2016年下期の業種別部会長シンポジウム

テーマ:「2016 年上期の回顧と下期の展望」

副題:『どん底の時期ならではの戦略は?-課題整理と対処方策-』

Pdf 2016下期の業種別部会長シンポジウムプログラム

 

  • 前半司会  大久保敦 総務・企画委員長

    大久保敦 総務・企画委員長

     皆様、こんにちは。時間が参りましたので、これより2016年下期業種別部会長シンポジュームを開催させていただきます。私本日の司会を担当いたします、総務・企画委員長の大久保でございます。よろしくお願いいたします。私、今回、司会は2回目なんですけども、人前で話すのは非常に苦手で、不慣れでですね、何かと行きとどかぬところが出てくるかと思いますが、タイムキープを含めまして、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

     本日は部会長の発表の前にですね、神戸大学教授で経済経営研究所副所長の浜口伸明様に特別講演をお願いしております。また、在サンパウロ日本国総領事の中前隆博様にもご参加いただき、今日4時ごろ参りますが、その際にですね、部会長発表後のご講評をいただくことにしております。また、在ブラジル日本国大使館の小林参事官にもお越しいただいております。小林様にもですね、最後にコメントをお願いしておりますので、よろしくお願いいたします。

     本日の参加者でございますが、200名に達しました。前回190名で、10名増えております。24名の一般客の皆様にご参加いただいております。これはですね、ニッケイ新聞、サンパウロ新聞両紙に記事にしていただきまして、多くの方が参加いただいております。この場を借りまして御礼申し上げます。

     それでは、まず松永愛一郎会頭より開会の挨拶をお願いしたいと思います。

     

     

  • ブラジル日本商工会議所  松永愛一郎 会頭

    ブラジル日本商工会議所  松永愛一郎 会頭

     ただいまご紹介あずかりました、ブラジル三菱商事の松永でございます。先週金曜日の会議所の理事会におきまして、前任の村田会頭の後任としてですね、会頭職を拝命いたしました。どうぞよろしくお願いします。(拍手)ありがとうございます。

     先日の昼食会で私の会頭就任のご挨拶をさせていただきましたので、今回長々とここでお話、繰り返しするつもりはございませんが、会頭としまして、より開かれた会議所、またチャレンジする会議所ということを目指してですね、皆さんの話をゆっくりとお聞きし、相談をしながら運営を進めていきたいと思っております。

     具体的には3つほど挙げさせていただければというふうに思っていますが、まず一つ目としまして、サンパウロ以外の会議所の皆様と連携を深めていくと。これによって、会員の皆様にはブラジル全土の情報を逐次に共有いただくという体制にしたいと思っております。

     2つ目としましては、ここの商工会議所に政策対話委員会というものを設けておりますが、これはですね、いわゆるブラジルコスト、この改善をブラジル当局に対して提言をしていくという活動でございます。この活動をさらに強化してですね、皆様方のブラジルにおける活動の障害を少しでも取り除けていければというふうに考えています。

     3つ目としまして、会員の皆様の3分の1が地場の企業の皆さんでございます。地場の皆様との会話をですね、もっと密に行うことによって、我々日本からの派遣企業とのWin-Winの体制を作っていきたいというふうに思っております。

     そういう地道な活動をもってですね、会員の皆様の数を増やして、皆様に裨益する、そういった会議所にしていきたいというふうに思っております。

     それでは本日、2016年下期のシンポジウムに多数皆様お集まりいただき、大変ありがとうございます。私の方から簡単に、このシンポジウムの位置づけをご説明させていただきます。

     現在会議所には11の業種別の部会がございます。会員の皆様にはそのうちどれか一つに所属いただくようにお願いしており、この部長会をベースにして情報交換を行っていただく、あるいは商工会議所のプレゼンスを高めていただく、また日系企業がこのブラジルにおいて活動を活発化できるような素地を作っていただく、というような活動をしていただいております。その成果を半年に1回ここで披露いただくと。それがこのシンポジウムの位置づけということになっております。

     加えまして、本年度は事業別の部会というものを導入しまして40年目に当たる節目の年でございます。そのため、先程大久保委員長からご紹介ありましたように、先ごろ発売されました「現代ブラジル事典2016年度版」、こちらの編集長をしてくださった神戸大学の経済経営研究所副所長の浜口教授に特別講演をいただくということになっております。加えまして、サンパウロ総領事、中前総領事の方からもご講評をいただき、さらに大使館の小林参事官からもコメントをいただくということにしております。

     本日のテーマは、2016 年度の上期を回顧し、下期の展望ということで、副題としまして「どん底ならではの戦略」ということをつけさせていただいております。私ここに着任して2年半になります。これは先日の昼食会でも申し上げましたけども、この2年半の間、ブラジルの政治経済、非常に厳しい状況でありました。

    しかしながら、ここに来まして、経済の方にも薄日がようやく差してきていますし、まあ業界ごとにいろんなまだら模様にはなっておりますが、明るいニュースも飛び込んできております。何よりも、当初あれだけ心配されていたリオのオリンピック、これを非常に高いレベルで運営をし、やりきったということにつきましては、ブラジルの底力を全世界にしっかりと発信できたというふうに思っております。

     こういう状況を踏まえて、私自身、今このブラジルはまさに潮目の変わり目というふうにとらまえております。従いまして、本日のシンポジウムがですね、会員の皆様がこの波に、潮目の変わり目に乗り遅れないで、さらに事業を推進していただくといったようなことの一助になれば幸いでございます。

     最後になりますが、今日のこのシンポジウムのために色々とご準備をいただいた部会長の皆様、ご関係者の皆様に厚く御礼を申し上げ、私からの開会のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

    司会

     松永会頭どうもありがとうございました。それでは、各部会の発表に移る前に、浜口教授による特別スピーチをお願いしたいと思います。その前に平田事務局長より浜口教授のご紹介を簡単にさせていただいた上で、特別スピーチの方に移りたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • 平田藤義 事務局長

    平田藤義 事務局長

     皆様こんにちは。ただ今ご紹介にあずかりました平田でございます。私の方からは、今回10年ぶりに出版した現代ブラジル事典の編集長として大変ご尽力いただきました浜口伸明教授の略歴と、事典出版に至るまでの簡単なエピソードについてちょっと説明させていただきます。

     浜口教授は1987年4月、大阪外国語大学のポルトガル・ブラジル語学科をご卒業後に、95年5月、ペンシルバニア大学大学院地域科学研究科を修了され、博士号を取得されました。職歴といたしましては、アジア経済研究所の研究員をスタートに、2004年、神戸大学経済経営研究所准教授、さらに2007年、同研究所の教授、12年には同研究所所長にご就任され、現在は副所長および大学評議員も兼務されておられます。

     浜口先生はですね、英語、ポルトガル語、スペイン語が非常に堪能なお方で、研究分野としては経済統合、空間経済学、国際開発論、ブラジル地域研究がありまして、その第一人者でございます。英語による出版業績は約24作品ありまして、日本語の書籍は今年4月に出版しましたこの「現代ブラジル事典」

    をはじめ、さらに2014年11月、「ラテンアメリカ社会学ハンドブック」、同年3月出版の「中南米経済と日本企業の動向」と、色んな著書が21作品あります。さらに日本語による論文も数多く、今年7月に「五輪開催都市リオの変容」と題しまして発表されたほか、2001年以降現在までにラテンアメリカおよびブラジルに関する論文を中心に何と43本も発表されておられます。

     ところで、これからは先生と私の出会いの関係なんですが、正直な理由を一言で告白しますと、前回の2005年度に発行した現代ブラジル事典の苦労をもう二度と繰り返すまいということで、全ての執筆を浜口新編集長にお任せということでありました。これは内情を知らない方からしますと全く無責任のように見えますが、事実は決してそうではありません。会議所として10年に1度の事典発行は何が何でもやり遂げなければならないという責任感、使命感があり、また一方では、2015年の日伯外交関係樹立120周年行事が立て込んでおりまして、中々私にはとてもとても及ばない能力の限界が背景にあったからです。

     2005年の事典というのは大変色んな問題がありまして、立命館大学の小池編集長が陣頭指揮をされて、その執筆陣にブラジルから100名、日本55名の教授陣、合計155人が携わって、2005年に出版しましたあの500ページの事典が出来上がった訳でございます。

    その時たいへん、色々、ブラジル側の執筆者を選んだり、探したり、原稿を書いていただいたり、あるいはその修正をしていただいたりとか、あるいは執筆者が途中で日本にお帰りになって不在になりまして、行方不明になったりとか、あるいはまた、執筆を断られて、非常に大事な分野に関しては自作自演を強いられたりとか、大変な思いで深夜ずっと2、3年やって参りましたけど、これはちょっとやっぱり、日本の錚々たる造詣深い専門家の方々にご依頼しないととてもじゃないけど責任を果たせないということでですね、浜口先生に小池先生の方から白羽の矢を立てていただいてですね、目出度く今回執筆完了したことになります。浜口先生、改めて、どうかお許しください。本当に御無礼なことをしたと思いますけども、何卒ご容赦のほどよろしくお願いいたします。

     浜口先生とは東京の居酒屋でですね、十分この執筆に当たっての事典の構想を練ってですね、無事今年4月出版の運びとなりました。そういうことで、昔のことを語り出したらきりがないので、このあたりで浜口先生にご講演をお願いしたいと思います。最後になりますけども、このシンポジウムに、事典執筆に大変ご協力いただきました神田外語大の舛方講師、並びに本日多分ジェトロの二宮さんもいらっしゃっていると思いますけど、厚く御礼申し上げます。さらにですね、毎年毎年会議所をご訪問いただいています明治大学商学部教授の中林真理子さん、IDBの六浦吾朗さんにもご参加いただいております。本当にありがとうございます。ぜひこのシンポジウムが終わった際にカクテルもございますので、意見交換をさせていただきたいと思います。そういうことで、ちょうど5分たったところで、私のご紹介とさせていただきます。本当にありがとうございます。

    司会

     平田事務局長どうもありがとうございました。それでは浜口教授による特別スピーチの方に移りたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • 特別スピーチ  浜口伸明 神戸大学経済経営研究所教授・副所長

    浜口伸明 神戸大学経済経営研究所教授・副所長

     皆様こんにちは。浜口でございます。よろしくお願いいたします。高い所から失礼いたします。

     先程、9時40分ごろにグアルーリョスに着きまして、何か今こうしているのが夢のようでございますけれども。先程平田事務局長からご紹介いただきました通り、2年ほど前ですかね、ちょうど、東京の居酒屋で「あなた、やりなさい」というようなことで。皆様の社会もそうかもしれませんけども、研究者の社会というのも中々の縦社会でございまして、先程名前が挙がった小池先生というのは私が前に勤めておりましたアジア経済研究所時代の上司でありましたので、そう言われますと断れないということで、有無を言わさずというようなところがございましたけれども、非常に名誉なことというふうに感じまして。この商工会議所の方で10年ごとに事典を編纂されておられて、以前は経済事典といっていたんですかね、それが10年前に現代ブラジル事典ということで、その一部の執筆を私の方も担当させていただいたこともあったんですけれども、小池先生の方からはそろそろ世代交代もしなくちゃいけないというふうに尻をたたかれまして、私も能力の足りないところも重々承知しておりましたけれども、お引き受けしたような次第でございます。

      

     その事典を作ります時にいくつか前提条件があったんですけれども、前の事典は確かすごく分厚くて、値段が6000円以上したんですかね、それで中々売るのが大変だったというようなことを聞いておりましたので、今回は3000円台に抑えなさいというのが、それがまず前提条件になりました。

    それを踏まえて今回は分量を削るということを考えまして、その中で、前回の部分が、使える部分ですね、例えば文化とか自然・地理とか、それから歴史の部分ですね、この辺はそれほど大きな変更がありませんので、その部分は前回の事典をそのまま活用していただくことにして、今回は日本ブラジル関係、そして政治・外交、そして経済、ビジネス、環境問題、法律、社会開発問題、この7本立ての章立てで構成するということで決まったことになりました。

    で、まあ1年足らずの間で仕上げるということで、前回からの大きな変更点は、今平田さんからもありましたように、日本の研究者、総勢約50名を中心にですね、書くということになりました。色々な分野の研究者がそのために集まってくれまして、普段あまり交流のない研究者ともこれをきっかけにずいぶん話をさせていただくことができました。それも大変良かったかなというふうに思っています。

     で、何とかですね、本当は3月に出版ということをお約束していたんですが、約半月ほどずれまして、4月の中頃にようやく出版することができました。たまたまオリンピックということもありまして、中々、出版元の新評論によりますと、期待していたよりも売れているというふうに言われていまして。日本側では1000部印刷したんですが、5カ月でほぼそれを売り切ったというような状態でございまして、今増刷の計画を立てております。まだまだ今後売れるということが期待されてまして、出版社の方でも大いに期待をして、増刷の方に取り掛かっていただいている状態です。

     という、まあ中々、日本でもですね、少し評判が良かったということが我々にとって何より励みでありますけども、今日このようにして私を受け入れて下さいました商工会議所に、松永会頭をはじめ、大変私感激しております。これも今回事典を作ったことに対して一定の評価をして下さったものというふうに考えておりまして、こういった喜びをまた日本に持ち帰って、執筆にあたった、特に編集委員として加わってくれた8名の仲間とですね、この喜びを分かち合いたいというふうに考えております。

     さて、もう少しお時間をいただきまして、私今回ブラジルに参りましたのは、ブラジルに参りましたのは今年は2回目なんですが、アジア経済研究所に1987年に入ってから大体毎年1回か2回来ておりますので、それぐらいの回数を来ているということになりますが、特に今回はですね、大きな、政治的にも今日からimpeachmentの上院の最終審議が始まるというようなことが先程ニュースでも拝見いたしましたし、また先程松永会頭からのお話にもありましたように、色んな経済のメディアを見ておりますとようやく景気の底を抜けだしたというようなことが色んなところで言われているようでございます。

    そういう今、大きな変化の最中にあるブラジルの状況というものを調査するということで今回参りました。この中にいらっしゃる企業の皆様方の中にも、今回私のインタビューをお受けいただいた方がいらっしゃると思います。お忙しい中、色々と勉強させていただきまして、またそういう知識を日本に持ち帰ってそれを必要としている皆さんと共有させていただきたいというように考えております。

     今日は特に私の方から、講演ということではなくてですね、この後出てくるお話、私も学ばせていただくことが多いと思いますので、大変楽しみにしております。今日はどうもありがとうございました。

    司会

     浜口教授、どうもありがとうございました。それではこれから各部会の発表に移りたいと思います。今回発表いただく各部会では、熱心な議論が行われたかと思います。発表者の方がですね、熱が入って若干時間をオーバーしてしまうというようなこともあるかと思いますので、その際は私の方から何らかの形で合図をさせていただきますので、私の方をちょこちょことご覧いただければと思います。それでは始めに、トップバッターですけども金融部会の発表に入ります。井上秀司部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • 金融部会  井上秀司 部会長

    金融部会  井上秀司 部会長

    Pdf金融部会    井上秀司    部会長       (三井住友海上)

     皆さんこんにちは。金融部会会長を務めさせていただいております、三井住友海上の井上でございます。よろしくお願いいたします。恒例によりまして、まずは金融部会より、ブラジル経済動向、銀行業界動向、並びに保険業界動向に関して発表をさせていただきます。

     私自身は今年ブラジルに赴任したばかりでございまして、皆様方諸先輩方の前でですね、ブラジル経済をお話しするというのは非常に憚られる状態ではあるんですけれども、役割でございますので何卒お許しいただければというふうに思います。余談ではございますが、そういう私がブラジルのことを知る上で、先程からちょっとお話が出ている現代ブラジル事典というのが非常に、大変役に立ちまして、他の本とちょっと違ってですね、コンパクトにそれぞれの項目がまとまっていまして、本当に参考になりました。これは平田さんからこう言ってくれと言われた訳ではなくてですね、本当にそう思っているので、ぜひ皆さん一人一冊お手元に置かれることを心からお勧めさせていただきたいと思います。

     さて、ルセフ大統領の弾劾裁判、今仰った通りですけれども、まさに最終局面を迎えつつあります。全般の状況としては、大統領の罷免はですね、既に織り込み済みの状況というふうに言ってよいかもしれません。

     現時点は国内外のブラジルに対するセンチメント、期待値が改善しているという状況で、世界的なリスクオンの傾向もあってですね、為替や株価が反応していますけれども、まあブラジル経済を取り巻くファンダメンタルズそのものはですね、まあインフレ率の低下傾向はありますけれども、大きな変化はなく、過去経済成長を牽引していた内需は引き続き低調。失業率も高くなっています。ブラジルの経済がですね、我々の期待通りに成長を取り戻せるかどうか、これはまさに来るべき新政権が緊縮財政路線を進めてですね、またそれに伴う各種改革を実行できるかどうかがポイントというふうに考える次第でございます。

     テメル新大統領、まだ言ってはいけない訳ですが、新大統領を支える布陣としては、メイレレス財務相はじめ大変期待できる布陣だというふうに思っています。一方でですね、まあ一定の痛みを伴う改革ということもあって議会や市民の反発も多々あろうかと思いますし、これから大型の地方選挙も始まるということでございまして、まあ中々物事は簡単には進まないんだろうなというふうには思いますが、ぜひですね、強力に進めていっていただきたいなというふうに思う次第でございます。

    皆様方におかれましては、弾劾裁判後に示されるであろう新政権のより具体的な政策、今まで話があったような政策が骨抜きになっていないかどうかと、そんなことも含めてですね、議会対策、結果を注視されて、各社の戦略に反映いただければというふうに考える次第でございます。

     なお、今日の各種指標につきましては、日々数字が変化することから、便宜的に8月12日時点の数字を使わせていただいておりますので、よろしくお願いします。

     それでは早速、最初のスライドをご覧ください。2016年上期を振り返ってみますと、引き続き政治・経済 ともに動きの激しい半年でした。主なトピックスとして4つ掲げています。

     まずはペトロブラス社を巡る汚職捜査の進展です。2014年3月にスタートした本件は、ゼネコントップや現職上院議員の逮捕という政財界を巻き込んだ大スキャンダルに発展しており、6月末時点で警察・検察における捜査、いわゆるラバ・ジャット作戦は第30ステージまで進展しました。3月には連邦警察がルーラ元大統領を一時拘束するという事態まで進展しています。

     2つ目はですね、政治的混乱に伴う財政再建の遅れの懸念を背景とした格付け機関によるブラジル信用格付けの格下げでございます。2月にS&P社がBB、ムーディーズ社もBa2とするなど、6月末時点ではフィッチを加えた主要格付け3社がブラジルのソブリン格付けをBBクラスの、いわゆる投資不適格な水準というふうにしております。

     3つ目はですね、5月の上院本会議の可決におけるルセフ大統領の180日間の大統領職停止でございます。

     4つ目はこれに関連しますが、弾劾手続きによるルセフ大統領の職務停止に伴いテメル副大統領が大統領代行に就任し、暫定政権が発足したことでございます。しかしながら、暫定政権発足から1カ月以内にペトロブラス社汚職関係で閣僚3名が辞任。また弾劾手続きをリードしてきたクーニャ下院議長も収賄関係容疑により議長職を辞任するなど、不安定な政局は引き続き継続しております。

     次のスライドは、これらを受けて、直近の主要経済項目について2016年度の予測も含めてまとめてみました。2016年予測とあるのは、ブラジル中央銀行がとりまとめております、民間銀行ですとかエコノミスト予測の平均値でございます。

     まずGDPの成長率です。2015年はここ数年の低成長傾向がさらに落ち込み、マイナス成長となりました。2016年もマイナス3.2%とマイナス成長が続くものと見込まれています。ちなみにこの予測では2017年の成長率は、直近19日の数字でございますが、プラス1.2%との数字が示されています。また、政府財務省からはプラス1.6%という数字が出ていることも皆様ご承知かと思われます。

