投稿者: CCIJB
2000年下期業種別部会長懇談会-貿易部会
● 上期は8.2億㌦の黒字 |
輸出が伸びれば原材料輸入も伸びる
これはブラジル貿易の宿命
能澤:貿 易部会から発表させていただきます。副題の方ですけれども、時間的に部会発表が10分の中で収まらないかと思いますので、その場合には、副題をフリーディ スカッションのほうで述べさせて頂きたいと思います。われわれ貿易部会は7月20日に部会を開き次のようにまとめました。
まず上期の 回顧ですが、概況につきましては、先ほど田中先生が全部言われてしまったので、私が今更付け加えることは殆どございませんが、一言で申し上げますと、「輸 出が凄く伸びた」ということです。数字は、1月―6月で申し上げますと輸出が261億5300万ドル、輸入が253億3400万ドルで、輸出は前年同期比 16.5%と相当伸びております。
ただ、田中先生がおっしゃったように輸入も非常に伸びており、これが前年同期比やはり9.8%も伸 びています。貿易収支で見ますと、今年の1月―6月はわずか8億1900万ドルの黒字になりました。昨年の同期が6億2000万ドル赤字ですから、差し引 き14億3900万ドルの黒字化を達成したわけです。ただ、当初言われていた目標に比べますと、これは非常に低い数字であると言わざるを得ません。
ただ特筆すべきは、過去12ヵ月の累計という統計の取り方をしますと、今年6月の時点でやっと輸出・輸入のバランスが出超、つまり黒字に転じたというこ とで、これは96年の6月以来のことです。従って、過去12ヵ月の累計で見てもブラジルはやっと黒字体質に変わってきたかな、ということが言えると思いま す。
それから、上期の輸出増加の原因ですが、これは昨年1月に切り下げがあったものの、なかなか効果が出ず、いろいろ言われたわけでございまが、いわゆる Jカーブ効果ということで、やっと工業製品の輸出が数量的にも伸びてきました。これがかなり大きく寄与しております。
一方、ブラジルの伝統的な輸出産品、一次産品ですが、これは国際市況がまだ回復しない。あるいはコーヒーのようにさらに悪化してしまったという事もありまして、思ったほど増加しておりません。
それから輸入はブラジルの産業構造の宿命でもありますが、“輸出が伸びれば同時に原料中間財輸入も伸びてしまう”ということで、1月―6月は、資本財も 伸びておりますが、やはり原料中間財が相当大きく伸びています。特に原油価格の高騰が大きな影響を与えており、数字で申し上げますと、今年の1月―6月の 原油輸入はこれが数字を丸めますと15億ドル、昨年同期の約9億4000万ドルと比べますと、差が約5億5000万ドルの増加となり、これが相当大きく予 想を狂わせています。原油の輸入がこの様に対前年比60%近く増えこのため、貿易収支黒字も結局8億1900万ドルに留まったと言うことです。
もしこれがなければ、さらに5億、6億ドルは改善していたはずで、そうなると政府が当初見通していた数字に近づくのかな、と見ています。
摩擦はあるもののメルコスル貿易は伸びている
それから概況で申し上げると、メルコスールとの取り引きが気になるところですが、これも輸出、輸入ともに順調に伸びております。輸出が19%、輸入が12%伸びております。
メルコスールの内訳はほとんどがアルゼンチンとの貿易ですが、現在、為替問題を中心にアルゼンチンとかなりコマーシャルな面でもめております。
では実態はどうなのかと中を見ますと、当然ブラジルからアルゼンチンへの輸出、これは伸びております。前年比16%伸びております。一方、輸入のほうは 本来、アルゼンチンの主張からすると激減している筈ですが、逆にこれもやはり13%伸びている。伸びている中身は原油、自動車、トウモロコシ等。今朝の新 聞でもこちらの農務大臣が鶏肉問題を中心にかなりトーンを上げておりましたが、政治的なゼスチャーはともかく、実態ベースでは、もうメルコスール貿易は止 められない。どちらかというと、今まで「ブラジルは止められるけど、アルゼンチンは止められない」というスタンスだったと思いますが、ブラジルにとって も、これはもう止められない、ということで、政治的なギクシャクはあるものの、メルコスールは確実に伸びると見ています。
工業製品の輸出伸びる
それから1月―6月で見ますと、昨年は、メルコスール貿易は4000万ドル赤字でした。しかし、今年1月-6月は1億4000万ドル黒字になっていま す。昨年は上期赤字、下期黒字で通年で6000万ドルの黒字というパターンでしたが、今年は上半期から一応は黒字になっています。ただ実態は、VASP向 け航空機のリースを途中で、引揚げたということがありまして、この航空機2機がウルグアイへの輸出に含まれている。これが1億6000万ドルありまして、 これを引き、実態の商売収支はどうなったのかと言いますと、実態は上期でやはり2400万ドルの赤字です。ただ、申し上げた通り、傾向としては輸出がかな り伸びていますので、昨年同様のパターンで下期にまた盛り返すのではないかな、というふうに思います。
輸出の内訳
それから輸出、輸入に分けて発表しますと、内訳が、まだSECEXの資料が1月―5月間しか来ておりませんので、ここから1月―5月で申し上げますが、 輸出の中で特筆すべきは工業製品等が2ケタの伸び、一方、一次産品は先ほど申し上げたように市況の低迷もあり、前年比3.5%しか伸びていないということ でかなり低迷をしております。
輸出品目の主なものは工業製品。その主なものを申し上げますと、輸送関連機器、例えば航空機が 105%、自動車が66%、自動車用のシャーシが70%の伸び。それから通信機器、これは携帯電話ですが、146%と大幅に伸びています。繊維が29%、 化学品25%、等々がありまして、為替の切り下げもありましたがそれを、アドバンテージにして伸びている。それから一次産品では鉄鉱石、大豆、煙草等々が 順調に伸びておりますが、コーヒーが30%落ちています。その他の品目は概ね順調に伸びております。
それから地域別で見ますと、アメ リカ、ALADI、EU、アジア、いずれも増加しておりまが、特筆すべきはALADIが非常に大きく伸びています。 ALADIだけでみると、伸び率が前年同期比30.3%です。例えば、どういう所が伸びているのかと申し上げますと、チリ向け61%、ベネズエラが 44%、それからメキシコに至っては101%の伸びになっています。アルゼンチンが16%ということで、これらのかなりの部分が自動車の輸出だと言われて います。
今年は10-20億ドルの貿易黒字予想
自動車は強力な輸出商品になった
後ほど宇治さんのほうからご説明があると思いますけれども、1月-6月の自動車生産が約80万台、このうちに輸出されたものが17万台ということで 20%以上が実は輸出されている。自動車輸出は対前年同期比66%も増えておりますので、いつの間にか自動車がブラジルの強力な輸出商品になって来ている ということが言えると思います。
輸入の内訳
それから輸入に参りますが、これもやはり1月―5月で申し上げますと、やはり“輸出が伸びると原料中間財輸入が増える”宿命でございますが、特に先ほど 申し上げました燃料、これが1月―5月の時点で既に50%の伸びとなっています。それからその他の中間財は23%の伸びとなります。石油以外では、詳しい 中身は分かりませんが、中間財で鉱物が50%、中間資材、部品、これ自動車部品関連が20%、電子部品が71%と、合計しますと50%にもなります。
これはブラジル経済の回復と、それから先ほど申し上げた輸出の伸びに伴うものだと思います。それからこれはいい傾向だと思いますが、消費財の輸入が若干 減少して来て、食品が11%減、薬品が7%減、輸入自動車に至っては46%も減少している。それから資本財は6月、7月は増えていますが、1月―5月の時 点だけでは前年度比28%、減少しています。
あと地域的に申し上げますと、これもやはり先ほどのALADIとの伸びが非常に増えております。それから、前回の発表と同じですけれども、アフリカからの輸入が非常に伸びており、53%伸びています。これはやはり、アフリカからの原油輸入です。
通期は10~20億ドルの黒字?
