも表れており、対象の187か国の中でブラジルは、2008年に75位だったものが79位とむしろ後退していることからもうかがえる。

エコノミストのアマルティア・センとマブーブル・ハックにより1990年に開発された国連のHDIは、経済一辺倒だった開発指標の照準に対し、国民の生活の質を図るために社会的指標を取り入れたものだ。計測手法に若干の修正を加えられた後、現在では、3つエリアの指数を反映している。つまり、所得と教育、保健だ。この3つの基準でブラジルは、1994年から発展を重ねてきたのだが、社会的後進性という大きな負の遺産と、頑強な地域格差、政治活動を優先して社会の改善を怠った政治的な支配階級といった事情から、より大きな発展が妨げられた。

急速に発展を遂げた国々の共通項が教育への投資であると、世界の歴史は教えている。アジアの虎と呼ばれる国々(香港と韓国、シンガポール、台湾、フィリピン、インドネシア、タイ)は、そのようにして発展した。1960年から1970年頃までは、奴隷的労働賃金と非難されたこれらの国々だが、教育水準を引き上げ大衆の知識を高める国家政策を導入した後、経済ブームに沸いている。この流れの中で、労総生産性が向上し、賃金が増大、生産される製品は品質が改善し、現在、これらの国々は貯蓄率が高く、世界中に製品を輸出している。

ブラジルは教育と保健への投資が立ち遅れている。公立病院が不足するだけでなく、そこでは医薬品と医師、検査機器が乏しく、貧しい国民は診察のために長大な行列に並ぶのを強いられ、多くは、その診察からさらに3か月、あるいは6か月後に予定される手術を待たずに死亡する。教育に目を転じれば、教育の質を評価する政策は1996年になってようやく、全国学生能力試験(Provão)として運用され始めたが、依然として教育の質は、基礎教育(児童は読み書きはできても意味を理解できないのが普通である)から大学教育まで、低いまま推移している。

この2つ分野は、発展が極めて緩やかだ。保健分野では、ブラジル人の平均寿命が74.6歳まで12年引き上げるのに、30年を必要とした。教育では、労働者の就学年数は、現在、平均で7.6年に止まり、1980年と比較してもわずか5年の伸びに止まる。アジアの虎と呼ばれる国々と比較して、ブラジルは、労働生産性と製品の質、教育の進歩において、いずれの勝負でも圧倒的な敗北を喫している。HDIの第3の指標である所得では、3,000万人が新興中産階級へと所得分位の階段を上昇したにもかかわらず、地域格差と所得格差は依然として深刻な状況であり。ブラジルのHDIが向上する足を引っ張っている。

国連の調査によると、2013年にブラジルは、0から1までで1に近いほど良いとされるHDIで0.744に達したのだが、それでも、チリ(0,822)とアルゼンチン(0,808)、ウルグアイ(0,790)、その上、ベネズエラ(0,764)をも下回った。

またアルゼンチンは2014年にリセッションを記録すると見られることから、人間開発指数の上位49か国のリストから同国は脱落する模様だ。だが、ブラジル国内に目を転じれば、サンパウロ州のサン・カエターノ・ド・スル市(0,862)とアグアス・デ・サン・ペドロ(0.854)のような、世界トップクラスの国々と肩を並べるHDIを記録している市町村もあり、しかもこの2市は公共サービスと教育、保健の充足度で国内トップに位置するだけでなく、サンパウロ市(0,805)の指数も上回っている。(2014年7月27日エスタード紙)

スエリーカルダス ジャーナリストでリオデジャネイロ・カトリック大学(PUC-RIO)教授

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