     貿易収支はですね、2014年には2000年以降初となる赤字となりましたが、2015年はレアルが対ドルで大きく下落したことが輸出を下支えした一方、国内景気が景気後退に陥り、輸入品の購入が手控えられたことを主因に黒字に転換しております。

     株価を見ていただきますと、3年連続で年末の終値が前年を下回る状況が続いておりましたが、直近はご承知の通り58000レアル前後の株価となっております。

     政策金利につきましては、ここ数年インフレ圧力に伴い引き上げられてきましたが、2016年は年初より14.25%が維持されております。インフレ率の低下がさらに進めば、年末には13.75に下がるというのが予測でございます。

     インフレ率ですが、これは2015年末に10.67%と、2002年に12.53%を記録して以来の13年ぶりの高い水準となりましたが、2016年に入り大きな流れとしては低下傾向にございます。

     為替レートは2015年末1ドル=3.9608レアルと大きくレアル安となりましたが、上期は暫定政権の発足や中銀総裁の交代がマーケットで好意的に捉えられるなど、レアル高の傾向にあります。

     なお、明日26日にはですね、FRBのイェレン議長の講演が予定されているということで、その場での発言が注目されているところでございます。

     それでは、個別に見てまいります。まずはGDP成長率のスライドをご覧ください。

     第1四半期のGDP成長率は前年同期比マイナス5.4%と、8四半期連続のマイナス成長になりました。これまでのレアル安を背景に輸出は堅調で、前期比マイナス0.3%とマイナス幅が縮小するも、投資や国内消費がいまだに低調であり、景気浮揚までには今しばらく時間を要する模様です。

     次のスライドは四半期ごとの数値を示しており、棒グラフがGDPの成長率、折れ線グラフが工業生産指数を示しております。棒グラフのGDP成長率と折れ線グラフの工業生産指数を見ると、ともに2013年後半から成長率が低下していることが分かります。

     次のスライドは財政収支について示しております。2013年までは基礎的財政収支は黒字を維持しておりましたが、2014年よりマイナスに転じております。2016年も歳出削減に向けた動きはあるものの、景気低迷による税収の減少も影響するなど、引き続き赤字の予測となっております。また2017年もですね、赤字幅は縮小するものの、1390億レアルの赤字ということで政府が発表していることはご承知の通りかと思います。

     次に政策金利とインフレ率の推移でございます。政策金利の推移は実線で示した通りでございまして、2015年には5回にわたり引き上げられ、14.25%となりました。2016年は14.25%を維持しております。インフレ率は点線で示しております。2015年はインフレ圧力が高まり、12月には10.67%に達しましたが、2016年は低下傾向にあり、6月末では8.84%というふうになっております。通年では7.31%という予測であり、引き続き政府目標の4.5%プラスマイナス1.5%のレンジは超えておりますが、2017年には5.12%に下がるとの直近予測となっております。

     続いて為替の推移について見てまいります。まず対USドルですが、2002年の大統領選の過程で社会政策の拡充、対外債務支払い停止等の過激なスローガンを掲げていた労働者党のルーラ氏が勝利する可能性が高まったことを受けて、市場はレアル売りを進めて、一時は1ドル=4レアル台になりました。その後、ルーラ氏が大統領選挙に勝利すると、市場の予測に反し、財政規律と所得格差是正のバランスを重視した現実的な政策を打ち出したことにより、レアルは戻し、2011年7月には対ドルで最高値1.5391レアルをつけるまでレアル高が進展いたしました。

     2011年後半からは徐々にレアル安に進み、米国の利上げ実施、資源価格の下落による新興国・資源国の通貨売り圧力、政治的不安要素の拡大、格下げ等が重なり、2015年後半にかけてレアル安の傾向が加速いたしました。しかしながら、ここにきて暫定政権の発足や中銀総裁の交代がマーケットで好意的に捉えられるという状況のほか、全世界的なリスクオンといったような状況もあり、現時点レアル高の傾向にあり、6月末時点では1ドル=3.2130レアルとなっております。この状況はその後も、一進一退はありますけれども、このレンジで継続しております。

     続いて、円レアルでございます。対円では、レアル相場は2015年を通じて32.6%下落いたしました。2016年に入ってもその傾向は加速し、2月19日に最安値の28円をつけています。6月末時点では1レアル=32.11となっております。

     次は、ブラジルの格付けの推移です。S&P社およびフィッチ社が2015年にそれぞれ投資不適格級であるBB+としていましたが、2016年2月にムーディーズ社も格下げを実施し、これにより6月末時点で主要格付け3社のブラジル格付けが、BBクラスの投資不適格の水準というふうになっております。

     続きまして、CDS、クレジット・デフォルト・スワップの推移を示しております。これは、ご承知のように国の信用力のバロメーターとなる指標でございまして、まあ信用リスクに対する保険料率、マーケットの評価というふうに見ていただければというふうに思います。

    ちなみにここに出ているベーシスポイントというのは、100ベーシスポイントが1%ということのようでございます。先程ご説明した格付けの低下とともにですね、CDSも高くなり、2015年9月には533.3ベーシスポイントというふうになりましたが、2016年に入りブラジル政治の先行き不透明感の和らぎなどから低下傾向にあり、6月末時点では317ベーシスポイントとなっております。また8月12日時点では257.6ということでさらに下がっているという状況です。

     これはちょっと気になる指標ですけれども、失業率でございます。昨今の景気低迷による企業の雇用調整が本格化したということを受けて、失業率は昨年から急上昇しております。2016年6月末では11.3%ということで、景気低迷の深刻さがまあこの指標に顕著に表れているというふうに言えると思います。

     続きまして、外国直接投資と外貨準備高の推移でございます。景気低迷の局面ながらも、外国直接投資は、レアル安等の要因もあるのでしょうが、比較的安定的に推移していることが分かります。長期的視点でブラジルへの投資が継続されているということが言えようかと思います。また、6月末時点の外貨準備高は約3767億ドルということで、2016年6月単月輸入の約30カ月分に相当するボリュームを確保しており、仮に急激なレアル安に直面しても十分にレアルの買い支えをできる水準にあるというふうに考えられます。

     さて、次のスライドはですね、我々金融部会所属の各銀行様による2016年の予想を、各項目ごとに最大値と最小値というレンジの中で表記させていただきました。なお、8月5日を回答期限に集計しておりますので、その後の材料は織り込まれておりませんことにご留意いただければと思います。

     まず、2016年のGDP成長率はマイナス2.2%からマイナス3.8%のレンジと見ています。2016年も2015年に引き続きマイナス成長を予測しているということです。なお、隣に上期とありますのは前回のシンポジウムで使わせていただいた予測値でございますので、まあその差ということをご参考までに表記させていただきました。

     2016年末のインフレ率は6.91%から7.5%というふうに見ております。昨年比落ち着きは取り戻しつつあるものの、物価上昇圧力は引き続き強いものというふうに予測をしております。

     為替レートにつきましては1ドル=3~3.4レアルということで報告を受けております。

     年末の政策金利につきましては、13.25%から現状維持の14.25%の幅で見られています。

     続いて次のスライドをご覧ください。ちょっと字が小さくて恐縮でございます。このスライドではですね、前スライドのご説明の2016年末の予測とともにいただいた各銀行様からのコメントを集約させていただいております。

     本日のテーマとなっております課題と対策に絞り紹介させていただきますと、課題ではですね、高金利を要因とする当地における資金調達の難しさ、ブラジル・レアルのボラティリティの高さに対する対応といった、資金面での課題が挙げられるとともにですね、硬直的な労働市場の中で従業員削減の難しさ、あるいはそのコスト負担、一方でですね、今後の回復を見越した熟練度の高い労働者の確保の必要性と、まあこういったことが挙げられています。また、代金回収リスクの高まりに伴う資金繰り、キャッシュフローマネージメントの必要性等も挙げられております。

     対策としてはですね、関連情報を幅広く収集し、知見を蓄えておくこと。具体的には日系企業間や同業種間における情報共有、ノウハウの共有が有効であると。また、ブラジルに関する意思決定は日本語・英語メディアの情報に左右されがちなので、地場における幅広い情報ソースを活用し、正確な状況認識を本社にしてもらうことが第一歩というようなコメントでございます。

     私自身はですね、ブラジルに来る前6年間東南アジアにおりまして、まあ単純に日本の視点で言えばですね、例えば東南アジアとブラジルを比較した時に、どうしてもやっぱりアジアの強みとブラジルのリスクということで際立ってしまうんですけれども、やはり違う観点、視点で長期的な取り組みをすることの必要性というのをこちらに来て実感している次第で、皆さん仰ったようにですね、正確な状況認識を本社にしてもらうということの重要性を非常に感じるところでございます。

     続きましてですね、銀行業界の動向について数字とともにお話させていただきたいと思います。

     最初に貸出残高の推移でございます。毎年二桁ペースの増加率で伸びていた融資残高は、2015年は6.7%の伸び率にとどまりました。一番下の数字でございます。

    経済成長の失速が見えていた2014年には法人向け貸出ペースは既に鈍化しておりましたが、個人消費を支えるために消費者ローンを中心に個人向け貸出は13.3%という伸び率を記録しました。しかしながら、2015年には高い金利による借入ニーズの減退、また金融機関の保守的な貸出姿勢なども相まって個人向け貸出も低調になり、全体では6.7%の伸びということになりました。2016年上期もこの傾向は続いておりまして、上期の伸び率は、一番下ですけれども、1%ということにとどまっております。

     こちらはですね、新規与信に対する平均スプレッドの推移ということでございます。まあ銀行様としてのですね、実質的な金利というふうに見てもよいかもしれません。一番上の折れ線グラフが個人向け貸出、一番下の線が法人向けの貸出、真ん中の線が個人と法人の合算といったものでございます。かかるスプレッドの大きさというのは、まあブラジルの一つの特徴になっているんだというふうに思います。2014年まではですね、ブラジル国内におけるスプレッドは低下傾向にありました。2015年以降は 景況感の悪化からスプレッドの引き上げがなされているということが見て取れるというふうに思います。

     次のスライドは不良債権比率でございます。こちらのグラフは90日超延滞の不良債権比率を示したグラフになっています。一番上の折れ線グラフが個人、一番下が法人、真ん中が合算と、同じでございます。2014年までは貸出残高が大きく伸びていたということもあり、延滞率は下方傾向にありました。

    2015年に入ってからは保守的な与信および借入ニーズの減退など、貸出残高の伸びが緩やかになったことに加え、景気悪化を背景に個人、法人の延滞額も増加したことから、延滞率の上昇が見て取れます。なお最後の月にちょっとガクッと減っておりますけれども、これはまあ期末ということでですね、6月末ということで各社不良債権処理をした結果ということで、見かけの数字は減っているということです。

     大手銀行の不良債権比率はその後も引き続き増加傾向にあるというふうに認識をしております。ただ、この影響はあるものの、大手銀行を中心に収益性は依然として高く、銀行部門は引き続き堅調に推移をしているというふうに見ております。ただし、不良債権比率の増加についてはまあ注視をしていく必要があるのかなというふうに思います。なお、各銀行の自己資本比率は相応に厚く確保されていることに加えて、ブラジル中銀により保守的に管理されていることから、金融問題によって経済が混乱するリスクというのはまあブラジルにおいては限定的というふうに見ております。

     最後に保険業界動向についてお話をさせていただきます。

     ブラジルの保険監督庁であるSUSEPの統計データによりますと、2016年1月~6月の保険料収入の伸びは2.4%と、二桁成長が続いていた2013年度までと比較すると、経済の低迷に連動して保険マーケットの成長も鈍化をしております。

     次はですね、保険種目ごとの収入保険料のデータです。特に自動車保険につきまして、販売台数の減少等も受けてですね、あるいは競争の激化も踏まえて、保険料が減少しているという状況がございます。

     次のスライドは保険種目ごとの損害率のデータでございます。全体では1.2%、損害率、いただいた保険料に対してお支払いする保険金の額ですけれども、が増加しているという状況ですが、内訳を見ると、やはりここもですね、自動車保険が2.7%のプラスというふうに悪化傾向がございます。競争の激化ととともに、まあこういう環境の下盗難事故も増えておりましてですね、まあそれが一つの大きな拡大の原因になっているというふうに見ております。皆様方も自動車の盗難につきましてはですね、引き続きご注意いただければというふうに思う次第です。

     当地の保険業界はですね、保険会社数が多いということもありまして、競争が大変厳しく、保険事業の低い収益性を運用収益によってカバーしていると、まあこういう実態がございます。

     最後に2016年のブラジル保険市場の成長見通しについてご報告させていただきます。

     ブラジル保険会社連盟が2015年(●(※注)●2016年では?●)5月に公表した成長見通しでは、自動車保険、火災新種、運送といった損害保険の成長率は1.4%~5.2%。生命保険・傷害保険ではマイナスの1.8%からプラスの3.3%。全体では0.4%~4.6%というふうになっております。

    今年度のインフレ率、先程お話した通り7.3%ということで言うと、まあここら辺を加味した実質的な成長のペースということでは、まあ実質的には若干縮小しているというふうに言ってもよろしいかもしれません。経済の不透明さ、自動車新車販売の低迷、個人消費の停滞ということで、保険業界を巡る環境も厳しくなっているという状況でございます。

     中期的にはですね、ブラジルは引き続き有望な市場であることは間違いないというふうに考えておりますが、やはり先ほど申し上げた通りですね、他地域との単純な比較ではなくて、ブラジル独自の観点で長期的に戦略を立てていくことの必要性というのを改めて感じているところでございます。

     以上で金融部会からの報告を終わります。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     井上部会長、大変ありがとうございました。ちょうど時間ぴったりに終わりましたので、すいません、質問もあるかと思いますけれども、このまま次の貿易部会の発表に移りたいと思います。それでは今井重利部会長よりですね、発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • 貿易部会  今井重利 部会長

    貿易部会  今井重利 部会長

    Pdf貿易部会    今井重利    部会長    (伊藤忠)

     高い所より失礼します。ただ今ご紹介いただきました、伊藤忠商事の今井でございます。今年貿易部会を担当させていただくということで、よろしくお願いいたします。次のスライドをお願いします。

     これからスライドが出てきますが、上期の回顧と下期の展望ということで、15年度の上期と今年16年度の上期の比較を中心にこれからご説明させていただきます。

     最初に結論めいたことを申し上げますと、去年から非常に、やっぱり、貿易黒字がかなり巨額になっているということなんですが、結果としてはですね、輸入・輸出とも金額が落ちていると。特に輸入が落ちているということなので、絶対量がやはり減っていますので、黒字がかなりたまっていますけど、これは一概に喜べる状況じゃないなと。というのがですね、今のブラジルを取り巻く貿易環境かなというのが、今の見方でございます。それでは次のスライドをお願いします。

     まず、貿易量。輸出はですね、棒グラフの半期ごと、左側の青でございます。輸入量がですね、右側の緑でございます。目盛は左側でございます。オレンジの折れ線グラフが貿易収支でございまして、右側が目盛でございます。この横の赤の線が貿易収支のゼロの線でございます。

     まず貿易量の絶対数で見ますと、2008年まで増えてきましたと。で、2008年の9月のリーマンショックを境に減ってきたと。これがずっと持ち直してきてですね、2011年、12年、13年は大体輸出・輸入とも1200億ドルぐらいでまあ横ばいだったと。これがですね、13年、14年にかけて絶対値がどんどん下がってきたというのが今の現象でございます。

     貿易収支を見ますと、基本的には2000年以降ずっと黒字でございました。13年はですね、半期は赤字でしたけど、年度で見ると13年は黒字。で、14年にですね、2000年以降で初めて年間で39億ドルの赤字になりました。ところが15年になりまして、これがですね、経済の状況、あとはレアルが4を超えたということもありまして、黒字幅がドラスティックに上がっていったということで、15年度全体で貿易黒字が197億ドルでございます。これが16年の1-6月上期だけで15年を超えまして、237億ドルの貿易黒字というのが現状でございます。次のスライドをお願いします。

     今の貿易を輸出、輸入と分けていきます。まず主要商品別でございまして、ジャンルは一次産品、半製品、工業製品というふうに分けますが、全体観から言いますと、下の輸出金額・量で見ますと金額は下がっていると。マイナスの4.3%ですと。ただし数量が非常に伸びていると。プラスの10.6%ということで、数量の伸び、特に一次産品ですが、数量の伸びで金額を補っていますが、金額のマイナスはそこまでカバーできていないという状況でございます。

     主なアイテムで見ますと、大豆が19.6%増と。あと、粗糖、砂糖が31.1%。あと大きいのは、まあこの二つが大きいんですけど、あと乗用車、航空機系統もプラスだと。ということでですね、業界によってまだら模様はありますが、基本的には金額の落ちを数量で補って、金額は若干のマイナスというのが輸出の全体像でございます。次のページお願いします。

     今度は主要国別でございます。中国、米国、それ以下の順位はあまり変わっていないんですが、やはり中国と米国の差がですね、非常にはっきりしてきたのかなと。中国は先程の大豆、粗糖等々の一次産品の輸出の伸びでプラス、これは金額ですが7%。一方米国はマイナス11.3%ということで、これは米国が特に航空機と原油関連の輸出がかなり落ち込んでいるということでこういう数字になっております。日本についてはプラス6.4%で、これは後でまた別途ご説明します。全体ですと、輸出はマイナス4.3%で、金額ベースはマイナスですけど多少でおさまっているという状況です。次のページをお願いします。

     今度は輸入でございます。これもジャンル別には一次産品、半製品、工業製品というふうに分けておりますが、まず全体観から言いますと、輸入は非常にミゼラブルでございまして、金額もかなり落ちていますし、数量もかなり落ちていると。金額ベースですとマイナス27.7%、数量ベースですとマイナス10.8%でございます。基本的にはですね、例えば、数量ベースですと軒並み落ちているんですけど、一つ、塩化カリウムというのが15年上期に比べて16年上期は21.9%プラスということで、これは塩化カリウムなので工業原料にも使いますけども、肥料原料にもなりますので、先程の大豆・粗糖等の一次産品の数量が伸びているので、肥料が伸びていてその原料であるカリウムの輸入が伸びているという構図だというふうに理解しております。次のページお願いします。

     今度は輸入の主要国別で、基本的には中国、米国はじめ順位は変わらないんですけど、ここは輸出と違いまして中国も含めて軒並みマイナスですと。金額ベースのマイナス、全体で27.7%ということでございます。日本もマイナス36%ですが、これもまた後ほどご説明します。次のページお願いします。

     今度は対日をもう少し掘り下げまして、まず輸出です。全体で見ますと、金額ベースですとプラス6.4%なんですが、このうち特筆すべきはトウモロコシと航空機でございまして、トウモロコシは900%以上の前期比アップでございまして、これはまあレアル安や、ブラジルの増産能力の増大ということで、米国産に比べて競争力が増しまして、日本向けが圧倒的に増えたという状況でございます。あと航空機につきましては、JALさんがですね、Embraer製品を採用したというのがこの期にございまして、これはちょっと特記事項として増えたのかなというふうに理解しております。

     一方輸入の方はですね、これはもう軒並み下がっておりまして、全体でマイナス36.2%。特にですね、やはり機械、自動車関係、この辺がですね、かなり落ちているのかなというふうに理解しております。次のページお願いします。

     今度はブラジルへの対内直接投資でございまして、まず左側のグラフ、これは半期ごとですけど、先程井上部会長からもございましたけど、貿易量に比べたらまあなだらかな減少なんですけど、やはり金額としても少しずつ下がってきているのかなと。例えばですね、2011年は年間で695億ドルの対ブラジルへの投資でした。去年、15年度の1年間はですね、579億ドルということで、やはり100億ドル強落ちているのかなということでございます。

     国別に見ますと、ドイツが158%アップということで、これはですね、去年の下期もそうなんですけど、ドイツはフォルクスワーゲン、ベンツ、化学会社のBASF等ですね、かなり継続的にブラジルへの工場新設もしくは増強投資をしているということで、ドイツは伸びています。あとイタリアが82.5%プラスで、これはテレコムイタリアがかなり巨額の投資をブラジルに決めたということで、ドイツとイタリアだけはかなり大きなプラスになっています。

