(論評)インフレと完全雇用

セルソ・ミンギ

ジウマ政権で経済分野の戦略目標が混迷を続けている。より優先すべき課題、例えば経済活動の活性化あるいは雇用の拡大といったことが、一度たりとも明確になったことがないのだ。漠然と、それと察してきた状態だ。

完全雇用の状況にありながらGDPの成長が頭打ちの状態にある場合、政府と政府のエコノミストでさえ困惑を隠すことができないだろう。それほど、この2つの状態がどのように同居できるのかを説明することは難しいものだったし、これからも難しいものであり続けている。

同じテーマから派生したもう1つの問題は、完全雇用とインフレの間にある関連性だ。2か月前、アレシャンドレ・シュワルツマン元中銀理事が、インフレ抑制を図るために雇用を創出させ続ける必要があると認めた際、彼の行き過ぎた伝統的な経済理論が批判の的になった。

先週、経済発展に関するデータを長年にわたって分析しているエコノミスト、ゼツリオ・バルガス財団(FGV)の中野慶昭経済学部長も、現在のインフレの水準が低下するのは政府が経済政策として失業対策をしっかり行う場合に限られると警告した。

こうした意見は、一部にとどまらないのだ。インフレ白書どころか通貨政策委員会(Copom)の議事録においても、中銀は、過熱した労働市場がインフレ圧力につながっているを認識している。

原理はこうだ。高インフレが購買力を蝕む要因になり、財とサービスの需要の縮小につながる。だが、給与がインフレと生産性を上回って推移していることで、中銀にとって好ましからざる状況を生み出す。つまり、給与が生産部門のコスト上昇に決定的な役割を果たすとともに、経済状況が許す以上の供給能力を上回って財とサービスの需要を喚起するのだ。

問題はそれだけに止まらず、余りにも複雑なので様々な議論を呼び起こすほどだ。シュワルツマン氏だけでなく中野氏も、中銀がこのほど承認した水準以上に政策金利を強力に引き上げることを支持する。しかも、そうした考えを持つ人々は少なくない。中銀のカルロス・ハミルトン・アラウージョ経済政策担当理事も、インフレ対策として金融引き締め政策の強化を支持している。経済が抱える問題は、例えば、供給を上回る需要、労働市場の状況が遠因になっている生産部門にとって高すぎるコスト、低迷する投資意欲、とりわけ、所得の上昇と需要の創出につながる公共部門による過度の支出などが多岐にわたるのだが、市場で流通する現金(年利7.5%の基本金利という価格が課されるもの)が、この様な問題に対して過剰になっていると彼らは受け止めている。

ジウマ政権の経済政策を担う中枢部は、インフレの通貨面の性向、とりわけ過度の公共支出が引き起こす問題からは目をそらそうとしている。例えば4月29日付けのバロール紙で国庫管理局のアルノ・アウグスチン局長は、政府が緊縮財政目標の達成を放棄したとコメントした。同局長によると、公共支出は力強い経済成長を保証するために必要なのだそうだ。そして、税制優遇政策の規模を考慮すると現在の経済の中で雇用水準をとやかく言う必要はないとアウグスチン局長は受け止めている。だが、このような無関心のために政府が将来支払うツケは大きなものになるだろう。(2013年4月30日付けエスタード紙)

事務局便り JD 024/13: 安全対策情報(被害速報) [在サンパウロ総領事館]

JD-024/13
2013年4月29日

 
会員各位
 
在サンパウロ総領事館から安全対策情報を頂きました。以下転送申上げます。
 
 
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> ①サンパウロ安全対策情報(被害速報)
>
> 平成25年4月26日
>
> 在サンパウロ日本国総領事館
>
>
>  以下のとおり邦人に対する窃盗事件が発生しました。
>
>  ご注意ください。
>
>
> 1 発生日時:4月26日午前7時45分頃
>
>
> 2 発生場所:ベラビスタ地区ウマイター通り638番(Rua Humaita, 638  Bela Vista)
>
>
> 3 事件概要:被害者はパライーゾ地区の有名ホテルに宿泊し,社用車ににて空港へ向かう途中,運転手が車のタイヤがパンクしているのに気づき,上記場所に停車しタイヤ交換を行っている隙に車内に置いていた鞄をとられた。すぐに鞄をとられたことに気づいたため後を追ったが,すぐ先で待っていた仲間の車両に乗り逃走した。
>
> 鞄はその後モイーニョ・スラム街にて発見されたが,貴重品はすべて取られていた。
>
> なお,4月17日にも同様のホテルから会社に向かう途中にパンクし,ガソリンスタンドにてタイヤ交換を行おうと駐車した際,女性が近づいてきて話しかけられている隙に鞄を盗まれる事件も発生しており,その際に使用されていた車両と酷似していた。
>
> 4 被害:鞄,旅券,クレジットカード,パソコン2台,Ipad mini,携帯電話等
>
> 5 防犯対策
>
> (1)常に警戒心を持ち,周囲に目線を配るなど警戒心を顕示する。
>
> (2)荷物を手元から離さない。
>
> (3)貴重品は分散して所持する。
>
> (4)強盗被害にあった場合には,絶対に抵抗しない。
>
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> ②サンパウロ安全対策情報(被害速報)
>
> 平成25年4月26日
>
> 在サンパウロ日本国総領事館
>
>
>  以下のとおり邦人に対する窃盗事件が発生しました。
>
>  ご注意ください。
>
>
> 1 発生日時:4月25日 午前8時頃
>
> 2 発生場所:パライゾ地区所在ホテル前
>
> 3 被害:現金、鞄、旅券、クレジットカード等
>
> 4 状況:被害者が上記場所でタクシー待ちをしていたところ、足下に置いていた鞄を知らぬ間に盗まれた。
>
> 5 防犯対策:
>
> (1)常に近辺に注意を払い行動すること。
>
> (2)所持品からは目を離さず、出来るだけ身体から離さないこと。
>
> (3)タクシーを呼んだときは、安全な場所で待機すること。
以上

