ラヴァ・ジャット作戦の進展によって、既に勢いを失ったブラジル経済にさらに強いブレーキが掛かりかねないだけでなく、2期目を迎えるジウマ・ロウセフ大統領にとっても厳しい舵取りを迫られることになる。
仮に2015年が大事件もなく過ぎるにしても、ブラジル経済だけは波乱の1年になるだろう。財政調整という熱望されてきたサイクルの幕開けであり、また、ジウマ2.0(第2次ジウマ政権)としてジウマ1.0(第1次ジウマ政権)が作り出した様々な課題を解決に向かう時が来たからだ。もっとも、2015年が平穏な1年で終わるはずもない。既に予想された課題に加えて、ブラジルは、既に足腰に来ている経済が力尽きかねない衝撃波、つまりラヴァ・ジャット作戦を乗り越える必要があるのだ。2014年に炎上したラヴァ・ジャット作戦は、ブラジル最大の企業であるペトロブラスから何年にもわたって横領を続けた疑いのある犯罪組織の活動を捜査している。ペトロブラス以外にも、23社の建設会社が捜査の対象だ。またこれらの建設会社の中には、国内の大手ゼネコンも含まれる。工事が凍結され、作業員が解雇され、事業計画が延期され、投資家が手を引く。こうした状況が既に2015年の方向性を示し始めている。
再選を果たしたばかりのジウマ・ロウセフ大統領は、景気の浮揚に向けた政権の取り組みに水を差しかねない、石油業界の大規模調査を震源にした不確定要素を抱えている。問題は、こうした課題に対して大統領は、わずかな持ち駒しかないことだ。インフラ工事の日程は、検察による捜査対象なった企業各社が担当するものに遅れが生じ始めている。民営化に向けた新規事業入札の見通しは不透明さを増している。投資の拡大が求められる中で、捜査は、インフラ分野を中心にあらゆる分野の足を引っ張っている。苦痛を伴うラヴァ・ジャット作戦の捜査がどこに落ち着くのか、誰にもわからない。だが、これが原則としてはポジティブなのだということは認めなければならない。捜査は最終的に官民のかかわり方を改善するはずで、それは、我が国の明るい将来にとって、大いに歓迎すべきことだ。
問題は、そこへ到達するために支払われる対価なのだ。不適切な関係が余りにも長く放置されてきたことで、その代償も巨大なものになってしまった。例えばイタリアでは、1992年に始まったタンジェントポリ捜査(マーニ・プリーテ)が、同国のGDP成長の足をすくった。ペトロブラスが投資を10%縮小することで、経済成長率は0.5ポイント低下する。だが、その他の企業には何が待ち受けているのだろうか? 建設会社は、破綻するだろうか? その他の業界に影響が波及する危険性はあるだろうか? エザメ誌は、ラヴァ・ジャット作戦が経済面で与えかねない影響について、多数の弁護士とエコノミスト、実業家、企業役員から意見を集めた。以下はその回答だ。
1. ラヴァ・ジャット作戦によってブラジル経済は2015年に息の根がとめられるだろうか?
