(論評)影響力の強い効果を期待する

ロベルト・ジアネッチ・ダ・フォンセッカ

新しい実験の結果が出るのを待つことほど辛いものはない。これは因果関係と言われるもので、医薬品であれば、現時点で不治の病に対して処方する新薬、あるいは、全く新しく革新的な痩身術による減量法のような取るに足らないものまで、その効果が試験される。因果関係に関するモデルの多くが科学的に適切な現象としてだけでなく、人文科学の場合のように常識といった形で説明される。経済においてもそれは、相違がない。因果関係は、常に1対1の関係にあるのではなく、状況の置かれた一時性と局所性のために、精度を持って計測可能だといえるものにはならない。

こうした前提をもとに、私は、ブラジル経済の現状について取り上げてみようと思う。1)連邦政府が過去12か月、利下げを行い、マネタリーベースの拡大に減税を持って物価を引き下げたこと。2)輸出競争力を強化するために通貨レアルを安値に誘導したこと。3)輸入関税により国内市場に対して付帯的な保護措置を導入したこと。4)電力事業認可会社の特別利益を削減して工業部門の主要な中間投入財のコストを削減したこと。5)様々な業界に対して給与税減税を実施し、これにより人件費を引き下げたこと。最後に、6)国内の物流コスト低減に向けて鉄道と高速道路、港湾、空港に関する新たな事業認可を通じたインフラへの意欲的な投資計画を立ち上げたこと。

これらすべてのマクロ・ミクロ経済活動にもかかわらず、現在のブラジル経済の状況は、懸念すべき事実とデータを示している。つまり、財とサービスに及ぶ急激かつ広範囲なインフレ、依然として低調な投資、貧弱な経済成長、2013年第1四半期に赤字を計上した貿易収支、大きく拡大する傾向にある経常収支赤字、リスクが増大する財政バランスの不均衡化だ。

初期診断を誤った、あるいは薬が違う、投薬量に間違いというケースがあるかも知れないし、また、楽観的な見方としては、全てが適切かも知れないが、その効果はいまのところ感じられないのではないか? これこそ、私が本稿で、これから分析してみたい問題だ。

私の見解では、マクロ経済上の大部分の価格のずれ、言い換えれば金利と為替相場といった競争力と投資を阻害するものを修正する必要以上に、適切な初期診断を下すことに勝るものはない。だが我々は、この価格調整の原因と結果の関係は長期にわたって醸成されてきたこと、かつ様々なマクロ経済の変数に左右されていることを認識している。すなわちそれは、結果が原因そのものに由来しているという、本質的な因果関係にあるということだ。

多くの人が、電力コストと物流コスト、税負担など、ブラジル経済競争力にとって不利となる他の要因を補正するための対処法を問題にしている。複雑な法体系と政府によるこの分野への介入手法を考慮すると、これらの調整の実施に当たって誤りがあったのは間違いないだろうが、惰性と不作為よりはまだましだ。商品サービス流通税(ICMS)と社会統合基金(PIS)/社会保険融資納付金(Cofins)といった基幹税に関しては、財務当局が優先的に取り組む課題に組み入れられた。2014年までには完全に施行され、我が国の税制を合理化させることに期待したい。それまでは特別税制を通じて、工業部門の中でも化学業界と砂糖アルコール業界、紙セルロース業界、乳業界、その他の、競争力と税クレジットの累積的適用に問題を抱えて厳しい状況におかれている業種に対して対応を図る、税制の抜本的改革とは異なる応急措置が必要だ。同様に、暫定的に適用を拡大した給与税減税とレインテグラ(輸出業者への租税返却特別処置)など、工業部門の発展と輸出の振興を後押しする対策も必要だ。

何らかの恩恵あるいは税制優遇政策に対して短期的に有効な対策を実施した場合、その結果は、目的の達成度において非効率な結果をもたらす。なぜなら、その効力が限定的と受け止められてしまい、工業部門が下す投資あるいは価格への判断に影響力を発揮しないためだ。一般論として工業は、こうした種々の、既に有効なイニシアティブによって支えられているのであり、その効果に対しては、経済体系の中でコストの削減と競争力の向上に効果を発揮することから注意深く見守っている。だが、ブラジルの工業部門が競争力を獲得するための調整作業はゴールまでの道のりは長く、かつ、克服すべき多くの困難が待ち受けているために多くの忍耐を要することから、工業部門は、実際のところ、連邦政府が機敏に大鉈を振るうのを欲しているのである。(2013年4月18日付けエスタード紙)

