2020年上期の業種別部会長シンポジウムに140人が参加して開催

2020年上期の業種別部会長シンポジウムは2020年3月5日午後1時から6時まで、新型コロナウイルスの影響にも関わらず、チボリホテルに140人が参加して開催。初めての試みであるテレコンファレンスに9人が参加して開催。

                            2020年上期の業種別部会長シンポジウムプログラム

テーマ:「2019年の回顧と2020年の展望」 副題:「ビジネス環境改善に期待、いま為すべきこと」
日時:   2020年3月5日(木曜日)
13時~18時 シンポジウム
18時~19時 懇親会(カクテルパーティー)               
会 場: ホテル チヴォリ・サンパウロ モファレッジ

業種別部会長シンポジウムの録画ビデオ並びにテープおこし記事は後日掲載

発表順序:

前半の司会: 讃井慎一(さぬい しんいち)総務委員長
開会挨拶      村田 俊典(むらた としふみ) 会頭
    
①   金融部会     東 邦彦(ひがし くにひこ)    部会長         (東京海上保険)
②   貿易部会     有村 俊一(ありむら しゅんいち)    副部会長    (島津製作所)
③   機械金属部会     山田 佳宏(やまだ よしひろ)    部会長     (三菱重工)
④   自動車部会     佐藤 修 (さとう しゅう)    部会長代理    (ホンダ)
⑤   コンサルタント部会      吉田 幸司(よしだ こうじ)    部会長     (KPMG)

xxxxxxxxx コーヒーブレイク (15分) xxxxxxxxxxxx    
後半の司会: 芦刈 宏司 (あしかり ひろし)企画戦略 副委員長

⑥   化学品部会      青木 宏文(あおき ひろふみ)    部会長    (住友化学)
⑦   電機・情報通信部会     小渕洋(おぶち ひろし)    部会長代理    (NEC)
⑧   食品部会      佐々木 達哉(ささき たつや)    部会長    (味の素)
⑨   運輸サービス部会      今安 毅(いまやす つよし)    副部会長     (JAL)
⑩   生活産業部会      今川尚彦(いまがわ なおひこ) 部会長 (戸田建設)

講評     野口 泰(のぐち やすし)総領事    在サンパウロ日本国総領事館
閉会の辞     讃井慎一(さぬい しんいち) 総務委員長      

左から後半司会の芦刈 宏司 企画戦略 副委員長/前半司会の讃井慎一総務委員長  

       開会挨拶の村田 俊典会頭

講評の野口 泰総領事

発表資料 : http://jp.camaradojapao.org.br/camara-em-acao/simposios/

シンポジウム収録ビデオ

1. 金融部会   
2. 貿易部会
3. 機械金属部会 
4. 自動車部会 
5. コンサルタント部会
6. 化学品部会  
7. 
電機・情報通信部会
8. 食品部会 
9. 運輸サービス部会  
10. 
生活産業部会

Fotos: Rubens Ito / CCIJB

2020年上期の業種別部会長シンポジウム

         3月5日開催の2020年上期の業種別部会長シンポジウムのPDF発表資料掲載

Pdf   金融部会   
Pdf   貿易部会    
Pdf   機械金属部会    
Pdf   自動車部会    
Pdf   コンサルタント部会
Pdf   化学品部会     
Pdf   電機・情報通信部会    
Pdf   食品部会     
Pdf   運輸サービス部会     
Pdf   生活産業部会

   Pdf  All Presentations

サイト記事: http://jp.camaradojapao.org.br/news/atividades-da-camara/?materia=20550

2020年上期の業種別部会長シンポジウムテープ起こし記事掲載

2020年上期の業種別部会長シンポジウム

テーマ:「2019年の回顧と2020年の展望」
副題:「ビジネス環境改善に期待、いま為すべきこと」

日時:   2020年3月5日(木曜日)

金融部会
東邦彦 部会長
皆さん、こんにちは。今年度金融部会長を務めておりますブラジル東京海上の東でございます。よろしくお願いいたします。本日はブラジルの経済動向、銀行業界動向、それから保険業界動向、それらにつきまして簡単にご説明をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
先程村田会頭からお話しがありました通りですね、私どもはこの1ヶ月間ぐらいかけて資料を準備して参ったんですけども、この1ヶ月間で劇的に経済動向、市場動向が変わっておりますので、必ずしもこの資料と足元の状況がですね、何と言いますか、ぴたっと一致していないといいますか、認識のずれがあるということをご了解いただければと思います。その都度、口頭にててですね、補足をさせていただきたいというふうに思っております。
まず冒頭のスライドでございますけれども、このスライドの左側で2019年のブラジル経済の振り返り、それから右側で2020年の見通しについてポイントをまとめております。それから右側で2020年の見通しについてポイントをまとめております。
2019年は2018年に続き、アルゼンチン危機や米中の通商問題等にブラジル国内も影響を受けまして、経済成長は鈍化しましたけれども、各種改革では年金改革の承認など重要な成果が上げました。今後の経済に期待が持てる年となったというふうに総括をしております。
一方、スライドの右側でございますけれども、2020年の見通しでございますが、先程から話題になっておりますコロナウィルスや、2020年に予定されている米国大統領選挙、それからブラジルは引き続き、こういったブラジル国内外のリスク要因にさらされている状況であります。
しかし一方で、ブラジル国内では税制改革や省庁再編などの各種改革案の進展や、それから歴史的低水準の政策金利が追い風になって、経済は、基調としましてはですね、好転するものと予想しております。
それでは、ここから具体的なケースを追いながらご説明させていただきます。
こちらのスライドは2012年以降の主要経済指標の推移と予測についてまとめております。特に表の右の方ですね、の2020年予想値を中心にご説明を申し上げます。
まずGDP成長率ですが、年金改革法案の承認や歴史的水準の金利が追い風となりまして、2020年は2.3%の成長と予想しています。これは中央銀行のFocusを使っていまして、直近ではなくてちょっと古いデータとなっていまして、現在の予想としてはだいたい下がってきているということをご了承ください。
2020年の前半は昨年と同程度の緩やかな成長となって、政権による追加の各種改革の実現可能性が明らかになる年度半ば以降ですね、に経済が回復してくるというふうに、まあ基調としては回復するというふうに考えております。
貿易収支につきましては、黒字幅は前年に続きまして縮小していくというふうに予想しています。
また、インフレ率ですけれども、基調としては景気回復局面にあるものの、まだ生産余力がありますので、3.25%のインフレというふうに予想しております。
政策金利は、インフレがターゲット内の水準で制御をできていますことから、中銀に政策金利を引き上げるインセンティブは低い。今後、コロナウィルスの状況を踏まえますとですね、より金融緩和の方向というのが強まるということを考えますと、低利で安定するというふうに考えております。
次のスライドはGDP成長率でございます。年金改革の承認や歴史的低水準の政策金利を背景に、2020年はブラジル経済が勢いを取り戻す年になると期待しております。
年金改革に加えまして、ブラジル国内の政治動向は過去数年に比べ安定しておりますし、経済政策を推進しやすい環境であるということもブラジル経済にとって追い風となると見ております。
次のスライドは経常収支でございます。貿易収支の黒字幅の縮小が予想されています事から、経常赤字が、まあ結果としまして、拡大していくというふうに見込んでおります。
こちらのスライドは基礎財政収支を示したものです。義務的経費が政府財政の負担となり、基礎財政収支は赤字となっております。しかし裁量支出の削減や、義務的経費の増加の抑制、これらを図る政策が見られますことから、赤字幅は減少傾向にあると見ていますが、財政赤字の状態は最低でも2021、このぐらいまでは続くと予想しております。
次のスライドは労働市場の状況を示した失業率の推移でございます。労働市場の改善は緩やかであり、経済も停滞している状況下、企業も従業員の長期雇用に関しては慎重な姿勢を見せております。この傾向は今後も継続すると予想しております。
こちらのスライドは消費者信頼感指数を示したものですけれども、スクリーンの方では見にくいかもしれませんけれども、濃い緑線で示されたグラフが消費者信頼感指数です。
各種改革案の進展、それから政策金利の切り下げと経済政策の結果により、消費者信頼感指数は改善しました。今後は雇用市場および個人貸付の回復により個人消費や経済活動が下支えされると見ております。あくまでも基調としてはということですね、見ております。
続きまして、ブラジルリスクの増減を表す指標である5年物のcredit default swap、それから対USドルのレアル為替相場の推移をご説明いたします。
為替相場につきましてはですね、ちょっとこちらのグラフはアップレートの状態になっちゃっているんですけれども、まあ方向性としましてはレアル安方面へ引き続き推移すると。それからブラジルのデフォルトリスクですけれども、こちらに関しましては依然として低い状況であるというふうに認識しています。CDSのスプレッドは右肩下がりで下がっているということで、これは現在の経済政策がですね、正しい方向に進んでいることを反映しているというふうに評価をしています。
次にサンパウロ証券取引所の株価指数の推移です。Bovespaの指数は2016年のジルマ大統領の弾劾訴追以降上昇傾向にありまして、2016年以降に実施された経済政策の結果を反映していると言えると思います。
インフレ率ですね。物価等を含む経済指標は引き続きブラジルが緩やかなインフレ状況下にあることを示しており、サービス業のインフレ率等は引き続き問題ない水準であります。2020年、2021年につきましても、現在のインフレターゲットである4%を下回る水準と予想しております。
政策金利ですね。ブラジル経済の本格的な回復はしばらく先になるというふうに予想していますが、引き続きドル=レアルはレアル安方向、インフレ率に関しては低位な水準で安定に推移していくことが見込まれます。これによりブラジル中銀は金融緩和を長期にわたって維持するというふうに予想しております。
次のスライドはブラジル中銀が発表する外国直接投資の推移です。ブラジルの資金需要、相互の外国直接投資が流入し続けておりますので、今後数年間この傾向が続くというふうに予想しております。また、民営化等ブラジル国内のビジネス環境が改善している中で、外国直接投資は増加傾向にあるというふうに見込まれています。
さて、次のスライドでは金融部会所属の各金融機関にご回答をいただきました2020年、2021年の予測数値について、予測最大値と最小値というレンジで表記をさせていただいております。あわせまして、Focusと呼ばれる100以上の金融機関の予測をブラジル中銀がまとめた市場トレンドにつきましてもご参考までに表示しております。
先程も申し上げましたけども、予測数値につきましては2月中旬以降の世界的な金融マーケットの混乱を織り込む前の数値でありますので、いまだ沈静化しない環境や全世界的な金利引き下げを勘案しますと、今後ブラジルにおいても各種数値の見直しが避けられないものと考えています。
まずGDP成長率でございますけれども、2020年が2.2~2.5、2021年が2.4~3.5と、この時点のFocus同様、各行とも緩やかな成長の継続を見込んでいます。
インフレ率は、2020年が3.1~4.3、2021年が3.5~3.75%と、おおむね政府が定めるインフレターゲットを下回るレンジの中に収まるものとみております。
為替レートは2020年が4~4.1レアル、2021年が3.9~4.07レアルと、このアンケート時点ではそういう予測をしておりました。この足元の状況の変化を踏まえますとですね、為替レートにつきましては予断を許さない状況にあるというふうに認識しております。
それから年末の政策金利ですけれども、2020年は4~4.25、2021年は4.25~6.5と、緩やかに金融引き締め局面に向かっているものと予測しておりますが、これも、足元の金融緩和の継続が見込まれるという状況を踏まえますと、不透明感が出てくるというふうに言えるかと思います。
続きまして、次のスライドをご覧ください。このスライドは金融部会の各金融機関の今後の見方についてコメントをサマリーしたものでございます。
まず1項目目。ブラジルにおけるビジネス環境改善のために2020年最も期待することは何か、という問いに対する回答でござります。
まずは構造改革の実行ということで、税制改革、政府および公有企業の民営化、公務員セクターの改革、これらをどこまで具体的に前に進めることができるかがポイントとなります。かかる取り組みを着実に実行に移すことを通じて、内外マーケットの信頼を勝ち取り、低インフレ、安定的な低金利環境を構築するとともに、本格的な個人消費の回復や企業の投資活動の活発化へつながるものと考えております。
次の項目ですけれども、2020年にブラジル経済に影響を与える外的要因は何か、またどのような影響かという問いかけです。
コロナウィルスの拡大をはじめとしまして、アメリカ大統領選挙、それから中東情勢等の問題を背景に世界経済の見通しが急速に不透明になってきております。実際に足元の経済成長の速度が減速しております。国際社会の不透明な状況は2020年以降も続くことが想定されています。かかるリスクが顕在化した場合には、ブラジルへの影響も避けられないというふうに考えます。
個別国で申し上げますと、貿易、直接投資ともにきわめて重要な役割を担う中国の動向は、今般のコロナウィルスの影響、それから米中貿易戦争の動向等引き続き注視が必要と考えています。
また、アルゼンチンをはじめとする中南米諸国の左派政権の先鋭化は隣国で関係の深いブラジルにも相応の影響が出る可能性があると思われます。
一方でEUとの関係においてはメルコスルとのFTAによりブラジルをはじめとする南米4カ国の経済を押し上げるプラスの要因になるものと思われます。
最後の項目は、かかる変化に適応するために、日系企業あるいは日系金融機関としてどのような準備、戦略が必要かという問いかけであります。
主な準備、戦略は以下2点というふうに考えています。
ひとつは、ブラジルへの投資タイミングを逃さないために、本社経営陣との密なブラジル関連の情報の共有、戦略策定。ブラジルは昨年の年金法改正、それから税制改正等ですね、各種の改革に本格的に取り組む姿勢が続いておりますので、改革を着実に実現していくことができれば、短期的には市場の信頼を得て、経済環境が安定次第、本格的な景気回復へ移行することが期待できますので、中長期的にはインフラ等への資金が適切に配分されることで潜在成長率が引き上がっていくと。持続可能かつ力強い発展につながるものと考えます。
そのようなブラジルの成長可能性、景気回復動向に注視し、為替の変動も踏まえつつ、潮目が変わった際には迅速かつ集中的に人、モノ、金といった資源を投下できるように準備し、投資戦略を本社とともに描いていくことが重要かと思います。また、中国、欧米企業もブラジルを注視していますので、先を越されないためにも迅速に動けるよう準備が重要であると考えています。
二つ目ですね。三つ目のポチになりますけども、ビジネス環境悪化に備えた社内体制のスリム化によるコスト構造改革です。
一つ目でお伝えしました通り、ブラジルの景気改善の可能性はあるのか、ブラジルを含む世界経済が極めて不透明な状況が続いておりますので、通常時においては引き続き筋肉質な組織体制を築いていくことが重要な準備、選択となっております。
私ども金融機関としましては、適宜適切にお客様のお役にたてるように世の中の変化を注視すること、それとともに、安定的な資金の供給、的確な金融商品の提案、サービスのご提供、情報発信に努めていくことが必要と考えております。
ブラジル経済動向の説明につきましてはこちらで終わらせていただきます。続きまして2019年の銀行業界の動きについてご説明いたします。
最初に貸出残高の推移でございます。2011年以降毎年二桁ベースで増加していた融資残高合計が、2015年には6.7%と一桁の伸びとなり、2016年以降はマイナスになっております。2018年以降にやっとプラスに転じているという状況であります。
2019年の貸出状況ですが、個人向けの貸出は堅調に増加、11.7%の増加で、一方で昨年に引き続き、景気の本格的な回復は依然として不透明であり、法人向けの貸出は微増という結果になりました。
内訳を見ますと、農業、それからサービス業は好調であったんですが、鉱工業で大きく減少しているという状況にあります。
2020年は個人向け貸出のみならず、法人向けの貸出も回復に転じて、金利の低下にも助けられ、貸出は緩やかながらも回復基調になると予想しております。
こちらのスライドは業界全体における平均貸出利鞘となります。2017年以降は政策金利の引き下げ、それから金融機関による審査の厳格化、クレジットポートフォリオの改善等、これらを背景にしまして、貸出の利鞘は縮小しているという状況になります。
次は不良債権比率になります。2015年以降、景気低迷による企業の資金繰り悪化等の影響を受けまして延滞債権が増加していましたが、2017年6月以降は景況感の回復に伴い企業業績も改善に向かい、法人向け、それから個人向け、特に不良債権比率は改善傾向にあります。不良債権比率の低下により、金融機関の貸し出し余力が出てきておりますので、各行とも積極的な融資スタンスを示し始めているということから、2020年は本格的にクレジットの回復が期待されております。
引き続きまして、2019年保険市場の動向につきましてご説明をさせていただきます。
まず保険料収入ですが、ブラジルの保険監督庁でありますSUSEPの統計データによりますと、2016年の1.5%を底にしまして、2017年は4.2%、2018年が6.6%、2019年は少し下がりまして4.8%。少し下がりましたが、まあ成長トレンドが続いているということが見て取れるかと思います。
続きまして保険種目別の保険料収入でありますが、生命保険分野、こちらではこのグレーのところでございますけれども、10%を上回る高い成長を維持しています。生命保険へのニーズが高まっている事、また銀行セクターにおける個人融資の回復に伴い、団体信用保険等の保険が伸びていることが主な要因と考えられます。
また、2018年はプラス成長を記録した自動車保険は、2019年はマイナス成長に転じております。これはちょっと事情がございまして、強制保険であるDPVATという保険がございますが、こちらの保険料率、これは政府が決めることになっていますけれども、政府が決める料率が引き下げられたこと、それから市場の競争激化。それから代替市場ですね、公債市場等の保険代替市場への流出等の減少が2019年は見かけられました。
次のスライドは保険種目別の損害率のデータでございます。損害率と申し上げますのは、保険料に対していくらの保険金をお支払いしたかという比率でございますが、全体では損害率は45.4%と、昨年対比で0.6ポイントの悪化となりました。
自動車保険、マリン、具体的には貨物保険ですね、では治安状況の改善による盗難事故の減少が寄与しまして、損害率は改善したんですけれども、火災、新種その他の保険ではですね、年初の大雨や大規模災害により悪化したということです。ちなみに2020年は年初から大雨が降っていますので、今年は火災・新種につきましてはかなり損害率の悪化が今見込まれております。
最後のスライドでございますが、主な保険市場の成長見通しについてご説明いたします。
2020年のブラジル保険市場の成長見通しは、損害保険、生命、傷害保険ともに引き続き高い成長が予想されています。ブラジルにおける保険の普及率は日本や欧米と比べますとかなり低い状況にございます。これが中長期的には、経済回復に伴う企業投資や中間所得者階層、ここが厚くなりますと保険商品に対するニーズは高まって来るというふうに思っています。
最後になりますが、ブラジル経済は循環的な回復基調にあるものの、引き続き先行きに不透明感があり、かつ変化の絶え間ない環境ではございますので、難しい局面に直面するリスクは常にあると認識しております。かような環境ではございますが、ブラジルの金融セクターの健全性はブラジルの強みのひとつと考えておりますので、私ども金融機関といたしましては目先の環境変化に右往左往することなく、お客様の事業の発展を一貫してご支援させていただくべく、不断の努力を行って参りたいと考えております。
ご清聴ありがとうございました。

司会
はい、ありがとうございました。皆様よろしければ、ご質問のある方挙手いただけますでしょうか。よろしいですか。お願いします。

発言者
保険市場についてなんですけども、生命保険の伸び率が高いというところですが、例えば日本と比べて生命保険に入っていらっしゃる加入者の割合だとか、それから伸び率が高いのは、まあA層、B層、C層とか色々あると思いますけども、どの辺が伸びているか、これから成長の余地がまだまだあるのか、それともどうなのか、このあたりが分かれば教えていただきたいと思います。

東部会長
はい。すみません、ちょっと生命保険に関してはですね、今覚えていないんですけれども、例えば自動車保険で申し上げますと、日本での自動車保険の加入率が7割から8割ぐらいに対して、ブラジルでの自動車保険の普及率が大体3割でございます。ですので、街の中で車とぶつかったと、まず7割の確率で保険に入っていないとお考えください。
保険の普及率なんですけれども、元々保険といいますのは中間所得層ですね、に一番ニーズがあるというふうに言われております。お金のある人はですね、あまり保険に入る必要がない、お金がない人はですね、保険に入れないということでですね、中間所得層が厚くなれば厚くなるほど保険の普及率が高まると考えられておりますので、そういう意味でブラジルもその中間所得層が厚くなっていけばですね、この今の3割という保険の普及率がですね、5割、6割、7割というふうに上がっていくものと期待しております。

発言者
分かりやすい説明をありがとうございました。

発言者
マイクを渡されましたので質問させていただきます。もし分かったらということなんですけども、ちょっとコロナウィルスの影響がやはり関心がありましてですね、カーニバルの時まではですね、株価とブラジルの通貨レアルが同時におそらく安くなってきたトレンドだったと思うんですけども、今日ちょっと株価下がっていますけども、そのあとレアルは引き続き安くなっていて、株はかなり戻してきているという、金利が下がるという観測があると思うんですけども、他にこの乖離している、トレンドがちょっと変わったんじゃないかなと思っていて、この辺の要因についてもし分かれば、もしその5年物のCDSですか、これのトレンド何か変化があればですね、ちょっと教えていただければと思います。

讃井副部会長
みずほ銀行の讃井です。本年度の金融部会の副部会長を仰せつかっています。非常に鋭いご質問だと思うんですけども、ブラジルの株式の外国人の比率というのは大体20%から30%ぐらいだと言われておりまして、そういったなかで基本的に株価を動かしているのはブラジルの中の方というのが大きいのかなという、その中で不動産であったり預金であったりという中でお金が動いているというのが一つの流れだと思います。それとあとは、直接リンクするかどうか、ブラジルの金利が非常に低下してきているところでございまして、これ外国から見ると高金利通貨であると、10数パーセント利回りがあったという、非常に魅力的だった、そういった要因がひとつ剥落してございますので、こういった要因でまあレアルが売られているということかと思いますので、その力加減といいますか、方向性に踊らされているということなんじゃないかなというふうに思います。以後ですね、こういったコロナウィルスの影響は、織り込めない、まだ分からないというのが実際のトレンドだということです。例えば、先だってFRBが0.5%利下げをしましたけども、これが必ずしも良い方向に効いたわけではないというこういった事情もございますので、まずはちょっと様子見なんじゃないかというのが大勢の考え方じゃないかなというふうに承知してございます。

司会
よろしいでしょうか。それでは東部会長たいへんありがとうございました。

貿易部会
有村俊一 副部会長
こんにちは。貿易部会副部会長の島津製作所の有村と申します。よろしくお願いします。本日、伊藤忠の猪股部会長は出張中ということで、代行でやらせていただきます。私自身は昨年7月に赴任しまして、色々不慣れな点はございますが、何卒よろしくお願いします。では始めます。
2019年の回顧と2020年の展望ということでまとめさせていただきます。
まず貿易額の推移です。グラフをご覧いただきますと、これが半期ごとの貿易額の推移を示したものでございます。左側の青色の棒グラフが輸出額、右側の緑色の棒グラフが輸入額、折れ線グラフは貿易収支を表しています。また、赤の横線ですね、貿易収支の黒字額を示しています。
2019年の貿易額ですが、輸出入ともに通年で2017年は上回った形ですけれども、2018年は下回る結果となりました。貿易黒字に関しましては、2017年をピークに減少傾向にあります。これはブラジル国内の景気回復も一因かというふうに思っております。輸出入額の内訳につきましては、また後ほど紹介いたします。
為替に関しましてですが、これは先程までと大分重複する部分があるんですけども、2018年の通年平均、これは終値ベースですけれども、これは3.68レアル。2019年の通年平均は3.85レアルとなっております。2019年はじめは3.7レアル台から始まり、3.6から4.2レアル台を推移したということ。今年は、元々3.7レアル台と見られていましたけども、直近では4.6超えているということで、今後の動向を注視していく必要があるというふうに思います。
次のスライドではですね、輸出入について前年と比べながら説明いたします。
2019年の輸出動向です。まず合計ですね。表右下の対前年増減率、金額ベースでマイナス6.4%、数量でマイナス5.3%となっております。この表では、輸出商品を一次産品、半製品、工業製品の三つに大別しています。それぞれの輸出額の構成比としましては、一次産品が約半分以上、52%を占めていますので、一次産品の国際市況に大きな影響を受けがちな構造が続いているという状況です。
増減が目立つ部分としましては、一次産品で、もっとも金額も大きい大豆です。金額ベースでマイナス21%、数量ベースでマイナス11%。大豆の内訳に触れますと、輸出量の約8割が中国向けです。18年は大きく伸ばしましたが、19年は17年レベルに戻ってきているという状況です。
これは米中貿易摩擦の影響を受けておりまして、18年は中国が大豆の関税を引き下げたことによりまして米国産の輸入が減り、そこにブラジル大豆が輸出が増加しました。19年は中国が一部の大豆に関しまして関税なしの輸入を認める措置を導入したことによりまして、アメリカ産の輸入回復、ブラジル産の輸入量が押し下げられたと。
また、アフリカ豚熱、豚コレラのことですが、これが流行した結果、豚の飼料用の大豆の輸出自体が急減したということも減少の要因になっています。
また、トウモロコシが大きく伸ばしております。金額ベースでプラス87.4%、数量でプラス88.5%となっております。なおこのトウモロコシの輸出先1位は金額ベースで日本となっております。後ほど対日貿易のスライドで触れたいと思います。
また鉄鉱石も、金額がプラス9.7、数量でマイナス12.6という結果が出ております。
半製品の中でいきますと、粗糖が金額でマイナス16.2、数量でマイナス11.6。鉄鋼半製品が金額でマイナス16.9、数量でマイナス5.8%という結果です。この鉄鋼半製品、この金額と数量の乖離というのは、Valeの事故後市場価格が上昇したためのようです。
工業製品ですけれども、乗用車が金額でマイナス26.4、数量でマイナス30.6。燃料油が金額でプラス7.1、数量でプラス16.8という結果になっております。
続きまして輸出の相手先国別について説明いたします。左の表が輸出額上位10ヶ国、右側が国別の構成比を表しております。
1位の中国は2018年と比べ大きな変化はなくマイナス1.7%。2位のアメリカもプラス3%という状況です。一方減少が目立っていますのは、3位のオランダ、マイナス22.8、4位のアルゼンチン、マイナス34.8、チリ、マイナス19.5。対日輸出額はプラス25.2で5位。対日に関しましては後ほどまた説明いたします。
続きまして輸入です。輸入動向を主要商品別にご説明いたします。まず合計ですけれども、表の右下ですね。対前年増減比ということでは、金額でマイナス2.1、数量でプラス1.2%となっております。前年に引き続きまして、金額構成は工業製品が約8割以上を占めているという状況です。
一次産品では天然ガスが金額でマイナス15.8、数量でマイナス17.4。半製品の中でいきますと、銅版が金額でマイナス20.4、数量でマイナス12.9。工業製品の中では自動車部品が金額でマイナス21.6、数量で17.0と、この辺が大きく増減したというような状況でございます。
続きまして輸入の主要相手国です。同じように画面左側が上位10ヶ国、右側が国別の構成比を表しております。中国は輸出に続いて1位でプラス1.6%、2位も米国でプラス3.9%。一方日本はマイナス6%で9位という状況になっております。これも同じように対日貿易の中で詳細を説明させていただきます。
次が日本との貿易状況になっております。左側、輸出、これがブラジルから日本への輸出です。輸出額合計では前年比プラス19%という状況。中でも先程も申し上げましたようにトウモロコシが急激に増加しております。伸び率では2729%という状況になっております。ブラジル産トウモロコシはですね、18年から19年の収穫量が大幅に伸びております。また米国産の収穫が4年ぶりの低水準といわれるぐらい減少したこと、またやはりレアル安等の要因で輸出量が全体で大きく伸びた結果となっております。
日本でもアメリカ産の輸入は減少し、その代わりにブラジル産が増加したものと見られます。
他に輸出額の増減に目を向けていきますと、上の方から、鉄鉱石、マイナス10.3%、鶏肉、プラス13.3%、大豆、マイナス17.3、大豆かす、プラス69.7といったものが挙げられます。
一方輸入ですけれども、右側の表ですね、日本からの輸入でございます。合計で行きますと前年比マイナス6%です。増減の目立つ品目でいきますと、やはり自動車部品、マイナス25.2%。金額的にも大きな比重を占めておりますので、大きな減少になっております。あと化学品原料化合物はプラス36.8%、エンジン用部品がマイナス22.3%、といったような状況になっております。
続きましてブラジルへの直接投資についてご説明いたします。画面左側のグラフが2011年からの直接投資推移、投資額の推移ですね。19年は下期で大きく伸びまして、17年以降3年連続で前年を上回っております。
右の表は上位10ヶ国のランキングです。1位はアメリカで、前年比プラス41.2%。去年1位のオランダが2位に下がりまして、前年比でマイナス32.7%。ほかに伸び率が大きいところでいきますと、チリ、プラス268%、ケイマン諸島、プラス57.2%、英国、フランス等となっております。日本は10位でプラス74.2%という状況になっております。
続きまして、ブラジルへの投資額を業種別に示したものです。右下、全業種の合計で見ますと、前年比で6%の増となっております。増減が目立つ業種でみてみますと、一次産品の中では石油・天然ガス・採掘、これがプラスの89.1%。数字自体は小さいものですけれども、農水産業がプラス377.5%と増えております。工業品は全般的に減っていますが、自動車・トレーラー・車体がマイナス44.6、化学製品がマイナス61.4%。サービス業の中では電気・ガスがプラス99・8%、運送業がプラス167.4%という伸びを見せているようです。 
次は日本からブラジルへの直接投資金額の推移を見てみます。14年以降は減少傾向にあったのですが、17年で底を打ち、18年は前年の2倍以上の回復、19年も引き続き投資額が増加しております。ブラジル経済省の発表によるレポートによりますと、第3四半期時点でのデータになるんですけれども、半分以上は工業分野での投資ということになっております。その他、金融サービス、運送業、不動産業への投資がみられます。
工業分野の中では、自動車、二輪関係。また農業関係と。そういったところについて、1年前に大きな投資を発表して話題となりましたソフトバンクの投資がこの数字に含まれているものというふうに思われます。
ここで2019年の回顧となります。このデータは、先程からも出ていてます通り、約2週間前のデータをベースにこの2019年の回顧、2020年の展望を挙げておりますので、いくつかデータのアップデートをさせていただいております。
2019年のGDP成長率ですね。先程からもいろいろ説明ありますけれども、年初は新政権による経済改革への期待があり、中銀アナリストのアンケートによれば、市場は2.51%のGDP成長率を予測していました。その後年金改革の難航など、徐々に予測値が下方修正され、8月にはプラス0.8まで下げた。その後10月の年金改革法成立から改善に向かい、今年の1月3日のアンケート時点では1.17%のプラスということだったんですけども、先日、3月2日ですね、IBGE、ブラジル地理統計院が発表したところによりますと、2019年のGDP成長率の確定値は1.1%のプラスという結果が出ております。
続きまして為替ですけれども、これも年金改革の進捗、米中関係などの影響を受けつつ、上期は1ドル=3.7レアル~4.1レアルのレンジで変動。下期になりますと、10月の年金改革法成立などのレアル高要因があったものの、米中関係の悪化などによる世界的なリスクオフ傾向でレアル安が進み、11月には1ドル=4.25レアルの水準、で足元では、コロナウィルスの影響かと思われますけども、4.6まで軟化しているというような状況になっております。
政策金利に関しましても、年初の6.5から年末の4,5、足元4.25の史上最低レベルまで切り下げております。これで打ち止めかというような情報もありましたけども、先日の米国の利下げもありましたのもあり、またさらなる利下げが予想されているというような状況でございます。
レアルが軟化してきていますのとは対照的に、主要株価指数でありますBovespa指数ですね、これ年金改正の難航といった国内要因、米中関係の悪化やアルゼンチン、チリの政情不安といった国外要因により、短期的な下落はあったものの、堅実なパフォーマンスを示し、32%上昇した11万ポイント台の史上最高値圏まで達しております。
株価と為替のパフォーマンス乖離の原因としましては、リスクオフ傾向で売り増した海外投資家に対して、ブラジル国内の投資家が財政改革の進展やブラジル中銀による利下げを受けまして、積極的にブラジル株式を買い占めたことが挙げられるのではないかと思っております。また、現在、世界的な株価下落の影響もあるかと思いますけども、10万5000ポイント台まで下がっているという状況でございます。
一方で、経済状態が悪化した隣国アルゼンチンへの輸出の減少、これがブラジル経済にも多大な影響を与えている事件だというふうに思われます。
2020年の展望でございます。ブラジル国内はですね、昨年は政府の年金改革法の成立に続き、今年は財政改革と民営化も加速されるという方針で、ファンダメンタルのさらなる改善が期待されるところかと思います。
失業率は11%。これは昨年10月-12月の3ヶ月平均ですけども、という、水準としては依然として高いものの、緩やかに改善してきておりまして、適度なインフレや史上最低水準の政策金利の下、国内は経済成長が期待できる環境にあると言えそうです。
なお、今年はですね、全国の市長、市議会議員を選出する地方選挙の年です。結果は、財政改革を含めた国政の動きが中期的に継続していくのかを占う上で重要となります。また昨年6月に政治合意に達したEUメルコスール通商協定ですが、これから正式に締結した上で加盟各国の批准手続きが必要で、実際に発効するまでには数年かかるとも言われますが、スムーズに進んでいくかにこれも要注目ということです。
またブラジルのOECD加盟に向けた動きに関しましても、中期的な成長に寄与するものいうふうに思われます。
一方で国外を見ますと、新型コロナウィルスがもたらす世界経済への影響が大きな不透明要因となっております。このほか、米中関係、米国の大統領選挙、英国のEU離脱、イランをはじめ中東情勢など、世界情勢が不透明感が高まっている状況です。アルゼンチンをはじめ、政治情勢が安定しない周辺諸国の動向も目が離せない状況となっています。
これらの状況下で、2020年GDP成長率の予想ですけれども、直近の2月末の中銀アンケートによりますと、2.17。まあ皆さんご存知のようにこれもどんどん下方修正されていっているような状況かと思います。
為替レートに関しましても、このスライド、2週間前ですが4レアル前半と予想してますけれども、すでに4.6という状況で、これに関してはちょっと何とも言えない状況で、注視していくしかないかなというふうに思います。
貿易部会としましてはですね、引き続きリスクを見極めながらビジネスを着実に成長させていきたいと思っております。
最後のページ、貿易部会のメンバー企業からのアンケートをまとめたものでございます。だいたいここら辺を網羅した内容にはなっているかと思います。
以上、貿易部会の発表を終わらせていただきます。ありがとうございます。

