安倍晋三 59歳、日本国総理大臣
日本とブラジルは共に、民主主義と人権といった価値観を大切にしています。そして私たち日本人は、ブラジルと手を携えて進んでいきたいと希望しているのです。
日本とブラジルは地球の両極に位置していますが、長年にわたって、様々な分野で関係を構築し、しかも緊密にお互いの交流を図ってまいりました。そしてこの数年、育まれてきた信頼に基づき、日本とブラジルは、その絆を一層拡大し、強いものにしてきました。
その上、ブラジルと日本は、基本的価値観を共有しています。つまりそれは、自由と民主主義、人権の尊重、法治国家といったものです。日本は引き続き、2国間関係にとどまらず、国際情勢においてもブラジルと協力し続ける意向です。
経済分野においてブラジルは、2億人からなる巨大な市場を持ち、さらにインフラ分野と電力分野の改善に向けた大きな投資機会が生まれたこともあり、この国で事業を展開する日本企業は、約700社に拡大しました。私のブラジル訪問期間中、人材の育成など、協力関係を通じた両国のビジネス促進を図る意向です。
両国間の交流の一例として、歴史的に有名な漫画のキャラクター、「モニカ」と「鉄腕アトム」を挙げることができましょう。トゥルマ・ダ・モニカ(モニカの仲間たち)の作者、マウリシオ・デ・ソウザ氏は、鉄腕アトムの作者である手塚治虫氏と親交がありました。この著名な2人の漫画家は、太平洋を隔てて友情を育んだのみならず、それぞれの作品のキャラクターも共同で作り上げたことを私は知りました。
2国間関係は政治・経済分野にとどまらず、学術・科学分野での留学や青少年のスポーツ交流などより広範囲にわたっており、これこそ、今回のブラジル訪問のテーマの1つ、両国の結びつきをさらに強固にするということに他なりません。2016年にはリオデジャネイロで、2020年には東京でオリンピックとパラリンピックが開催されることもあり、スポーツ交流が一層の広がりを見せると期待するだけでなく、学生の留学も促進させたいと希望しています。
これらのスポーツ・イベントについて考えますに、我が国には、国際貢献策として「スポーツ・フォー・トゥモロー」プログラムがございます。それの政策の一環として、民間団体と共同で、柔道着や卓球ラケット、野球・ソフトボール用品のセットなどを、私の訪問中、ブラジルのスポーツ選手に対して寄付する予定です。
さて、日本とブラジルが育んできた交流の歴史の中で、日本人移民とその子弟が果たした役割について言及しないわけには参りません。私の祖父、岸信介が日本の首相として初めてブラジルを訪問したのは1959年ですが、当時、日系ブラジル人コミュニティーは40万人を数えました。それが今日、世界で最大の日本人コミュニティーを形成するまでに発展、160万人が、様々な分野で活動しています。私どもは、彼らとも、次の世代に向けて、関係を構築したいと望んでいます。
ラテンアメリカ諸国は6億人の人々からなる市場を形成しており、世界経済の成長を促進する原動力として重要な位置を占めています。日本は、友情と連帯の歴史に裏打ちされたラテンアメリカ諸国と、さらに特別な絆を強化していくことを希望しています。
経済計画に関しては、組閣後、我が国はデフレを克服したと受け止められており、「大胆な金融政策」と「機動的な財政政策」、そして「民間投資を喚起する成長戦略」という3本柱からなる、「3本の矢」として知られる経済政策によって再活性化に取り組んでいます。一方で、少子高齢化は、社会保障制度を支える経済活動人口が減少することから財政の悪化につながるなど、社会に様々な影響を与えるために、喫緊の課題と受け止めております。
これに関しては、経済的な再活性化と合わせて健全な財政の実現、つまりプライマリー収支赤字を2015年までに2010年比で半減させ、2020年には黒字に転換させるという目標の達成に向けて取り組んでいます。
加えて、出生率の低下と高齢化という状況の中で持続的な成長を実現するために、私たちは、労働市場における女性の参加比率の拡大を促進するだけでなく、高い技能や知識を持った方々が我が国へ働きに来ていただけるよう取り組みます。
日系人子弟は日本に対する信頼の礎であり、従って、より多くの方々に日本で働く意欲を抱いていただけるよう希望しています。
(2014年8月1日フォーリャ紙Tendência / Debate 欄より)
「当欄原稿は新聞の見解を示すものではなく、ブラジルと世界が抱える問題について、現代の様々な考え方を反映させ、議論を活発化させることを意図したものである。」(フォーリャ紙注意書き)