ロベルト・ジアネッチ・ダ・フォンセッカ エコノミストで実業家、コンサルタント会社カドゥナ社長、サンパウロ州工業連盟(Fiesp)通商・貿易担当理事。

サンジョアキン農協(SANJO)の平延氏が国際ワイン見本市案内の為に会議所を訪問

2013年4月19日、第17回エスポヴィニスの案内の為、サンジョアキン農業協同組合(SANJO)サンパウロ支部の平延渉氏が会議所を訪問、同イベントへの招待状を平田藤義事務局長へ手渡した。

例年行われるこの国際ワイン見本市は4月24日~26日Expo Center Norte で行われ、業界の世界最大10イベントの一つで、ワイン・ビジネスの重要なルートの活動拠点でもある。

また、今年7月下旬に企画中の相互啓発委員会によるサンタカタリーナへの視察会(SANJOワイン工場見学含む)についても意見交換を行った。

延氏(右)から招待状を受取る平田事務局長 (Foto: Rubens Ito/CCIJB)

 

 

GMの南大河州グラヴァタイ自動車工場は無期限スト入りか

昨日、GMの南大河州グラヴァタイ自動車工場の従業員は、サンパウロ州内の自動車工場の従業員並みのサラリーや従業員利益分配金(PLR)の引上げを要求して2時間の抗議を行った。

南大河州グラヴァタイ自動車工場の従業員の基本給は1,000レアル、昨年のPLR分配金は7,000レアルであったにも関わらず、サンパウロ州のサン・ジョゼ・ドス・カンポス工場やサンカエターノ・ド・スール工場の基本給は1,700レアル、昨年のPLR分配金は1万2,000レアルと大きな開きがある。

1990年代の自動車生産工場はサンパウロ州に集中していたが、相次ぐ金属労連の賃金値上げの要求でサラリーが高騰したために、GMは南大河州グラヴァタイ市、ワーゲン社はパラナ州クリチバ市近郊に工場を建設して、人件費のコスト削減を図った。

南大河州グラヴァタイ自動車工場並びに19の自動車パーツ工場の従業員総数は8,000人、ワーゲン社のサン・ジョゼ・ピニャイス自動車工場も多くの従業員を雇用、GM社同様にワーゲン社の従業員も賃金の値上げを要求して無期限のスト入りの可能性がある。

3月にGM社のサン・ジョゼ・ドス・カンポス工場でのミニバン型のZafira型車、Meriva型車、 Corsa型車並びに Classic型車の生産中止に伴い、598人の人員整理を発表していた。

「GM社はブラジル国内で自動車を生産して本国に莫大な利益を送金しているにも関わらず、我々は低賃金で働かされているために、サンパウロ州の同社の従業員並みのサラリーを要求しているだけである」とグラヴァタイ自動車工場の金属労連のヴァルシール・アスカリ幹部は説明している。

Celta型車、 Onix型車並びに Prisma型車を生産しているGM社のグラヴァタイ自動車工場では、販売が好調に推移しているために3月から3勤務交代制を導入、またGM社並びに19パーツメーカーは過去数カ月間に2,450人の従業員を雇用している。

グラヴァタイ自動車工場では生産能力を引き上げるために拡張工事を実施、自動車生産能力は年間23万台から38万台に増加している。(2013年4月19日付けエスタード紙)

 

第1四半期のペトロブラスの貿易収支は73億9,600万ドルの赤字

第1四半期のペトロブラス石油公社の石油派生品の輸入は、石油の国際コモディティ価格の高値どまり並びにブラジル国内の石油製油所の建設が大幅に遅れている影響で、前年同期比40.2%増加の101億6,600万ドルに達している。

第1四半期のペトロブラス石油公社の石油の輸出は、ブラジル国内の石油需要の拡大並びに石油生産量の減少に伴って、前年同期比50.3%減少の27億7,000万ドルに留まっているため、第1四半期の同社の貿易収支は,前年同期比で4倍近い73億9600万ドルの赤字を計上している。

ペトロブラスの2月の1日当たりの原油生産は前月比2.25%減少の192万バレル、1月の原油生産は前月比3.3%減少と継続して原油生産が減少してきているが、グラッサ・フォスター総裁は原油の増産開始は2014年になると説明している。