    あとオランダとかバージン・アイランドもかなりプラスになっていますが、これは、この国の中で中国が入っていないので、中国が直接じゃなくて、まあオランダとかバージン・アイランド等SPC経由で投資しているので、そういう国というのは伸びているのかなというふうに理解しています。ただ全体では前期比マイナス14.1%の投資金額でございます。次のページお願いします。

     今度は主要業種別の対ブラジルの直接投資でございます。これもジャンルとしては一次産品、工業品、サービス業というふうに分けましたが、全体ではマイナス14.1%なんでございますけど、特筆すべきは工業に対してはプラス46.8%ということで、これが非常に大きな特徴でございまして、一次産品もマイナス18.7%、サービス業もマイナス35%なんですが、工業業界に対する投資は主要な産業全部伸びていると。

    あとそれにまつわって倉庫・輸送業系、これも伸びているということで、やはり地に足ついたところの海外投資、特に先程申し上げたヨーロッパ系が顕著のようですけど、これはかなり継続的な投資をしているというふうに理解しております。次のページお願いします。

     これはですね、最初の総括のページに7月の貿易統計を入れただけなんですけど、7月も45億ドルの黒字でした。これで、1-7月累計で今年は282億ドルの累計黒字でございまして、多分年間ですと500億ドルを超えるレベルで黒字になると思います。一方、冒頭でもご説明しましたけど、この貿易量絶対値がですね、かなり低くなっているというのが、やっぱり今のブラジルの現状を反映しているのかなということで、ここが課題というふうに認識しております。それでは最後のページ、まとめをお願いします。

     今申し上げたことを簡単にまとめましたけども、まず今年は500億ドルを超える黒字だと思われます。ただこれ、実態はですね、大幅な輸入減少、これはレアル安、ブラジルの景気悪化等々で輸出ドライブがかかっているということで、輸入がかなり減少。輸出も絶対値は下がっているということで前年比マイナスということでございますので、やはり一概に黒字ということでで喜べないなと。

    一方ですね、まあ今状況悪いんですけど、最近のアナリスト等々のプレスリリースとか分析してみますとですね、まあブラジル経済も底を打って、来年にかけて少しずつ上昇に転じていくのかなという観測が増えておりますので、やはりそういうのもですね、追い風にしながら、貿易部会としましては輸出入ともにですね、両方とも増加に尽力したいと。で、貿易量・金額ともにですね、絶対値を上げていきたいということで、まあ弊社も貿易会社でございますし、皆様とご一緒にですね、微力ながらブラジル経済、貿易に貢献していきたいと思います。

     すいません、簡単ですけど以上でございます。どうもご清聴ありがとうございました。

    司会

     今井様どうもありがとうございました。2時10分までなのでちょっと時間がございますので、質問の時間が取れましたので、ここで質問のある方挙手をお願いできればと思います。いかがでしょうか。ちょっとまだシンポジウム前半ですので、中々手を上げにくいと思いますけども、いかがでしょうか。

    コメント 今井部会長

     ではすみません、私の方から一つコメントしてもよろしいですか。このブラジル経済が底を打ったという観測の話なんですけども、私どもも日々商売をしていて、残念ながらあまり感じられなくてですね、まあ業界によってまだら模様ありますけど、相対的に言うとまだまだやっぱり、デイリービジネスは、まあ先程の失業率の話にもありましたけど、もう少し時間がかかるかなというのが私どもの体感温度でございます。

    ただ一方、うちの駐在員とかですね、出向者の、家のですね、家賃交渉とか、借りる契約交渉の話を聞いていますと、2,3カ月前と現状では大分マーケットが変わってきたのかなと。タイトになってきたのかなという報告をかなり受けてまして、聞いていますとやはり、先程の話でヨーロッパ系と中国系がかなり早目に、要するに駐在員も送ってきて動いているのかなというのをちょっと感じていまして、ですのでデイリーのビジネスはもう少し時間がかかるのかもしれませんけど、そういうインフラのところはですね、まあ少しずつやはり傾向が表れているのかなというのをちょっと体感温度としては感じ始めているところでございます。すいません、皆様のご参考までということで。

    司会

     はい。では大体、今10分ぐらいになりつつありますので、まあヨーロッパ系と中国系の動きに要注意ということで締めくくりたいと思います。

    今井部会長

     どうもありがとうございました。

    司会

     どうもありがとうございました。引き続きまして、次は機械金属部会の発表に移りたいと思います。池辺和博部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • 機械金属部会  池辺和博 部会長

    機械金属部会  池辺和博 部会長

    Pdf機械金属部会    池辺 和博    部会長     (日立南米社)

     皆さんこんにちは。機械金属部会の池辺と申します。私は前回のシンポジウムの直後、3月に前任の川崎重工の渡辺さんから部会長を引き継ぎまして、私にとっては今回初めてのこのシンポジウムということで、よろしくお願いいたします。

     本日の発表内容ですけれども、機械金属部会、多種多様の業種・分野の方が会員となっておられますので、このシンポジウムにあたって会員の皆さんからレポートを提出いただきまして、その提出していただいた企業をですね、このように6つに分類させていただいて、その個々の状況についてご報告させていただきます。そして最後に本日の副題となっております「どん底の時期ならではの戦略は」について触れさせていただきたいと思います。

     冒頭松永会頭から、ブラジル経済明るい日差しが出てきたという話もございましたけれども、今の今井貿易部会長の話じゃないですが、我々機械金属部会においてはですね、中々そういう明るい日差しの兆しは見えずにですね、ちょっと暗い話が多いんですけれども、ご勘弁いただきたいということと、先程の金融部会、それから貿易部会とも表やグラフを駆使されてほとんど定量的な話でしたけれども、私の方はちょっと定性的な、文字の多い発表ということで、ご勘弁ください。

     まず鉄鋼関連ですけれども、2016年上半期の粗鋼の生産・販売についてですが、国内景気の低迷を受けて、需要先であります建設業や自動車業界が不振ということを受けまして、生産に関しては前年比13%のマイナス。国内販売も16%のマイナス、前年比マイナスということになっています。昨年まですでに4年連続の前年比減少ということに加えてのこの減少ということになっておりまして、その影響で鉄鋼各社主要5社の高炉 14基のうち5基が休止状態となっておりまして、機械金属部会の鉄鋼関連の企業もですね、かなり厳しい状況を強いられておられます。

     輸出に関しては、前半のレアル安を受けまして、これは前年比17%の伸びということになっておりますが、ただ中国の過剰能力による安値輸出を受けて国際市況は依然低レベルにあること、あとアメリカがですね、ブラジルの鉄鋼に対するアンチダンピングの手続きを開始したということに加えて、ここ最近はレアルも反発傾向ということで、この最近の状況としては厳しいものとなっております。

     下期の展望ですけれども、ブラジル鉄鋼協会が出しております通年の予測から計算した下期の生産は、前年比ほぼ横ばい。国内販売はマイナス4%と、上期に比べてかなり改善はしているんですけれども、通年ではやはり5年連続の減少ということになりそうでございます。輸出に関しても先程申し上げましたような理由からですね、一転して大幅なマイナスということで、やはりまだ苦しい状況が続くものかと思われます。

     続きまして電力、社会インフラの中の都市交通についてご説明させていただきます。電力に関しましては、まあ経済活動の停滞により、一昨年までは電力の需給逼迫感があったんですけども、それは緩和され、さらには設備の余剰感さえ出ているというふうにみられます。したがいまして、今年上半期に行われましたエネルギーオークションの新設案件も529メガワットと、過去10年間の平均の3.6ギガワットに比べて7分の1程度というふうになっております。電力会社の方も資金不足から送配電を含めた設備の投資の先送りということで、こちらの方もかなり状況としては厳しくなっております。

     下期に関しましても、状況に大きな変化というのは期待できず、年内に予定されておりますエネルギーオークションも、小型の水力発電関連、あるいは再生可能エネルギー関連ということだけになっているようでございます。ちょっと話は違うんですけれども、電力料金の値上がりによって太陽光による小型発電の需要というのが伸びているようで、まあ大型ではないんですけども、この辺に我々のビジネスのチャンスを見出していくしかないかなというふうに考えております。

     続きまして建機とトラクターですけれども、建機の上半期の需要はですね、前年同期比27%のマイナスと。建築業の不振に加えて、まあラバ・ジャットによる、大手ゼネコンが公共事業への参加を中止したり、あるいは認可が取り消しを受けたことによって、BNDESからの融資がストップされているということに加えて、昨年末に建設機械に対するICMSの減免措置の廃止という憶測がありまして、駆け込み需要があった関係で、今年の前半1月、2月はその反動があったというのも影響しているかと思います。

     下期に関しましてもこのレポート企業はかなり悲観的に見ておられまして、下期は前年同期比42%のマイナス、通年でも35%のマイナスというふうに見ておられます。建機の平均稼働時間の前年同月比割れが止まって、底入れ観測というのも多少あるんですけれども、やはり新規の建機需要というのは来年以降になるのではないかというふうに見ておられます。

     小型建機に関しましても、状況としてはほとんど同じでして、この企業様の小型バックホーの販売は前年同期比約半分と。さらにその前年も約半分近かったということで、このような状況で下期に関しては農業や製造業等の非建設用途の需要を開拓していかれるというふうにおっしゃっていました。

     さらにトラクターに関してですけれども、こちらの方も前年同期比で上期は31%のマイナスと。農業は比較的堅調かというふうに見えていたんですけども、政府の農業向け低利融資の停滞というのがこの辺に影響しているようでございます。下期に関しましては、まあ季節的な要因、来期シーズンへの準備というのがありまして、上期に対しては20%ほど伸びるというふうに見ておられますけれども、年間ではやはりマイナス15%というふうに推測されておられるようです。

     続きまして切削機械と板金機械ですけれども、切削機械に関しましては主要の需要先が自動車業界ということで、この後自動車部会の方から詳しい市場状況があるかと思いますけども、上半期の新車の販売は前年同期比で25%のマイナス、生産の方もマイナス21%ということで、こちらの方もかなり苦労されておられます。ただこの会員企業の方はですね、新製品の投入や他社品からの切り替え等を行われて、前年同期比増、あるいは横ばいを確保されたということでございます。

     下期に関しましても、厳しい状況が続くことは変わりなく、比較的堅調な航空機や医療分野等の新規分野の開拓をされていくというふうに仰っておられました。

     板金機械に関しまして、こちらの方も主要顧客先が第1四半期で稼働率がほぼ半分であったというようなこともありまして、あと農業機械メーカーは多少の動きはあるものの、やはり新規投資は来年以降かということで、かなり苦しいというふうに報告を受けております。下期に関しましても、建設機械メーカー関連は回復の望みは薄く、農業機械に関しても稼働率はアップしているものの、やはり新規の投資までは結び付かずに、来年まで持ちこたえないといけないというふうに考えておられます。

     続きまして産業機械ですけれども、非汎用圧縮機に関しましては主要の用途が資源開発や石油関連ということで、ペトロブラスの投資の抑制や、資源価格の低位安定でかなり苦労されておられまして、メンテナンスやアフターサービス等の案件の掘り起こしが中心の活動となっておられたということです。下期に関しましても、ペトロブラスの生産計画がさらに下方の修正の見通しもあったりして、市場の好転の兆しはなく、やはり継続してメンテナンス、アフターサービスの案件を粘り強く追いかけていくということになりそうです。

     続きまして、ポンプに関してですけども、カスタムポンプに関しましてはやはり主要用途が製鉄、石油関係ということで、需要先の企業で従業員を40%もカットしたという企業もあったということで、この辺からも推して量るべしかと思います。標準ポンプに関しましては、主な用途が農業、建築設備ということで、こちらの方は前年同期比5%伸びたということですけれども、下期に関しましてはどちらも投資の見送り傾向が強くてですね、需要は減少するというふうに見ておられます。

     ホイストとクレーンですけれども、こちらはやはり主要先が自動車、鉄鋼関連ということで、需要は前年同期比で20%から30%の減ということで、ドイツの大手クレーンメーカーは天井クレーンの事業から撤退を決定されたというふうに聞いております。ただこのレポートいただいた企業はですね、風力発電タワーの特需的なものが上期にあった関係で、業績はアップされたというふうに聞いております。ただ下期に関しては、やはり回復の見込みは薄く、その風力発電の特需も上期に一巡してしまったということで、下期に関しましてはホイストの交換需要やライトクレーン等の小さな案件を拾い集めていくということになりそうでございます。

     竪型ミルに関しましては、主要用途はセメントですけれども、その重要が前年同期比で14%マイナスというふうになっておりまして、新規の受注どころかですね、注文のキャンセルや延期が続出したというふうに聞いております。従って下期の方も需要の回復は見込めず、その注文の延期やキャンセルの影響が残りますものですから、既存顧客を巡回し、スペアパーツの需要を探っていくというふうに考えておられるようです。

     最後になりますけども、小型エンジン・ベアリング・潤滑油です。小型ディーゼルエンジンに関しましても、やはり状況としては変わらず、この会社の販売は前年同期比台数で39%のマイナスというふうになっておられます。下期に関しましても、回復は早くて10月以降を見ておられまして、年間で台数で70%程度という見通しを立てておられます。

     ベアリングに関しましては、自動車や二輪向け、アルゼンチン向けの輸出が若干伸びたんですけれども、国内需要の低迷がありまして、全体では15年の下期に比べて若干微増だということでございました。ただ一般産機向けは客先の在庫が多く、受注が低迷しているというような状況でございます。下期に関しましては、やはり自動車・二輪向けは国内は若干減なんですけども、これをアルゼンチン向けの輸出で少しでもカバーを期待されておられます。一般産機向けに関してはまだまだ在庫水準が高く、回復の見込みが立たないものですから、医療や鉄道等新市場への進出を図っておられます。

     最後に金属加工油剤ですけれども、こちらの方もやはり主要顧客が自動車関連ということで、上期は前年同期比14%のマイナス。下期に関してもやはり回復は2017年以降と見ておられますので、全体で全年同期比10~15%のマイナスというふうに推定されております。

     以上が機械金属部会の各業種別・分野別の報告でございます。

     最後に本日の副題となっております「どん底の時期ならでは戦略」について、レポートいただいた企業の皆さんのコメントを整理した形で報告させていただきます。結論としましては、奇策や妙案はなくてですね、やはり地道に基本的な対策を実行していくことであろうと思います。

     すなわち、コストの削減ですけれども、部品等の製品コストの削減に加えて事務処理の効率化等によるオペレーションコストの削減の両面になるかと思います。

     また、これもコスト削減の一環になりますけども、スリム化の実施で、人員の削減に加えて経営の現地化や現地人の幹部登用というようなこともなされておりまして、これは日本人の削減にもつながり、さらにコストの削減につながるものかと思います。

     ただ、削減だけではこれはじり貧になってしまいますので、受注、売上の確保も当然必要になって来ます。サービス、保守等の中小型案件もですね、積極的に受注に行く。それから従来手がついていなかった新規市場への参入を図る。あるいはローラー作戦やトップセールスによる顧客への巡回。さらには周辺国への輸出の拡大というようなことも実施されておられます。

     また、こういう時期ですので、社員のモチベーション維持というのも重要になってまいります。従いまして、現地人管理職への経営情報の開示や、従業員の教育機会の充実等を実施されておられるということです。

     またこのような経済・経営環境でですね、業界の再編や集中が起こりうる業界もございますので、その辺の動向のウォッチ、分析、そして対応の検討というのも重要だというふうに仰っていた企業もございます。

     駆け足になりましたけども、以上が機械金属部会の発表でございます。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     池辺様どうもありがとうございました。ちょっと時間がございますが、ご質問等ございますでしょうか。いかがでしょうか。よろしいですか。それでは質問ないようなので、池辺様どうもありがとうございました。続きまして、自動車部会の発表に移りたいと思います。溝口功部会長より発表をお願いしたいと思います。溝口様、よろしくお願いいたします。

     

     

  • 自動車部会  溝口功 部会長

    自動車部会  溝口功 部会長

    Pdf自動車部会    溝口 功    部会長    (ホンダ)

     皆様、改めましてこんにちは。実は私、ブラジル生まれですから、ちょっと日本語の発音がうまくいかないところがあるかもしれませんけど、我慢して聞いてください。それでは、私から自動車部会の報告をさせていただきます。カマラからいただいたテーマに沿って四輪業界、二輪業界の順に動向を説明させていただきます。

     まず始めに、四輪業界の上期振り返りです

     上期の自動車市場は金利引き上げや失業率の上昇による景況感悪化の影響を受け、販売は98万台、前年比74%となりました。4年連続で前年を下回る結果となりました。輸入車比率についても、レアル安の影響を受け、14.2%と5年連続で低下しております。

     続きまして、2016年の月別販売台数です。1月以降、景況感の悪化により、左側の2015年に比べ販売がさらに落ち込んでいることがお分かりいただけると思います。一方、在庫月数は各社生産調整により、若干の落ち着きが見られるものの、依然高いレベルであります。

     こちらは生産と輸出の推移です。市場の状況を反映し、上期の総生産台数は101万台、前年比で78%となりました。一方で、レアル安の影響で輸出は増加しており、前年比114%となりました。

     こちらは輸出台数をカテゴリー別、輸出相手国別に見たものです。カテゴリー別では乗用車が前年比116%、ライトトラックが110%となり、レアル安を受け増加しました。輸出相手国別では販売が上向きとなっているアルゼンチンに輸出が増えました。それと、メキシコ向けも増えております。

     こちらは昨今の市場低迷によるメーカーと販売店への影響をまとめたものです。左は自動車メーカーの生産調整の状況です。ビッグ4を中心に集団休暇やレイオフなどの生産調整を継続しており ブラジル全体の稼動率平均は44%となっております。右側は販売店への影響です。ここ1年で、四輪・商用車・二輪合わせて1400店以上の販売店が閉鎖となり、雇用影響は5万8000人と推定されています。なお、このうち四輪の新車販売店は約960店含まれております。

     このような厳しい市場環境ではありますが、直近のトレンドとしてはSUVマーケットの活況をご紹介いたします。

     左のグラフはカテゴリー別の販売推移です。黄色で示したところがSUVとなりますが、ご覧いただくと分かる通り、他のカテゴリーが販売を落とす中、SUV市場だけが前年を上回り成長を続けております。これは、以前からトレンドとなっていたSUVマーケットへ各社が相次いで新車を投入したことによります。

     今月には日産さんが小型SUV であるKICKSをリオ五輪とあわせて発売され、SUVマーケットはさらに活況となる見込みです。

     続きまして、こちらはブランド別の販売台数とシェアの実績です。一番右は昨年と今年の上期における販売台数の差異を示していますが、ビッグ4と呼ばれるブランドが大きく販売台数を落としております。一方で、日系ブランドは各社がシェアを伸ばしており、厳しい市場環境でもそのブランドや品質などを背景に健闘していることがお分かりいただけるかと思います。

     続きまして、下期の展望に移ります。

     まずは経済指標の予測です。中央銀行の2016年予測はGDPの成長見通しおよびインフレ見通しが前回予想よりも若干悪化した一方、金利は13.25%へ引き下げられると予測されております。

     こちらは、それらの状況を踏まえた2016年の自動車業界予測です。ANFAVEAは今年1月時点で2016年の市場を237万台と予測していました。その後6月の発表では、直近の販売状況を反映し、208万台に下方修正しました。一方、自動車部会としては年初に200~210万台と予測しましたが、市場状況は年初から大きく変わっていないと認識しており、前回と同様の200万台と予測しております。生産台数についてはANFAVEA予想と同様の230万台と自動車部会では予測しております。

     次に中古車・新車別の販売台数です。新車については先程申し上げた通りですが、中古車市場は新車ほどの落ち込みが見られず、2016年は前年比10%減の900万台前後を予測しております。

