「この国は、高インフレと低成長、畳み掛けられるような消費の波、不安定なインフラが複雑に絡み合った経済政策の失敗に次ぐ失敗の残滓に、回答を示そうとしている」
エコノミストで社会科学者のエドゥアルド・ジアネッティ・ダ・フォンセッカ氏は、ブラジル各地で発生するデモの波と劣悪な経済統治とが明確に関係していると断言する。「政府は料金の値上げを見合わせたが、改定を承認した時期が、まさにインフレが昂進している時期と重なった」と指摘。以下のインタビューで、ジアネッティ氏は、もし政府が状況の改善を望むなら、彼らは、経済政策の運営を見直し、現状では大きな溝のある市民との距離の取り方を変えるべきだと説明する。
記者質問:デモを引き起こした要因は何でしょうか?
エドゥアルド・ジアネッティ:複合的な要因がある。その1つは、インフレの上昇を抑制するために公共交通の料金調整を遅らせたことだ。政府は、値上げを見合わせたのだが、この価格の改定を、まさに高インフレで人々が負債を抱え込んでいる時期に承認した。サービスは広範囲に及んでいるため、家計に対するインフレは、公式インフレ指数以上の影響がある。現在、家計支出が絞られる状況にある。マイカーの普及促進という政府の政策も、市民に重い負担になっている。政府は2008年、国際金融危機を受けて自動車販売を促進するアグレッシブな対応を取ったが、国内で運用される自動車が増加するのに適切なインフラへの投資を怠った。マイカーを購入した市民にとっては、個人の自由を謳歌するための手段のはずだったが、実際には、車は「座敷牢」となり、ストレスの溜まる個室に成り下がった自動車が増加したことで市民は、モビリティーのないモーダルのために、毎日のように苦痛を味わっている。もう1つの要因は、サンパウロ市内で6月13日に発生した弾圧的な対応だった。このデモに参加する意図のなかった多くの人が、怒りを覚えて加わった。サッカーのコンフェデ杯でブラジルが注目されていることもそれを後押しした。ブラジルの情報が丸見えとなり、政府関係者を当惑させ、かつデモを最大化する余地を生み出したのだ。こうした事情が重なり、暴動が発生する環境を醸成した。
記者質問:デモを鎮静化するための政府の選択肢は何でしょう、あるいは、デモはこれからも続くのでしょうか?
エドゥアルド・ジアネッティ:私は内閣改造は避けられないと受け止めている。デモが経済政策の運営において脆弱性を高めることには、疑問の余地はない。ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ前大統領は、実際問題として、既にこの問題に関して公然とコメントしている。
記者質問:では、政府には展望が欠けているのでしょうか?
エドゥアルド・ジアネッティ:政府は戦略を欠いている。現政権は、対症療法に終始している。様々な規定に関して見通しをどんどん不透明にし、ブラジルに今投資するというのは無謀極まりない。実業家が考えることはこうだ。「弊社が受けた税制優遇政策は今後4年、有効だろうか? ブラジリアのロビー活動で得た料金の保護は、今後も約束されているだろうか? 弊社にオファーされている助成的融資は、実際に行われるだろうか?」。誰にも分からない。経済政策には、北極星のような固定点が存在していない。インフレを抑制するため、そして自動車の購入の敷居を下げるために、政府は、交通インフラ向け融資の財源としてガソリンに課徴されていた経済支配介入分担金(Cide)を撤廃した。私は数字を確認してみたのだが、すると、2008年以降、220億レアルの歳入放棄だ。サンパウロ市内のバス料金を調整しなかったことで附帯的に生じるコストは、フェルナンド・アダジ市長の任期終了までに累積で、Cideの10分の1の26億レアルだ。もしCideの資金が公共輸送インフラに投資されていたなら、我々は、別の次元にいたことだろう。
記者質問:Cクラス(中産階級)は、所得を拡大し消費を伸ばすなど政府から大きな恩恵を受けましたが、同じく街頭でデモに参加しています。彼らは、満足していないのでしょうか?
