Iediのペドロ・パッソス所長は、経済の「方向性の欠如」が不安定な状況を生み出し、「財界の不安感」を煽っていると指摘する。
ペドロ・パッソス氏はブラジルの工業部門を代表する要人の1人である。化粧品メーカー「ナトゥーラ」創設者の1人で、かつ経営パートナーであり、国内工業部門の大手企業が加盟する組織、工業開発分析研究所(Iedi)の所長でもある。
2013年の工業部門の不振についてパッソス氏は、2月第2週、「腐敗した経済環境」と呼ばれるものが原因だと指摘した。実業家である同氏にとって、経済の「方向性がなく」、財界の不安感をあおっているのだという。「財界が信頼を寄せようというムードは存在せず、消滅した」とは、以下のインタビューの中でのパッソス氏の発言である。
■2013年の工業生産、とりわけ12月の数字が振るわなかったことについて、どう説明されますか?
悪い意味での驚きで、落ち込みは予想を上回るものだった。最初の分析で、消費財分野の収縮という、あちこちの業界の動向が示された。それでも輸出関連を含めて一部の業界では、良好な実績を積み上げていた。運輸業界、シューズ業界、製材業界は、脆くはあったが、輸出、とりわけアルゼンチン向け輸出を拡大した。全体として見れば悲観的な結果であるが、見通しとしては悪くない。
■こうした結果に財界はどのように対応するのでしょうか?
経済環境は、この国に大きな被害を与えている。投資比率は極めて低く、景気への信頼感は確認できず、消滅した。政策の方向性もまとまっていない。どこへ向かっているのかという重要なコミットメントが、はっきりしない。こうした経済環境が、不安定な状況を生み出す。2013年12月の結果は、積年の問題がここへ来て表面化したものだ。そして我々は、2014年に低調な年明けを迎えたことからも、この状況に多くを期待することはできない。しかも国際経済のボラティリティーという問題が依然として存在する。このように変動の激しい状況は、この国の判断不足を反映している。どこに向かっているのか、(国が)何に賭けようとしているのかが分かりにくいために、財界に不安定なムードが生まれている。
■それはどのようなものでしょうか?
経済モデルを新しく定義し直す必要がある。状況は変化し、国はそれに順応しなくてはいけない。Iediがしばらく前から始動させた生産性を追及する行動計画への復帰が重要なのだ。
「疲弊しきった経済政策を認めるべきだ」
ペドロ・パッソス氏は、消費にインセンティブを与え、輸入車に障壁を設け、同時に貿易の自由化を求めるという政策を批判する。
工業開発分析研究所(Iedi)のペドロ・パッソス所長は、インセンティブを柱にした政府の政策がもはや効果を発揮しないと指摘する。我が国は、保護貿易主義モデルを捨てて、メルコスルに囚われた身分から脱出し、太平洋同盟や欧州連合(EU)などの経済圏、アメリカとの貿易協定に向かって歩みだす必要があると同所長は言う。
■Iediの主張はどのようなものでしょう?
国内市場を視野に特定の業界向けの消費に対してインセンティブを与える政策の効力は、次第に低下している。我が国の政策は極めて受け身で、もはや輸入品による国外からの圧力と、限界にきている国内市場に耐え得るものではなくなっている。このため、成長も期待できない。生産性にはより多くのイノベーションと技術、投資、労働者の育成が求められる。さらに高い競争力を獲得するには、我が国は、輸出と輸入に置いてさらに多くのコミットメントが求められる。換言するなら、国際的な枠組みにブラジルを統合させていく政策と言うことだ。我が国は、発展のシナリオに工業部門を含める必要がある。
■工業部門を支援するために政府が導入した税制優遇政策について、あなたはどのように受け止めておられますか?
インセンティブは、局所的かつ短期的な対処で、持続性がない。既に35%の輸入税により保護されている自動車産業に対して、ブラジルで生産されていない自動車に工業製品税(IPI)を追徴して附帯的に保護するというのは、私の理解の範囲を超えている。それどころか、消費の方向を強力に志向した白物家電へのインセンティブも同様に方向違いだ。与信供与によって台頭するという、今日ではもはや存在しないベクトルを伴った所得層に影響力を持っていた、色あせてしまった数々のインセンティブのパッケージがあるだけだ。そろそろ、我々は戦略を新しい方向に向けるべきだ。
■あなたは、発展のシナリオに工業部門を含めるべきだと言われました。それは、どのように?
そのプロセスは、ブラジルを近代化して輸出入を拡大するために貿易の自由化に向けた明確なコミットメントが第1ステップとなる。続いて、より明確な貿易政策の立ち上げで、これは現在、極めて脆弱なものだ。3番目には、過去20年で我が国が失った、あるいは発展させてこなかった貿易協定を可能な限り積極的に進めるのを明確にするということ。
■あなたはビジネスコミュニティーで信用が欠けていると言われています。なぜでしょう?
