税制改革案を2023年7月第1週に下院で審議することになるとリベイロ下院議員が発表

税制改革法案を下院で担当するアギナルド・リベイロ下院議員(PP:進歩党)は、6月6日、ワーキンググループ(WG)が決定した主要ガイドラインの発表に際して、この提案を7月第1週の本会議で審議することを明らかにした。

同下院議員が発表した報告書は、商品サービス流通税(ICMS)とサービス税(ISS)、工業製品税(IPI)、社会統合計画負担金(PIS)、社会保障負担金(Cofins)を廃止して付加価値税(VAT)に統一、「税率は多く設定せず、例外もわずかなものにするとしている。またこのVATは、連邦VATと州/市VATの二重VATとするが、単一の税法にまとめ、消費地で課徴する。

リベイロ下院議員によると単一のVATを導入することが望ましいとしつつも、政治的に実現できないとして「効率性を損なわないモデル」の二重VATを提案することになったという。

「税制の簡略化という目的を果たすには、納税者の定義や税金の発生、課税ベース、税率の構造、完全な非累積性、特定の優遇制度などで、2つのバージョンの主な特徴が全て合致するように、これらの租税に対する憲法上の設計を可能な限り調和させる必要がある」と同下院議員は指摘した。

さらに「健康あるいは環境を害すると見做される財やサービスの消費を抑制することを目的にした」選別品目税(IS)も導入する。

またリベイロ下院議員は、ネウトン・カルドーゾ・ジュニオル下院議員(MDB:ブラジル民主運動)の要請を受けて文書を修正し、「完全な非累積性と、累進的性格を持たない税金に累積性が発生することがないようにクレジットの補償が行われ、法的安定性が確保されることを明言する」とコメントした。

また「新たな税制では、物品サービス税(IBS)の税クレジット(税額還付)は可能な限り迅速に支払われる。我々としては、60日は合理的な期間と受け止めている」という。

この他にも同下院議員は、「憲法改正案(PEC)で定義する完全な非累積性の定義について、納税者の経済活動に貢献するべく支払われるすべての税金に、運営の目的あるいは企業の事業目的にかかわらず全ての納税者の税負担に対する中立性を確保すべく還付の権利を有することを明確にするよう、改正することが推奨される」と指摘した。

発表された報告書では、他にも、前工程の企業による支払い証明がない場合でも、納税者は生産チェーンの前面で課される税額を控除する権利があるとも勧告した。ただし、この要件は自動的に課税できる税制が確立される将来においてのみ考慮されるべきであるとも指摘した。(2023年6月6日付けバロール紙)

Sabesp民営化を2024年7月までに実施へ

サンパウロ州政府が6月6日、サンパウロ州水道会社(Sabesp)の民営化に関する計画の枠組みを決定した。サンパウロ州環境インフラ・ロジスティクス局のナタリア・レゼンデ局長によると、2024年7月までに民営化計画を完了する予定としている。

6日にサンパウロ州政府と民営化に向けた調査を担当する国際金融公社(IFC)の間で締結された日程に基づくと、民営化計画の策定は3段階に分けて進められる。

まず2023年7月中旬までの「フェーズ・ゼロ」では民営化により期待される効果、すなわち料金の値下がりや上下水道の普及に向けた投資の前倒しのような、前提となる効果に対する分析が行われる。

同様に、このフェーズでは売却モデルも決定する。現政権では当初から、エレトロブラスと同様のモデル、すなわち州政府の持ち株を希釈する形で投資家を呼び込み、結果的に経営権を失う形での民営化を表明してきた。ただしレゼンデ局長は、最終的にどのような判断が下されるかについて言及を避けた。

これに続く「フェーズ1」では、2024年の年明けまでに事業構造の構築を行う。「この段階では、『バリュエーション(valuation:企業価値評価)』と事業性の検討、法律面からの検討、必要となる規制の策定、詳細な投資の計画といった作業を進める」。