下期の予想は、先ほど田中先生がおっしゃったように年初の通期見通しが50億ドルから44億ドル、さらに28億ドルへと貿易収支黒字予想が下がってきた わけですが、部会でのご意見をまとめた数字は、今年は10から20億ドル程度の黒字であろうということです。ただ原油については下期は、去年下期には既に 値段が上がっておりましたので、上期ほどの伸び率にはならないだろうという事で、やはり通期で10から20億ドルがいいところではないかな、という予想を しております。
資本財輸入更に増えよう
それから輸出について、やはり昨年同様に増加が見込まれるだろうということで、この理由として米国、それからEU,ALADIへの輸出が相手地域の経済 が引続き好調であるということで、これ以上大きく落ちる様子はないだろうと思われる事。それから一次産品については、下期の輸出がちょっと難しいだろうと 見ています。
それからさきほど部会の懇談会があったのは7月20日と申し上げましたが、たまたまその時、霜の影響が相当出ておりまして、特にコーヒー等、農産物の霜害の影響が分らないので、この辺はちょっと要注意だとの結論に至っております。
それから輸入については、輸入原油価格増は非常に不透明であるけれども、これから資本財の輸入がますます見込まれるであろうと思われます。その理由とし て特定の産業分野については能力いっぱいで動いているわけで、そういうところに対して政府が、輸入税の減免措置等出しておりますので資本財輸入は増え、輸 出も伸びるに違いないと思われます。
貿易を支配しますのはマクロ数字でございますが、部会の結論だけ申し上げますと、経済成長率は3 から4%ぐらい、インフレが6から7%、為替はインフレが安定することからR$1.80~1.85で推移するだろう。年末でもR$1.90に収まるのでは ないかという結論を出しました。
金利については、国内のインフレも若干上がってきているし、ドルのインフレもあるわけで、せいぜい下がっても16%が限度であろうという結論です。
国際収支については、貿易収支が改善したことによって経常収支も改善してきており、海外からの直接投資も順調に入って来てますので、おそらく経常収支の赤字分はカバーされるだろうと思われ、総合収支も2000年度は問題ないだろうと見ております。
かなり急ぎましたけれども以上でございます。
司会:ありがとうございました。それでは引続き化学部会の矢島さんお願いします。
2000年下期業種別部会長懇談会-貿易部会(レポート)
ブラジルの貿易動向
1.2000年上期の回顧
総括
2000年上期の貿易収支は8.2億㌦の黒字を計上した。前年同期は6.2億㌦の赤字であり、約14億㌦の改善となる。輸出・輸入共に前年同期比で増加しているが、輸出の伸びが輸入を上回った結果である。(また2000年6月までの過去12ヵ月の累計でも輸出517億㌦、輸入514億㌦で約3億㌦の黒字となったが、これは96年6月以来の黒字化である。)
輸出増加の主因は、発表されている1-5月までの貿易収支の内訳でみると、工業製品の増加であり、昨年の大幅為替切り下げのJカーブ効果ともいえる。一方、一次産品の輸出は、価格が期待されたほど回復せず増加幅は少ない。
輸入は景気の回復による原料・中間財輸入の増加と原油価格の高騰が増加の主因である。
メルコスルとの貿易収支も、上記と同様に為替切り下げによる輸出の伸びが、景気回復による輸入の伸びを上回り、昨年下期に続き黒字である。
2000年上期の貿易実績(1-6月) (単位:億㌦) | |||
2000年1-6月 | 1999年1-6月 | 増 減 | |
輸 出 | 261.53 | 224.51 | 16.5% |
輸 入 | 253.34 | 230.71 | 9.8% |
貿易収支 | 8.19 | △ 6.20 | +14.39億㌦ |
メルコスルとの貿易収支の推移:2000年と1999年の1-5月の比較(単位:億㌦) | ||||||
輸 出 | 輸 入 | 貿易収支 | ||||
対メルコスル | 対アルゼンチン | 対メルコスル | 対アルゼンチン | 対メルコスル | 対アルゼンチン | |
1999年 | 26.1 | 20.3 | 26.5 | 22.8 | △ 0.4 | △ 2.5 |
2000年 | 31.1 | 23.6 | 29.7 | 25.8 | 1.4 | △ 2.2 |
増減率 | 19.0% | 16.0% | 12.0% | 13.0% | – | – |
輸出
輸出は工業製品の伸びが主因で、主要品目では特に輸送関連機器(航空機+105%、自動車+66%、自動車用シャシー+70%など)および通信機器(146%)等の増加が大きい。繊維(+29%)、化学品(+25%)、靴(+16%)の増加も目立ち、為替切り下げの効果といえる。半製品ではパルプ(+42%)、鉄鋼半製品(+35%)、アルミ(+17%)などが目立つ。
一次産品では、鉄鉱石(+14%)、大豆粕(+20%)、煙草葉(+16%)などが伸びたが、コーヒー(△30%)が数量減で減少したこと、その他の品目では概ね数量は伸びても価格が下落ないし横這いとなっているために、全体としては伸び悩んでいる。
地域別では、主要輸出先であるEU・ALADI・米国、アジアいずれも増加したが、特にALADI向けの伸びが大きい。商品分野では工業製品が中心で、国別ではアルゼンチン向け(+16%)を中心に、メキシコ(+101%)・チリ(+61%)・ベネズエラ(+44%)向けが増加している。
2000年1-5月の輸出構成 (単位:百万㌦) | |||
2000年 | 1999年 | 増減率(%) | |
一次産品 | 4,711 | 4,553 | 3.5 |
工業製品 | 15,976 | 13,242 | 20.6 |
半製品 | 3,386 | 3,026 | 11.9 |
完成品 | 12,590 | 10,216 | 23.2 |
その他 | 605 | 343 | 76.4 |
合 計 | 21,292 | 18,138 | 17.4 |
輸出の地域別内訳(1999年1ー5月) (単位:百万㌦) | |||||
地 域 | 2000年 | 1999年 | 増減率(%) | 構成率(%) | |
2000 | 1999 | ||||
EU | 6,182 | 5,581 | 10.8 | 29.0 | 30.8 |
ALADI | 5,065 | 3,888 | 30.3 | 23.8 | 21.4 |
メルコスル | 3,106 | 2,606 | 19.2 | 14.6 | 14.4 |
その他ALADI | 1,959 | 1,282 | 52.8 | 9.2 | 7.1 |
米 国 | 4,937 | 4,014 | 23.0 | 23.2 | 22.1 |
アジア | 2,277 | 2,086 | 9.1 | 10.7 | 11.5 |
日 本 | 920 | 771 | 19.5 | 4.3 | 4.3 |
東 欧 | 307 | 397 | △ 22.8 | 1.4 | 2.2 |
アフリカ | 427 | 477 | △ 10.4 | 2.0 | 2.6 |
中近東 | 420 | 597 | 29.4 | 2.0 | 3.3 |
合 計 | 21,292 | 18,138 | 17.4 | 100.0 | 100.0 |
輸入
輸入は前年同期比で11%増加したが、原料・中間財の増加および原油価格の高騰が主因である。最大の増加要因である原油(+82%)は数量が23%減少したにも拘わらず価格が135%上昇した。原料・中間財では鉱物(+50%)、中間資財・部品(+50%、特に自動車等の部品+20%、電子部品+ 71%)などが増加しており、ブラジルの経済回復に伴うものと言える。消費財の減少傾向は昨年から継続しており、食品(△11%)・薬品(△7%)・自動車(△46%)等の減少が目立つ。資本財は工業用機械設備輸入の減少(△28%)が主因で減少しているが、輸送用機器(+11%)、工業機械用付属品(11%)・部品(+4%)、事務用機器(11%)などは増加している。
地域別では、ALADI・アフリカ・東欧・中近東が増加したが、いずれも原油・ナフサの輸入増によるものである。アルゼンチンは自動車・トウモロコシも増加要因である。アジアはマレーシア・タイ・台湾・韓国・中国からの輸入が増加したが、中心は通信機器・電子部品などである。EUはドイツ・イタリアからの自動車・資本財の減少などにより減少した。
2000年1-5月の輸入構成 (単位:百万㌦) | |||
2000年 | 1999年 | 増減率(%) | |
資本財 | 5,021 | 5,350 | △ 6.1 |
原料・中間財 | 10,866 | 8,871 | 22.5 |
消費財 | 2,712 | 2,992 | △ 9.4 |
非耐久消費財 | 1,541 | 1,663 | △ 7.3 |
耐久消費財 | 1,171 | 1,330 | △ 11.9 |
燃 料 | 2,095 | 1,401 | 49.5 |
計 | 20,694 | 18,614 | 11.2 |
輸入の地域別内訳(1999年1ー5月) (単位:百万㌦) | |||||
地 域 | 2000年 | 1999年 | 増減率(%) | 構成率(%) | |
2000 | 1999 | ||||
EU | 5,564 | 5,799 | △ 4.1 | 26.9 | 31.2 |
ALADI | 4,298 | 3,543 | 21.3 | 20.8 | 19.0 |
