「私は野党勢力が当選しなかったことに安堵している」
エコノミストのエドゥアルド・ジアネッチ氏インタビュー
エコノミストのエドゥアルド・ジアネッチ氏は、経済危機の原因を作った人物こそこれを解決すべきだという「正当な裁き」が下されたと受け止めている。
エコノミストのエドゥアルド・ジアネッチ氏は、2010年と2014年に大統領選に出馬し3位で敗れたマリーナ・シルバ候補のブレーンの1人として、過去2回の大統領選挙で、経済問題の議論の中心にいた。現在、我が国が取り組んでいる課題の中で、ジアネッチ氏はあらゆる連邦政府が直面することになる問題が2つあると言う。すなわち、会計問題と連立をベースにした大統領制だ。そこで政治情勢に目を向ければ、ジアネッチ氏は、ジウマ・ロウセフ大統領がリーダーシップを発揮できないままに任期を終えると確信している。「ジウマ政権の問題は、選挙期間中にキャンペーンで訴えてきた数々の嘘のメッキが、有権者の手で剥がされたことだ」と同氏は言う。以下は、エスタード紙によるインタビューの要約である。
エスタード 経済がいつまで政治的混乱に耐えられるでしょうか?
ジアネッチ 我々が現在、経済危機と政治危機の同時に発生しながら、これらが相互に悪影響を与え合う状況に立たされている。経済危機が連邦政府を弱体化して大統領の支持率を低下させているのだが、これは、政治情勢から見ると連邦政府を弱体化して権威を失墜させている。これと並行して、連邦政府に調整能力がなく権威も失われたことで、我が国の破綻回避に最低限必要となる短期的な経済政策の導入を難しくしている。
エスタード あなたは、破綻のリスクがあると受け止めているのでしょうか。
ジアネッチ 私は差し迫った破綻のリスクがあるとは受け止めていない。ブラジル国外は、不安定な状況にない。我が国は3,700億ドルの外貨準備高があるし、資本の引き揚げにも十分な保険が利く。経常収支においても赤字が減少中だ。差し迫った破綻のリスクはないものの、問題は、景気回復の予兆がどこを見回しても見当たらないことだ。
エスタード では、長期的展望が見いだせないことからくる影響とは?
ジアネッチ そうした状況下で私たちは、とても不安になり、経済問題の不透明さが高まる。今回の不況は、1994年の金融安定化以降で数えると、5度目のものだ。過去の4回には、次のような共通する特徴があった。すなわち、「短期的な景気後退」だ。2四半期から3四半期で不況を克服し、その後、経済は成長軌道に向かい始めた。5四半期から6四半期が経過すると、経済活動は、景気が曲がり角を迎えた当時の水準を既に上回っていたのだ。今回は、こうした状況とは異なる。我々が置かれているのは、全く別の特性を持ち、恒久的にも思える性格を持った不況なのだ。この不況は2014年第2四半期に、当時の我々がそれと知らない状況で鎌首をもたげ始め、その後は泥沼に向かってと進んでいる。とりわけ深刻なのは、回復の兆候が何ひとつ、見えていないということだ。
エスタード 長期的観点も踏まえ、短期的に、連邦政府にはどのような手立てがあるでしょうか?
ジアネッチ 連邦政府は、ブラジルに必要な対処を講じるだけの適正と能力がないことを、繰り返し示している。連邦政府が繰り出す素人丸出しで即興的な財政策に、私は、悪い意味で非常に感銘を受けている。驚くべきことに、財政操作と創造的会計のスタイルを繰り返すばかりなのだ。要するに、何かには取り組んでいるように見えて、その実、何もやっていないのだ。争奪戦ばかりで(支出の)拡大すらできない。だが、木を見て、しかも森も見る必要がある。木を見て森を見ない議論ばかりか、枝葉の問題に取り組んでいることもある。ここで我が国が克服すべき危機的状況は2つあり、それは、誰が政権を取ったとしても変わらないものだ。この2つの危機のいずれも、ジウマ政権で急激に悪化したとはいえ、彼女が政権を担当している間に産声を上げたとも言えないものだ。
エスタード その2つの危機とは、何でしょう?