(特別記事)パラグアイに「移住」するブラジル企業

低賃金と税負担の軽減を理由にブラジル系企業が国境を越えて移転している。

ブラジル企業が、安価な労働コストと軽い税負担を追い求め、国境を越えてパラグアイを目指して進んでいる。こうした流れの中で、およそ30社が既に、パラグアイに子会社を設立し、現地生産に向けてブラジルのサプライヤーに投資を促す、あるいは生産の一部を地場企業にアウトソーシングしている。

パラグアイ商工省輸出投資促進局(Rediex)のホセ・フランコ局長によると、ブラジル企業が進出を図っている地域は主に首都アスンシオン周辺と、エルナンダリアスとプレジデンテ・フランコとシウダーデ・デル・エステを結んだパラナ州と国境を接する「三角」地帯。

こうした動きで目に付く業界は自動車部品業界と、アパレル業界、シューズ業界、プラスチック業界である。進出した企業の戦略は、大部分が共通する。つまり、中間投入財を中国から輸入しパラグアイで製造、そして、製品をブラジル市場で販売する。ブッデマイヤーやペナルティ、アディダス、フィラといったブランドでこのようなオペレーションが一般化しており、ブラジル国内で「メイド・イン・パラグアイ」のタブが付けられ販売されている。

またフォルクスワーゲン・ド・ブラジルは2012年から、フジクラが製造した自動車部品を調達している。同社が調達しているのはパラグアイで製造されたワイヤーハーネス(自動車用電装部品の接続用コード束)。同社報道窓口によると、「この契約は世界的規模でサプライヤーを確保する戦略の一環」である。

同様に、地域の優位性を理由にパラグアイに進出する企業もある。例えば食肉会社のケースがそれで、肉牛の一大生産拠点の存在が魅力。2012年9月にミネルバはフリゴメルクを買収、同国内の屠畜能力を2倍以上引き上げた。「パラグアイ国内の生産は、過去2年で、弊社にとって最大の売上を計上する事業の柱の1つになった」と、同社のエジソン・チクレ財務担当取締役はコメント。

魅力

ブラジル国内では生産性が落ち込み労働力が不足するという厳しい状況に置かれているブラジルの工業部門にとって、現時点ではコスト削減の可能性がパラグアイの大きな魅力の1つ。パラグアイが抱えるハンデも幾つかあるが、その主なものは、同国で製造された製品に対する先入観と、このところ国内通貨グァラニの為替相場が上昇していること、海上輸送へのアクセスがないことから複雑になる物流である。

だが財界にとっては、これらのハンデを乗り越えてでも国境を越えてパラグアイのアドバンテージを活用することの魅力の方が大きいのも事実。例えば電力コストは、ジウマ・ロウセフ大統領が旗振り役となって値下げを断行した後でも、パラグアイ側が63%安い。パラグアイはイタイプー2か国間水力発電所をブラジルと共同で運用しており、同発電所で発電された電力をアスンシオンまで送電する送電線の建設に社会経済開発銀行(BNDES)が融資し、日常的な停電もようやく終焉を迎えた。

「パラグアイの税負担は世界で最も軽く、労働法も柔軟。まさにブラジルと正反対だ」と、ブラジル・パラグアイ・ビジネス・センター(Braspar)のワグネル・ウェーバー理事は言う。パラグアイでは、所得税(IR)と付加価値税(IVA)は、10%。一方、ブラジルではIRが25%、PISとCofins、ICMSの3種類の税金で構成されるIVAは合計27%に達する。

パラグアイの労働法も、ブラジル企業を惹きつける吸引力になっている。パラグアイでは、労働者は入社後5年を満了するまで、わずか12日間の有給休暇を認めるのみで、労働時間は週48時間、勤続期限保障基金(FGTS)と組合負担金、あるいはSシステム負担金は存在しない。厚生面の負担金は、給与支払総額に対して16.5%上乗せされるだけだ。これもブラジルでは、租税により企業の負担が給与総額の2倍になるブラジルとは対照的。

投資

パラグアイ中央銀行によると、同国への投資でブラジルは、現在、米国に次いで2位である。ブラジルは2012年、メルコスル加盟国の中では最貧国であるパラグアイに、前年を50%上回る5億1,100万ドルを投資した。ブラジルによる対パラグアイ投資で最大規模のものは、カマルゴ・コレアのセメント工場で、2014年に操業に入る見込みのこの工場に、同社は1億6,000万ドルを投資。

2012年、ブラジルはパラグアイから前年を38%上回る9億8,700万ドルを輸入した。なお同年はブラジル経済が停滞した年でもあり、総輸入額そのものは2011年を1.4%下回っている。だが食肉輸入は2009年の2,000万ドルから2012年には1億0,300万ドルに急増。プラスチック業界でも輸入は3,940万ドルから5,060万ドルに大きく伸びた。(2013年4月28日付けエスタード紙-関連記事を参照)