司会
ありがとうございました。ご質問のある方、挙手をお願いいたします。

発言者
では私から。貿易部会、メンバーは商社の方も多いと思うんですけども、いろんな議論がおありだったと思うんですけども、まあ為替だったりEPAだったりと、いろいろ議論された中で一番のトピックというか、悩みというか、これで盛り上がったという、こういった情報があれば教えていただきたいと思います。

有村副部会長
2週間前、1カ月ぐらい前でしたか、当時からコロナウィルスの影響、どうなのかというのは出ておりまして、発表までにいろいろ状況が変わっているだろうという見込みがありつつ議論した、そこが一番大きかった内容。あとは、今後のブラジル国内でいきますと、地方選挙ですね、いろいろ、税制改革いろいろ取り組んでおりますけども、やはりこの選挙の結果次第というところもある、州で市でということでいろいろ含まれておりますので、選挙の動向はやはり大きな、動向を占うことになるのかなという。

発言者
ありがとうございました。ご資料の中で、為替レートが、4前半を中心にと、こういう外れたのがすごいなと思ったところなんですけども。

有村副部会長
2週間前ですので。

発言者
たいへんありがとうございました。

機械金属部会
山田佳宏 部会長
皆さんこんにちは。ブラジル三菱重工の山田でございます。機械金属部会長を務めさせていただいております。私どもの部会は非常に多くの事業分野に携わっております。機械および金属に関連するメーカー、それから商社の方々を中心としたメンバーで構成されております。
本年時点で51社の皆さんに主要部会メンバーとして登録をしていただいております。今回のシンポジウムにあたりまして、事前に各社の状況に応じてレポートをまとめていただき、また本年2月の6日にはですね、部会を開催して、議論を行っております。レポートを提出いただいた会社の事業・製品分野を一覧にしたものが今ご覧頂いているスライドです。ご覧いだだきましてお分かりの通り、非常に分野が多岐にわたっております。インフラ全般の会社から小口の製品の会社まで非常に多いんですけれども、いずれもブラジルの製造業を足元から支える役割を担っておられる会社です。それでは内容について発表させていただきます。
発表の構成としましては、まず当部会の事業環境に関係するマクロの指標を説明させていただきます。続きましてセグメントごとに、鉄鋼以下、6つのセグメントの状況を説明させていただきます。基本的には昨年8月のシンポジウムと同じまとめをしております。最後に副題であります、ビジネス環境改善に期待、いま為すべきことということで、部会メンバーの意見を紹介させていただきます。
それではマクロ指標ということで、最初はブラジルの工業生産の状況をグラフにまとめたものです。これはブラジル地理統計院の資料でございます。2016年から2019年までの状況を示しておりまして、2019年の前半までは、前回ご説明した通りですね。
2019年の後半の市況を見ますと、基本的には対前年比でマイナス基調でありまして、鉱工業生産は増加傾向には転じていません。しかしながら、当部会の所属企業の景況感は昨年の後半から若干改善しております。この点は後ほど申し上げます。
次は土木建設指数を示したグラフです。これもブラジル地理統計院の資料でございます。2012年を100としてその後の推移を線で示しております。上のグラフが月別の指数なんですけども、非常に季節ごとのサイクルがあって、傾向が読み取りにくいという、これは毎回のことなんですけれども、一応2019年の後半の状況を見ますと、若干上向き加減になっているのかなという感じもしなくはないんですけれども、ちょっと分かりにくいので、下の方でですね、これ1年単位に指数を合計してみますと、何となく緩やかにですね、2017年から回復傾向にあるのかなというふうに見て取れると思います。
それではここからセグメント別の状況をご説明させていただきます。最初が鉄鋼でございます。ブラジル鉄鋼協会がまとめている数字を使っております。
まず左上のグラフです。これが2015年から2019年までの年間の粗鋼生産の推移を示しております。この右側に、ちょっと数字が小さくて恐縮ですけども、2019年の粗鋼生産、それから国内販売、輸出の前年との対比を示しております。これを基に状況についてご説明いたします。
まず左側の粗鋼生産量ですけども、ご覧頂いて分かります通り、2016年に底を打った後にですね、2018年までは対前年で増加をいたしました。しかしながら2019年の粗鋼生産量は、去年の初めの鉱滓ダムの決壊以降にですね、鉄鉱石の供給が不安定になったこと、その他の事情で、対前年比でマイナス4%というふうになっております。
次に国内需要ですけれども、内需を示します国内の鋼材見掛消費量、これは粗鋼生産に輸入を加えて輸出を差し引いたものですが、この鋼材見掛消費量は年初の見通しは前年比プラス9%だったんですけれども、それを大幅に下回る対前年比マイナス2.7%となりました。これは国内系税の不振が主な要因であります。
また輸出は対前年比でマイナス8.1%の減少となっております。これは世界経済の停滞、それから国際市場の大幅下落等の中で、中南米それからEU向けが大きく減少したためでございます。
2020年の展望ですけれども、ブラジル鉄鋼協会は2020年の粗鋼生産見通しを対前年比でプラス5.3%、それから鋼材の見掛消費量の見通しをプラス5.2%というふうに発表しております。これはブラジルのGDP成長率の見通しの改善、それから金利、インフレ等の安定化を背景としております。
一方で、米中貿易問題の今後の行く末ですとか、新型コロナウィルスがブラジル、南米経済に与える影響も注視する必要があるというふうに見ております。
続いて電力です。こちらはエネルギー研究公社の資料であります。左側の棒グラフが2012年から昨年までの電力消費量の推移、それからこちら側のグラフが2018年と19年のそれぞれの電力消費の用途別の内訳を示しております。これを見ますと、ブラジルの電力消費の最近のピークは、2010年、そして2018年にはそれと同レベルまで回復しております。2019年は2018年の実績をさらに上回っております。ただ、これはですね、電力消費量全体の話でありまして、この右側の内訳を見ていただきますと、住宅用と商業用の需要の増加が全体の伸びを引っ張った形になっておりまして、産業用は対前年を下回っております。
このような中で、電力のオークションは風力、太陽光の影響であいかわらずの安値となっております。
続きまして2020年の展望ですけれども、当部会の関連企業が関係しますバイオマス関連の動きは引き続き低調というふうに見込まれています。このため既存プラントのアフターサービスの拡大に注力しておられます。
次に建設機械に関してであります。これは先程の建設指数と同様にですね、まず左側に建設機械の生産実績を月別に示しております。建設機械の生産はこれを見ていただいてお分かりの通り、月別の変動が激しいので、先程と同様にですね、月別の指数を一年間合計したものを右に示しました。これを見ますとですね、2017年以降生産は回復傾向にあるいうふうに見て取れると思います。
このような中で、2019年の建設機械の国内販売は対前年比28%、1万300台と、年初の予想の3%を大きく上回っております。これは建設関連の需要が底堅い回復を示したこと、それからレンタル向けが好調であったことや、官公需向けの減少がわずかであったということであります。
輸出ですけれども、アルゼンチン向けが低調であった一方ですね、アメリカ向けやフィンランド向けの出荷が下期に急増しまして、通年では対前年比プラス2%、9600台というふうになりました。
2020年ですが、国内需要は年金改革等による景気回復期待感の向上と、ブラジル史上最低の金利水準等によりまして、10%程度の伸びというふうに見込まれております。
輸出は、米中貿易問題の進展はありましたものの、引き続き動向を緊密に注視する必要があるというふうに考えます。
続きまして、自動車産業に関連するセグメントについてご説明いたします。資料としましては、左上に自動車生産協会がまとめた自動車生産台数、その右にですね、自動車の新車登録、輸出、生産の2019年と2018年との対比を示しております。詳細は自動車部会の発表にゆだねますけれども、右側の棒グラフから読み取れますのは、前年同期比で、真ん中の輸出が、これ率にして30%以上落ち込んでおりますが、それにもかかわらず2019年の生産は対前年比で増加しております。これに伴って、左側のグラフですけれども、自動車生産台数は2016年以降増加が続いているということです。
以上申しました自動車生産の動向を背景に、まず切削工具について申し上げます。2019年は主力ユーザーである自動車産業や農業機械の動向を反映しまして、国内向けは比較的順調でありました。一方、アルゼンチンほか、南米他国向けは大きく落ち込んでおります。
2020年ですが、米中貿易問題や新型コロナウィルス等の懸念はありますものの、自動車、トラック、建機、農機向けの案件をフォローして参りたいということです。
次は回転機械において重要な部品となりますベアリングですけれども、2019年は自動車向けはアルゼンチン向け輸出の落ち込みにより年初見通しには到達いたしませんでした。一方、二輪向けは堅調。それから一般産業機械向けは下期の需要が盛り上がらずに終了いたしました。
2020年は、二輪向けは引き続き堅調でありますものの、自動車向けは期待薄です。一般産業向けは、期待値は高いんですけれども、ポジティブな数値にはなっていないという状況でございます。
次にドライブシャフトですけれども、2019年はアルゼンチン向け自動車輸出の落ち込みや、一部モデル切替による需要減の影響で前年を下回りました。
2020年はアルゼンチン向けの低迷はありますものの、新規モデルの需要増等で増加を計画をしております。
次に潤滑油ですけれども、2019年は自動車・フォークリフト向けの初期充填油の増加はありましたものの、対アルゼンチン向けや主要需要家の使用量の削減に伴いまして、対前年比で微減となりました。2020年は大型新規案件の獲得による売上増加を目指しております。
最後に、金属加工用の油剤ですけれども、2019年は新車生産がわずかに増加したことに伴いまして、販売数量の増加をもくろんでおりましたが、期待倒れに終わっております。これは客先におけます消費財の使用量削減、それからコストダウンの影響と思われます。2020年は、自動車生産の増加は見こまれますものの、見通しは不透明であります。
続きまして農業・産業機械セグメントについてご説明いたします。これもこれまでと同様にですね、上の方にブラジル地理統計院が発表しました関連する機械の生産動向、つまりエンジン、汎用機械、農業・家畜用トラクター、それから工作機械の資料を準備しました。これもちょっと月別の変動が激しいので、これまでの指標と同様にですね、1年間の指数を合計したグラフをこの下の方に示しております。この下の方の年間の合計の指数のグラフをご覧いただきますと、まず全体的な話としては、2018年には一旦回復傾向に入ったものの、2019年に入ってからは陰りが見られるという傾向が見て取れると思います。ただし汎用機械については2019年に入ってから回復傾向にあります。
これを参考にしていただきながら、当部会のメンバーが実際のビジネスを通じて感じております点を中心に状況をご説明申し上げます。
まず小型のディーゼルエンジンですけれども、2019年は日本製の多気筒と発電機セットの販売は回復しましたけれども、横型の単気筒が大きく落ち込みまして、対前年比で台数減、まあ金額は増えたということになりました。
2020年は日本製の多気筒は拡大が予想されますけれども、20馬力以下の単気筒エンジンは市場自体の縮小と安価な中国製の影響で低迷が続く見込みということでございます。このため、会員企業におきましては、58年間継続してきました単気筒のブラジルの国内製造を中止し、インドネシア製に全面切り替えをしております。
次にトラクターですけれども、2019年はBNDESの農業向け低利融資が停止状態となったことによりまして、低迷しました。2020年もBNDES融資の改善は見込めませんが、農作物の収穫が良好なことに伴い、対前年比で増加を期待しております。
次にポンプです。2019年は前半は前年並みでありましたけれども、8月以降受注・売上ともに増加に転じ、年末にかけて拡大しました。これは会員会社におきまして、水中ポンプと陸上ポンプの販売を2018年に統合した成果が表れているというふうに認識しております。2020年は一部不透明感はありますものの、昨年後半からの回復基調の継続を期待しております。
次にレーザー切断機ですけれども、こちらにつきましては低価格の中国製機械との差別化を図るべく取り組んでおります。
最後に油圧機器・マシニングセンターですけれども、2019年はレアル安による買い控えの中、補用品の獲得に努めております。2020年は特に油圧機器の更新需要に期待したいというふうに考えています。
最後に石油・ガス、紙パルプその他産業関連セグメントの状況をご説明いたします。資料としましては、ブラジル地理統計院の石油製品の生産実績を、これも2012年を100とした数字を示しておりまして、右側に年間実績を示しております。それから下の段にはブラジル紙パルプ産業協会が発表しております紙パルプの生産動向を示しております。
まず石油製品ですけれども、この二つのグラフを見ていただきますと、2019年には回復傾向にあるということがお分かりいただけると思います。次に下の方の紙パルプの生産実績ですけれども、パルプの需要の拡大によりまして、2014年からですね、ほぼ一貫して対前年比から増加する傾向にございましたけれども、2019年に入ってからは生産・輸出とも対前年比でマイナスとなっています。
この資料を作成した時点では、2019年は1月から9月までの実績しかありませんでしたが、その後発表された内容によりますと、2019年は2018年に対してマイナスの6.5%というふうになったというふうに認識しております。
当部会の会員企業はこれらの石油・ガス、紙パルプ産業、それから先程ご説明しました鉄鋼産業の生産設備において使用される製品を扱っておりまして、先程のスライドで申し上げましたこれらの産業を前提にですね、関連分野の状況をご説明いたします。
まず上のボイラですけれども、ただ今申し上げました通り2018年まで順調に拡大してきましたパルプ生産が2019年は対前年比でマイナスとなりましたけれども、ボイラおよびEP、電気集塵機の更新が予定されておりまして、これらの受注を目指してまいります。
次にプラント・工場用制御システム・機器ですけれども、2019年は鉄鋼メーカーの保全投資の回復、それから石油・ガス上流分野の新規設備投資、それから同じくパルプ産業におけます生産拡大投資、それからアルゼンチンにおけますシェールガス井戸開発投資等にともないまして、受注も堅調でした。2020年も同様の傾向を期待したいというふうに考えています。
最後に移動式クレーンですが、2019年はクレーンの需要に回復傾向が見られました。2020年についても、製紙業界、マイニング、エネルギー、石油・ガス業界設備投資の動向を注視して参ります。
以上、当部会を取り巻く環境につきまして、2019年を振り返り、また2020年を展望いたしました。最後に、ビジネス環境改善に期待、いま為すべきことという副題に対する部会メンバーの見方を紹介させていただきます。会員企業の皆様からご提出いただいた内容を部会長としてまとめさせていただいたものです。
まず、私ども機械金属部会の会員企業にとりまして、ブラジルのビジネス環境が数年の間に改善するということは、まああまり期待できない、見通せないということでございます。
それから、アルゼンチンをはじめとする南米他国の経済状況ですとか、米忠貿易問題、それから新型コロナウィルス、これらの影響を受けます為替動向などなどですね、不安要素は常に存在いたします。
従いまして、現在のビジネス環境の中で、各製品・サービスに見合った事業形態、これはブラジルを含む南米での生産するとか、日本ほかからの製品輸入するとか、そういうビジネス環境に見合った事業形態を常に模索するというのが当部会の関係企業のスタンスでございます。
若干補足させていただきます。ただ今スライドでご説明しました通り、いくつかの業界では2020年に関して拡大基調の見通しが示されておりまして、それを実感している会員企業があるということは事実であります。あとボルソナロ政権に対する信頼度がある程度高まって、年金改革に続く税制改革や民営化、外資導入の推進といった動きを期待する意見もあります。しかしながら、過去を振り返りますと、年初の希望通りには必ずしもなっていないということ、さらにはビジネス環境の改善にはある程度の時間を要するといった点を加味して、ただ今申し上げたような副題の取りまとめとさせていただきます。
以上で説明を終了いたします。ご清聴ありがとうございました。

司会
ありがとうございました。時間ちょうどということでございますけども、ご質問のある方、挙手をいただければと思います。いかがでしょうか。
機械金属部会ということで、今までの貿易、金融とは変わってモノの動きに直結するような産業だと思うんですけども、最近のコロナでサプライチェーンに対する不安というのは言われているとおもんですが、何かそういう形で、差し支えないところで。

山田部会長
さきほど貿易部会の資料にもございました通り、ブラジルと中国の貿易、輸出入の割合が大きいということで、既に一部の新聞で、確か電気電子工業会様で、ブラジルからの半製品の輸入が滞りがちという記事を最近目にしましたけども、一部ですけれども機械金属部会の会員会社においても一部の納期の遅れるという話を受けているという情報は。ただ、まあ現時点で実際に起きてないか確認はしていませんけど、今日時点でじゃあそれで生産に支障が出るかというと、まだそこまでの状況ではないと。

司会
はい。ありがとうございました。では他にご質問ないようでしたら。どうもありがとうございました。

自動車部会
佐藤修 部会長代理
あらためまして皆さんこんにちは。自動車部会の佐藤と申します。本年度から、トヨタ様から引き継ぎまして、ホンダの方で幹事会社をさせていただいております。本来であれば、部会長のロベルト・アキヤマという者が参加する予定でしたが、あいにく都合がつきませんので私の方から代理でご報告させていただきたいと思います。
本日のアジェンダはご覧のようになっております。まず2019年の振り返りであります。四輪になります。
こちらは新車のマーケット、2001年から推移をグラフで表したものでございます。2019年の実績は対前年比108.6%、279万台という台数でタッチしております。ご覧の通りですね、3年連続で前年を上回っておりまして、堅調に推移した年でありました。
一方、下段の方にあります黄色いグラフですが、こちらは輸入車の比率を示したものでございます。全体のマーケットの中で10%強が輸入車ということで、対前年で比べますと微減傾向ということでございます。背景にはブラジル・レアルの通貨安がございます。
こちら、3年連続で増加傾向とありますが、2012年に380万台マーケットまで伸びた市場ですので、今はまだ回復途上という認識でおります。
続きまして、昨年の月別の販売台数を推移で表したものです。前半でですね、稼いだ貯金がありまして、対前年比大きく上回りました。8月、10月に前年比を割る月がありましたが、前半の貯金に支えられまして、対前年を上回ることができました。
昨年のマーケットで特徴的なところは、ダイレクトセールスの比率が歴史的に高い水準で推移したということでございます。全体マーケットの46%がダイレクトセールスによるものです。このダイレクトセールスというのは、法人・個人事業主様向けの販売、あるいはハンディキャップをお持ちのお客様向けの販売でございます。こちらが少し販売の質を変えているというのがマーケットの特徴でございます。
続きまして昨年の生産台数の推移でございます。生産台数も販売と相似形をしております。2019年、生産台数は294万台、対前年比103%となっております。下段にあります輸出でございますが、対前年比68%と低調に終わっております。背景には隣国のアルゼンチンの市場縮小を受けた落ち込みということがございます。
続きまして中古の台数を見たマーケットの推移でございます。薄いブルーの棒グラフが中古のマーケットでございます。2019年、対前年比、新車同様ですが、102%で伸び堅調に推移しております。新車市場とあわせると1360万台マーケットまで伸びております。
続きましてブランド別のシェアでございます。向かって右側に見えますのがトップ10のブランドでございます。日系ブランドは黄色で示しております。トヨタさんにつきましては7位から6位に伸びております。背景にございますのは、新しくヤリス、カローラといった主力新型車効果によりランクを挙げております。
一方向かって左側の方でございますが、2011年からの推移を表したものです。ブラジルのマーケットのトップ3のブランド、GM、フォルクスワーゲン、FIATが高いシェアを占めております。2016年、17年までシェアを落としておりましたが、今は回復途上にございます。
中でも昨年好調だったのがフォルクスワーゲンでございます。新型車のSUV、T-Crossの販売効果によるものです。また、ランキングの中で一番下の方にありますJeepというブランドですが、2014年から本格参入してまいりましたが、先程申し上げたダイレクトセールスのところのマーケットへの戦略的な投資でシェアをアップしています。
続きまして2020年の予測でございます。こちらがマーケット予測になります。トラック・バスを含めまして総合計で言いますと、自動車部会としますと対前年比6%増の296万台を見ております。輸出につきましては前年比減。生産台数については微増というレベルを見こんでおります。
参考まででございますが、1月発表の自動車工業会、ANFAVEAの数字は、新車マーケットで言いますと対前年比9%ということですので、ANFAVEAよりも少し控えめな数字を予測しております。ただしこちらにつきましても、コロナウィルスの影響を一切含んでおりませんので、少し下ぶれ懸念が危惧される状況でございます。
続きまして長期展望でございます。自動車業界のスペシフィックなテーマとしまして、上段の3つ、自動車政策のRota2030への対応、排ガス規制Proconveへの対応、またモビリティサービスへの対応とがございます。
また、下2つにつきましては、各社さん、各部会とも一緒だと思いますが、EPA、日メルコスール間の早期締結、税体系の簡素化。こちらに関しては長期的観点からの重要なテーマであります。
本日につきましてはこの2点について簡単にご説明を申し上げます。
1点目、Proconveでございます。こちらにつきましては、自動車の大気汚染防止プログラムでございます。2018年末に環境省直下のもとで採択されたものでございまして、内容といたしますと、2022年、25年以降に排ガス規制を強化するという内容でございます。
具体的な事例で言いますと、大気中に排出されるガソリンの蒸気を車体内で回収し燃料に再利用する装置の装着、あるいは燃料漏れの事故検知装置を義務付けるものでございます。
下段にありますスケジュール通りでございますが、2022年、25年と、短期間の間に強化をしていくというのが骨子でございます。どの程度ハードルが高い規制かと言いますと、グローバルで見た時のヨーロッパの高い排出ガスの基準であるEuro6を上回る基準でございます。ご覧の通り、2022年、25年、それ以降段階的な規制値を見ますと厳しさがご理解いただけるかと思います。
また先程申し上げましたORVRという装置の装着に伴う車の変更が必要になります。部分的な回収のみならず、大規模な車体変更が必要になります。エンジンコントロールユニットの適正化、あるいはORVRの装置の着用、またFuel Tankあるいはガスノズルの形状の変更等々を加えて、大きな投資あるいはそれに伴う開発が発生することが課題となっております。
続きまして、モビリティサービス、CASEということでございます。こちらはブラジルのみならずグローバルで環境変化が起きております。自動車につきましては100年に一度の大変革期ということで、コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化という領域で変化が起きております。今までの自動車製造業のプレーヤーのみならず、様々なプレーヤーが新規参入し、異業種の提携が進んでおります。こちらは世界的な潮流としてのCASEへの対応が必須となっております。
ブラジルに目を向けますと、シェアリングの領域につきましてはUberあるいはifoodといったところでのサービスが出てきております。また、ご覧のような電動スクーター、レンタルバイクみたいなところも出てきております。
一方で電動化という領域ですが、こちらにつきましては電気自動車、ハイブリッドでございます。まだまだ全体マーケットの1%に満たない小さなマーケットでございますが、兆しとしますと伸長しているのがご覧の通りお分かりいただけるかと思います。こちらへの対応が必要となります。
一つの事例でございますが、トヨタさんの方で昨年9月からトヨタ・モビリティサービスというサービスを展開しております。個人向けのレンタカーサービスでトヨタ・レクサスの全ラインナップを提供できるというサービスです。アプリベースで予約ができ、ディーラー様と連動しているというのが強みでございます。
続きまして日系ブランドの対応のサマリーとなります。先程申し上げました5点のところでお話しをいたします。
まず1点目、自動車政策Rota2030への対応でございますが、こちらにつきましては将来の税恩典を最大限活用すべく、運用ルールの細則を注視しながら進めてまいります。
Proconveにつきましては、現実に即したものになるべく政府当局への理解活動を継続して参ります。
CASEにつきましては、シェアリング、電動化、コネクティッド等の分野への展開をはかり新たな価値をお客様に提供していきたいというふうに考えております。
税体系の簡素化につきましては、新政権が掲げる複雑な税制の簡素化への後押しをするスタンスでおります。
日メルコスールEPAにつきましても、引き続き政府に働きかけを継続してまいりたいというスタンスでおります。
総括になります。上段、2019年のマーケットは先程申し上げた通りでございます。下段はそれに向けた対応になります。先程申し上げた中で、なかったことでございますが、一点目の長期的視点に立ち為替変化に強い事業体質づくりを継続ということは、ここ数年来言っていることだと思いますが、こちらは重要な観点になるかと思います。部品の現地調達化、生産性向上などによるコスト低減、あるいはブラジルからの輸出促進をはかるという地道な活動が必要になります。
最後になりますが、二輪、バイクのマーケットの昨年のおさらいになります。
こちらはバイクのマーケット、生産、輸出、卸について2001年から振り返ったものになります。生産につきましては2年連続で増え、販売につきましても2年連続で増えております。
販売実績でいいますと108万台ということで、対前年比113%ということで、クレジットの販売増が寄与し、堅調に推移した年となりました。
輸出につきましては対前年比57%ということで、自動車同様アルゼンチンの低迷によりまして前年比大幅減となっております。
こちらは販売について月別に見たものでございます。ピンクのラインが対前年比となりますが、毎月対前年超えということで安定した推移を見せました。
最後のスライドになります。こちらは二輪の支払い形態別の販売比率でございます。クレジットでお買い求めになるお客様は全体の40%、現金でお買い求めのお客様は33%、真ん中はコンソルシオになっています。
クレジットにつきましては歴史的な低金利と銀行の融資拡大によりまして、市場拡大を下支えしており、2020年もその流れが継続できることを期待しております。
以上です。ありがとうございました。