     次に長期展望に移ります。

     まずは、マーケットの長期予想をする上で重要となる各金融機関の経済指標予測を見ていきます。年初の予想と比べると、直近の政治動向などにより各指標とも自動車産業にとってはプラス方向に修正されております。GDPについては2017年からプラス成長に転じるという予想となっております。このような経済予測や現状の販売状況を総合的に見た場合、ブラジル自動車市場が回復に転ずるのは来年2017年以降であると自動車部会では予測しております。

     続きまして、上期に起こった政変による自動車業界への影響予測でございます。左側にございます通り、現在テメル暫定政権は財政赤字削減を最優先し、いくつかの改革に着手しております。一方で、主要な経済政策は維持しており、暫定政権下では自動車業界への直接的な影響は少ないと考えております。 また、右側にございます通り、仮にテメル政権が正式に発足した後は、新体制の下、経済政策を含め本格的な改革を実行するものと思われます。具体的には、増税を伴う税制改革、現地調達や輸出の促進政策などであります。

     今後、自動車市場は緩やかな回復に転ずると予測されますが、税制改革など経済政策の転換による影響も注視する必要があります。2017年で終了するInovar-autoの今後も含め、政府に対する業界一丸となった取り組みが必要と考えております。

     続きまして、日系ブランドの課題への対応についてご説明させていただきます。

     こちらは、前回シンポジウムにて説明させていただきました日系ブランドの課題と、それに対する各社の取り組みでございます。今回はこの項目に沿って、前回からアップデートがあるトピックをご紹介させていただきます。

     まずは事業体質の強化について。トヨタさんのエンジン工場を取り上げさせていただきます。

     トヨタさんでは、部品現調率の向上、とりわけエンジンの現地生産による為替影響とコストの低減を目指し、今年5月に中南米で初となるエンジン工場の開所式を実施されました。ポルト・フェリス市にあるこの工場では年間10万基のエンジンが生産される計画です。また、「シンプル&スリム」、「フレキシブル」をキーワードに、革新的な生産技術が導入され、その結果、コンパクトで需要変動に強い工場となっております。

     さらに、ブラジルのお客様に適した商品の提供を目指し、今年8月に中南米で初となるトヨタ技術センターの開所式を実施されました。こちらではデザインラボにおけるブラジル固有のデザインの研究や、材料ラボにおける部品現調化に向けた材料の独自研究をされる計画です。

     続きまして、ブランド強化の観点で環境安全関連のトピックをご紹介させていただきます。

     まず環境関連の上期トピックとして、今年6月にトヨタさんのnew Priusが発表されました。new Priusはブラジルの自動車産業の未来を牽引して行く車としてアナウンスされ、輸入関税引き下げや自動車保有税の返還など、官民一体での普及が進められております。

     次に安全規制関連の直近の動向をアップデートさせていただきますと、側面衝突の技術規格が2018年8月から有効になることが確定したほか、灯火器に関する法規改訂提案が今年2月に提出されております。

    将来的な国連法規への正式加盟を見据えて、ブラジル法規も国際基準に調和していくものと思われます。このような環境安全領域は、技術で優位に立つ日系メーカーにとってはブランド強化の切り札となり得ることから、より一層の取り組みが必要になると考えております。

     それでは四輪パートの総括に移ります。

     この1年間を振り返りますと、昨年後半に始まりました急激なレアル安および景況の悪化から一転、今年はジルマ大統領の罷免手続きが採択された4月以降、為替含めた経済指標で若干の改善が見られました。このような状況から、ブラジルでは政治経済の急激な変化が今後も起こりうるということ、またそれを前提に急激な変動に耐えることができる事業体質の強化が大変重要であると改めて認識いたしました。

     引き続き為替対応を踏まえた部品現調化や、生産性向上などによるコスト削減、および輸出促進を長期的な視点で推進する必要があると考えます。一方で、現調化や輸出のさらなる加速には低いコスト競争力を打開する恒久的な取り組みも官民連携の下で必要と考えております。

     こちらはそのような背景を踏まえて政府への提言でございますが、自動車政策や自由貿易政策を含め、幅広い領域について取り組みが必要と考えております。引き続き業界一丸となって、是正提言を粘り強く続けていくことだと考えております。どうか皆様ご協力賜りますようよろしくお願いいたします。

     続きまして二輪業界について状況を説明させていただきます。

     まず生産・販売の動向でございます。インフレ、レアル安、解雇増等の経済指標悪化により、2016年上期の卸販売は45万台、前年比69%と、5年連続で前年割れとなりました。また低調な販売状況を反映し、生産は46万台、前年比67%となりました。一方でレアル安を背景に輸出台数は前年比170%と大幅に増加しました。

     こちらは登録ベースの月別販売推移です。失業率の上昇や顧客の購買力低下によって、16年上期は前年比70%前後の販売となりました。負債や金利の高止まり等により、下期も厳しい市場環境が予測されます。

     最後になりますが、二輪販売の支払い形態推移でございます。3月までの実績ではありますが、ファイナンスの与信審査厳格化も続きまして、ローン販売比率は低下しております。このローン販売比率の低下は市場が大きく減少に転じた2012年から継続しており、ローン販売の減少が市場に大きく影響していることがお分かりいただけるかと思います。

     以上で自動車部会の報告とさせていただきました。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     溝口様どうもありがとうございました。大変厳しい状況にある中、具体的な対応策、そして提言に至る発表をいただきまして、誠にありがとうございました。まだ時間がかなりございますので、非常に興味深い内容だと思いますので、ここで質問等ございましたら挙手をお願いできればと思います。いかがでしょうか。中々、初めに手を上げるというのはちょっと勇気がいると思いますが、かなり時間がありますので、この際にという方はいらっしゃいますでしょうか。溝口様の方で何か補足したい点はございますでしょうか。よろしいでしょうか。

    溝口部会長

     先程色んな方から、少し景気回復が見えてきた感じだというようなコメントありましたけど、確かに実商売ではまだ何も、多分学者の話かもしれません、我々日々の商売では何も影響ないんですけども、まあ今月末、31日、1日あたりまでにブラジリアの方で大分決まってくると思いますので、その後を楽しみにしております。

    司会

     溝口様どうもありがとうございました。それでは前半の部最後の発表となります。コンサルタント部会の発表でございます。西口阿弥部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • コンサルタント部会  西口阿弥 部会長

    コンサルタント部会  西口阿弥 部会長

    Pdfコンサルタント部会     西口阿弥    部会長     (EY)

     高い所から失礼します。コンサル部会、EYの西口です。どうぞよろしくお願いします。

     コンサルタント部会では会員である主に人材派遣会社、広告会社、コンサルティング会社で話し合いを8月10日に行い、一般的な動向をまとめました。

     人材派遣会社ですが、景気は良くないが、基本的に求人数は減っていない。ただし失業率の上昇のため、履歴書が送られる数は6カ月前に比べ12%増加したそうです。現状も、日本企業の日本語を話せる従業員の雇用希望は減っていないようです。給与削減などの理由から、従業員の入れ替えをしている企業はまだ多いそうです。失業率が上昇したため、良い人材が今余っている状況です。

     広告会社ですけれども、広告のデジタル化が多くなり、ソーシャルメディアの広告が増えているようです。一般的に、これは日系企業だけでなくて、自動車や飲料会社の広告数は増加している傾向にあります。

     次ですけれども、法律事務所。法律の事務所さんは基本的に新規の投資の案件はないそうです。また、訴訟は一般的に増えており、特に労働訴訟が多くなっているようです。また、延滞債権が増えているため、その関係の案件で忙しいようです。

     コンサルティング会社ですけれども、やはりあまり新規の投資案件はない様子です。M&AやJoint Ventureを検討している会社はあり、買収案件など、検討しているが実際に踏み切れていない状態にある傾向です。また、在庫の整理に関連した税務のコンサルティング。主に在庫処分についての問い合わせ、税務クレジットの解消に関わる問い合わせが多くあります。また、在庫管理、節税や、たまった税務クレジット解消のための物流の変更を検討される会社もあります。

    以前は高いコストなどを考えて物流の変更まで検討される会社は少なかったのですが、最近は前向きに考える会社がいくつかあります。また、コンサルティング会社でも、延滞債権に関連した問い合わせも同様ございます。また、

    借り入れに関連し、増資、減資、デットエクイティーコンバージョンを検討している会社が増えました。その税務についての問い合わせが増えました。前回、労務とリストラに関する問い合わせがあると申し上げましたが、まだ続いているのが現状です。また、不正防止、不正調査や、その対応の問い合わせもあります。

     次のスライドですが、経済概況についてちょっと歴史背景からお話ししたいと思います。

     皆さんご存知かと思いますが、1980年代から90年までは失われた80年代と言われています。70年代後半における石油ショックと輸入依存体制により、ブラジルは80年代に多額の対外債務を抱え、価格の上昇を抑えることができず、超インフレ状態に至ります。所得配分の不平等、膨大な低所得層、高金利、さらに信用も得られない状態が続きました。

     1990年から2000年までは90年代における構造調整と改革と言われ、90年代初頭、ブラジル政府はインフレを抑制し、著しい民営化制度でブラジル市場は自由化します。90年代を通して厳格な財政政策が導入され、政府の規模と支出が縮小され、対外債務を返済します。所得水準の低下、政府の支出削減と高金利による10年間は消費が減退しました。

     2000年以降は継続的な成長があったと言われた時期であり、2000年以来安定した経済と対外債務の全額返済により金利は低下、信用市場も回復し、所得再配分政策により5000万人は新中間所得層に加わりました。所得の増加と信用が得られることにより、ブラジル人の消費は拡大しました。これらの要素と、政府の産業全般への優遇政策、さらに自動車産業への優遇措置が人為的な成長と国内債務の増大につながりました。

     その後の経済概況ですが、2000年以降第一期に持続可能な成長時期と言われたルーラ大統領の第2政権。第二期はルセフ大統領第1政権の投資グレードと言われ、第三期は不安定である時期と言われているルセフ大統領の第2政権です。見通しとしては、2017年以降は回復するのではないかと言われています。

    こちらは、ちょっと古いデータ、5月現在の指数となりますが、ブラジル中央銀行が今週発表したBoletim Focus、市場に関わるレポートでは、2017年の経済活動とインフレに関する市場の予測は以前よりも良くなりました。

    GDPにつきましての予想は、2016年も同じですけれども、2017年については1.2%成長があると修正しています。2016年についても、以前はマイナス3.86%でしたが、今ではマイナス3.2%としています。ブラジル財務相はマイナス3.1%からマイナス3%に先週予測を修正しました。またインフレにしても、IPCAインデックスは2017年は5.14%から5・12%と修正しています。

     次のページですが、今行われているルセフ大統領の弾劾、2月以降のまとめです。下院は4月に必要な3分の2の票を得てルセフ大統領の弾劾手続き開始を承認しました。承認された後、本件は上院に移され特別委員会が審議します。2016年5月12日、上院は単純多数決で弾劾手続きの開始を承認し、ルセフ大統領は最大180日職務の停止となり、裁判が始まりました。同じ週に、暫定政府は当時の副大統領のミシェル・テメルにより発足しました。

     ルセフ大統領は政権第一期、第二期に連邦政府の支出に違法な金融取引を行った容疑で裁判にかけられています。裁判での審理の後、上院はまた採決を行い、大統領が完全に失職するには3分の2の弾劾賛成票が必要であります。裁判は始まっており、30日に投票が始まり、30日あるいは31日に弾劾についての結果発表がされる予定です。

     暫定政府の今後の政策ですが、ミシェル・テメル大統領代行はブラジルの成長を再び確保するために、緊縮を提唱するPMDBが当初2015年11月に掲げた「将来への架け橋」と題した改革案を公表しています。インフラに関する可能な分野の民営化、また増税を好まないと言っています。しかし、側近によると税率の引き上げもやむを得ないことを認めています。

     ブラジルのM&Aについてですけれども、経済、政治状況につきまして、2015年に比較しまして取り引きの量は減少の傾向にあります。18カ月前に比較しEBITDAsの減少、米ドルに比較しレアル安により、ブラジルの企業は国内、海外企業にとって魅力的であり続けます。

     ブラジルでのM&A取り引き件数ですが、こちらは2015年1月~6月末、2016年の1月~6月末を比較したものです。国内とアウトバウンドは減っていますが、インバウンドの案件数は増えています。

     最後になりますが、6月9日のVeja誌では、GDPは底を打ったのではないかとの記事が載りました。ブラジル株式市場も良くなっている傾向にあります。また、ルセフ弾劾手続きも終わりに近づいています。また、1万1480人の選手、205カ国が参加したオリンピック、成功に終わりましたが、その力がブラジル経済回復の後押しをすることを期待しています。

     コンサルタント部会からのメッセージおよび、今回の副題「どん底の時期ならではの戦略は?課題整理と対処法」ですが、まずは良い人材の採用、確保を、です。良い人材が余っているため、その採用をする機会ではあるのではないでしょうか。また、リストラされている会社もあると思いますが、景気が良くなることを期待し、可能であれば良い人材を確保できればと思います。

     次は、M&Aの準備を。今M&Aに踏み切れない場合、近い将来恵まれた環境になってきたらすぐできるよう資金を準備するのはいかがでしょうか。

     また、不動産やM&Aは掘り出し物を探そう。すべての不動産や会社の価格が下がった訳ではないですが、目を凝らして探したら良い物件、オポチュニティーがあるのではないでしょうか。

     キャッシュフローで悩まれている会社さんは、いま整理をする機会ではないでしょうか。

     また、労務訴訟はブラジルの場合なくなることはありませんが、この機会に人事ポリシーや人事管理などを考える機会ではないでしょうか。

     以上になります。

    司会

     西口様、どうもありがとうございました。コンサルタント部会から色々な提言が出されておりますが、こちらの発表につきましてご質問等ございますでしょうか。挙手をお願いできればと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、西口様どうもありがとうございました。

     それでは前半の部、金融部会、貿易部会、機械金属部会、自動車部会、コンサルタント部会の5部会の発表を終わりました。予定よりもかなり早く進行いたしまして、若干時間がございますが、前半の部でですね、ちょっと質問の時間が取れなかった部会もございますので、ここで前半の部のところで何か質問をぜひしたいという方は挙手をお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。

     「どん底の時期ならではの戦略は」ということで前半5部会から報告がございましたが、皆さんの報告を伺っておりますと、やはり今、ブラジルの期待値とですね、今まさに非常に苦しい現況のギャップがすごく浮き彫りになったのではないかなと思います。そうした中でもですね、自動車部会様のように具体的な対応策、それから要望といったものが出てきていたかと思います。前半の部以上で終了いたしますけれども、また後半もですね、色々な対応策、要望等出てくるかと思いますので、その辺を期待しまして、まず前半の部を終了したいと思います。

     まだ時間がすごくあるんですけれども、後半の開始はちょっと早く開始してもよろしいでしょうか。支障なければ、これから20分間休憩しまして、後半の部を、3時30分の予定なんですけれども、3時20分ぐらいに開始したいと思いますが、よろしいでしょうか。それではこれから20分間コーヒーブレイクとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。また20分後に再開いたしますので、こちらの方集合いただくようにお願いいたします。では前半の部終了させていただきます。ありがとうございました。

    コーヒーブレイク

    司会

     シンポジウム後半を開始したいと思いますので、席の方についていただきますようお願いいたします。よろしいでしょうか。シンポジウムの後半開始いたします。大方席につかれましたようですので、これより業種別部会長シンポジウムの後半戦に移りたいと思います。よろしくお願いいたします。まずは電気電子部会の発表から始めたいと思います。それでは磯村恵次郎副部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • 電気電子部会  磯村恵次郎 副部会長

    電気電子部会  磯村恵次郎 副部会長

    Pdf電気電子部会    磯村恵次郎    副部会長    (EPSON)

     電気電子部会の発表をさせていただきたいと思います。本日残念ながら部会長の千野がちょっと都合が悪いということで、私磯村が代行させていただきます。よろしくお願いします。

     まず我々業界が置かれている事業環境の認識ということで、このようなスライドにまとめさせていただきました。ここにありますように、大きく4つの観点からですね、レアル安、インフレ・高金利、政局の混乱、リセッション・失業率上昇というような環境の中で、耐久財の消費、生産用機器、公共事業、まあ全ての面でですね、まあ事業環境はどん底 の状況にあるという認識を私どもの業界は持っております。

     今の認識を数値的に表わしているのが、このマナウスでの主要の家電製品の生産量です。2014年から15年、16年という形で、ご覧になって分かりますように、全てのカテゴリーで右肩下がりという状況にあります。中でも液晶テレビに代表されるオーディオビジュアルの世界ですね、それについては年々30%の減少。

    それから携帯電話は従来この業界でどんどん伸びてきたカテゴリーですけれども、携帯電話についても生産が減少していると。右側二つ、電子レンジとエアコンといういわゆる白物家電。ここのカテゴリーにおいても、ご覧になって分かりますように、大幅な減少をしているというのが今の状況です。

     一般的にはですね、市場自体は2割~3割程度減少しているというふうに言われております。ただ、それ以上に生産量が落ちている分野というのはですね、その後の流通チャンネルの在庫の調整というような部分もあるかと、そういうふうに見ております。

     ここで会員の企業様のアンケート結果を簡単に、今年の上期の状況をまとめております。まず上の表が半年前、今年の2月時点での今年1年間の展望がどうだったかというのを出しております。ここにありますように、62%の企業が今年は業績が回復するだろうと、改善するだろうという、そういう見方をしておりました。

    それを今回のアンケート、下半分のところと比べてみますと、まず上期だけで見ますと、残念ながら実際に改善をしたという企業が42%ということで、半年前よりも少し悪化をしていると。逆に業績が悪化しているという企業が、半年前は15%でしたけれども、今は33%というような傾向にあります。ただ一番下の表を見ていただくと、下期の展望という観点では半年前の見方とほとんど変わっていないと。67%の企業がですね、業績が下期には改善するだろうというふうな形で見ております。

     今のところを分析をしますと、まず、リセッションの突入前からですね、事業構造の改革に取り組んできた企業が多くて、どん底の今のこの経済環境の中でも着実に改善に向かっている。先程ご覧に入れましたように、着実に改善に向かっているところが、全体の40%の企業が業績が回復してきているというところです。

     さらにですね、2点目でいきますと、上期は、15年の上期と比較をしておりますので、15年の上期というのがいわゆるリセッションの突入前であっただろうというところから、業況悪化は、特に半期ずつで比べてみると多く増えているんですけども、下期に向けての展望についてはほとんど半年前から変化はないということです。

    で、景気の底打ち感、政治混乱の決着、為替安定への期待はありますけれども、各社ともですね、非常に慎重な事業経営を目指していると。下期に回復はするだろうという見方はしていますけれども、慎重に状況を見極めながら経営判断をするというようなところがポイントだと考えています。

     上期についての、各企業のアンケートのコメントを、ネガティブなコメントとポジティブなコメント、ニュートラルという、この三つの形でグルーピングをしてまとめております。

     ネガティブなポイントは、景気の低迷だとか、取引先の資金難、値上げによる販売数量減、それから資金管理、債権管理という問題がありました。一方、上期でも景気の底打ち感というのが一部の企業さんで出てきていると。さらに高付加価値商品へのシフトということで、やはりブラジルでも富裕層にターゲットを絞ってですね、付加価値の高い商品の製造販売にシフトするというような形で業績を回復させている。

    あるいは、市場全体はシュリンクしているんですけれども、その中でシェアを拡大することで何とか数量を維持する、あるいは事業を伸ばすというような形ですね。それから輸出拡大。このレアル安という状況を最大限に利用して輸出拡大をする。一部の企業さんではですね、オリンピック特需というような形でプラスアルファで特別な需要を獲得されたところもあります。

     下期についてのコメントについてはですね、まず同じようにネガティブなところでは、市場環境の急速な改善は望めないと。回復はしてくるだろうけれども、やはり時間がかかるという、そういう見方をしています。それから、まあ色んな形で、政治についても為替についても安定をしてほしいという希望的観測も含めてあるんですけれども、本当にそうなるかという色んな意味での懸念はありますと。ポジティブなところについては、ほとんど上期のコメントと同じですので、そこは割愛します。