州内各市との交渉も、このフェーズで集中的に進める。サンパウロ市を含む様々な市との契約でSabespが売却された場合に事業契約を破棄する条項が存在することを考慮して州政府は、Sabespが事業を展開するおよそ370市で、契約期間の延長や民営化に向けた承認の取り付けなど、契約の再交渉を進める。

この契約の再交渉は市長選の前に行われるため、複数のアナリストがこのプロセスが最も大きな困難に直面すると予想している。政党の方針や民営化への反射的な拒絶反応を示す有権者への配慮といった懸念がその背景にある。ただし一部のアナリストは、民営化によって確保される資金が現在の市政の成果とPRできることを考慮すると、むしろ追い風と受け止めている。

レゼンデ局長によると、「これまで多くの市と協議しており、州政府と歩調を合わせて民営化を推進するという方向にあると認識している。また協議の効率性を確保するため、交渉に関するガバナンスも確立させる方針だ」という。

これに続く「フェーズ2」が最終フェーズで、2024年の年初から7月中旬までを想定している。この段階では、意見招請と公聴会、投資家との協議を進めるロードショーが行われる予定。選択した民営化モデルに応じて、株式の売り出しまたは事業入札が実施される。

また比較的短期間で民営化を完了させることにレゼンデ局長は、実現可能な日程という見方を示した。「市場や銀行、ファンド、インフラ会社との協議は既に行われてきた。競って民営化に応募があるようにしたい」という。(2023年6月7日付けバロール紙)

伯政府が鳥インフル対策として2億レアルの特別予算を確保

農務省は、高原性鳥インフルエンザ対策に対して2億レアルの特別会計予算を確保した。暫定令第1,177号(MP Nº 1.177)として6日付連邦官報(D.O.U)で公示した。

動物検疫に関する緊急事態が全国で発布され、4州で野鳥の鳥インフルエンザ感染が確認されていることから、感染の対応と拡大防止に向けた活動が強化される。農務省によるとこの特別会計予算は、農畜産防疫統一警戒システム(Suasa)に振り向けられる。今回のMPはルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(PT:労働者党)とシモーネ・テベチ企画予算大臣が署名した。

カルロス・ファヴァロ農務大臣は、「鳥インフルエンザ対策は、その蔓延が国内の様々な業界に影響を与える可能性があるため、誰もが注意を払うべき問題だ。このため、ルーラ大統領による今回の措置と、保健省と環境気候変動省、ブラジル環境・再生資源院(Ibama)、防災団、さらに州政組織の取り組みは、この問題に対してより大きなリスクを負うことなく対処するための安心感を高めてくれるだろう」と期待を表明した。

鳥インフルエンザの感染への対応と拡大防止に向けた取り組みには、感染が疑われるケースの迅速な把握と検査、防疫措置がある。このため専門チームが、実地での活動を支援する。

現時点でブラジル国内では、飼育施設で家禽の感染は確認されておらず、引き続き国際獣疫事務局(OIE)により鳥インフルエンザフリーのステータスを維持、安全な消費が保証されている製品としてブラジルは輸出を継続している。(2023年6月7日付けバロール紙)

2023年の大衆車計画で最大8,000レアルの値引きが発生するとアルキミン副大統領が説明

ジェラルド・アルキミン副大統領兼商工サービス大臣は6月5日、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(PT:労働者党)が署名した自動車産業の振興に関する暫定令(MP)の詳細について説明した。

アルキミン副大統領兼商工サービス大臣によると、大衆車計画と呼ばれてきた自動車産業振興策は、4カ月にわたって導入する時限措置である。乗用車に限ると、低価格、環境対策、産業集約度の3項目が考慮される。「値引きは、1.6%から最大で11.6%に達する。すなわち、最も少額の値下がり分で2,000レアル、最大では8,000レアルに達する」という。

また大衆車計画として始まった今回の自動車産業振興策はトラックとバスも対象になる。この場合、政府は「車齢が20年以上の車両の買い替えを後押しするのが目的だ」という。

同副大統領兼商工サービス大臣によると、小型のトラックあるいはマイクロバスへの小規模融資は、3万6,600レアル。より大規模の融資はより大型のトラックが対象で、9万9,400レアルになるという。