司会
ありがとうございました。それではご質問のある方挙手をいただけますでしょうか。お願いします。

発言者
先程のお話にもありましたけど、特に二輪の方が深刻かなと考えているんですけども、マナウスでですね、中国から部品不足、今後数カ月起こって来るんじゃないかというような報道がありまして、それについて特にメーカ-さんとしましてはですね、現状どういうふうに対応しているのか、お伺いしたいんですけど。

佐藤部会長代理
いまだ顕在化したところはないんですが、一般論としてとらえますと、やはり二輪でも四輪でもグローバルでプロジェクトを進めますので、対応が必要になります。ただし、中国から地理的に離れているということもありますので、洋上を含めました在庫に少し余力があるというところがあるかと思います。ただこれが長引くことによって、やはりサプライチェーンの寸断ということが危惧されますので、こちらにつきましては動向を注視しながらしていくという感じであります。あとマナウスでの二輪につきましては、かなりの部分は現地調達しておりますので、少し耐性はあるのかなというふうには、一般的ですが、思います。各社様によりまして在庫の薄い重いがありますので一概には言えませんが、今のところはそういうところだと思います。

司会
よろしいですか。ありがとうございました。

発言者
排ガス規制のところですけれども、まあ政府に働きかけをされていると、こういうところで、これは日系企業、日系メーカーさん以外のところもまとまってやっておられるのかという点が一つ。それから政府の対応、聞く耳を持っているのかどうかというこの辺りが二つ目。それから三つ目は、いわゆる投資をしていかなければいけないんだと思うんですけども、先延ばしを交渉されているのか、レベルをもう少し元に戻してほしいという交渉をされているのか、このあたり教えていただければと思います。

佐藤部会長
1点目の質問につきましては、業界全体として一枚岩になっておりますので、陳情する内容はANFAVEA、そしてどういうふうな内容でやっているというふうに聞いております。それで、政府の対応ですが、まあ聞く耳は持ってくださるんですが、すでにリリースされている内容ですので、それを撤回、あるいは変更とかするにはそれなりの手続き、あるいは代替案みたいなところが必要だというふうにおっしゃられているようなので、そこもまだディスカッションを深めていくということになったというふうに聞いています。撤回か延期かというところもそのディスカッションの中でなってくるところですけど、もちろんORVRについては撤回が望ましいんですが、それは今後ディスカッションしていくと。

質問者
ありがとうございました。

司会
はい、ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。ありがとうございました。一点だけ、今まであまり議論が出ていなかったところで言いますと、まず先程プレゼンテーションの中で触れていただきましたけど、アルゼンチンで落ちていますということなんですけども、アルゼンチンですとか他のラ米に対するですね、輸出といいますか、そのあたりの見通し、お考えみたいなものをもし教えていただければありがたいですが、いかがでしょうか。

佐藤部会長代理
これだけレアル安が続きますと、やはり為替がどちらに転んでもいいようにリスクヘッジする姿勢が必要かなというふうに思っていますので、そういった考えのもとに輸出は必要というふうに考えて各社様は企業努力はしているというふうに思います。地域につきましても、アルゼンチンのみならず、中南米を面で捉えながら、輸出を視野に入れているという企業さんがほとんどかなというふうに思います。やはり、ブラジルコスト、高い労務費、あるいはエネルギーの価格等々が足かせになりまして、他の供給ソースからの競争力という観点で言うと、正直申し上げますと、もう少し税務改革を含め必要なのかなというふうには思っております。常にジレンマにはなるんですが、

司会
ありがとうございました。いかがでしょうか。よろしいですか。それでは、たいへんありがとうございました。これにて自動車部会様らの発表を終了いたします。

コンサルタント部会
吉田幸司 部会長
前半の最後というところでお疲れだなと思いますので、何とか時間通りに終わるようにしたいと思いますので、最後までお付き合いいただければというように思います。私コンサルタント部会の 
部長をさせていただいています吉田と申します。よろしくお願いいたします。
コンサルタント部会ですので、いろいろ、皆さん事業等のお役に立てるようなことをお話しできればというところでコンサルタント部会の中で、副題の「ビジネス環境改善に期待、いま為すべき 
こと」というところにつながる何か情報提供できればなということを部会の中で話させていただきました。その話をする前にですね、まずは経済環境を押さえておかないといけないということで、 
経済環境についてこちらにまとめさせていただいておりますが、他の部会の方でもすでにお話しがでているかと思いますので、そこは割愛しながらですね、少し経済環境についておさらいさせてい 
ただければというふうに思います。
二つ目のボルソナロ大統領の様々な施策というところが、ここは多分、コンサルタント部会として皆さんにお話しさせていただくのが皆さんの事業につながるかなと思っておりますので、もう少 
し細かい話は後ほどお話しさせていただければというふうに思います。
あとですね、4つ目、M&A件数が1999年以降最高数ということで、この過去20年間の間の推移を見ていきますと、KPMGの調査なんですけども、2019年度が1231件ということで、過去最高のM&Aの件数 
だったということで、2019年度を見ると経済は動いているというのがここで言えるのかなというふうに思います。特に皆さんご存知だと思いますが、ソフトバンクさんの投資が非常に大きかったと 
いうことが言えるかと思います。
一方で他の国の方に目を向けていきますと、上から6つ目のところですね、他の国というか世界全体でなんですけども、皆さんも意識されているし、既に感じられているかと思うんですけども、異 
常気象ですね。特にフランスで今年、熱波もありましたし、日本でも異常気象ということで、今年は非常に暖冬になっている。
ブラジルにおいても、いまかなり雨が多いし、なぜか夏なのに非常に寒いと。これも、異常気象なのか、これが慢性的になるのか、というところだと思いますけども、この異常気象に対しての各 
企業さんの取り組みというものは非常に注目されているのではないかということで、これについても後ほど、もう少しお話しさせていただければというふうに思います。
あと、アメリカの状況というところが非常に気になるところかなというところで挙げさせていただいております。アメリカの方で株価が非常に、まあ利下げの部分もありますね、非常に上がって 
きていたと。実際、最高値にいったり、最近は乱高下しているかと思うんですけども、その中で何か特徴的なものはあるかなと見た時にですね、1社、私の方で気になったところが、テスラですね。 
電気自動車、環境にもつながるんですが、テスラの株を見ると、過去最高の970ドルまで行きました。時価総額にして1000億ドル。これはフォルクスワーゲンを抜いて自動車業界の中で世界第2の時 
価総額ということで、非常に、環境につながるテスラというところは注目されているのかなというふうに感じたところになります。
あと、今までも話をさせていただいていますが、スタートアップ企業というところで、皆さんご存知の通りUBERとかLyftという会社が昨年上場してきました。ただこの上場が非常に期待外れで、 
UBERがずっと赤字を垂れ流しているということで、この影響を受けてかどうか分からないんですが、宿泊サイトのAirbnbは上場を延期しております。
また、UWORKですね、UWORKも上場すると言われながら、期待倒れになって、SOFTBANKの子会社になったというところで、一時期スタートアップ企業というものは、非常に注目されながら、今では 
どちらかというと利益重視というようなことが言えるんじゃないかというふうに言えると思います。
あとアメリカの政治動向というところで、今年大統領選挙がありますと。で、今週ですね、スーパーチューズデーというところで、民主党の候補者として今サンダース議員が非常に人気が上がっ 
てきている。サンダース議員の人気が上がるとトランプの勝率が上がってくるというふうに言われておりますので、このまま行くとトランプの方が有利じゃないかというのがアメリカの中で言われ 
ている状況かなというふうに思います。ただ実際、これからまだまだ続きますので、最後まで予断を許さないというふうに思います。
あと、Brexitの決定というところで、特にここがブラジルに対して大きな影響があるという雰囲気ではないんですけども、これを受けて、元々一つ言われているのは、FTAをEUと結んでいた国につ 
いてはイギリスと結びなおさないといけないということで、影響があるというふうに言われているところになるかと思います。
あと最後のところですね、各部会いろいろと話が上がっていますけども、コロナウィルスの影響というところで調べてみました。そうすると、3月2日にOECDが世界全体の成長率を発表しているん 
ですけども、元々は2.9%と言っていたのが、3月までにコロナウィルスの影響が収束するとみた場合でも2.4%。収束しなかった場合には1.5%になるというふうに見られております。
特に日本の企業に関しては、2月末までに337社がコロナウィルスの何かしらの影響を受けているというのを発表している。ただこのうち195社は影響が分からない、63社がマイナス影響があるとい 
うことで。ブラジルについてですけども、いろいろニュースを見てみましたが、見つけたのはLGが10日間工場を停止するというふうに発表しているということで、今のところ部会の話の中では日系 
企業さんが工場をストップするという話はなかったかと思うんですけども、韓国企業はすでにコロナの影響を受けているというふうに言えるかと思います。
今までが経済環境というところでして、すみません、いきなり5Gと出てきたんですけども、これを入れたのはですね、アメリカの動向を見た時に、皆さんご存知だと思うんですけども、Sprintと 
T-Mobileがアメリカで合併したら、アメリカで5Gがすごい促進すると。この二つの合併の2年前の条件で、合併したら3年以内に5Gの利用可能地帯を全米全体の97%にするというのが条件でして、こ 
れ合併するとアメリカにおいて5Gが進むだろうと。そうするとブラジルも当然ながら進めていかないといけないということで、ブラジルにおいては5Gに対してどういう状況かなと調べてみたんです 
けども、5Gについては電気情報通信部会さんの方でも話が出るかと思いますので、ちょっとここについては割愛させていただければというふうに思います。
ちょっと飛びまして、気候変動リスクですね。先程言いましたけども、気候変動リスクについてはどの企業さんもまさに待ったなしの状況になっているんじゃないかなと言うふうに思います。実 
際この気候変動リスクですね、いろいろ調べていきますと、2015年にパリ協定が採択されました。これについては185カ国が批准しております。内容としては、産業革命以降の平均気温の上昇を2℃ 
以内にするというところを目標を立てています。できれば1.5℃未満というのが抑制目標なんですけども、2018年10月にIPCCが1.5℃の特別報告を発表しました。
ところが、アメリカがトランプ大統領になって、アメリカが離脱を表明したりとかですね、特にこの間のCOP25においては中国、インドが反対したりとか、大国の足並みがそろっていないという中 
で、2020年1月のダボス会議では、今年の1月ですけども、その時においてはやはりこれが最重要課題というふうに挙げられているところかと思います。
COP25で言われているところの、どのような目標が立てられているのかというところなんですけども、日本においては2030年度までに2013年度比で26%削減すると。ただこちらの目標については、 
Highly Insufficientと言われる、全く足りないという評価になっている。一方でブラジルですね。ブラジルにおきましては、2025年度までに2005年度比で37%削減。2030年度までにできればは43% 
まで削減する。ただこれについても、このパリ協定で言っている2℃未満まで抑制するというところについてはInsufficient、足らないというふうに言われております。
ブラジルの状況ですね、一つ見ていきますと、下から二つ目なんですけども、ブラジルがこのパリ協定を重視しようとしたときなんですけども、かなりアマゾンの伐採が非常に大きな影響だとい 
うことで、2004年度以降アマゾンの伐採についてかなりストップさせているというふうな動きが非常に貢献してまして、実際状況としては、2015年時点で2025年度の削減目標と同じ値だったと。か 
なりブラジルとしてはがんばっているというところではあったんですけども、昨年度ありましたアマゾンの火災とですね、あとボルソナロ大統領なんですけど、環境予算を削減するというふうに言 
われておりますので、このような中で本当にブラジルが挙げている2005年比で37%削減が達成できるのかどうかというところについては危険信号がともっているというふうに言われているところに 
なります。
あと、このガス排出量の削減をするのに大きな効果があると言われているところの一つとして、一番下に挙げているんですけども、炭素税、これ各国入れる事でかなり大きな貢献をしているとい 
うふうに言われております。一説によると、私聞いた話でこれ本当かどうか分からないんですけども、一説によるとブラジルもこれ入れろという話があったらしいんですけども、それでなくて 
Rodidioにしたと。Rodidioだけにしたら、逆にRodidioだけにしたことによって、これ車が売れるだけであって何の影響もなかったというふうに言われているところみたいですので、結果として車は 
売れたので自動車会社さんは良かったかもしれないんですが、環境に対してはあまり影響がなかったと言われているところです。ただ、この炭素税の導入は世界各国で非常に検討されているという 
ところになります。
ちょっと話が飛ぶような感じになるんですけども、このような中でですね、気候変動リスクについて各企業さんが正しく理解して、正しく解決していくことが大事だというふうに言われていると 
ころになります。
これはですね、かなりさかのぼるんですけども、2008年ですね、リーマンショックが起きた時に株価の下落が未曾有の値になっていたと。いったいどこまで下がるのか分からない。このリーマン 
ショックによってかなり金融市場に不安定が起きたと。将来分からない不安があると、非常に大きな金融市場に影響を与える。ということであれば、この気候変動リスクでも将来は、今も実は起き 
ているんですけども、どれだけ企業に対して広がるか分からないとなってくると、株価が非常に落ちてくるリスクがあるということで、この金融市場を安定化させるために、企業としてしっかりこ 
れを開示して、どういうふうにして企業が取り組んでいくかというのを見せる事によって投資家をある程度安心させましょうという動きの中で、こちらのTCFDですね、Task Force on Climate- 
related Financial Disclosureというところを設置して、この内容について開示していきましょうという動きがあります。実際に日本の企業さん、2月末で248社が賛同しておりますし、ブラジルに 
おいては少ないですけどまだ20社、これ実はペトロブラス入っていないんですけど、ペトロブラスはこれに関連した情報は開示するということは宣言しているところであります。
日本企業さんについては、2020年3月期ですね、この末からですね、これについて開示していくというところですので、開示情報においても、こういう気候変動については今後皆さんが目で見られ 
るようになる。実際すでにKirinさんとかは環境報告書を出されたりとかですね、有価証券報告書の中で、味の素さんとかですね、すでに出しているところあるんですけども、そういう内容をさらに 
充実して出していこうというような動きになっているというところになります。
特に気候変動リスクというところについては、皆さんも感じているとは思うんですけども、大きく二つ分かれています。物理的リスクと移行リスク。物理的リスクというのは、実際気候が上がる 
ことによって、例えば少し前のタイの洪水とか、ブラジルも数週間あまり川が氾濫して洪水になったら、それによって企業がダメージを受けますねとかあると思うんですけども、そういうふうな異 
常気象による影響ですね。特にこれについてですね、いろいろ調べていきますと、特に保険業界さんが非常に大きな影響を受けているんじゃないかないうふうに言えるかと思います。
実際ですね、日本ですけども、2018年度にこの災害によって払った保険料というのが1兆5095億ということで、その前の最大の金額が2004年の7449億ということでしたので、いきなり3倍近くです 
ね、保険料の支払いが増えたと。2018年度ですので、2019年度はもっと増えているんじゃないかというふうに思いますので、どんどんこの気候変動リスクが大きくなっていくというふうに言えるか 
と思います。
移行リスクは、先程言った、結局そういう気候変動を抑えて行こうと、どんどん法律が変わっていく、商品ももっともっとですね、エコのものに移っていく、実際自動車業界さんは政府から排ガ 
ス規制で非常に厳しく課せられていると思いますので、まさにこの移行リスクというのは感じられているのかもしれませんけども、今後気候変動リスクが高まり続けていくと、規制がさらに増えて 
いって、それによって各企業さんに対して影響が出てくるというふうに言えるんじゃないかと。実際それに対して対応していくことが企業さんにとってのビジネスチャンスとも言えるかと思います 
ので、こういう話を今後もっと敏感に感じ取りながら、対応することがあれば、リスクを認識しながらもビジネスチャンスととらえてやっていくことが非常に大事じゃないかというふうに言えると 
思います。
すみません、ちょっと最初の環境のところで時間をとってしまったんですけども、ここからですね、ビジネス環境への期待というところですので、ボルソナロ政権、今まで出してきた政策とかを 
見てですね、どういうところがビジネス環境の改善になるんだろうというところをですね、少しまとめさせていただいております。
まず政策一例というところででているんですけども、もう少し詳細な内容をですね、次のページからお話しさせてもらえればというふうに思います。
まずは法改正というところで3つ挙げさせていただいております。既に内容をご存知の方もいらっしゃると思うんですけども、通商「経済自由令」と、労働に関する「Trabalho Verde e Amarelo」 
、最後は政府調達に関する協定と、3つ挙げております。
経済自由令の中で皆さんからご質問とか受けるのはですね、有限会社、今まで株主2人必要だったと思うんですけども、それが1人が認められるようになりました。今までは本当に名貸しだけの株 
主さんがいたというのは、もうこれは立てなくていいですよということで、これについては手続きが煩雑なのが少し緩和されるのかなということが言えるかと思います。
で、一番下、私もいいなと思ったんですけども、税務・会計に関する書類のデジタル保管を認めるということで、今までは紙で持たないといけなかった。大量の紙を保管して保管料がかかってい 
たというのが、これによってそれをしなくていいですよということは、これは中々良い法律だなと思ったんですが、これよくよく見ていくとですね、まだこれどういうプロセスを踏まないといけな 
いとかまだ出ていないとかですね、色んな方と話していると、そうは言っても税務当局が本当にこれ認めるのかとか。税務当局が税務調査に来て、紙がないと言った瞬間に、いやデジタル保管OKと 
言ったからデジタル保管しましたと。でも税務当局が本当に認めるかどうかはよく分からないということもありますので、実際これが本当に運用はじまれば、各企業さんにとって非常にプラスにな 
るかなと思うんですけども、まだまだちょっと、いつこれが本当に導入されるのかは分からないというところになります。
あと、Trabalho Verde e Amareloというところで、若い層を雇いやすくしましょうと、若年層の失業率を抑えるために何とか企業にとってメリットがあるようにして雇っていきましょうという法 
律が、暫定令ですけども、一応こちらは何とか職にしていきましょうという動きがあります。実際これやりますと、こちらなんですけども、若年層を雇うと非常に安くなる、FGTS、INSSを払わなく 
ていいと言われているところになります。
あと、若者層のところから離れるんですけども、中二つですね、ボーナスの支払いに関する新ルールや利益分配に関する新ルールということで、今までたぶんボーナス、皆さん従業員さんに払わ 
れた時に、これ業績評価によるボーナスだった時に、ちゃんと一定条件みたいなものを満たしていれば、INSS、社会保障料を払わなくてよかったんですが、非常にこの基準が厳しかったというのが 
あったというところで、社会保障料を払っていた会社さん多かったと思うんですけども、法律が変わって、社会保障料が免除になるケースが多くなったというふうに言われておりますので、もしボ 
ーナス今まで社会保障料を払っている経営者さんあれば、皆さん一回帰って、法律が変わったことによって本当に払う必要があるのかないのかというのを確認して、払わなくて済むということであ 
れば皆さんにとってプラスになるんじゃないかなというふうに言えるかと思います。
あと利益分配については、各従業員にほとんど弾力性なく一定金額を払わなければいけなかったというのが多かったかと思うんですけども、ある程度業績に応じてとか、職責に応じて払えるよう 
になったということで、従業員さんのモチベーションにつながっていくように変わっていくことですので、もしこちらについてもっと従業員さんのモチベーションを上げるために使いたいというこ 
とであれば、各企業さんとしても考えられるというふうに言えるかと思います。
ここからちょっと税務の話をさせていただければというふうに思います。今回ですね、税務について、税制改正まだ通っていないといころではあるんですけども、3つ、内容について挙げさせてい 
ただいております。通称「善良な納税者」と言われているところと、OECDへの加盟に向けての動き、税制改正というところになります。
「善良な納税者」というところでは、ブラジルでは非常に裁判が多く、実際カマラの課税・通関ワーキンググループにアンケートさせてもらったところ、回答の方の66%の企業が何かしらの税務 
裁判を持っていると。で、2018年度に新規で起こったブラジル全体での裁判の件数、税務に関して189万件、非常に大きな件数がある。これはそれだけあったら中々裁判終わりませんよねというとこ 
ろだと思います。で、これを何とか早く解決していこうということでその法律が施行されていると。
あと皆さんが非常に気になるのはOECDへの加盟という所かと思いますけども、移転価格税制がブラジル独特ということで、皆さん税負担が非常に大きくなっていると。で、去年12月18日にOECDと 
ブラジルの税務当局が合同で発表した報告書の中で、OECDとしてはブラジルに対して、OECDのガイドラインを適用することを強く求めるということに言われておりますので、ブラジル税務当局とし 
てはこちらを今どうやって適用していくかというところを検討しているところになるかと思います。
あと最後、まだ確定はしていないんですけども、ブラジルの税制が非常に複雑だと。世界一難しいと言われておりますので、政府もそれを分かっておりますので、それに対してどうやっていくか 
というところが今検討されているところになります。ただ一点、今回の税制改正というものは、簡素化をやるんですが、税負担を変える訳ではありませんので、何かの税負担が下がると何か税負担 
を上げないといけないということになってくると思います。要するに皆さん全体として負担が減るわけではないんですけども、ただ、簡単になればミスもなくなりますし、従業員さんを雇う人数も 
もしかしたら減らすことができるかもしれないということで、簡単になることによって企業さんにとってのメリットが非常に大きいと言えるかと思います。
ブラジル税制改正全般として、大きく4つになりますね。皆さんが非常に気になっているところですけども、間接税の話、法人所得税、個人所得税、社会保障料というのが今言われている内容にな 
ります。
税制改正となりますと色んなところで色んな話を聞いているかと思います。私でも少なくとも今まで税制改正の内容、5個聞いたことがあります。その中で大きく分けて2つ言えるのが、実際に国 
会で議論されているような内容と、あと政府の役人がしゃべった内容に2つ大きく分かれるかと思います。
国会で議論されているものということで、上院と下院それぞれ別で議論されているもので、これについては憲法改正が必要な内容が多いと言われているものの改正。政府案については、基本的に 
は憲法改正までしなくてもいいような税制改正をやっていきましょうというような動きがある。大きくこの2つがあるというふうに言われているところになります。
では今国会の方で議論されている内容というところなんですけども、まず上院で言われているところですね。間接税が多すぎるのが非常に負担になっているというところで、間接税9つ、私正直知 
らなかった税金もあったんですけど、9つの間接税があるというところで、それを統一しましょうと。ただ、移行期間ですね、統一するにしても15年、これ15年後にここにいらっしゃる方でブラジル 
にいらっしゃる方が何人いらっしゃるか分からないんですけども、15年間かけて統一していきましょうと言われているところとなります。
先程のが上院で、下院の方は、9つではなくて5個ですね。ただ、上院も下院も言っているのは、連邦税だけでなくて、州税であるICMS、地方税であるISS、これを入れて、州税地方税を入れて間接 
税を統一していきましょうと。下院の方は10年間の移行期間でこれをやりますというふうに言われているところになります。
もしこれが通ると、上院でも下院でもそうなんですが、移行期間内では税制1個増えるというような状況になるかと思います。ただ、本当にこういうふうになっていけばいいなと思うのが、例えば 
この2番目のところのクレジット方式のところとかですね。PIS/Cofinsとかであれば、PIS/Cofins払ったけども、それについて受け取った分と相殺するのが相殺できないようなこともあると思うん 
ですけども、今回この新しい間接税は、払ったものと受けたもの、日本でも一緒ですけど、消費税のように全部その金額をnet所得で、政府に払わないといけないものは払う、残ったものがあれば受 
け取れるということで、非常に計算が分かりやすくなるということで、本当にこの2番目の方式はいいなと。
課税標準も、日本だと元買ったやつに何%と分かりやすいんですけど、ブラジルはなぜかそれをグロスアップしているとかですね、非常に分かりづらい計算式になっているので、税抜きになれば 
日本と同じように分かりやすいなとか。
最後ですね、本当にこれが通ればすばらしいと思うんですけども、クレジットがあれば60日で返してくれるとなれば、皆さん、間接税でキャッシュフローで苦しまれている企業さんたくさんある 
と思うんですけども、本当にこれが通れば、しかも10年後なれば、非常にキャッシュフローに対してのいい恩恵が出てくるのかなというふうに言えるかと思います。
ちょっとこちらは細かいので飛ばさせていただいて、それ以外に政府案というところで、実は政府案、中々出てなくて、いまだに出ていないです。実際政府案出さないと言われております。ただ 
、この2019年11月18日に公表した内容と言われているのでここに上げさせてもらっていますけども、Phase1、Phase2、Phase3、Phase4まであります。
Phase1では間接税のうちPIS/Cofinsを統合、まあほとんど一緒だと思うので、これ統合といってもあまりピンと来ないかもしれないんですけども、統合して、新たな付加価値税を作りましょうと 
かですね。
Phase2では、CIDEをこの付加価値税に統合していきましょうとかですね。
あとPhase3で個人所得税、法人所得税についても改正していきましょうと。個人所得税についてですね、現在27.5%最高税率だと思うんですけども、これを35%まで持っていきましょうというふ 
うに言われている。実際35%まで持っていきますと、駐在員さんの給与がネット保証ですと、企業何もしなければ皆さんの取り分が減るということになりますので、ここに上がるのであれば、親会 
社さんと交渉して取り分が減らないようにしないといけないということになってくるかと思います。
あと法人所得税は段階的に20%に下げていくというふうに言われているんですけども、先程言いました通り、取り分が、国としては税金が減らないようにすると言っておりますので、減らないよ 
うにするために何かしらの取れるようなことを考えている。その中で言われているのが、配当金に対して課税していくというのが言われているところになります。
最後は、社会保障料を削減していきましょうと言われているんですけども、これなくせば政府取り分が減りますので、何かしらの新しい税金が必要になってくるというふうに言われているところ 
になります。
実際の税制改正、非常に日々刻々と変わっていて、実はですね、これも出させていただいているんですけども、この内容は昨日のニュースを見ますと、今の状況として、上院と下院、この時調べ 
た時は2月末の段階ですけども、上院と下院の案を統合して考えましょう、で、それぞれの議員が出てきて考えましょうというのが2月末の状況でした。昨日のニュースを見るとですね、4月28日まで 
に統合した案を作りますと。で、5月5日の委員会の方に出していくというふうに言われているところになります。
で、公聴会があるんですけども、3月11日の公聴会にゲデス大臣が出てくるというふうに言われております。そこで何かしら政府の話が出てくるんじゃないかというふうに言われているところにな 
ります。
税制改正については、いろいろ書いてあるんですけども、日々刻々と変わっていてですね、今の現状でこうなりますというの非常に言いづらいところではあるんですけども、皆さんご理解の通り 
に、政府としては何とか簡素化してビジネスの状況を良くしていこうと言っておりますので、今後ですね、この話が続いていくにつれて、私の方でもですね、皆さんに何かあれば情報発信していけ 
ればと思うんですけども、変わった時にはそれに対して対応できるような態勢が必要になって来るんじゃないかというふうに言えるかと思います。
ちょっとすみません、税制と話が飛ぶ感じになったんですけども、今回コンサルタント部会で話した時に、ブラジルで事業をしていく中で今どういうことが課題になっているかという話の一つと 
して、次世代のつきあい方というのが非常に課題になっているというふうに話がありました。少し調べてみた情報をこちらに上げてあります。
次世代の中で少し前に言われたのがミレニアル世代。で、今出てきている新しい新入社員がジェネレーションZというふうになっているかと思います。
このミレニアル世代というのは付き合い方が非常に難しいと言われているんですけども、なぜ会社を辞めるのかというところについて、EYさん、ちょっと古いんですけど2015年にその理由を調べ 
ているというところで、日本は残業が多すぎるのはまあそうかなと。ブラジルに関しては、ブラジルは労働法が厳しいので確かにないんだなと。それを除くと、まあどこも大体同じような感じなん 
だなと。中々給料が上がらないとか、昇進できるかどうか不安だとかですね、フレキシビリティがないとかですね、大体お国は違えども、今のミレニアル世代が考えていることは同じなんだなとい 
うふうに言えるかと思います。
こういう世代に対してどういうことが必要だというところで、今度はですね、デロイトさんのミレニアル年次調査というのが出ているんですけども、これブラジルも日本も入った調査になってい 
るんですが、アクションの提案として上がっているのが、トータルパッケージの透明化とか、ブラジルは特にそうだなと思ったんですが、学習・成長機会が不十分。ブラジル人は教育に飢えている 
とよく言われているかと思います。教育関係、いっぱい教育を与えるとブラジル人はそれに対して感謝をして、良く働いてくれると言われているかと思いますので、教育機会というのを十分作って 
いくというのが非常に重要になって来るのかなというふうに言えるかと思います。
ちょっと話がこんな感じになったんですけども、今ブラジル政府が規制緩和を進めているという中で、過去に、規制緩和がある時に発展してきた企業というのはあるんだろうかかというのを自分 
なりに探しました。という中で、皆さん、この黄色い端末とかたぶんタクシーの中とかで見たことがあるかと思うんですけども、ご存知ですか、PagSeguroという会社ですね。非常に今これ勢いのあ 
る会社というふうに言われているところです。この会社が、過去の規制緩和をとらえて非常に大きくなったというふうに、調べていると私感じましたので、ちょっと紹介させていただきたくて挙げ 
ているものになります。
PagSeguroの内容です。こちら上げさせていただいております。2006年にできました。2018年にアメリカに上場した会社というふうになっております。売上高もですね、非常にこの上場後どーんと 
増えていっている。で、どういう会社かというと、先程言ったこの機械ですね、この機械を作って売っていくというのが非常に彼らのメインのビジネスというところになっているかと思います。 
2020年2月26日時点のマーケット時価総額が11.3ビリオンUSドルということで、大体時価総額1兆2000億ぐらい。今の日本企業さんの中で見ていきますと、三菱重工さんとか日本製鉄さんとか、丸紅 
さんなんか大体この金額になっているかと思いますので、2006年にできてそこまでの時価総額になっている会社というふうに思っていただければと思います。
どういうことをやったかということでございますけども、これさっき言ったカードの機械、私知らなかったんですけども、カードの機械というところについてはかなり規制が厳しかったですと。 
過去は独占状態でした。ずーっとブラジルにいた方はご存知だと思うんですけども、このredeという会社とcieloという会社、この2社で占めていました。
占めていた理由としては、redeについてはitauがついてて、Mastercardを使うならredeの機械が必要だと。Visaカードを使うんでしたらcieloの機械が必要だということで、Mastercard、Visaのカ 
ードを使う場合、redeの機械、cieloの機械がどうしても必要だったというのがカード決済の昔の状況というところですね。ですのでこの2社があるので中々新しい会社が入ってこれなかったという 
中で、やっぱりそれはだめだと、ブラジル政府も気づいてですね、独占状態を指摘したというところで法律が変わっていく。この法律が変わったところでこのPagSeguroという会社ができるというと 
ころですね。で、出てきたところで、過去を実際に見ていきますと、過去において独占状態が100%だったのが、法律が変わることによって自由化になったと。この間に独占契約になっているかどう 
か調べきれなかったんですけども、現状では自由契約が100%というところになっています。
PagSeguroがなぜこうやって入ってこれたか、どうやってこうやって伸びていったかというところなんですけども、この機械ですね、このレンタル機械が非常に、小さな零細企業、中小企業に対し 
て非常に大きな負担になっていると。実際このレンタル機を見ていきますと、2011年になるんですけども、cieloの機械がだいたい月114レアル、redeの機械だと140レアル。2台用意するとして、そ 
れぞれMaster、Visa対応しないといけないので4台になりましたと。非常にこれ、年間で6000レアルの負担。一般的な中小企業の平均売上高が10万レアルと言われておりますので、そうすると売上の 
6%をカードを使うためにレンタル料を払わないといけないという、非常に大きな中小企業の負担になっていたというところで、PagSeguroは中小企業をターゲットにして、貸すのではなくて安い値 
段で売りますというところで入って行ったと。
ただですね、今までredeとかcieloの機械をレンタルしようとすると、それぞれitauの口座、Santanderの口座を作らないといけない。ところがブラジルは口座を持っていない人が4500万人いると 
言われています。サンパウロにいると分からないかもしれませんけど、北部に行くと多くの人が口座を持っていないと。口座を持っていないとカードも機械も使えないというところもありましたの 
で、そういうところも踏まえて売り切りにしたと。で実際これ成功していったと。
今はですね、BBNという非常に小さな銀行を買収したんですけど、さらに銀行業にも出て行こうというところで、成功してきているんですが、さらに次のステップに向かって今PagSeguroは進んで 
いるということが言えるかと思います。
POS機械のマーケット市場ですね。こちら上げておりますけども、これだけ見るとPagSeguro7%しかないと。実際は昔からredeとcieloが強かったのでそれが比率を占めるんですけども、次のペー 
ジで零細企業だけ見るとPagSeguroの比率が、2016年は16%だったんですが、2018年は35%という非常に大きな比率まで上がってきているということが言えるかと思います。
PagSeguroみたいなFintechの会社が非常に今力をもってきていますよというところで、FinTec市場についてこちらで見ているんですけども、元のFinTechの中からユニコーン企業になっていった会 
社というところでPagSeguroも一つ挙げられているというところになります。
ちょっと時間も押しているかと思いますので、FinTechの市場についてこちら簡単にまとめさせていただいております。ご興味あればまた見ていただければというふうに思います。
新たなFinTech企業、こちらもユニコーンになったんですけども、FinTech企業がますます大きくなっていくケースをこちらで挙げさせていただいています。
最後、まとめというところなんですけど、政府が各種の規制緩和をした時にもしかすると皆さんにとってのメリットもあるかもしれない。逆にそれに対応しないといけないので、追加で負担が出 
るかもしれないというところで、政府の各種改革についての影響分析が非常に重要だということになるとかですね、PagSeguroのように規制緩和ととらまえるとビジネスチャンスになるかもしれない 

