グスタボ・ロヨラ *
公会計が被ったダメージにより、経済の復興は容易でないだろう。
テーメル暫定政権は発足からようやく1か月が過ぎたところだが、もう今の時点で、マクロ経済に関する責務が連邦政府の手に戻ったことを祝っても良さそうだ。ジウマ(大統領)とマンテガ(財務大臣)、アルノ・アウグスチン(国庫管理局長)のトリオによる暴政は、今後数年にわたって傷跡を残してブラジル社会が高い代償を支払わされる。それでも、前政権から引き継いだ数々の疾患の治療に必要な時間を割いた後、経済がようやく所定の位置に納まるという希望が芽生えたのだ。
これからメイレーレス財務大臣時代の状況まで回帰するには、財政責任と変動為替相場制、インフレ目標制度が、マクロ経済の3本柱になる。メイレーレス氏と彼が率いた経済スタッフは2011年、ジウマ大統領とマンテガ次期財務大臣による派手な人事式典の中で退陣、その後の経済政策は「新経済マトリックス」と呼ばれた継ぎ当てだらけのフランケンシュタインに取って代わられた。我々が良く理解しているようにこの怪物は、ブラジル経済を破壊し、巨額の財政赤字を生み出し、高インフレと、1930年代以降で最悪の不況を生み出した。先に言及した3本柱に立脚したマクロ経済政策は、特に経済主体が信頼を回復して以降、経済が再び成長に向かうための堅固な足場を形成していく。
だが、3本柱の再建は、とりわけ公会計が被ったダメージのため、容易な道のりではないだろう。財政の枠組みを悪化させる構造的な流れは、最近の政権の公会計だけに責任を負わせることはできない。だがそれでも、ジウマ・ロウセフ大統領ほど財政の破局的状況を後押しした人物はいない。創造的会計と財政操作、野放図な免税措置は、職務執行停止により停職中の大統領が第1次政権で進めた財政政策の、ほんの一部に過ぎない。2016年に予想されるGDP比2.6%という基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を見ても、ジウマ大統領が後継者に残した負の遺産の規模と性質が伺える。財政調整は不可避なのだが、痛みを伴わないわけにはいかず、達成は恐らく2018年以降になるだろう。いずれにせよ、経済当局は問題に対する正しい判断材料を把握しており、テーメル政権は既に、2017年から財政赤字を持続的に縮小する対策を導入している。公共支出の実質成長規制は、承認に政府が国会運営能力を大いに発揮する必要があるとはいえ、まことに幸先良く1歩を踏み出したと言える。
労働者党(PT)政権下のブラジルでは、市場主義を敵視し、国家統制主義的な性向で市場や公会計に対応してきた。だがテーメル政権の誕生によって、パロッシ財務大臣の辞任以降に顕著になったこの軌道を修正するチャンスが、ブラジルに到来した。PT政権下で行われた、「民営化」という単語の使用を避けるような幼稚な行為、あるいは、コンセッション契約において、資本コストとビジネス・リスクが不釣り合いな内部収益率(IRR)を設定するという気まぐれな対応に終止符が打たれた。これに伴い事業認可と資産の売却が加速し、財政救済と、とりわけ国内のインフラの質の向上が期待される。
保護貿易主義は、PT政権下で拡散したもうひとつの疫病神だ。石油・ガス業界では「ローカルコンテンツ」政策が、PTの引き起こした「工業政策」の見事な空振り三振の好例になっている。ペトロブラスは汚職で被害を被っただけでなく、行政能力の欠如と石油派生品価格の無責任な政策により、保護貿易主義の実験に多大な犠牲を払わされ、天文学的な負債を抱えることになった。テーメル政権の発足で、経済の他の分野まで汚染するこの偏狭な保護貿易主義の膿を出し切ることが期待される。
ブラジルの貿易政策も同様に、PT政権の派手な実験台にされた。うぶなイデオロギーによる偏見から、ブラジルは、重要な貿易圏の形成では傍観者となり、多国間主義の夢を追い求めることに熱を上げ、「ボリバル主義」のメルコスルにがんじがらめになり、二国間貿易協定を後回しにした。その結果、我が国をグローバルな生産チェーンから分離してしまい、国内の製造業は鎖国状態になった。ジョゼー・セーラ氏が外務大臣に就任したことで、PTが引き起こしたこれらの失敗の経験を挽回する機会が開ける。
要するに、テーメル政権下での責任ある経済ガバナンスの見通しは、経済主体が現在の政治情勢にすくみ慎重な態度を取り続けているにしても、既に、今後の展望に対してポジティブな影響を与えている。だが加えて、国会が各種の改革への支持を表明するだけで、信頼がより積み上がり、経済活動がより迅速かつ着実に回復する道を開くのである。(2016年6月19日付けエスタード紙)
* ゼツリオ・バルガス財団(FGV)大学院経済学研究科(EPGE)経済学教授、テンデンシアス・コンスルトリア・インテグラーダのサンパウロにおける経営パートナー兼取締役、ブラジル中央銀行元総裁