べージャ誌特別記事【移り行く】

母なる祖国は余りに注意散漫で眠っていた
裏取引で食い物にされていたのだとも知らずに

大衆音楽の作曲家に幸あれ。この種の芸術家は、彼らが親しい博学な人たちからそれほど敬意を払われていない。だが大衆音楽の作曲家は、人間の魂を理解する数少ない人たちだ。「僕らの愛はどこまでも美しい/彼女は僕を愛しているふりをする/僕はそれを信じたふりをする」これらは、偉大なマンゲイラの歌手、ネルソン・サルジェントの一節で、同様に偽の誠実な愛に詩的着想を得たシェークスピアにも比肩する。作曲家たちは、我々の不幸を笑いの種にして事件を刻み付け普遍化できることを十分に理解しているのだ。シコ・ブアルキ・デ・オランダの手による「ヴァイ・パッサー(「移り行く」の意味)」が発表されたのは、1984年だ。この歌のメッセージは、32年が過ぎた現代でも衰えていない。「母なる祖国は余りに注意散漫で眠っていた/裏取引で食い物にされていたのだとも知らずに…」。誠実さを欠くゼネコンとの共謀により過去13年にわたってブラジル政界の舞台裏で起こってきた出来事を、これ以上に適切に描写する言葉があるだろうか? このことは、同じ1984年のカーニバルでリオデジャネイロ市のエスコーラ・デ・サンバ、インペリオ・セラーノが歌った、「目的は手段を正当化する」という現在のブラジルに蔓延する違法行為を痛烈に批判した「フォイ・マランドロ・エ(「まさに下衆」の意味)」についても言える。さればこそ、大衆音楽の作曲家に幸あれ、だ。

「自由、自由/その翼で私たちをあまねく抱擁しておくれ/その翼は平等の声/平等こそ私たちの常なる叫びだ」。インペラトリス・レオポルジネンセが1989年のカーニバルで歌ったこの曲は、ラヴァ=ジャット汚職捜査の成功の暁に生まれ変わるブラジル、法の下の平等が保証されたブラジルのテーマ曲として、最もふさわしい。最近になって、我が国で最も偉大な政治家、ルーラ元大統領が、重大な犯罪で告発されたジョゼー・サルネイ元大統領に関して、受け入れ難い根拠によって法の裁きを免除されるべきだという主張を展開した。ルーラは、サルネイを「普通の人」として扱ってはならないと主張する。言い換えると、ルーラが主張しているのは、サルネイは法を超越した存在であるべきということだ。サルネイを手始めに、未来の元大統領にあまねくこの特権を付与することを支持しているのは、誰あろう、ルーラ自身だ。そしてブラジリアで精力的な活動を展開している不処罰運動部隊のフロントたる彼は、まさに自分自身がこの特権を得ることを想定して語っている。つまり犯罪捜査の対象になっているルーラも同様に、「一般人」として扱うべきではないだろうし、彼に対しては、他のブラジル国民以上に法律を寛大に適用すべきということになる。到底受け入れられない意見だ。むしろ司法の前には、「平等の声/平等こそ常に私たちの叫び」が適用されるべきだ。

従って、大衆音楽の作曲家に幸あれ、そして、汚職が疑われている建設会社の手でリフォームされたトリプレックス(3階建てコンパートメントのアパート)を元大統領が所有するのを当たり前のことだと思わない人たちに乾杯だ。この人たちは、例え富豪が彼に講演を依頼したのだとしても、ペトロブラスから資金を横領したとされる建設会社が負担してリフォームした大別荘で前大統領が親族と楽しく過ごすのを、普通とは考えない。超法規的措置の適用を求めているばかりに、ルーラは、かつて彼を頂点に押しやる原動力になった大衆の支持を、日ごとに失っている。「目的は手段を正当化するだろうか?/大衆の開放を免罪符として/不適切な資産を思うがままに確保するのは許されるのか?」。大衆音楽の作曲家に幸あれ。

