【テーメル暫定政権の「善意の政策」は総額1,254億レアル規模】

公会計
歳出削減が求められている一方で、連邦政府は、編成する予算に上限を導入する憲法修正案(PEC)のような法案の国会承認を取り付ける目的から短期的な政治的支援を拡大している。

ミシェル・テーメル暫定大統領が6月30日、家族手当(ボルサ・ファミリア)に対する平均12.5%の増額や、州政府と市役所対して初等教育を目的に7億4,280万レアルを交付するなどとする、社会支援策を発表した。市場が歳出削減に期待する中で肥大しているものの、公会計の専門家は今回の増額を、想定内と受け止めている。今回の政策に関しても、5月12日に誕生して以降に暫定政権が譲歩して与えてきた恩恵がまた1つ増えただけというのが市場の認識だ。だが歳出と租税支出による負担増は、すでに、2016年から2018年までの公会計に対して1,254億レアルに達している。

また歳出を早急に削減するのは難しいと市場は分析しており、財政問題にメスを入れるにはジウマ・ロウセフ大統領に対する弾劾裁判の最終判決が先決だと受け止める。市場の判断は、全体として見ると次のようになるだろう。すなわち、政治的な支持を取り付ける戦略を暫定政権は採用しており、このことは短期的には公会計にとって改革を求める圧力につながるのだが、議論を呼びはしても長期的にはこの戦略が成長軌道に復帰する基礎的条件である財政改革の承認を確実なものにする。この点で優先的な課題には、予算編成に上限を設定する憲法修正案(PEC)、そして社会保障改革がある。

発足から2か月足らずで暫定政権が次々と「善意の政策」を進めてきた背景には、上記のような事情がある模様だ。連邦政府のこれまでの対応について複数のエコノミストが指摘するのは、公務員給与の調整を支持したこと、明確な反対条件を示さず州政府が連邦政府に抱える債務の再交渉に応じたこと、リオデジャネイロ州に対しても減額はしたが反対せず財政支援を認めたこと、拡張版小・零細企業向け税及び賦課金統合納付制度(Supersimples)の適用範囲拡大に取り組んでいることなどだ。

公会計の専門家らは、歳出の増加と租税支出が1,700億レアルの赤字を想定する2016年予算に織り込み済みとする一方、長期的に与える影響を懸念している。ゼツリオ・バルガス財団(FGV)経済学部サンパウロ校経済フォーラムの運営コーディネーター、ネルソン・マルコーニ氏は、「これまでの成果と言えば、公務員給与の引き上げのように必要だった措置や、州政府との債務の再交渉のように重要と位置付けられてきた措置が進められるよう、赤字を拡大しただけだ。一方で、歳出増加に制限が設けられるどうかだけでなく、州政府が負担する交換条件すら明確になっていない。明確さに欠ける」と話す。

ただし、既に過去の政権で行政に参画した経験を持つ複数のエコノミストは、現時点では他に選択肢は存在しない、と受け止めている。例えばカルドーゾ政権の1998年に通信大臣を務めたルイス・カルロス・メンドンサ・デ・バーロス元大臣は、「テーメル政権は、並行して2つの行動計画を推進する必要がある」と指摘する。同氏はその上で、「経済面では正しい方向に導く政策を進められる才気あふれたスター級が集まっているが、政治面では状況は複雑だ。弾劾に決着がつかない間は、彼らが計画の主導権を握れない。テーメル暫定大統領は、この2つバランスをとり、かつ、信頼回復に努めざるを得ない」と付け加えた。

財務省
財務省のマンスエット・アルメイダ経済観察担当局長によると、連邦政府が公会計の状況を悪化させる「行き過ぎた行為」に手を染めているという指摘は、事実と異なるという。同局長によると、「我々は、銀行手数料の支払いまで遅れるような困難を極めた状況から、ようやく事態に対処できるところへ漕ぎつけたのだ。そして今、我々は様々な要求にノーを突き付けている」。