このトラックの場合、この支援を受けるには、現在運用しているトラックを廃車にして買い替えることが条件になる。

新しいトラックの購入を希望する運転手や事業主らは、車齢が20年以上のトラックを購入したという書類と、車両を廃車にしたという証明書類の提出が必要になるという。

フェルナンド・アダジ財務大臣は今回、耐久財向けの信用市場は「近い将来に正常化する」という見方を示した。その上で同大臣は、乗用車とトラックの販売を促進するこのプログラムは、「財政的に持続可能」で、「プログラムはぜい肉をそぎ落とし、十分な資金的な裏付けのあるものだ」と説明した。

またこの振興策は、「今日(5日)から発行する」。

アダジ財務大臣によると、この減税措置は15億レアル規模となる。この歳入の減少を補填するため、連邦政府はディーゼル油に対する減税措置を部分的に前倒しして終了させる。

アダジ財務大臣によると、ディーゼル油を対象にした減税措置は今後90日で1リットル当たりの連邦税が0.11レアル引き上げられる。「ディーゼル油に見込む0.35レアルの減税終了分の内、今後90日で0.11レアル分を終了させる」という。

なお、ディーゼル油に対する連邦税の減税は、2023年末をもって終了する予定である。(2023年6月5日付けバロール紙)

アリーダ氏が第3期ルーラ政権の経済運営に懸念を表明

レアル計画の生みの親のひとりとして知られるエコノミストのペルシオ・アリーダ氏が、第3期ルーラ政権の発足から5カ月の経済運営を、「懸念すべきもの」と位置付けている。「新政権発足後の最初の足取りは、ブラジルが必要とするものと逆行するような取り組みやアイデアが盛り込まれてきた」と同氏は言う。

労働者党(PT)による政権運営でニーズに逆行するものとして同氏は、環境問題と外交政策の「後退」に加え、下水業界基本法の見直しと、エレトロブラスにおける表決規定の見直し、中央銀行への批判、大衆車への補助の再開、社会経済開発銀行(BNDES)による補助の再開を指摘した。

レアル計画の生みの親、アリーダ氏は、ブラジルが気候変動問題で主導的な役割を果たすためのエネルギー分野の取り組みの導入や、無駄を省いて非効率的な部分をそぎ落とす国家改革のような、新政権が取り組みを後回しにしている問題についても懸念を表明している。

一方で、2022年の大統領選の決選投票に際してアリーダ氏が現大統領で当時のルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ候補(PT:労働者党)に投票すると表明したことで、中道の有権者が同候補に歩みよるのを助けた可能性も指摘される。また同氏は政権移行スタッフの一員にもなったが、新政権のスタッフには参加しなかった。

こうした批判はあるものの、同氏は、PTを指示したことに後悔はしていないという。「ルーラ大統領を支持したことへの私自身の評価は、何も変わっていない。というのも、その指示は民主主義と人権、環境アジェンダなど、経済問題以上に重要と位置付けているものへの支持だったからだ」という。(2023年6月6日付けバロール紙)

農務省が6月5日にさらに2件の鳥インフルの国内感染を確認してこれまでの感染は24例に増加

農務省は6月5日、高原性鳥インフルエンザ(H5N1)のサンパウロ州内で初めての感染を確認した。トリンタ=レイス=デ=バンド(trinta-réis-de-bando:カボアジサシ)として知られるアジサシ科の海鳥で、州北部沿岸のウバトゥーバ市で見つかった。

この日は他に、リオデジャネイロ州ニテロイ市で同様に1羽のカボアジサシで感染を確認した。

この結果、国内で感染を確認したのは24例に達した。ただし、いずれも野鳥である。感染が確認された地域は、エスピリト・サント州とリオデジャネイロ州、リオ・グランデ・ド・スル州、サンパウロ州の4州になった。

また今回の発表に合わせて農務省は改めて、国内では家禽飼育においては鳥インフルエンザの感染は確認されておらず、引き続き鳥インフルエンザ・フリーのステータスを維持しており輸出への影響はないと強調した。同省によるとブラジル国内では、鶏肉と鶏卵の消費が引き続き安全な状態だとしている。