    ニュートラルのところでいきますと、やはり慎重に経営判断をしていきたいということで、投資の厳選ですね。それからまあ企業の構造改革、あるいは経費削減というようなところで体質を強化するというところ。ポスト・リセッションに向けた種まきの時期ということで、実際に景気が上向いてきた時のために事前に体制を構築していくというような形で考えております。

     それでは、シンポジウムの副題の「どん底の時期ならではの戦略は」ということについてのまとめですけれども、まずは、短期的な業績に左右されずに長期視点での経営判断が重要ということで、これは必ずしもブラジルだけの判断ではなくて、日本の本社に対してのメッセージというところもあります。一部の企業さんが撤退されているというそういう中でも、そうは言っても頑張ってブラジルでこれからも伸ばしていくんだというような形でですね、中長期的な観点での経営判断が重要な時期だろうというふうに考えております。

     またこの時期はですね、経営上の基礎体力の強化ということで、事業戦略だとか財務、人材を見直しをする。それからリセッションの出口に向けての準備をしっかりと固めるというような、この時期でなければできないような戦略があるのかなというふうに考えております。それから、スペイン語圏でのビジネス伸長というところでは、やはり輸出ですね、このレアル安という状況を最大限に活用した輸出ビジネスというところを見直しをするということかと思います。

     最後にですね、商工会議所、ブラジル政府、日本政府への要望ということで、特に目新しい話はないかと思いますけれども、やはりその、ブラジルでのビジネスの難しさというところ、税制の面だとか、あるいは労働法の面、インフラ、そういったところでですね、少しでもビジネスがやりやすいような環境を作ってもらいたいということです。

    一番最初にありますように、政治・経済・為替の健全化、安定化というところがやはり一番の基本になります。昨年のような大幅な変動のある中では、非常にまともなビジネスを続けるというのが難しい状況ですので、とにかく安定に向けた努力を、官民一体となってですね、進めていただきたいということです。

     私の方からの発表は以上でございますご清聴ありがとうございました。

    司会

     磯村様どうもありがとうございました。非常に手短かに対処方策、それから要望事項まで広範囲にまとめられまして、どうもありがとうございました。この電気電子部会は以前のプレゼンでも既に構造改革、経営構造改革がかなり進んでいて、前回の時もまあブラジル経済の低迷にも対応できるというようなコメントをされていまして、まさにそのコメントを裏付けた形に、まあちょっとマイナスになっている部分はありますけれども、そういった状況なのかなと思います。この報告発表で皆さんから質問はございますでしょうか。

    いかがでしょうか。ちょっと皆さん質問しづらそうなので、私から一つ質問させていただいてよろしいでしょうか。確か私の記憶では、以前の報告で、インターネット販売の取り込みというか対応というか、そういったことも対応策として挙げられたというふうに記憶しておるんですけども、そちらの方は今回アンケート等で反応ございましたでしょうか。

    磯村 副部会長

     前回の発表では、海外から安い商品がネット経由で販売されて、個人輸入のような形で入ってきているというのが一つ脅威だというようなポイントがあったかと思いますけれども、今の状況はですね、まあその後半年、1年経ってから、実はそういったビジネスが減少してきています。

    というのは、もう、為替によってですね、やはり海外からドルベースで購入するというところ、海外から購入する際の価格のアドバンテージというのが少なくなってきているというところで、いわゆる個人輸入で外から物が入ってくるという部分については自然となくなってきているというような状況です。

    司会

     分かりました。どうもありがとうございます。皆様の方から質問ございますでしょうか。他に、何かこの際質問したいという方、ぜひ挙手をお願いできればと思います。いかがでしょうか。中々質問しにくい感じですかね。はい。

    三菱商事 松永氏

     三菱商事の松永です。これは電子電気の業界さんだけではないと思うんですけど、まあブラジルの経済がここまで弱っていて、先程から皆さん良くなっていると言われる割には実感がないということなので、やはりブラジルの国内だとかですね、あとメルコスールに目を転じてみてもですね、まあアルゼンチンが変わるといってもまだ時間がかかると。

    こういうことになると、やはり域外、先程のプレゼンの中でもスペイン語圏でのビジネス伸長を目指した活動ということなので、ポル語とスペイン語の違いはありますけども、文化的にはかなり近くて、距離も近いということなので、域外、とりわけやはり太平洋同盟だとか、あっちの方に向いていくと。今テメル政権もそんなことを言っていますけども、例えば電気電子業界の皆さんでそういった対応に対するアプローチだとかですね、提言だとか、あるいはそういうことをされていなくても、どういった方向でそういったメルコスールの殻を破ったそういった協定ですか、今動いているのか、その辺ちょっとお聞かせいただければなというふうに思います。

    磯村 副部会長

     実際のところ、メルコスールの枠を外れたような形でのアプローチというのは、私の知っている限りではちょっとないんじゃないかなと思います。やはりメルコスール域内を中心としたビジネスの拡張というのをまず一次的には考えていると。やはりブラジルコストという、このコスト構造の中で輸出をして、コスト競争力があるかどうかというところを見ますと、やはりメルコスール以外では難しいんじゃないかなというふうに私は見ています。

    司会

     他に質問いかがでしょうか。はい、では質問ないようですので、磯村様どうもありがとうございました。続いて化学品部会の発表に移ります。発表の方ですね、中村博部会長よろしくお願いいたします。

     

     

  • 化学品部会  中村博 部会長

    化学品部会  中村博 部会長

    Pdf化学品部会     中村 博    部会長    (久光製薬)

     皆さんこんにちは。久光ブラジルの中村と申します。化学品部会の説明をいたします。よろしくお願いします。次お願いします。

     私ども化学品部会では従前より会員各社によるアンケートを行いまして、その結果から2016年上期の回顧と下期の展望を明らかにするという試みを行っております。現在化学品部会の会員企業はこちらの53社ございます。そのうち28社から回答をいただいております。複数の事業をお持ちの会社様も多くいらっしゃいますので、今回38回答をいただいております。画面で青色の文字が回答をいただきました企業様でございます。次お願いします。

    最初におことわりをしておきます。アンケート集計にあたってのおことわりでございます。先程申しました通り、回答数は企業ベースで28、事業ベースでは38ございました。当部会の会員企業の事業は極めて多岐にわたりますので、仮に同一の企業であってもその業況は大きく異なることがございます。例えば同じ企業の中でもある事業部門では黒字、他方では赤字というケースが珍しくございません。そこで、このアンケート集計におきましては事業ベースの38回答を基に業況などを検討しておりますので、その点はご留意願います。次お願いします。

     アンケートの主な項目でございますが、ご覧の通りでございます。2016年の上期の回顧、下期の展望ということで、最後に展望に関連したカマラ活動、ブラジルあるいは日本政府への要望ということでまとめております。次お願いします。

     それでは集計結果の説明に入ります。まず回答いただきました38事業の業況でございます。向かって左側が本年上期の売上と利益が前年に比べてどうであったかというのを、こちらですね、緑の枠で囲ったところでございます。上期は売上が増加したと回答された事業が18ということで、約半数の47%を占めております。この青色の部分でございます。各種経済指標が芳しくない状況の中で、私個人としては、上期に限った話でございますので、私としてはちょっと意外な結果でございました。次お願いします。

     次に、上期における特筆すべき出来事、環境変化というものはどういうものがありましたかという質問に対して、プラスに作用した出来事を向かって左側に、マイナスに作用したものを右側に示しております。

     プラス、つまりOpportunityですが、天候、疫病。これはオリンピック需要も含めたところでございますが、3事業ございました。競合の撤退というのが、 2。以下、デジタル化の進展、公定価格の上昇、中国製品からのシフト、規制強化、これは品質向上に作用したという回答でございましたけども、そういったものですね。それから、顧客の需要回復というのがございました。

     逆にマイナスのThreatでございますが、顧客の倒産、需要減、それから経営不振、これらのものを合わせまして16ということで、他のお答えを圧倒しております。続いて価格の競争の激化が5ということで、これもプラスの出来事に比べて非常に多くなっていることが分かります。つまり、事業環境としては景気低迷を強く反映していると、それだけ極めて厳しい状況であったということが言えると思います。これ下に書いております。次お願いします。

     次に、このような状況の中で、上期に行った現状への対応策はどのようなものがありましたかということで、尋ねております。当然ながら多様な回答が得られた訳ですけども、これを私の独断でもって4つに区分をしております。向かって左側が、損益計算書に直接表れる売上、それから費用、これについて。逆に右側は質的な取り組みについてそれぞれ書いております。

    また、もう一つの見方がございます。上側、売上とかその他とか書いております、ここの上側の方が効果的・積極的な取り組み。つまり事業活動のプラス面をさらに拡大させるようなもの。下側が効率的な取り組み、いわば事業活動のマイナス面を縮小させるものという見方でございます。このように見てみますと、左上に挙げました売上の増加、こちらに作用する取り組みが30ということで、他の回答を圧倒していることが分かると思います。

    つまり、厳しい事業環境ではございましたけれども、積極策で対応した事業が多数派であったというふうに考えることができると思います。しかしながら、先程申しましたように、上期に売上が増加した事業は半分に満たなかった訳ですから、その効果は限定的だったのではないかというふうに考えております。まあ裏を返せばそれだけ事業環境が厳しいものであったという見方もできると思います。次お願いします。

     次に、対応策としての周辺諸国向け対応、これについてはどのようなものがありますかという質問に対しては、現時点ではブラジル国内のみを事業対象としているため特にございませんというような回答が多くて、23ということでございました。一方で、強化したい、あるいは強化中である、そういうお答えが13ということでございました。周辺諸国に活路を見出したいという企業が少なくないという結論でございます。また、中南米を一括管理するように組織を変更してしまおうというようなお答えもございました。以上が上期の回顧ということになります。

     続きまして下期の展望に入ります。これは同じグラフでございますけども、先程も出しました。先程は上期、左側を説明いたしましたが、下期は右側ということでございます。売上・利益ともに青の前年よりも増加すると、それからオレンジの前年と変わらないというふうに書きましたところが非常に多くなって、増えていることが分かるかと思います。まあやや明るい見通しではないかというふうに思います。景気の底打ち感が出てきたというふうに見れると思います。これを裏付けますのが次のスライドでございます。次お願いします。

     これは同じように下期に予想される特筆すべき出来事ということでございますけれども、上期同様にマイナス面であります顧客の倒産、需要減、こちら16でございますね、こちらが他の項目を圧倒していることが分かる訳ですが、プラス面として市場・需要の回復というのが7も出てきたということがございます。まあこの傾向を一般化することは早合点というふうに思われますけれども、前半のプレゼンテーションからございましたように、最悪の状況の中で少しの光明が差してきたということは言えるのではないかと考えております。次お願いします。

     次に下期に必要と思われる対応策については、上期同様に積極策が多数を占めております。こちらの、上の方ですね。特に、新製品それから新サービスの導入というのが、上期が実はこれは5つの回答だった訳ですが、このように10に倍増しております。また、設備投資におきましては、上期は1件でございました。これが6ということで、これも大幅に増えている。これが下期にかけての特徴というふうに言えると思います。一方では、まあそうは言いながらも、回復を待つとか、じっと耐えますというような厳しさを窺わせる回答もまあまだまだあるということも申し添えておきたいと思います。

     これまで見てきましたアンケート結果から、今回のシンポジウムの副題でございます「どん底の時期ならではの戦略は」ということで、課題整理と対処方策に対する化学品部会としての結論を出すとしましたら、このようになると思います。

     長い景気低迷により、厳しい事業環境が続いております。しかしながら、新規顧客の開拓、新製品投入、設備投資、あるいはコスト削減といったような事業者の積極的な対応は衰えてはいないということでございます。やがて訪れる本格回復を信じて、継続することが重要であろうというふうに当部会としては考えております。

     最後に、下期展望に関連したカマラ活動あるいは日伯政府への要望は何かありますかというふうに尋ねましたところ、ご覧のように、課税に関して検討していただきたいというのがおよそ8割、労働に関してはおよそ6割ということで、まあほとんどの会社さんが課税・労働というのを重視されているということがお分かりいただけると思います。

    以下、通関、あるいはインフラの整備、産業競争力や中小企業の育成をしていただきたいと。その他、先程来話が出てきております、政治の安定、為替の安定、規制緩和、審査の迅速化、公的債務の削減、観光の振興といったようなことが続いております。

     化学品部会からの説明は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     中村部会長どうもありがとうございました。非常に興味深い分析結果だったのではないでしょうか。やはり、上期で新規顧客を開拓するというのが一番多くて、下期でですね、新製品投入というのが一番多くなって、しかも下期で設備投資というのが結構増えてきているということで、まあ業界によってかなりの差があるのかとは思いますけれども、非常にアンケートの集計結果でおもしろい結果が出ているというふうに感じました。この発表につきまして、皆様からの質問を受けたいと思いますけれども、挙手をお願いできればと思います。いかがでしょうか。はい。ではまた引き続き、会頭よろしくお願いいたします。

    三菱商事 松永氏

     すいません、また松永です。これはご質問という訳ではないんですけれども、最後のカマラ、日伯政府への要望というところで、まあ課税、労働、通関、インフラ、産業競争力・中小企業育成ということを挙げられていますが、まさにこれはカマラの政策対話委員会で取り組んでいるテーマそのものなんですね。

    これはもう2年近く、いわゆるこういうブラジルコストの改善というのをブラジル政府に働きかけてきたんですが、実は、本丸は課税・労働、ここのあたりだというふうに思っていたんですけども、最初から高めの球を投げるとですね、ブラジル政府の方が取り合ってくれないんじゃないかということで、最初のアプローチはこの産業競争力とかですね、中小企業育成、ブラジル側が飛びついて来そうなここを最初にやってきたんです。

    これがある程度の成果が出てきたということで、いよいよこの課税・労働というところに力を入れようということで、今月の初めにですね、ブラジリアに行きまして、下院の公聴会でこの辺の必要性を初めてかなりフォーカスを当てて話をしたんです。このアンケートの結果を拝見して、やっぱり皆さんここが一番本丸だと思っていらっしゃるということなので、今後もですね、この政策対話委員会、この辺をやっぱり強化していきたいというふうに改めて思った次第です。質問じゃないんですけども、ちょっとご参考までと思いまして。

    司会

     ありがとうございました。他に質問等ございますでしょうか。いかがでしょうか。よろしいですか。はい、中村部会長どうもありがとうございました。続いて、食品部会の発表に移りたいと思います。藤江太郎部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • 食品部会  藤江太郎 部会長

    食品部会  藤江太郎 部会長

    Pdf食品部会     藤江太郎    部会長    (味の素)

     皆さんこんにちは。食品部会の藤江でございます。それではただ今より食品部会からこの4点についてご報告を差し上げたいと思います。7月に食品部会開催いたしまして、各会社からのレポート、また議論を基にですね、まとめさせていただいております。

     まず上期、業界全体の動向ということで、国内市場の概況ということでありますけれども、この2年間ほど続きました経済状況低迷に底入れ感が出てきているものの、食品市場の全体としては、やはりまあ低調と言わざるを得ないということかと思います。また、低価格指向が強まって、嗜好品はどうしても支出が抑制されるという傾向も継続をしているということであります。

    また、外食を控える傾向の中で、内食における、ご家庭における低価格、また基礎食品等の一部カテゴリーで、また地域的にもですね、大都市圏の市場の一部ということで、明るい兆しも見え隠れしているということで、他の業界の部会長からもご報告ありましたように、全体としては雨模様ですけれども、時折晴れ間も見え隠れしているというような状況かと思います。

     引き続きまして、食品部会の中のそれぞれの業種・業界の状況ということであります。まず飲料。発酵乳飲料につきましては、食品部会の所属の会社では、まあ金額ベースで105、数量で前年並みと。また、比較的安価な粉末飲料の市場。これはやはり伸びているということで、18%伸びている。

     調味料につきましては2%増。

     スープにつきましては、嗜好性が高いということもありまして、10%ほど市場自体が減少していると、縮小しているということであります。

     コーヒーにつきましては、経済状況悪化と、まあ流通在庫が少し多めということもありまして、国内消費は伸び悩みということと、またこちらも低価格製品へのシフトが進んでいるということであります。

     即席めんは対前年で93%ということでありますけれども、底打ち感が出てきているということで、下期にまあ期待ということでございます。

     畜肉、また加工品ということでありますけれども、ブラジル産の鶏肉、日本に多くかなり輸出しておりますけれども、日本サイドの在庫がまあ多めということもありまして、輸出は大幅に減っているということであります。一方、畜産の各社は日本向けの数量を中国向けにまあ切替えているということで、結果的には中国向けの数量が過去最高を更新しているということであります。

     清酒、日本酒につきましては、所属会社では、まあ4月に値上げした影響がありまして、上期通期で一桁%の伸びに留まっているというようなことであります。

     チョコレートにつきましては、嗜好性もあるということで、イースター商戦あまりふるわずということで、10%程度の落ち込み。

     加工油脂につきましても、チョコレートの低迷に伴いまして、ココアバター代替用脂の販売も対前年でダウンと、こういう状況でございます。

     香料につきましては、主力の菓子・飲料向けが低調。これを新規開拓で補って、全体としては前年並み。

     食品の添加剤につきましては、既存の取引は前年並み。新規開拓は期待を下回るというようなことでございます。

     種につきましては、世界的にM&Aが進んでおりまして、業界の再編の動きが活発ということは継続をしております。ブラジルの種子の業界では、景気後退にも関わらずに、付加価値型の商品、この需要が伸びているということで、食品部会所属企業におきましては野菜の果物、その種の売上が好調ということで、一方草花については前年比で減少ということでございます。

     タバコにつきましては、食品部会所属会社では販売が好調ということで、レアル安や投資等が利益を圧迫しておりますけれども、当面このブラジルの中で事業拡大していこうということで努力をしているということでございます。

     アセロラ製品につきましては、食品部会所属会社では、レアル安の影響を受けて輸出は好調に推移ということでございます。

     外食でございますけれども、外食、伸長率は一昨年16%ということで大きく伸びておりますけれども、去年、今年ともその伸びは鈍化してきているということで、特に高級レストランを中心に売上、お客様の数が減ってきているということであります。

     輸出につきましては、他の業種別部会同様レアル安は貢献して、鶏肉の生産増加も、まあ日本向けは在庫過多で価格は下落ということであります。オレンジ果汁は在庫払底により反転をしているというようなことであります。

     続きまして2点目の原料の動向ということで、砂糖相場の推移、2012年から直近までということで、粗糖のキロ当たりレアル単価ということでございます。ご覧の通り、2015年の後半あたりから値段が上がってきております。これは一つには異常気象ということによる収穫減の懸念から高騰。あわせてレアルの通貨安で国内相場がさらに高くなったというようなことでございます。

     乳相場の推移。同じく12年から。全粉乳のキロ当たりのレアル単価ということであります。2013年に大供給基地のオセアニア、ここで干ばつによりまして高値のピークを付けたということでありますけれども、14年に入ってからは国際的に大きく価格は下落したということでありますが、国内相場への影響はほとんどなく、まあ乖離してきているというようなことであります。

     続きましてコーヒー相場。こちらはアラビカ種60キロ現物渡し価格の推移と、レアルベースということですけども、16年の上期は450レアイスから510レアイスのレンジで推移をしていると。レアル安継続による米ドル建て競争力が維持をされて、海外市場からの旺盛な買いが継続した結果というようなことでございます。2016年につきましては、アラビカ種は豊作が見込まれているんですけれども、ロブスタ種、大幅な減産が見込まれているということに加えまして、引き続き相対的レアル安の影響が根強くて、高値維持が予想されるというようなことでございます。

     続きましてチキンでございます。中国向けのWING、手羽ですけれども、この輸出が引き続き好調ということで、国内価格も、価格は若干落ち着いておりますけれども高止りということであります。その他のアイテムでは、骨付きのムネ肉、この価格が下落をしていると。また骨付きのモモ肉、これは中国向けの輸出が増加して価格が上昇と。また、中東向けにですね、安定的に輸出されています丸鶏の国内価格、これも上昇をしているというような状況でございます。