経済政策の判断と目標が、不明瞭だ。ブラジルのインフレターゲットはいったい、6%だったのか、それとも4.5%なのだろうか? テクニカルに言えば4.5%なのだが、では実質的目標はどうなのか? プライマリー収支黒字として確保すべき目標は、幾らだったか? 事業認可による民営化推進は、方向としては評価できるが、実施までに時間がかかり過ぎた。この外に重要な施策として、何か役立ちそうな物があるだろうか? こうしたプロジェクトを組み立てるに当たって、様々な疑問が存在し、これも我々の信用を失わせることになっている。もう1つの好例は、基本法あるいは税法だ。法的にグレーな部分で、課税問題あるいは労働問題に対して偶発的に企業に対する課税として負担が求められるという動きが、目に見えて増加している。これは投資を極めて不安定にする。加えて、こうした不安定な状況によって、企業の資産価値が失われ、そこでも投資余力を縮小させる。
■それは証券取引市場についての話ですか?
そうだ。証券取引市場の悪化は企業の株価の低迷と、さらに、投資と資金調達、買収の機会損失に繋がる。銀行口座の預金が減少するなら、同様に投資の可能性も縮小する。
■しかしジルマ大統領は財界に様々な見通しを示しています。ダボスで世界トップの財界関係者らに向け、民営化計画のスタートや、新たな貿易協定に向けた努力についてコメントしています。これらは、明るい兆候といえませんか?
スピーチの方向はよかったし、前向きだ。だが、実際の行動では、業界基本法や、公会計、とりわけ貿易収支の黒字目標などについて、依然として政府は明確にしていない。
■2014年を実りある年にするために、工業部門はどのような対応を取ろうというのでしょうか?
信頼感を醸成する雰囲気作りには、まずは、財政政策として、そしてインフレ対策として、実施すべき振興策を明確に、しっかり定義すべきだと思う。実業家が、信頼を感じ取れなければならない。それは非常に重要な、かつ有効な対話への取り組みだ。私は、現在のような経済の収縮期において、見方を転換するのが重要だと受け止めている。我々が短期的に実施する部分に大局的な目的を持つ行動は起こり得ない。では、新しい方向性とはどこを向いたものなのか? それは、国内市場向けにインセンティブを受けて投資を継続させるのか、それとも、ブラジル企業を国際市場に参加させる行動計画へ転換するのか? ブラジルに進出した多国籍企業に対する我が国の努力というのは、ブラジル国内事業を輸出プラットホームとして活用するものだろうか?
■ジルマ大統領による「ブラジルの民衆に対する書簡」は、彼女が再選する可能性を視野に入れたものでしょうか?
ちょっと振り返ってみよう。これまでに、第1ステップとして安定化の時期があり、第2ステップでは国内市場にフォーカスして所得の分配と所得層の底上げによって新たな購買力を生み出した。しかしながらこのモデルは既に疲弊しきっており、別のモデルを立ち上げなければならない。選挙の政綱までには終わると言っていい。ブラジル人として我々は、選挙だからといって人々がブラジルについて議論するのをやめて判断を先送りするのを受け入れては駄目だと思う。明日にも制定されそうな法律がないというのに、問題は千変万化、そしてブラジルは国際市場の信用を受ける必要があるのだ。実業家からも信頼されるものが必要だ。さらに大きな投資を呼び込む必要もある。事業認可は一層徹底して推進する必要がある。私は、選挙の年にこうした問題を議論するのが適切だと思う。見通しを変化させ、こうした混乱する環境に止まらない方が、発展するためには良いのだ。さもなければ、2015年の物価はさらに上昇しかねない。
■その物価の上昇とは、どういうことを意味するのでしょうか? 価格調整ですか、それとも経済危機?
痛みを伴う財政調整で、場合によっては、あらゆる投資を困難にするような一層大きな利上げだ。我々を常に悩ますインフレもある。我々は世界とつながっており、長期にわたって6%ものインフレと共存することなどできない。我々は、消費ベースや大きな国内市場など、既に獲得してきたものを失わないような形でこの経済に対策を講じなければならない。
■生産性の問題についてあなたは、どこまでこの国の構造的問題が影響したものだと受け止めますか、そして、どこまでが企業自身の投資不足の問題とされますか?
君は、2つを混同して話している。コストと総合的な、つまりインフラと優秀な人材、教育の不足といった生産性の不足ということと、企業が技術の発達をキャッチアップせずに必要な生産性の水準に達していないということだ。ブラジルの自動化水準は、ITと工業生産プロセスの技術革新などと同様に低い。しかも工業分野では、競争力不足という問題も抱えている。保護された産業は、短期的には救済されるとしても、長い時間をかけて競争力を低下させる。あなたが小規模な少数独占状況を確保するとすれば、価格形成にとって障壁となり得る権限を持つということだ。技術革新への投資はリスクを伴う投資のため、国外で競争にさらされている企業だけが実施する。
■ブラジルがそうした競争力を確保することは可能でしょうか?