農務省によると、感染を確認した場合は動物保健局のIAAP(高原性鳥インフルエンザ)緊急対策計画に基づいて、感染確認場所から半径10kmにある家禽関連施設はすべて調査し対策に関する指導を行う。またブラジル国内における鳥インフルエンザ感染の検出と呼び監視、予防措置は、農務省と、シコ・メンデス環境保全研究所(ICMBio)及びブラジル環境・再生資源院(Ibama)を擁する環境省、保健省の連携により推進する。

また鳥インフルエンザの感染が確認された野鳥は、カボアジサシのほか、アトバー=パルド(atobá-pardo:カツオドリ)トリンタ=レイス=レアル(trinta-réis-real:アメリカオオアジサシ)、トリンタ=レイス=ボレアル(Trinta-réis-boreal:アジサシ)、トリンタ=レイス=デ=ビコ=ヴェルメーリョ(trinta-réis-de-bico-vermelho:ナンベイアジサシ)、コルジーニャ=ド=マト(corujinha-do-mato:スピックスコノハズク)、シスネ=デ=ペスコッソ=プレット(cisne-de-pescoço-preto:クロエリハクチョウ)、ガイヴォタ=デ=カベサ=シンザ(Gaivota-de-cabeça-cinza:ズアオカモメ)、フラガタ・マグニフィセンス(Fregata magnificens:アメリカグンカンドリ)、ビグアー(biguá:ナンベイヒメウ)がいる。(2023年6月6日付けグローボ・ルラル)

ルーラ大統領が6月5日に大衆車計画に関連して関係大臣らと協議(2023年6月5日付けバロール紙)

ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(PT:労働者党)が週明けの6月5日、ジェラルド・アルキミン副大統領兼商工サービス大臣とフェルナンド・アダジ財務大臣、ルイ・コスタ大統領府官房長官と、大衆車とバス、トラックを対象にした振興策について協議する。この協議は大統領府で9時から予定されており、政府関係者によると、債務の履行を遅滞する世帯を縮小させるデゼンローラ(Desenrola)と名付けた対策も議題に取り上げられる予定。

 

政府関係者が明らかにした情報によるとこの週末、連邦政府は、新車販売を後押しする連邦政府の対策で想定される歳入の落ち込みを補填する目的でディーゼル油への課税再開を前倒しする可能性があるとも報じられていた。

 

現在、燃料に対する社会統合計画負担金(PIS)及び社会保障負担金(Cofins)は、2023年12月31日までの時限措置として、課徴率が引き下げられている。財務省のスタッフが提示した新しい計画によると、課徴率の引き上げは2段階に分けて行われる。すなわち、第1弾が9月から、第2弾が2024年1月からである。

 

この課徴率の引き上げによる歳入の増加は30億レアルを見込み、新車販売の振興計画で失われると想定される歳入15億レアルを補って余りある規模となる。この場合、残りの15億レアルは、2023年の財政赤字の削減に向けられる。

 

商工サービス省(MDIC)がこのほど発表した大衆車計画の新構想では、政府は、当初発表していたように自動車業界に対して直接的に減税措置を実施するのではなく、顧客に対して割引価格で製品を提供するメーカーに対して税クレジット(税額還付の権利または別の税種目に対する税額控除の権利)を付与する方針。

 

この新たな構想では、車両価格に対して直接的に2,000レアルから8,000レアルのボーナスをメーカーが提供することで、当該メーカーに税クレジットの権利を付与するとしている。

ブラジル地理統計院(IBGE)が2023年4月のPIMを前月比-0.6%と発表(2023年6月2日付けバロール紙)

5月25日に連邦政府が自動車工業の振興策を発表し、経済活動の原動力として業界を再び位置付けるというものだが、2023年の工業生産に対して予想されている方向を切り替えることにはならないと見られる。4月に工業の物理生産量は市場の予想を上回る落ち込みとなり、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが発生する以前の水準を2%下回る2023年の工業生産は、年末まで横ばいで推移していくと見られる。