ラヴァ・ジャット作戦の対象になったペトロブラスと建設会社が担う、経済的な重要性を過小評価してはならない。土木建築業は、GDPの6%を占める。ラヴァ・ジャット作戦の調書で関与が指摘された23社は、35万人以上の雇用を維持している。国内で雇用規模が最大の企業は、14万人を雇用するゼネコン、オーデブレヒトだ。他方、ペトロブラスは6,000社以上の企業と契約する、国内最大級のサプライ・チェーンを持つ企業である。しかも同社は、年間平均700億レアルを投資する。コンサルタント会社のLCAは、ペトロブラスがこの投資額の10%を削減するだけで、GDP成長率が0.5ポイント失速すると推算する。ペトロブラスと大手建設会社に降りかかる問題は些細なものものであれ、景気が低迷している中で状況を確実に悪化させる。そしてラヴァ・ジャット作戦自体も、取るに足らないと言える事件ではない。
企業役員の逮捕と巨大企業の破産危機、深刻な不信感の高まりなど、様々な影響を与えたラヴァ・ジャット作戦だが、その影響はまだ拡大しかねない状況であり、これからもブラジル経済の足を引っ張っていく。捜査が開始されてからに限定してもペトロブラスは時価総額が590億レアル以上も目減りしており、2015年には投資の削減を真剣に検討している。実際、そうなりかねない。100億レアル以上と推定される規模で内部留保を蒸発させた汚職スキームが明らかになったことで、同社は、2014年第3四半期決算を発表すらできない(会計監査を担当するPwCが監査を断った)。この石油公社は、会計上、50億レアルから210億レアルに達しかねない不足金を計上するだろう。極端な場合、数10億レアル規模の負債の償還を債権者が要請しかねず、そうなれば会計上の不足金は大混乱の引き金になり得る。同社が詳細な決算を発表できないことから、これに伴って減損処理される金額がどれ程の規模なのか、誰にも分からないのだ。だが、サンパウロ大学のエコノミスト、シモン・シルバー氏によると、ペトロブラスが投資を削減することで、2015年にブラジルは経済成長のチャンスが失われる。現時点で市場は、平均すると0.4%成長すると予想している。だがブラジル最大の会社が投資にブレーキをかけることで、状況はさらに悪化する。
こうした問題はペトロブラスに限らず、捜査の対象になった建設会社にも、日ごとに押し寄せており、状況は悪化するばかりだ。新規の公共事業も、新たな指示が下されない限り凍結された。そして国内で推進中の大規模工事は、水力発電所から高速道路、空港、地下鉄線の建設に至るまで、司法が標的にしている建設会社に大きく依存している。12月に入ってペトロブラスは、捜査の対象になった23社と、新規契約を締結しないと発表した。これらの企業の多くは経営基盤のしっかりしたグループ企業だが、銀行は万一に備えて、融資の更新にこれまでになく慎重な態度をとっている。資金調達が困難になったことで、工事現場は空転し始めている。建設会社のメンデス・ジュニオルは、ペルナンブコ州のサンフランシスコ川の河道変更工事に従事している500人の労働者に対する13か月給与を遅配した。エンジニアリング会社のアルーザ・グループはアブレウ・エ・リマ製油所の工事で従業員に対する賃金が未払いとなり、同社は裁判所から口座を差し押さえられた。役員が逮捕され融資が受けられなくなったことで、建設会社は支出を最小限に抑えることになる。こうして2015年は、工事の凍結が一般化する。
2. 捜査を受けた企業は司法取引をし、罰金を支払って営業を継続できるだろうか?
長期の訴訟は企業の先行きを不透明にして時には企業生命すら危ぶまれるため、少なくともこうした事態を回避し代わって罰金を適用すること、つまり汚職に関与した企業と合意することが、過去数年の国際的な事例からすると、不正行為に関与した企業の事業継続にリスクを生じさせず処罰する手段になっている。アメリカでは、司法省自身に合意を締結する権限が与えられている。合意に至った場合には、その内容と効力に異議を挟むことはできず、捜査は終了する。オランダの場合、石油プラットホームのリース会社SBMがペトロブラス社員に対する贈賄を認め、司法と、2億4,000万ドルを支払い捜査を終了することで合意した。だが、「ブラジル国内ではこのようなモデルは、事実上、不可能だ」と、カルロス・エイレス・ブリト元連邦最高裁判所裁判長は言う。
なぜか? ブラジルでは法律が整備されていないだけでなく、この種の、捜査が現在も進められているラヴァ・ジャット作戦のようなプロセスに関して取引するという伝統がない。これらの企業は裁判所において個別の違法行為(行政の関与した違法行為及び贈収賄、事業入札に対する不正)で訴訟に対処する必要がある上、いずれのケースでも原告となる行政組織が、経済防衛行政審議会や連邦収税局、連邦総合内部統制局、連邦会計検査院といった具合に異なる。確かにある役員は、検察当局と取引することで、知りえた情報を供述することで罪の軽減を対価として受けることができる。これが話題の「司法取引」だ。企業も同様に、この種の行政行為に対して、証券委員会あるいは経済防衛行政審議会といった機関と合意できる。だが、ラヴァ・ジャット作戦のような捜査では、極めて広範囲にわたるため、こうした取引は事実上、不可能だ。ラヴァ・ジャット作戦の特別捜査班に参加しているカルロス・フェルナンド・ドス・サントス・リマ地方検事は、「企業は、この取引をまとめるに当たって、捜査を管轄する機関と個別に交渉が必要だ」と言う。「検察省と司法取引を締結する意向だという宣誓を、これらの各機関に対して明確に伝える必要がある」。これらの企業の弁護士たちは、ブラジル国内ではルールすら定まっていない司法分野を手探りで進まざるを得ないだけでなく、将来的に別の機関と交わそうとする合意に対しては、過去の交渉が何らの保証にもならない中で多方面の交渉を強いられるのだ。
3. 司法取引による合意がなければ、行政行為に関する判断が下される前に建設会社が破綻することもあり得るだろうか?