米国と日本、EUがブラジルの「差別的」工業政策をWTOに提訴へ

外国製品との競争に苦しむ国内産業の保護を目的としてブラジルが過去数年にわたって採用してきた政策に関して、先進国が世界貿易機関(WTO)投資委員会へ提訴しブラジル政府に説明を求める。


米国と日本、欧州連合(EU)による先進諸国がブラジルの工業政策を「差別的である」と疑問を呈し、共同で対応に乗り出す。 ブラジル政府が導入した税制優遇政策を「差別的」と位置付け、明日にも世界貿易機関(WTO)に提訴し、ブラジル外務省に説明を求める。

エスタード紙が入手した外務省に発送された文書によると、発行日は4月15日で、米国政府と日本政府、EUの連名で、過去数か月にわたり様々な業種を対象にブラジル政府が採用してきた対策に関して「憂慮」していることを明確にするとともに、ブラジル政府の対応を求めて圧力を強めている。

さらにもう1つの提訴は、ジウマ政権が特定の対策について、時限的なものと約束してきた事項である。大統領は振興策を一時的措置と説明してきたが、現在、これらの措置は2010年代を通じて継続される見込みである。

大統領府は、ブラジルの工業政策が国際規則に即したものだと強く主張する。だが、これらの先進国は、ブラジルが自国の優遇政策をWTOの規則に対してどのように「整合性」を持って説明できるのかに注目している。実際、WTOの規則は、国産品と輸入品を差別する目的で国内の租税制度を利用することを禁じている。

ブラジル政府の税制優遇政策がWTOに協議されるのは、今回が初めてではない。ただ、従来説明を求められた対象は特定の分野だった。例えば自動車向けのIPI減税は、既に先進国から批判の対象になっていた。

だが今回は、世界の3大市場が初めて、ブラジルの振興策全体に対して、「差別的と見受けられる」要素を持った大規模な産業政策の一貫とみなすことができると警告を発したのである。

ただし現段階ではWTOにおいてラジルを相手取りパネルを設置したわけではない。この提訴は貿易相手国に対する質疑の持ち込みであり投資政策に関する問題を扱うWTO委員会に提出される事になっている。

EU関係者によると、特定の業界を限定せず広範囲にわたる政策の説明をブラジルに求めるという判断は、むしろ、今後数か月はブラジルに対して息つく間も与えず圧力を強める戦略に沿ったものとしている。

先進国グループが提出した文書では、「間接税の課徴でブラジルが導入した特定の対応は、輸入品に対して差別的な対応と受け止めてしかるべきものだ」と指摘。

これらの国々は、そうした例として種々のインセンティブを挙げ、さらに、ブラジル政府の公約と異なり一時的な対応になっていないと警告。その一例として、国産部品を使用する自動車メーカーに対してIPIの課徴率を引き下げる措置を挙げた。

先進国グループはその上、デジタル製品に対する「差別」についても言及。通信機器と半導体製品と、これらの業界にも国内産業優遇の対象になっており、同様に「差別」と呼ぶことができる状態だ指摘。 ブラジル政府に送付された文書の中で米国とEU、日本は、国家電気通信庁(Anatel)が実施するブロードバンドの入札規定についても、国産機器を使用する企業を優遇することから国際規則に照らして「整合性」に疑問があると指摘した。

だが、先進国の批判はこれに止まらない。先進国政府は、4月2日から肥料工業に対してブラジル政府が導入した機械設備の調達に関する減税措置についても、どのように国際規則の枠内であると正当化できるのか、ブラジル政府に説明を求めている。

つまるところ、先進国は、自動車に対しIPIを削減する政策が国際規定にどう即しているのかの説明をブラジルに要求している。

背景

ブラジルを告発する文書で、これらの国々がブラジルに対して今後も説明を求めていくことが明記されている。「今回の提訴でEUと米国、日本が抱く懸念について徹底的な対応がなされたと受け止めるべきではない」と指摘。欧州企業や米国企業はブラジルに進出して数10年を経ており、結果として国産品を利用しているため、これらの優遇政策がまさに欧米企業に益するものだと、ブラジル政府はことあるごとに主張してきた。

だが、こうした主張は彼らを納得させていない。そして、 先進国によるブラジルへの圧力は、単なる偶然からではない。 ワシントンとブリュッセル、東京は、保護貿易主義的なバイアスのかかった産業政策が、とりわけ世界で唯一成長しているエマージング諸国に拡大していくことを阻止するのが今回の提訴の狙いなのだ。(2013年4月29日付けエスタード紙)

(特別記事)イエス、アイ・キャン……だがインフレはさらに深刻化する

インフレの昂進が再燃しかねないことに不安と懸念を抱くブラジル人にとって、トマトが悪のシンボルになった。だが政府は、これまでのところ、トマトに足を奪われ踊らされている状態だ。つまり、問題に対してその場しのぎで対処しているにすぎない。