メルコスル | 2,969 | 2,647 | 12.2 | 14.3 | 14.2 |
その他ALADI | 1,329 | 896 | 48.3 | 6.4 | 4.8 |
米国 | 4,874 | 4,688 | 4.0 | 23.6 | 25.2 |
アジア | 2,971 | 2,424 | 22.6 | 14.4 | 13.0 |
日本 | 1,055 | 1,023 | 3.1 | 5.1 | 5.5 |
東欧 | 401 | 224 | 78.9 | 1.9 | 1.2 |
アフリカ | 1,084 | 710 | 52.7 | 5.2 | 3.8 |
中近東 | 557 | 311 | 79.3 | 2.7 | 1.7 |
合 計 | 20,694 | 18,614 | 11.2 | 100.0 | 100.0 |
2.2000年下期の貿易収支予想
総括
政府は今年の貿易収支予想を昨年末の当初目標50億㌦から44億㌦、更に28億㌦に下方修正したが、民間の調査部門では10~20億㌦程度というのが予測の中心である。
昨年は為替切り下げで期待された工業製品の輸出が増加せず、一次産品輸出も価格の下落で減少したため、今年は昨年対比で工業製品の輸出増加および一次産品の価格回復による増加が期待された。しかし現時点では下期もコーヒー等一部商品を除き一次産品の価格の大きな回復は期待出来ないため、上期と同様に工業製品輸出による増加が中心となること、一方、輸入は景気回復の進展などにより、上期以上の増加も見込まれることから、今年の貿易収支は上記のとおり10 -20億㌦程度の黒字と予想される。
輸出
下記の理由で昨年より増加が見込まれる。
1)上期の輸出増加の中心である、工業製品の米国・EU・ALADI向けの輸出は、相手地域の経済環境から考えると下期も継続が見込まれる。但し上期以上の大きな伸びの材料は考え難い。
2)一次産品は昨年に比べて価格の大きな回復が期待できないことから、下期での輸出増への貢献は期待困難である。但しコーヒーは現下の寒波による霜害の影響が注目されており、市場も神経質な値動きとなっているため、現時点では予測が困難である。
輸入
昨年に比べて、上期と同様にブラジルの経済回復および石油価格の値上がりによる増加が見込まれる。更に下期には、一層の金利低下・景気回復による原料・中間材の輸入増が見込まれることに加えて、生産能力が限界にきている産業分野の資本財の輸入税減免措置が検討されていることから、資本財輸入の増加も見込まれる。
主要輸出品目(1-5月)(前年同期対比)(FOB100万ドル) | |||
品 目 | 2000年 | 1999年 | 増減率(%) |
一次産品
鉄鉱石 工業製品 半製品 完成品 その他 合計 |
4,711
1,249 15,976 3,386 12,590 605 21,292 |
4,553
1,100 13,242 3,026 10,216 343 18,138 |
3.5
13.5 20.6 11.9 23.2 76.4 17.4 |
主要輸入品目(1-5月)前年同期対比 (FOB100万ドル) | |||
品 目 | 2000年 | 1999年 | 増減率(%) |
資本財
工業用機械 原料・中間財 化学品薬品 消費財 非耐久消費財 耐久材 乗用車 合計 |
5021
1509 10866 3087 2712 1541 1171 316 20694 |
5350
2085 8871 2683 2992 1663 1329 580 18614 |
△ 6
△ 28 22.5 15.1 △ 9 △ 7 △ 12 △ 46 11.2 |
背景となるマクロ経済見通し
- 経済成長率:3-4%。金利の一層の低下により、昨年末からの経済回復の進展が見込まれる。
- インフレ:6-7%程度。
- 為替:インフレが安定すると見られることからR$1.8 -1.85で推移し、年末でもR$1.9 程度までにとどまると見られる。
- 金利:インフレが上昇しないこと、米国金利も安定感が期待されること、国際収支面で海外からの資金導入の為の金利高目維持の圧力が少ないことから、金利の一層の引き下げが見込まれる(但し一定の内外金利差を設けておく必要から引き下げには限度があり、16%程度までとみられている)。
- 国際収支:貿易収支改善により経常収支は昨年より改善。資本収支も海外からの直接投資が新規民営化および一般産業向けに引き続き順調に流入し、経常収支赤字は十分カバーされると見られることから外資繰りは余り問題ないと見込まれる。
日本との主要品目別貿易内容
日本向け輸出(1999年1ー5月) (単位:百万㌦) | |||
2000年 | 1999年 | 増減率(%) | |
アルミニウム | 197 | 93 | 110.6 |
鉄鉱石 | 186 | 162 | 15.3 |
パルプ | 90 | 60 | 49.8 |
コーヒー豆 | 70 | 80 | △12.5 |
鶏肉 | 56 | 54 | 3.7 |
合金鉄 | 45 | 50 | △ 8.9 |
オレンジジュース | 28 | 27 | 3.6 |
化学品 | 19 | 5 | 270.3 |
生糸 | 18 | 17 | 9.3 |
ニッケル電極 | 16 | 12 | 39.0 |
その他 | 194 | 210 | △ 7.7 |
合 計 | 920 | 770 | 19.5 |
日本からの輸入(1999年1ー5月) (単位:百万㌦) | |||
2000年 | 1999年 | 増減率(%) | |
通信用送受信機 | 88 | 85 | 3.5 |
チップ・電子部品 | 64 | 52 | 24.3 |
自動車部品 | 51 | 53 | △ 4.0 |
ベアリング等機械部品 | 46 | 33 | 41.1 |
化学品 | 43 | 26 | 63.6 |
内燃エンジン・部品 | 39 | 33 | 18.8 |
検査機器類 | 31 | 22 | 41.8 |
乗用車(CKDを含む) | 24 | 23 | 3.8 |
電力用機器 | 21 | 15 | 39.4 |
モーター発電機・変圧器 | 20 | 15 | 29.3 |
その他 | 629 | 667 | △ 6.0 |
合 計 | 1,055 | 1,023 | 3.1 |
2000年下期業種別部会長懇談会-電気電子部会
●為替安定、インフレ抑制、金利低下効くー家電、消費財 |
順調に回復した家電、耐久消費財
江口:では電気電子部会のほうから報告させていただきます。私どもは4つの分会からなっており、それぞれの分会につきまして「2000年の上期の回顧と2000年下期の展望」について報告させていただきます。
まず第1分会の家電及び耐久消費財の業界ですが、2000年に入りまして為替の安定、インフレの抑制、それから金利の低下、ということから市場が順調に 回復してきました。カラーテレビでは99年上期比で約30%増えて220万台。オーディオが40%増えて100万台というふうに増えています。ただこれは 99年上期が非常に悪く、比率では伸びておりますが、台数的にはまだまだ97年の最盛期には及んでおりません。この中でビデオデッキが99年上期比で5% 減って53万台となっておりますが、これはデジタル・ビデオ・ディスク〔DVD〕が増えているためです。普通の国では、ビデオデッキで録画して見るという のが普通の使い方なのですが、ブラジルではほとんど録画をしないで再生に使っているということから、DVDが同じ目的に使われて、ビデオの伸びが減ってい るという事になります。
第1分会の各社の売上の平均は、昨年同期比で48%増となっております。
下期の展望ですが、このまま順調に推移すれば市場も回復するだろうということで、上期ほどではないですが下期の売上げは大体、99年下期比約10%増というふうに見ております。
順調に伸びる部品業界
電力にぶいが、通信好調
続きまして第2分会の部品業界ですが、携帯電話が非常に大きく伸びまして、中には99年上期比で約3倍も伸びたという部品メーカーさんもあります。それ に引きずられましてオーディオ・ビデオからCATV、自動車関連、いずれも順調に伸びており非常にいい業績であったということで、第二分会の各社の平均売 上は99年上期比で58%増となっています。
下期もおそらくこのまま順調に推移すると思われますが、携帯電話がヨーロッパ、あるいは 日本でやや在庫がたまり始めたようです。今まで部品不足で生産に追いつかなかった状況だったんですが、そういう状況が見えたために、この下期はこういった 売れ筋商品の推移が非常に注目されるということを入れまして、部品メーカーでは下期の売上が大体99年下期比で約18%増だろうというふうに予測しており ます。
第3分会の通信・電力・産業の分野ですが、通信関連が非常に大きく伸びてきております。これは民営化された電話会社が、 2001年末までにそれぞれの電話網整備の目標値を達成しなくてはいけないためです。この期限があと1年半と迫ったために非常に大きな発注をしておりま す。それで各メーカーは97年のピークを上回る受注を抱えて設備の増強、同業他社の買収などによる生産増を図っております。しかしながら、日本での部品不 足あるいはブラジルでの通関ストがあったために生産が追いつかず、売上が伸ばせなかった企業もありました。