今後数か月で建設会社が民事再生の適用を受けるというリスクは大きい。企業役員の審理に向けて調査がさらに進められるだけでなく行政処分が下される可能性もあるのだが、実際問題として市場には、どこかの時点で下される判決を受け止める準備が整っていないということだ。事態を懸念する銀行は、これらの企業に対する新たな与信供与を極めてリスクが高いと受け止めている。政府の側も、これらの企業と新たな契約を交わさない。2014年12月にペトロブラスがブラックリストを発表したことで、状況はいっそう複雑になった。つまり、サプライヤーの側は、これまで慣例だったようにペトロブラスとの契約を担保にでなくなり、融資を受けることが難しくなったのだ。
信用格付会社は、捜査対象になったゼネコンを2つのグループに分類した。より堅実とされるグループは、グループ内の土木建築業会社と、政府との契約に対する依存の割合が小さい。フィッチ・レーティングスのリカルド・カルバーリョ部長は、「グループが多角化しているほど、リスクは小さい」と言う。カマルゴ・コレアとオーデブレヒトのケースがそれに該当し、両グループの収入に占める土木建築事業は25%未満である。オーデブレヒト・グループは520億レアルに達する巨額の負債を抱えているが、グループ内の建設会社の負債はわずかである。
これまでのところ、状況が最も切迫しているのは、50億レアルの純負債額を抱えるだけでなく収入の60%を土木建築事業に依存するOASである。信用格付け会社のフィッチは、発行済みの1億0,300万レアルの社債の元本及び利息を1月に償還できなかったOASに対して、2度にわたって格下げしている。同社の格付けは、現在、破産企業に準じたものになっている。一方、OAS側は債権者に対して財務再建計画を提示すると主張している。OAS以外にも、メンデス・ジュニオルとケイロス・ガルボン、ガルボン・エンジェニャリアが格下げされた。「ラヴァ・ジャット作戦のようなケースで捜査対象になれば、その企業は直接的な影響を受ける」と、ロボ&デ・リッツオ弁護士事務所のヴァルド・ケスタリ・デ・リッツオ弁護士は話す。さらに、「企業は、市場から断罪されるため、告発すら必要ない」と付け加えた。こうした状況は、アメリカの会計監査会社、アーサー・アンダーセンが直面したものと同じだ。2002年に同社は、エネルギー会社のエンロンが破綻するに至る粉飾決算に関連した電子文書を破棄したとして有罪判決を受けた。アーサー・アンダーセンは5大会計監査会社の一角を占めていたが、同社に対する信頼の揺らぎには抗しきれなあった。この1審の有罪判決から3年が経過した控訴審で、最高裁判所は1審を覆して同社を無罪とする判決を下した。だが、この無罪判決が言い渡された時、アーサー・アンダーセンは既に破綻していた。
4. ラヴァ・ジャット作戦の影響を緩和するために企業はどのような対策を講じているのだろうか?