 

ブラジル地理統計院(IBGE)がこの日発表した4月の月例工業物理生産量調査(PIM-PF)は、前月比-0.6%。3月は、前月比+1.0%だった(今回の発表に合わせて当初の+1.1%から訂正)。4月を期末とする浮動四半期(2―4月期)で見ると、その前の期と比較して+0.1%となり、事実上の横ばいとなった。2022年4月と比較した場合、工業生産は2.7%減少した。

 

それほど大きな落ち込みではなかったものの、4月の生産量の減少についてゼツリオ・バルガス財団ブラジル経済研究所(Ibre/FGV)の研究員、ステファノ・パシーニ氏は、「重要な落ち込み」と位置付けた。同氏は、2022年第4四半期(10―12月期)に生産を拡大させた食品業界が4カ月連続で生産を縮小していることに言及した。

 

さらに同氏は、4月の自動車業界の数字についても、全国自動車工業会(Anfavea)がこれ以前に4月の自動車製造台数を-3.9%と発表していたことを考えれば驚くようなものではなかったと指摘した。PIM-PFでは、4月の自動車セグメントの生産量は、前月比-4.6%(季調済)だった。

 

同氏によると「この落ち込みは、割賦による購入と、非耐久財の消費を難しくする高金利と、この高金利が同様に投資への資金調達で経営者に二の足を踏ませるために機械設備の生産にブレーキが掛かるという、マクロ経済の状況を反映している」という。

 

パシーニ氏は、4月までに利用可能なIBGEのPIMのデータから、統計上の潜在成長率について2023年は横ばい、あるいは軽いマイナスで推移すると分析、直近の失われた生産を回復するのは難しいと指摘した。

 

連邦政府が発表した自動車業界振興策についてもパシーニ氏は、COVID-19のパンデミックが発生した時期には投入財の調達に関連して発生したボトルネックで消費にブレーキがかかり、現在では自動車の消費と所有の習慣が偶発的に変化していることへの理解という課題の発生している状況で消費が落ち込んでいる中、こうした問題に直面しているある業界で連邦政府は消費を過熱させようとしているという認識を示した。

 

パシーニ氏によると連邦政府の大衆車計画の効果のほどは不透明であり、工業部門に予想されている方向を変えるだけのものになるかは分からないという。その上で影響は、未だ発表されていない大衆車計画の詳細に左右されるのではなく、その他の条件、例えば通貨政策の進捗といったものからも受けるのだと付け加えた。

 

日本企業の後押しで2022年にMUFGが8,070万レアルの過去最高益(2023年6月5日付けバロール紙)

ブラジルに対する日本企業の投資の再開を受け、三菱UFJ銀行(MUFG)が2022年にブラジルで過去最高益を計上した。ブラジルに進出して100年以上の歴史を持つMUFGの2022年の利益は、過去最高益となる8,076万2,000レアルだった。

 

競合する欧米の銀行と比較するとMUFGのシェアは小さいが、それでも、着実に成長を達成している。

 

ブラジル部門の営業は、その売上の70%から80%を占める日本企業に直接的に関係している。2022年5月に就任して以降初めてとなるインタビューで同行の木阪明彦頭取は、「2022年は困難な1年だったが、同時に、多くの日本企業がブラジルで投資を行った。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック下でこれらの投資は凍結されていたが、ようやく、新たな勢いを取り戻し、投資は大きな可能性を取り戻した」と話す。

 

2022年のMUFGが2022年に確保した8,076万2,000レアルの利益は、前年比で+58.6%に達する。同銀行の国内における信用ポートフォリオは24億0,100万レアルであるが、この数字は国内のエクスポージャーをすべて示しているわけではないという。というのも同行の信用ポートフォリオの大部分は米国および日本で貸借対照表に表示されているからだという。なお、総資産は2022年12月末時点で308億6,700万レアルである。

 

木阪頭取によると、ブラジルでは法律で定められた最低限の配当を行い、利益の大部分を国内事業に再投資した。これは、ブラジルに対する同グループの信頼の証だという。

 