連邦政府は1月にペトロブラスに対して石油の卸売価格の6.6%の値上げ、ディーゼル燃料の5.4%の値上げを許可したにも関わらず、同社の収益改善にはほとんど効果がなく、今後の投資計画を実施するために海外資産の売却を余儀なくされている。

昨年の第1四半期のペトロブラスの輸出は、55億7,200万ドルでブラジル企業ではトップ、ヴァーレは53億6,300万ドルで2位であったが、今年第1四半期のヴァーレ社の輸出は前年同期比3.8%増加の55億6,600万ドルでトップとなり、ペトロブラスの輸出は26億ドルと大幅に落ち込んだために、ヴァーレ社よりも約30億ドル減少している。

シェル社は国家原油庁(ANP)が予定している石油・天然ガスの入札に参加、またペトロブラスが所有する米国のメキシコ湾の深海油田開発の鉱区の買収にも注目しており、シェル以外にもエクソン、シェブロン並びにBPも買収の動きを示している。

しかしペトロブラスが所有する米国のメキシコ湾の深海油田開発鉱区の資産総額が80億ドルと見込まれているにも関わらず、資金調達に迫られている状況のペトロブラスは、40億ドルから60億ドルでの放出を余儀なくされている。(2013年4月19日付けエスタード紙)


 

第1四半期のGDP伸び率は前四半期比1.0%以上か

先進諸国の経済の停滞やブラジルの景気回復が予想以上に遅れているにも関わらず、多くのエコノミストは、第1四半期のGDP伸び率は前四半期比1.0%以上になる可能性を予想している。

イタウー銀行のエコノミストのアウレリオ・ビカーリョ氏は、2月の月間GDP伸び率は農畜産が5.5%増加して牽引、またサービス部門も好調に推移して、製造業部門の落ち込みをカバーしたとコメントしている。

ビカーリョ氏は3月の製造業部門のGDP伸び率は0.7%の増加を予想、第1四半期のGDP伸び率は前四半期比1.2%を予想、しかし自動車部門の在庫が平均よりも高いため今後の自動車生産は僅かに減少、しかし今後の製造業部門の生産は徐々に回復するために、今年のGDP伸び率を3.0%と予想している。

JGPコンサルタント社のエコノミストのフェルナンド・ロッシャ氏は、一般消費並びに製造業部門の生産は徐々に回復傾向を示しているために、今年のGDP伸び率を3.0%と予想している。

また同社のロッシャ氏は、第1四半期の農畜産部門のGDP伸び率は大豆の収穫が牽引して前年同期比12%増加を予想、第1四半期のGDP伸び率は、前四半期比0.9%増加を予想している。(2013年4月19日付けヴァロール紙)

 

 

マット・グロッソ州SEBRAEのアンドレ・ルイス・シェリーニ取締役アシスタントが訪問

マット・グロッソ州SEBRAE(零細・小企業支援サービス機関)のアンドレ・ルイス・シェリーニ取締役アシスタントが2013年4月18日に商工会議所を訪問、応対した平田藤義事務局長並びに日下野成次総務担当とSEBRAEやマット・グロッソ州について情報交換した。

左から平田藤義事務局長/日下野成次総務担当/マット・グロッソ州SEBRAEのアンドレ・ルイス・シェリーニ取締役アシスタント

フジアルテ・ド・ブラジルポロロッカの森山氏が番組紹介のため訪問

人材紹介会社のフジアルテ・ド・ブラジル ポロロッカ社(www.fujiarte.co.jp)の森山良二 営業マネージャーが2013年4月18日会議所を訪問し、応対した平田藤義事務局長にNHK放送局で同社が特集取材された番組の紹介を行った。

日本進出企業への日系人派遣を積極的に行うポロロッカ事業、日本企業のブラジル進出支援の様子などが番組で特集され、ブラジルへの関心が高まる中、日伯間人材交流に大きく貢献する同社がクローズアップされている。

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【放映内容】
1.日時  2013年4月21日(日) 日本時間18:10~NHK総合テレビ
2.番組  NHK総合テレビ 「海外ネットワーク」
http://www.nhk.or.jp/worldnet/
3.内容(予定)  
・ポロロッカ事業を始めた経緯と意義 (リーマン後の日系人の現状とキャリアパス)
・ブラジル進出支援セミナーの様子(1月30日開催)
・ポロロッカを活用してブラジルに進出した企業の事例紹介   
・ポロロッカ事業を通してブラジルで活躍している方々の成功例     等