新たな資金を市場で確保することが難しいため、捜査を受けている建設会社の中には、財務状況の改善に向けて保有する資産の売却を図っている。エンジェヴィックスの場合はエネルギー資産を売却対象に加えて投資を撤回しており、OASの場合はインフラ分野の持ち株会社インヴェパルから資本を引き揚げた。オーデブレヒトの場合はオーデブレヒト・アンビエンタルによる公衆衛生事業と、ブラスケンによる石油化学事業に軸足を置く。インヴェパルに対するOASの出資額は20億レアルと評価されている。だが、これらの企業に関係する役員らは、現時点で大きな課題は、ラヴァ・ジャット作戦に関連している企業に対して貪欲に資本参加しようとする売却先を探すことだと指摘する。同様に、法律上の課題が、問題をさらに複雑にしている。ある企業が破産を申請する可能性のある場合、裁判所は申請の90日前に遡って、この間に売却されたあらゆる資産を洗い出して管財対象の資産に組み入れる。この規定は売却先にとって、巨大なリスクになる。もし売却元が破産すれば、売却先に所有権が移っていたとしても、この資産は破産処理の対象に加えられるのだ。ラヴァ・ジャット作戦を受けている企業を顧客に抱えるある弁護士は、「売却元は会計に何ら貢献しないような捨て値で売却することはないし、このリスクを冒そうという売却先を探し出すことも難しい」という。企業に残された最後の選択肢は、負債を償還する期限を確保して債権者に対してより良い条件を整えて計画的な再建を実施すること、つまり民事再生だ。
5. 建設会社に対する捜査が行われている間の工事はどうなるのだろうか?
法律を文字通り解釈すれば、企業は、訴訟において判決が下されるまで工事を継続する。有罪判決が下された場合には、実際のところ、公的機関と交わした有効な契約は破棄される可能性がある。例外は、行政による違法行為に対する処罰法に基づいて連邦検察官が公判中に裁判官に対して契約の解消を求める場合だ。裁判所はこの申立てを採択するかどうかの判断を下すが、通例では、訴訟が終了するまで契約を維持するのを好む。だが、有罪判決が下された場合、工事が中断するリスクは現実のものとなる。インフラ分野の法律専門家が集まるブラジル・インフラ法務分析研究所のエメルソン・ガバルド理事は、「この場合、行政は新たな競争入札を実施するが、この場合は最悪1年は遅れることになる」と言う。そして、「この間、施行済みの工事や、工事現場に置き去りにされた機械や設備のコンディションが悪化するので、インフラ工事の工期がさらに遅れることになる」のだ。コンソーシアムの形でインフラ工事が推進されてきた場合には、不正で有罪、あるいは不適切と判断された場合、事業に参画していたすべての企業がこの判決により排除され、契約が破棄されるリスクを抱えることになる。
6. 企業に対する制裁はどのようなものが適用されるだろうか?