エドゥアルド・ジアネッティ:過去10年でおよそ3,700万人のブラジル人が、所得分位を1段昇った。それは素晴らしいことだ。だが、我々は今、それが意味するところを感じ始めた。政府は、消費を拡大したこの新興中産階級が、それだけでなく、より多くの情報にアクセス可能になったことを忘れていたのだ。インターネットがある。納税に対してより明確な意識があるし、その税負担に見合ったサービスを求める。この新しいグループは、自動車と航空便、家電製品、教育に需要を持っている。ちょっと見てみよう。自動車需要が拡大し、政府は工業製品税(IPI)の税率を引き下げ、信用供与に対する敷居を引き下げてこれを支援した。だが、一方で、運用される車両の拡大を支えるための都市インフラへの投資は、実施されなかった。航空輸送はどうか。航空機を利用できる資金を持った人が増加したが、空港インフラは、搭乗するにも到着先でも、まさにカオスだ。次は家電製品だ。ブラジルは、家電製品市場として世界5大市場入りを果たした。冷蔵庫と電子レンジ、フリーザー、いずれも販売が拡大している。だが、もし2012年に経済が成長していたなら、電力不足が発生していたことだろう。幸運だったのは、それがもし幸運と呼べるものであればだが、低成長が壊滅的状況を回避したことだ。住宅事情もそうだ。マイホーム普及計画(ミーニャ・カーザ・ミーニャ・ヴィダ)は、成長加速プログラム(PAC)というケーキの、言わばてっぺんのイチゴだった。だが、基礎公衆衛生インフラはどこにあるのか? 一層深刻なケースは教育だ。新興中産階級は社会的に上昇し続けるための決定的なパスポートが教育だと受け止めているが、その質は管理されず、私立学校は金儲けの場であり続けるだろう。そこに何らかのひな形があるだろうか? 需要は拡大しているが、供給には一貫性がない。貯蓄と投資は即時的な欲求が後押しするのではないので、そこに向かうことはない。
記者質問:デモは政府が厳しい局面に立たされた状況で発生しました。つまり、経済指数が悪化し、来年には選挙が控えている……。
エドゥアルド・ジアネッティ:政府の支持率は既に低下傾向にあったが、今後、弾みがつくだろう。ジルマ政権の政治的資本の価値は縮小している。
記者質問:それは、ジルマ政権だけのことでしょうか?
エドゥアルド・ジアネッティ:主に連邦政府が標的だ。根底にあるのは、ブラジルの民主主義と、消耗しつつある権力機構だ。彼らは、国民を代表していない。この国の行政府は、テクノクラートで自閉症気味で、実施された事業認可を充分に達成できず、公約された投資を実施することに多大な困難を抱える機能不全な39省からなる。私はこれを、成長加速プログラム(PAC)をもじって安請け合い乱用計画(PAC:Plano de Abuso da Credulidade)と呼んでいる。国会は、この国に何ら公約を示すことなく、問題だけを生み出す商談会に成り下がった。
記者質問:労働市場の風向きが変わり失業が増加するとどうなるでしょう?
エドゥアルド・ジアネッティ:我々は既に低成長で、強いインフレ圧力と悪化する経常収支という状況の中に置かれている。もしそこに失業が加わるなら、社会的ストレスが一層高まり、状況はさらに悪化するだろう。経済危機に見舞われていた間、ブラジルはよりインテリジェントな雇用創出政策を実施できたはずだった。例えば、持続的成長の基盤を構築するためのインフラ投資だ。
記者質問:20センターボの値上げを撤回したことで、抗議のトーンが弱まるのか、あるいは彼らが別の理屈を見つけてデモが続くのでしょうか?
エドゥアルド・ジアネッティ:ブラジルの群衆は憤懣をつかの間だけでも爆発させることを厭わない。私は、彼らがそのはけ口として新たな理由を次から次に探し出すと直感的に確信している。デモ参加者は勝利したのだ。これらの抗議は基本的に、ブラジル人たちにはバックボーンがあり、しかもこのバックボーンには柔軟性がないことを示した。マシュマロではないということだ。
記者質問:しかし政府は、保健と教育の様な分野で群衆の新たな要求を満たすための資金を保有しているのでしょうか?
エドゥアルド・ジアネッティ:保有している必要があるね。ブラジルの税負担はGDPの36%だ。ブラジル人が労働により生み出した所得のおよそ40%が政府(連邦政府と州、市役所)に移転される。ところがこの国の公共サービスというものはどうだ? それは、この茶番全体の根源的な問題だ。極めてお粗末な浪費ではないか。
記者質問:選挙に向けて新たな情勢が生じているでしょうか?
エドゥアルド・ジアネッティ:状況は、新たな展開を迎えている。
記者質問:あなたはマリーナ・シルバを支持しています。現在の状況は、勢力外の候補者の想定外の立候補にどのような反響を与えるでしょうか?
エドゥアルド・ジアネッティ:私は、マリーナが得た2,000万票は、今街に出ている不満の前兆だと受け止めている。