ジアネッチ ひとつは、1988年に始まった財政拡張の完全な破綻だ。1988年の総税負担はGDP比24%だった。現在、我々はGDP比36%に相当する税金を負担している。中所得国にとっては普通の水準だろうが、現在の我が国の基準としては、完全に逸脱している。しかもこれは、ブラジルが抱える財政危機の最初のエレメントに過ぎない。我が国はさらに、GDP比8%の財政赤字を抱えている。税負担と財政赤字を足して欲しい。これでGDP比44%に達するのだ。ブラジル人労働者が生み出したあらゆる富が、毎年、その内の44%を公共部門に収めているのだよ。しかも、ブラジルという国家は、国民が最も必要とする基本的なニーズを満たしていない。ブラジルの財政は、根本的なところにバグがある。
エスタード こうした財政モデルは消耗しつくしたのでしょうか?
ジアネッチ 1988年以来、常に問題を解決しようとして、また新たに同じ手法で解決する。つまり、歳出の財源を確保できないなら納税者から搾り取るということだ。緊急を要する問題は、爆発的に拡大しようとする公債を最小限に抑えるのを担保できるように基礎的財政収支(プライマリーバランス)で黒字を計上する予算を編成することだが、そこにはブラジルが克服すべき構造的な問題がある。つまり、連邦政府にどれほどの規模と役割を求めるのかということだ。私は、財政を決定的に悪化させた原因が1988年に起きたこと、つまり新たな社会契約だったというエコノミストの意見には反対だ。私の判断では、社会契約はダメージを与えた要因のごく一部にすぎない。ここで言う社会契約を私は、農業部門の年金や統一保健システム(SUS)、家族手当(ボルサ・ファミリア)と理解している。これらの法的正当性に口を挟んでいるのではない。我々が述べている財政の深刻さというのは、そういう部分で説明される問題ではない。
エスタード ではどのように説明されるものなのでしょう?
ジアネッチ 家族手当はGDPの0.5%だ。小銭だよ。社会経済開発銀行(BNDES)の助成(ボルサ)は、家族向けの手当よりも大きい。助成的な融資によって国家が実業家に移転する補助金は、家族手当よりも大きいのだ。だがBNDESは、社会契約とは何の関わりもない。1988年からこの方、1,300もの市が新たに創出されたことも、同じく社会契約と全く関係がない。次から次に、公的機関と市議会を増殖させたことは、生活の質の向上につながっていないのだ。公共部門の社会保障は、極めていびつなものだが、それも社会契約ではない。つまり、新しい社会契約に基づく法的正当性の網の目をすり抜けたこのような出来事が、余りにも多いということなのだ。
エスタード では2つめの危機とは?
ジアネッチ これも同じく、長期的な問題。政治的代表機能の危機だ。連立をベースにした大統領制は、フェルナンド・エンリッケ(カルドーゾ)やルーラのようなリーダーシップという特段の能力の持ち主によって運用されるべきものであって、統率力という才能を持たない人物がその座に就くと崩壊する。ジウマは10の政党に対して39もの閣僚を与える大盤振る舞いだったが、それでも、これと引き換えのはずの支持を受けられなかった。我々はそこに、この統治手法、換言すれば権力と予算の一部を割譲する見返りに連邦政府が支援を得るというやり方が、完全に疲弊しきっているのを見て取る。
エスタード 社会契約に関しては、連邦政府は利害を調整しなければなりません。あなたは、企業と大衆が既得権を手放すことを厭わないとお考えでしょうか?
ジアネッチ ブラジルのように危機に直面する国は、将来的に誰にとっても恩恵を受けられそうだという可能性のもと、合意に至らざるを得ない。ブラジルは、短期的な損失に対して過剰反応するという問題を抱えている。どこかの時点で今を犠牲にして未来に恩恵を受けることを受け入れずにいられる、そんな進歩や改善のプロセスというものは存在しない。
エスタード こうした危機の時限爆弾は、2018年の選挙までに爆発するのか、それとも選挙まで持ちこたえるのか、どうでしょう?