また日本企業に加えて同銀行はその他の国々の多国籍企業、さらに最近では、同行の顧客のサプライヤー向けにサプライチェーンへの融資にも進出している。セグメント別では、MUFGは、エネルギー業界と自動車業界、化学業界、コモディティー関連商社に軸足を置く。

 

「日本企業は多くの場合で信用をそれほど必要としていないが、サプライヤーは別だ。従って、日本企業の支払いを担保として融資している。これは日本には存在しない、ブラジル市場の興味深い構造です」と同頭取は言う。

 

また2023年の年明けに発生したアメリカーナス(Americanas)の経営危機は、取り付けリスクなど経営には影響していない。国内の銀行が大企業による債務の履行遅滞の増加に直面し始めているものの、MUFGでは同様の状況を確認していない。「日本企業の子会社に融資しており、本社との関係は極めて良好のため、問題は全く発生していない」と同頭取はコメントした。

 

アジア市場と米国市場で強みを持つMUFGだが、木阪頭取はブラジルを、成長の可能性が最も大きい市場のひとつだと位置づけている。「日本では市場が縮小して公民の高齢化も進んでいる。アジアのその他の国々では、台湾をめぐる緊張や北朝鮮のリスク、ロシアとウクライナの戦争など地政学的に大きな問題を抱えている。ブラジルは国土も広く、人口も大きく天然資源が豊富だ。そして日本企業のシェアは小さいものの、これから拡大していくだろう」という。

 

さらに同頭取は、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する基準達成に向けた取り組みは、同銀行にとって大きな関係のある問題だと指摘した。2023年5月には、ネオエネルジア(Neoenergia)と国際協力機構(JICA)、MUFGが、ネオエネルジアがコンセッションを受けている事業エリアで電力供給を拡大するため、およそ7億0,340万レアルの融資契約を締結した。「この種の取引を強化していきたい」と木阪頭取は話す。

 

MUFGは現在、ブラジル国内で220人の従業員を抱えるが、この内、日本人は頭取自信を含めてわずか9人である。同頭取によると日本企業は世界の他の国々の企業と比較すると経営判断に時間をかけ、長期投資に重点を置く社風があると話す。欠点とも言われることがあるが、この企業文化がポジティブな結果をもたらすこともあるという。

 

2008年に国際金融危機が発生した際、MUFGはサブプライム・ローン(米国の住宅ローンに関連した証券)とその関連市場などの、より複雑なデリバティブ市場で事業を展開していなかった。結果として、リーマン・ブラザーズ(Lehman Brothers)の破綻後、MUFGはチャンスを生かしてモルガン・スタンレー(Morgan Stanley)銀行の株式の20%を購入、現在もこの株式を保有している。その後の回復を受けて、その持分は現在、280億ドル以上の価値を有する。米国のパートナーらと仕事をした経験のある木阪頭取は、日本との違いを次のように指摘した。「日本企業は農家のようなもので、毎年少しずつ種を蒔く。米国企業はハンターだと言える。彼らは常にチャンスを伺い、素早くものにしようとする」。

 

なおブラジルでMUFGは、1973年に当時の三和銀行の戦略的パートナーシップの締結によって確保したブラデスコ(Bradesco)銀行の株式の1.25%を保有する。「投稿はブラデスコ銀行と非常に良好な関係を構築しており、彼らに顧客を紹介し、知識の交換も行っている。2022年末には、共同で20億レアルのスカラ・データ・センターズ(Scala Data Centers)のグリーンボンドを発行した」という。

 

MUFGはおよそ360年の歴史を持つ世界第4位の金融コングロマリットであり、幾度もの合併と買収を通じ3兆3,000億ドル以上の資産を持つ。1996年に東京銀行と三菱銀行が合併、その10年後にUFJ銀行と経営統合した。東京銀行の前身である横浜正金銀行は、日本人のブラジル移民を受けて1919年にブラジルに進出。現在の日本では、MUFGと三井住友銀行、みずほ銀行の3大金融コングロマリットが存在する。いずれもブラジルに進出しているが、その中でMUFGは最大手である。