エコノミストのアフォンソ・セルソ・パストーレ氏は、ブラジルが「袋小路」に入り込んだと受け止めている。この場合、経済政策の変更と成長に向けた各種の改革が必要だが、それでも、同氏は、これらの具体化に連邦政府は関心を持っているとは思えないと受け止める。「それは、このところの調整策を見るだけで十分に理解できる」と言う。「つまり、その場しのぎなのだ」。必要とされる改革が進められないことで、同氏は、経済は停滞に続いてリセッションに向かうと確信している。「現在、私は次の選挙に期待している」と、同氏は言う。以下は、エスタード紙によるインタビューの要約である。
エスタード あなたは、新しい財政調整策をどのように受け止めていますか?
パストーレ 連邦政府は、信頼が得られない発表しかしていない。改革など全くない。構造の調整も存在しない。迫りくる課題を解決しようとする努力も、何ら行われていない。私がそう言うことに、連邦政府に批判的なエコノミストからは全面的な支持が得られるだろう。歳出が増大しているが、これは、歳入の拡大とは全く持って整合性が取れていない。我が国は、構造改革を必要とするしている。その範囲は、年金から教育、税制、さらに、連邦政府税制の優遇や助成、価格の統制によって企業を優遇するという、かのマルコス・リスボア(エコノミストで元経済政策局長)が指摘した「割引(meiaentrada)症候群」にまで及ぶ。最終的に、これらの様々な誤りを受けて2013年に経済成長がストップし、その後、2014年に入るとリセッションの幕開けとなったわけだが、今に至って不況は一層深刻になっている。変化への取り組みが行われることはなかった。歳出を先延ばしする小手先の対策と、大規模な調整は増税と抱き合わせだ。この財政調整は、絶対的に弛緩しきっている。
あなたのご意見としては、変革の兆候はまるで見られないということでしょうか?
そうではない。ジウマ大統領も、大臣すらも、変化を与えようとしていないということだ。あそこから、変化の風は吹いていない。私は、全く変革の気配を感じることはできない。ところでエスタード紙は、9月13日に2つの記事を掲載した。フラガ(元中銀総裁の「RespostasàAlturadaCrise」)と、もうひとつ、ちょっと長めのベルナルド・アピーとマルコス・リスボア、マルコス・メンデス、セルジオ・ラッザリーニのもの(複数のエコノミストが危機の出口戦略が年金改革にあると指摘した記事)だ。このような方策が話題になるのは、今回が初めてではない。既にフォーリャ紙でも別の、マルコス・リスボアとマンスエット・アルメイダ、サムエル・ペッソーアが署名した記事がこれ以前に掲載されている。エスタード紙に掲載された記事に対して、極めて類似した判断の根拠を元に、論評したい。このエコノミストたちは、若手ではない。我が国がこの危機の歯車を緩やかに逆転させる方策について、ほぼコンセンサスがある。この方策は、財政政策の抜本的な見直しを通じたものだ。我々は貧困を減少させる必要があるが、財源を浪費するわけにはいかない。女性が52歳、男性が54歳で定年を迎えるという状況は支えられない。我が国は、労働力の平均的な生産性を上回って最低賃金を引き上げ続けることもできない。2016年には、経済成長がゼロ成長未満なのに、最低賃金は10%上昇する見込みだ。所得の移転を続けることはできないし、特定の経済活動に対して助成を与え続けることもできない。以上は、これらの記事の内容をいくつか列挙しただけだ。
エスタード これほど多くのエコノミストがこうした方策を求めていながら、中央政界ではそれに聞く耳を持たないことについて、どのようにお考えでしょうか?
パストーレ しばらくの間、私は、政治的な支援がないために中央連邦政府ではこの声を聴けないのだと思ってきた。私の印象では、まだ支援があったならば、というものだったがそれは無理な相談のようだ。事態を好転させるには、2つの障壁がある。ひとつは政治危機で、それは、私が作り出したわけではない。これを生じさせたのは、ジウマ大統領その人だ。この危機は、彼女自身がきっかけを作った。その後の事態を好転させることに協力することはできる。2つ目の問題は、純粋にイデオロギー上のものだ。公共支出を潤沢にし、インセンティブを与えれば問題が解決されると彼女が考えていることだ。
エスタード ジウマ大統領は、なぜ政治危機を生じさせたのでしょうか?
パストーレ 大統領が選出された際、彼女は、反対派に配慮しなかった。就任演説で、彼女は反対派に言及しなかった。彼女は、反対派に声を掛けなかった。そして、ブラジル民主運動党(PMDB)を隔離しようとした。彼女は新たな枠組みを作ろうとしたのだ。この時、PMDBでは彼女に対する反発が生じ、PMDBが下院議長を選出した。こうして、大統領に対する反対勢力が足場を得て立ち上がった。対話を手始めに和解を試みるべきところだったが、大統領は、対決姿勢を鮮明にした。要するに、水面下であらゆる手段を講じながら下院の支配権を確保しようと試みたのだが、失敗した。その結果、議会が彼女をコントロールする立場に逆転した。そこで政治的な行き詰まりが生じたのだ。仮にこの行き詰まりに陥らずに和解に向けて努力していたなら、恐らく彼女は、改革プログラムを推進できていただろう。もっともそれは、彼女が、改革プログラムこそ経済成長への道だという信念を持っていた場合に限られる。彼女の脳内は当然として、彼女が抱える企画大臣の脳内にも、そのようなイデオロギーはない。それは、財政調整に関する最新の対応を見るだけで十分だ。財政調整が示したこの人たちの考える進む方向は、支持を取り付け続けるために、ばら撒いてばら撒いて、その上でばら撒き続けることなのだ。だがこれで支持を集めることはできていないし、経済成長も達成できていない。
エスタード エコノミストの多くが、これはレヴィー財務大臣の提唱する調整策ではないと…。
パストーレ ちょっと待って。レヴィーは大臣なのだよ。そして彼は、中の人だ。それなら、これは彼の調整策だ。この調整策を策定していないのは、私の方だ。彼はマルコス・リスボアではないし、サムエルでもラッザリーニでもない。これらのいずれの顔ぶれでもない。この人たちがそれぞれ提唱する調整策、そして私が同意する調整策が、あそこにいるレヴィーのものとは違うというべきだ。
エスタード 弾劾にしろ辞職にしろ、ジウマ大統領の退陣を求める人がいます。どのあなたはこの政治状況をどう受け止めていますか?