パラナ州がアルゼンチンとパラグアイと国境を接するフォス・ド・イグアスのブラジル側の税務署員は、ここ数日、残業に次ぐ残業を余儀なくされていた。彼らは、密輸トマト対策に躍起になっていたのだ。密輸が盛んになった理由は、ブラジル国内のトマト相場が、周辺諸国の相場の2倍に跳ね上がったからだ。トマトは2013年1月から3月にかけて、平均で60%値上がりしスーパーマーケットの値上がり品でトップの座を確保した。前年同期と比較すると値上がりは120%に達し、1kgあたり10レアルを突破した。その価格は、国民的なジョークにもなったほどだ。トマトを高貴な宝石や芸術作品と比較する風刺画が、インターネットにあふれかえった。もっとも、そのテーマがインフレの再燃とあって、このジョークは笑いを伴うものでなかったのが皮肉ではある。

ブラジル地理統計院(IBGE)が先週発表した拡大消費者物価指数(IPCA)のデータによると、インフレは3月までの過去12か月間に累積6.59%に達し、政府自身が設定したインフレターゲットの上限を突破した。公式のインフレターゲットの中間値は4.5%、許容誤差を含めると上限は6.5%である。長らく休眠状態にあったインフレという言葉が、ブラジル人が日常会話で交わす単語の1つに復帰した。爆発的なインフレの原因は、その大部分が食料品の値上がりに負っていた。一部の生産地で長雨、さらに別の生産地では干ばつに見舞われたことが、ブラジルの食卓に日常的にのぼるトマトの供給を縮小することになった。例えば北東部の干ばつの影響でマンジオッカ芋(キャッサバ)も不作となり、マンジオッカ芋粉は昨年、151%も値上がりした。もし、この理由を悪天候だけが原因だと主張できれば、実に単純なことだろう。しかし実際には、インフレ対策が注目されるようになって以降、かなりの期間、政府はこの問題に振り回されている状態だ。政府にとっては、2年足らずの間に、インフレ率が公定インフレターゲットの上限を突破したのは、これで2度目となる。ジウマ・ロウセフ大統領が就任して以来、IPCAがインフレターゲットの中間値である4.5%を下回ったことは一度もないのだ。したがって、インフレ昂進の要因を、状況に類する要素あるいは一時的な要素に求めることはできない。ジウマ大統領はある時、停電を落雷のせいにするなどお笑い草だと発言した。同じように、インフレ昂進の原因を気象現象のせいにするのは、冗談と一笑に付すべき所作のはずだ。しかもエコノミストの多くが、現実の価格は公式インフレ率を上回って推移していると指摘する。

だが、このようなことは大きな懸念材料と呼べるものではない。驚くべきことは、政府が、日ごとに、インフレに至った原因を考慮しなくなっていることだ。実のところ、インフレは値上がりではない。インフレとは、通貨が購買力を喪失することだ。ではなぜ、通貨が購買力を失うのか? その理由は、売りに出されている商品以上に通貨が潤沢だからだ。もし、商品を購入可能なだけの通貨以上に商品が潤沢に存在するなら、これとは逆の現象が発生する。人々はより少ない金でさらに多くの商品を購入するだろう。そのようなことは、イタマル政権において財務大臣としてインフレという名のドラゴンと戦った歴戦の英雄、フェルナンド・エンリッケ・カルドーゾなら知っていることだ。物価の上昇は、まさに暴騰と呼べる状態になる。インフレというのは、実に一途な性向を持った害虫だ。この害虫は、物価スライド制の枠組みの中で、静かに、かつ急速に蔓延する。そして、アルコール中毒患者がすする最初のひと口のように、堰を切ったように地獄のドアを開け放つ。インフレは、減税と戦い、生産者と中間業者、消費者の間で交わされる交渉で暴れまわる。だがインフレには、もはや対話は存在しない。インフレが耳を傾けるのは、利上げと公共支出の削減、金融引き締めなどの大衆の支持を得られない政策に限られる。低金利という選挙向けの御旗を掲げたことで、政府は、現実に目を向けることを拒否しており、しかも政府が依拠するメカニズムは少なくとも民主的な制度の下では、いかなる時代、場所においても効果を発揮したことがないのに、あくまでこれで物価を抑制することに固執している。

信用収縮のバランスを取るという伝統的かつ効果的な方法でインフレを退治する代わりに、政府は、次第にその場しのぎの対応への傾倒を強めている。全ては低金利を維持すること、そして恐らくは、それによって成長を刺激するという題目を継続するためなのだ。コンサルタント会社MBアソシアードスのチーフエコノミスト、セルジオ・バーレ氏は、「若干のインフレは、ある意味、GDPにとっても良い影響を与える。これこそ今、ブラジリアで盲信されている理論だ」と話す。「クリスチーナ・キルチネルは極端にその信念を貫いている。現在のアルゼンチンが見舞われている年率およそ30%というインフレを退治するのは、苦痛を伴うだろう。魔法は存在しない。深刻な不況は不可避であり、将来、誰かがそれを手掛ける必要がある。だが、それに手を染めるのは絶対に彼女ではない」。小手先のインフレ退治には限界がある。その場しのぎの政策が完全に意味をなさないことは、ブラジルのケースでも同様だ。経済に対する政府の恒常的な介入は投資家を驚かせ、生産能力の増強のために投入される資金も落ち込む。こうした状況は、インフレを伴わず持続的な経済成長を達成するという、健全な経済においてあるべき姿とは全く逆だ。そこでブラジルでは、経済活動はやや停滞した状態が続く。今後は、これまで活況を呈してきた消費までが、落ち込む兆候を示すだろう。それはなぜか? 物価の上昇は、既に負債を抱えている大衆の購買力を失わせ、出費の見直しを促すからだ。