左から平田藤義事務局長/人材紹介会社のフジアルテ・ド・ブラジル ポロロッカ社の森山良二 営業マネージャー

Selic金利は緩やかな切り上げサイクルに突入か

国内経済の回復が大幅に遅れているにも関わらず、食料品を中心としたインフレ圧力が上昇してきているために、昨日の中銀の通貨政策委員会(Copom)は、現在の政策誘導金利(Selic)7.25%を0.25%切り上げて7.50%に決定した。

Copom 委員会のSelic 金利の0.25%の切り上げでは、8人の委員のうち2人の委員が据置を主張していたが、多くの金融スペシャリストは、Selic 金利は今後数回に亘って0.25%の小幅な切り上げのサイクルに突入すると予想している。

2月の過去12カ月間のインフレ指数である広範囲消費者物価指数(IPCA)は、連邦政府の許容上限値6.5%を上回る6.59%に達しており、中銀では食料品の値上げだけに留まらず、その他の小売販売に価格転嫁が拡散してきており、インフレ上昇に歯止めをかけるためSelic金利の切り上げを決定している。

IPCA指数が許容上限値6.5%を上回る6.59%に達したことなどが要因で、今月5日に中銀のアレシャンドレ・トンビーニ総裁やギド・マンテガ財務相は、4月のCopom 委員会でのSelic金利の引上げ容認の発言していた。

次回のCopom 委員会は5月28日並びに29日に開催されてSelic金利の再度の切り上げが話し合われるが、その前にインフレ指数並びに第1四半期の国内総生産(GDP)伸び率の発表あり、その結果がSelic金利の動向を大きく左右すると予想されている。

Selic金利は昨年10月から過去最低の7.25%を維持していたが、今後のインフレ並びにGDP伸び率の動向次第では、年末には8.5%まで金利が引き上げられると予想されている。

インフレ抑制のために中銀が取ろうとしていたSelic金利の引上げに反対するものと解釈された矛盾した4月初めのジウマ・ロウセフ大統領の発言が金融市場のボラティリティ状態を誘発して話題になっていた。

経済成長加速プログラム(PAC)による公共支出の増加や国内経済活性化のための製造業部門を中心とした減税政策の導入で、財政プライマリー収支黒字の目標達成が困難になっているために、ギド・マンテガ財務相は財政プライマリー収支の黒字目標の引下げを発表している。

インフレ指数を差引いた実質金利の世界トップ10は、アルゼンチンが3.8%で世界最高金利、中国2.8%、ロシア2.3%、チリ1.9%、ブラジルは1.7%で5位に後退、ハンガリー1.4%、ギリシャ1.1%、ポーランド1.0%、スイス0.9%、インドは0.8%となっている。(2013年4月18日付けエスタード紙)


 

OGX社の原油生産が予想を大幅に下回ったためグループ企業の株価は軒並み下落

実業家エイケ・バチスタ氏のグループ企業の石油・天然ガス開発会社OGX社が原油開発をしているカンポス海盆ツバロン・アズール鉱区の3月の3油田の原油生産が前月を大幅に下回った影響で、更に金融市場関係者のグループ企業に対する不信が拡大したためグループ企業の株価が軒並み下落している。

昨日のOGX社の株価は10.71%、MMX 社は9.5%、LLX 社は10.09%、OSX 社は15.96%とそれぞれ大幅に下落したが、唯一MPX 社の株価はマイナス0.53%に留まった。

Citi Corretora社では、OGX社の株価は今後12カ月間以内に1株2.15レアルから0.90レアルに下落すると予想、Credit Suisse 銀行は1.0レアル、ドイツ銀行は0.80レアルまでそれぞれ下落すると予想している。

3月のカンポス海盆ツバロン・アズール鉱区の3油田を合わせた1日当たりの原油生産量は、前月比26.5%減少の8,300バレルに留まり、今回の減産の要因は、プラットフォームOSX-1の電力発電用タービンの過熱による操業停止とOGX社は発表している。

3月のOGX-68HP 油田は15日間、TBA-1HP油田は11日間それぞれメインテナンスのために操業停止を余儀なくされたが、原油生産に正常に戻るのは6月になると発表している。

