第1回日伯インフラ協力会合開催

2017年8月31日、ブラジル外務省イタマラチ宮で第1回日伯インフラ協力会合が開催された。当会合は、2016年テメル大統領訪日の際に締結されたインフラ協力に関するMOUにて約束された両国間でのインフラ協力会合であり、日伯双方の関心の確認と情報交換などを通じ、日本の「質の高いインフラ投資」をブラジルで進めるための環境整備等を目的とするものである。記念すべき第1回には、日本側から、外務省、総務省、経済産業省、JICA(国際協力機構)、JETRO(日本貿易振興機構) 、JBIC(国際協力銀行)、NEXI(日本貿易保険)、民間企業等、合計約70名が出席し、ブラジル側からは外務省、企画開発行政管理省、運輸・港湾・民間航空省、大統領府PPI局 、鉱山・エネルギー省、農務省、産業貿易省、科学技術通信省、BNDES(国立経済社会開発銀行)、CNI(全国工業連盟)等が出席した。

Pdfプログラム

オープニングのブラジル側挨拶ではコウナード企画省次官とモウラン外務省副次官が120年に及ぶ日伯外交関係と日伯経済及び技術連携について触れ、その強化を通して益々の日本企業がブラジルへ進出することを期待する旨を述べ、日本側からは岡本 三成外務大臣政務官が挨拶を行った。岡本外務大臣政務官からは、新たな日伯間の協議の枠組みである本件会合を活用して両国の経済関係を一層緊密にしたい旨と、ブラジルにおける「質の高いインフラ」の更なる展開に向けた忌憚のない議論と意見交換が行われることへの期待を寄せた他、日本企業の投資環境改善につながるブラジルのOECD加盟申請を日本政府として歓迎する旨が述べられた。

続くセッション1.「ブラジルにおけるインフラ投資の現状」ではブラジル側の司会進行により、各機関からのプレゼンが行われた。シウバPPI局特別補佐官は「PPIの進捗及びマトピバ地域におけるインフラ改善計画」と題しPPIプロジェクトの進捗状況とメカニズムについて説明、ブラジル国内のインフラ整備プロジェクトに関する透明性や信頼性、安定性、法的保護をより高め、公的団体と民間事業者との連携(官民パートナーシップ)を強化拡大し、民間事業者の投資を呼び込むことを目的とするプログラムであるとし、立上げ一年以内で146のプロジェクトが実施され、そのうち既に49プロジェクトが入札プロセスにあり、これまでに実施された空港事業や現在進行中の港湾プロジェクト等について説明。またPPIは審議会のもと7つの省、および3銀行(ブラジル銀行、BNDES、Caixa Econômica Federal)が参画していることを述べた。為替リスクやファイナンス、より多くの入札者の参加が可能となるような情報開示のメカニズム、コンセッションに係る入札要項はパブリックコメント手続に付した上で、公表前に公聴会で承認を得る必要があること、また入札開始の条件として事前の環境ライセンス認可取得等を通じてプロジェクトの環境面での実現可能性を事前に確保していることが条件となることなど、実現性と質の高いインフラプロジェクトの確保、特に海外事業者からのより多くの投資を目指していることを説明した。

またその他のインフラ投資計画についてはバチスタ運輸省パートナーシップ振興局長が鉄道と地方空港について説明を行った他、ミランダ都市省環境衛生局計画・規制局長により民間企業の参加率が6%とこれからの民営化が大きく期待される上下水道セクターの説明、モラエス自然災害警報センター長による防災インフラのプレゼンも行われている。

またここで中座する岡本外務大臣政務官からは、インフラという長期にわたるプロジェクトの性質においてもその収益性が確保していけるようなブラジル側の協力を求めるメッセージが残された。

続くファイナンスメカニズムのプレゼンでは、マシャードBNDES(国立経済社会開発銀行)衛生・運輸省担当役員よりBNDESのファイナンスメカニズムの概要と省エネ、上下水道、鉄道、河川輸送、都市型モビリティにプライオリティをおいていることなどに触れ、日本からの投資への期待について説明を行った。

ブラジル側最後のプレゼンではインフラプロジェクトにおける日伯企業の協業の可能性についてカストロCNIインフラ担当エクゼクティブマネージャー付きより説明、ブラジルインフラの民営化促進及びPPIの立上げはブラジルが求めていたものであり大いに歓迎、またPPIのインフラプロジェクトは多岐のセクターに亘っており海外事業体の積極的な参画も促すものであると評価。続く質疑応答の時間では、インフラプロジェクトにおける為替リスク軽減のファイナンスメカニズムについての説明を求める声があり、BNDESマシャード衛生・運輸省担当役員より補足の説明として現在暫定法で審議が行われているTJPL長期ファイナンス利子の導入について進捗状況が述べられた。