受け身の態度を改め発展するなら、ブラジルが国際市場に打って出られると確信している。守備ばかりのチームは試合に負ける。こうした積極性のなさと内向性は財界人に伝播し、政府に感染し、オピニオンリーダーにも波及する。一部の人は、短期的な視点でしか考えていない。我々は無責任なおべんちゃらなど支持しないし、むしろ長期的な、国際市場にブラジルを統合していくコミットメントを欲している。我々は、交渉術を身に着けずに全ての業種をテーブルに載せるほど世間知らずであってはいけない。ブラジルはさらに国際化すべきだが、保護関税を引き下げるための目標設定に向けて計画を立てる必要がある。この計画によって国際市場における企業のイノベーションと強化、シェアの確保といった動きが後押しされるのだ。
■2013年は、Iediが貿易協定締結に向けた決断を迫る書簡をジルマ大統領に提出しました。進捗が見られますか?
メルコスルと欧州連合(EU)との貿易協定を進めるという表明があったが、アルゼンチン問題に関連した国外の動きによって、この行動計画の推進には困難が待ち受けていると思う。貿易面では、より積極的な姿勢に欠けていると思う。一例を示そう。政府はしばらく前から、我が国の輸出品に組み込まれている租税コストの一部を撤廃しようと、レインテグラ(Reintegra:輸出業者向け租税還付特別制度)を実施してきた。だがこのインセンティブ、実際のところは我々が支払った税金の還付だったこのインセンティブは終了した。だとすると、我が国の貿易戦略は明確なものではないと思う。貿易の促進にとって基礎的な、より良い商品の流通を促進し、ばらばらな規定を撤廃するのに、どういった協定を選ぼうというのか? 総括すると、我が国は、平均してGDPの12%の輸出入を25%に引き上げるべく狙いを定めれば、我が国がさらに成長するベクトルを確保できるということだ。我が国は中国にはならないだろうが、この国際貿易でもう少し大きなシェアを確保できそうだ。
■ブラジルはメルコスルと一蓮托生で、過去数年は対アルゼンチン輸出の落ち込みや他の地域との貿易協定出も足かせになっています。政府はどのように、このメルコスル、そしてアルゼンチンに対処すべきでしょうか?
アルゼンチンは重要な貿易相手国だし、我が国は彼らを助けなければならなかった。だが、その結果として2か国間協定の推進計画に狂いが生じた。国際社会に統合していくのを大きく遅らせるような、些末な状況に囚われてはいけない。それと同時に、一方ではメルコスルへの加盟が重要なこと、メルコスルによってより広範囲な商業活動に繋がっていることも認めるべきだ。我が国は、発展に対し決定的に影響しない範囲で、他の国を支援すべきだ。これはデリケートな問題だが、現況は耐え難いものだ。
■実際面としてどのような解決法があるでしょう? アルゼンチンとの協定を破棄するということでしょうか?
協定を結び、場合によっては、何らかのセーフガードや調整作業を考慮して、メルコスルとは関係なく計画を推進するようにしなければならない。ブラジルは、国際的な統合をリードする必要がある。太平洋地域が進めているように、地域統合は極めて重要だ。ブラジルが蚊帳の外にいて良いはずがない。私は、ブラジルが太平洋地域の経済件に加わっていくことが、物流の問題からも、地域の国々の市場としての可能性からも、より繋がりを強化し競争力を高める点で重要だと考えている。私はラテンアメリカのより大きな地域統合を断念はしないが、ラテンアメリカの統合ということだけにとらわれてはいけないということだ。
■アメリカとの貿易協定に向けた交渉再開が良いと?
そうだ。EUとの統合、アメリカとの統合を模索する必要がある。なぜなら、アメリカはEUあるいはアジアと貿易協定を締結しようとしており、彼らはそこで、国際貿易の基準を策定しようとしているからだ。規制、衛生、法律、税関、環境問題、手数料といったすべての問題が、この巨大な協定の中にはめ込まれる。そして我々は議論に加わることなく、それに従わざる負えない立場に立たされる。いずれにせよこの統合プロセスには遅かれ早かれ巻き込まれるのだから、それならば、自分たちの手で運命を切り開いていく方がよほど良い。この交渉に参加し、何らかの役割を演じる方が、聾桟敷に置かれてその後に規定を押し付けられるよりは良いというものだ。(2014年2月8日付けエスタード紙、クレイデ・シルバ記者、リカルド・グリンバウム記者)
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