     続きまして、2016年度5月までのスーパーマーケットの売上の前年比、名目ベースでございます。青が短月ベース、赤の折れ線が累計の前年比ということでございます。5月までの累計の前年比、スーパーマーケットの売上名目は9.7%増というような状況であります。一方で実質ということで言いますと、こちらにもございますように、5月までの5カ月間、累計で前年比0.1%増ということで、ほぼ横ばいというような状況であります。

     引き続きまして、スーパーマーケットで販売されております重量ベースの購入量ということでありますが、若干回復しつつあるものの、重量ベースでは引き続き厳しい状況ということが続いているということであります。

     引き続きまして、地域別ということでございますけれども、全地域で昨年より購入の重量は減少しているということで、地域的には北部、またサンパウロの中心部、南部、こういった購入量が平均よりも落ちているということであります。

     続きましてカテゴリー別ですけれども、左から2番目のアルコール飲料、3番目の非アルコール飲料、この落ち込みが他に比べると大きいということであります。

    一方、伸びているカテゴリーということでありますけれども、防虫スプレー、また殺虫剤、こういったものですとか、コーヒー、オリーブオイル、粉乳、チーズ、コンデンスミルク、トマトソース、マグロ・カツオ缶、魚の缶詰等々は伸びているということでございます。一方で減少しているサブカテゴリーで言いますと、先程申し上げました飲料、ヨーグルト、アイスクリーム、チョコレート、大豆飲料、パン、トイレットペーパー、石鹸等々ということであります。

     引き続きまして、2016年下期の展望ということで、お題の「どん底の時期ならではの戦略は」ということで食品部会でも議論を進めてきております。4点ございまして、1点は、この2年間続いた経済状況に対する悲観的な予想を修正し始めていて、楽観的な予想が徐々に増加しているというようなこと。

    また、6月には本年度と来年度のGDPに関した予想を上方修正された主要銀行さん、またコンサルトさんの数がまあ増加をしたということも踏まえまして、消費者の動向、また社会的変化を見据えた商品開発、市場開拓、こういうものがですね、やはりより重要になってくるということと、景気低迷期のビジネス機会、これが現れる訳ですので、例えば好条件での投資ですとか、買収・提携による将来の成長への布石、こういったチャンスも出てくるということであります。

     2点目。様々な要因によるコスト上昇、これは継続しますけれども、市場環境が厳しい中で中々価格への転嫁は困難ということで、短期的には収益が引き続きまあ悪化する部分があるのではないかということでありますが、この変化の時期を構造変化、または体質強化のチャンスととらえて取り組むということでありましょうし、3点目には、近い将来、景気回復の波に乗れるように、事業の基盤の強化、または新たな事業の種まき等の準備を進めていくということかと思います。

     4点目には、会員企業の新たなビジネスチャンスの発掘につながり得るような、そういったカマラの食品部会の取り組みもぜひ強化してやっていきたいですねというような議論を食品部会でしております。

     続きまして、2月29日から3月1日に行われました第2回の日伯農業・食料対話への積極的参画ということで、若干簡潔に報告をさせていただきたいと思います。農林水産省、また在ブラジル日本国大使館が主催されたこの対話にですね、食品部会としても積極的に参画していこうということで、第1部、穀物輸送インフラ改善、マトピバ地域農業開発等々ということと、第2部、ブラジルへの投資環境の改善・整備ということで、松永会頭も第1部で講演を、当時政策委員長としてされました。

    その中で、先程もお話しされたような、ブラジルサイドが興味を持たれるようなそういう提言もしつつ、第2部では各企業が困っている税制、関税の問題、また鶏肉・牛肉の輸出入に関する提言、また残留農薬の問題、日本食普及とブラジル農業食品産業のビジネスチャンス、こういったことについてですね、提起をして参りました。

     最後のスライドになりますけれども、こういった提言、農産物、また畜産物につきまして、やはりブラジルは世界に冠たる農業大国としてさらに発展できる。その中で日本の技術または品質、そういったもので貢献できる。

    その中で我々のビジネスチャンスもですね、出てくる可能性もあるのではないかということで、中々あの、政権も交代して一進一退でありますけれども、引き続き粘り強くこういった活動も、カマラ、または大使館等々とも連携をさせていただきながら尽力して参りたいというふうに思います。

     食品部会からは以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     藤江様どうもありがとうございました。皆様からの質問を受けたいと思いますけれども、いかがでしょうか。挙手をお願いできればと思います。はい、ではまた会頭よりですね、質問をお願いしたいと思います。

    三菱商事 松永氏

     3回目の質問ですみません。今ですね、農産物、畜産物、それと前のスライドで鶏肉とかオレンジジュースというのがございました。まだこれは時間がかかると思うんですけど、例のイギリスのEUからの脱退というところでもってですね、イギリス向けへのこういう競争力のある農産物とか畜産物、このブラジルからの輸出というのは、まあかなり恩恵を受けるんじゃないかというふうには思っているんです。

    一方で、最初の貿易部会のプレゼンの中ではですね、ブラジルから輸出しているトップ10の中にイギリスは入っていないんですけども、そうは言ってもですね、ある程度の国民がいて、そういったところに狙いを、ある程度絞って、今から下準備をしていくといったような対策については、いかが、味の素さんに直接関係あるかどうかは承知していないんですけども、お聞かせいただければというふうに思います。

    藤江氏

     ちょっとそのあたりはですね、畜肉のイギリスへの輸出等々についてはちょっと私も承知していないんですけども、こういう変化のあった時というのは必ずビジネスチャンスは生まれるよね、というようなことのお話もしておりまして、先日もジェトロ主催のアルゼンチンミッションございましたけれども、中心はインフラのミッションだったんですけれども、私も参加させていただきましたが、農産物の拡大をアルゼンチンとしてもですね、積極的に進めていきたいというようなお話もありました。

    これもマクリ政権に交代したという変化がチャンスにつながるということかと思いますので、そういったEUの変化等々も我々のチャンスになるかどうか、また色々議論なりですね、検討していくのもいいかなということで、色々なアイデアを今いただきまして、ありがとうございます。

    司会

     はい。いかがでしょうか。ご質問の方をですね、この際に。どうでしょう、後ろの方とか、いかがですか。よろしいですかね。はい。非常に食品部会様、色々具体的な対応策ですとか、あと畜肉加工品では日本向けを中国向けに切り替えて数量が過去最高更新中とか、面白い報告があって、非常に興味深かったのではないかなと思っております。

    また、食品部会からの非常に具体的な提案が出ておりますので、こちらの方どういった対応ができるか考えていかないといけないのではないかなというふうに感じております。藤江様どうもありがとうございました。続きまして運輸サービス部会の発表に移りたいと思います。発表の方を細谷浩司部会長様、よろしくお願いいたします。

     

     

  • 運輸サービス部会  細谷浩司 部会長

    運輸サービス部会  細谷浩司 部会長

    Pdf運輸サービス部会     細谷浩司    部会長     (日本通運)

     こんにちは。お疲れのことと思いますが、お付き合いください。運輸サービス部会、私日本通運の細谷と申します。

    構成グループはこの7業種、物流、構内物流・機工・整備、海運、航空貨物、航空旅客、旅行、ホテル、IT、通信という運輸関係とサービス部門、この大きく分けて2つをまかなっております。7月と8月、各1回ずつミーティングをしまして、会員各社から色々レポートをいただきまして、ぜひ全部しゃべってくれというふうに言われていますので、駆け足で参りたいと思います。

     まず物流業界。ここは通関とか国内物流の業界なんですが、上期回顧から見ます。まず、トピックスでもありますけど、今年に入り農務省は木材使用貨物に対してのくん蒸処理の規制の再徹底を行うことになりました。それまで、輸入貨物と一緒にその梱包材がくん蒸処理されてなくても、到着地、こちらのサントスとかに来た時に焼却や再くん蒸を行うことができたんですが、この規制強化によって、くん蒸したと認められない梱包材というのは、そのまま輸出元へ戻さなくちゃいけないということになりました。

    かなり費用、またこれはブラジルコストと言われるのかあれですけど、これは大分荷主様にとって脅威なことでございますのでご注意ください。もうひとつは、ここに書いてありますように、税関ストライキが慢性化しているということです。2012年に大きなストライキがあって、それからちょこちょこっと下がってきたなと思いましたら、またストライキが始まっていると。部門によっては牛歩戦術的なストライキが行われておりまして、輸出入通関のスピード化の妨げになっています。

     下期の展望なんですが、今言ったこの税関ストライキ、ちょっとややこしくなってきまして、今全国で行われているのが、給与改定の未実施を不服とした税務監査官の無期限ストライキ、現在進行中です。港湾、空港および国境における税関処理に影響を及ぼしております。あとはですね、下期、レアル変動、安定と言った方がいいですかね、輸入の活性化に期待したいと思います。

     次、この表を見て下さい。赤、黄色、緑の表なんですが、これは引越件数のデータです。皆さん駐在員のイン・アウトの動きなんですけど、これはインの方の、日本発の各地域向けの船便引越の発送件数の調査結果です。伸びがあるのは、一番上の南アジア、オセアニア、あと下にいきますけど中米も伸びがあります。

    北米、カナダも対前年伸びがありまして、上から2番目の東アジア、中国を含む東アジアですが、これが減少。欧州向けも減少しております。当地南米はというと、まあ微減といったところでしょうかね。詳しくは、帰任者増で赴任者微減の実績というふうになっています。この傾向は当面続くのではないかなということで、今受付件数とか見ていると、推測されます。

     次に鉄鋼業界内の機工、整備、構内物流の部門です。上期の回顧としましては、まずはブラジルの粗鋼生産量はこの図の通り、ピークが2011年でした。それ以降減少が続いています。主要客先である鉄鋼業界は、中国の経済減速に伴う鋼材市場の急落、そして国内市場の冷え込みなどの要因で減産体制に入っています。

    それによって、鉄鋼業界はコスト維持のために給与インフレ調整率を0%としまして、一時金の支払いでしのいでおります。同様に外注協力業者、まあ我々物流業者なんですが、においてもインフレ調整を0%として、一時金での対応を実施しております。

     この業界、下期の展望としましては、2016年の国内の鉄鋼消費量の予想としては1820万トン。これは2006年のレベルでございます。作業量減少はこれまで以上と予測されまして、今後さらなる経営体質の強化、業務領域の拡大が必要となってくると想定しています。

     次行きましょう。海運業界。まず上期としては、コンテナ船の荷動きは昨年第2四半期より輸出が輸入量を上回る状況となっています。全体としての物量は20フィート・コンテナ単位で236万コンテナで、前年同期比で約5%の減少となっています。

    下の図のですね、この右側の表。ばら積み船の荷動きは主要産品である鉄鉱石の輸出量が約4%の伸び。穀物輸出も、先程どこかの部会でおっしゃっていましたけど、伸び率としては20%近くということで、全体で約7%増えております。運賃市況はというと、コンテナ船もばら積み船も共に供給過剰による競争激化で記録的な低水準となっています。もう投げ売りみたいな感じですね。各社生き残りをかけてコスト削減、運賃修復に取り組む厳しい状況が続いているというので、運賃修復ということは運賃を上げていくということですから、皆さんご勘弁ください。

     下期の展望です。市況の回復、事業環境の健全化にはまだ相当の時間を要するものと思われます。今後の対応策としては、非経済船の処分の促進、アライアンスの再編、サービスの改編等、配船の効率化を図りながら余剰輸送能力の削減に努めること。また、コスト構造改革などあらゆる面で競争力を高めるチャンスというふうに考えています。

     トピックスとして、ちょっとここに小さくしか書いていないんですが、これ大事なことなので読み上げます。輸出コンテナの総重量の厳格化が世界的に始まりました。従来より、荷送人は国際海上コンテナ輸出の総重量申告を義務付けられていましたが、誤申告に起因するコンテナの荷崩れなどの事故が陸上・海上で多発していますため、今般、SOLAS条約というんですけど、「海上人命安全条約」の改正が行われまして、コンテナ総重量の確定方法が今年の7月1日より世界中で始まりました。万一、総重量の誤申告が判明した場合は、当局による罰金、船積み予定船への積載がされない、不積みですね、こともありますので、荷主関係者にはご注意をお願いいたします

     次に航空貨物業界です。上期の回顧としましては、一番上の表なんですが、VCPというのがビラコポス、GRUというのがグアルーリョス、次はマナウスですね。日系企業の多くが所在する三つの空港の過去3年間の1月から6月までの数値を比べてみました。各空港とも取扱数量は前年比減というふうになっています。全体的にみると、輸入量は対前年比18%減となっています。この表ではちょっとないんですけど、輸出量は対前年微減という形で数字が出ております。

     16年の下期の展望ですが、輸入の月別取扱数量。1、2、3、4、5、6月という数量では、ちょっと明るい話題になるかもしれません。徐々に数量が上向きになっております。ということで今後の輸入量の増加に期待したいと思います。

    あと下の表、ここですね、航空輸出入貨物と為替動向のどんなふうに連動するのかなというのを見た表なんですが、赤の縦線グラフが輸出数量、緑の薄い線が輸入数量で、青の折れ線グラフが米ドルに対するレアルの為替変動値です。輸出入動向を予測するためには、為替動向のみに依存する訳じゃないんですけど、為替は重要な変数でありまして、そろそろ物の動きが始まってくるのかなというふうな期待を込めて、というか期待をしております。

     次、航空旅客。我々の業界ではANAさんとJALさんからのレポートなんですが、国内線はブラジルの景気低迷の影響で、有償旅客キロは近年にない前年割れ。国際線は、ブラジル系の航空会社の実績しか出ていないんですが、これは有償旅客キロは小幅な減少にとどまっている。航空業界では利用率低迷の打開策として、廉価な運賃での営業競争が激化しておりまして、各航空会社とも旅客数の減少以上に収益は悪化しております。

     下期の展望なんですが、国内線はTAMやGOL航空の業績悪化に伴って、下期は両社とも低需要路線を運休もしくは減便する可能性が高いです。2015年に比べて提供座席数や旅客数は低減することが想定されています。国際線は今真っ最中のリオ・オリンピック、パラリンピックの開催に伴って海外からの旅行者は増えるものの、ブラジル経済の低迷と為替の影響でブラジルからの出国者数は減少するものというふうに予測しております。今後は国内線・国際線ともに、需給調整やコスト抑制による運休・減便で旅客流動が鈍化することを懸念しております。

     下に特記事項を書かせていただきましたが、路線の廃止の話です。まず大韓航空。9月25日からロサンゼルス経由のサンパウロ=仁川便の運休を決めております。またシンガポール航空がバルセロナ経由で今飛ばしているんですが、サンパウロ=シンガポール便の運休を10月21日から止めるということで正式に発表しています。またデカセギ需要が再び増加しておりまして、それをチャンスというふうに見ております。

     旅行業界。皆様も国内旅行とか色々お世話になっていると思うんですが、ここはですね、国内線も国際線も昨年同期比、売上高、搭乗者数の両方で大きく落ち込んでおります。特に国際線は前年に比べて発券枚数で14%減、売上高では12.8%減と大幅に減っております。ホテルはというと、宿泊数、売上ともに前年比約10%減というふうになっております。やはり客離れ、いわゆる旅行離れが為替の不安定な影響で進んでいるものと推測しております。

     下期の展望なんですが、オリンピック、パラリンピックのお陰様で、国内線航空旅客とホテル稼働率の増加は、数的には期待されます。一方でそれ以降、終わった後ですね、増加が期待できるネタがなくて、ブラジルから海外に出る旅客数も引き続き減少するものと見込まれます。

    ホテルがインターネットサイトで今、買えますよね。旅行代理店による販売価格よりも安い金額でオファーされているということで、旅行代理店によるホテルの販売が落ち込んでいます。さらに、旅行代理店間での航空運賃の割引競争が激化しておりまして、航空券販売による収益が激減。ちょっと厳しい。ちょっとというか大分厳しい状況です。

     トピックスとしてここも一行、最後の行書いてあります。オリンピック、パラリンピックに向けてビザの緩和というか免除が、今この時期、9月18日入国までされているんですが、それと並行して、ブラジルと国際運転免許の協定のない国、まあ日本もそうですね、今年の12月31日まで、例えば皆さんであれば日本の免許証があればブラジルで運転が認められているということ。これ一般的に広まっていないはずなので、それを報告いたしたいと思います。

     次、通信業界。テレコム、まあ固定電話関係、あとデータセンター関係ですが、上期の回顧としましては、インターネットユーザーは1億3911万ユーザーで、世界4位。ブロードバンドのマーケットシェアは、NETが32.3%とやや優勢で、Vivoが28.6、Oi社が24.7と僅差で追っております。

    インターネット普及率は、前回の調査の時に58%で世界81位だったんですが、今年の調査では66.4%、世界第64位と伸びております。固定電話。シェアNo.1のOi社が、皆さんも知っているんでしょうが、ブラジル史上最大規模となる会社更生手続き、今進めております。ブラジル電気通信庁の監視の下、業務は継続中ですが、今後様々なシナリオが噂されておりますけど依然として有力なものはなく不透明な状況です。  

     下期の展望としましては、ブラジルのみならず南米全体で通信業界の再編が進んでおります。ここには書いてないですけど、ちなみにアルゼンチン新政権も本格的に通信インフラ整備を計画しておりまして、日本企業へのアプローチも開始しているようです。あと電子メールやサーバーなどインターネット関連サービスでは、一層コモディティ化が進み、自前サーバー設備から柔軟でコスト効果の高いクラウド型へシフトが進みますが、通信インフラ基盤の脆弱性が問題となっております。

     これも通信業界で、これは携帯電話、あとモバイル関係ですね。右の図を見ていただきましょうか。この赤、黄色、青。青が4Gの携帯です。4Gの携帯の契約数は順調に増加傾向で、前年から1100万件伸びまして、3655万件となっています。しかしながら、全体としては、全体的な契約者数は微減。それによって通信事業大手4社の収益はいずれも落ち込んでおります。

     下期の展望としましては、4Gは今後も堅調に普及が進み、年末までに契約数が4000万件を超える見込みだそうです。Internet of Thingsと言われるIoT、Machine to Machine向けのモバイル回線の需要が高まっております。年間約10%の増加が見込まれております。

     IT業界全般、まあソフト関係ですね。当初、前年比微増ぐらい、約0.5%ぐらい伸びるかなと予想されていましたが、IT投資額が伸びていません。市場は停滞気味でございます。今まで企業は成長のためにIT投資を行ってきたということが、今はコスト最適化のためのIT投資へとシフトが加速しているということです。あとは、企業用の基幹システムの開発、オンライン化の税制対応、会計情報申請制度の対応は引き続き順調に伸びております。

     下期の展望です。2016年度のIT投資額は前年度を下回ると予想しております。IT活用の促進による業務効率化、コスト削減化のサービス需要は引き続き増加が見込まれるところです。あとはブラジルの税制、会計対策の複雑化により、システム対応の投資は継続される見込みとのことです。一番下なんですが、毎回発表していることなんですけど、優秀なIT人材の育成やIT専門家の確保、人件費の高騰への対応が大きく課題としてのしかかっております。

     いよいよ最後です。「どん底の時期ならではの戦略」。今どん底かどうかちょっと分からないんですけど。まず、経済回復期はいつか。まあ今の動きを見ている限りでは、直近すぐ、来年とかから回復しちゃうということはないでしょうけど、期待値も入っていますが、今徐々に何か伸びているんじゃないかなという足音は聞こえております。ただ、完全に回復するのは2018年かなという、これは期待値を込めた表現でございます。

     この時期の戦略として課題を整理してみました。まず取扱顧客とか、色々収入の減少に対しましては、先程他の業界でも出ていましたけど、新規サービスの展開を行う。収入の柱となるセグメントを増やして、何とか今を生き伸びて行こうと。まあ2億人の人口がある中での物流業界ですから、何か方策はあるはずです。同じ中南米でもメキシコが顕著だということは皆さんご存じだと思いますけど、ブラジル政府にはぜひ工業界の発展を促す政策を実施していただきたいというふうに考えております。