最終的に、経済を再び指標化する圧力が生じてくる。応用経済研究院(Ipea)のエコノミスト、マンスエット・アルメイダ氏は、「長期にわたってインフレが高い水準にある場合、人々は、政府がインフレを認めていると考え始める」と指摘する。「失業が低水準にあることで、労働組合は、彼らが代表する業界の労使交渉で、より高いインフレ率を見込んだ大盤振る舞いの賃金調整を要求することができる」。ところがこの勝利は錯覚なのだ。インフレが昂進し、かつ指標化された経済では、賃金が物価の調整幅を上回って上昇することなどあり得ない。生産原価も同様に上昇する」。そしてマンスエット・アルメイダは、次のようにも話す。「インフレは、単にトマトあるいはレタス、牛肉を買おうとする消費者を悩ませるだけではない。工業部門の競争力に打撃を与えるのだ」。

ブラジルでは過去にも、インフレの原因が、トマトのせいになったりハヤトウリ(シュシュ)相場のせいになったり、心理的要因や小売仲買人の値上げなどのせいにされてきた。凶作なら確かに、相場が一時的に値上がりする原因にもなり得る。だが、物価が断続的に上昇していることから、より深刻なバランスの崩れが存在するはずだ。インフレは、経済が吸収できる規模を上回って通貨が流通している場合のみ、勢いを得て広がる。別の言い方で定義するなら、それは、商品とサービスの供給を上回って消費が拡大する場合ということだ。経済は厳密な科学ではないが、幾つかの、定説として確立された法則がある。その1つは、消費に対してインセンティブが与えられ、しかも、需要が供給を上回った場合には、物価が上昇するということだ。議論の余地がないもう1つの経済法則は、インフレを抜本的に退治するには、唯一の方法としてマネーサプライのコントロールが不可欠だというもの。それは先週死去した英国のマーガレット・サッチャー元首相が、1979年に首相に就任後に実地に証明したことでもある。だが大統領の支持率を優先するブラジル政府内では、別の現実の中に生きている。公共支出の拡大と優遇政策の拡張、助成の拡大、市場の開放に対する障壁の導入、より多くの公社の設立といった、大衆受けする政策の導入に対する圧力を、政府は強めている。ブラジルは、経済構造のバランスの崩れに対して現在のような分析手法と管理手法が存在しなかった60年代と比較して、知的にも手法的にも廃頽している状況にある。GDP成長率がわずか1%にとどまる一方で雇用の規模が2%拡大するということは、何ら喜ばしいことなどではないと理解すべきだ。なぜなら、この状況は、労働者が生み出す富がより小さくなっていること、したがって、生産性の下落を意味するからだ。生産性の向上が経済成長を上回るほど、インフレに対する圧力が緩和され、より大きく成長する道が開ける。商業が工業の成長を上回って拡大しているのであれば、それは、ある国で、労働者にとっては生産性が向上する以上に賃金が上昇していることを示唆する。健康なバランスを維持するのに理想とされるのは、生産性と給与が同じ比重で上昇することなのだ。そして、上記の例に挙げた「ある国」こそ、ブラジルなのだ。今ここで発生しているインフレは、その原因を特定せず対処もしなかったという惨劇の帰結だ。

政府が先週発表したインフレ指数は、政府自身が設定したインフレ指数を突破しており、ブラジリア界隈も危機感を募らせたように見える。経済政策に対する信頼性が余りにも蝕まれているというのが、一般的評価だ。連立与党も、インフレを懸念し始めた。下院のエンリッケ・エドゥアルド・アルヴェス(PMDB:ブラジル民主運動党=リオ・グランデ・ド・ノルテ州選出)議長は、政府がこの問題を排除するため、一層精力的な措置を導入する方針を支持している。ただしアルヴェス下院議長の物価上昇に対する意見は、投資を先送りし予防的な価格の改定を図っている財界の見通しにとって現状が歓迎すべからざるものだと主張しているにすぎない。「これまで発表されてきた対策はその場しのぎで不十分だった」とは、アルヴェス上院議長の発言だ。クルザード計画の失敗とインフレの悪化により国民の支持を失うという惨劇を経験したジョゼー・サルネイ元連邦大統領は、政府が金融引き締め政策の手綱を緩めるべきではないと主張する。「インフレは経済秩序を完全に破壊し、より貧しい人々に打撃を与える。最悪の事態だ」と、サルネイ氏は言う。「我が政権下では、価値修正を伴うインフレという、さらに悲劇的な状況だった。月初には誰もが金満家だ。だが、月末には誰もが貧しくなるのだ」。一方で、デルシジオ・アマラル上院議員(PT:労働者党)は、大統領が採用してきた対応を弁護し続けている。曰く、「政府は、全力を挙げて努力している。中央銀行による利上げなど、依然として政府が採用可能な対策は残されている」。

