タチアナ・パレルモ (Tatiana Palermo)
景気の回復という観点で、最も手早い手段は、輸出の拡大だ。
ビジネスの世界では、あなたは、自身に値するはずのものを受け取るのではなく、取引した対価を受け取る。交渉術のインストラクターでアメリカ人のチェスター・カーラス氏のこの至言は、国際貿易でブラジルのシェアが低い理由を的確に言い表している。
ブラジルは、ラテンアメリカと南部アフリカの国々、エジプト、イスラエルという、合わせてもわずか12か国に限って貿易協定を締結している。この貿易相手国の市場は、世界貿易のわずか5%なのだ。一方、チリは、貿易協定を通じて世界貿易の86%を占める国々の市場にアクセスしている。世銀のデータによると、国際的な平均水準でも40%を上回る。
農業生産で非常に競争力を持つブラジルだが、例えば、1,000%に達する輸入税を支払わされていたり、(食肉や砂糖など)特定の品目で輸入割当制度が適用されるなどしている。それ以外にも、ややもすれば、差別的で科学的根拠に乏しいような、規制と、煩雑な手続き、衛生基準、植物検疫基準といった多くの障害に直面している。こうした障壁は、中小企業ほど対応に苦慮させられる。
政界が信頼を取り戻した今、景気をより迅速に回復させる鍵は、輸出の拡大だ。市場の開放と拡大は、工業分野と農業分野、サービス分野の様々な業種で、最も基本的な対応だろう。
レアル安の為替相場を追い風に、輸出企業の業績は堅調で、より多くの需要家がいる市場へのアクセスを可能にしている。このことは、国内市場が依然として冷え切っている現状では、一層重要だ。輸出の拡大は、新規雇用を生み出して所得を上昇させる。これまで以上に国際競争にさらされることで、国内企業は、新たな潮流をつかみ、より革新的になる。
アメリカと環太平洋の11か国がまとまる自由貿易協定、すなわち環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を支持するアメリカのバラク・オバマ大統領が、これ以上にない適切なコメントをしている。すなわち、「競争を恐れて鎖国するために塀を築けば、世界中で発生している巨大なチャンスから国を遠ざけてしまう」。TPPは、1万8,000品目に対してアメリカ国民が支払っている関税を撤廃すると推算されている。
貿易の自由化は、グローバル・バリュー・チェーンへの参画と外国直接投資を呼び込む魅力の拡大につながる。2つの好例が、ベトナムとメキシコだ。両国ともTPPの参加国だ。ベトナムの輸出は、東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国との協定を中心に、過去10年で4倍となり、2015年には1,620億ドルに達した。メキシコの場合、現時点で44か国と自由貿易協定を締結しており、昨年は3,810億ドルを輸出した。1,910億ドルを輸出したブラジルの、ほぼ2倍だ。
貿易協定を締結すると、市場競争がよりバランスの取れた条件になり得る。私たちは、我が国の競争力と効率、市場の補足能力を示すことができる。国際相場の低価格化と中国の需要後退により、関税を縮小させ非関税障壁を撤廃させる交渉は、これまで以上に緊急性を帯び、かつ、精力的に行われるだろう。
ブラジルの国際貿易に関する交渉はこれまで、ばらばらの方向を向いていた。大臣諮問機関として貿易交渉の方針を決定する貿易協議所(Camex)を率いた商工開発省(MDIC)は、外交政策に責任を負う外務省の方針と競合する関係にあった。
それだけでなく、MDIC内部でも、タコツボ化し対立していた。工業政策に傾倒する余り、国際的な競争から工業部門を保護する戦略を追及した。この戦略を貿易の自由化と調和させるのは困難だった。恐らくはそのために、ブラジルは、一部の業界あるいは特定の問題など限定的な例外を除き、2010年からこの方、貿易協定を締結してこなかったのだ。
この戦略の中で、アグリビジネス分野は無視された。農畜産品に対する国際的な関税率は、工業製品のそれを5倍も上回る。大きな市場を持つ国や地域と進められた様々な交渉は、いずれも、アメリカとその他の米州諸国が目指したアメリカ自由貿易圏(FTAA)のように立ち消えになったか、あるいは、メルコスルと欧州連合(EU)の貿易協定のように数10年にわたって因循してきた。経済ブロックとして交渉に当たるメルコスルの戦略は、多くのケースで、他の加盟国が方針に従わないと非難することによって、協定を締結しないための方便として利用されてきた。
一方で農牧食料供給省(MAPA)の場合、衛生植物検疫措置(SPS)と呼ばれる交渉を独自に仕切る権限が与えられている。貿易交渉と異なり、SPSに関してMAPAは、多省との調整に煩わされない。
2015年1月から2016年5月にかけてMAPAは、年間19億ドル規模で農畜産物を輸出できる可能性のある国々とSPS交渉で合意しただけでなく、24億ドル規模の輸出につながる可能性のある国々との交渉も開始した。その結果、2016年に輸出が再び上向いた。4月だけを見ても、アグリビジネス関連の輸出額は、前年同月比で14.3%増加してブラジルの総輸出額の52.5%を占めた。
同じような俊敏さを、貿易交渉にも持ち込む必要がある。その意味で、大統領がCamex総裁職を兼任するというミシェル・テーメル暫定大統領の判断は、正鵠を射たものだ。
だが、さらにその先に進む必要がある。つまり、Camexのトップを掌握するだけでなく、農業部門と工業部門、サービス部門のあらゆる業界を俯瞰した上で貿易交渉への取り組みを実際に集約化するということ。特定の業界に紐づけられる省とは無関係の、単一の機関が交渉を推進することが重要だ。その機関が責任をもって様々な業界から意見を集めて優先順位をつけることで、我が国の経済に一層生産的な形で交渉を展開できるだろう。
ブラジルは、自身に値するはずのものではなく取引したものから利益を得る。そしてそれは、取引をより大きく、より良くするのに値する。私たちは、こうすることによってのみ輸出を拡大し、経済危機を克服するのだ。(2016年5月17日付けバロール紙)
タチアナ・パレルモ 2015年1月から2016年5月にかけて農牧食料供給省国際関係担当局長を務めた。