Credit Suisse 銀行では2油田のメインテナンスには2,400万ドルが必要と見込んでおり、また2油田の生産停止で42万1,000バレルが減産するために4,200万ドルの収入源になると予想している。

今年初めのOGX社の運転資金は16億ドルであったにも関わらず、プラットフォームのメインテナンスによる支出など予想外の大型支出が見込まれているため益々資金繰りが難しくなるために、OGX社は資金調達のために有望な石油鉱区の放出を迫られている。

1月のTBA-1HP油田の1日当たりの原油生産は16万8,000バレルであったにも関わらず、2月の原油生産はドラスティックに減少、ドイツ銀行では的中確率が低いOGX社の原油予想データーの代りに、国家原油庁(ANP)の原油統計データーを基に今後の原油生産を予想している。

イタウーBBAはOGX社の原油生産予想は全てのデーターが整う前に楽観的な生産予想を発表しているとコメント、しかしカンポス海盆のツバロン・マルテロ鉱区のOSX-3油田が操業開始すれば原油増産につながると予想している。

マレーシア資本のPetronas社は、OGX社が所有する鉱区の販売契約を否定しているにも関わらず、業界関係者はOGX社が所有するツバロン・マルテロ鉱区の40%の権益販売を水面下で行っていると予想している。

ペトロブラス石油公社、ヴァーレ社、Anadarko社並びに BP社はそれぞれ所有する鉱区の販売を計画しており、またANP原油庁が原油・天然ガスの大型入札を計画しているために、OGX社による鉱区の販売による資金調達は難しくなるとCredit Suisse 銀行では見込んでいる。(2013年4月18日付けヴァロール紙)


 

(特別記事)日本のブラジル回帰

グロバリゼーション - 30年に及ぶ投資の低迷期を経て、日本企業が再びブラジルに目を向けている

サマンタ・マイア(Samantha Maia)記者

平田藤義氏の人生は、日本とブラジルのビジネス関係の歴史と様々な偶然が幾重にも折り重なっている。その端緒は、1967年、平田が22歳だった時、故郷を出てポルト・アレグレ(リオ・グランデ・ド・スル州)の土を踏んだことだ。同氏は、日本企業による対ブラジル投資の大きな波に乗って、ブラジルに移住した。平田青年は1950年代、ブラジル南部地方にあるクラシキの繊維工業で5年にわたって働いた経験を持つ。ブラジルの第1歩を記した土地にすっかり馴染み、同氏は、シマロンを喫茶する習慣を身に付け現在もたしなむ。同氏はその後、日本人の一大移住地になったサンパウロ州内陸部のモジ・ダス・クルーゼス氏に移り、テニスを楽しんだ。平田氏はその後、1997年にブラジルから撤退した日本の半導体メーカーであるロームに、長年にわたって勤め上げた。

平田氏は、1970年代に爆発的なブームになった日本企業による対ブラジル投資の生き証人でもある。70年代末には日本企業215社が、ブラジル国内で、商品を販売し、サービスを提供した。当時、こうした企業の中には、勃興する日本の資本主義の旗手もいた。ホンダとソニー、ヤクルト、三井物産は、ブラジル国民に広く知られるブランドとなり、国際市場にも大きく羽ばたいていった。現在はブラジル日本商工会議所(CCIJB)事務局長を務める平田氏によると、「今現在ブラジルで事業を展開している日本企業のおよそ80%が、この時期に進出してきた企業だ」という。

その後の投資の冷却期を経て、2か国間関係は再び熱気を帯び、日本企業が新たにおこす投資の第3波は、いよいよ堅固なものになりそうだ。CCIJBに加盟する日本企業は現在207社を数え、2004年以降、一貫して増加傾向にある。日本企業による対ブラジル直接投資は過去5年に170億ドルに達しており、これは、1998年から2007年の10年間に計上した投資額の2倍以上にも達する。平田事務局長は、「日本人は、コミュニケーションと取引が容易という理由で、長期にわたってアジアの近隣諸国に目を向けてきた」と話す。