ジアネッチ 折に触れ、これは共和制に移行後のブラジルが経験している最悪の危機ではないかと自問することがある。でもブラジルはコーロル政権下の2年間、ハイパーインフレと貯蓄の凍結、弾劾を経験した。今のところ、この種の破局は何も発生していない。そんなわけで、私は以下のように推論している。つまり危機というものは、それがまだ収束しない間はどうなるか想像もつかないために、いずれも最悪の危機だと言える、と。先が見えないことは、人々に多大な不快感と苦しみを与える。より大きな苦しみを与えるのは、出口が全く見えないことだ。なぜならそれは、経済危機と政治危機だけでなく、別の危機、つまりリーダーの不在を意味するからだ。では、弱体化した連邦政府が、この2つの課題を2018年までに組み伏せられるとお考えでしょうか?
ジアネッチ 情勢が目まぐるしく変化する状況では、この種の予測は難しい。私は今でも、ジウマ大統領が政権末期までリーダーシップを発揮できずに弱り切ったままというシナリオが、最も可能性の高いものと考えている。だが、この物語には大きな不確定要素がある。群衆の声、ラヴァ・ジャット作戦、民意を問わずに政権の座に就くチャンスをうかがっている政界の合従連衡などだ。
エスタード 前回の選挙で、野党候補はいずれも、財政調整が不可欠だと訴えていました。仮に野党が政権を取っていれば、状況は異なっていたでしょうか?
ジアネッチ 複雑な状況になっていただろう。正直に言うと、野党勢力が選挙で当選しなかったことに安堵の気持ちを覚えることがあるのは認める。新政権下で発生したのではないとブラジルの大衆に説明するのは、極めて困難な役目だろう。実際に始まっていた危機的状況を人為的に何もないと錯覚させ続け、新政権の発足にぶつけてくるのだから。私は、先の選挙について、原因を作った人物こそこれを解決すべきだという「正当な裁き」があったのだと受け止めている。
エスタード しかも、年明け時点から急速に状況が悪化しました。
ジアネッチ ルーラ政権下で陶酔感を味わった後の期待感の裏切られ方は、ブラジルの歴史上、類を見ない。その1つは、80年代的なものだ。我が国は当時、10年にわたって危機的状況に見舞われたが、今度はそれ以上に深刻だ。もう1つは逆に成功体験で、ブラジルは、ふさわしい国家モデルを見つけ出したと受け止められたが、突然、それが急速に崩壊したことに気付いた。歯車を逆回転させたようなもので、生活の質を向上させ始めた国民も含め、とても複雑な状況に立たされている。
エスタード 歯車が逆回転するターニング・ポイントは、選挙後にやって来たのでしょうか?
ジアネッチ 選挙運動のまっただ中という時点で状況は既に最悪だったが、ジョアン・サンターナのような悪魔が人の仮面をかぶったような悪辣な天才の助けを得て、連邦政府は完全雇用や所得の増大といった幻想を生み出し、貧民層の支持を得たのだ。極めて欺瞞に満ちた選挙キャンペーンを彼らは展開した。そしてジウマ政権が抱える問題のいくつかは、選挙期間中にキャンペーンで訴えてきた数々の嘘のメッキが、有権者の手で剥がされたことなのだよ。
エスタード あなたは、支持層が連邦政府を支える力になるとお考えでしょうか?
ジアネッチ 私は、労働者党(PT)にとって理想的なのは、ジウマ大統領が辞職することだと感じている。もちろん、ルーラのためにもね。そうすれば、彼らは野党に下って自分たちが種を蒔いた大混乱を収拾するという責任から逃れ、引き継いだ次の政権が困難に直面するのを桟敷席から気楽に眺めることができる。
エスタード では、その新政権というものはどういうものになるでしょうか?
ジアネッチ イタマール政権のように、財政問題と政治改革に対してより包括的に取り組むような良い意味での驚きのある、2018年までの一時的な政権になるだろう。
エスタード リーダーシップという点で、テーメル副大統領をどう見ますか?
ジアネッチ 憲法が命じることを履行しなければならない。憲法では、大統領が辞任すれば副大統領がその任につくと規定されている。それが法律だ。