国会は、公共支出を拡大する選挙法案を否決し、より現実的な予算支出を承認して、インフレ撲滅への努力を後押ししている。これは、過去数年の動きとは正反対。もっとも、国会の支援は、もしそれを意図するものとして存在した場合には、生活必需品セットに対する免税措置と電気料金の引き下げのような、貧困層対策を目的として大統領が提出する案件の採択に限られる。この取り組みは政府のプロパガンダの旗印になったが、価格調整の広がりを食い止めるには不十分だった。好材料は、農業生産現場の天候が改善しており、トマトとその他の食品の価格が下落してることだ。悪材料は、歴史的かつ構造的なブラジルの高インフレの原因へのテコ入れが、一切手つかずな点である。適切なインフラが欠如していることで港湾の中にはトラックが行列をなし、国内で消費される製品ですら運送料が上昇している。こうした状況で効果的な減税を施すことは、企業の競争力を高めて製品コストを引き下げる効果を発揮するだろう。例えばマーガレット・サッチャーの採用したモデルは、全ての企業に平しくチャンスを与えるものだった。だがPTでは、政府が受益者を選ぶのだ。大統領選を視野に、政府は、有利な状況を形成しようとしている。好況に人心が沸騰した日が過去のものとなり、今後の数四半期にわたって経済成長ペースが低迷するとしても、雇用水準を歴史的な高水準に維持するには十分だ。遅かれ早かれ、とは言え、遅くと形容するには遠からぬ時期に、インフレは、効果的な対策により退治されるだろう。その時、ブラジルの鉄の女は、政治家としての真価を証明することになる。(2013年4月17日付けベージャ誌)

 

ジウマ

 

サッチャー

公社4社を設立

経済体制

公社50社を民営化

些末な対応でインフレに対処しようとしている

インフレ対策

政府支出を削減し利上げを実施

ベネズエラの大統領選において独裁政権におべっかを使いアルゼンチンに対しては二国間貿易で出しゃばらないよう自重

外交

断固とした姿勢に転換し、アルゼンチ軍が侵攻したフォークランドを奪還、これはアルゼンチンの独裁制の弱体化と打倒につながった

政権内部に2000人の組合員を擁するも組合との交渉で優位に立てず

労組

それまで政権の交代や経済の悪化に加担した労働組合員を一掃した

国民は国家を支持すべきで、必要とあれば各自の利害も犠牲にすべきだ

個人の在り方

国家は国民に尽くすべきでその逆ではない

政府支出を十分にカバーできる税収を確保すべし

政府財政

政府は歳入を下回る支出をすべし。異論は認めない

外資は鼻持ちならない奴らであり、企業の利益は敵で常にゲームのルールを変更する。そして、生産と投資のための長期的な資金が重要な時に消費向けの投資の呼び込みだけを図る。

投資

安全に投資するための場所としてロンドンをヨーロッパと英国の金融街にした

 

(特別記事)サンパウロ州がICMS制度の変更で71億レアルの損失

サンパウロ州は、連邦政府の後押しを受けて国会で準備中の2法案が可決された場合に税収が落ち込む見通し。

連邦政府が成立に意欲を見せる2つの法案が、数日以内に国会で票決される。だが、これらが可決した場合、サンパウロ州政府にとっては今後4年以内に税収の落ち込みが年間71億レアルに拡大する見込み。国会で審議されている商品サービス流通税(ICMS)制度改革の影響をサンパウロ州財務局が試算したもので、エスタード紙が独自に入手した。州税であるICMSは、州政府の財源の中核的存在である。ジェラルド・アルキミン州知事(PSDB:ブラジル民主社会党)が率いるサンパウロ州政府の大きな懸念は、デルシリオ・アマラル上院議員(PT:労働者党)が提出した法案。その内容は、州境をまたいだ取引に対するICMSの課徴率に関し、南部とエスピリト・サント州を除く南東部の諸州には4%を一律適用、北部と北東部、中西部諸州とエスピリト・サント州に対しては前出の諸州に対して移出側になる場合に7%を受け取ることを認めるというもの。上院の経済検討委員会(CAE)は24日、この法案の条文を採択済み。CAEによる採択を受けてこの法案は今後、上院本会議の票決にかけられる。

ジウマ・ロウセフ大統領の支持を受けているこの法案が、下院を通過したのと同様に上院でも可決された場合、サンパウロ州政府が被る税収の落ち込みは、2014年以降の4年間で、最終的に年間37億5,000万レアルに達する。

税制戦争

サンパウロ州政府は、ICMSの混乱した法制度を改革するというジルマ政権が提出した当初の法案を支持する。つまり、州境をまたぐ財とサービスの取引に対するICMSの課徴率を4%に統一するというもの。課徴率を統一することで、ICMS課徴率を引き下げた税制優遇政策により企業の誘致を図るという税制戦争に終止符を打つことになる。

エコノミストのアンドレア・カラビ局長が率いるサンパウロ州財務局によると、ブラジル市場は「税制戦争によって企業の競争力が歪曲されている」ことから「投資に対して不適切」なものになっている。内部文書でサンパウロ州政府は、税制改革を2012年に断念した大統領府と財務省の戦略を批判している。「いずれの州であれ、とりわけサンパウロ州のケースがそうであるが、連邦の問題として議論された制度の変更に伴う歳入の譲歩によって脅やかされている」。

国会に提出された憲法修正案(PEC)第197号で提案されたICMSの課徴率に関する新しい提案でも、サンパウロ州の歳入の落ち込みをさらに拡大させる。PEC第197号は、電子商取引に関する税制を規定するもので、同法案が成立するとサンパウロ州政府の歳入は、現時点でも年間22億レアル減少する。

税制戦争の終結をもくろむ同法案が上院で可決された場合、サンパウロ州政府の税収は今後、さらに落ち込みを拡大していく。サンパウロ州政府は、「税制改革という方針のもとに、州政府が失う税収は、年間で総額71億レアルに達するだろう」と試算する。(2013年4月26日付けエスタード紙)

(特別記事)ブラジルとベネズエラ ― 経済が意味するものは?