その上でマンスエット局長は、構造的かつ長期的な財政調整の実現を現在のスタッフが重視しているとコメントした。「金融市場で働く私の友人まで私を訪ねて、短期的な対策を講じるべきだと訴えている。これに対して私は、こう応じている。つまり、歴史的にブラジルは短期的な調整と投資の削減、そして増税ばかりに勤しんできた。我々は、それが進むべき道ではないことを既に知っているのだとね」。同局長によると最初の重要な変革は、歳出に上限を設定することだ。「これがどれほど厳格なものになり、大きな変化を与えていくのか、人々はまだ理解できていないのだと私は思う」。

赤字
「これまでの成果と言えば、公務員給与の引き上げや州政府との債務の再交渉のように、一連の歳出増につながる対応を進められるよう赤字を拡大しただけだ」
ネルソン・マルコーニ氏(FGVのコーディネーター)

(2016年6月30日付けエスタード紙)

テーメル暫定政権がジルマ大統領の発表した水準以上で家族手当を増額

市長・市議会選など選挙実施年度における規制から、テーメル暫定大統領は日程を繰り上げて、6月29日、平均12.5%の家族手当の支給額調整を発表した。

ミシェル・テーメル暫定大統領が6月29日、当初の計画に含まれていなかった家族手当(ボルサ・ファミリア)の支給額の調整を発表した。暫定大統領は、教育大臣とともに約1,200市が恩恵を受ける教育支援の式典だけに出席した。

有権者の判断に影響するような歳出拡大につながる政策の導入は投票日の3か月前から禁じられており、2016年の場合は7月1日から禁止期間が始まる。そこでテーメル暫定大統領は、日程を繰り上げて発表した。

今回の支給額の引き上げは、年間21億レアルの歳出増につながるだけでなく、5月1日ジルマ・ロウセフ大統領が発表した9%という調整幅を上回る。暫定政権は、政権交代により社会政策が終わると主張する労働者党(PT)関係者らの主張に対抗し、国民が安心する対応を進める。

家族手当の支給額の引き上げは、平均12.5%。また州政府と市役所が担当する初等教育への支援に、7億4,280万レアルを支出する。

オスマール・テーラ社会開発大臣とメンドンサ・フィーリョ教育大臣は、今回発表した新たな政策で歳出は増加しないと話す。メンドンサ教育大臣によると、これらは臨時的ではない経常的経費から支出されるとしており、テーラ社会開発大臣も2016年予算で想定された支出の「移転」で対応するとコメントした。

1,400万戸を対象にする家族手当の支給額引き上げは、7月18日以降の支払いから有効になる。

テーメル暫定大統領は演説の中で、「プログラムの重要性が高まった」ことを今回の政策は示すとする一方、基本的重要性を持ちつつも「長期的な持続性を持ちえない」と強調した。「極貧状態が存在する間、家族手当はこの種のプログラムとして必要だろう」と暫定大統領はコメントした上で、「いつかの時点で」無用になるとした。

テーメル暫定大統領によると、「ブラジルでは多くの人が、新政権が誕生すると前政権が実施し成果を収めたものを含めすべてを改悪し嫌悪すべきだという考えにとらわれている」という。

無責任:
SBT局のニュース番組「ジョルナル・ド・SBT(Jornal do SBT)」のインタビューに応じたジルマ大統領は、公務員給与の引き上げ承認について暫定大統領が「財政責任を果たしていない」と批判するとともに「後退だ」と言い、さらに、家族手当の給付額の引き上げはこれ以前に導入されてしかるべきものだったと話した。「調整しないことは一貫性に欠くと主張してようやく、彼らは引き上げた。彼らがこれまで引き上げようとしなかったのは、民衆との公約がなかったからだ」とジルマ大統領はコメント。

さらに、「彼らが属する公務員に対する給与調整に比べるならば、今回の調整は非常に小さいと言わざるを得ない。今回の対応について私は、財政に対する非常に無責任な行為と考える」と主張した。(2016年6月30日付けエスタード紙)

 

 

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