電力関係は送電、配電が政 府プロジェクトで伸び悩んでおりますが、変電や配電、こちらのほうが比較的に安定に成長しております。この分会各社の平均売上は99年上期比で19%増と なっております。2000年下期もおそらくこのまま、よほどの事がない限り通信関連は非常に大きな伸びが期待されておりまして、下期の売上は昨年同期比で 約38%増だろうと予測しております。
IT、OA投資のメリット享受 ― 事務機器
第4分会の精密・事務機器・輸入販売ですが、やはり同じ様な理由、それに加えましてIT投資、それからオフィス・オートメーションが進んで参りまして、 こういった事務機器の需要が増えてきました。それからミシンの業界でも、高級ミシンの輸入関税が引き下げられたことで需要が増えまして、こちらも99年上 期比で平均36%の売上増となっております。
下期もおそらくこのまま堅調に市場が回復するということで、平均19%の増という予測を立てております。
私どもの部会では、各社集まる前にアンケートをとっており、その中で特徴的なことがありましたので、一つだけご紹介しておきます。アンケートの中で販売 構成比の中での輸入品販売と現地生産品販売比率をお尋ねしていますが、この数字はいままで殆ど変わらなかったのですが、99年上期比で2000年の上期 は、現地生産がマイナス15%、輸入販売がプラス17%ということで大きな変化がありました。皆さんの意見では製品が大きく変わって例えばフラットテレビ をいま輸入しているとか。普通の曲面のテレビの生産が落ちているとか、あるいは客先が日本でしかないような部品の要求があったからとかいうことで、一時的 なものではないかという見解でした。
対伯投資はばむ点
高金利、装置組立優遇、アンフエア見過ごし
最後に「対伯投資を伸張させるために何が必要か」ということで簡単にご報告いたします、逆に考えますと、何が問題で対伯投資が出来ないかということなの ですが、まず一つはブラジルコストといわれる税制あるいは高い金利の中で、いわゆるメーカーとしては数%の利益しかあげておりませんので、事業の一部を借 金でまかなっていると、そのコツコツと貯めた利益、あるいは原価低減が吹っ飛んでしまいます。それから今の税制恩典制度がいわゆる装置組み立て産業といい ますか、こちらのほうの優遇になっておりますので、素材産業、部品産業にとっては、ブラジルで事業を行う環境にないということになります。やはり日本とし ても、リターンがあるのかと言う事からすれば、こういったいろんな問題が障壁になっているのではないか、ということになります。
その 次がこれは複写機業界の話ですけれども、アメリカの有名な複写機会社イコールこの国では法律と言われておりまして、この壁がなかなか破れない。この会社は アメリカでレンタルバックをした旧式の機械をこちらで再生をして、非常に安くレンタルしています。ところが日本は最新鋭の機械を持ってきますのでどうして も値段の差ができると。そういったところをいろいろつつくんですけれども、先ほど申し上げましたようにその会社イコール法律となっておりますので、なかな か自社の事業が伸びないという事になります。こういうことで皆さんの意見を簡単に申し上げますと、ブラジルコストが常識範囲になって非常に平等に競争でき る環境にならなければ、日本の本社としてもこちらに投資しようということにならないのではないか、という意見がありました。以上です。
司会:どうもありがとうございました。今までの各部会の中で一番好調な部会だったように思います。それでは最後から二つ目、建設・不動産部会の林部会長お願いします。
2000年下期業種別部会長懇談会-電気電子部会(レポート)
電気電子部会は次の4つの分会から構成されています。
第一分会「家電および耐久消費財」
(パナソニック・ド・ブラジル 喜多川雅彦)
第二分会「部品」
(TDK・ド・ブラジル 鈴木雅博)
第三分会「通信・電力・産業」
(Industrias Hitachi 出石峯敏)
第四分会「精密・事務機器・輸入販売」
(ミノルタ コピアドーラ・ド・アマゾナス 北野孝明)
( )内は分会長
本レポートは各分会の回顧と展望及び副題について報告します。
1.第一分会「家電および耐久消費財」
(1)00年上期の回顧
2000年に入り為替の安定、インフレの抑制、金利の低下など経済が安定に推移すると共に市場が回復してきた。
カラーTVは99年上期比30%増の220万台、オーディオは70%増の100万台と市場が回復してきた。ビデオデッキは99年上期比4%減の53万台と減少した。これはDVDが急速に伸び、ビデオデッキの分野と競合するためと判断している。
AV、家電の業界では、市場は99年に底を打ち上昇に転じたと判断している。99年上期は通貨の切り下げの影響で、1~4月は正常な販売活動が困難な状況にあったことから、00年上期は業績が大きく伸びている。
第一分会の各社の売上は昨年同期比で平均48%の増となった。
(2)00年下期の展望
金利が一層低下したことやこのまま政治、経済が安定に推移すれば、市場も堅調に回復するだろうと予測している。
下期の需要は99年下期比でTVは9%増の260万台、オーディオは5%増の130万台、ビデオデッキは10%減の53万台と予測している。第一分会の各社では、00年下期の売上を99年下期比で平均約10%の増を予測している。
2.第二分会「部品」
(1)00年上期の回顧
携帯電話関係の部品が昨年に引き続き大きく伸びた。携帯電話では、99年上期比3倍近くも生産をのばしたメーカーがあった。
経済の安定と共にAV、CATV、自動車関連の部品も比較的好調に伸びてきた。
第二分会各社の販売実績は99年上期比で平均58%の増となった。
(2)00年下期の展望
政治、経済の安定が続けば携帯電話は依然好調に推移し、AV家電や自動車関連もさらに回復するだろうと予測している。
一方で、携帯電話はヨーロッパ市場では在庫が溜まり始め、部品発注の取り消しも行われているとの情報もあり、今後の推移に注意する必要がでてきた。
第二分会各社の下期の平均売上は99年下期比18%増と予測している。
3.第三分会「通信・電力・産業」
(1)00年上期の回顧
通信関連では非常に大きい伸びとなった。この背景には民営化された電話会社は2001年末までに、それぞれの電話網整備の目標値を達成しなければならず、この期限があと1年半と迫ったためと思われる。
通信関連では97年のピークを上回る受注を抱え、設備の増強、同業他社の買収などにより生産増を図った。しかし、部品不足や通関ストで生産が追いつかず、売上が伸ばせなかった企業もあった。
電気関係では発電、送電は政府プロジェクトで予算面から停滞、変電、送電が比較的安定に成長した。
第三分会各社の売上は99年上期比で平均19%増となった。
(2)00年下期の展望
通信関連ではよほどの大きな変化がない限り、引き続き強い需要が続き、大きな伸びが期待できると予測している。
第三分会各社の下期売上は昨年同期比平均38%増と予測している。
4.第四分会「精密・事務機・輸入販売」
(1)00年上期の回顧
経済安定で市場が回復し、IT投資やオフィスオートメーション化が活性化してきた。
また工業ミシン業界でも業界の政府への働きかけが功を奏し、ミシンの輸入関税が引き下げられ市場が活発になった。しかも安いミシンより縫製品質を上げるために高級なミシンの引き合いが増えた。
第四分会の各社の売上は昨年同期比で平均36%増となっている。
(2)00年下期の展望
他の分会同様、下期は為替や金利に大きな変動がなければ、市場も堅調に推移すると予測している。
下期の各社の売上は昨年同期比で平均19%増と予測している。
5.アンケートの結果
「回顧と展望」をまとめるにあたり、各社にアンケートをお願いしている。この中で今までと大きく変化した点を報告する。
(1)販売構成比の中で輸入販売が増加した。
これまで現地生産品と完成輸入品の販売比率は安定していたが、00年上期は99年上期比で現地生産品が-15%、輸入品販売が+17%と変化した。原因としては新製品の切り替え(例えばフラットテレビなど)や客先納入品の変化などがあげられた。
6.「いま、対伯投資を伸張させるために何が必要か」
上記について討議を行った。要点を以下に記す。
(1)いわゆるブラジルコストといわれる税制と高い金利の中でメーカーとしては事業をやれる環境にない。金利16%ではこつこつと溜めた利益や原価低減が吹き飛ぶ。
現状が装置産業優遇の政策にある所から素材産業、部品産業としては事業を行う環境にないといえる。
(2)ブラジルで無借金で事業を行うには、日本の本社からの資本の増強が必要であるが、日本に今そのような体力がない。
(3)新製品、新技術の進展でDVDさらにはデジタル放送に代表されるデジタル化など新しい投資の機会が増える。
(4)複写機業界では米国X社イコール法律といわれるぐらいX社が強い。アメリカでのレンタルバックを再生して旧式の機械を安くブラジルでレンタルしている。日本の最新式の機械は高いと敬遠される。複写機業界では事業の拡大が非常に困難な状況にある。
ブラジルコストが常識範囲内になり、平等に競争できる環境にならなければ投資の伸張につながらないのではないか。
以上
2000年下期業種別部会長懇談会-繊維部会
● 綿花あり - ブラジルの繊維産業に未来あり- |
見直された綿花、伯は将来重要供給國へ
名取:10 分というのはほとんど何もしゃべれないというのが分かりましたので、「繊維業界各アイテムの前半の経緯と今後の見通し」につきましては、すでに原稿にまと めておりまして、これが採録されるということですので、それをお読みいただくとして、ここでは、大きな観点でものを申し上げて、それを説明する中で繊維業 界の現状をご理解いただくという形にしたいと思います。