「貪欲な名士たちのパレードに拍手を」

サンパウロ州グァルジャー市にあるソラリス・ビルにあるトリプレックスは、ペトロブラスを舞台にした贈収賄と横領の汚職スキーム、通称「ペトロロン」で主役を演じている建設会社のOASがリフォームしたのだが、2月第1週になってルーラは、この不動産をかつて所有したことはないと言い始めた。声明によると、彼は購入権を確保したが、最終的にはこの権利を行使せずアパートを購入しなかったという。だが前大統領は、友人でありペトロブラスの汚職スキャンダルで逮捕され禁固16年の有罪判決を受けたレオ・ピニェイロが当時社長を務めていたOAS所有のこの不動産を、訪問したことは認めた。ある種の不本意な告白という形で、ルーラは、彼の家族のために確保されていたアパート164-A号室への備品の設置と設計変更にOASが約80万レアルを支出したとマスコミが報じた後になって、このアパートの入手を既に断念していたとコメントしたのだ。ソラリス・ビルのアパートは、先ず、資金を違法に労働者党(PT)の口座に移転した後に破産した銀行員組合のバンコープが建設に着手した(44ページの記事を参照)。ルーラの要請を受けて、OASが2009年にこの工事を引き継いだ。当時、バンコープの加入者は、OASと契約を結ぶかどうか、わずか数日という期間で判断しなければならなかった。全員だ。唯一の例外は、OASの従業員によって進められた作業を逐一見届けた後、2015年にトリプレックスの購入を断念した前大統領の家族である。ベージャ誌が報じたように、サンパウロ州検察局のカッシオ・コンセリーノ検事は、ルーラと元ファーストレディーのマリーザ・レチシア、友人で建設会社経営のレオ・ピニェイロを、資金洗浄容疑で告発する。検事は、前大統領が声明を発表しても、その考えを変えなかった。この件では、財産を隠蔽仕様という明白な動きがあったのだ。「OASがなぜ、事前に予約した購入者もいないのにリフォームのためにおよそ100万レアルもの大金を支払ったのだろうか? 元大統領の家族の好みに合うかどうかもわからないのに、これほどの金額を支払おうとした理由は何だろうか?」と、コンセリーノ検事は指摘する。そして、「購入を断念して支払った金額の払い戻しを請求したのが6年近くも経過した後だというのは、なぜだろうか?」と疑問を呈した。裁判所への告発が現実的な問題として浮上してきたことで、PTの尻に火が付いた。PT副党首のパウロ・テイシェイラ下院議員は、全国検察審議会に対して、コンセリーノ検事が容疑者から意見聴取する前にルーラとマリーザ夫人、レオ・ピニェイロの3人を告発すると発表したことは不適切な行為だとする申し立てを行った。彼はこれを、弁護の権利に対する侮辱だと主張している。

ラヴァ=ジャット汚職捜査の方でもソラリス・ビルにOASが建設したアパートの捜査に着手しており、良く見積もったとして、テイシェイラ副党首の主張は、ルーラが抱える問題をやや緩和するだけだろう。トリプルXと名付けられた今回のラヴァ=ジャット汚職捜査のステージでは、有名な164-A号室を含む不動産を、OASが当局への賄賂として利用していたという疑惑の解明に挑む。ラヴァ=ジャット汚職捜査ではさらに、このPT所属の前大統領とその家族が利用していた別の不動産、OASとオーデブレヒト、そしてルーラの親友にしてペトロロンに関与していた実業家のジョゼー・カルロス・ブンライ容疑者がリフォーム代金を支払ったサンパウロ州アチバイア市の大別荘についても捜査を進めている。この不動産は、ペトロロンで不正に手を染めた別の会社、アンドラーデ・グティエレスから2005年に500万レアルを受け取ったゲームコープの経営パートナー、ファビオ・ルイス・ダ・シルバ、通称ルリーニャ(小ルーラ)が所有している。OASの前社長、レオ・ピニェイロは既に有罪判決を受けた。2015年6月に予防拘禁されたマルセーロ・オーデブレヒト被告は結審し判決待ちだ。一方、パラナ州で拘禁されているアンドラーデ・グティエレス・オターヴィオ・アゼベード容疑者は、同社の役員と弁護士に対して、当局との司法取引に応じる意向を伝達済みだ。この問題でアゼベード容疑者は、アンドラーデ・グティエレスがゲームコープ株式を購入するようルーラが要求したことについても証言する見込みだ。

証拠を積み上げて徹底したルーラ包囲網が形成され始めているために、PT所属の閣僚と国会議員、首脳部は、PTの首魁が不可侵な存在でなくなり逮捕される可能性すら出てきたことを懸念している。「ルーラは、貧困者と社会から排除されてきた人たちを民主主義の俎上に上げた。これは、エリートによる奴隷文化を持つ我が国にとって、画期的な出来事だ」と、まさにそのエリートの1人であるタルソ・ジェンロ元大臣が、労働者党員作詞の珍妙なサンバの一節を披露した。こうした理論的根拠は、もはや、誰もがそうであるようにPTですら、幻想を売るマーケットを潤すことができないと知っている。ルーラは、超法規的存在にはならない。ペトロブラスから横領した資金で懐を膨らませたとされるウンベルト・コスタ、グレイジ・ホフマン、リンドバーグ・ファリアスといったPT所属の上院議員たちも同様に、ルーラが一般人と同等に扱われるべきではなく、彼は謀議と迫害、北東部からの内陸移民に対する偏見の被害者だという見方を売り込もうと必死だ。ばかげたことだ。仮にルーラが犯罪を犯したのであれば、彼は、その他の人々と同じくその罪の責任を負うべきなのだ。「目的は手段を正当化するだろうか?/大衆の開放を免罪符として/不適切な資産を思うがままに確保するのは許されるのか?」。大衆音楽の作曲家に幸あれ。