定義上は個人が罪を犯すのであるから、法人に対しては刑事罰を適用することはできない。だがラヴァ・ジャット作戦のようなケースでは、適用できそうな刑事罰は多い。公共工事に対する過剰請求を目的として建設会社はカルテルを組織したと告発されており、経済防衛行政審議会において証言が求められている。制裁の中には、粗売上に対して最大20%の罰金、さらに少なくとも5年にわたって公的機関との契約を禁止されるというものも含まれる。公金の横領で公務員あるいは公社職員との合意があった場合には、行政の違法行為に加担したとして、企業は提訴される可能性がある。罰金は、横領で毀損した公的資産額の最大3倍に達する。更に訴訟では、建設会社は、事業入札に対する違反への制裁として、違法に締結された契約額の2%から5%に相当する罰金の回避に弁護が求められる可能性もある。
企業の代表者らが最も懸念していることの1つは、2014年2月に施行された腐敗行為防止法である。一連の犯罪がこの新法の施行後であると証明された場合、企業は、自社の粗売上の最大20%を罰金として支払う必要が生じ、5年にわたって官営銀行から融資を受けることが禁じられる。
今後の制裁の脅威は深刻であり、現時点での最大のリスクというのは「デルタ効果」と呼べるものだ。すなわち、世論によって「反社会的」と位置づけられた企業との取引をしないことを示すという目的だけが先走り、様々な公的機関の間で、本来の法的な手続きを無視する混乱した状況を言う。2012年2月、デルタが事業入札で落札企業になるために贈賄したと告発された。これが、終わりの始まりで、しかもそれは、すぐにやって来た。当時、デルタはリオデジャネイロ石油化学コンビナート(Comperj)の建設を担うコンソーシアムに参画していた。ペトロブラスは5月、建設会社が安全と生産性、工期の面から要求水準を満たしていないとして、このコンソーシアムとの契約を破棄する判断を下した(誰も弁解を信じなかったのだ)。契約は無効になり、建設を担当したコンソーシアムは1億5,000万レアルの損失を被った。だがこの問題は、そこで終わらなかった。
告発からわずか4か月、それも訴訟で何らかの有罪判決が出る前に、次々と告発がなされる中で連邦総合内部統制局は外の贈賄事件に関連して2年間も放置してきた審査を再開し、同社が不適格企業だ宣言した。この制裁は、デルタの息の根を止めた。同社は連邦政府との契約継続を阻止され、東西鉄道の工事を放棄させられ、全国輸送インフラ局(Dnit)と交わした総額25億レアルの契約を失ったのである。同社はさらに、ゴイアニア市役所とテレジーナ市役所と交わした契約も凍結された。ゴイアス州総合内部統制局と、ミナス・ジェライス州及びマット・グロッソ州の検察局が同社の調査と捜査に着手し、マラカナン・スタジアム改修事業のコンソーシアムから同社が排除された。デルタは、何らかの判決が出る以前の段階で、民事再生を請求した。
7. 大手の建設会社が請け負っていた工事を失い、しかも政府と新たな契約を締結できない場合、外国企業がこの需要に対応することはできるだろうか?
理屈の上では可能だが、実際となると、非常に難しいだろう。アメリカのベッチェルのような外国の建設会社が既に国内で営業しているが、その事業規模は控えめなものだ。これらの企業が工事の事業主体になることは珍しく、大半のケースでは、工事の作業の進捗管理を支援するソフトウェアの提供や、港湾や空港の運営に限られる。ブラジル市場に対する外資の関心の薄さは、伝統だ。ブラジルで営業するには、外資系の建設会社はブラジルで新たな法人を設立した上で、ブラジルにおける専門家として主任エンジニアを雇用する必要がある。しかも、このプロセスには時間がかかる。工学及び農学連邦審議会は、外国人エンジニアの卒業証書を自動的に有効と認めるわけではなく、これらはブラジルの大学によって検証を受ける必要がある。とは言え、関心の薄い最大の原因は、単純に金融面だ。韓国ポスコのブラジル子会社で契約問題を担当するジョン・ウク・モン取締役は、「ブラジルでは融資に対する金利が、諸外国と比較して極めて高い」と話す。このため、外国人投資家の視点からは、過去数年に実施されたいくつかのインフラ事業入札でブラジル政府が低収益を義務付けたように、収益に魅力のない事業に彼らが参加するのは無理だ。例えばポスコの場合、これまでに一度も参加したことがなく、この市場に参加する計画すらない。現時点で彼らが関心を持っているのは、セアラー州で進められているペセン製鉄会社のような、民間の工事だけである。従って、外資系建設会社が公共工事を奪おうと内資系企業が疲弊するのを待ち受けていると考えるのは、全くもって幻想の域を出ない。
8. ラヴァ・ジャット作戦は中期的に経済的損失を与えるだろうか?