ブラジルにおける繊維産業につきましては、日本の経済界、及び繊維業界自体に、東南アジア、中国、インドなどにやられた自身の経験に擬して危ないと、とかく逃げ腰になる考え方が根強く支配しているように思います。
しかし私は三つの理由により、ブラジルの繊維産業は中長期的に見て未来があるというふうに考えております。
その第1は原綿です。繊維産業というとすぐに化合繊維が思い浮かべられると思いますが、合成繊維が出て以降、羊毛、絹などはそれに代わられまして非常に 苦戦をしておりますが、綿だけは50%のラインまでは後退いたしましたが、それ以降、そのラインを維持して年々増加をしております。
おそらく将来的に見てもこの繊維事業における綿の位置というのは変わらないのではないかと私は思います。その原綿の供給ですが、アメリカはほとんど横ば い、これ以上砂漠化の問題がありまして増やす事ができない。中国がとうとう輸出国から輸入国に転じました。あのインドすらも輸入国に転じております。
ところが、このブラジルだけは未だ耕作可能面積の18%しか耕作されていない。中央平原の、広大な土地が綿作に適しております。そして、かつて年90万 トン生産していたものが、労賃のアップによる不採算などにより、95年頃に30万トンまでに落ちましたが、そこから反転いたしまして現在では64万トンま で急回復しております。特に機械化の収穫に適している中部のマット・グロッソにおいて年々倍増の勢いで増えております。繊維産業は東南アジアが強いと言わ れておりますが、東南アジアが強いのは化合繊維が強いからなのですが、長期的に見れば、石油の枯渇により、いずれ化合繊の高騰はさけられず、反面綿はあっ ちこっちから奪い合いになり、その場合、耕作可能余地の大きいブラジルは非常に有利な立場に立つというふうに思われます。
現為替レートで伯有利 ― 東南ア、印と太刀打ちできる
第2に為替の問題です。これは歴史的に考えるとわかるのですが、かつてあの80年代ブラジルは為替が年々、というより日々ものすごく変わりました。輸入 が制限され、高率関税に守られているとして為替が弱いと、紡績のような産業は非常に強いのです。あの当時、各社とも史上最高益をあげたはずです。ところが 90年にコロルの政策によって輸入が自由化されまして、東南アジアの安いものが入ってくる。しかもレアルプランによってレアルが高目に維持されますと、こ ういうなかで繊維産業というのは弱い会社は潰れまして、ほとんど6割方になっているとご理解頂いていいと思います。
ところが昨年、為 替が自由化されましてUS$1=R$1.21の段階から今R$1.8ぐらいの段階に来ています。この為替の段階では、私どもは東南アジア、インドと太刀打 ちできます。今後ですね、為替がドルに対してまた1に戻るとかいうことは考えられませんので、日本は為替高にやられましたけれども、ブラジルは今後そうと う長期にわたって、繊維産業は繁栄するのではないかというふうに思っております。
第3が膨大な内需です。ブラジルの人口は1億 6000万人から今後2,30年の間に2億3000万人ぐらいまで増えるといわれております。これだけで ASEAN諸国やアメリカ合衆国に匹敵する市場です。その上にメルコスール、中南米を合わせますと非常に膨大な内需になります。
そし て教育が少しずつではありますが浸透していくと思います。いままでTシャツしか着なかった人々が平織りのYシャツを着るようになる。いままで下着を着てい なかったものが、―うちの経験なんですが、ブラジル人を日本によこしますと下着を着る習慣ができて、こっちに帰ってきてからも着るようになるんですねー。 まあ、そういうようなことで需要の高度化、そういうことで需要は増え続けます。
以上の3つの観点から、ブラジルの繊維産業は、現状においてのみならず、中長期的にも有望であると考えており、投資分散の考え方からも、東南アジアのみでなく、ブラジルにももっと目を向けて戴きたいと願っています。
そういうような状況の中で、今年の繊維の状況は大方の方が言われておりますように、昨年の後半ほどではないんですけれども、好調を持続しております。た だ若干問題点が出ておりまして、一つは期待された原綿が品質の面においてまだ問題が多く生じています。ただこれ、私が過日、マットグロッソのプリマヴェー ラ・ド・レスチというところに行って実感したんですが、彼らは品質の改良に関して非常に熱意を持っています。10万本の試験苗を植え品質改良に取り組んで いまして、これからブラジルはそういう面でも期待できると思います。
第2の問題点は輸入の増加です。このR$1.8という為替レート にも関らず、輸入が、とくに化合繊の混ざった布、糸これは昨年対比で3倍から4倍に増えております。それからご承知のいろんな面でのコストアップです。こ れを今後克服していかなければならないというふうに思っております。
現地の感覚で戦略立て、平生ミッション並み使節団派遣を
次に対伯投資について2点簡単に考えていることを申し上げます。一つは、やはり「隗より始めよ」という事で、先ほど宇治社長がおっしゃいましたように色 々言うよりはまず自分が考え、現地の人間の感覚で戦略を立てて本社をねばり強く説得するということが必要だろうと思います。1970年代にブームの中で東 洋紡も、いろんな分野、アイテムがここ対伯進出を試みました。それは本社主導でやったがために場違いな面もあって撤退を余儀なくされました。この自分の現 地の人間の感覚で戦略を考えて粘り強く本社を説得すると、これがまず第一です。
第2に私、昨日、一昨日と日本の甲南大学から小川 理事長先生と上村常任理事のご訪問を受けてアテンドしたのですが、平生釟三郎という昭和10年の日本の大型経済使節団々長について色々調べに来られたので す。私はそのお話の中で昭和10年に来た使節団の蒔いた種が私どもの繊維産業が戦後相次いで中南米に進出する一つの素地になっていたことを発見しました。 やはりわれわれ個人の段階で、本社及び日本を説得するとともに、相当大きな経済使節団に来ていただくとこういうことが重要かと私は思います。詳しくはまた 後で申し上げたいと思います。
司会:どうもありがとうございました。それでは食品部会の上原さんお願いします。
2000年下期業種別部会長懇談会-繊維部会(レポート)
1.全般の回顧と展望
第一四半期は、昨年来の景気回復基調が鮮明に現れたことから、各段階で冬物備蓄を早める動きが見られ、需給引締り堅調に推移した。しかし、第二四半期は暖冬で冬物店頭荷動きが鈍化したことから、当用及び夏物在庫用の原料手当てを手控える動きが鮮明になり、期待されたほど伸びなかった。
年後半は、堅調な景気動向に加え、7月に入って寒さが本格化し、冬物在庫に売行きが好調に転じたこと、春夏物の在庫手当が活発化していることから、需要面は堅調に推移するであろう。しかし、繊維製品は昨今の低インフレに寄与していると言われている通り、燃料中心とする公共料金値上げ、先高感の原綿のコストアップを最終製品に転嫁できておらず、更にブラジル紡中心とした一斉増産による安物氾濫も予想され、採算面での悪化が懸念される。
2.業界別動向
①綿花
綿花の99/00年国内生産は、伝統的なサンパウロ、パラナ、ゴイアス州が引続き減反となった中、バイア州等北東伯州の生産性向上及びマットグロッソ州の増反が牽引となり、全体で増産となった。相場は、南伯の新綿出遅れ品質懸念から4月上旬まで昨年11月来のR$1.00/LBSを維持していた。しかし、予め紡績各社が輸入先物や政府競札綿で手当てを始めていたことから需要伸びず、更に4月以降収穫が急ピッチで進み、中南伯綿の安売り攻勢も相俟って、6月末にはR$ 0.88/LBSを割る所まで下げた。
年後半は、政府が原綿流通促進プログラムを新たに打ち出したこと、中南、東北伯の順調な収穫から急速な相場の上昇はないと予想される。
一方、国際相場は世界的な綿花生産の減少、東南アジア中心とした消費の増加により、年初より6月末にかけて18%値上がりし、6月はUS¢ 60/LBSまで上昇した。年後半は、供給面で、昨年の相場低迷で農家の生産意欲が減退し、全世界での生産量の減少が懸念される一方で、アジア経済の回復、更に中国のWTO加盟後の輸出拡大指向から、綿花輸入が増加予想され、先行需要旺盛、年末在庫の逼迫感があり、年末にかけてもう一段の上昇が予想される。
②綿紡績(糸)
上期は、昨年の為替切下げによって回復した競争力を背景に、輸出の増大と輸入代替需要による楽観の中、堅調に推移した。国内販売については、昨年の秋冬物の好調により、今年の冬物仕掛けが早く、年初より荷動きは活発であった。
国内向は、特に冬用裏毛太番、ポリエステル綿混糸が需要タイトで、1~2%の値上げも市場は受け入れ、備蓄段階では期待感から活発に動いた。しかし、シーズンに入ってからは暖冬懸念から小売店頭は盛り上がりに欠け、さらに5、6月で暖冬傾向がはっきりすると、大手アパレルの生産調整、川中ユーザーの手当て鈍化が進み、更にブラジル紡による安売り販売もあり、需給緩和傾向が鮮明となった。
輸出は、昨年来の好調を維持し、前半5月までの輸出実績が98年トータルに迫るほど伸張した。レアル安による輸出採算の好転に加え、米国、アルゼンチン向けを中心に、各社積極的に月々の商売に組み込んで行った成果と考えられる。