近隣諸国の潜在力に対する依存が高まるにつれて、日本は、再び、多様化を求めて西洋に照準を定めた。ブラジル経済を重視する背景には、消費市場の規模、再び成長に踏み出した経済、そして、豊富な原材料といった判断材料があった。リオ・ブランコ単科大学理事で日本経済の専門家、上原アレシャンドレ氏は、「日本企業がブラジルに再び関心を示すようになった背景には、3つの重要な要素がある」という。それは、「ブラジル経済の成長の見込み、通貨レアルの安定、2003年以降の日本の財政健全化」である。日本企業の注目を大いに集めている分野の1つが、インフラ投資だ。サンパウロ総領事館の佐野浩明首席領事は、「日本は、中国だけに依存するわけにはいかない。港湾、造船、鉄道など、ブラジル政府が推進しようとしているインフラ事業に対し、日本は多大な関心を寄せている」と言う。

話題がことインフラになると、三井物産の実力に勝る企業はない。商社である同社の投資と融資、保証は、国内において総額60億ドルに達し、かつ、2007年以降は平均で年間5億ドルずつ伸長している。同社は2012年、ブラジルを同社の優先的市場8か国の1つに位置付けた。ブラジル以外に同社が優先的市場と位置付けたのは、中国とロシア、インド、インドネシア、メキシコ、モザンビーク、ミャンマーである。ブラジル三井物産業務・人事部長の矢部健太郎取締役は、「弊社は常にブラジルを重視してきたが、今回、初めて公式な形でそれを表明した。ブラジルは、昨年こそ経済成長が減速したが、弊社のビジネスに対し何ら落胆させてものではない。弊社は、ビジネスのさらなる発展を願っている」と言う。

三井物産による投資は、極めて大規模、かつ多岐にわたる。コングロマリットである同社は、資源会社バーレの支配会社であるバーレパルに15%を出資しており、これが同社の主要な収入源になっている。世界第2位のコーヒー焙煎会社の親会社であり、2011年には穀物の生産と輸出を手掛けるマルチグレインを子会社化している。さらに同社は、道路輸送のヴェロセ・ロジスティカの親会社で、サンパウロ州地下鉄4号線(黄色線)の事業認可会社の株主である。その外、同社が重視する分野としてエネルギー分野が挙げられる。同グループは、天然ガス・ディストリビューター7社の経営パートナーであり、ペトロブラスとも提携している。

2013年に三井物産は、岩塩層下(プレソルト)の石油探査鉱区権益入札に参加することを表明しており、これによりエネルギー分野で事業を拡大する意向。同社は、400億レアル規模の高速鉄道事業にもビジネスの照準を合わせている。矢部取締役は、「インタレストグループとしてコンソーシアムの1つに参加しているが、現在も、この事業の新しい条件について評価を進めており、その幾つかに関しては変更を求めている」と話す。

三井物産は、過去10年、世界各地で多角化を展開するとともに、日本経済の成長が緩やかなことで、国際戦略をさらに加速させ、商社という枠から完全に脱皮した。「かつては日本への依存が大きかったが、成長しようとすれば、それとともに、ブラジルも含めた別の市場に打って出て、リスクを負わなければならない」と、矢部取締役は話す。

同様の戦略を展開するのが、世界最大のガラスメーカーであるAGCだ。同社がグァラチンゲタ市(サンパウロ州)に建設中の国内最初の工場は、建設工事も大詰めを迎えている。ダビデ・カペリーノ社長によると、国内市場に対応するため、様々な国の従業員を集めた多国籍部隊の編成に投資する必要があったという。「このプロジェクトに対して弊社が組織した部署の従業員の国籍は、12か国にまたがる」と、自身もイタリア国籍の同社長はコメント。

10億レアルを投じた工場は、自動車業界と建設業界を主な需要家として製品を販売する。同社はまず、自動車業界の生産台数の14%、350万台分のガラスを供給可能な生産能力を確保する。さらに同社は、中期計画として、国際平均と同水準の、25%のシェアをブラジルで確保することを目標に掲げる。カペリーノ社長によると、「国内で消費されるガラスの35%が輸入されているが、これを弊社製品で置き換えようというのが狙いだ」。自動車業界に対して政府が国産化比率の引き上げを求める新制度を導入、この制度に対応した自動車の販売が拡大すると予想しており、同社は、事業のサステナビリティーに明るい見通しを持つ。

前述の上原氏は、「自動車メーカーが新工場に投資を進めることで、自動車部品業界にとっては参入に不可欠な保証を取り付ける格好になる」と指摘する。同氏によると、日本において自動車メーカーとサプライヤーがこれまで構築してきた信頼関係が、部品メーカーのブラジル進出に対して背中を押すことになると言う。