     航空旅客とあと旅行分野からの意見になりますが、文化、スポーツ、芸術などの分野で日伯間での交流を活発化させて、来伯者を多くしていくことが必要であるのではないかなというふうに考えております。

     あと、この低迷期を乗り越えるために、削減施策が各社考えられ、色々実践をしているんですが、やっぱり根本的なことで、税金面などのブラジルコストの抜本的な見直しを政府が本気で実践することを要請するとともに、何らかの政策対話を利用してぜひ達成してほしいというふうに考えを持っております。

     今まで説明した中で、各種資料のプレゼン、後ろの方につけてあるんですが、これは商工会議所のホームページからちょっと拾ってみて、参考にしていただけたらなと思います。これで運輸サービス部会からの説明を終わります。ありがとうございました。

    司会

     細谷部会長どうもありがとうございました。大変、毎回毎回この運輸サービス部会は非常に幅広い分野の報告を取りまとめしなければならないので、大変だったと思います。どうもありがとうございました。

    こちらの発表ですけども、皆様からのご質問等受けたいと思いますが、いかがでしょうか。ちょっと私から質問させていただいてもよろしいでしょうか。確か運輸サービス部会で、オリンピック対応ということでですね、オリンピック会場の視察を企画されていたと思いますが、今年はこの後何かそういった対応とか企画とかは考えていらっしゃいますでしょうか。

    細谷氏

     去年11月にちょうどオリンピック視察と称して、オリンピックの交通機関はどうなっているのかなとかいうことで、40人ほどで一泊視察旅行をして、その前の年はサントス港の港湾視察で、これもやっぱり40~50人参加していただきました。

    今年はちょっと趣向を変えまして、とあるブラジルの航空機産業の工場内を視察しようかなというふうに一応計画は練っております。まだ今8月ですから、年内にできたらなというふうに考えておりますので、それはカマラを通じて皆さんに案内したいと思います。ぜひご参加ください。よろしくお願いします。

    司会

     どうもありがとうございました。大変おもしろい企画の情報がありますので、ぜひ実現の際は皆様参加いただければと思います。それでは細谷様どうもありがとうございました。続いて、建設不動産部会の発表に移りたいと思います。藤井健部会長、発表の方をよろしくお願いいたします。

     

     

  • 建設不動産部会  藤井健 部会長

    建設不動産部会  藤井健 部会長

    Pdf建設不動産部会     藤井 健    部会長    (CGC)

     はい、それでは建設不動産部会の藤井でございます。それでは建設不動産部会の話をさせていただきます。

     ブラジルの建設業者500社の現状としましては、今週昨年度の実績がまとまって出たんですけれども、軒並み30%~50%ダウンです。その中でも、リオの業者だけが170%プラスということが出ておりました。まあこれはオリンピック景気が表れていたということです。

    あと、当会議所のメンバーの現状は、日本企業の仕事が非常に激減いたしまして、非日系に活路を見出さなければならない状況です。まさに今期が正念場となっております。まあ中には何もせず、金利で食べようかという話もありますが、その中で各部会員が取り組んでいる事を発表いたします。

     まず最初に部会のメンバーの上期の回顧と通期の展望。次に業界ごとの情報を報告いたします。ではこれがアンケート結果です。

     ゼネコン業界、まあ日本企業の激減によりまして、大型工事がなく、メンテナンスや小型工事をこなしております。その中で病院や学校の案件が期待できるそうです。しかしながら、非日系の工事を受注するためには厳しい価格競争をしなければならず、体力勝負となっております。

    その状況の中で通期の展望は、一つは非日系企業への営業強化。もう一つは、低価格競争に打ち勝つために、工期や安全、品質、その辺を落とさず、施工方法と提案力と、ブラジルの企業ができない差別化工法を実施したいということです。

     不動産業界。ついにサンパウロの工業用地の価格が下がり始めました。サンパウロのマンション、この販売価格はまだ下がりません。パウリスタ界隈の賃貸価格はまだ下がりません。日本企業の新規賃貸契約、今年3割減っております。厳しい状況です。不動産業界全体としては、今期の好転はまず見込めないと。長期で考える必要があるということです。

     次はプレハブ業界。ゼネコン同様厳しい状況です。通期では、今年始めましたレンタルというものがどのようになるかです。

     サッシ業界。上期は前年期ずれで受注は目標を達成しました。しかしマンションの新規登録が昨年より9割減です。まあマンションの事業が非常に停滞するということになります。

     あと、特殊技術です。これはリオの地下鉄の開通の陰に日本技術ありです。これ自分で言わないと誰も言ってくれませんので、ちょっとお話しします。残念なことは、オリンピック会場まわりの下水道工事、これは昨年12月に実は中断しました。まあお金がなかったということですね。仕事ができなかった事がまあ残念ですけども、今年10月再開するようです。

    一つ良い事は、昨年財政削減で1年間止まっておりましたサンパウロの下水道工事が動き始めました。下期は4つの学会発表、工業大学での講演、オデブレヒトでの社内技術発表会などをやっていきたいと思います。次お願いします。

     次はアンケート結果のその2ですけども、お客様比率です。ゼネコンが日系企業の減少を非日系で埋めるという努力が見れると思います。不動産は日本人の方のために情報を集めています。プレハブもゼネコン同様です。特殊技術とサッシはブラジル企業と共に動いております。次お願いします。

     それではゼネコン業界です。7月にジャパンハウスが着工いたしました。これはパウリスタの大通り、国際交流基金前のブラデスコビルを改修しまして、ブラジルの方々に日本をより良く知ってもらうための発信拠点となります。オープンは来年1月が予定されており、日本の木材をふんだんと使用しました一種独特の建物がパウリスタにお目見えします。完成式典には皇室をはじめ日本国政府の方々のご出席があるかもしれません。現在、施工中の現場見学会の開催を準備中であります。これもカマラを通じてご参加を呼び掛けると思います。次お願いします。

     先程言いました、ブラジル企業の行き過ぎた価格競争の結果が今年出始めました。これはマンションのモデルルームが崩壊した事故です。残念ながら死亡事故となっています。次お願いします。

     これはもう一つです。行き過ぎた価格競争の結果、実はこれはブラジルの大手の建設会社が建設したものです。これ、完成した高級マンションの2階部分が崩壊しています。地震があった訳ではありません。施工中、鉄筋を切ったか省いたか、定かではありませんが、まあ明らかに手抜きか設計ミスです。まあ日本で問題になっております、傾いて建替えたマンション、これからですけども、もうレベルが異なりますね。日本の要求品質の高さを痛感いたします。まあこのブラジルの作りは、台湾の地震で崩壊したマンション以下です。次お願いします。

     次は不動産業界。マンションの賃料と販売の価格です。これ2008年からの動きです。左が賃貸、右が販売です。赤線がリオ・デ・ジャネイロ、青線がサンパウロです。サンパウロの新築販売価格だけが下がっておりません。新築契約が9割減の中、いつまで持つかですね。

     2008年から2.5倍、250%ですね、なりましたリオ・デ・ジャネイロの販売価格、オリンピック後にどれだけ落ち込むか、これからが注意です。

     マンション購入者の解約率が半年前の40%から30%に緩和されました。しかしまだ異常な数値です。最近では解約して戻ってくる金額が先に払ったお金より非常に少なくなりますので、不動産屋は別の案件を紹介するようになったそうです。田舎の小さな物件ですね。次お願いします。

     それでは、サンパウロ近郊の工業用地の価格です。実は2年間そのままずっと横ばいでした。ところが今年になりまして、長引く不況と政局不安が影響しているか分かりませんが、じわっと下降し始めました。

    2年前と比べまして平均で20%下がりました。黒字が平米あたりの単価で、赤字が下がった割合です。アルジャの40%もかなり大きいですが、最大下落は日本企業の進出が多いサルト、イトゥー、ソロカバ、20~58%になっております。用地購入を検討されている企業の方は今がチャンスかもしれません。まだ下がるかもしれません。次お願いします。

     次にプレハブ業界です。日系企業の事業凍結が現在相次いでいます。ブラジル人に安定した品質と施工の早さ、移設・増設が簡単にできる事を非常に認知されております。ブラジルで初めてレンタル、日本では当たり前ですけど、ブラジルでレンタルを始めました。これがどのようになるかですね。次お願いします。

     これは皆様ご存じの、オリンピックにやっと間に合った地下鉄4号線です。ケミカルグラウト社は今年3月31日まで、マルの所3カ所書いてありますけども、ここにはりついておりました。弊社が呼ばれる前の昨年の暮れ、右下の写真です。これ昨年の6月ですね。駅部が水に水没している状況です。この時は先が見えない状況でした。右下の写真は水がなくなりやっと掘れると、作業員が笑い出したところですね。ちょっと見えないですね。4月の中旬には全てが貫通しまして、そこから線路を敷いて、電気を通し、駅を作り、電車を走らせました。さすがブラジルの底力です。あの状況で間に合わせたことに驚きです。

     また、ガレオン空港からリオ・デ・ジャネイロ市街地に向けての掘削中の高速道路トンネルは、緊急で呼ばれ6月まで仕事をやっておりましたが、残念ながらこれは2本中1本だけが開業しています。次お願いします。

     次は学会の発表をお知らせします。今年はベロ・オリゾンテで10月19日から開催されます4つの団体の合同会議にブースを出します。今回は先程紹介しましたリオ・デ・ジャネイロの地下鉄やトンネルの止水をメインに発表します。

    実は中南米の土木業界というのはブラジルが実はリードしている事が分かって参りました。そのブラジルが技術の影響を受けているのは、欧米です。しかし今回、欧米にはない技術を日本から導入しております。狭い国土と地盤の悪い地震の国の日本の土木技術というのは、繊細で確実な部分で欧米を凌駕しております。9月17日にはサンパウロ工業大学の修士課程でこれらの技術を紹介いたします。実はそろそろ好景気になるかなということで、サンパウロに実は5000を超える汚染の土地があります。その辺を掃除できるように、工法も紹介したいかなと考えております。あとは環境にやさしい工法が、景気が良くなれば使っていただけるかなと思っております。次お願いします。

     最後、まとめです。どん底の経済が建設不動産業界に影響している事は、仕事がなくなり、不動産が動かない事です。この状況で建設業が縮小してよいのか、優秀な技術者や作業員も放出してしまって良いのか。実は日本のバブルが崩壊した時、地方の建設業界が軒並み潰れました。その時、台風や大雨で、それを補修する人たちがいなくなりました。それが日本で起きた事です。

     三つ目はブラジルのコスト。価格の下げにも限界が実は来ております。マンションや土地の価格は下がると思います。ヨーロッパ企業のM&Aというのは怖いですか。脅威か、といった懸念があります。その中で、欧州企業のM&Aは実は怖くありません。デフレで鍛えられました日本の技術で十分対抗できます。 失業率が高いうちに優秀な人材を集めると。

     最後には、今こそぜい肉をそぎ落とせと。私のことではございませんが、不況の今、各方面に注力いたしましょう。ビジネスチャンスは待っていてもやって来ませんので、これからです。

     以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     藤井部会長どうもありがとうございました。大変面白い発表で、この発表に対しまして、皆様からの質問を受けたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。

    タニグチ氏

     栄進のタニグチです。藤井さんと、この僕がする質問はゴルフしながら聞いた方がいいのかもしれないけど、大久保さんが質問してもいいと仰っているので。

     今回、ブラジルの経済の一つは、まあ政治的な問題が多かったというふうに言われているんですけど、僕が特に不動産関係で興味を持っているのが、今までは汚職だらけでオークションを勝っていた企業が多かった。

    このような背景から今、弾劾裁判も続いている訳ですけれど、今後こういった不動産関係も、政治の公的な事業に関しても、オークションを行った場合、これからは少しは改善されて、まともな所が選ばれてくれるんじゃないかなと。そういう動きになってきた場合、これは日本企業に大きなチャンスなんじゃないかと思うんですよね。

     古い話になるんですけれど、新幹線のプロジェクトがあった時に、まあ特に日本の場合はコストばかり見られて、コストが高いからというふうに無視されたきらいがあったんですよね。ずっとニュースを見ていたら、皆さんもご存じと思うんですけれど、中国がオークションで勝ったような形でやっていた事業のほとんどが今問題が起きています。技術的な問題が多いということですね。

    だから、今後、こういった背景を利用して、技術面のコストというものをもう少し評価して、安ければいいというものは絶対にためにならないというのを不動産関係、建築関係から呼びかけていただければ、うれしいなと思うんですが、いかがでしょう。

    藤井氏

     いま一番最後のところが良く聞こえなかったんですけども。

    タニグチ氏

     今後、汚職とかそういったものが注意されて、牽制されるような格好になるので、だから今後は技術、そしてしっかりしたコストを出すところがこれから政界に認められて、そういったオークションでも勝てるような状況が来るんじゃないかと。

    というのが、今まで日本企業は、ロビイストなんか、そういった汚職だらけの連中に、金払いのいいところばかりに持っていかれていたきらいがあるということを思っているもので、そういうことをちょっとお尋ねした訳です。

    藤井氏

     はい。最近の感触なんですけれども、インフラの整備の工事において非常に、今まで中々決まらなかった話が割とスムーズに決まるようになってきました。ということは、今まで、実は色んなお金が出たり入ったりしていたような話はちょっと聞いておりますが、今それが、これだけの汚職事件の捜査によって非常に下火になってきているのかなという感じは今、実は、公の席であまり話せないことですけども、そういう感じは実はしております。

    ですから本当、純粋な技術で、これからは対抗できる時が、これからの次の政権によって作っていただければ、さらに良い状態になるんじゃないかなと思っております。こんなもんでよろしいですか。

    司会

     ありがとうございました。他に質問ございますでしょうか。よろしいですか。それでは、藤井様どうもありがとうございました。続いて本日のシンポジウム、最後の発表になります。繊維部会の南村幸彦部会長、よろしくお願いいたします。

     

     

  • 繊維部会  南村幸彦 部会長

    繊維部会  南村幸彦 部会長

    Pdf繊維部会     南村幸彦    部会長     (東洋紡)

     高い所から失礼します。ただいまご紹介いただきました、繊維部会部会長、東洋紡ブラジルの南村です。皆様お疲れだと思いますので、できるだけ簡潔にしますので、どうぞ最後までよろしくお聞きください。では次お願いします。

     発表は、上期の回顧、下期の展望、副題の三部構成にて、それぞれスライドに示した項目別に行ないます。次お願いします。

     上期の総評でございますが、一言で申しあげると、原料高と製品安の間で利益なき戦いを強いられた、苦境の半年間でございました。ブラジルの景気が後退する中で、家計の、家の購買力が下がりまして、衣料品に使うお金が減りました。上から、衣料品の価格が下がることによって、糸ですとか織物ですとか、そういったものの価格が抑えつけられている状態です。

    他方で、ブラジルの綿花の品質が向上いたしまして、国際競争力がアップしております。で、輸出が増加しまして、原料の綿花価格の方は上がりました。さらには、綿花も農産物の一つとして国際的な価格指標がございます。これがニューヨークの綿花相場でございますが、こちらの方も高止まりとなりまして、まあ下からはコストインフレで突き上げられました。次お願いします。

     まずは世界の綿花の動向を説明いたします。このグラフは2011/12年度、綿花年度から、15/16綿花年度、この消費量の推移を表したものです。まあ見ての通り、11/12年度から15/16年度まで消費量は横ばいでございます。特に、世界の消費量の3分の1を占める中国の市場が停滞しております。他には、グラフにはありませんが、EUの景気低迷もありまして、世界の綿糸市況や織布、布の市況は好転しませんでした。次お願いします。

     こちらのグラフは2012/13綿花年度から16/17綿花年度の季末の在庫量の推移を表しています。そのグラフ上の緑の矢印が、先程申し上げた国際綿花価格であるニューヨーク綿花相場の推移を表したものです。消費量が足踏みになってまして、需給のポジションで言えば緩和と言えるんですけれども、どうも商品市場に投機マネーが流れ込んできているようでして、そのためニューヨーク綿花相場が高値で推移しています。

    これ年末に向けては沈静化するというのが我々の予測でありますが、綿花というのも農産物でございます。まあ農産物の一つである以上、天候不順などがあれば価格に影響いたしますので、この点は要注意であると考えています。では次お願いします。

     では続きましてブラジル国内の綿花の動向を説明します。こちらは為替相場とブラジルの綿花相場の推移を表したグラフです。近年、マット・グロッソ州とかバイア州でですね、完全機械化の非常に大規模農法が進んでおりまして、先程申し上げました通りブラジルはもう世界屈指の綿産国となりました。今や世界第5位の生産量で、世界第3位の綿花輸出量となっております。特に生産量の7割が、昨年1年間中国をはじめとしたアジアの国々に輸出されました。

     まあそういったことから、国内のブラジル綿花相場なんですが、国際価格、特にドル・レアル相場の変動に非常に大きく影響されております。15年4月以降、レアル安が加速しまして、綿花相場はグラフの通り大きく上昇いたしました。で、今年に入ってレアルが反発しまして、これは価格が下がるんやないかなと期待しとったんですが、さっき言いました通りニューヨークの綿花相場の方がずーっと高止まりになっておりますもんですから、綿花農家さんの多くがですね、いやいやニューヨークの相場はこんなもんですよということで、この指標を引合いに出して価格を下げません。いいとこ取りされているというのが実態です。次お願いします。

     次は引き続きブラジル国内の綿花動向の説明なんですが、綿花の生産量と相場の関係を示しています。世界の需給バランスと同様、ブラジル国内におきましても消費が減りましたんで、需給バランスは緩く回復いたしました。

    ただ、これまでの説明の通り、綿花価格、我々の使っております指標でESALQというのがあるんですが、その相場は高止まりのままでした。なおかつ下期は降雨不足、綿花生産の州での降雨不足により生産量の減少が予測されておりますので、価格の高騰は続くものと見込んでいます。次お願いします。

     続きまして、次のテーマと言える綿糸価格の動向の説明に移ります。綿の糸は、より上質なコーマと呼ばれる糸と、中程度の品質のカードと呼ばれる糸の2種類に大別されます。ご覧のグラフはこれらの糸の市場価格の推移です。この上期はほぼ横ばいで推移したと言えると思います。

    こうなりますとちょっと市況が悪くなってきたということで、一部の日系紡績とブラジルの国内の紡績会社は減産を余儀なくされました。しかしながらブラジルの東北部、こちらの方を中心としたブラジルの大手紡績会社というのは非常に高いコスト競争力、まあ人件費ですとか、色々な問題があるんですが、非常に高いコスト競争力を持っておりますので、フル生産と安値販売を続けるということでありました。まあそのために相場価格が上がらなかったというのがこの半年でございます。次お願いします。

     次はオープンエンドと呼ばれる糸の価格の動向の説明に移ります。このオープンエンドの糸というのは、先程説明したカード糸やコーマ糸とはちょっと製法が違うもので、品質は劣るんですが安く作れるという、そういう特徴を持っております。

    この糸がこの上期は好調でした。この冬、厳しい寒さが続きましたもんですから、この糸の用途であるニット用の太番手や細番手、あるいはスライドに記載した用途で需要が高まりまして、相場価格もご覧の通り右肩上がりとなりました。この下期も上半期と同じく好調に推移するものと見込んでおります。次お願いします。

     続きまして、綿糸の輸出入と書かせていただきましたが、やはりブラジルの繊維産業を説明する上では輸出入の動向というものの説明が欠かすことができません。従いまして、繊維の種類ごとにご紹介したいと思います。この上期、綿糸の輸出入につきましては、レアル安が進んだことで、大手ブラジル紡績、先程申し上げました大手ブラジル紡績を中心として南米各地への輸出が好転いたしました。前年同期比25倍と書かせていただいております。