5Gの時代が到来すると言われておりますので、デジタルトランスフォーメーションについても考えていかないといけないとかですね、気候変動リスク、これ待ったなしになっておりますので、皆 
さんの中でも対応が求められるケースが出てくるんじゃないかとかですね、従業員さんが若い世代が入ってきますので、若い世代との付き合い方という。非常に多くなってくるんですけども、つい 
てですね、ブラジルにいながらだと思うんですけども、多くの現実で考えていってですね、さらにブラジルビジネスを発展というところにつながることができればというふうに思う所になります。 
以上です。

司会
はい、ありがとうございました。コンサルタント部会から非常に興味ある、多岐にわたる発表をいただきまして、5G、気候変動、税制、ミレニアル、私ミレニアル世代との付き合い方というのは 
興味あるので色々とお聞きしたいところなんですけども、ちょっと時間も押してございますので、次回以降こういうことであればもう少し最初から時間を用意させていただきますので。というわけ 
で、たいへんありがとうございました。これでですね、いったん前半の方を終わりにさせていただきまして、後半の部は3時40分から始めさせていただきたいと思いますので、40分に始められるよう 
にお席の方にお戻りいただければと思います。ありがとうございました。

 

化学品部会
青木宏文 部会長
皆さんこんにちは。本年度化学品部会の部会長を務めさせていただいております住友化学の青木です。よろしくお願いします。2019年の回顧と2020年の展望ということで、副題は「ビジネス環境改善に期待、いま為すべきこと」ですので、まず業界全体につきまして簡単に触れさせていただきました後、それぞれの分野に関してですね、説明をさせていただければと思っております。
まず化学業界全体ですけれども、全体額で17年、18年の数字をここに触れております。18年、レアル建てだと為替の影響とかありますので、ドル建てになりますと1280億ドルということで、若干、微増ですね。17年に比べて微増と。輸出・輸入の貿易収支ですけども、化学品という特徴からしまして、輸入してきたものを加工して国内で販売するという会社さんが多いということで、貿易収支の方はマイナスというところです。全体としては増えていますけども、収支としてはマイナスというところが概観であります。
そうしましたらより具体的な化学品部会所属企業さんの内容についてご説明させていただきたいと思いますけれども、機械金属部会さんと同様、非常に多岐にわたっていまして、化学品部会全体としては72社所属していまして、今回アンケートにご協力いただきましたのが22社ということになります。
それぞれ割合がここにありますけれども、22社というところですが、アンケート数52ということで、1社に対して複数の市場にわたって事業を展開していただいているということで、約、平均したら3市場弱ぐらいかなと思っております。
まず化学品部会全体の状況なんですけども、アンケートをまず市場ごとに増額、減少ということで毎年アンケートを取らせていただきまして、今年も同様の方法でやっております。まず左上の2019年の回顧というところですけども、こちらが全体を取りまとめた数字になります。青が売上、オレンジが利益ですけれども、売上・利益ともに増加企業が20社以上、20市場以上ということで、不変・減少のところが10市場ほどぐらいなのかなと。
2019年の展望というのを昨年の同じ時期にさせていただいたと思うんですけども、それとの比較がこの左下と左上のグラフになっているんですけれども、若干、元々思っていたよりも傾向としては悪い方向になってしまったのかなというところが見て取れるかと思います。
2020年の展望ですけれども、こちらも大きな傾向は変わっていなくてですね、市場の入れ替え等はありますけども、比較的増加・不変の会社さんが多く、減少は2019年の回顧よりも減る傾向かなというところです。
今回、先程申し上げました通り、市場が非常に多岐にわたっておりますので、この上位の5市場に関しまして資料をまとめさせていただきました。
まず、自動車・二輪関係ですね。輸送グループということでまとめさせていただいていますけども、2019年の回顧、このような状況になっております。増加の会社が非常に多い一方で減少の会社さんもそこそこの数があるというのが状況です。市場自体は先程自動車部会さんからコメントありましたけれども、国内市場の好調、二輪の方も販売台数が増えているという状況でありながら、アルゼンチンへの輸出の不調というのがあるのかなと。それに対して各企業さんの対応ですけれども、新規顧客の開拓ということで、説明の中に出てきたのは非日系の会社さんに展開しているとかですね。それとコスト競争力。一方で、価格面でいきますとやはり価格競争の深刻化というのがありまして、利益の減少につながってしまっていると。あと、先程市場のところでも説明しましたけれども、アルゼンチンへの輸出ですね、こちらの影響が出てきているところがキーワード。二輪に関しましては、市場の動向と同様に販売も好調だというコメントをいただいています。
次、2020年の展望ですけれども、こちらの方も増加あるいは不変ということで、比較的ポジティブな回答が多かったと思っております。基本的には、2020年への対策ということで、19年と同様に顧客の開拓を進めていく一方で、アルゼンチンの動向もちょっと気になるなというのが状況ということになります。
続きましてヘルスケアということで、ヘルスケアというふうにまとめていますけども、食品ですとか化粧品、医薬品関係、あるいは食品に使うフィルム材とか、そういったものをすべて含めております。
全体の傾向としては不変の会社さんが多い一方で、減少というのはほとんどなかったので、不変または増加というところかなと思います。19年の市場ですけれども、食品に関しましては健康志向というのが一つお話しがありました。一方で競合との価格競争が厳しいよという形でのご説明もありました。化粧品とか医薬品に関しましては、大きい動きはないんだけれども、特段にすごく減ったとかですね、そういった影響もあまりないというような状況です。
各社さんの対応ですけれども、比較的市場自体は堅調だったなという印象をもたれているのと、あと新しく開拓されたりですとか、新商品の投入といったことを積極的にされていた会社さん。一方で、輸出をされている会社さんではやはり、アルゼンチンの方での回収のリスクとかいったものがあったりですとか、為替の影響での原料高といったものが影響が来ているという話がありました。
2020年ですけれども、2020年の展望、非常に増加の会社さんが多いということで、市場も堅調に推移していますし、価格競争は厳しいんですけどもそれに対して対応策をいろいろと練っているという会社さんが多いのかなと。新製品の投入ですとか、あと、他の地域ですね、ラテンアメリカ以外も含めての成功例の横展開ですとか、あとは現地系の顧客さんとのコラボレーションということもいろいろ進めているというようなご説明をいただいております。
次に農業ですけれども、こちら農薬・肥料・飼料関係をひとまとめにしております。各部会の中の会社さんの状況としては増加の会社さんが多い一方で、まあ減少の会社さんも少しはあるという状況です。
市場全体としては、19年度、1月に比べて非常に伸びておりまして、そちらの影響もあって各社さんとも伸びにつながっているのかなと思う一方で、農薬関係を中心にジェネリック品の流通というのも結構ありますので、こちらによる価格競争が激化しているという状況です。
2019年、新製品の上市ですとか、あとは農業資材の販売が米中貿易摩擦の関係で増えたとか、そういったところがポジティブなところです。
2020年の展望ですけれども、こちらの方、引き続き市場は順調に伸びるということで、増加の会社さんが非常に多いです。一方で、市場としては去年のマーケットの増加が流通在庫につながらないとかですね、そういったところも心配がありますので、その点がネガティブになった可能性があるなと。あとはジェネリック品ですね。攻勢は引き続き厳しいので、そのあたりの影響を心配しております。
次に印刷関係です。印刷関係ですけれども、出版ですとか、あとパッケージ用のインキとか、感熱紙ですとか、そういった業界の市場の動向をひろった形になります。
市場としましては、パッケージ市場の高機能化ですとか、一方で価格競争は厳しいというようなお話がありまして、そういった中で各社さん対応しているという状況です。
19年の回顧としましては、増加・不変の会社さんが非常に多くて、一部利益が出ているというような会社さんもありました。対応としましては新規顧客の獲得ですとか、あとはコストの増加にともなる値上げ、価格への転嫁を対応されたというような会社さんも聞いております。
2020年ですけれども、こちらの方引き続き堅調に推移するということで、減少というふうに書いておられる会社さんはなかったんですけれども、増加、不変というところで、比較的売上は増加方向に向いているんですけれども、売上は伸びるけれども利益は減るというような回答をいただいている会社さんが多いという状況です。
市場としましては、引き続き高機能化というところにスポットが当たっているというような話がある一方で、価格競争は引き続き継続するので厳しい状況。それに対しての対応ですけれども、新顧客の対応ですとか、あと原料価格のタイムリーな転嫁、または継続的なコストダウンというふうに対応しながら、何とか減少にならないように2020年を展望しているといるという状況です。
最後、コンシューマー業界ですけども、こちら、化学品業界の会社さんは割と川上の会社さんが多いんですけど、川下の会社も何社か入っておりまして、筆記具の会社さんですとか、接着剤とか、塗料ですとか、そういった会社さんをこの中でまとめさせていただいております。
2019年の市場の動向ですけれども、前年から比較的景気がポジティブに動いてきているという印象があると。一方で安価品の攻勢が非常に厳しいので、それに対応してどうやっていくかというのが課題だったというふうに聞いております。
19年の実際の状況ですけれども、各社さんは、減少の会社さんも多少ありますけども、比較的増加の会社さんが多かったと。どのように対応されたかというと、高機能品の値上げですとか、あと新製品の投入をされたりですとか、そういったところで増加につなげていったという会社さんが多いと思います。
2020年の展望ですけれども、市場としましてはやはり、引き続き安価品の攻勢が続くというところで、様々な対応をしていく一方で、若干景気が上向きになったのも影響しているかもしれないですけれども、個人嗜好の変化があるということで、そういったところにどうやって対応していくかというのが2020年の課題だというようなご説明を聞いております。
2020年の各社さんの予想ですけれども、残念ながら19年ほど全てが増加というわけではなくて、不変の会社さんが非常に多いというところで、やはり販売促進をしていくのもコスト等かかっていきますので、そのあたりの対応と、あと価格競争ですね、こちらにいかに対応していくかというところに注力していく必要があると感じておられる。
簡単に全体のまとめをさせていただきますと、19年ですけれども、売上増加しましたというふうにご回答いただいたのは52市場のうち25市場で約半分。国内景気ですけれども、こちらは非常にポジティブな印象をもたれている会社さんが多いと。新製品の上市ですとか、新規顧客の開拓、こういったところにも進展があったと。
一方で、コストですとか、そういうところでの価格を含めた競争が激しいというお話しをたくさんいただきました。また19年、アルゼンチンの方の、まあアルゼンチンだけではなくて他のラテンアメリカ諸国も非常に不安定な状況でしたけれども、こちらの方の影響も一部見られるというような印象です。
2020年の展望。こちらも52市場のうち27市場ということで、約50%超が売上増加というふうにご回答いただいています。全体として、売上増加ですとか不変へのシフトというのが見られるんですけども、あとですね、高機能品ですとか新規顧客の開拓を引き続き、19年で成功した部分を20年も続けていくというようなご説明をいただきました。
価格競争が非常に厳しいですので、こちらについてどうやって対応していくのかというところが非常に課題になっている。それぞれ業界によって対応の仕方違ってくると思うんですけども、コストを削減するですとか、売価を対応していくとかというところでどう対応していくかというのが課題かなと。また、こちら2月1週目に化学品部会を開きましたので、その時にまだ新型コロナウィルスの影響というのはほとんどなかったんですけど、その時でもすでに、いくつか心配があるということでコメントをいただいていました。昨今、あれから1カ月くらい経っていますのでその状況も少し変わってきていると思うんですけども、こちらも注視していかなければいけないというような状況です。
副題のところですけども、各社さんからいくつかお話をいただいて、他の業界の方と重なっていますけれども、特に、その場で話題になった移転価格税制の改善ということで、いかに国際標準の移転価格税制をブラジルにも展開してもらえるかというところでかなり話題になりました。それ以外のところに関しては他の会社さんと同じような感じかなと思います。
以上です。

司会
青木さんどうもありがとうございました。いまご説明いただきました説明に関しまして、会場の中からご質問のある方、挙手をお願いしたいんですけれども、いかがでしょうか。お願いします。

発言者
ボルソナロ政権下で農薬の承認の迅速化、簡素化を図っていると聞いていますけど、日本の企業とか業界にメリットは、、

青木部会長
今すぐにメリットというのは中々出てこないんですけれども、変えて行こうという機運は感じています。ただ一方で、農薬に限らないんですけれども、Anvisaの認証ですとかそういったところはやはり時間もかかったり、進展状況が見えないとかですね、ここにも明瞭化と書かせていただきましたけれども、そういった問題がありますので、その点に関しては引き続き注視していきたいと思っております。

司会
ありがとうございます。他にご質問等ございますでしょうか。青木様、あらためましてありがとうございます。

電機・情報通信部会
小渕洋 部会長代理
ただ今ご紹介に預かりました、わたくし小渕と申します。部会長の中田が急遽登壇できなくなりましたので、代理で発表させていただきます。記憶に間違いがなければ、確か半年前にも同じ状況だったんじゃないかなと思いまして、これが最後だと私思っていたらば、今回も皆さんの前に登壇できてとてもうれしく思っております。それでは発表いたします。
まず部会のアンケート結果、このご報告を申し上げたいと思います。昨年2019年度の回顧は、半年前、8月の時点の展望と比べて、全体的に悪化してしまっているという状況でございまして、これは思ったほどブラジル経済が回復しなかったことの表れだというふうに考えております。
一方で今年2020年の展望ですが、去年よりも悪化すると考えている企業は一社もなくですね、回答いただきました全部の会員企業が今年は維持ないしは改善するだろうというふうに前向きに考えておる状況でございます。
次に、ビジネスに影響を与えたもの、去年の回顧では、まず一年間を通して続いてしまいました通貨レアル安による影響のコメントが最も多かったというのが挙げられます。それから続いて、隣の国のアルゼンチンの政治・経済の不安定さ、これを挙げる企業も非常に大きかったと。それから、ボルソナロ政権の改革の遅れといった政治的要素がこのふたつに続いたということでございました。また、どちらかというとネガティブなコメントが多かった一方で、不景気を脱出した感があるというふうに述べられた会員企業ですね、改善の兆しを感じている会員も何社かあったという状況でございます。
次に今年の展望でございますけれども、既存ビジネスの拡大、それから新規ビジネスの獲得を目指す。それから、政府による改革が終わりまして公共案件が活発になることへの期待。これらのような前向きなコメントが今年に対して目立つということをお書きしておきたいなというふうに思います。
それから一方ではですね、引き続きでございますけれども隣のアルゼンチン、それから米中関係も含めました内外の政治経済全般的な不透明への懸念というのが聞かれたという状況でございます。
次に市場。ブラジルの3件の市場を代表に出しております。このページはTV市場です。TV市場は2018年のワールドカップ以降好調を維持している状況でございます。対前年比ではワールドカップ特需の影響で前年割れしてしまったというのもあるんですが、全体的に販売台数はこのTV市場、好調をキープしていると言えるところです。一方で右側のオーディオの方は中国・韓国勢の市場への参入、それから需要が伸び悩んでいるということが背景にあり、苦しい時期であったという状況です。
続きまして主要な家電製品です。TV以外の家電製品。これはマナウスの生産の推移の話ですね。ブラジル経済が回復基調にあることを示すように、2016年を底に全体的に、ここにある色んな商品、全体的に売上は伸びてきているという状況です。ただし国外の経済が不安定なことにより、いつまでこの比較的好調な状態が続くのか懸念があるというふうに見ている次第でございます。マナウス全体の売上における電機電子機器は全体の27%を占めておりまして、パソコンだとかの情報機器が22%、それからバイク、15%、これが伸びてきておりますので、ここにある電気電子機器の売上比率が少しずつですけれども減少傾向にあるというのが特徴で挙げられます。
次はブラジルのファクトリーオートメーションの市場動向を示したものです。これを示すために、自動車産業だとかに左右されますので、そのデータを挙げて間接的に述べさせていただいているデータなんですが、いわゆるファクトリーオートメーションですね、インダストリアル部門が自動車産業に非常に左右されてしまいますので、このデータを使って説明させていただいている次第です。
ブラジルのGDPは2017年よりプラスに転じていますが、インダストリアル部門のGDPは1年遅れてですね、2018年よりプラスになっている。それから自動車生産台数は2016年が底で、昨年約300万台まで回復してきたところでございますので、工作機器の輸入台数も回復してきている、こういう傾向にございます。これらの回復の傾向によってファクトリーオートメーションシステムのマーケットは、2020年、今年は成長するというふうに期待されている次第でございます。
ITクラウドについて述べさせていただきたいんですが、2019年はクラウド型の決算やWeb会議システムなどの業務で使用するアプリによるネットワークの品質や容量の需要が増加し、あとはこれらのセキュリティ対策、これらの投資が非常に増加してきているので、この市場の景気は回復する傾向にあります。2020年もこの傾向は続くと見られておりまして、またアメリカのAmazon社がブラジルで2億ドルのクラウド投資を予定するなど、市場は拡大の見込みとなっています。世界のクラウド市場全体を見ますと、Amazon社とMicrosoft社の2強が非常に大きな部分を占めておりますけども、3位以下を含めて各社伸びている状況であることで、ITクラウド市場というのは非常に拡大傾向にあるという状況でございます。
ブラジルにおけます携帯電話回線の契約数について説明させていただきます。携帯電話、ブラジルの市場は首位を走るVivoの一人勝ちが続いている、この1社のみが契約数を伸ばしている。一方、4Gの契約数では各社が急激に増加をさせており、4Gのネットワークへの移行は順調に進んでいるという状況です。5Gの世界ではなくてまだ4Gが半分くらい、ようやくなってきているというのがブラジルの携帯でございます。また、Vale社がですね、ブラジル初のPrivate LTE、これは4Gの自社ネットワークの技術なんですけど、Valeが進めているというような事例がございまして、4Gへの投資がいま盛んに行われているというような状況でございます。まだ5Gの前の4Gがこういう状況だというふうにご理解いただければよろしいかなというふうに思います。
次は、通信可能なエリアを示すカバレッジを人口比で見ているものでございまして、前の世代の3Gで99.8%で、4Gでも96.9%まできていて、3Gと4Gのネットワークでほぼ、人口に対するカバー率というものはほぼほぼ100%に近くなってきているということが確認できます。カバー率は3Gと4Gの両方で100%近くなってきているというのがブラジルの状況です。
一方で、右側ご確認いただきたいんですが、国土の何%にこの携帯の電波が届いているのかというのを見ますとですね、ブラジルは72%、69位ですね。69位で72%ということで非常に低いんですが、これはご想像できるかもしれませんけど、国土の中にアマゾン地域なんかが含まれていて、ここには人がいない、電波が届く必要のないエリア、これが加算されておりますので、カバー率は低く出ていますが、全体的には相応に高いかなというふうに理解している次第です。
次に5Gの開始状況について説明させていただきます。これは先程吉田さんの方からちらっとお話しがありましたけども、昨年の8月のシンポジウム以降あまり変化がない、あまり多くは語れないのが状況であります。ブラジルではですね、今年2月に5Gの周波数の割り当て入札のパブリックコンサルテーションがスタートいたしました。まあ入札が早ければですね、今年の末ないしは2021年の初めに開始するというふうにブラジル政府も見こんでいるような状況でありますので、少しまだブラジルにおける5G対応はもう少し先になるのかなと見られている次第です。ブラジルのこの5Gの、巨大市場ではありますけども、中国、米国、欧州も開始しておりますので、各国が非常に注目しているところでありますので、ぜひ我々も見ていきたいと考えている次第です。
次に、先程は携帯電話でしたが、固定回線、固定電話の契約数についてです。これは右肩下がりに減少中で、ご想像の通りだと思いますけども。一方でですね、ブロードバンド回線の方は増加しているという状況であります。
ビジネス環境の変化ということで説明させていただきます。まず最初にマナウスフリーゾーンを取り巻く環境に触れさせていただきます。マナウスフリーゾーンに影響を与える物として他国とのFTAが挙げられますが、昨年はメルコスール、および韓国、EUとのFTAが順調に進んでいます。今年に入り、EU内部で一部メルコスールとのFTAに対する反対の声、それからメルコスール内でもアルゼンチンの新しいフェルナンデス政権、これがメルコスールに反対する動きを見せているなど、順調に進まない可能性が出てきているという状況下ですね、日本勢としては韓国勢、EU勢に対抗するために、日本メルコスール間のEPAの迅速な締結が期待されている。一方で、マナウスフリーゾーンですが、競争力を維持するためにも、ブラジル政府による税制恩典が重要ですので、現政権が今年実行するであろう税制改革、それと強力な税制恩典ができるのか、ブラジル政府の動きも引き続きウォッチしていく次第でございます。
それから、中南米ですね、米中関係の影響についてご説明させていただきます。昨年5月以降、アメリカ政府による中国企業への禁輸措置が進められています。こういった中国のリスト入りしてしまった企業は、それぞれの市場で大きなシェアをすでに持っているという状況でございますので、これらの企業と取引のある機関、企業は対応策に今後も追われる可能性があり、現時点でも非常に大きな影響を与えているというふうな状況になっています。先程述べましたブラジルの5Gについて言いますと、やはり米国、それから中国の両方の政府がですね、ブラジルの政府にそれぞれアプローチをすごくかけていまして、ブラジル政府はどういうふうに対応していくのか、非常に大事な検討を進めているというふうに我々聞いております。まあブラジルのみならずですね、その他の中南米諸国も同じでして、日本勢としても中国・アメリカの動きを見据えた活動をブラジルのみならず中南米でもする必要があるというふうにみています。
コロナウィルスによるビジネスへの影響について述べさせていただきますと、まあ最近ニュースで話題が多いんですが、ブラジルでも注目度が上がってきている。われわれ関係でいきますと、2月末にバルセロナで予定されていました世界最大の通信事業者の展示会、MWCというのがあるんですが、これがコロナウィルスの関係で中止になってしまいました。各社のビジネスに大きく影響するというようなこともございました。海外出張を自粛する動きや、それからサプライチェーンの中で中国で作っている製品、部品がとどこおる事態が我々の業界でも出てきているという状況でございます。長期化するようだとですね、在庫がつきるおそれがありますので、今後対策の実施を考えている状況でございます。
最後に、商工会議所、それからブラジル政府、日本政府の皆皆様にお願いを簡単に述べさせていただければと思う次第でございます。
まず米中関係、それから隣のアルゼンチンを含めて、国内外の政治・経済が不透明なため、世界情勢、ビジネス環境のモニタリング、情報収集、これまでやっていただいていることを引き続きですね、お願いしたいと思う次第でございます。
それから2点目は、他国・地域に劣後しないためにも、日本・メルコスールのEPAの促進をお願いする次第でございます。
一方で、ブラジル国内で生産を行っている企業としては、ブラジルに対し恩典の維持、それから、繰り返しになりますがEPAの促進など慎重な対応を日本に対して図っていただきたいと思います。
最後になりますが、日本・ブラジルの間でこれまで以上に連携してですね、両国に資するインフラ・ビジネス環境構築、整備の推進をお願いしたいと思います。ありがとうございました。