セッション2では日本側からの発表が行われ、日本政府の支援スキームをテーマとして、初めに南 慎二外務省南米課長による「質の高いインフラ投資の推進」と題しイントロダクションがあり、日本の質の高いインフラ、信頼性、安全性、経済性の高いインフラへオールジャパンで取り組んでいることが説明された。日本政府の支援スキームとして、以下JICA、JETRO、JBIC、NEXIよりプレゼンが行われた。

斉藤顕生JICAブラジル事務所長によるこれまでのブラジル向け円借款事例を交えながらの「JICAの資金協力スキーム~持続的な投資環境改善に向けて~」と題するプレゼンで、予め決まっているプロジェクトに対する資金融資を行うプロジェクト借款、設計や調査に必要なコストを融資するエンジニアリングサービスローン、地方の小規模インフラ整備や中小企業製造業、農業など特定分野への融資であるツーステップローン、複数のサブプロジェクトで構成される特定セクターの開発計画実施のためのセクターローン、制度改善に対するプログラムローン、災害復興・管理セクタープログラムローンといったJICAが提供する円借款について紹介を行った。また官民パートナーシップ(Public Private Partnership:PPP)を支援する制度として、Viability Gap Funding、Equity Back Finance、PPPインフラ信用補完スタンド・バイ借款などを紹介、これらの資金協力とJICAの技術協力、双方を組み合わせることによってより官民にとってより魅力的なインフラプロジェクト実施が可能となると説明を行った。

大久保敦ジェトロサンパウロ事務所長より「JETROのインフラビジネス支援スキームについて」、ジェトロの有する現地政府機関・企業等との既存ネットワークを活用し、プロジェクト情報の収集・提供を行い日本企業の海外展開に資する支援スキームを有していることを説明。JBIC櫛引智雄リオデジャネイロ首席駐在員より「JBICの組織概要及びインフラプロジェクト係るファイナンス」として、長期にわたるインフラプロジェクトにおいては為替リスクと資本リスク軽減のためのリスクシェアが重要であり、そのために当行が有する保証スキームなどについて説明を行った。最後に寺村英信NEXI(株式会社日本貿易保険)ニューヨーク事務所長から「NEXIの信用保険スキーム」と題し、カントリーリスクにより発生する損失をカバーするスキームとして海外投資保険などを事例を交えて紹介し、それぞれ各機関が提供するスキームについて概要説明を行った。

続いて企業プレゼンのブロックでは、大前孝雄三井物産特任顧問より「ブラジルのロジスティックインフラ」と題し、ブラジル三井物産またその他日本企業が実施する貨物輸送インフラ、都市交通インフラプロジェクトの説明や海外投資の促進を観点としたブラジル側への要望事項として長期プロジェクトファイナンス、特に海外から出資参画のためのコンプライアンスリスクに対するプロテクションメカニズムの導入、株主保証差し入れ債務の軽減に向けたBNDES融資調達等の改善を、また都市交通案件における連邦政府からの州政府への緊急財政措置等をあげ、ブラジル政府側の改善に向けた対応を期待する旨を述べた。

森田隆之NEC取締役執行役員常務からは「ICTを活用したブラジル社会への貢献」と題し、同社の技術を活用した土砂災害の実証プロジェクトや空港/鉄道通信、衛生通信、またICTを活用した医療、インフラ、農業プロジェクトの紹介が行われ、日本側最後のプレゼントとなる「日本におけるブラジルエネルギーセクターへの貢献の可能性」では富田弘PwCアドバイザリー合同会社インフラ・PPP部門ディレクターより説明が行われた。

午前の部クロージングでは、日本側挨拶として山田彰在ブラジル日本国大使より講評があり、今回の会合での提案事項が日伯双方できちんとフォローアップされインフラ投資環境の改善につながっていくことを期待、またブラジル側よりコウナーゴ企画省次官より今回の会合の成果が次回会合へと繋げるよう取り組んでいくことが述べられた。

お昼を挟んだ午後の部では、サンパウロ州およびパラナ州によるインフラプロジェクトの紹介プレゼンがあり、平行して日本企業及びブラジル政府の個別ミーティングの時間が設けられ関心企業が参加している。

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=43381