年後半は、7月半ばになってやっと訪れた寒波による冬物販売の好転、春夏物シーズンを前にした需給タイト感から一応堅調維持を期待するものの、ブラジル紡の安売り攻勢の中、先高感のある原綿相場、燃料、電気代のアップをどこまで販売価格に転嫁できるかに掛かっている。市場の評価を得ている日系紡の品質、対応力をもって相場をリードして行きたい。
輸出は、6月以降の北米マーケットに一服感が出てきたこと、一部原綿起因のクレームが散見し始めたことから上期と比べ、環境的には悪化するであろう。しかし、急激なレアル高の可能性は低く、当面先々の水準を維持するものと思われる。
③綿紡績(織物)
上期は、昨年末の好調な年末セールに引続き期待されたが、年が押し迫ってからの動きであったので店頭在庫一掃による補充荷動きが年明けから活発というところまで行かず、2月に入ってから正常な荷動きに戻った。堅調に推移したニット業界に比し、織物は必ずしも好調に動いたわけではないが、メーカー、店頭共に在庫薄のために動きが止まることなく推移した。4月に寒さが到来して冬物の販売を好調ならしめるかと期待したが、その後の暖冬により冬物の店頭荷動きが緩慢となった。
しかし全般的に荷動きは概ね順調に推移したと言えよう。コスト面では、糸市況好調、ポリエステル綿の値上げによる、糸値アップ、労務費上昇について売値へ転嫁を必要としたが、市場は綿布の過剰供給、先染生地の流行はずれでむしろ数パーセントの値下がりが起こった。競合の比較的少ないポリエステル綿混布に関しては値上げできた企業もあった。
厚地織物は、流行の主流がニットに移行し、かつ、安定した為替を見こんだ輸入品が再び増加傾向を示し、品質、価格面で輸入品に押され、需給は緩んでいる。
年後半は、冬の寒さが弱く店頭の冬物販売は軟調でメーカーへの夏物発注が遅れている。
結果、メーカーも夏物原料手当てに消極的で、納期を1ヵ月遅らせる事を要望する会社が増えている。7、8月の気温次第で冬物の店頭、メーカー在庫の多寡が変わるが、夏物の立ち上がりの勢いもそれによって大きな影響を受ける。但し、6月の店頭荷動きが悪かったにも関わらず、業界の夏物商売に対する期待はかなり楽観的に見られた。今のところ後半も前半よりは少し堅調に推移するものと予想される。
懸念事項としては、東南アからの輸入生地が価格、その他輸入コントロールが甘くなり、今年に入り急速に増加しており、1~4月の実績をみると昨年に比べ輸入単価は半値となり、数量が4倍弱と危険な水準になっていることである。
④化合繊
化合繊の市況は、一般的に繊維業界好調ムードで推移した中でも、苦戦を強いられた業界である。レーヨン価格はコットンリンターと化成ソーダの価格アップにより約15%の値上げとなった。販売面では、暖冬による消費減に加え、為替切下げで一時的にストップしていた輸入糸が最近の為替の安定を背景に再度増加傾向を見せている。
年後半は、主要原料のポリエステル、レーヨン価格がともに上昇する一方で、暖冬による消費低迷、輸入糸との競合から販売価格に転嫁することは容易でなく、上期同様、市況に大きな改善は望めない。天候異変により、川下では冬物在庫を抱え資金繰りが厳しくなる業者も増え、更には夏物の動きが緩慢になる懸念もある。
⑤毛紡
上期は、韓国・中国など、日本を除くアジアの買付け復調、細番中心のイタリアの旺盛な引合いにより市況は相場の下落傾向を脱し、ようやく回復基調に入った。産毛量350万俵に対し、需要410~420万俵と需給はタイトで、一時200万俵以上あった在庫は150万俵に減少した。特に、細番のファインウールの買付けが顕著で年初来40%の価格上昇となった。
年後半も、引続き堅調に推移すると予想される。1991年以降産毛量の減少と豪州の過剰在庫の減少により、供給量は当時に比べ半分以下になった。結果、需要バランスは大幅に改善し、長年需給の失調で苦しんできた羊毛業界にもようやく底を打った感がある。但し、消費者価格へは十分転嫁できておらず、川中部門は依然苦戦を強いられるであろう。国内羊毛糸販売は、資材向け需要が多く、基本的に大きな変動はないであろう。注目すべきは、非常に小さいと思われていたアパレル向市場に輸入糸が入って来始めたことで、この分野への拡販も検討材料となるであろう。
⑥絹
ブラジルでの原料繭及び生糸生産量は、ともに93年をピークに下落傾向に歯止めがかからず、それぞれ93年比58%、43%まで落ち込んでいる。 2000年上期は、世界規模での原料繭の大幅減産及び日本国内養蚕業者の減少で、主要供給先である日本向け輸出単価が改善したものの、日本の生糸市況は消費の低迷により依然回復が見られず、輸出量、金額ともに対前年同期比落ち込んだ。
年後半も、引続き日本の購買消費力に大きな改善は望めず、更に原料繭不足による原料高、生産減による工場コスト上昇と逆風の中での操業を強いられるであろう。特に、原料繭は、最近のコーヒー市況の好況により桑畑からコーヒー畑への転作が進み、結果原料代の上昇を余儀なくされており、原料繭の確保が喫緊の課題となっている。
終わり
2000年下期業種別部会長懇談会-食品部会
● 価格低迷、寒波・干ばつたたる― 農産畜産 |
市況回復遅れる食品
上原:食 品部会の報告をさせていただきます。先ほどから、皆さん方のかなりいいお話しを伺っておりますけれども、こと食品業界に限って言いましたら、なかなか市況 の回復が見られないというのが実感であります。下げはそれほど大きくなかったけれども回復、増えるのも遅いという事のようです。
私ども19社加盟しておりますけれども、食品部会のメンバーは、業界別には一つは農産畜産。二つ目は外食産業、三つ目は加工食品。この三つの業界になりますので、それぞれの業界別の動向について報告させて頂きます。
まず農産畜産、農畜産ですけれども、その中の一番目のブロイラー。上期は為替切り下げの影響により数量ベースでは伸びた。20%ほど伸びたけれども価格は軟調であったと。通年では数量ベースで15%の伸び、金額では10%程度のダウン、このような見込みであります。
2番目の大豆は、ずっと続いておりました干ばつの影響で、サンパウロ、パラナ、マット・グロッソ・ド・スル、は20%ぐらい生産が落ちているようですけ れども、全国的なレベルで見れば昨年並みで推移したと。通年でも世界的な余剰感があり、数量・価格とも伸びる様相には乏しく、前年同期程度になるのではな かろうか、という見込みであります。
3番目のオレンジは、2000年の農業年度におきましては6%増加したと。欧州、米国向け輸出、 この価格がFOBサントス価格で1150ドルから1200ドルということで、かなりいい値段が通ったので搾汁メーカー、ジュースを搾るメーカーにとっては 満足のいくレベルとなったと。通年では昨年の干ばつの影響で搾汁、搾るのが1カ月遅れになっており、収穫量は8%以上の減産が予想されると。価格面では期 末の在庫量が多かったということで軟調傾向が続くと、このように思っております。
霜害、干害で減収のコーヒー
4番目の砂糖ですけれども、昨年度の砂糖生産は前年比6%増となりました。その一方、アルコールは8%減ということのようです。昨年度の輸出が大幅に増 加した事によって、国内向けの数量が減少してその結果、価格の大幅アップとなったと。サンパウロ、あるいはパラナ州では4月、5月深刻な雨不足があり、こ れも(砂糖)20%ほど生産が減っている状況です。輸出も通年で大きく減ることが確実ということです。
5番目のコーヒーも、昨年は供 給過剰感がありまして、30%の価格減となったと。今年の7月初旬から続きました寒波、あるいは霜の害、霜害、こういった被害に加え、これも続いておりま した干ばつの影響によって、来年度の収穫は減産が予想されております。まあ、世界的には他の生産国の生産増加、大手消費国の過剰在庫、あるいは需要の低迷 と、こういった傾向にあります。
2番目の外食産業は、上半期のインフレが1.6%に抑えられたことで、全般的に外食産業はある程度の 伸びが見られたけれども、個々のレストランによる各論は好調のところ、不調のところと、回復は外食産業全体には至っていないということです。下半期は、公 共料金の値上げ等の不安要素もありますけれども、このところの金利の引き下げなどによってお客様がもう少し増えるんではないかと、こういう期待を抱いてお ります。
スーパーでも食品販売伸びなやみ
3番目の加工食品は、乳酸菌飲料それから即席麺、調味料とこの三社がおります。一番目の乳酸菌飲料は、上半期は引続いての価格競争、それに加えて市場の 冷え込みによってほぼ横ばいの結果だったということです。他方、豆乳、輸出好調のりんごジュースは前年対比で大幅な増加となりました。下半期には景気の回 復が期待できるということで栄養補助食品の発売、あるいは豆乳が好調のようでして、豆乳のバラエティー化、こういうことで積極的な売上の拡大を図りたいと いうことです。主力製品につきましては、販売強化などを通じてシェアを回復したいということであります。
2番目の即席麺は、上半期は 前年同期の5%ほどトータルマーケットが減少しております。昨年2月、3月各社が値上げをしましたが、値上げ前の仮需があったりしたもんですから、上半期 ベースでは5%のマイナスになっております。自動車に代表されます耐久消費財が好調のようですけれども食品業界、ヤクルトさん然り、私どものラーメン然り ですけれども、まだこの景気の良さが見られないと言うところでして、スーパーマーケットの売上も、これは各企業間の価格競争もありますが、こと食品に関し ては伸び悩んでいるということです。下半期につきましては、現在、耐久消費財のほうに向かっている消費が即席麺の方に来ないかな、という期待をしておりま す。