司会
どうもありがとうございました。それでは会場の皆様から質問を受け付けたいと思いますけども、いかがでございましょうか。

発言者
コロナウィルスの中長期的な影響について。

小渕部会長代理
ありがとうございます。まあ私の私見になってしまうところもありますので、その前提でお聞きいただければ。もちろん、対面しないで色んなものができるという意味では5Gの技術というのが急がれるというのはあると思います。ただそれは、コロナがあるなしにかかわらず、世の中の趨勢というか需要として出てくると思いますので、あまり大きなインパクトというのはないかなと。早目にどんどん導入しないといけないという、スピードがつくという意味ではあると思います。

司会
ありがとうございます。その他ご質問ございませんでしょうか。

発言者
ちょっと答えにくい質問で恐縮なんですが、サプライチェーンの話ですね。対応策をいろいろ考えているということで、中国製部品のですね、調達、中国以外からも融通してもらって、それがとどこおった場合、どんな対策が考えられるのかという、一般論としてもし何かあれば教えていただきたいのですが。

小渕部会長代理
一般論としては、中国のみならず、他の地域にリスクをdiversifyしときなさいという話なんだと思うんですが、それが先にできてなくて中国に発注していた場合はやはり影響は多少は受けるかなと。投資をするのにやはり時間がかかってしまうので、影響は出ざるを得ないかなと。それから、生産の部分はですね、多少の遅れはあったりしても、少しずつ戻ってきている、私どもの周りでは見えていますので、ただこれがどのくらい、コロナが長期化するかとか、ないしはもっとむずかしい局面が出てくるとか。究極的にはやはりサプライチェーンのリスクをdiversifyさせて対応するしかないなというふうに思っているので、調達手段を活性化する。全地域に広がっていくとそれも回らなくなることも想定されますので、非常に回答が難しいご質問だなど。代わりにウルトラCがあればぜひ。

司会
ありがとうございます。本日9名の方が電話回線でご参加されているというということで、在宅勤務、テレワークが非常に多くなっていまして。野口さんの方からキーワードで、ITクラウド、ブロードバンド、こういった話があった訳なんですけども、どうなんでしょうか。こういうコロナウィルス騒動をきっかけに仕事の仕方ががらっと変わる潮目になるかもしれないなというような。まあプラスの側面もあるのかなと思いながら部会のお話しを聞かせていただきました。情報通信部会のお話し、時間の関係もありますのでここまでにさせていただきたいんですけど、どうもあらためましてありがとうございました。

司会
それでは続きまして食品部会の発表に移りたいと思います。食品部会の佐々木部会長よりご報告いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

食品部会
佐々木達哉 部会長
食品部会の部会長を拝命しております、ブラジル味の素の佐々木でございます。よろしくお願いいたします。次のページお願いいたします。
こちらが本日の発表内容になります。次のページお願いいたします。
こちらが食品部会の会員企業様の社名でございます。主登録17社、サブ登録44社で、61社の企業様にご加盟をいただいております。その中でグレーで示しております企業様から今回アンケートを頂戴いたしまして、部会の中でもアンケート内容を議論し、本日の発表内容についてまとめたものでございます。次のページお願いいたします。
まず市場および会員企業状況ということで、何枚かでご説明します。
食品業界に非常に密接に影響しております小売市場全体の動きでありますが、2016年以降回復基調が続いておりまして、2019年も継続しているという状況でございます。
一般のスーパーマーケットについては少し落ち気味ではございますが、前回のこの会議でもご紹介しました通り、キャッシュ&キャリーと言われます大型の業務用のスーパーが伸長しておりまして、これは統計上も出ておりますし、各社様からのレポートの中でもその状況が明らかになっているということで、全体を押し上げる大きな原因になっているというふうに思います。
また外食の市場については、一時期不透明感が出ましたけれども、基本的には安定して拡大傾向が続いているというふうに統計データ上も出ております。次のページお願いします。
市場および会員企業様の状況ということで2枚に分けてご説明します。
まず1枚目は調味料、醤油、酒類、コーヒー、チョコレート、即席麺といったところでございます。
調味料については、家庭用全体微減の中でキャッシュ&キャリーは伸びているということが特徴かなということ。
また、醤油につきましては、現地メーカーの台頭もあり、輸入醤油は厳しい状況が続く中で、後ほども触れますけども、現地加工の液体調味料の販売を強化する中で、このことが徐々に成果につながりつつあるという報告もございました。
酒類については、清酒の市場は数%の成長と推測されますが、第4クォーター以降になって消費の回復基調が見られるということであります。
またコーヒーにつきましては、原料のコーヒー生豆が歴史的な豊作が続いておりまして、原料・製品共に相場が低推移ということであります。国内の消費は伸びが鈍化し価格競
争が激化するということですが、輸出品については国際競争力を維持しているということでございます。
チョコレートについてですが、業務用の市場にですね、海外の大手さんの参入もありまして、かなり競争が激化しているということで、為替、原料相場等々の変動もある中で価格が中々上げられないということもあり、非常に厳しい環境であるというようなご報告をいただいております。
即席麺につきましては、家庭用全体では横ばいという流れの中で、キャッシュ&キャリーが伸びているということと、世界の中でも何カ国かで即席麺を展開しているNestleさんがMaggiブランドの即席麺、これはブラジルからの撤退を昨年発表しておりますということで、大きなニュースもございました。次のページお願いします。
乳酸菌飲料ですが、こちらは後ほど触れますが、消費者の低価格志向が継続する中で、マーケットの中では安価な類似品や大容量品の販売が目立つということであります。
外食については、これはラーメンの事例になりますけども、市場は全体として伸びているということで、専門店も徐々にではあるが増えてきたということがあります。
それから少し飛ばさせていただきまして、BtoBの素材のところですけども、こちらはサブ会員の皆様からも情報をいただきまして、先程の部会の発表にもありましたが、健康志向やナチュラル志向に繋がる需要は堅調に推移をしておりまして、一方でコモデティーな素材は価格競争が激化しているという状況ということでございます。市場状況に絞ってご紹介させていただきました。次のページお願いいたします。
こちらは、これからのキーワードということになります。市場の今後のポイントということでありますが、どの部会でも触れられております新型コロナウイルスの影響、それから為替の変化等々の状況が大きく影響いたしまして、これは現時点では不透明と言わざるを得ないこともございます。またボルソナロの政権の運営の国内市場に与える影響も、良い面悪い面両方ございますが、これも中々予測できないという中で、まあ変化にどう備えるかということが各企業の共通の心持ちであるということが一つということと、あとは食品の中でも、一般のお客様、消費者のニーズの変化が少し見られますので、ここをどうやって見据えて準備していくかということが非常に重要だろうということでございました。これにつきましては、この後少し実例をご紹介しながら触れていきたいというふうに思います。次のページお願いします。
まず、将来の環境変化への備えということでございますけども、これは景況感にかなり敏感に影響を受ける業種でございますので、現場の創意工夫によってコストを下げると。あるいは資産の効率化ということで、アセットライトというようなことを心がけるということ。それから今回、何社かの会員様からのレポートにありましたが、企業の提携ですとか統合によって組織力を強化して、サービス領域の拡大していくという事例がございました。具体名を下に書かせていただいておりますけども、これは先程の機械金属部会でもご紹介のあった事例も含まれておりますが、こういった傾向がでてきていると。
それから2番として激しい為替変動への対応と。これも今に始まったことではございませんけども、備えていくしかないだろうというようなことでございます。
ここから少し、各会員企業様の実例も踏まえながらご紹介をしたいと思います。
まず、新たな市場トレンドや消費者ニーズを見据えた準備ということで、まず新たな消費者ニーズの探求ということで、二つ事例を挙げております。
まず外食ですが、これは一幸舎さんの例でございますが、夏場対策メニューの積極投入ということで、ラーメン、これは日本でも同じですけども、夏場の売上をどう維持するかということが非常に重要という中で、日本の技術と現地の嗜好をあわせながら、夏場の新しいメニュー展開に意欲的に挑戦されているということで、つけ麺あるいはカレー餃子等の販売が好調ということでございます。ぜひお試しいただきたいと思います。
一方で、残念ながら、満を持して投入した冷やし中華は受けなかったということで、この裏に数々の失敗がということでございますが、こういったトライをしていくことが非常に重要ということであります。
また、醤油につきましては、醤油と書きながら醤油ベースにこだわらないということになっていますけども、新しい液体調味料ということで、前回キッコーマンさんの事例として「ワサビマヨネーズ」の事例を紹介し、これが好調ということでありましたが、さらに続きまして、「ハバネロマヨネーズソース」や「オレンジソース」がラインナップを拡充し、ブラジル人の新たな需要を掘り起こされることに成功したということでございます。次のページお願いします。
同じく新たな消費者ニーズの探求ということで、即席麺、カップヌードルでございますが、こちら即席麺の領域ではまだまだ袋麺が中心の中で、カップ麺の割合が徐々に増えている、かつ伸びているということでございます。その中で、昨年、カップヌードルのカレーを発売いたしました。カップヌードルのカレーは日本では上位に入る売れ筋でございますが、ご案内の通りブラジルではまだカレーが一般的ではない中で、新しい挑戦ということでございますと。試行錯誤を始めておられるということでございまして、特にサンパウロ地区を中心に重点的な取り扱い拡大を図っておられるということですので、ぜひお見かけになった際には試していただければ、応援いただければと思います。
また、調味料の例では、シュラスコ用の「AJI-SAL」、これはアジシオですね、が非常に好調ということでございまして、後ほど出てまいりますけども、ブラジルは非常に塩分摂取が多い国という中でアジシオが売れる事を素直に喜んでいいのかという部分はございますが、塩100%に比べて塩と味の素の組み合わせは塩が抑えられるということで、うまみの部分が満足感をサポートするということが、どのぐらい効いているか分かりませんけども、非常に好調でございます。日本に対しては、Aji-Salは調味料ではなくてシュラスコ用のメニュー調味料であるというふうに説明していま切り抜けておりますけれども、非常に好調ということで、こちらは関連陳列と申しまして、シュラスコ用の炭ですとか、トングとかナイフとか網の周りに並べるという販売手法をとって地道に広げておりますので、ぜひこちらも、ご覧になりましたら、あこれだということでお勧めいただければと思います。次お願いいたします。
同じく新たな商品技術ということで、こちらはイグアスコーヒー様の事例ですが、20年8月からフリーズドライ商品の増産を開始するということで、より付加価値の高いフリーズドライ製品の増産により、商品ポートフォリオの見直しを図るということを予定しております。
次のページ。こちらは健康志向ということでございます。減塩・減糖・減脂といった健康志向、それからナチュラル志向の強まりは、ブラジルにおいても確固たる動きになってきております。その中で、こちらのナガセさんの事例ですけれども、機能性の糖質・酵素剤と、現地需要に対するソリューションの創出することで、減糖やクリーンラベルといったナチュラル志向をとらえて、数々の提案を実施されているということであります。
また、乳酸菌飲料、ヤクルトさんにおかれましては、「プロバイオティクス」の概念の普及ということで、こちらも先程述べました通り、まがいものに近いようなものが出てくる中で、正しいプロバイオティクスの概念を普及すると言うことで、YouTubeを使って健康関連の情報を発信したり、健康教室の開催を積極的に行われているということでございます。プロバイオティクスは腸内の細菌環境の改善でございますが、ご存知の通り免疫の改善につながります。コロナウィルスの対策にも有効と、いま言い切るわけにはいきませんけれども、毎日の積み重ねが免疫を高めるという代表的な例でございますので、ぜひ一日一本飲んでいただきたいと思います。
次のページでございます。こちらは前回も少し触れましたが、高付加価値志向ということで、低価格化と高付加価値化の二極化ということであります。こちらはアズマキリンさんの例ですけども、低価格帯の清酒を大幅リニューアルして、競合品と同価格帯でありながらもを維持しながら、圧倒的な中身品質を実現して、この部分がかなり販売大きく増加したということと、あわせまして、若年層向けのスパークリングな清酒のようなものも出しプレミアムをとっていくということで努力をされておられます。
最後のスライドになりますけども、食品部会、非常に一致団結して、企業の垣根を越えた積極的な交流や連携をやろうということで、工場見学ですとか、情報交換会等の企画もぜひしてほしいという声もいただいております。Team Japanとして、ブラジルの社会への、あるいはブラジルの消費者への貢献ということを図っていきたいと思います。規制変更、為替変動、コロナウィルス等、非常に逆境も多いですけども、また東京オリンピックが影響が多い業者さんも多い中で現在まだ開催について不透明な部分もあると思いますけども、開催を信じて2020年を乗り切っていきたいなというふうに望んでおります。以上です。

司会
佐々木部会長どうもありがとうございます。日々たいへんお世話になっている商品がずらりということで、ご説明たいへんどうもありがとうございます。それでは会場の皆さんからご質問を受けたいと思います。ご質問の方は挙手の上お願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
そうしましたら、ちょっと私の方から代表質問ということで。7ページのスライドですけども、これからのキーワードということでですね、消費者ニーズ(インサイト)の変化を見据えてということで3点挙げておられると思うんですね。新たな消費者ニーズの探究と、あとは健康志向。3番目は志向の二極化、高付加価値と低価格ということで3点挙げておられるんですけども、佐々木部会長の私見でも構わないんですけども、一つだけポイントを挙げるとされるとどれになるのかなということを教えていただけないでしょうか。

佐々木部会長
これはいずれも大事なポイントというふうに会員企業様からも情報をいただいていますが、まあ、私見も入りますけども、やはり、他の部会さんの中でも情報がございましたが、健康志向、ナチュラル志向については、これはグローバルのトレンドでございますが、ブラジルにおいてもグローバルと全く変わることなくこの志向が強まっている事を日々肌で感じております。減塩・減糖・減脂、ナチュラルというところについては、すでにグローバル企業さんもブラジルにおいてそういう商品を展開されておりますし、日本企業においてもそういう商品を品ぞろえを急いでいるというところもございます。またナチュラル志向についても、売り場を見ていただけますと、いわゆるオーガニックですとか、あるいはそういった商品が非常に増えているということも皆さんもお感じになられると思いますし、あとはちょっとここに書いてありましたけども、今グローバルのトレンドの中で非常に大きいと言われているエシカルと呼ばれます、倫理的消費の世界が、食品の世界でもかなりきております。これはプラスチックの使用を抑えるですとか、あるいは袋のロス削減ですとか、そういった取り組みに取り組んでいる企業を応援しようという動き、これ実はブラジルの中でも増えてきておりまして、ブラジルは他の国と違うという見方は全く通用せずに、グローバルと非常に同じ歩調を歩んでいるということが、特に最近際立ってきているのかなというふうに感じて、ここにきちっとついていくことが本当に必要だなというふうに感じております。

司会
どうもありがとうございます。それでは食品部会の説明をこちらで終了させていただきたいと思います。佐々木部会長ありがとうございました。

運輸サービス部会
今安毅 副部会長
いまご紹介に預かりました、副部会長を務めさせていただいております今安です。よろしくお願いします。
運輸サービス部会です。5つのそれぞれの業界から発表をまとめておりまして、若干長い時間となりますけどもご了承ください。
まず、スライドの文字がちょっと小さいので、左側、ピンクのところが外航コンテナの貨物輸送量の推移ですね。真ん中、緑が完成車輸出入台数の推移。一番右のブルーの方はばら積み主要貨物の輸出量推移で、これを見ながらお聞きいただければと思います。
では、まず海運業界です。海運業界については、ブラジルに主に関係するコンテナ輸送、自動車輸送、ドライバルク輸送、いわゆるばら積みの現状について簡単に説明いたします。
2019年の回顧についてご報告します。まずコンテナ輸送ですが、マーケットは堅調に推移し、2018年と比較し、ブラジル外航コンテナ輸送量は3.1%増加しました。米中貿易戦争に伴うトレードパターンの変化、割安な為替、一次産品の生産量の増大を受け、南米東岸の輸出は旺盛であり、スペースには逼迫感が見られました。
次にブラジルの主要貨物である自動車の輸送ですが、ブラジル国内の新車販売台数は279万台と前年を8.6%上回る好調でしたが、2019年の輸出台数は前年比マイナス32.1%。輸入は同マイナス4.1%と微減となりました。この輸出の激しい落ち込みは、自動車輸出の約7割を占めるアルゼンチンの経済危機によって新車の販売が急減しているためです。
続いてドライバルク輸送です。2019年のブラジルからの輸出量は5億9156万トンと、前年比マイナス6.5%でした。特に1月に発生したVale社の鉱山ダム決壊事故による鉄鉱石輸出の急減、中国における豚コレラの大流行で飼料輸入が減少するなどの影響が顕著でした。3クォーター以降は鉄鉱石輸出も回復基調にありましたが、上期の減少をカバーするにはいたりませんでした。
続いて20年の展望です。コンテナ輸送ですが、ブラジル経済は緩慢ながらも成長が続くことが予想され、貨物量も増大を見込んでいます。
次に自動車輸送ですが、完成車輸送は、南米各国の経済成長の不確実性、鋼材価格の引き上げ圧力など課題はあるものの、慎重ながら楽観的な見方を示しています。
次にドライバルク輸送については、Vale社の鉱山ダム決壊によって閉鎖していた鉱山の操業を順次再開してきており、前年超え輸出量が見込まれています。穀物に関しては前年並みに推移すると見られています。砂糖は国際価格低迷などの影響を受けて、他作物へ転作する動きが一部で見られますが、順調に育成している事から、サトウキビ生産量はわずかに増加するものと見込まれます。しかし製糖業者がエタノール生産を強化する動きがあり、砂糖の生産量、輸出量はともに前年比横ばいで推移すると見込まれます。
次に、国連の船舶による大気汚染防止規則の改訂で、2020年1月1日より船舶からの硫黄酸化物排出規制が全世界的に強化されました。同基準を遵守するため、船舶燃料を高価な低硫黄燃料へ切り替える準備を周到に進めていましたが、十分な検討期間を設けたこともあり、懸念されていた供給不足による大きな混乱もなく乗り越えることができました。割高な低硫黄燃料を使うことによるコスト増についても、概ね理解をいただいており、この場を借りてあらためて御礼申し上げます。
最後に新型コロナウィルスの影響について、現時点では限定的ながら、中国での工場の操業停止が長引けばブラジルでの生産業にも波及し、貨物輸送量に影響が出てくるものと思われます。次のスライドをお願いします。
次のスライドのグラフもちょっと字が小さいので。左の青いグラフ、輸出取扱数量推移。右の赤いグラフが輸入取扱量推移。下が原油・ジェット燃料価格推移となっています。
次に航空貨物業界です。2019年の回顧ですが、まず世界動向は米中貿易摩擦の影響を大きく受け、貨物重量は2009年のリーマンショック以来の低い水準となりました。また成長率では2012年以来のマイナス成長に転じました。航空貨物業界の2019年は非常に困難な年になりました。米中貿易摩擦の影響はアジア発着路線の貨物減少が34.6%と、非常に大きなインパクトを残しています。
南米の動向もマイナス成長。ブラジルの主要空港はグアルーリョス、ビラコッポスの輸出入取扱数量を見ますと、輸出入ともに2017年、2018年の実績を下回りました。
燃油費の動向は、2019年下半期、原油とジェット燃料の価格は全体的に低調に推移しました。これは世界的な需要の低迷と供給のバランスがとれているためです。
次に2020年の展望について、まずIATA、国際航空輸送業協会が年初に航空会社CFO、貨物責任者を対象にしたアンケートを実施し、その結果、対前年増加するが減少を上回る結果となりました。これは米中貿易摩擦の融和による貨物数量復調の明るい兆しに起因しているのですが、その後発生した新型コロナウィルス拡散により、状況は一変したと考えます。
中国ではまだ操業再開を見合わせている企業も多く、また1月末より欧米各国航空会社が中国発着便のキャンセル、その他地域の減便も予定されており、結果的に貨物供給スペースの激減によるスペースの取り合いで、一部運賃高騰が顕著になっています。
サプライチェーンが崩れ、部品、製品の供給に遅れが生じ、世界経済に大きな影響を与える可能性がある一方で、納期遅延の代替輸送として航空貨物輸送が飛躍的に伸びる可能性も想定されます。
燃油費の動向ですが、2020年、航空会社の燃油費は低減すると予想されています。理由として、ジェット燃料価格は今年の原油価格とともに下落しているためです。
最後に、航空貨物業界にもデジタルトランスフォーメーションの波が押し寄せています。これはeコマース市場への対応、ビジネス機会拡大や効率化を求め、航空業界でデジタル関連の投資が次々と行われているからです。オンライン予約の提供のプラットフォーマーの代表として、アメリカのFlexport社やドイツのcargo oneは徐々にパートナーとなる航空会社数を拡大。一方、本来航空貨物フォワーダー、国内輸送業者の範疇まで航空会社が取り組み始めてきています。各社生き残りをかけデジタルトランスフォーメーションを推進した新たな事業モデルにより、航空業界のビジネス生態系が変わっていく節目の年になると考えます。次のスライドをお願いします。
その他貨物業界です。2019年の回顧ですが、まずボルソナロ政権の下、インフラ関係は大きな飛躍が見られました。27案件、94億レアルの投資、54億レアルの助成金の創出は、インフラ省が実施したコンセッションプログラムの初年度の成果です。トラック運転手の待遇改善は進まないものの、懸念された目立ったストライキは発生せず、物流面への影響はありませんでした。
一方、陸上輸送トラック業界全体としては堅調に推移していると思われます。例えばメルセデスベンツのトラック販売は2021年まで予約が埋まっている状況で、業界が投資に転じていると考えられます。
次に、パラグアイからの輸入で、メルコスール免税が反故にされ、輸出入ともに申告が約1週間停止となった事例がありました。その後、審査が厳格になり、関税コードの審査、場合によっては罰金が発生しました。背景は不明ではありますが、密輸事件が摘発があったのではないかと推測いたします。
さて、2020年の展望です。新型コロナウィルスによる経済活動停滞が長期化すると、部材調達、他国への生産シフトといったサプライチェーンの変更等が発生し、貨物の集中、スペースのひっ迫、新規の物流ルート構築等により、物流コスト増が懸念されます。
連邦政府はインフラ省主導の下、2019年の実績を上回る44案件の民間へのインフラオプションを計画、投資額は90億レアルを目標としています。
輸入税関申告システムが導入されるのは2020年と言われておりますが、実際に導入されると想定できない事態が発生する可能性があり、輸入者は通関業者と密にコミュニケーションをとることが肝要です。
最後、ブラジルの通販やeコマースは拡大基調にあり、倉庫需要増、バイク便を含めた小口配送網のインフラ整備が課題となります。新聞記事、O Estado de Sao Pauloによると、サンパウロ市内から30キロに位置するカジャマール市は計130万平方メートルの倉庫群ですが、倉庫市場が激化して価格が上昇し、最も価値がある地域の倉庫として、高級オフィス外にちなんで「倉庫エリアのファリア・リマ」との呼び名がつきました。ちなみに2019年の第4市半期のリース料は1平方メートルあたり21.87レアル。これは前年同期比13%上昇しています。一大消費地であるサンパウロ市の至近であることに加え、主要高速道路へのアクセスが良いなど、戦略的なロケーションであることが要因で、国際企業の関心を集めている理由となっています。アマゾン配送センターがここに設立したのもカジャマールです。そしてこの傾向は今後さらに拡大すると思われます。
次のスライドに参りまして、航空会社です。2019年回顧として、まずIATA、国際航空輸送業協会が公表する航空需要をまとめてあります。指標は、旅客需要を表すRPK、有償旅客キロ、生産量を示すASK、有効座席キロ、その他、座席利用率、座席利用前年対比の4つの指標を横に並べています。
さて、伸び率の上位から順に、アフリカ、アジア大洋州、欧州、米州、ラテンアメリカ、中東の順になっています。現象として、RPKの上位、需要の高い上位ですね、アフリカ、アジア大洋州は逆にロードファクターが低いところが目立ち、需要が旺盛で規模を急拡大した割にはお客さんの入りがついていっていないことがうかがえます。一方で各国の国内線の状況、下の方にありますが、見ますと、好調なブラジル、日本がそれぞれプラス1.6%、プラス1.8%に対し、ロシア、中国はその上を行き、プラス3%、プラス3.7%。アメリカにいたっては何とプラス10.5%と、好調経済による内需が活発であることが読み取れます。
次に2019年の総括において、まあ今まで不況不況と言ってきてはいたものの、今の状況となっては非常にこれでも健全だったなと回顧しています。ではなぜそう思うのかといいますと、次に2020年の展望にいきますけれども、これはもう様相が一変しております。がっくりしております。現在発生している新型コロナウィルスの影響を、実はもろに受ける業界の一つと我々言えます。
ということで、真ん中に新型コロナウィルス発生と。まずIATA、国際航空輸送業協会は現地時間の2月20日、ついこの前ですね、新型コロナウィルスの影響による2020年損失額の推計という恐ろしいものを出しています。世界の航空会社全体の合計は、損失の合計ですね、約293億米ドル、約3兆2807億円になると予想。面白いのは主力のアジア大洋州ですね。この病気が始まった発祥に近い。この損害額が287億ドル、約3兆1136億円。全体の数字とあまり変わっていないという、恐ろしい。驚くべきは中国国内の損失ですけれども、中国国内のみで128億ドル、約1兆4336億円。全体の3分の1ぐらいの数字になっています。
また、影響の大きいアジア太平洋のRPKですが、発表によると、ウィルスの影響により13%減少すると。2020年ですね。今年、元々の予測値はプラス4.8というふうになっていましたので、行って来いでマイナス8.2%減ということをIATAは報告しています。IATAのアレクサンドル・ドゥ・ジュニアック事務総長、CEOは、今年は2008年のリーマンショック以来の需要低下を引き起こす可能性があるということも発表しています。
これはですね、この数字を見るとまだまだちょっと甘いというような感じが、私は感想を持っておりまして、これはともかく全航空会社の集計データではあるんですけども、平均の数字はまあこんなものかという損害額になっているという印象を持っています。ということは、我々は実感としては今、とりわけアジアの航空会社においてはより一層被害が大きいというふうに実感を始めています。
日本の各航空会社、個別では、全日空が3月28日まで中国線週間165あったのを81に減便、日本航空も同期間で中国、韓国、台湾、週112便あったものを41便まで減便しています。
また、アジアの主要な航空会社として、シンガポール航空、キャセイパシフィック航空、キャセイドラゴン、このへんは中国、発生源に近い所ですが、これは国内線もあわせると30から50%の減便になっています。これ、昨日発表があったばかりですが、ついにデルタ、UAも日本行きの便を4月30日まで減便という発表を昨日しております。アメリカンは飛んでいます。ただUA、デルタはそういうふうになっています。ついに日本も汚染国のような扱いになっています。
日本の国内どこも悲惨です。中部国際空港では1月と比較し、便数が6割以上落ち込んでおり、関西空港にいたっては週間計画便数の80%にあたる495便が欠航しています。さらに、旅客便キャンセルは実はその、機体下部のベリーと呼ばれるところに積まれる貨物の物流の停滞にもつながる懸念があります。
いま、JALの話で恐縮ですが、日本から中国向けの貨物が急増しておりまして、なぜか、特需になっております。ただ、飛んでいないもので、スペースが何週間も積めていない、搭載できない状態で、空港への搬入制限をかけております。こういう状況になっております。ではどうしているかといいますと、他社貨物便への振り替え、それと他社貨物便チャーターを買い取っている、スペース確保に奔走している。損害は計り知れない数字となりそうです。
最後に、ブラジルの市況に戻りまして、今のトピックスとして新航空会社の参入ですが、3月29日よりバージンがロンドンへデイリーを飛ばします。6月からはAzulがビラコッポス=JFKを開設。他にもヨーロッパ系の会社が5社ほど国内線に参入しています。若干明るい材料ではありますが、ちょっとタイミングがどうかなというところがありまして、いずれにせよシェアが若干少ないために全体の価格等に与える影響はかなり少ないだろうと。いずれにせよ、2020年は現時点まったく見通しが立ちませんが、一つ明確なのは厳しい年になるということです。
では次のスライド。最後のスライドですが、旅行業界になります。2019年の回顧として、まず国内航空券の発券枚数は前年対比プラス1.7%、売上額がプラス14%でした。発券枚数に対し売上額が顕著な伸びを示した原因としては、国内線単価の高騰が寄与したものと思われます。一方、国際航空券は発券枚数がマイナス8%、売上額がマイナス0.9%と、やはり出張減の影響で発券枚数は大幅に減少。ただ売上額はドル高レアル安の進行もあってレアル換算後の前年対比では微減程度にとどまりました。これデータはABRACORP、ブラジルビジネス旅行代理店協会の集計です。
次にホテル業界。ホテル業界の使用率は前年対比プラス4.1%。販売可能客室数あたりの客室売上、RevParはプラス10.9%と好調でした。これデータはInFOHB、ブラジルホテル業界フォーラムのデータです。
次にインバウンドとアウトバウンド。イベントを含む旅行業界の多岐にわたる業務のうち、今年はどの分野をとっても低迷しました。特に主力のブラジルから日本へのアウトバウンドや、その逆、インバウンドですね、が著しく減少しております。非常に苦しい状況となっております。なお、国内航空券は先程、プラスで良いという数字になっていますが、最近はウェブなど直手配ですので、旅行会社の単価には含まれておりません。
次に2020年の展望です。全体的な見通しとしては、ボルソナロ政権の経済政策が成果を発し始め、ブラジル国内の経済が好転すれば、レジャーや出張の需要も増えますので、今年はぜひそうなってほしいと願っておりましたが、ところが次の2020年の展望は、コロナウィルスです。やはりコロナウィルスで早速アジアおよび日本行きを取り消されるお客様が発生しています。また、日本国内の数々のイベントも軒並み中止や延期が余儀なくされており、今後感染が日本国内でさらに拡大していけば、日系旅行代理店にとっては大きな脅威となることは間違いありません。
インバウンドは今年、ブラジルでは際立った大規模イベントがないため、引き続き低迷。アウトバウンドは当初はオリンピック・パラリンピックということで期待されていたわけですけども、ただでさえ料金が、日本の旅行、ホテル代等々高いのに、もしこのコロナウィルス拡大のタイミングにぶち当たった場合は、ほぼブラジルからの個人客の伸びは見込めないと考えています。
ブラジルの航空市場でありますが、100%外資の航空会社の参入が最近認められましたので、既にノルウェーのnorwegianやチリのスカイエアラインやジェットスマート、アルゼンチンのフライボンデイがブラジルに参入し、今年はさらにスペインのグロバリアも参入ということです。これらの航空会社のシェアは極めて小さいので、先ほど申し上げたように、すぐには運賃引き下げにつながるということはありません。
最後、2020年の上期のトピックスです。ブラジル保健省が警戒感度を高めるため、新型コロナウィルスの感染の疑いのあるものの定義を発表しました。対象は発熱および呼吸器系の異常(咳や呼吸困難等)があり、それら症状の発症から14日以内に、16カ国とありますけども、主要なところだけ、中国、日本、韓国、イラン、イタリア他、16カ国・地域への渡航歴がある人と指定しました。長期滞在者については、ブラジル入国時には搭乗便や乗り継ぎ経路、空港滞在時間を聞かれるというふうになっておりますけども、ただこの確認は今のところブラジルでは入国制限等を表すものではなくて、疑い症例の早期発見や迅速な対応を容易にする意味で行いますとなっています。決して入国制限は意味していないということですね。
最後、LATAM航空とDelta航空グループが戦略的パートナーシップの提携を発表しましたということで、今年たぶん、AlianceからLATAMが出ちゃうと思うんですが、ではどうなるのか、今までと何が変わるのか、この情報はマーケットにはほとんどないので、旅行業界から、何かあったら説明補足してほしいと。しかたないので、JALとの関係についてだけ少し補足しますと、本社からの最新情報ですが、LATAM航空グループは4月30日付けでワンワールドを脱退しますと。ただ、スカイチームにはいかず、引き続きワンワールド航空会社との個別の提携を継続するということです。5月1日以降のJALとのコードシェア路線、便名ともに現行通り。便名も変わりません。マイル積算も利用可能。LATAM運航でもJALコードシェア便名さえついていればフライオンポイントもつきますというふうになっています。つまりワンワールドの特典以外は5月1日以降従来通り提携を続けるとしています。まだLATAM側の正式な発表待ちではありますけども、発表次第旅行会社を経由して皆様に周知して参ります。
以上、これで運輸サービス部会の発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