パストーレ 政治について、私は理解できない。どのようになるか、私には分からない。経済危機はより深刻になるだろうが、これに反応して社会あるいは政治制度が政権の交代を促すことになるのか、私には分からない。こうした問題を予見、もしくは分析するのは私ではない。私が言えることは、ただ次のようなものだ。つまり現政権の改革は、経済政策を変更し、投資に寄り添うものに変わり、経済発展を後押しするものに変わり、資金の拠出を資金の確保できる範囲に抑え、経済政策を修正するのか、それとも、文字通りこの国が成長しないかのどちらかだ。さらに言えば、景気の後退は長期化するということ。不況は、既に歴史的に見ても最長期に達している。2014年下半期にリセッションに入った。景気サイクル指標委員会(Codace)(ゼツリオ・バルガス財団の景気サイクルを定義する委員会)が既に、それを定義している。今後、リセッションはより深刻になるだろう。私は、景気の下降線が2015年第3四半期、第4四半期も続いて、2016年も同様の状況で年明けを迎えると考えている。2016年もGDP(国内総生産:国が生み出した富を計測する)がマイナス成長に陥る可能性が大きいと、様々な団体が指摘している。今回の不況は、規模から見ても、ブラジルの歴史上、最も長期に及ぶもののひとつだ。同様に、極めて深刻でもある。この不況がいつ終わるのか、投資がどのように回復するのかは、経済がどのように成長軌道に復帰するのかというのと同様に、予想が難しい。換言するなら、現時点で手持ちの情報から見る限り、GDPがある期間にわたってマイナス成長を記録した後、長い停滞期を迎えることになる。私は、景気が回復するのは別の政権に移行してからのことだと考えている。現政権下ではない。
エスタード 我々は手詰まりなのでしょうか?
パストーレ 我々は、長らく手詰まり状態だよ。今に始まったことではない。そして出口は見ていない。私には、本当に見ていない。現時点で期待できることは、次の選挙で、別の政権が、私たちに別の経済政策を与えてくれるだろうということだ。ジウマ政権では、その変革は期待できない。
エスタード しかし我が国は、残り3年を手詰まりの状態で耐えられるでしょうか? 我々は、それほどの期間にわたって成長できないというリスクがあるのでしょうか?
パストーレ 我が国が耐えられるのかどうか、私には分からない。だが、その代償は大きいものになる。そこから、次のように予想する。つまり、このリセッションを脱しても、一定の期間は経済が成長しな意で推移する。この経済政策によって、経済は冷え込み、その後、しばらくは回復しない。
エスタード すると我々は、新たな失われた10年に向かって歩んでいるのでしょうか?
パストーレ それが10年かどうかは分からないが、十分に長い期間になる。
エスタード この状況で、ドル為替相場はどうなるでしょうか?
パストーレ 「為替はエコノミストを打ちのめすために神が発明した変数」。この言葉は、グリーンスパン(アラン・グリーンスパン、連邦準備銀行:FRBの元議長)のものだが、私は、この言葉がまさに正鵠を射ていると思う。それは、リスクプレミアムに依存する。エスタード紙の読者にはうんざりする話だろうが、付き合ってほしい。つまりブラジルでは、為替はCDS(クレジット・デフォルト・スワップ、ある国のデフォルトリスクのバロメーター)と歩調を合わせている。最新のコラムでは、チャートを添えてそれを示した。このコラム以降、CDSはやや上昇し、為替も同様の足取りだ。そしてCDSが上昇したのは何かが狂っていたのではなく、リスクが上昇したからなのだ。公債の持続可能性に対するリスクが増大した。公債のGDP比率が72%に達した可能性があった。現在、財政に関するデータから見ると、その可能性はさらに高い。こうして、リスク評価が高まる限り、レアルは値下がりする傾向がある。
エスタード 複数のエコノミストが為替について、輸出を通して成長に復帰するという調整機能を果たすとコメントしています。
パストーレ 輸出は何であれ、ある時期には活発化するだろう。だがこれまでのところ、そうした反応はなく、しかも為替相場はあらゆるエコノミストが2015年にあり得ると想定していた水準を上回ってレアル安が進んでいる。輸出は低下し続ける。そして輸入は、通貨安も影響するにしても、その影響以上に景気の低迷を大きな理由として、縮小していく。
エスタード 通貨が2分の1まで値下がりすると、状況は悪化するのか、あるいは、どのようになりそうでしょうか?
パストーレ 少しは悪くなる方向に進むだろう。成長するには、投資が必要だ。先行きが不透明なら、投資比率は低下しやすいからだ。(2015年9月20日付けエスタード紙)