3番目の調味料は味の素さん。ここは各流通レベルでやや明るい。流通各社がマージンを多少犠牲にして価格を下げたということで、 積極的に販促を行った結果、家庭用調味料は全般的に好調であったということです。それから昨年発売した甘味料、先ほど隣りの部屋にありましたけれども 〔コーヒーブレイクの席〕、これも全国展開は終わって順調に消費は拡大しているということです。下半期はブラジル全体の経済の安定により一般消費財市場は 拡大すると、従ってもう少し伸びるのではなかろうかと、その機会をとらえて新製品も投入したいということで、味の素さんはだいぶ元気でやっております。
以上が食品業界の前半の報告ですけれども、各経済指標、あるいは皆様方の報告からしますと、まだまだ食品業界のほうには好調さが届いていないということが言えるかと思います。
それから「対伯投資を伸張させるために何が必要か」というテーマにつきましては、時間がありませんので棒読みしますけれども、1-税制改革の遂行及び財 政赤字の縮小。2-徹底した司法改革、3-現状にあった労働法の見直し、4-ブラジルコストの低減、あるいはインフラ面での道路の整備が必要― こういっ たことが提案されました。
以上で食品部会の報告を終わりとさせていただきます。
司会:ありがとうございました。次に電気・電子部会の江口さん、お願いいたします。
2000年下期業種別部会長懇談会-食品部会(レポート)
1)00年上期の回顧
昨年の為替変動相場制への移行により、ブラジル経済の実力が試される年となるが、上半期の耐久消費財等の堅調な回復、インフレの低位安定など、全般的な各経済指標は底堅い推移を見せていると言ってよかろう。
しかしながら、こと食品業界に限ってみれば、ガソリンの値上げや各種公共料金の値上げ等が消費者の実質可処分所得の縮小につながり、なかなか市況の回復が見られないというのが実感である。
【業界別動向】
1.農産・畜産
1)プロイラー
上期は、為替切り下げの影響で数量ベースでは20%伸びたものの、価格は軟調。
通年では、数量ベース15%の伸び、金額で10%程度のダウンとなろう。
2)大豆
旱魃の影響でサンパウロ、パラナ、マトグロッソ・ド・スル州では生産が20%減ったが、全体では昨年並で推移した。
通年でも世界的な余剰感から数量、価格とも伸びる要素に乏しく、前年同程度となる見込み。
3)オレンジ
00年の生産は前年比6%増加、欧州、米国向け輸出価格は、1,150―1,200US$ FOBサントスと搾汁メーカーにとっては満足の行くレベルとなった。
通年では、昨年の旱魃の影響で搾汁の開始が一月遅れとなり、収穫量は8%以上の減産予想。価格面では、期末在庫が多かったことから軟調傾向が言われている。
4)砂糖
99/00の砂糖生産は前年比6%増の19百万トンとなった一方で、アルコールは8%減の13百万m3。昨年度の輸出が大幅に増加したことにより、国内向け数量が減少し価格の大幅アップとなった。
サンパウロ、パラナ両州で4―5月に深刻な雨不足があり20%生産が減り、00/01で13百万トンと大幅ダウンが予想されている。通年の輸出も大きく減ることが確実。
5)コーヒー
昨年12月にブラジル旱魃懸念が払拭されて以降、供給過剰感もあり、ニューヨーク定期市場価格は6月には85¢と1月比30%の下落となった。
7月初旬に生産地帯での寒波による被害に加え、5月以来の旱魃の影響により、来年度クロップ減産が予想されている。世界的には、他の生産国の生産量増加、大手消費国の在庫過多、需要低迷傾向もあるため、ブラジルの被害状況とACPC加盟国のリテンションプランの進捗により、NYの定期市場価格の方向性が決定されよう。
2.外食産業
上期のインフレが1.6%に抑えられたことで、全般的には外食産業において、ある程度の伸びが見られた模様。ただし、相変わらず各レストランの間では、好調不調が見られ、業界全体の回復までは至っていない。
下期は、公共料金の値上げ等不安要素もあるが、このところの金利の下げなどにより、消費の多少の盛り上がりも期待されている。
3.加工食品
1)乳酸菌飲料
上期は、引き続き価格競争と市場の冷え込みによりほぼ横ばいの結果となった。一方豆乳、輸出が好調のりんごジュースは前年比で大幅な増加となった。
下期は景気の回復が期待できることから、栄養補助食品の発売や好調な豆乳のバラエティー化などを行い、積極的な売上の拡大を図る。主力製品については販売組織の強化などを通じてシェアの回復を狙う。
2)即席麺
上期の即席麺市場は、前年同期に比べて5%のマイナス成長となった。耐久消費財にみられる好調さが、食品業界においては実感できない状況。スーパーマーケットの売上も、企業間の価格競争もあってか伸び悩んでいる。
下期は金利の下げ等のプラス材料はあるものの、公共料金、ガソリンの値上げが消費に与える影響が懸念される。
3)調味料
上期は、各流通が自社のマージンを多少犠牲にして価格競争を積極的に行った結果、家庭用調味料全般に好調な結果となった。また昨年発売の甘味料も全国配荷をほぼ達成し、順調に拡大している。
下期もマクロ経済の安定により一般消費財市場は拡大するものと思われる。各商品群のシェアを上げることに加え、新製品の投入も予定。
以上
2000年下期業種別部会長懇談会-コンサルタント部会
●IMFとの約束の経済目標は達成できそう |
2000年上期のブラジル経済
昨年1月の通貨危機乗り越え、回復基調へ
田中:ご指名によりまして、私の方から報告させていただきます。いつも時間超過の張本人として睨まれておりまして〔笑い〕。できるだけ時間を節約してやりたいと思 います。数字的なものはレポートで出しておりますので、重複しないように、それから、全般的なお話しになりますが、各部会長さんのお話しにも出来るだけ重 複しないようにということで、その全般的なお話しをさせて頂きたいと思います。
まず、今年の前半を回顧しまして一口でいいますと、「昨年後半から回復、上昇を始めた経済活動が本年上期も継続した」と、そういうふうに言えると思いま す。で、その中身を見ますと、まず、財政はご承知のようにIMFとの契約の期間は3年間、去年から始まって3年間と、いうことで色々目標を決めております けれども、その中でも一番重要な財政の一時収支の黒字目標というのが一番大事で、これは去年も一応達成しており、今年はまだ5月までしか数字が公表されて おりませんけれども、5月まではかなり余裕を持って達成した、従って1-6月もほぼ達成できるのではないかと思います。
それから下半 期も、また来年もなんとかいくだろうと。一応契約で色々と縛られておりますので、まあ何とか恰好がつくのじゃないかと、いうふうに考えられております。た だ、今後出てくる問題点としては、一つはフンド・デ・ガランチーア〔FGTS〕という労働者の退職金積み立て基金がありますけれども、過去何回か政府の経 済プランの時にインフレ修正額が足りなかったということで、いま裁判になっております。これをきちっと払うと総計533億レアルになるということで、これ が不安要因になっております。この判決は近くある予定です。
それと構造改革的な税制改革法案、これは95年に第1次カルドーゾ政権が スタートしてから、ずーっと出ているのですけれども、ほとんど国会で審議されず今日に至っている。政府はその法案を今月の1日、また国会に持ち出しまし た。これについて、大方は、これはとても審議できないと。後で話が出ますけれども、これは、いま問題になっているスキャンダルの目をそらすためだというふ うな見方をしております。
それからもう一つ、いまIMFのミッションが第6次の見直しのために来ており、政府は来年の財政収支の目標をちょっと緩くして貰おうという交渉をやろうとしております。
財政の点についてはそんなところです。
貿易収支は赤字から黒字へ転換
経常収支も赤字10億ドル改善
それから対外収支の問題。これは後で貿易部会長さんから詳しいお話があると思いますけれども、去年赤字だった貿易収支が今年は黒字になりました。輸出の 増加で1―7月をとりますと17%増加したと。ただ、輸入が予想以上に増加したことにより、黒字にはなったけれども、黒字幅は予想よりも低い。年初に立て た今年の貿易黒字目標の50億ドルを3月に見直し44億ドルに、さらに6月に見直して28億ドルにした。それを更にもう一度見直さないといけないのでは、 というふうに見られております。
本年の貿易収支の特色として、昨年、為替の大幅切り下げを行った結果、工業製品の輸出が非常に増加し ている。これはかなり割り引きをしても切り下げが大幅だったものですから、まだ輸出で利益が出るというふうなことで、工業製品の輸出が非常に増加している ということです。
一方、経済活動活発化の結果、資本財や中間財輸入も大きく増加したということです。
景気刺激考える政府
さらに消費需要も増加しており、耐久消費財、つまり自動車、家電の輸入も増えているということで、特に貿易関係の大きな変化としては、1-6月に前年同期比マイナスであった耐久消費財や資本財輸入が7月になってプラスに転じたということです。
それらが上期の特色だと思います。こういうことで、問題はありますけれども、一応貿易収支は黒字になったということで経常収支も改善し、1月―6月の赤 字は114億ドル。去年124億ドルでしたから10億ドルほど改善したということです。で、この赤字は直接投資の流入が順調なので、一応それでカバーでき る。上半期に141億ドルの直接投資が入っており、それで本年の計画としては、海外で突発的なことが起こらない限り、経常赤字は230か250億ドルぐら い、直接投資が250億、あるいは260億から300億ドルぐらいで一応カバーできるという見通しです。