司会
ありがとうございました。それでは会場の皆様から、今出てきました運輸サービス部会の説明につきましてご質問を受けたいと思います。いかがでございましょうか。新型コロナウィルスの影響を非常に受ける厳しい状態だという情報共有をいただきまして誠にありがとうございます。それでは時間の都合もございますので、運輸サービス部会の発表を終了させていただきたいと思います。あらためましてありがとうございました。

司会
これが最後の部会となります。前半から通じて10番目の生活産業部会となりますが、今川部会長よりご説明いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

生活産業部会
今川尚彦 部会長
生活産業部会の部会長の今川です。本日はよろしくお願いします。非常に長時間の参加で皆さんお疲れでしょうから、ささっとご報告したいと思いますので、最後までがんばってお聞きください。
それでは、まず始めにですね、当部会は旧建設不動産部会と旧繊維部会が一緒になりましたので、若干ちょっと内容にですね、ばらつきがありますけども、例年通り、まずは各部会員のアンケートの結果を基にした各部会企業の現状についてと、次に業界の傾向としての建設業界と不動産業界についてのお話しをします。最後に繊維業界より、これも毎年同じような内容になりますけども、リビング関係の国際展示会の様子を報告させていただきます。
まずご覧のグラフですけども、これは部会員6社の2017年をベースとした2018年、2019年の受注実績、それと2020年の予測になります。業績が最も伸びているのが、前回のシンポジウムでもご紹介させていただきましたけれども、エネルギー関係のD社です。D社がこの2年間の売上、非常に、約15倍ということで、大きな成長をされています。今年も非常に大きな大型案件の受注を見込んでおられるということです。
次に左側のA社、B社。こちらは建設関係になりますけども、昨年の実績では多少の開きがあるんですけども、今年の予測としてはほぼ同じぐらいの伸びということになっております。ただ、案件としては増加が見うけられるんですけども、工事案件がいまだに小型、小工事、さらに厳しい価格競争の中ということが近辺の大きな課題となっております。
続いて賃貸住宅およびオフィス斡旋業のC社になります。こちらも一昨年、昨年ともに増、今年はさらにもう少し伸びるという予測になっております。
続いて、先ほどD社の説明をしましたので、その横のE社になりますけども、こちらはエンジニアリングプラスチック事業、あとバイオ事業を主体にしておりますけども、昨年は約10%の伸びで、今年もほぼ同率を見込んでおります。
最後に医療、身の回り品のF社は、昨年は5%の伸びでしたけども、今年もほぼ同じぐらいの予測ということになっております。
総じて言いますと、各社2020年は業績が改善に向かっていくということを予測をしております。
それでは次に業界ごとの傾向について説明いたします。まず建設、不動産の順で述べさせていただきます。
まず建設業界です。ご覧のグラフは2018年まででございますけども、建設部門のGDP、それと全体のGDPを比べたものです。緑色がこれが全体のGDP、紫色が建設業界のGDPを表しておりますけども、実に5期連続でマイナスということが続いておりました。2018年は全体が1.1%、最終的には1.3%という成長率になりましたけれども、建設に置いてはマイナス2.5%、さらにマイナス3.8%ということで、2018年までは非常に厳しい建設業の時代でした。
それに対しまして、昨年、これは第3クォーターまでの数字しか出ておりませんけども、全体のGDPが1.1に対して1.7%。通年予測、近々最終が出ると思いますけれども、全体が約1.2%に対して、建設が2%ということで、実に6期ぶりにですね、昨年はプラスに転じたということになっております。
大きな要因としては、住宅の需要が非常に高まっております。2020年、今年はさらに3%という予測も出ております。
一方ですね、民間企業の設備投資、まあ建設投資ですね、これは非常に残念なんですけど、日系企業を除きですね、昨年後半より徐々に建設投資というのは増えてきております。ただ、大幅に落ち込んだ工事需要の回復、5年連続低下しておりますので、まだ工事需要の回復には至っていません。非常に厳しい受注競争も続いているんですけれども、これが続けばですね、まあ業界自身の復活が見えてくるかなと。まあ来年、来年というか下期の次回の報告の時はさらに良い報告ができることを期待しています。
続きまして、建設就業者数についてです。これも2013年から18年まで約120万人の雇用者が減っております。この状況は、昨年やや増えまして、緩和されております。2019年上期の雇用者数は6万5000人増えております。通期としましては14万5000ということで、全体が60万人、昨年雇用者数が増えておりますけども、その4分の1が建設従事者ということで、建設業が雇用者数増の牽引をしたということが言えると思います。
雇用者数が増えたことで、2019年末の建設就業者数は205万人を超えて、これでもまだ全体就業者数の5%という状況です。雇用者数の増加は、数字としてですね、まあようやく建設業の回復が始まったのかなということが思われます。
続いて不動産部門についてです。先程建設部門の今年のGDP予測が3%ということでお伝えしましたけれども、公共工事や民間投資の伸びに比べまして、住宅不動産部門が非常に大きく影響をしております。ご覧のグラフは2017年の1月から2019年の9月までの全国のマンション販売戸数と成約戸数の累計になっています。販売が青線、成約が緑の線となっていますけども、ともに右肩上がりに伸びているのが分かります。
サンパウロ住宅組合によれば、昨年のサンパウロ市の新築マンション市場は、販売で5万5000戸、成約で4万4700戸。2018年と比べてそれぞれ約50%伸びております。最近は特に目立つのが、低所得者層のマンションと、それと一戸あたりの面積が45平米、非常に小さな物件が増えているということです。
続きまして、住宅不動産の好況の背景には、これも今まで皆さんの発表からでもあったと思いますけども、金利の低下があります。以前は二桁だったSelicの金利ですけども、2017年以降切り下げが続いてですね、昨年末には4.5%、今年2月には過去最低の4.25%まで落ちております。これによって、ブラジル不動産開発協会によれば、住宅ローンの決済額が1年前に比べて25%から30%ぐらい下がっていると。安く借りれるということですね。このためローン申し込みが非常に増えています。基本金利が1%下がるごとに、ローンの申し込みが280万件増えるというふうに言われています。特に中古物件のローン申し込みが殺到しているということです。
それと、あとジェトゥリオ・バルガス大学の調査では、今後5年間の住宅ニーズは全国で1400万戸。景気が本格的に回復するまで住宅価格は抑制気味で推移すると見られており、住宅不動産市場はしばらく好況が続きそうです。
市場の好況は不動産ファンドにも支えられています。銀行金利の低下で、利回りに不動産ファンドが人気を集め、2017年までは700億レアル程度だったのが、2018年には860億レアル、2019年の10月までで1000億レアルを超えているという、過去最高の記録を今更新しております。
続きましてマンションの賃料についてお話しします。ご覧のグラフはサンパウロの市内のマンション賃料の推移で、青が賃料、上のグレーの方が総合物価指数です。昨年の第1四半期ぐらいまでは横ばいだったのが、第2四半期に入って徐々に賃料が上がっていっているとおいう状況が続いております。やはり、全体景気が昨年中期、後期にかけてですね、復調をしてきているというのがここに表れてきているのかなと。あと、部会企業様によれば、皆さんがよく住んでおられるパライゾとかジャルジン・パウリスタの辺りというのはですね、非常にニーズが高くて、今さらに家賃が上昇を続けているということをお聞きしております。
建設不動産部門の報告は以上となります。
最後に、旧繊維部会からは、これも毎度同じようなタイトルでありますけども、ドイツ・フランクフルトで開催されたリビング関係の国際的な展示会であるheimtextilの最新情報をお伝えいたします。ご覧頂いているのがメインテーマのコーナーになります。
今年のカーテンやソファーのカラー傾向は、ブルーとアースカラーという自然色になっております。ちなみに昨年のカラー傾向はグリーンとピンクということでした。
今年は、自然色がカラー傾向ということと因果関係があるかどうか確認していませんけども、この会場で目立ったことと言えば、やはり環境への配慮ということが大きく打ち出されておりました。SDGs、持続可能性という言葉が会場を席巻していたそうです。
ペットボトルをリサイクルしたポリエステルの使用はブラジルでも増えてきております。SDGsはこの先、全産業、全業界、全世界の共通言語、トレンドとなると思います。ブルーや自然なカラーでリサイクル素材や天然系の素材を使用することがリビングの製品にも広がってきています。
ちょっと内容的に建設と繊維ではまったくつながりがなかったんですけども、それぞれの発表をさせていただきました。以上で生活産業部会の発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

司会
今川様、まことにありがとうございました。それでは生活産業部会の今のご説明に対してご質問、コメント等ございましたら挙手していただきたいと思います。特にないようですので、こちらで生活産業部会の説明を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

 

2019年下期の業種別部会長シンポジウム

2019年下期業種別部会長シンポジュームテープおこし記事掲載

2019822日、インターコンチネンタルホテル)

テーマ:「2019年上期の回顧と展望」

副題:「内外の環境変化にどう対応するか」

発表順序:(発表者および発表順は必要に応じ変更の可能性も御座いますので予めご承知おき下さい)
前半の司会: 讃井慎一(さぬい しんいち)総務委員長
13:00~13:05    開会挨拶     村田 俊典 会頭
    
13:05~13:35    ①  金融部会    津田 双羅(つだ そら)    部会長         (ブラデスコ)
13:35~14:00     ②  貿易部会    猪股 淳(いのまた じゅん)    部会長    (伊藤忠)
14:00~14:25    ③  機械金属部会    山田 佳宏(やまだ よしひろ)    部会長     (三菱重工)
14:25~14:50     ④  自動車部会    下村 セルソ(しもむら せるそ)    部会長    (トヨタ)
14:50~15:15     ⑤  コンサルタント部会     吉田 幸司(よしだ こうじ)    部会長     (KPMG)
xxxxxxxxx コーヒーブレイク (15分) xxxxxxxxxxxx    
後半の司会: 大久保 敦 (おおくぼ あつし)企画戦略委員長
15:30~15:55     ⑥  化学品部会     村松 正美(むらまつ まさみ)    部会長    (PILOT PEN)
15:55~16:20     ⑦  電機・情報通信部会    髙田 正純(たかた まさずみ)    部会長    (NEC)
16:20~16:45     ⑧  食品部会     佐々木 達哉(ささき たつや)    部会長    (味の素)
16:45~17:15    ⑨  運輸サービス部会     湯原 慶(ゆはら けい)    副部会長     (日本郵船)
17:15~17:45    ⑩  生活産業部会(建設不動産・繊維)     今川 尚彦(いまがわ なおひこ)    部会長    (戸田建設)
17:45~17:50       講評    野口 泰(のぐち やすし)総領事    在サンパウロ日本国総領事館
17:50~17:55       閉会の辞    讃井慎一(さぬい しんいち) 総務委員長            

各部会発表資料掲載

Pdf  金融部会    津田 双羅
   Pdf  金融部会 フェルナンド・オノラット・バルボーザ
Pdf  貿易部会    猪股 淳
Pdf  機械金属部会    山田 佳宏
Pdf 自動車部会    下村 セルソ
Pdf コンサルタント部会     吉田 幸司

Pdf  化学品部会     村松 正美
Pdf  電機・情報通信部会    小渕 洋
Pdf  食品部会     佐々木 達哉
Pdf  運輸サービス部会     湯原 慶
Pdf  生活産業部会     今川 尚彦

   Pdf ALL Presentation

 

前半司会

讃井慎一郎 総務委員長

                             

 皆さんこんにちは。いま定刻の1時になりました。ほぼ皆様おそろいでいらっしゃるようですので、定刻通り始めさせていただきたいと思います。ご着席の方をお願いいたします。

 では改めまして、こんにちは。時間になりましたので、本年度、2019年度下期の部会長シンポジュームを始めさせていただきたいと思います。私、本年度カマラで総務委員長を仰せつかっています、みずほ銀行の讃井でございます。よろしくお願いいたします。前半司会をさせていただきまして、後半はですね、隣におられますジェトロの大久保さんにバトンタッチをさせていただきたいと思いますので、長時間になりますけどもお付き合いいただければと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは早速ですが、冒頭にですね、ブラジル日本商工会議所村田会頭より開会のお言葉を頂戴したいと思います。村田さん、よろしくお願いします。

 

開会挨拶

村田俊典 ブラジル日本商工会議所会頭

                             

 皆様こんにちは。開会に当たりまして、私の方から一言ご挨拶を申し上げたいと思います。今日は、まだちょっと総領事いらっしゃっていませんけれども、野口総領事がいらっしゃいまして、ブラジリアの大使館の方からはですね、濱坂参事官、塩野書記官がいらっしゃっておられます。また後ほど講評をいただくということになっていますのでよろしくお願いいたします。

 それから、昨年の下期の部会長シンポジュームで在外日本人商工会議所の活動というテーマで基調講演を行っていただきました城西大学の川辺純子副学長と、ご主人であられます早稲田大学川辺信雄名誉教授にもご参加いただいています。大変ありがとうございます。

 さて、ボルソナロ政権がスタートしてですね、8カ月が過ぎたところでございますが、年金改革法案が下院で可決されるなど良いニュースもございますけども、依然として低迷する景気や、高いレベルでの失業率などを背景に、環境は依然として厳しく、我々会員企業はですね、経営の舵取りに苦労を重ねている日々だと私も推察しております。

 この部会長シンポジュームは、我々会員企業がですね、部会横断的に情報を共有して経営に役立てるという大きな意味をもっております。各部会におかれましては、事前準備も含めですね、たいへんご協力いただきまして、ありがとうございます。

 我々を取り巻く環境は、ブラジルの、先程申し上げました政治・経済情勢に大きく影響を受けるのはもちろんのことでございますが、イノベーション技術をはじめとした新しいビジネスの台頭、および旧来型ビジネスの終焉など、ビジネスモデルの変化も見落とせません。

 また、世界を見回しますと、米国と中国の貿易戦争、日本と韓国の問題、それから近場ではですね、アルゼンチン選挙の行方など、ジオポリティカルな問題が湧き起こっているという環境にあると思います。また、6月末に締結されたメルコスール・EUのEPAが我々会員企業に与える影響もですね、無視できないと思います。

 今日は、このような環境変化にどのように対応していくかというテーマでですね、各部会の皆様に発表をしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 なお、先日行われました日伯経済合同委員会では、日・メルコスールEPAに向けた共同声明を署名し、昨日経団連日本ブラジル経済員会の飯島委員長より菅官房長官に建議書を提出していただいております。これもですね、我々商工会議所が一丸となって動いた成果の一つでもあると思いますし、これからも早期締結に向け引き続き努力を重ねていきたいと思っております。皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

 簡単ではございますが、開会の挨拶といたします。よろしくお願いいたします。

司会

 村田会頭ありがとうございました。副題等々にご紹介いただきました通りですけども、やや不透明な状況でですね、10の部会から活発なご発表をいただきまして、質疑も含めて皆様にご参加いただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは順に、プログラムにそってですね、ご発表をいただきたいと思います。まずは金融部会様からの発表をお願いいたします。こちら、津田副部会長に加えまして、特別にブラデスコ銀行のチーフエコノミストのフェルナンド・オノラット様にもお話を頂戴できるというふうにうかがっておりますのでよろしくお願いいたします。30分でお願いいたします。

 

 金融部会

津田双羅 副部会長

                           

 皆さんこんにちは。金融部会副部会長を務めておりますブラデスコ銀行の津田でございます。本日はご多忙の折お集まりいただき、誠にありがとうございます。私からはシンポジュームのテーマでございます「2019年上期の回顧と下期の展望」を念頭に、ブラジル経済動向、銀行業界動向、保険業界動向について簡単にご説明をさせていただきます。また、本日はブラデスコ銀行チーフエコノミストのフェルナンドを招いております。私の発表の後、フェルナンドより今後のブラジル経済動向について詳しくご説明を申し上げます。

 一つ目のスライドです。金融部会メンバーによる各種経済指標に関する2019年、2020年の予測数値を纏めております。前回の予測値とは、GDP成長率と政策金利の2点が大きく異なっております。

 まずGDP成長率ですけれども、前回2月のシンポジュームの発表時点では2019年が2~2.8%、2020年が2.5~3%と、各行とも成長の加速を見込んでおりましたが、今回の予測値では2019年が0.8~1%、2020年が2~3%と、若干の下方修正をしております。緩やかな景気回復局面との見方は不変ではございますが、年金改革を含め新政権の各種政策の実効性が不透明な中、消費・投資ともに力強さを欠いたことに加え、ダムの決壊事故や米中貿易摩擦といった内外の逆風が想定以上に影響した結果と考えております。

 続きまして、年末の政策金利ですけれども、こちらも、世界経済成長の減速や、それに対応するための欧米を中心とする主要国の緩和的な金融政策、並びにブラジル国内の経済成長率、インフレ率の伸び悩み等々を鑑みまして、ブラジルでも更なる金融緩和が想定され、2019年は5~5.5%、2020年は5~6%程度を予想しております。

 続きまして次のスライドでございます。こちらのスライドは金融部会の各社の今後の見方についてコメントをサマリーしたものです。アンケートの内容は前回同様、ブラジル経済に影響を与える内外の要因は何か、また今後どのように変化していくことが予想されるかという点です。

 まず1項目目の、ブラジル経済へ影響を与える内的な要因は何かという問いへの回答ですけれども、こちらは前回と同様、構造改革をどこまで実行に移せるかという点がポイントという点で意見が一致しております。ブラジルは政府主導から民間主導へと経済モデルの変革の過渡期にあると考えておりますが、構造改革を着実に実行していくことが、内外の信認を取り戻し、本格的な個人消費の回復や企業の投資活動の活発化等の民間の活力回復へと繋がるものと考えております。先般の年金改革の議論の進展は係る意味でも意義深いものであったと捉えております。

 では、続きまして外的な要因は何かという問いですけれども、こちらはどちらかというとネガティブで、国際社会の不透明な状況というのは2019年以降も引き続き続くことが想定され、ブラジルへの影響も避けられないリスク要因と考えております。特に米中貿易摩擦、アルゼンチン情勢はブラジルへの影響も大きく、特に注意が必要と考えております。

 最後の項目は、短期、中長期の夫々の時間軸でブラジル経済がどのように変化していくと考えられるかという問いかけですけれども、こちらは、短期的には引き続き内外にリスクを抱えつつも、各種構造改革を着実に進めることで、ブラジルの将来への内外の信頼を取り戻すということが考えられると思っております。足元の年金改革に関わる一連の議論の進展は、政権が掲げる各種構造改革の実現可能性への期待を高めるという意味でも意義があり、本格的な経済回復への切欠となる可能性もあると考えております。

 また、中長期的には、各種構造改革そのものによって、産業の競争力が向上し、持続可能かつ強靭な経済へと変化していく可能性もあると考えております。

 続きまして、銀行業界動向です。まず貸出残高の推移ですけれども、2019年上期の個人向け貸出は、引き続き緩やかな回復基調、法人向け貸出は鉱工業セクターの資金需要が若干弱含み貸出残高が減少しております。

 次のスライドは業界全体における平均貸出利鞘の推移になります。足元、個人向けは、クレジットカードの分割払い等の資金需要増加により若干利幅が拡大しておりますが、法人向けは、2017年以降は政策金利の引き下げや、金融機関による審査の厳格化、クレジットポートフォリオの改善等を背景に、貸出利鞘は縮小傾向にございます。政策金利の低下とも相まって、法人様の資金調達コストという点では過去最低水準となっていると思います。

 続きまして不良債権比率。2017年6月以降は景況感の回復に伴い企業業績も改善に向かい、法人向け、個人向けともに不良債権比率は改善傾向にございます。不良債権比率の低下により、金融機関の貸出余力が出ており、各行とも引き続き積極的な融資スタンスを取っていることがうかがわれます。

 なお、スライドにはございませんが、2016年以降公的金融機関の貸出シェアは一貫して減少しておりまして、2016年時点では45%以下でございました民間金融機関のシェアが、足元では50%を超える水準まで増加しております。ブラジル経済のエンジンとして民間の役割が拡大している事がこういったところでも確認できるかと思います。銀行業界といたしましては、引き続き信用創造を通じてブラジルの発展に貢献して参りたいと考えております。

 続きまして保険業界です。2019年上期の保険市場の動向についてご説明いたします。まず保険料収入ですけれども、保険市場は2016年の1.5%を底に、2017年は4.2%、2018年は6.6%の成長を実現してきました。2019年上期も、5.5%と少し鈍っておりますが、なお成長トレンドにあると言えます。

 次のスライドで保険種目別にご説明いたします。ご覧の通り、自動車保険を除きますと、いずれの種目も二桁、または二桁に近い高い成長を維持しております。一方で自動車保険につきましては、強制保険であるDPVATの保険料率の引き下げを主因として、8.3%のマイナス成長という結果になりました。ただし、この強制保険を除いてみましても、自動車保険の成長はほぼ0%と、競争環境の激化や代替市場への契約流出等の影響が大きいことがうかがわれます。

 次のスライドは保険種目別の損害率のデータです。全体では損害率が50.4%と前年同期で3.3%悪化しております。保険種目別でみますと、自動車保険はブラジル全土における治安状況の改善により車両盗難が減ったことを主因として、損害率が2.2ポイント改善しました。一方で他の保険種目では、2018年に比べて今年の年初は降雨量が多く、水害が多く発生したこと、また昨年の5月はトラック業者のストライキがあり、物流が停滞したことの反動等により、損害率は大幅に悪化しております。

 最後のスライドですが、今後の保険市場の成長見通しについてご説明いたします。2019年のブラジル保険市場は損害保険、生命・傷害保険ともに引き続きプラス成長が予測されていますが、ブラジル経済の全体の成長鈍化、また競争環境の激化を要因として、年初予想から大きく下方修正されております。一方でブラジルにおける保険の普及率は日本や欧米に比べると低い状況にありますので、中長期的には中間所得者階層の増加により保険市場はまだまだ成長余地が大きいと考えています。

 本シンポジュームの副題の通り、ブラジルの内外環境は変化の途上かと思います。かかる変化に適応し、機会として活かすためには、歴史に学びつつも、固定観念に捉われず、今起きていることを冷静に分析し、柔軟かつ迅速に戦略を組み立てて実行に移すということが重要と考えております。この後のフェルナンドの発表が、少しでも皆様のブラジルの環境理解、更には事業のご発展のお役に立てますと幸いと存じております。

 私の発表はこちらで終わります。ご清聴いただき誠にありがとうございました。

 

フェルナンド・オノラット ブラデスコ銀行チーフエコノミスト

                        

 皆さんこんにちは。本日このシンポジュームでお話しできることを嬉しく思います。経済シナリオについてお話しできることを光栄に思います。私どもブラデスコにとって、日系コミュニティとの関係はとても深く、私は特に、個人的に、皆さんの文化、歴史に大きな敬意を感じています。日本語で話すことはできないため、本日はポルトガル語で話し通訳されます。ご出席の皆さんに感謝します。こちらでお話しできることを誇りに思います。

 皆さんがお持ちの印刷された資料はこの発表のより完全な資料ですが、時間の関係があり、20分に限られていますので、発表はより短いバージョンとなります。そのため画面でご覧になる資料では記載されていない部分があるかもしれませんし、発表の順番も必ずしもお手持ちの資料と同じではありません。

 最初に申し上げることは、ブラジルは今日、数十年単位で最も大きな経済的変革の時期にあるということです。現在ブラジルで進んでいる経済政策の変化が、この国を我々がこれまで慣れた国から今後の数年間で新しいブラジルへ変える変化だと認識することは大げさなことではありません。

 主要な変更は公的部門と民間部門の関係に見る事ができます。過去数十年のブラジルは経済における大きな公的支出に慣れていました。民間部門は常にそれについていく存在で、プロセスの主導的位置にありませんでした。ボルソナロ、パウロ・ゲデスによる新しい経済政策は、実際はテメル政権の時に始まったものですが、経済における公的部門の規模を減らし、民間部門を発展させることを提案するものです。それが新たな経済の本質です。