「そしてどんな明日がやって来るのか?と僕はいつも自問する/僕の運命はどうなるのか?/もう厄払いは済ませたんだ」

イプソス研究所が実施して2月第1週に発表された世論調査によると、調査対象になった人のわずか25%だけが、ルーラを正直な人物と考えていることが明らかになった。そして市民の60%は、前大統領を不誠実と考えている。幻想は消え去った。メンサロン(買収工作費)スキャンダルがピークだった時、PTの首魁を誠実だと考える市民は49%と、現在の水準のほぼ2倍もいたのだ。イプソスの世論調査によると、市民の71%が、ルーラの所属する政党、つまりPTが、ブラジルで最も腐敗していると考えている。もしこれらの数字が異なっていたなら、それこそ驚きだっただろう。結局のところPTからは、2人の元党首と2人の元出納局長が、大規模な汚職スキームを率いたとして逮捕された。かつての英雄にしてルーラの右腕とまで呼ばれた「ブラジルの大衆の戦士」、ジョゼー・ジルセウ同志は、セルジオ・モーロ裁判官に対して、ペトロロンで逮捕されたロビイストの支払いで国内各地をビジネスジェットで旅行したと認めた。ジルセウの証言によると、ロビイストから交換条件を一切求められなかったという。一方でロビイストは、ジルセウのお陰でペトロブラスから横領した資金からこの旅費をまかなっていたと証言した。

モーロ裁判官への証言で、ジルセウ元官房長官は、彼の所有する不動産の1つのリフォーム代金を、ペトロロンに関与していた別のロビイストが支払ったことも認めた。それは貸付であったが、清算されなかった。それは何も、金を工面できなかったからではない。例えばルーラが講演で2,700万レアルの報酬を得て、その内1,000万レアルはペトロブラスから資金を横領したと告発されたゼネコンが支払ったとされ、ジョゼー・ジルセウ元大統領府官房長はコンサルティング、要は、連邦政府とのビジネスに関心を持つ顧客に自分の名義を貸すのを彼自身が認めることで4,000万レアルを得たと主張している。一般人はこれほど簡単に金を稼げるものではない。

「目的は手段を正当化するだろうか?/大衆の開放を免罪符として/不適切な資産を思うがままに確保するのは許されるのか?」

ルーラとジルセウが構築した政党戦略の歯車となり選挙で選ばれた大統領、ジルマ・ロウセフも、汚職が広範囲にわたって汚染しているという一般の認識から無傷ではいられない。イプソスによると、調査対象になった人の60%が彼女の弾劾を支持している。同大統領の罷免を求めるプロセスは、すでに下院で始まっている。2016年上半期は、財政調整策を差し置いてこの問題に掛かり切りになるだろう。2月2日にはジルマ大統領が、国会議員らに歩み寄ろうと立法府における連邦政府の重点課題をリスト化したメッセージを読み上げた。しおらしくなった大統領は、温かく議場に迎え入れられたが、聴衆の心をつかむことはできなかった。彼女は発言の大部分を技術的問題に費やし、同じ内容を反復した挙句、上下両院議員に対して、国民から不興を買う2つ問題に対する支持を求めた。つまり、社会保障改革と増税だ。彼女が金融取引暫定賦課金(CPMF)の再導入を提案した時、議場からはヤジが飛んだ。その翌日、2016年の最初の下院票決で、連邦政府とPTは、同党が目玉の政策と掲げる譲渡益課税で敗北した。そしてジカ・ウイルス対策を訴えるため、11か月ぶりとなった2016年最初の連邦政府公報に挑んだ彼女は、再びブラジル国民の怒りに火をつけ、放送時間中、サンパウロ市とブラジリア、ベロ・オリゾンテ市、クリチーバ市で鍋叩きによる抗議を受けた。

ルーラは、ジルマを後方支援するには余りにも司法問題を抱えすぎだ。そして彼女自身も、ブラジリアの官庁街で世間から隔絶した隠遁生活に明け暮れている。ルロペチズモ(ルーラ政権に始まった汚職体質の大衆迎合的な労働者党の政策)は、その横柄さと偽りの道義的優越性、そして意見されたこと全てを拒否する権勢を示すことで、化けの皮が剥がれてきた。彼らの裏取引は、注意散漫な母なる祖国が寝静まっている間に行われた。だが当局は目を覚ましていたし、報道機関も油断なく注意を払っていた。PTは当局の良心を麻痺させようと試みたが、できなかった。報道を統制しようと試みたが、できなかった。大衆に幻想を見せようと試みたが、できなかった。それだけに、大衆音楽の作曲家に幸あれ、だ。これまでの経緯を見る限り大衆を代弁する彼らは、ルロペチズモが「私たちの歴史の不幸な1ページ」を都合良く改変するのを阻止してくれるだろう。(2016年2月10日付ベージャ誌)

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