あり得る。大きな問題は、国内のインフラを拡充することとペトロブラスの事業計画にとって基礎的条件と位置づけられる工事が中断することだ。ピーク時に4万人を雇用しペルナンブコ州で推進中のアブレウ・エ・リマ製油所の建設工事は、いずれも捜査の対象になった企業が担当しており、しかも工期は5年以上の遅れが生じている。横領と工期の遅れが我が国にとって高くつくし、長期的にはラヴァ・ジャット作戦が公共事業入札をより安価かつ効率的にするのは明らかだ。だが、そこに至るまでは減速を余儀なくされる。OASとUTC、オーデブレヒトは、2020年までにペトロブラスに対して6隻の掘削リグ船を納入を予定するコンソーシアムに参画しており、ペトロブラスは岩塩層下の石油の探査と生産(E&P)でこの掘削リグ船を必要としている。スタンダード・アンド・プアーズのアナリスト、レナータ・ロトフィ氏は、「銀行が融資に対してさらに慎重になっており、インフラ工事は一層遅れると予想している」と言う。他にも、連鎖的に影響を受ける部分がある。捜査対象になった企業は、民営化された空港の100%、同様に民営化された連邦側道路の24%で事業主体、あるいは資本参加している。アンドラーデ・グティエレスとOAS、カマルゴ・コレア、オーデブレヒト、ケイロス・ガルボン、ガルボン・エンジェニャリアは、同じく、300億レアル規模の事業であるベロ・モンテ水力発電所を建設中だ。しかも混乱が続くなら、ブラジルのようにインフラの整備が最優先課題とされるような国で、政府の側も、新たな事業認可の実施を阻まれることになる。
9. 今回の危機はその他の業種にも波及するだろうか?
波及する。大きな打撃を受けるのは金融制度だろう。ラヴァ・ジャット作戦で捜査を受けている建設会社のグループらは、総額1,000億レアルを超える負債を抱えている。つまり、建設会社へ潤沢に融資した銀行と、社債とボーナス債を購入した外国人投資家など、債権者を驚かすに十分な金額なのだ。だが、過去に例を見ない規模でラヴァ・ジャット作戦の網が広がる中で、金融市場にも疑念が広がった(そしてこの極度の疑念は銀行の業務とは相性が良くないのだ)。いったいこの捜査の行き着くところはどこなのか? その他の公社も告発をうけるだろうか? 年金ファンドは、疑惑の投資戦略を展開する中で、無傷でいられるだろうか? 社会経済開発銀行(BNDES)の融資は、捜査の網目を区切りぬけられるだろうか? 今後も、さらに逮捕者が出るだろうか? 盗聴対象になっていたのは誰だろうか? これらの疑念への答えは、誰にもわからない。
最悪の状況の中で、こうした疑念は、システミック・リスクに発展しかねない。2008年9月に起きたことものと同じで、投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻したのは青天の霹靂であり、状況が改善したのはアメリカ政府が対策に乗り出してからである。もちろん現在のブラジルが見舞われている状況は、2008年にアメリカが見舞われた経済危機とは比べるべくもない。だが、外資系・内資系の銀行役員らはエザメ誌に対して、状況は楽観視できないと断言する。外国人投資家にとって捜査を受けているゼネコンは、放射性物質と同じ意味を持つのだ。「投資家は既に、2014年の時点で石油会社のOGXとHRTに関連して損失を被っており、今では大手建設会社の履行遅滞に直面している」と、カナダのCIBC銀行でラテンアメリカの専門家、ジョン・ウェルチ氏は言う。その上で、「もはや、ブラジル国内のインフラ投資でリスクを引き受けようという投資家は、わずかだ」と
いう見方を示した。懸念されるのは、こうした受け止め方が拡大すること、そして、ラヴァ・ジャット作戦や公共事業の事業認可、あるいは過剰請求された公共工事に無関係な企業まで、ブラジルに対する嫌悪感情の被害にあうことなのだ。
