論評【為替のマントラ】

セルソ・ミンギ

ブラジルの工業部門が抱える競争力に関する課題において、国外市場に対するものと同様に国内市場に対するものであっても、為替というのはその原因のごく一部に過ぎない。

何年にもわたって、実業家が訴えてきた決まり文句は、ブラジルにおいてドルは余りにも安く(レアル高で)推移しており、このブラジル通貨の値上がりによって民間部門の競争力が葬り去られようとしているというものだった。そして「脱工業化を抑制する」ために、レアルの強力な切り下げを求めてきた。

サンパウロ州工業連盟(Fiesp)、そして機械・設備業界の方々は、それ以外について何も主張して来なかった。例えば9月27日、繊維工業を代表してフェルナンド・ピメンテル氏は、この主張を蒸し返した。

国内生産部門の大部分は競争力を持たない、言い換えるなら、外国市場に打って出るどころか輸入品とも競争できない。原則的に、この状態に為替が関与しているのは一部に過ぎない。

競争力に乏しいのは、それ以外の要因が多くを占める。すなわち、他の多くの国々よりも非常に高いブラジル・コスト、不安定なインフラ、順応できない業界を生き永らえさせる過剰な保護主義、ビジネスを阻害する極めて官僚主義的で煩雑な手続き、高い資本コスト、余りにも高い利子、低い教育水準と人材の能力…などだ。

これらを相殺するための方法のひとつが通貨の切り下げだ。これは、国内の生産コストをドル換算で低廉化し、輸入品の価格を引き上げる手法である。問題は、この切り下げを常に促進できるわけではない点だ。

為替というのは、通貨の価格のひとつ(もうひとつは金利)であり、そして、その相場は需要と供給の掟に従う。中央銀行の役割のひとつは、経済政策が意図する水準へ、このバランスゲームを規制するために介入することである。国内通貨の価値を引き上げる必要があれば中央銀行は市場で外貨の供給を拡大させる、あるいは拡大に道を開くことで、ドルはレアルに対して値下がりする。反対に切り下げる場合には、国内の為替市場でドル買いを拡大、あるいはドルの供給を絞る。

現在のブラジルで採用されている為替制度は、反則的な変動為替制度だ。そこでは、相場は需要と供給できまるのだが、大きな変動を排除する目的で何らかの介入が行われる。対外収支が極めて良好で外国直接投資(FDI)がその他の収支の赤字の3倍に達するという今の状況下では、ブラジルが潤沢なドルと共存することは避けられない。

実業家と多数のエコノミストが、より積極的な介入をすべきだと説く。彼らは、中央銀行がより多くの外貨を買うか、行政措置あるいは税金の賦課により資本の流入を抑制してくれることを求めている。

だがこれには、2つの問題がある。第1に、中央銀行によるドル買いには、インフレ要因であるレアルの発行か、既に極度な高水準にある公債のさらなる発行が求められる。第2の問題はグローバル市場でドルがだぶついていることで、これは中央銀行に統制できない変数だという点だ。このようにして、これらの資金の大部分は引き続きビジネスを目的としてブラジルに流入し、外貨の供給を拡大させる。

経済状態がより健全であればあるほど、外資の流入は増加し、為替相場は相対的に現地通貨高を維持する状況となる。逆説的だが、為替市場でドルの需要を最大限に喚起する最も容易な方法は、危機的状況が経済を崩壊させるに任せることである。(2017年9月29日付けエスタード紙掲載)
 

 

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