 それは意思決定がありその結果になったのではなく、ブラジルの巨大な財政不均衡の結果として意思決定がなされたものです。日本の公的債務も大きい数字ですが、ブラジルのGDP比70%という債務は新興国としては大変大きなものです。この公的債務によってもたらされた成長の限界が、汚職や不適切な資本配分を生みだしてきた公的部門主体の経済モデルから、民間部門が成長のリーダーになるためのモデルへ変える意思決定を導きました。そのために重要な最初のイニシアチブがテメル政権の2016年に定められた歳出上限でした。過去30年間、年にインフレ率を6%上回っていた公的支出は、今後20年間インフレ率のラインでの増加率、つまり実質的に年0%の増加率となります。皆さんグラフでご覧のように、4年間増えておりません。

 しかしながら歳出上限を設けながら持続可能な成長を実現する為には、社会保障制度改革が必要です。社会保障制度改革法案は下院で承認されたばかりで、我々は10月に上院で最終段階を終えることを期待しています。私はいつもこの比較を挙げるのですが、ブラジルは社会保障に日本と同じくらいの支出をしてきました。法案がまだ承認されておりませんので、今も支出しているということです。我が国の人口に占める高齢者の割合は日本の3分の1であるにもかかわらずです。ですから我々は社会保障制度改革を必要としてきました。ブラジルはGDP比で日本と同じ割合の支出をしてきたのです。

 改革がなされれば、国の公的債務に関するあらゆるシミュレーションで、債務の低下傾向が確認出来るでしょう。これは、以後の話の中で、投資格付けに関して話す際に肝心なことです。歳出上限と社会保障制度改革は、ブラジルを再び返済能力のある投資適格な国へ引き上げる可能性が有ります。公的債務の減少の見通しが立てば、十分実現可能です。

 その一つの結果として、客観的な債務削減の見通しは、ブラジルの金利を考える上で大変重要な変化です。皆さんご存知のように、ブラジルは歴史的に世界で最も金利の高い国でした。昼食で津田さんと、どれだけの日本の個人投資家がオリンピックやワールドカップに先立つ時期に資金をブラジルに投資したかに関して話しました。一つの要因は、ブラジルが世界で最も高い金利を払っていた国の一つだったからです。海外からの投資は良いことですが、高金利のみを理由にした投資は、我々の経済にとっては必ずしも良いこととは言えません。過去数年の深刻な景気後退に苦しんだ経済に伴って政府の支出が減る中で、ブラジルにおける金利は大きく下がりました。10年物の名目金利で年約14%のレベルを抜け出し、現在では7%のレベルまで下がり、表の一番下の段にある新興国の平均の水準となっています。この金利環境は、現政権の戦略の基礎となるものです。国による信用供給の柱の一つであるBNDESが、ブラジル経済における重要な存在であることを少しずつやめようとしています。替わりに、民間銀行と資本市場がブラジル経済に資金を供給しなければなりません。それには市場金利が低くなり、BNDESで利用されていた様な補助金等が必要無くなってこそ可能となります。その為、金利の低下は意味があるのです。 ご参考迄にブラジルの30年間の実質金利を示します。2050年の実質金利は過去最も低い3.5~3.7%です。

 我々が予想する金利の低い経済における主要な結果は、公的部門主導の信用供与から、民間部門主導の信用供与への変化です。例えば新興国を見た場合、クレジットに関してブラジルはGDP比70%で、新興国全体の半分の水準です。これは、ブラジルが高い金利環境の中、公的部門が信用供与を主導していたことが背景となっております。低金利の環境下、民間部門からの信用供与を拡大する余地は、特に資本市場で大きくなります。皆さんの会社でも、この流れは理解しておいた方が良いでしょう。なぜなら、資本市場はこれから数年間に際立った形で進展していくからです。

 ブラジルが斯かる構造的な変化の局面に入る中で、経済は既に幾つかの回復の兆候を示していることを述べたいと思います。これらの兆候は未だ控えめで、経済はゆるぎない形では成長しているとはいえません。私たちは2014年から2018年の間、ブラジル史上最悪の景気後退の中にありました。この間、国民一人当たりの所得は10%縮小しました。経済学的な観点からは、ほぼ不況とみなされていました。これはブラジルの経済政策の失敗の産物であり、世界の経済環境に責任があるものではありません。ブラジルの経済政策の間違いの結果でしたが、その間違いは16年より正され始めました。この間違いを正し始めた時、雇用が創出され始めました。雇用は17年の8800万人から、ほぼ9400万人となりました。この期間にほぼ450万の雇用が創出されました。これらの雇用は多くの場合非正規で、質の良いものとは言えませんが、少なくとも何らかの所得を産み出しています。現在、失業率は下がっていません。なぜなら新たな労働者、若者が労働市場に入ってきているからです。

 しかし、グレーのラインつまり雇用創出の変化は、企業に大変興味深い示唆があります。それは、GDPの60%を占める国内消費の先行きを図る主要な指標と考えられるからです。皆さんご覧の通り、失業率は一定の状態にあります。12.7%です。我々は、就業意欲を喪失した人を合計すると25%程度になると見ています。しかし、皆さんが失業率を見る際、労働参加者が増えていることも勘案し、この期間にも雇用が生み出されているという視点を失ってはなりません。雇用の創出は個人の所得向上に繋がり、個人消費の拡大が期待出来るでしょう。また、企業の観点から見ると、高い失業率は、敢えて直接的な言い方をするならば、給与を抑えた状態で労働力を保つというプラスの効果もあるでしょう。費用の観点からは、給与面で大きな引き上げ圧力がなく事業拡大が出来る環境は、この場におられるブラジル企業、日本企業が高い競争力を保つために重要なことです。

 また、家計、企業の債務が減少していると報じられています。2016年には、経済回復のための大きな逆風、大きな問題は企業、家計の債務の水準でした。足元では過剰債務の問題はなくなりました。銀行は、新規に信用供与する準備ができています。なぜなら、企業でも家庭でも債務の水準が大きく下がっているからです。実際に信用は拡大し始めています。グレーのラインを見ると、過去12カ月間の企業に対する信用は名目で約15%拡大しています。この企業の信用拡大の重要な部分は、金融市場ではなく資本市場から来ています。その下の、14%近く増加している個人向けの信用拡大は、不動産関連のクレジットに大きく基づいています。これはブラジルにとって大変重要なニュースです。なぜなら、今日のような低金利の環境下であれば、住宅購入へのクレジットは今後数年間で大きく伸びることが期待されるからです。事実、現在の水準である6%の低い金利であれば、ブラジルの500万の世帯が不動産のクレジット、更にはモーゲージまで得る事が可能になります。

 青い線の小売売上を見ても分かると思います。これはクレジットに結びついており、グレーの線は収入、雇用により結び付いていますが、クレジットに依存する部分はすでに改善しつつあります。雇用の増加はわずかであるため、収入に結び付いた部分の改善は緩やかですが、どちらも今後数年間で増加していくでしょう。先程お話しした、我々が大変期待している不動産部門は、例えばサンパウロにおける不動産販売のデータで、サンパウロにおける住宅のストックは減少していることが確認出来ます。サンパウロは今日不動産部門において最も活発な都市であり、それゆえこのグラフを用意しました。

 最後から2番目となる、市場についてお話しします。市場はすでに、2016年に始まった構造改革のアジェンダに関連してブラジルの評価を上方修正しております。一番右の棒グラフのカントリーリスク、CDSをみると、ブラジルの今日のカントリーリスクは、ブラジルが投資適格の格付けを得ていた2007年から2014年の期間、左から2番目と同じ水準となっています。市場は既に、ブラジルが投資適格国であり得ると見ています。これはとても重要なことです。

 実際に、一番右のブラジルの外的なリスクに関する指標をみても、ブラジルの対外債務は低く、外貨準備の水準も高く、経常赤字も低くなっています。つまり、全ての指標が、我々の経済の外的リスクが、我々より信用の格付けの良い他の国よりも良いということを示しています。ブラジルの国の信用格付けは上げられる日も遠くは無いと考えます。メキシコと比較すると、ブラジルのリスクはメキシコより年わずか10ベーシスポイント(0.10%)高いだけですが、ブラジルの信用格付けはメキシコより5段階下となっています。我々は、上院で社会保障改革法案が承認された後、今年中にもブラジルの格付けの引き上げの可能性も有ると想像しています。経済成長の回復が順調に進めば、来年末までに次の格上げ、また現大統領任期の最終年が近くなる頃に、ここでご紹介する様な諸改革が進めば更なる格上げもあるかもしれません。市場は確実にこうしたブラジルの改善を先取りしています。ブラジルの株式市場は過去12カ月間で、私がご紹介したような見通しに関連して最も大きく上昇しています。

 また為替は、ブラジルは新興国の中で最も発展した為替市場を有しています。より大きな奥行きと流動性があります。ですから、世界にボラティリティがあれば、それは他の新興国の場合よりも大きな割合でブラジルレアルへ影響します。それゆえ現在は1ドル4レアル、4.05レアルとなりました。また、ブラジルの金利が大きく下がったことも有り、ブラジルの通貨に対する関心が低くなっていることも影響を与えています。然しながら、我々としては国際的な経済環境が正常化し、ブラジルの成長が再び力強さを取り戻せば、ブラジルレアルは現在の新興国の平均からシュミレーションされる1ドル3.60レアルのレベルに戻ると予想しています。

 発表時間は残り5分となりました。ここで構造改革のアジェンダについてお話しします。ブラジルは現在、民間部門が主導する経済成長モデルへの変革期にあります。民間部門が積極的な投資へと舵をきるには、政府は社会保障制度のみならず、その他の改革を進める必要があります。

 私はよく社会保障制度改革は財政の崖から我々を遠ざけるものだと言います。社会保障制度改革はFiscal cliffという大きな崖からの転落を避ける為に必要な改革ですが、それ自体が必ずしも国を成長軌道に乗せるものではありません。ブラジルを成長軌道に乗せるのは、低金利、生産性の改善を促す改革、そして疑いなく、民間部門からの投資を促進する改革アジェンダです。

 これらの改革のリスト全てを話すことは時間の関係で出来ませんし、本日の私の目的ではありません。スライドには、ビジネス環境改善を見据えた改革の一環として、コンセッション、民営化に関するものを示しています。ブラジルは世界で最も閉鎖された国の一つですが、ブラジルは大いに経済を開放したいと望んでいます。商工会議所会頭の最初のお話にもあったと思いますが、私は日本語は解しませんが、メルコスール、EUということは分かりました。先のメルコスール・EUのEPAはブラジルのビジネス環境にとって非常に重要な契機と考えます。我々は我々の経済を開放することを望んでいます。

 その他、需要の拡大や財政の改革もあります。より広範な改革が必要となります。私はよくこのように言うのですが、「紙はいかなる情報も受け入れます。それらを紙から取り出し、実行に移すことが必要だ」と。私はまた、このように言いたいと思います。「国会や政府をみると、現在は過去数十年の中で、ブラジルが改革へ進むうえでも最も好機に有る」と。改革の幾つかが進めば、需要を刺激し、拡大に転じることが期待出来ます。

 冒頭、ブラジルの長期金利が既に大きく下がったことを示しましたが、短期金利は更に下がるでしょう。なぜなら、インフレが中央銀行のインフレターゲットの下限より低い状態だからです。現在6%のSelic金利は5%まで下がると我々は推定しています。金利が4%まで下がると言うことは、非常識でも不可能でもないと言えるでしょう。金利は今年中にも5.5%、来年には5%以下まで下がる可能性があります。それは、消費者や企業に大変重要な構造的変化を産み出します。これらはもちろん改革の行方次第です。ブラジルはまだ低金利を確立していませんが、その調整に向けて歩んでいます。

 国会で今後数カ月の間により多くの時間を要すると我々が考えているのが税制改革です。全ての詳細に触れる時間はありませんが、基本的に税制改革は、消費と財産にかかる税金を簡素化するものです。ブラジルは漸く付加価値税、Vat Taxを持つことになるはずです。それは、州と企業の間の税務戦争、混乱を終わらせることに役立つでしょう。法人税の引下げという一つの柱があります。その為に政府は資金源が必要です。所得税金が下がるという柱も考えられます。今後12カ月間にブラジルで行われる議論に注目する必要があります。なぜなら、現時点で詳細は決まっておらず、議論に多くの時間が要するものの、着実な進展が期待されるアジェンダだからです。税制改革は、税金を簡素化することで競争力を得るという点で、ブラジルに有意義なものです。税制改革は税負担の水準を減らすことではありません。制度を簡素化することです。しかし、簡素化することで国は企業へ競争力のある経済環境を整え、例えば貿易の開放等のアジェンダで企業が多国との競争で苦しまないで済むような道が開かれます。

 民営化のアジェンダについては、ブラジルは、道路や港湾、鉄道、空港といった分野で約2000億レアル相当の資産を今後4年間で民営化するでしょう。とても大きなアジェンダであり、需要を後押しするために重要なアジェンダです。なぜなら政府は歳出上限が有る中、十分な投資することができません。民間部門がこれらの民営化によって行うことになります。

 貿易の開放は、既にお話ししたように、今後数年間で拡大し、経済が開かれていくでしょう。メルコスールとEUのEPAだけでなく、その他の相手とも交渉が纏まりつつあります。ブラジルは世界で最も閉鎖的な国です。我々は貿易開放を通じて投資を呼び込む必要があります。それは現政権の改革アジェンダを通じて目指している基本的な方向性に合致しております。

 これらの改革により、我々は、ブラジルの経済成長率は2から2.5%に回復すると推定しています。これは、コモディティの景気がブラジルの経済を後押しした最も良い時期を除いた過去の平均を少し上回る数値です。2.5%の成長を想像することは大いに理にかなっています。

 最後にリスクについてお話しします。国際経済/社会の不確実性に伴う、世界経済成長の還俗はブラジルのGDPを引き下げる可能性があります。現時点では予見できませんが、今日の主要なリスクです。また、ブラジルの官から民へ経済の成長ドライバーを変化させる構造改革が、ブラジルの経済成長へ一時的にフラストレーションを産み出すリスクがあります。

 また、皆さんの企業はブラジル国内の州と直接的に関係しています。州は財政的に大きな困難にあります。我々は中期的にはリスクだとみています。大きなものではありませんが、一つのリスクです。政治的なボラティリティのリスクは常にあります。我々は監視する必要があります。

 また、疑いなく我々を妨げるのが、ブラジルの低い教育水準、生産性、技術力です。二つのグラフをお見せします。右は2015年の世界におけるブラジルの算数の試験の成績です。ブラジルは最も低い国の一つで、ブラジルより貧しい国と比較されるレベルでした。ビジネスがし易い国のランキングでも、例えばメキシコより低くなっています。この中で日本は2番目でした。

 また、例えば経済におけるロボットの比重をみても他の国々よりずっと低くなっています。ブラジルは技術を僅かしか取り入れていない国と言えるでしょう。

 最後のスライドになります。我々の見通しです。建設的と考えられるシナリオを共有したいと思います。まだ不確実性は残る道のりですが、我々は、ブラジルが外国の投資家、ブラジル国民、雇用の創出、そしてもちろん経済全体のために良い見通しをもたらすことができる転換点にあると思います。ありがとうございました。

司会

 津田部会長、あとオノラット様、たいへんありがとうございました。よろしければご質問を受け付けたいと思いますけれども、ご質問のある方、挙手をいただけますでしょうか。よろしいですか。

 金融部会、最初のご発表ということで、マクロ経済の状況ですとか、あるいは年金改革後の民営化だとか税制改革、この辺りの明るい話題についても触れていただいたのかなというふうに思います。私も銀行に勤めていますけども、あと触れられていなかったことがあるとすると、まあ銀行全体が、ネットバンクだとか仮想通貨だとか、そういった、新しく金融自体が変わってきているというところがあるのが一つと、あとブラジル固有の話だとすると、レアルの国際化ですとか、外貨との兌換性だとかですね、この辺りというのが今後もしかしたら話題になってくるんじゃないかなというふうには思っております。何かそのあたりコメントありましたら一言いただければと思います。

津田副部会長

 ありがとうございます。まず、イノベーション。金融の世界でのイノベーションはおっしゃる通りで、銀行としての在り方そのものを変える可能性もある変化の一つと我々も捉えておりまして、ブラデスコも、Inovabraというイノべーションを促進するような組織を設けて取り組んでいるところでございます。今の段階では、金融機関としてのミッションそのものまでが変わるとは未だ思っていません。やり方、ツールとしては、イノベーションも取り入れ乍、少しずつ在り方は変わっていくとは思っておりますけれども、ミッションとしては引き続き皆様に寄り添う形で、社会であり企業であり、その発展に役立っていくというのが我々金融機関の本命かなと思っております。

 レアルの国際化、これはまだ実は懐疑的に私は見ておりまして、大変申し訳ないですけれども、ここで具体的に申し上げられることは現時点ではございません。申し訳ございません。

司会

 ありがとうございました。私が言いたいことを言いたかっただけなんですけども、空気の読めない質問になってしまいまして申し訳ありませんでした。それではこれで金融部会様からの発表を終わりとさせていただきます。改めて拍手をお願いいたします。

津田副部会長

 ありがとうございました。

司会

 ありがとうございました。それでは続きまして貿易部会の方からのご発表をいただきたいと思います。猪股部会長、よろしくお願いいたします。予定では25分間ということで承っておりますので、よろしくお願いいたします。

 

貿易部会

猪股淳 部会長

                       

  皆さんこんにちは。貿易部会の部会長を務めております伊藤忠商事の猪股と申します。本日はどうぞよろしくお願いします。早速ですが、貿易部会のプレゼンテーションを始めさせていただきたいと思います。

 最初に総括といたしまして、半期ごとの輸出入額の推移を表にしております。青の棒線が輸出額、緑の棒グラフが輸入額を示しております。2019年の上期につきましては、2018年の下期よりも落ち込んでおります。かつ2018年上半期と比べましても、若干ではありますが輸出入額ともに落ち込んでいるという状況になってしまいました。

 貿易黒字の金額は、前年同期でいきますと2018年の上期が299億ドルに対しまして、2019年、今年の上半期は261億ドルという貿易黒字になっております。

 為替に関しましては、2019年の上期の期中平均は3.84レアルという状況でございました。皆さんよくご存知の通りの状況ですが、新政権への期待感から、1月は3.7レベルで推移していたんですが、その後年金改革法案成立の不透明感からレアル安に振れまして、以降、成立見通しが出てきたことでレアル高に振れたんですが、アルゼンチン大統領選予備選の結果を受けまして再びレアル安が進行しまして、足元は4.03レベルということになっております。

 続きまして、輸出入の中身を見ていきたいと思います。こちらは、商品別の輸出でございます。2019年上期は、前年同期、2018年上期に比べまして、金額・数量ともに若干減少しているという状況でございます。

 輸出については、3点ポイントを挙げさせていただきたいと思います。まずブラジルの輸出の過半を占めます一次産品についてです。

 大豆につきましては、米中貿易戦争の影響で輸出増加しているんじゃないかと思いきや、前年同期比でマイナスという結果でした。しかし、私どもとしましては、全体のトレンドの流れとしましては、アメリカの対中輸出減をブラジルがまかなっている、取り込んでいるという状況に変わりはないというふうに考えております。中国は、去年の7月に25%の報復関税を米国産大豆に課した訳ですけども、その結果、アメリカからの対中輸出は3000万トンが半減したと言われております。一方ブラジルからの輸出は、これは全世界ベースですけども、輸出は2018年が8360万トンです。それに対して17年は6800万トンでしたので、実に1年間で1500万トン増えているという状況になっておりまして、やはりアメリカの落ち込んだ分をブラジルが取り込んでいるという状況になっていて、その状況は今でも変わっていないと思っております。

 ただし2019年の上期につきましては、中国の豚コレラの影響、中国の需要を当て込んだ生産増加による在庫増ということが重なり、数量、金額ともに減という状況でありました。

 下期以降ですが、アメリカの対中大豆の輸出再開がどうなるか今まったく分からないという状況である中、ブラジルの大豆輸出は今のアメリカの減を取り込んだ状態で継続するというふうに考えております。従いまして、この大豆につきましては、中国の需要が最大の懸念点になろうということでございます。

 一次産品の二つ目、鉄鉱石でございます。鉄鉱石につきましては、皆さんよくご承知の通りの、Valeのダムの決壊事故がありました影響で、数量は昨年同期比で10%落ち込んでおります。ただし、特にオーストラリアからの出荷不安がございました関係で市況価格が非常に好調であったということで、輸出金額自体は増えているという状況になりました。

 ポイントの3点目はですね、乗用車、自動車関連でございます。金額的にもインパクトが大きい訳ですけども、約40%の落ち込みということで、アルゼンチン向けの輸出不振が数字に表れてきているというふうに考えております。

 続きまして主要国別の輸出でございます。19年の上期はやはり中国が1位となっております。ただし伸び率は1%ということでそんなに大きくはなかった訳ですけども、これは金額ベースですけども、鉄鉱石の輸出金額が伸びた一方で、大豆の落ち込みがあってですね、それが相殺しあって輸出増減率が1%にとどまってしまったものというふうに考えております。2位のアメリカは12%と前年同期比伸ばしましたけども、中を見ていきますと、原油の輸出がこれに寄与したということになっておりました。

 それから、アルゼンチン向けについては皆さんご承知の通りの状況でございます。あと、オランダの落ち込みも結構あるんですけども、これ、オランダ向けの中身を見ていきますと、大豆かすと鉄鉱石ということで、統計上はオランダに出てくるんですけども、やはり最終消費地である中国の需要環境を反映した結果がここに表れているというふうに考えております。

 続きまして輸入でございます。2019年の上期は、前年同期比、総額・総量ともほとんど増減なしという状況でございます。中を見ていきますと、原油の輸入が増えている一方で自動車関連の落ち込みが大きかったというような中の入り組みがございました。

 続きまして、主要国別の輸入の状況です。中国からの輸入があいかわらず1位でございます。昨年同期比で、実に20%も増えている訳でございますが、これ内訳を見ていきますと、この輸入統計の中で浚渫船とかプラットフォームという項目に括られる部分が非常に大きく伸びておりまして、この19年の上期に、大型輸入が一つ二つあったことによって数字が大きく跳ね上がっているという考えております。

 金額規模は大きくないんですけども、インドからの輸入も伸びておりました。原油以外の石油という輸入統計上の項目が伸びていたという状況であります。

 続きまして、2019年上期の対日貿易についてでございます。日本向けで一番大きいのは鉄鉱石になるわけですけども、鉄鉱石についてはやはりValeの事故の影響で金額ベースで12.4%の落ち込みという結果でございます。ただこれ、表にはしていませんけども、数量ベースだと実に20%も落ち込んでいるという状況でありました。金額が12.4%でおさまっているということで、先程と同じように、数量は落ちたんですけど価格が高かったので、数量ほどの落ち込みは示していないという状況だと思います。

 その他、鶏肉、コーヒーです。それから、今は落ち着いていますけども、市況が良かったパルプも対日貿易の輸出としては伸ばしているという状況でございます。

 輸入でございます。輸入につきましては顕著でございまして、自動車部品、乗用車の落ち込みが非常に大きくなっているということで、やはりアルゼンチン向けの自動車の影響はここにも出ているんだと考えております。

 続きまして直接投資でございます。19年上期につきましては、下の左側の棒グラフ、青い部分が上期になるんですけども、ご覧頂いて分かります通り、実は2011年以降で最低の直接投資額が2019年上期であったという状況でございます。やはり、1月にボルソナロ政権が誕生して、その政策動向の行方を見るべく様子見状態であったというふうに受け止めております。

 直接投資、ブレイクダウンしていきますと、特にフランスとカナダが大きく伸びている訳ですけども、ブラジルの経済省の発表資料によりますと、4月に総額86億ドルというペトロブラスのガスの供給システムの買収をフランスとカナダの企業でやっているんですけども、その一部がここに反映されているんだろうということでございます。

 その他、オランダ、ルクセンブルク、それから、この表の中ではその他にまとまっていますけど、ケイマン諸島とかバージンアイランドからの投資も下げ率が大きくなっております。前回のシンポジュームでも話がありました通り、この辺からの投資というのは裏に中国がいるんであろうというふうに見受けられる訳ですけども、米中貿易戦争、中国の国内景気の不振からやはり中国からの投資もちょっと一服感が出たのかなというのが19年上期の状況だったんだろうというふうに、これは推測ですけども、考えておるという次第でございます。

 続きまして業種別の直接投資でございます。石油・ガス採掘関連の投資が落ち込んでいます。それから、金額的には小さいんですけども、ITサービス関係の投資は、大体毎回プラスで出てきております。金額は小さい訳ですけども、やはりブラジルのスタートアップ企業、ブラジルというのはITの参入障壁が低いというふうに言われてますけども、スタートアップ企業などのIT関連には今後も注目していく必要があるんだろうなと考えております。

 次に日本からの直接投資でございます。2017年の底を抜けまして、2018年は17年比増、19年上期についても、18年を超える勢いではあるんですけども、ご覧になられて分かる通り、金額的には過去に比べても大きいものではございません。この先、世界経済が後退局面で、地域的にもアルゼンチンの大統領選の行方がどうなるか分からないという不透明感がある中で、日本からの下期の直接投資がどうなるか、環境的にはそう簡単ではないのだろうと考えております。

 続きまして2019年上期の回顧でございます。先程来話が出ております通り、19年の成長率予測は、期初は2.51%であったものが、現在は0.8%台後半、7月末では0.82となっております。0.8%台後半というのが今の見通しでございます。新政権の政策運営を見極めるという動きが強かったのがやはり19年の上期の総括なのではなかろうかというふうに考えております。

 続きまして2019年の下期の展望でございます。年金改革法案につきましては来月上院で可決される見通しが非常に強くなっているという状況でございます。それに続く、税制改革、それからまさに今推進せんとしております民営化によって、小さな政府が実現できるかどうかというようなことも含めまして、国内の活性化をどこまで進められるかということに下期は注目していきたいというふうに考えています。

 一方で、世界的な景況不透明感はさらに高まると考えております。欧米と中国での景気減速傾向、それから米中貿易摩擦、アルゼンチン大統領選の行方など、今の時点では非常にネガティブとなる要素が多く、やはり大幅な景気回復は期待しにくいというのが2019年下期の状況であろうというふうに考えております。特に、輸出・輸入とも1位を占めます中国の景気動向がブラジルに与える影響は引き続き注視していく必要があると考えております。

 最後に、貿易部会で内外の環境変化にどう対応するかというアンケートをとらせていただきましたが、その結果を抜粋したものを皆様のご参考までに資料としてここに提示させていただいております。

 下期は不透明感が強くなる中で、日々のトレードで申しますと、販売先の与信の状況をなどを、より細かくリスクを見極めて、かつ今のリスクを見直していくのが求められていくのが2019年下期の我々が置かれている環境なのではなかろうかというふうに考えております。

 私からは以上でございます。

司会

 はい、ありがとうございました。ぜひご質問を頂戴できればと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。貿易部会ということで、モノですとか、資本の流れという中で非常にコンパクトにご説明いただいたと思います。たいへんありがとうございました。あと昨今、関連するところで言うと、おそらく、先程も出ていますけども、日・メルコスールのEPAというのが今後長期的な課題になると思いますし、欧州とのEPAが大きく前進したという中でですね、これからということなんだと思いますけれども、何か具体的に手を検討されていることですとか、動き始めていること、事例などもしあれば、教えていただければと思うんですが、いかがでしょうか。

猪股部会長

 非常に景況感が弱くなってきますと、多くの企業さんの体力がだんだん小さくなっていってしまう環境の中で、平たい言葉で言いますと、日々の商売、トレードの中で、貸し倒れとか、商品代金の回収に支障をきたすようなことがないように手を打っていかないといけない。一企業の活動としてはそういうところですね。そういうところから見直していこうということはしています。日・メルコスールは、交渉は進むんだと思うんですが、一方でブラジルがメルコスールから抜けたらどうなるんだろうという不安もありますし、交渉の行方は見守るものの、メルコスール自体の動きというのも見ていく必要もあるかなと思います。

司会

 はい、ありがとうございました。ほか、よろしいですか。それでは貿易部会様からの発表をこれで終わらせていただきます。改めまして、ありがとうございました。

 続きまして、機械金属部会様からのご発表をお願いいたします。山田部会長から25分の予定でお願いいたします。私の質問は出尽くしましたので、皆様ぜひ、質問を考えていただきながらお聞きいただければと思います。よろしくお願いいたします。

 

機械金属部会

山田佳宏 部会長

                          