    逆に、綿糸の輸入というのは半減しております。下期の見通しにつきましては、レアルが反発しておりますので、ある程度輸出に関してブレーキはかかるとは思いますけれども、一定量の輸出というのは継続すると思います。輸入につきましては、希望的観測も含めて、このまま低位で推移すると考えております。次お願いします。

     ブラジルでは綿の次に需要の多い繊維というのは合成繊維です。合成繊維の多くはファッション性の高い婦人衣料品や、機能性のあるユニフォーム、そういったものに使われています。この上期は、まあ景気の低迷ということがあって、企業向けのユニフォーム、この需要が大幅に減少いたしました。特に織物としての輸入量は大変減っております。下期は、今度は逆にドルが切り下がることによって、期待していた海外への輸出販売というものが難しくなってくるかなと、そのように見込んでおります。次お願いします。

     次に紹介するグラフはニット生地、あるいは既製服の輸入動向です。これまでの綿糸や合成繊維と同じように、生地と既製服の輸入も前年同期に比べて40%減という大きな減少となりました。衣料品の小売業界は、まあ軒並み売り上げがダウンしております。店舗数の方も減少しております。この小売店の売り上げが回復するころまでは、やはり厳しい状態が続くのではないかなと見込んでおります。では次お願いします。

     次のグラフは主にジーンズやジャケットなどに使われるファスナー、この輸入動向です。これまでの説明と同様に、衣料品の販売店の売上が全然だめになりまして、輸入衣料の方が減少しました。その減少と並行して、ファスナーの輸入も同じく40%を超える減少となっておりました。

    下期、レアルの反発がありますと、実は衣料品、最終製品と我々は呼んでいますが、縫製品の輸入が増えることがやはり予想されます。そうすると国内産業の収益を圧迫して、例えばユニフォーム用途の需要が低迷するとか、あるいは賃金が上がらず消費が低迷するとか、まあそういうことが危惧されるというのが我々の見立てでございます。次お願いします。

     続きまして、発表の第二部である下期の展望について説明したいと思います。お願いします。

     これまでの項目をぎゅっとまとめて、簡潔に書きました。世界の綿花需給につきましては、バランスは緩む方向でございます。ただ、投機マネーの流入が続くことで、綿花相場の下げは弱いままではないかというふうに見込んでおります。で、レアルが反発することによって綿糸の輸出にどういう影響があるかということですが、先程申し上げましたように、一定量の輸出は継続されるというふうに考えております。ただ、それ以上に、縫製品の輸入、最終製品の衣料品の輸入が再び増え始めましたら、糸と織物の売値を下げるそういう要因となると思います。

     市況について言いますと、こういった環境ではやはり市況を好転させる材料が乏しい下期となるのではないかなと思います。この期間は新しい市場をつくる、そういう準備期間として考えたいというふうに思っています。一番下にありますように、まとめますと、本格的な回復は2017年以降であるだろうと。それまでは損失を最小限に食い止めて、まあ来る春を待つというところです。では次お願いします。

     最後の第三部の副題については、課題整理と政府への提言、この順に説明します。次お願いします。

     課題整理として4点を挙げさせていただきました。1点目は、長期的な視野で地道にブラジル国内市場、これを開拓していくということです。繊維部会においてはこれまでもそうしてきましたし、これからもそうしていくというふうに考えております。

     2点目としましては、現地のパートナー、我々が糸や織物を販売する時に協力してもらっているパートナー、そういう方との繋がりをより一層密にしていく。時々日本企業が陥りがちな100%自前主義というものからは脱するということが不況での抵抗力をつける方法ではないかなというふうに思っています。

     3つ目は、こういう景気後退の時も、まあ言うたらブラジルに出てきた現地企業としては貴重な実地体験であると、そう前向きにとらえてですね、ブラジル独自の制度をもっとこの機会に深く理解していくということが課題だと思っております。

     4点目は、繊維部会独特の課題ですが、糸だけ売っている、織物だけ売っているということでは中々消費者に受け入れられる新しい価値というものを作るのは難しいです。それを、衣料品、例えばアパレルメーカー、あるいは加工会社、そういうところと一緒になってトータルで表すことによって、この後また何年後かに不況が来ても、この商品だけは継続的に売れる、まあそういう価値を持った商品を売れる状態に変わる、そういうことが4つ目の課題であるというふうに考えております。次お願いします。

     最後は副題に関連して、ブラジル政府への提言をまとめました。

     まあ今、景気のどん底であると。今だからこそ、思い切った政策を打ち出す機会ではないかなというふうに期待しております。一つ目ありますように、次に来る、必ずやって来る経済成長期、それに備えて、ブラジルの工業の競争力、特に国際競争力を強める、そういうことを進めたらどうかなというふうに思います。

     昨年来、もしくは一昨年来続いている政治の混乱、これに終止符を打って、政治を安定させる。政治を安定させることでブラジルの経済政策に対する信頼と信用を回復させる。そういうことを望んでおります。いま景気が悪い、何とか景気を回復させなきゃいけないということで、景気回復のためだという理由でブラジルコストと呼ばれるものを改善するとか、あるいは国内からの抵抗があっても、ここは景気を良くするためだということで、海外からの技術導入、こういうものを優遇するとか、そういう今だからこそできる大胆な変革、そういうものの絶好のチャンスであるというふうに考えていただきたいなと思っております。

     まあ、ピンチの後にチャンスありという言い回しがありますから、次のチャンス、確実にやってくると思っております。そのチャンスを捕まえるために、あの手この手で今の苦境を乗り切るということ、そう申し上げたいと思います。

     ではこれで繊維部会の発表を終わります。どうもご清聴ありがとうございました。

    司会

     南村様どうもありがとうございました。こちらの発表ですけれども、質問を受けたいと思いますけれども、いかがでしょうか。よろしいですか。南村様どうもありがとうございました。

     これで11部会すべての発表が終わりました。各部会長、副部会長の皆様、発表どうもありがとうございました。ここで我がブラジル日本商工会議所の名誉顧問で、在サンパウロ日本国総領事の中前隆博様よりご講評をお願いしたいと思います。中前総領事、よろしくお願いいたします。

     

     

  • 講評  中前隆博 在サンパウロ日本国総領事/ブラジル日本商工会議所名誉顧問

    中前隆博 在サンパウロ日本国総領事

     ただ今ご紹介いただきました中前でございます。今日ちょっと午前中地方に出張しておったため、遅刻をしてしまいました。まずこれをお詫び申し上げたいと思います。私が参るまでの各部会の皆様のご発表の内容、これは担当から報告を受けたところでございます。また、参りましてからの各部会のお話を伺うことができました。これを踏まえつつ、私なりの思うところを述べたいと思います。

     今回のシンポジウムのテーマが「どん底での戦略」ということでありますけれども、その中でやはり私どもが少し光を当てたら良いのかなと思うようなことをいくつか考えておる訳でございます。例えば、国外に注目すればですね、南米大陸の各国において、政治的にはいわゆる左派勢力、あるいはポピュリストと言われている政権が勢いを少し弱めて、そして、中道政策、中道右派と言っていいのかも知りませんけれども、中道に回帰しているという傾向が報告されております。

     特にお隣のアルゼンチンでの動向が顕著であるということ、これは注目すべきだろうと思いますし、また一部のご発表にもありましたけれども、メキシコをはじめとして太平洋同盟の経済状況、対外投資の動向、それからTPPの合意、これが今後締結に向けてどういくかというのはともかくとしても、課題はありますけれども、とにもかくにも合意をされたということ、そういうものができたということ、これはブラジルの官民の話を聞いている限りそれなりのインパクトを与え、このままでは自分たちはいけないのではないかという問題意識を持っておられる、そういう変化を産んでいるように見えます。

     また、国内に目を転じますと、確かに状況は厳しい訳でありまして、また苦しみの時期ということではありますけれども、ただし、この先どうなるんだろうということではなくて、いつ底を打ち、好転するのかという議論が主流になっているということ。これは他のいくつかのエマージング・マーケットの国の状況と比べても、ブラジルについてはそれは注目できる環境なのではないかというふうに思います。

     政治のプロセスは、苦しいプロセスが続いております。どちらの勢力の言っている事が正しいかということについて、軽挙に申し上げるのは控えるべきかもしれませんけれども、少なくとも最近の政府が打ち出したいくつかの経済政策、これらが基本的には良い方向に向かっている。経済政策と外交政策がビジネスにとって好ましい方向に向かっているのではないかという認識は、おそらく内外で概ねのコンセンサスがあるのではないかというふうに観察しております。

     また、ご案内の通り、リオ・デ・ジャネイロのオリンピックが、治安対策を含めてですね、非常に成功に終わったという、こういうグッドニュースがいくつか出てきているということは、やはり国内の雰囲気を改善する材料にもなって、また、ブラジルの人たちが自信を取り戻す契機ともなっているように思われます。

     そして、先日の昼食会で大使の梅田からお話を差し上げた時にも申し上げたことでありますけれども、一連のプロセスが、基本的には、法的な手続きに則って行われていること。報道や言論の自由が完全に保証された形で進んでいること。また、司法の独立が確保されていること。こういう形で現下の問題を解決しようとしている。

     多かれ少なかれ、今エマージング・マーケットの国々は、様々な問題を抱えて、特にBRICSの国々はそれぞれの問題を抱えているというふうに、課題を抱えているというふうに承知しますけれども、そういう比較の中で、ブラジルの進んでいる道というものは、これは一つ大きく注目すべきものではないかというふうに思います。

     それらのことから、トンネルを抜けた時には、以前よりもよりオープンで、透明で公正なマーケットが現実化するということを、ぜひ期待したい、信じたいというふうに思っているところでございます。

     その中での日本との関係であります。品質ですとか、納期ですとか、そういう日本ならではのクオリティの高さに対する評価は定着をしているところでございます。これは言うまでもないことであります。さらに、先のオリンピックでの開会式。ここでブラジルは世界中の30億人の視聴者の前に、ブラジルが、特に移住者の歴史を通じて、日本との関係の歴史を誇りに思っているということを示してはばからないところがありました。また閉会式でのハンドオーバーセレモニー。そこでの日本による東京オリンピックのプレゼンテーション。また、それに対する反応。内外の反応。これは日本のソフトパワーをいかんなく発揮し、それが評価された証ではないかと思っております。

     ブラジルは歴史的に多様な文化を受容し、統合するという能力に長けている国だと思います。その中で、日本は、歴史的、文化的に極めて優位にある国ではないかというふうに感じております。

     各部会からのお話の中で、今後の基本戦略は基本的に、基本に帰る。また、長期的視野を持って対応する。日本のクオリティを強調する。高い付加価値を強調する。基礎的な体力を強化する。そして、変化をチャンスに変えるというご認識でほぼ一致しておられたようにお見受けをいたしました。私としてもそれは、まさに仰る通りで、その通りであろうと思う訳でございます。

     その中で、私ども総領事館として、どういうことができるかということであります。一つには、もちろん、在ブラジル大使館と十分に協調しながら、ブラジル政府への様々な働きかけについてお手伝いをしたいと思いますし、それから、いわゆる日本のブランド、ジャパンブランドの強化・普及という観点から、戦略的な対外発信というものを一層強化したいと思います。

    そこの中に、先程ご紹介もいただきましたジャパンハウスもある訳でございます。また、対外交流委員会、新しく設置していただきました商工会議所の委員会と協力しながら、若手に一層注目しつつ、日系社会の方々との連携を進めていく、そのお手伝いもしたいなというふうに思っております。

     そう申し上げた上で、一つ具体的に、これはあくまでご提案でございますけれども、私ども毎年12月に天皇誕生日のレセプションを行います。これはブラジル官民、それから日系社会の方々、合わせて大体400名から500名の方がご出席になります。

    実は今まで当館、総領事館ではやっていなかったんですけれども、そこに、日本企業の方々に何らかの形でご出馬をいただいて、プレゼンテーション、プレゼンテーションと言いますか、そこで自社のプロモーションをしていただくということ。これは実は数年前からご案内の通り、色々な在外公館でやらせていただいておりますし、ブラジリアの大使館でも行わせていただいておりますので、皆様方の中にはおなじみの方もいらっしゃるかと思います。当館、色々な事情で中々できなかったんですけれど、まあちょっとやってみようじゃないかという話をしております。

    ちょっとですね、公邸の構造ですとか、色んな理由で、色々と試行錯誤しながら、どういうふうにできるかというのはこれから具体的に考えていかなきゃいけないんですけれども、これは一つのご提案として、企業の皆様方にご検討いただいて、もしやってみようという方が、企業様がいらっしゃいましたらですね、ぜひ一緒にやっていきたいなと思っております。具体的なところはこれはまた、事務局さんを通じてですね、色々ご相談したいと思いますので、ぜひご検討してみていただければと思います。

     以上で私の話を終わります。どうもありがとうございました。

    司会

     中前総領事、貴重なご講評をいただきまして、ありがとうございました。大変心強いお言葉と、また、新たなご支援のご提案もいただきましたので、我々、このトンネルの出口に向けて、この難局を乗り切るように、頑張っていければと思います。続いて、在ブラジル日本国大使館の小林和昭参事官よりコメントを頂戴したいと思います。小林参事官よろしくお願いいたします。

     

     

  • コメント  小林和昭 在ブラジル日本国大使館参事官

    小林和昭 在ブラジル日本国大使館参事官

     在ブラジル日本国大使館で経済の担当の参事官をしております、小林と申します。皆様お疲れ様でした。本日は貴重なプレゼンを聞かせていただき、本当にありがとうございました。誠に僭越ではございますが、コメントをさせていただきたいと思います。

     このシンポジウムの参加ですが、実は今回で6回目になります。毎回新しい発見があり、本当に私の仕事の上でも有意義なものとなっておりまして、今後も、ブラジルにいる限りは出席したいと思っております。 6回目になりますが、コメントについては中々慣れません。まあ田舎者なのでなまりもたまに出てしまうかもしれませんが、そこはご容赦いただければと思います

     本日のプレゼンでもブラジルの経済の厳しさというのを改めて知ることができました。この厳しい状況の中で、まさにビジネスの最前線で活動されている皆様に対して、敬意を表したいと思います。大使館をはじめ、在ブラジルの日本総領事館、在伯公館は、日本企業支援というのを今後も力を入れていく所存でございますので、皆様何かお困りのことがあれば、気軽にご連絡いただければと思います。

     ブラジリアの話題ですが、来週、何も大きな問題がなければ、罷免プロセスのクライマックスを迎えることになっております。それが無事終わればですけれども、報道に出ていますけれども、新政権は9月から外交の問題についても色々と取り組むということになっております。スケジュールだけで言えば、9月頭にはG20が中国で、9月下旬にニューヨークで国連総会、また10月中旬にインドでBRICS首脳会合ということで、大きなイベントが9月から10月に続いてあります。

    その中で、アジア、その中の日本というのにも訪問したいというのが、報道で出ておりますが、そういう動きが出てくれば、色々な問題が一気に動き始める可能性がございます。この中では、官だけではなく、官民一緒になって取り組む課題というのも出てくると思いますので、その際はよろしくお願いしたいと思います。

     会議所のAGIR活動について一言言いたいと思います。松永会頭からお話がございましたが、今まで、簡単な課題から始めておりましたが、まさにこれからが本番になると思います。これからは、松永会頭が先程高いボールを投げるという表現を使っておりましたが、まさにこれから高いボールを投げていかなきゃならないという時期ですが、最近ブラジリアで、国会・行政の方と話をする機会がございますが、関係者皆も、ブラジル人も、やはりこの高めのボールを処理しなければいけないというふうな話をすることが、話を聞くことが出てきました。

     まあブラジル人のことですので、どこまでこれを100%信じるかどうかというのはちょっと難しい所はございますが、今まではその、例えば、労働、年金問題、税制問題というのはアンタッチャブルな形で、全く出てなかった問題が、まさに時が来たというような形で話がされるようになっております。

     今後のスケジュールについては、2018年が選挙の年ですので、まさに来月9月から2017年いっぱいというのが勝負の期間になると思いますので、この中で少しでも成果が挙げられるよう、商工会議所と大使館、総領事館も含め一体となって取り組んでいければと思っております。引き続きよろしくお願いします。

     大使館は、最近私の面談の申し出を受けていただいた方には言っていますが、明るいニュースを探しております。皆さん明るいニュースがあれば、今後の色々な日伯のハイレベルの会合に向けても必要ですので、明るいニュースがあればぜひまたいただければと思います。

     明るいニュースの続きということで、オリンピックの話題をちょっと触れさせていただきたいと思います。オリンピックは最後の土曜日にブラジルがサッカーで優勝し、日曜日にバレーボールで優勝し、最高の形で成功を締めくくることができたと思います。

    その中で、先程中前総領事も仰っていましたように、開会式では日本移民が、閉会式では日本の東京への引き継ぎのプレゼンテーションが大きな話題になり、ブラジルの中で日本がまた再注目されている状況でございます。この良い印象をもって、ビジネスの世界でも流れに乗っていければと思っております。

     また、競技では、私が一番感銘を受けましたのは、日本の男子100M×4のリレーでございます。一人一人は体格で劣り、これまでの記録でも劣るものが、チームワークを発揮して銀メダルという大きな成果を得ました。まさに一人一人、ブラジルでは日本企業というのは他の企業に比べて小さい部分がありますが、協力して色々取り組んでいけば大きな成果が出せるという、一つの例ではないかと思っております。その他、日本選手がブラジルのこの地で色々な成果を出してくれましたが、我々もそれを受け継いでいければと思っております。

     最後に、繰り返しになりますが、大使館、総領事館はブラジルで活動している皆様の支援を続けていく所存でございます。引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

    司会

     小林参事官、どうもありがとうございました。今ですね、ちょうど5時45分となりました。本日は皆様、長時間にわたりシンポジウムに参加いただきまして、ありがとうございました。

    そして、発表者の皆様、そして資料を準備いただきました部会メンバーの皆様、大変お疲れ様でした。また、本日ですね、慣れない私の司会にも関わらず、皆様のご協力をいただきましたお陰で、時間よりも早く終了することができました。どうもありがとうございました。

     また本日はですね、「どん底の時期ならではの戦略は?-課題整理と対処方策-」をテーマに、各部会から様々な課題や対処法が発表されました。各社、各業界ですね、どん底のブラジル経済に苦しみながらも、地道な取り組みもあり、アイデアあり、この難局をですね、乗り切る動きが多く披露されたと思います。

     また、化学品部会ですとか、いくつかの部会では、低迷するブラジル国内の市場を補完するために周辺諸国市場での事業展開を模索するような事例も発表されたかと思います。また、テメル新政権への期待と不安、そして景気低迷の出口に備えた取り組みも数多く発表されたかと思います。本日のシンポジウムでの内容は、本日参加いただきました企業の皆様のですね、取り組みに必ずや参考になり、力を与えるものになったのではないかなと、このように確信しております。

     また、本日のプレゼンは、カマラのWebサイトに近日中にアップする予定にしておりますので、資料の方を後でご活用いただくようにお願いできればと思います。

     それから最後に、いくつかの部会からカマラやブラジル政府等に向けた様々な要望が取り上げられました。こちらの方をですね、今回のシンポジウムの新たな企画ということで、こういったところも取り上げていただくように各部会にお願いしたところでございます。

    これらの要望は、松永新会頭の下、私も含め、これから引き続き、戦略・戦術を練って、皆様と力を合わせて検討・対応するように取り組んでいきたいと考えております。

     また、部会長シンポジウム、半年に1回開催されておりますけれども、今回ちょっと私、中々皆様のご質問を拾い上げることができなくてちょっと反省しておりますけれども、よりよいプログラムになるように頑張っていきますので、これからも皆様のご支援、ご指導をよろしくお願いいたします。

     これで本日の部会長シンポジウムを閉会したいと思います。この後、隣の部屋で懇親会がありますので、皆様ぜひ参加いただければと思います。参加費用をお支払いになった方は大丈夫なんですけども、飛び込みで参加もできると思いますので、その際、80レアルでございますけども、ぜひとも参加いただければと思います。それでは皆様、どうもありがとうございました。

    (終了)

Pdf全プレゼンテーションPDF

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=42191