南アメリカ諸国、とりわけベネズエラの民主主義に名を借りた身勝手な振る舞いに対してブラジル政府がしばしば共感するような態度を示すことで、ブラジル企業の利益を保護する必要性が生じる。チャベス政権が発足して以降、ブラジルの対ベネズエラ輸出が1999年の5億3,600万ドルから2012年には50億5,600万ドルに伸長したこと、さらに、ブラジルの大手企業による同国への進出でベネズエラ政府の「好意」を受けたことは、ベネズエラがメルコスルに加盟するに至った不透明な手続き、あるいは投票数が有権者数を上回るために全国的な票数の再集計が必要とされたにもかかわらずにニコラス・マドゥロ氏を次期大統領とブラジルが早々に認めたことを説明するに足る理由になっていると思われる。

事実として、ブラジルの輸出相手国に占めるベネズエラの比率は、1990年代の1%から、2012年には2.08%に拡大しており、しかも2008年にはピークとなる輸出全体の3%に達した。反対にベネズエラの輸入でブラジルが占める比重は、2000年代前半に拡大しただけにとどまる。それ以降、この比率は9%前後を推移しており、両国政府の良好な関係がとりわけブラジルの輸出にとっては、他の国々ほど恩恵を受けていないことを示す。

土木建築業界の大手企業がベネズエラ国内で公共工事を受注しているのは事実だ。それが確かにブラジル政府とチャベス大統領が築いた良好な関係の恩恵を受けたものだとしても、これらの企業がベネズエラ国内で利益を維持するには、中期的には、それを保証できるとは言い難いベネズエラの財政状況に大きく依存するのだ。

同じことが、過去数年ですっかり影をひそめた対ベネズエラ投資の、ブラジル企業の関心にも言える。統合開発研究センター(Cindes)がまとめたブラジルによる対南米・対メキシコ投資データバンク「インデックスインヴェスト・ブラジル」によると、2007年から2012年にかけて、ブラジルからベネズエラに対して実施された直接投資は4件(2007年に2件、2008年と2010年にそれぞれ1件)。同じ6年間にブラジル企業は、コロンビアに20件、チリに19件、ペルーに8件の直接投資を実施した。これに対してブラジル企業によるボリビアとエクアドル向けの直接投資は、1件もなかった。

ブラジル企業はこのところ、投資を縮小するどころか、発表済みの投資の撤回、あるいは、さらに悪いことに進出先の国からの撤退をも発表している。撤退発表が経済的に不安定な国、すなわち、法的に不安定な環境につながる不安定な政治体制で、かつ、経済成長が低迷すると見込まれる国々に集中しているのは、偶然ではない。ブラスケムが発表したベネズエラ国内の大規模投資も同様、進捗していない。アンベブは、同国内で経営コストの上昇が予想されるのに加えて製品の販売も長期にわたって落ち込んでいることから、国内生産から撤退する判断を下した。ナトゥーラも同様に、ベネズエラ国内事業から撤退すると発表した。同様の動きが、ブラジル企業による対アルゼンチン投資でも見受けられる。

直接投資同様に貿易関係でも、近隣諸国がブラジルの工業部門の企業にとって好ましい位置を占めていることに議論の余地はない。コロンビアとペルー、チリのような国々に対してブラジルの投資が伸長していることこそ、その証明だ。

そこで、経済面と政治面の質が重要になる。民主主義とは言い難い上に透明性が低く、法的安定性にも欠ける政府間の協力関係の上に経済的な関心の立脚点を置くこと、仮想敵を設定し同盟国を保護する裁量的な措置によって成長を求めようとすることは、ブラジル企業の利益を増進するにあたって、最良の戦略とは言い難い。南アメリカでこれらの企業が積んだ経験から得た教訓は、次のように言えるだろう。つまり、民主主義としてのあるべき環境、さらに、法規の透明性と安定性を重視する経済政策の促進が、ブラジル企業の利益を保護する最良の方法である。(2013年4月26日付けエスタード紙)

サンドラ・ポロニア・リオとモッタ・ベイガ 統合開発研究センター(Cindes)理事。

事務局便り JD-025/13: 新刊書紹介(Novo Lancamento) ブラジル日本移民百周年史-第4巻「生活と文化(2)」と第5巻「総論・社会史編」のご案内

 

事務局便り JD-025/13

2013年4月29

会員各位

 

 

新刊書紹介(Novo Lancamento)

ブラジル日本移民百周年史-第4巻「生活と文化(2)」と第5巻「総論・社会史編」のご案内

 

ブラジル日本移民百周年記念協会の記念事業の一環として編纂・発行されましたブラジル日本移民百周年史の第4巻と第5巻を会議所事務局で委託販売致しますので、ご関心の向きは奮ってご購入下さいます様お願い致します。

(※日系主要5団体で構成される日伯友好交流促進協会が管理する「日伯修好百周年記念基金」より、本編纂・出版プロジェクトへ175,000レアイスが2009年に寄付された経緯がある。)

第4巻と第5巻が一冊にまとまっており、価格は100レアイスとなります。事務局tel.: 3178-6233 / secretaria@camaradojapao.org.br -テイコ ) までお問い合わせ下さい。