自動車販売台数で世界トップのトヨタは、進出こそ1958年と古参であるが、現在、ブラジル国内市場では9位に甘んじる。だが同社は、今後10年でブラジル国内市場においてもトップの一角を占めるという意欲的な計画を進めており、2012年に立ち上げた国内3拠点目となる工場もその計画の一環だ。

操業を開始したばかりのこの工場はソロカバ市(サンパウロ州)にあり、ここで、国内自動車市場の66%を占めるコンパクトカー・セグメントに参入すべく誕生したエティオスを製造している。同社によると、この判断は「適切な市場で適切な製品を適切な時期に投入する」という哲学によって下された。年間7万台のエティオスを製造するという6億ドルの投資により、同社は、インダイアトゥーバ市(サンパウロ州)の工場が年間7万台のカローラの製造能力を持つことと併せ、車両の製造能力を2倍に引き上げた。この外にも同社は、大サンパウロ圏サン・ベルナルド・ド・カンポ市に、自動車部品工場を保有している。

ブラジル人の嗜好をキャッチアップしようという試みには、ソニーも照準を合わせている。同社は1972年に進出しながら、ようやく最近になって、大きな成長を達成し始めたところだ。消費者により近づこうとする努力が実り、国別の売上ランキングで見たブラジル子会社の順位は、2009年から2011年にかけて、17位から4位に上昇。ブラジルは、米国と中国、日本に次ぐ市場に成長した。カルロス・パスコアル・マーケティング担当部長は、「この2年でブラジル国内の成長を2倍に加速させたが、短期的にこの数字をさらに2倍に引き上げるという、極めて意欲的な見通しを持っている」と言う。

ソニーは、昨年完了したマナウスの工場拡張も含め、サッカー・ワールドカップが開催される2014年までに、5億ドルの投資を予定する。役員らは2,000戸以上のブラジル人の家庭を訪問し、ブラジル人の習慣をつぶさに観察してきた。データベースをもとに同社は製品ラインナップを強化し、カメラとビデオ、その他の製品で、マーケットシェアを大きく伸ばした。

上原氏は、携帯電話に関して言えば、日系企業は遅参組だと指摘する。ソニーの場合、スマートフォン市場におけるシェアは4.5%で、韓国のサムスン(29%)と米アップル(22%)、さらに中国ファーウェイ(4.9%)の後塵を拝している。「市場が固まってきた際により良いポジションを確保することは、市場の成長期に合わせて事業を拡大する以上に困難を伴う。また、確保したポジションをこれ以上失わないようにすることは、大規模な投資を再開する以上に重要だ」。

日本企業による対ブラジル投資の新たな波は、従来とは異なる様相を呈している。国内企業の買収による進出が、これまで一般的だったグリーンフィールドによる進出と肩を並べるようになったのだ。日本の飲料メーカー最大手のキリン・ホールディングスによるスキンカリオルの買収事例が、それに当たる。63億レアル規模のこの買収は、日本企業が2011年にブラジルへ投下した投資総額の40%に相当する。だがブラジル・キリンは、キリン・ホールディングスにとって4番目の規模、かつ、短期的には極めて良好な成長が期待できる事業になった。しかも、買収前の会社組織において役員だった人材の大部分をつなぎとめるという、これまでの経営の流れを継続することにも努めている。

CCIJBが2012年に実施した調査によると、ブラジル子会社の成長に向けたプロジェクトを支援するため、日本の本社からブラジルに駐在した社員は、1,200人を数える。2006年当時、その人数は776人だった。駐在生活のハードルは、幾つかの法改正によっても低くなっている。2012年、両国で働いた就労期間を統合して年金受給のために加算できるよう社会保障協定が締結された。さらに商用マルチビサの有効期間が90日から3年に拡張された。

平田事務局長によると、両国間の物理的な距離も、ブラジルへの投資再開に日本の腰が重かった要因だ。だが、今後の2か国間関係の発展にとって障害になるようなものは、もはや、前途に見られない。同事務局長は、「官僚的な煩雑な手続きや、重い税負担、インフラの不備といった多くの問題をブラジルは抱えているが、一方で、豊富な天然資源、テロとは無縁な政治情勢、政策の一貫性、変動為替相場、抑制されたインフレという利点がある」と指摘する。(CARTA CAPITAL 744号インタビュー記事)

 

CARTA CAPITAL 誌に掲載された平田事務局長の写真 (Foto: Pedro Pressoto / Carta Capital)