- 原油高騰たたる石化・合樹
- 接着剤伸びるが、松脂品不足
- 金属工作油剤販売好調
- 水処理剤も好調
- 非耐久消費財低調
- 農薬は外資系再編渦中にあり
●石化、合樹分野 販売伸びるが採算きびしい
司会 : ありがとうございました。引き続きまして、化学部会の新井部会長お願いします。
新井: 前任の矢島(出光)さんを引き継ぎまして、今年から化学部会の部会長になりますしたけども、原料界は、川下の最終の文具、ボールペンに 至るまで業界の中が分れていて、なかなか一言ではいえないのですけども、順を追ってご説明いたします。 石油化学・合成樹脂2分野は、ブラジルのマクロ 経済及び自動車をはじめとする工業生産の好調を受けて、合成樹脂・合成ゴム・合成繊維、3大業界の好調な需要に支えられて前年比10%ぐらい伸びました。 前年比50%増となったエチレン誘導品の輸入,パラキシレン及びその誘導品の輸入が国産品を大きく圧迫、とくにPET樹脂の安値輸入品が国内メーカーへの 価格圧力がかかったという状況の中で、1番影響を与えたのは国際原油価格の高騰であり、年初の25ドルから10月に38ドル、年末に33ドル/バレルとい う乱高下。これにつれて国内ナフサ価格も8月に史上最高の298ドル/トン。年末に294とやや下げたものの、後の不安を残して終わった様な状況です。
このナフサ高で、エチレン以下の誘導品は、コストアップを強いられ、一方、輸入品攻勢にあい、電力料金の値上げなどで、総じて採算が圧迫されたような状 況でした。汎用樹脂の方は、価格面で厳しい展開を強いられながらも、根強い需要に支えられ高稼働率を維持、ポリプロピレンなどは自動車産業向け、ポリスチ レンはAV機器、家電、通信機器を中心に状況の改善著しかった事と、輸出が増加した雑貨業界向けの好調に伴い、合樹関係は非常に好調に推移しました。
ポリカボネートも国際的にタイトバランスで市況も高位安定とフル生産フル販売で進展、ペットボトルに使われるPETも清涼飲料,水向けから食用油へシェアーを拡大して前年比10%ぐらいのアップになっています。
合成繊維業界も国内・輸出とも好調に推移して、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維が末端衣料品の旺盛な需要に支えられ、中間原料であるカプロラクタ ム、エチレングリコールと共に好調でした。それからタイヤ業界。これはもう自動車の好調に支えられ、交換タイヤ2500万本、新車用途800万本強、輸出 が全体生産量の2、3割になるのですけども、トータルで前年比7から8%くらい増になった。輸出は切り下げ後の為替メリットもあり、業界各社とも増加、新 車生産量の増と共に増えた新車とあわせて、物量面では好調でした。一方、合成ゴム、天然ゴム、カーボン・ブラックなど輸入原料が7割を占めていることも あって、為替の切り下げと相まって、コストを押し上げ、採算は年々悪化しているというのがタイヤ業界だったようです。
●自動車、同部品増産 による好調業種も
続きまして、接着剤、シール材です。接着剤も自動車及びその部品メーカーの増産、モデルチェンジがあり、前年比20%伸長。加工部門で樹脂使用量が10%増となり、全体でも10から12%増となったプラスチック業界とあわせて、接着剤工業も好調業種に入っています。
製紙、接着剤、塗料用とこれらに使われる原料松脂、松脂関係は、紙パルプ向けが、去年紙パ業界の100%以上のフル稼働に伴い、それに使われるガムロジ ン等の製紙用薬品の需要も増加。接着剤メーカーの自動車向けは増えたものの、ガムロジンは、意外と伸びなかったという事でした。一方で、昨年の天候不順、 松脂採集時期の9月、10月になって気候が回復しなかったので、原料の松脂不足、価格の高騰を招いた。一方で、製品のガムロジンは全世界で7割ぐらいシェ アをもっている中国の安値攻勢で値上げが通らず、「原料高の製品安」という形になりました。
続いて、金属工作油。これも、自動車生産が 好調だったことにあわせたドル高を背景に、部品の内製化が進んだということで、関連する機械工業も20%ぐらい生産量アップになっているという事、輸出が 好調だった鉄鋼も増えたということで、これら好調業種向けの加工油剤が15から20%の需要増となったと推定され、98、99年と減少してきた販売量に歯 止めがかかり、97年のレベルぐらいまで業界は回復しているのではないか。一方で、原油高により潤滑油の値上げ(前年比で60%ぐらい値上げ)があったわ けですけども、潤滑油の値上げ及び一般管理費の増などで販売量に比例して、採算は改善していないという金属工作油業界です。
また水処理業界は、石油、石油化学、鉄鋼、紙パルプが大きな需要家なんですけども、これらの業界が好調だったということで、好調に推移したということです。
●携帯電話購入優先及び 燃料にたたられた業種も
これからは消費財の方へ入って行きますけど、写真フィルムは99年は為替切り下げで需要が落ちるかと危惧したが、結局需要後退は起こらずに過ぎた。
2000年に入って、マクロの回復基調に対して、消費者物価に代表されるように、非耐久消費財はマイナス基調。これを受けてフィルムのような嗜好商品の 消費が進まず、消費者の購買優先度が携帯電話、あるいは電子電気機器にむかう、あるいはガソリン代の値上げなどに食われてしまったという事で、写真フィル ムの消費に回ってこなかった結果、5月、12月を除いて、毎月前年比マイナスであったというのが、写真フィルム業界のようです。一方、こういうスローな マーケットの中で、各社とも、コダック、富士フィルムさんだと思いますけども、プロモーションをスポット的に繰り返して、実質値下げ競争を続けた結果、価 格的には低価格で推移した一年であったという報告です。
それから文房具。これは、ボールペンとかサインペン、マーカー等の原料に、プラ スチック、染料、インク等使用するわけですけども、98、99年もブラジル経済回復と同じ様なテンポで、消費が伸びてきたにも関わらず、昨年クリスマス商 戦の11月、12月が低調。昨年7月の業界見本市で成約した教育・新学期向けの紙器材・物が契約の消化が進んでいない、非常に個人消費の偏りを感じられ、 結局99年比、同じか少しマイナスという事だったようです。
●業界編成進む農薬
農薬 業界は、99年の10月から去年の6,7月ぐらいまで、南部の旱魃、7月、8月の霜、こういう事で、99年末からの流通在庫の消化が進んでおらず、そのま ま低位に推移。一方で外資系再編成の荒波の中で、6社あった大手が3社に集約され、その3社で業界の51%を占める。これらが販売攻勢を強めた結果、見か けの売上は前年比7%アップ、ただし流通在庫はかなり積み上がったという感じで受け止めております。
2001年の展望ですけども、 GDPの伸び率が政府予想の通り4.5%で推移し、大きな国内経済変動要因がないとすれば、原材料・素材産業としての化学品、石油化学は昨年からの高稼働 率を、少なくとも本年中央ぐらいまでは維持できるんじゃないか。また、マクロの工業生産が高位であれば、生産財、中間生産財向けを中心に好調を維持できる と思われます。一方、非耐久消費財などの、小売り部門に近い業界では先ほど言いましたように、消費者物価と卸売物価の乖離、要するにコスト増の製品価格安 と、こういう事で、採算が引き続き厳しい環境となる可能性があると思われます。あと輸出業界は能澤さんの方で申し上げられた通り、米国等の推移によっては 大きく変ってくる可能性があると思います。以上です。