 

希望冊数:(    )冊 「生活と文化(2)」&「総論・社会史編」 (1冊 – R$ 100)

購入社名:(                               )

お支払方法: 銀行振り込み (     )/会議所支払い(      )

受取り方法:郵送希望 (    )郵送費は購入社負担となりますので予めご了承下さい。/会議所受取り(    )
 
 
※ なお、先に第1巻「農業編」、第2巻「産業編」、第3巻「生活と文化(1)」(価格はそれぞれ100レアイス)も発売しておりまして、今回併せてのご購入を希望される方はまとめてお申込下さい。
 

(  )冊 「農業編」   (1冊 – R$ 100)
(  )冊 「産業編」    (1冊 – R$ 100)
(  )冊 「生活と文化(1)」(1冊 – R$ 100)

 

 

(論評)かすんだ未来

スエリー・カルダス

対外収支が2013年第1四半期、249億ドルという大赤字を計上したことで、市場に驚きと懸念が広がった。しかも、この金額そのもの以上に、急速な赤字の増大には驚くべきものがある。保有する外貨準備高が3,770億ドル規模の国では、この経常収支赤字は、予測可能かつ、一時的なもので短期的に改善が見込まれるので、リスクとは言えない。だが、そうした意見はブラジルのケースに当てはまらないように思える。貿易収支と外資企業が国外に支払う投資収益に関連する国際所得支出の赤字は多額で、かつ拡大傾向にあり、先進諸国の経済危機がいよいよトンネルを抜けようというこの時期にあって絶望的なまでに急速に悪化している。経常収支赤字では、その動向が重要だ。すなわち、赤字が拡大していると認められる場合は、リスクが重大な問題に発展し、外貨準備高が切り崩されるものとして、警戒すべきなのだ。

外国直接投資(FDI)は過去10年、経常収支赤字を上回る金額を計上し、その赤字を補塡してきた。その結果、ブラジルの国際収支はこの10年にわたり、いずれの年も黒字だった。FDIは、その国に残って生産部門への投資として投下される良性の現金であり、そのため、経済の健全性を保つ働きがある。安易な利益をかぎまわりすぐに資金を引き揚げるような、金融アプリケーションに対する日和見主義的な投資とは異なる。投資収支は2013年第1四半期、133億ドルの黒字で好転も悪化もしなかったのだが、国内総生産(GDP)に対して4.31%に相当する249億ドルという記録的な経常収支赤字を補填するには不足した格好だ。そこで中銀は近々、経常収支赤字を670億ドル、FDIを650億ドルとする2013年末の見通しを修正する必要に迫られることになる。その試算はすでに、経常収支赤字が700億ドル、FDIが580億ドルという水準に達している。

FDI同様に貿易収支も、同じく10年にわたり、国際収支の黒字化に貢献してきた。だが2012年以降、燃料輸入の急伸と、市場の縮小と価格の下落により輸出も不振が続く。財団法人貿易研究センター(Funcex)によると、価格の下落は輸出の60%に及び、輸出量の落ち込みは6.8%に達した。この輸出の落ち込みの原因の一部は、経済危機だ。だが、それだけではない。巨額の大豆輸出契約が2件、本船渡しの遅れを理由にキャンセルされた。というのもその大豆は、インフラの不備からパラナグアー港(パラナ州)に向かう高速道路わきにできたトラックの長蛇の列に釘づけにされていたのだ。しかも、港も飽和し、ばら積み船も数週間にわたって接岸できずに沖合で停泊を強いられた。インフラ・サービスに対する投資不足から、輸出は支障を来し、輸出を縮小させるだけでなく、製品の競争力を奪い、そして我が国が獲得する外貨も減少する。

輸入に関しても政府は初歩的なミスを犯した。自動車の製造にインセンティブを与え、2012年に新車販売台数が7%拡大した。だが政府は、これがもたらす結果について考慮していなかった。その結果、燃料消費が急増し、ペトロブラスは輸入が3倍に拡大(ルーラ前大統領が大々的に祝った石油の自給自足はどうなったのだろうか?)、貿易収支にネガティブな影響を与えた。ところがそのミスは、いっそう深刻だ。つまりインフレが再び忍び寄ってきたことで、政府は、長期にわたって燃料価格を凍結、ペトロブラスは新規の製油所を建設し輸出を回避する資金も不足した。ミスは更に重なる。燃料輸入に対する支出が3倍にもなったことで、政府は、この問題を解決する代わりに先送りする判断を下した。つまり、ペトロブラスに対して燃料輸入額を登録するのに、50日間の猶予を与えたのだ。その結果、2012年に貿易収支は194億ドルの黒字を計上したが、2012年に計上されるべき45億ドルの輸入が、2013年の勘定に飛ばされた。これを清算する時が到来し、その結果、2013年4月第3週までに65億ドルの貿易収支赤字につながった。

中銀によると、貿易収支赤字は経常収支赤字の60%を占め、国際所得支出の拡大は27%を超えた。経済危機に直面しているために、外国企業は今後も本国の本社への送金を続けるだろう。ペトロブラスも大規模な輸入を継続する。高速道路も港湾も早急に改善されることはない。

さて、この経常収支の赤字の今後はどうなるだろうか?(2013年4月28日付けエスタード紙)

スエリー・カルダス ジャーナリスト、リオデジャネイロ・カトリック大学(PUC-RIO)教授