それからインフレは、上半期 1.64%で、20年来の最低だった。7月は公共料金の値上げだとか、寒波、干ばつがあり、かなり上昇して1%超えるか、超えないかということを言うてお りますけれども、特別何もなければ後半に再び落ちて、本年の目標である6%以内には収まる予定ということです。つい最近、政府は2002年のインフレ目標 を発表しました。これは3.5%ということです。IMFとの約束ですと、初年度の去年が8%、今年が6%、来年が4%ということで、従って、その次の 2002年は2%というふうになる筈なんですけれど、それを3.5%というふうにしたことは、大統領選挙もありますし、かなり景気刺激を考えておるんじゃ ないかと、いうふうに見られております。
それから、金利は昨年の3月に年初の為替切り下げによる混乱を収拾しようと年45%まで引上 げたけれども、去年の9月までに11回引き下げ19%にしたと。それで年末からずーっと半年ほど据え置き、いろいろ不安定要因があって据え置いていたので すが、今年の3月からまた下げ始め、6月に1回、7月に2回と下げまして、現在は16.5%と、予想よりやや大目の引き下げということです。政府は情勢が 許せばさらに引き下げたいということで、つい最近、アルミニオ・フラガ中銀総裁は、年末までに実質で一ケタになる可能性があるということを示唆しておりま す。
下期はドル高で推移の可能性
順調な景気予想はばむ政治要因
次は為替ですけれども、為替は変動要素も多いし、非常に難しいのですけれども、今年の年初は去年の暮れからのR$1.80程度で始まり、経済回復が順調 だったおかげで2月まではR$1.77と1.80の間を上下し割合、安定的にいった。それが3月はR$1.71まで落ちた。ところが4月、5月はアメリカ の金利動向不安で上昇しR$1.85、1.86ぐらいまで上昇した。5月はアメリカの連邦準備銀行が0.5ポイントと金利を大幅に上げたので、その影響で また下降しましたが、7月からはR$1.78程度で行っております。
ただ下期は、見通しは難しいのですけれども、基本的には安定基調 ながら、若干ドルの強含み傾向ではないかと考えられます。一つは先ほど話が出ましたような、景気回復による貿易収支の悪化、季節的にも貿易収支は悪化する こと。それから株式市場へのドルの流入が影響されること。これはブラジル企業が米市場で直接ADR債を発行する動きが出ていることによります。
それから先ほど申し上げました裁判所判決いかんですが、フンド・デ・ガランチーア〔FGTS〕の非常に大きな金額の問題があって政府の財政負担が増える 可能性がある、バネスパ、マラニヨン州銀などの民営化が遅れている、最近問題になっている大統領側近だったエドワルド・ジョルジのスキャンダル、カルドー ゾ政権支持率が10%台に低下し、非常に弱体化している等。
そういうことで、為替は強含み可能性が強いと。そう言うことで最近また外貨準備が少ないということが若干問題、議論になり始めております。
景気全般を見ますと、ブラジルの工業生産は5月に6.1%増加、1月―5月でも6.6%ということで非常にいい。特にその中でも耐久消費財と資本財がいい。半面、半耐久消費財と非耐久消費財はマイナスだということですね。
大体本年上期はそういう状況で、このまま行けば、まあまあ順調な景気上昇が期待されるわけですけれど、阻害要因というのがあり、それをいくつか挙げますと、一つは海外要因で、先ほど挙げたアメリカの金利動向。これがもう一つはっきりしない。
それから石油価格。これも3月―6月とOPECで増産を決めたけれど、依然不安定ということ。
そ れから更に国内の政治の不安定要因として、やはり一番大きな問題はカルドーゾ政権の支持率が下がっていること。1次政権当時は50%以上だった支持率が、 去年の切り下げの時に20%に下がって、現在は13%ぐらいだということ。それから続発する汚職事件。そういうことで米国の国会でも7月26日に下院の外 交委員会で招かれた駐米ブラジル大使に、ブラジルについての質問が行われた。その内容はカルドーゾ政権の支持率低下、それから、汚職が側近に及んでいると いうことで退任の可能性はないのかどうか、留任できても構造改革法案の国会通過が出来ないのではないか、ということが質問されたということです。
以上で最近の情勢のご説明は終りまして、次は「対伯投資を増加させるには」について簡単にお話しさせていただきます。私は在伯27年間になりますけれど も、この間、日本企業各社の駐在員の方々が何代か交代され、その度に対伯投資拡大に努力をされたわけです。しかし情勢は全く変わらずで、むしろ日本企業の プレゼンスは年々相対的に減少を続けております。
世界経済グロバル化
進出にあたり対伯戦略明確化が大前提
何ヵ月か前に商工会議所の昼食会で前の岡田副会頭が発表されましたので、ご記憶のことと思いますが、会員数も年々落ちてきておるということで、「失われ た80年代よりも会員数が減少しているのは日本の会議所ぐらいのもの」といわれます。それで、私としましては、27年間同じ事を繰り返して来ました。(た だ正確に言えば70年代は余りそう言う必要がなかったわけですけれども)また今回も同じ事を繰り返すということになりますけれども、ご了承をお願いしたい と思います。
それで、まず一つは、日本企業の対ブラジル戦略を明確にすることがまず大前提だということで、これに尽きると。これさえはっきりすれば問題ない、と言っても過言ではないと思います。
アジアの場合は距離的に近いこともありまして、日本企業は分工場的進出ができる。これに反してブラジルの場合は距離的にも遠いし、独立企業体として、飛 び石的に進出しなければいけない。従って、よほど明確な進出の必要性とか、必然性とか、そういうものがない限り、ブラジル情勢の良い時は進んで、悪い時は 止ったり引っ込んだりするという、いわゆる限界的な出稼ぎ型進出にならざるを得ないということです。つまり、このような中途半端な腰だめ的な進出の結果、 年数経過とともにジリ貧状態になるのは当然であります。これがこれまでの日本企業対伯投資の歴史的な現実だと。
ブラジル向け投資増加 のためには特にグローバル化の進展する今日は、戦略の明確化ということが絶対的な条件ではないかと考えております。そういうことで話は尽きるんですけれど も、若干一つ、二つ追加させていただきますと二番目はブラジル投資はビジネスにおける経験とか失敗の活用、特に失敗から教訓を学びそれを活用する体制が必 要ではないかということです。
日本企業の責任者の方は、数年間ここに在任されてブラジル・ビジネスや投資と積極的に取り組まれて、ま あほぼ例外なくブラジルが好きになって、ブラキチということで帰られるわけですけれども、その後は子会社に出向される、定年退職されるといったようなケー スが多く、本社のブラジル向け戦略に影響を与えるようなポストに就かれたケースは今まで少なかった。従ってブラジルにおけるビジネスの特殊性、難しい点な ど過去の経験を生かすチャンスが少なかった。
また特に失敗の経験ですね。これは日本式な閉鎖主義ですとか、そういったものもありまし て、社内でも限られたものだけで処理される。記録はファイルされてしまって失敗の原因分析を行って、広く全社的に今後の活動の教訓にするというふうな意識 や体制が乏しい。その結果、ブラジルに対する漠然とした悪印象が会社に代々残る。空気としては、残って失敗から教訓を得てそれを前向きに活用して発展しよ うという方向ではなくて、逆に遠ざかろうとする方向に働く。
行動パターン変わらず、役者だけが変わる
ここ数10年、日本企業の対伯ビジネス
特に明確な戦略がない、欠如するために余計そういう傾向になるということです。従って、日本企業のブラジル向けビジネスは10年前、20年前と殆どやり 方が変わっていない、行動パターンが変わっていない。ただ役者だけが代わって演じられておるということで、私の27年間の滞伯中、この同じ事の繰り返しを 見続けてきたわけであります。
それから三番目としては情報の価値の認識と収集力ですね。欧米企業に比較して日本企業は情報の価値の評 価が低く、その収集力にかなり大きな差が見られるように思います。具体的な点は省略いたしますけれども、日本企業の情報収集パターンは、進出前の調査段階 で最も典型的に現れております。私が今まで相談にあずかった経験からしますと、日本企業間ほぼ同じパターンであるのに驚かされております。これは70年代 も今日もほとんど変わっておりません。
それからもう一つは日系社会の存在。日本企業は、非常に日系社会のメリットを受けておるという こと。これはもう間違いないわけですけれども、ただ私がいくつかうまくいかず撤退の相談を受けました中で、日系の特に2世、3世の非常に有名な人とパート ナー組んで誤魔化されたとか、そういったようなケースが非常に多いということですね。こういう人達は、日本のトップに対してもブラジルの日系社会の代表だ というように見られ、信用されやすい。そういう人を選ぶ場合には慎重を期して選ばれた方がいいということです。以上です。
司会:ありがとうございました。実は若干余裕を持っておったんですけれども、かなりオーバーされましたので後の皆さんできるだけご協力お願いします。
田中:どうも申しわけありません。
司会:コーヒーブレイクと自由討議も考えておりますので、よろしくご協力お願いします。それでは、次に金融部会の山浦さんお願いします。