ラヴァ・ジャット作戦のコーディネーターを務めるセルジオ・モーロ連邦裁判官は、イタリアで政界汚職に関連して多数の犯罪グループを逮捕した「マーニ・プリーテ」の専門家である。だがマーニ・プリーテは、この種の腐敗の撲滅プロセスの代償が高いことも示した。ローマ大学の研究によると、マーニ・プリーテに着手して以降、イタリア経済の成長率は10年にわたって、この捜査がなければ記録していたとされる水準を下回った。公共投資が撤回され、企業グループが破綻し、契約が見直され、景気に対して消費者が信用を失った。4年にわたって、アメリカの複数の銀行が、イタリア企業に対してあらゆる融資を凍結した。
ブラジルとの類似性は、実際のところ、驚くほどのものがある。検察省の告発によると、政治家と実業家、企業役員らが組織した「窃盗団」が、何年にもわたってブラジル最大の企業を食い物にした。これがペトロブラスの問題だけで収まらないという観測には、強い妥当性がある。犯罪が証明されれば、厳罰が下される。恐らく、現在のブラジルが抱える先行きの不透明感は、余りにも長きにわたって窃盗団を野放しにしてきたツケなのだ。我が国は、一連の混乱が発覚した時よりも良好な状態でこの混乱を脱するだろうが、それが余りにも高くつかないことを祈るばかりだ。
(エザメ誌2015年1月21日号)
処罰が必要だ
アメリカ人のブランドン・ギャレット教授は、法の遵守が求められない巨大企業など存在しないと指摘する。
ウンベルト・マイア・ジュニア
米国バージニア大学法学部のブランドン・ギャレット教授は、2006年から米国市場で大企業を相手取った訴訟に関するデータを集計した。その結果、同教授は、その大部分で検察との司法取引が成立しており、提訴すらされていないことを証明した。つまり、問題はこうだ。捜査の結果として課された罰金の大部分が支払われていないのだ。同氏はこの調査を、このほど米国で出版された「TooBigtoJail(監獄送りにするには余りに巨大)」という書籍にまとめた。ラヴァ・ジャット作戦に関連して、ブラジルが、起訴と不起訴の線引きについて議論することは極めて重要だ。エザメ誌による、ギャレット教授のインタビューを以下に掲載する。
教授は米国の大企業への処罰がまれだということを明らかにしました。これらの大企業は、法の支配を受けないということでしょうか?
法人による犯罪捜査の大部分が、訴訟に発展しない。捜査のほぼすべてが検察との司法取引を通じて解決している。過去5年で、企業に課された罰金の額は増加しているものの、これらの企業が実際に支払うケースはわずかだ。
その理由はなぜでしょうか?
企業の刑事責任に対する米国の法律は、世界で最も厳しいものの1つだ。他方、企業が、とりわけ経済的に重要とみなされる役割を担っている場合に、刑事訴訟の結果として破産することがあってはならないという通念が根付いていた。それは行き過ぎた考えだ。司法当局は、重大な犯罪に対して寛容になった。
ブラジル最大のゼネコンが不正行為で捜査を受けており、我が国にとって重要な工事に遅れが生じかねないと懸念されています。大企業を厳しく罰するとして、それに見合った効果があるでしょうか?
大企業は社会に恩恵をもたらすが、法律を逸脱したふるまいをする場合には、人が死に、経済に打撃を与え、大規模な環境汚染を引き起こす可能性がある。たとえ最初の段階で、ビジネスの存続を危うくするような措置が適用されなかったとしても、これらの企業の役員と上級管理職は、2度目のチャンスがないことを理解すべきだ。
では、処罰はどうあるべきでしょうか?
不正行為に対して役員と責任のある管理職を罰する必要がある。投資家あるいは消費者、さらに公的資金の横領があった場合には納税者など、犯罪の被害者に対する補償は確実に行うべきだ。再発を防止するメカニズムを導入することも、同様に必要である。さもなければ、企業は、罰金と補償金をビジネスの附帯的コストとして処理するだろう。
(エザメ誌2015年1月21日号)

左手前から平田藤義事務局長/日下野成次総務担当/川崎重工業株式会社の本多マリオ ジェネラルマネージャー