 皆様、こんにちは。ブラジル三菱重工の山田でございます。機械金属部会長を務めさせていただいております。

 当機械金属部会は多岐の事業分野に携わっておられます機械および金属に関連するメーカー、それから関連する商社の方々を中心としたメンバーで構成をされております。本年8月現在で約40社の皆様に主要部会メンバーとして登録をしていただいております。

 今スライドを示しておりますけれども、今回のシンポジュームでの発表に当たりまして、事前に各社の状況に応じてレポートをまとめていただき、また7月の31日には部会を開催して情報および意見の交換を行いました。私はこの部会に何度か出席しておりますけれども、今年の4月、5月ごろにですね、先程も話が出ておりましたけども、日・メルコスールEPAの関係でも部会の会合を開きまして、あらためて、機械金属部会と一言で言うんですけれども、実は多種多様な会社さんの集まりでございまして、HTSコードで言うと確か機械と金属で、大分類か中分類としては二つぐらいになるんですけれども、当部会の内容としては非常に多種多様です。具体的にはここに出ております通りですね、どういうふうにグルーピングするかというのは非常に難しくて、作っているものなのか、納めている先なのかとか、ちょっとうまくできないところはあるんですけれども、一応その辺はだいぶ大ざっぱにまとめますと大体こんな感じということでございます。

 今スライドに表示されておりますけれども、当部会が関係する会員会社さんの、いわゆる事業分野といいますか、製品分野というのは、計17分野ということです。ですので、ちょっと一概にまとめるのは難しいところはあるんですけれども、いずれにしましても皆様、ブラジルの製造業を足元から支える役割を担っておられるというふうに認識をしております。それでは内容について発表させていただきます。

 構成としましては、まず、ちょっとこれまでの話と一部かぶってしまいますけれども、当部会の事業環境に関係するマクロ指標について簡単にご説明をさせていただきます。引き続いて、セグメント別にですね、鉄鋼以下6つのセグメントの状況を説明させていただきます。このまとめ方は本年2月のシンポジュームの内容と基本的に同様でございます。最後に、副題であります「内外の環境変化にどう対応するか」ということで、部会メンバーの意見を総括させていただきます。

 それではまず、マクロ指標ということで、最初はブラジルの鉱工業生産の状況をグラフにまとめたものでございます。ブラジル地理統計院の資料です。先程ご説明いただきましたブラデスコのフェルナンドさんのお話と大分かぶるんですけれども、このグラフは2015年以降、今年の6月までの状況を示しております。

 皆さんご承知の通りですし、またご覧いただきます通り、2016年まではマイナスが続き、2017年に入ってプラスに転じました。2018年もそれが継続するというふうに期待をしておりまして、去年の5月のトラック運転手のストライキの後も、いったんは持ち直したかのように見えておりました。ところがその後、年末にかけてマイナスが続きまして、今年に入ってからもですね、昨年を上回りそうな雰囲気ではないのではないかというふうに思われます。棒グラフの右から2番目、2019年の5月のところが前年を上回っておりますけれども、これは昨年5月のトラックストの影響で鉱工業生産が大幅にダウンしたために、見かけの数値がこういうふうになっているのではないかというふうに思われます。

 実は、これから各セグメント別にご説明しますけれども、大体この鉱工業生産指数の動向に、当部会の会員会社さんの景況感もほぼ一致をしているということでございます。

 次に土木建設の指数を示したグラフをご覧いただきたいというふうに思います。これもブラジル地理統計院の資料でございます。これは、2012年を100として、その後の推移を折れ線グラフで示しております。

 それぞれの年でデコボコはございますけれども、傾向としては2017年に向けてずっと低下が続き、2017年で底を打ち、その後ですね、上がったり下がったりしておりまして、ちょっと安定しているとは言い難い状況が続いております。2019年に入りまして若干上向き加減になっている模様ですけれども、ご承知の通りの昨今の景況感の中で先行きの見通しとしては不透明ではないかというふうに思われます。

 それでは引き続きまして、ここから各セグメント別の状況についてご説明をさせていただきます。まず、一番最初が鉄鋼でございます。ブラジル鉄鋼協会がまとめておられます数値を使っております。このスライドの左上、ちょっと小さくて恐縮ですけれども、2015年から2018年までの年間の粗鋼生産の推移、それから2019年の見込みを示しております。その右に、表ですけれども、2019年上半期の粗鋼生産、国内販売、輸出を前年との対比で示しております。

 まず、左のグラフからお分かりいただけます通り、粗鋼生産量は2016年に底を打った後、2018年までは対前年比で増加をしております。ところがですね、右の表を見ていただきますと、2019年に入りましてから粗鋼生産量は前年を下回っております。これは自動車輸出用の需要が減少したということが主な原因のようであります。

 下期につきましても、ご承知の通り、Valeの事故に起因する原料価格の高騰、それから鉄鋼需要の伸び悩みによりまして、生産・販売ともにですね、厳しい状況が継続するというふうに思われます。ちなみに、ブラジル鉄鋼協会は2019年の鋼材の見かけ消費量の見通しを、4月は対前年プラス6%というふうに発表しておりましたけれども、7月にはプラス2%ということで、6%から2%に下方修正をしております。

 ただ一方でですね、このスライドの一番下のところですけれども、ブラジル鉄鋼協会は、鉄鋼業におきまして今後5年間で90億ドルの設備投資が見込まれるということも発表しております。ただ我々部会メンバーの感覚としては、近い時期にですね、こういった積極的な設備投資案件が動き出すという様子はないということでございます。

 続きまして電力セグメントについてご説明申し上げます。こちらはエネルギー研究公社の資料でございます。左の棒グラフが2015年から昨年までの電力消費量の推移と2019年上期の前年との対比を示しております。右側の棒グラフが、2018年と19年のそれぞれ上期の電力消費の内訳を示したグラフです。内訳はここにあります通り、産業用、住宅用、商業用、その他というふうになっております。

 2019年の上期の傾向としましてはですね、ちょっと棒グラフ見にくいんですけれども、住宅用と商業用の電力が伸びているということで、電力消費は回復傾向にございます。この傾向は下期も同様というふうに思われますが、当部会の関連企業が関係しますバイオマス関連の新規案件の動きは依然として低調でございます。

 次に建設機械について申し上げます。スライドの上の方にグラフを示しておりますけれども、これも2012年を100として建設機械の生産実績を折れ線グラフで示しております。この資料から、やはり2017年までは生産の減少が続いて、その後回復傾向にあるということをご理解いただけるというふうに思います。

 そうした中で、2019年上期の回顧としましては、建設機械の国内販売はレンタル向けが好調であるということですとか、先程ちょっとグラフを示しましたけれども、昨年底を打った建設需要の好転などによりですね、前年比でプラス28%増ということで、当初予定を大幅に上回っております。一方、農業向けにつきましては、予算不足に伴います、政府金融の支援が中断されたといったことの影響で伸び悩んでおります。それから輸出につきましては、アルゼンチン向けの減少が大きく足を引っ張って減少をしております。

 下期の展望ですけれども、国内需要につきましては土木・建築向け、それから農業関連、砕石・窯業・セメント向け、それからレンタル・アウトソーシング向け、いずれも堅調に推移する見通しでございます。一方、輸出につきましては、米中貿易摩擦の悪影響を無視できず、動向を緊密に注視する必要があるというふうに考えております。

 続きまして、自動車産業に関連するセグメントについて申し上げます。資料としましては、左上に自動車生産協会がまとめました自動車生産台数の棒グラフを、その右に自動車の新車登録、輸出、生産の2019年上半期の、前年つまり2018年上半期との比較を示しております。詳細につきましてはこの後の自動車部会様の発表に委ねますけれども、特に右のグラフから読み取れますのは、前年同期比、前年同期比を黄緑色の折れ線グラフで示しておりますけれども、これは新車登録、輸出、生産の前年同期比なんですけれども、真ん中の輸出がですね、前年同期比40%も落ち込んでおりまして、これの影響で上期の生産につきましては対前年比で少しだけ増えるという状況にとどまっております。

 という自動車生産の動向を背景に、当部会としましては、自動車産業に関連する分野がいくつかございまして、そのうちのまず切削工具について申し上げます。この切削工具は、ただ今申し上げました主力ユーザー様であります自動車産業の動向を反映して、前年同期比を若干上回ったものの徐々に受注が鈍化する傾向にございます。下期につきましては、先程来話が出ております米中貿易摩擦の懸念はありますけれども、自動車業界様以外の、航空機ですとか、建設機械、それからエネルギー、それから新しい分野としてメディカル等へのですね、拡販に伴って、引き続き需要が増加する見通しであります。

 次に、回転機械において重要な部品となりますベアリングについて申し上げます。このベアリングにつきましても自動車の状況と連動して、2019年上期の後半からですね、急速に冷え込んでおりますが、一方で二輪車向けは堅調でございます。また一般産業機械向けは、多くの企業が新規投資を控えまして、上期の半ばから受注が急速に減っております。下期につきましては、二輪は引き続き堅調でありますものの、自動車、一般産業向けは回復は期待薄でございます。

 次にドライブシャフトですが、ドライブシャフトにつきましても自動車生産の動向に連動して上期は前年の同期を下回っております。下期は景気回復の期待感はありますものの、上期の落ち込みはカバーできない見通しでございます。

 次に潤滑油ですけれども、上期につきましては自動車、フォークリフト向けの初期充填オイルの増加により、対前年比で大幅に増加しております。一方、工業分野につきましては、お客様の使用量削減に伴いまして減少しました。下期も上期と同様の傾向が続く見込みです。

 最後に金属加工用の油剤ですけれども、上期につきましては消費量がそれほど拡大しない一方で、コスト削減を目的とした消費量削減活動とかがお客様において行われました関係で苦戦をいたしました。下期につきましても、景気先行き不透明感に伴い厳しい状況が続く見込みでございます。

 続きまして、農業・産業機械関連のセグメントについてご説明をさせていただきます。上にですね、ブラジル地理統計院が発表しました、関連する機械類、つまりエンジン、汎用機械、トラクター、工作機械の生産動向、これも2012年を100とした指数で表した資料を準備いたしました。この4つの製品、それぞれによりまして、若干傾向は異なっておりますけれども、最初の方に申し上げました鉱工業生産指数ですとか自動車生産と中期的にはおおむね同様の傾向。つまり2018年から回復傾向に入ったものの、2019年に入ってから陰りが見られるという傾向が見て取れるというふうに思います。これを参考にしていただきながら、当部会メンバーが実際のビジネスを通じて感じております点を中心に状況をご説明いたします。

 まず小型ディーゼルエンジンですけれども、上期は多気筒、つまり日本製と発電機セットの販売は回復しましたけれども、横型の単気筒が大きく落ち込んで、対前年比で若干の減少となりました。下期につきましては、農作業機械メーカー向けが振るわず苦戦が予想されます。

 次にトラクターですけれども、上期はBNDESの農業向け低利融資が停止状態となっているということにより低迷いたしました。下期につきましては、この融資の再開ですとか良好な農作物の収穫に伴いまして、需要は上向く見通しですけれども、年間では昨年を下回る見込みでございます。

 続きましてポンプですけれども、年初は需要に力強さが見られましたが、現状は足踏み状態で、上期はほぼ昨年と同レベルです。下期につきましては、経済成長見通しの下方修正に伴いまして先行きは不透明でございます。

 最後にレーザー切断機ですが、依然として厳しい状況が継続しております。

 それではセグメント別としては最後になりますけれども、石油・ガス、紙パルプ産業関連のセグメントの状況についてご説明申し上げます。資料としましては、上のグラフにブラジル地理統計院が作成しました石油製品、紙パルプなどの生産実績を、2012年を100とした指数で表したものを左側の折れ線グラフで示しております。それから右側にブラジル紙パルプ産業協会が発表しております紙パルプの生産動向のグラフを準備をしております。

 まず、左側ですけれども、石油製品の生産実績を赤い折れ線グラフが示しております。昨年末に発表されましたペトロブラス社の5カ年計画におきまして、年間3隻のFPSOの建設計画が含まれておりまして、需要拡大の期待が増えております。

 次に、紙パルプの生産実績は左側の青いグラフですけれども、パルプの需要の拡大によりまして、ほぼ一貫して対前年比で増加する傾向にあるのが見て取れるというふうに思いますが、右側のグラフをご覧いただきますと、輸出につきましては昨年を下回る傾向にございます。

 当機械金属部会の会員企業はこれらの石油・ガス、紙パルプ産業において使っていただいております製品を扱っておりまして、ただ今申し上げましたこれら産業の動向を前提に関連分野の状況をご説明いたします。

 まずボイラですけれども、紙パルプ業界の中規模プラントとかボイラの更新計画、それから製紙業界のすでに使っておられますボイラの大型メンテナンス工事等の動向を注視して参ります。

 次にプラント・工場用の制御システム・機器ですけれども、上期は鉄鋼メーカーの保全投資の回復、それから石油・ガス上流分野の新規設備投資、パルプ産業におけます生産拡大投資等に伴いまして受注は堅調でした。下期も同様の傾向の見通しでございます。

 次に移動式のクレーンですが、上期はレンタル会社向け、製紙業界向け、マイニング業界向け等によりまして前年を上回る見通しです。下期につきましては、製紙、マイニング、エネルギー、石油・ガス業界設備、こういった業界の投資の動向を注視して参りたいというふうに考えております。

 以上、当部会を取り巻く環境について、2019年の上期を振り返り、また2019年下期を展望いたしました。最後に、「内外の環境変化にどう対応するか」という副題に対する部会メンバーの見方を紹介をさせていただきます。これは会員の皆様からご提出いただいた内容を部会長としてまとめさせていただいたものです。まず、最近のトピックスの理解について申し上げます。

 これまでにも何度も話が出ておりますが、社会保障改革法案の下院の通過は確かに明るいニュースであるというふうに私どもも受け止めております。しかし一方でですね、実際の実現時期がいつになるのかということについては今の時点では不透明ですとか、先程のブラデスコ様のご説明にもありましたが、これだけでブラジル経済が本格回復するわけではない。例えば税制改革とか、その他の構造改革も必要という状況でありまして、当部会の会社にとってただちにこれに基いて何かアクションがとれるかというと、そういう訳ではどうもなさそうだということでございます。

 次に、EU・メルコスールのFTAの合意についてですが、これに伴ってですね、いろいろ何か対応する必要があるよねということにつきましては、当部会の共通認識であります。例えばブラジルの国内生産をもっと増やすとか、メルコスールの他の国を活用することによってコストを減らすとか、あるいは逆にブラジルからもうちょっとヨーロッパとかに持っていけないかとかですね、まあ色々アイデアはあるんですけれども、しかし、これまた具体的検討を開始するというのにはちょっとまだ時期としては早いのではないかと。

 ということで、当部会にとりましてマクロな環境変化は何なのかということを考えてみました。大きくは二つあると思います。

 一つ目はですね、ブラジルが自由貿易政策を推進するということはほぼ確実というふうに思われておりまして、これに対応するためですね、ブラジルコストの削減ですとか、低い生産性を改善するというための施策は必ず実行されるということではないかということです。

 それから二つ目ですけれども、これともちょっと関連するところがありますけれども、世界的な潮流であります、ESG投資ですとか、それからICT、あるいはAIを活用するという波はですね、ブラジルにも押し寄せて来ております。ちょっと具体的な内容は申し上げられませんが、ともすると、ICTとかAIというと、どちらかというと、例えば銀行さんの仕事ですとか、そういうようなどちらかというといわゆるモノづくりじゃない方の報道なり関心が強いのではないかというふうに思いますけれども、実は機械分野でも、ICTはもちろんなんですけれども、AIを使ってもっともっと新しい事ができるんじゃないかというような話は出ておりまして、そういう意味で、世界的な大きな波が必ずブラジルにも来るというのが私どもの共通認識でございます。ということで、私どもとしましては、足元で生産性の向上を図りつつ、今申し上げましたようなマクロの環境変化に応じたビジネスチャンスを模索するというふうに考えております。既にいくつか萌芽は出ているのではないかというふうに思います。

 今の2点目は、先ほど讃井様から金融部会についてご質問があった話でもちょっと関連しておりまして、日々入って来るブラジルの、あるいはメルコスールも含めた南米大陸の動きはウォッチしつつもですね、もうちょっとグローバルで大きく起きている変化をうまく活用できないかというのが我々の認識でございます。

 ご清聴ありがとうございました。

司会

 はい、山田さんありがとうございました。よろしければご質問いただければと存じますが。ありがとうございます。マイクをお願いいたします。

発言者

 どうもありがとうございます。2点ちょっとお聞きしたいんですけれども、1点目は鉄鋼のところでですね、対前年比粗鋼生産量がマイナスということなんですが、米中の貿易摩擦の関係で、中国産の鉄鋼にアメリカが関税をかけているという状況がある中で、そういう中国の鉄鋼というのがブラジルに入ってきているという状況があるのかどうかということとですね、もう1点は、農業・産業機械関連のセグメントのところで、トラクターのところにBNDESの農業向け融資が停止状態という、この理由というか背景を教えていただければと思います。

山田部会長

 1点目は、メタルワンの加藤さんいらっしゃったら詳細は補足いただきたいと思うんですけど、ご心配のようなことは結果としては起きていないというふうに聞いております。ちょっと補足していただけますか。

メタルワン 加藤氏

 ご質問の件については、まだ、中国の鉄鋼が、例えば大量にブラジルに入ってきているというふうな流れはですね、まだ起きてはいません。実は昨日ブラジルの鉄鋼協会の会議にも出たんですけども、まあその話題にもなったんですけど、ブラジルの鉄鋼業界も、中国のものが大量に入ってきてですね、値段が下がるという部分は非常に警戒していますし、おいそれとそんなふうな感じでですね、ブラジルが中国の鉄鋼を大量に受け入れるというのは足元ではないんじゃないかなというふうに思っております。よろしいでしょうか。

山田部会長

 ありがとうございます。2点目のBNDESの件なんですけど、ヤンマーの北原さんいらっしゃいませんか、今日は。ちょっと、聞いた話では、まあ結局お金がなくて、ちょっと一時中断しているけど、下期になったらまた始めるようなことが割と頻繁に起きるというふうに聞いております。

司会

 はい、ありがとうございました。大変良いお話だったと思います。私もお聞きしていまして、前半の方は厳しいとか苦戦とか、下回るとか低調とかですね、やや暗いお言葉が多かったんですが、後半に紙パですとかペトロブラスさんだとか、こういった明るい話がありそうで、長期的にはESG、ICT、AIと、まだまだ拡大の余地があって、ブラジルに来ているというのは、これも皆さんお持ちのことだと思います。何と言っても色んな広い業界に影響が表れる中で細かくお聞かせをいただきまして大変ためになりました。ありがとうございました。山田さん、ありがとうございました。あらためまして拍手をお願いいたします。

 それでは続きまして、自動車部会様からの発表をお願いいたします。下村部会長よろしくお願いいたします。

 

自動車部会

下村セルソ 部会長

                       

 皆さんこんにちは。自動車部会の下村と申します。私から自動車部会の報告をします。今回は、上半期の振り返りと下半期の展望などについて、四輪と二輪の順に説明します。

 まず、はじめに四輪の振り返りです。新車市場についてです。19年の上半期は昨年度の同時期と比較すると約12%増加しました。当初の予想をわずかに上回る結果となりました。下半期は、年金改革の実行、金利の低下、低いインフレーション、FGTSの引き出し解除などにより消費者の需要はさらに高まるものと予想されます。一方では、ダイレクト・セールスが占める割合も高くなっており、販売増加に大きく貢献しています。

 続いて月別の販売台数です。今年の前半は当初の予測よりも好調でした。このトレンドが継続すれば、Anfaveaは当初の年間売上の予測をさらに上回る販売に到達すると予想しております。

 次に生産と輸出です。19年の上半期の生産台数は147万台でした。国内市場が好調でしたが、アルゼンチン向けの輸出が減ったため、前年よりも少し減りました。輸出台数については、主な輸出国はアルゼンチンの市場が縮小し、前年比38%減でした。

 次に新車・中古車別の市場です。このグラフから新車需要が伸びていることが分かります。中古・新車トータルで1300万台を超え、順調に伸びています。

 次に下半期の展望です。こちらは2019年の予測です。国内市場は先程申し上げたように、年金改革、金利低下、低いインフレーション、FGTS引き出しの解除などにより販売が増加傾向となり、自動車部会では約280万台の生産で前年比9%増を見込んでいます。生産・輸出台数については、アルゼンチンの影響もあり、減少する可能性があります。

 続いて長期展望です。長期展望としては、重要なテーマはこちらになります。モノ、人の流れを変える自由貿易協定、大気汚染防止のための排ガス規制、将来のビジネスモデルであるモビリティサービス。本日はこの3つの説明をします。

 まず、はじめに貿易交渉の状況ですが、新政権の市場開放路線により、ようやくヨーロッパとの交渉が政府的に合意を迎えました。自動車に関する詳細はまだ確認中ですが、ヨーロッパメーカーは国産車の競争力強化、完成車の関税削減による輸入車の増加を予想され、日本メーカーは厳しい競争にさらされる様相です。日系の部品メーカーも大きなダメージを受けることが予想されています。カナダ、韓国との交渉も進展しており、カナダは今年中、韓国は来年中間までには締結すると予想されています。中身はまだ公表されていませんが、どちらにも自動車が含まれています。昨今ではアメリカと貿易協定の協議を開始する合意に至っており、こちらもブラジルの政府の強い要望により進展がみられるでしょう。

 アルゼンチンの選挙結果が貿易協定の交渉に及ぼす影響を注視する必要がありますが、日系自動車メーカーにとっては、日本との協定がないことは競争力が劣る原因となり、大きな痛手となります。自動車部会としては、日・メルコスールEPAの早期の交渉開始に向けた活動を後押ししていきたいと考えております。

 次は排ガス規制についてです。今年初めにも説明させていただきましたが、昨年末、環境省の委員会で2022年、2025年以降の排出ガス規制の大枠が決まりました。ブラジルの自動車メーカーにとって規制導入のタイミングがとても厳しいので、販売できなくなる車種が出てくる可能性があります。

 こちらの地図でご覧ください。ブラジルは中南米各国と比較すると唯一米国基準の規制を採用しています。ディーゼル車のOBD燃料も漏れの自己診断装置の場合はヨーロッパより厳しいアメリカ基準を採用しており、こちらも開発のための十分なリードタイムではなく、大きな課題となっております。

 こちらは一例ですけれども、自動車に対するNMOGの規制値をヨーロッパ規制のEuro6と比較したものです。ご覧の通りL7およびL8の排出規制は、特に2017年からヨーロッパよりもさらに厳しいものとなっており、達成するには自動車メーカーが大きな電動化が必要となってきます。L7からL8への移行期間もヨーロッパの5年間に比べ、ブラジルは3年間となっているため、開発リードタイムと高額の投資を要します。このように、内容が大変厳しく、リードタイムも少ない事がお分かりいただけると思います。これからの規制導入のタイミングが現実に即したものになるよう、引き続き政府に働きかける必要があります。

 それでは、グローバルにおける環境の変化について説明します。皆様ご存知の通り、自動車産業はCASEと呼ばれて、技術革新によってIT・交信・サービス業などこれまでと事なる業種との競争が進み、自動車メーカーからあらゆるモノやサービスへとつながるモビリティカンパニーへと変革してきています。これを、我々は100年に1度の大変革期と呼んでおり、競合が他の自動車メーカーではなくGoogleやAmazonに広がるなど、20年前、30年前には考えもしなかったことが次々と起きています。来年の東京オリンピック、パラリンピックでもそのトレンドをいくつか取り入れたモビリティの提案をさせていただいておりますので、ちょっとビデオをご覧ください。

(※ビデオ上映※)

 ブラジルでも金融や公的サービスなど様々な分野で新たなサービスが普及し始めており、モビリティ分野においてもUberなどシェアリングサービスが先進国並みに普及しています。この1年で、patineteやレンタルバイクも急激に普及しております。大変革時代に対応していくためには、素早い対応が不可欠となってきております。

 このような状況に対し、今回のテーマである「内外の環境変化にどう対応するか」について日系ブランドの取り組みを説明いたします。

 EPAについては、日本政府やブラジル、アルゼンチン政府に対して、早期交渉開始に向けて継続的に働きかけを実施していくことが重要です。同時に、開かれた市場でも競争力が持てるよう、税制改革などの構造改革の必要性を訴求し続けていきます。

 Proconveについては、規制導入のタイミングが現実に即したものになるよう、政府や関係機関に働きかけていくことが大事です。

 また、今後拡大するモビリティサービスにも積極的に取り組んでいき、電動化にも力を注いでいきたいと思います。

 日系メーカーの取り組みの事例です。電動化に向け、日産は7月にブラジルを含むラテンアメリカ4カ国で電気自動車のリーフを発売しました。トヨタも5月にフレックス燃料ハイブリッド車のカローラの生産・販売を発表しました。ガソリンでもエタノールでも走るフレックス燃料ハイブリッド車の生産は世界初、トヨタ発の試みです。同様に、カーシェアリングサービスは、トヨタはアルゼンチンにて昨年11月にトヨタモビリティサービスを開始しております。ブラジルでも今年中にモビリティ関連のビジネスを開始する予定でおります。

 今日お話したことを次のスライドでまとめます。こちら、本日のまとめとなります。

 続いて二輪業界について説明します。まず生産・販売についてです。二輪市場の上半期の販売は53万台で、前年比117%となりました。クレジット販売の増加が貢献しています。国内市場の販売増加に伴い、生産も前年を上回りました。一方、輸出はアルゼンチン経済の減速により、前年比50%となりました。

 こちらは登録ベースの月別の販売です。先程申し上げた、クレジット販売が増加したこともあり、全ての月で前年を上回りました。下半期も引き続き堅調に推移すると予想されております。

 最後は、二輪販売の支払い形態別の推移です。緑のグラフはローンによる販売比率を示していますが、金利が低く抑えられてローン販売が占める割合が大きいことが分かるかと思います。金利の安定や失業率の改善で販売が増え、今年も二輪市場のさらなる回復を期待しております。

 これで私の発表を終わります。ありがとうございました。

司会

 下村部会長、たいへんありがとうございました。どなたかご質問あられる方おられましたら挙手を。お願いします。

発言者

 日本大使館の濱坂でございます。ご説明ありがとうございました。排ガス規制につきまして、少し教えてください。この問題、非常に難しいと、自動車部会の中でずっと議論されてきたと承知しております。この中で、日系ブランドとしまして、規制のリードタイム、その内容、これに対しましてブラジル当局の理解を求めているということですが、この内容につきまして二つ考え方があると思います。例えば他の中南米同様に、ユーロ5、まあユーロ5はユーロ5で大変ですが、ヨーロッパ基準に求めていくのか、今の規制の骨子案、この中で特に難しいもの、例えば例示にありますようなORVRとか、こういったものを取り除いていく、どちらのアプローチを今お考えになっているのかというのが質問の一つ目でして。もう一つ、この規制に対します、特にヨーロッパメーカー、フィアットやフォルクスワーゲン、ヨーロッパメーカーはどのように対応しているのか、教えて下さい。

下村部会長

 質問ありがとうございます。今ですね、この件について全カーメーカー、同じ意見です。これは良い事です。Anfaveaの中では全部一緒になっていて、まずL7、L8ありまして、L7の中にはORVRとかそういうことが、まずディスカッションやっているのは、ORVRはさっき説明にあった通りですね、ガソリンスタンドに行く時にはガス出るんですよね。それを出ないようにORVRを車に付けましょうと。だけどそうしたらですね、新しい車しか対策にならないんです。我々たちは、そうじゃなくて、ガソリンスタンドがなおったら前の車、今の車全部対応できるんじゃないかと、今アプローチしております。だから、そういう意味では、本当の目的がそういうガスのエリミネーションをやるのだったら、もっとeffectiveなことは、車じゃなくて、ガソリンスタンドの方がいいんじゃないですか、今、と考えております。これが一つですね。ただ、じゃあ政府がですね、Anfaveaが払ってくださいと、そういうディスカッションに今なっているんですけども、まあこうなっています。これがL7の状況で、今何とかそれを、エリミネーションは考えております。L8の場合は、ちょっと、グラフを見る通りすごく厳しいと。もう一つは、せっかくですね、ブラジル政府、Rota2030をアナウンスしました。で、Rota2030のスケジュールと今のスケジュールは合っていないんですよ。Rota2030がもっと、5年間でリーズナブルなリードタイムになっておりますので、合わせて下さいと。せっかくRota2030で言ったことを、守っていないのか、だからRota2030の一番良い所は、そういうプレディクタビリティですね。もうちょっと将来を見ながらそういうフォーカスをちゃんとできるようなせっかくのプログラムなので、その中でこういうレギュレーションでちょっと合っていないのは良くないんじゃないですかと今アプローチしております。

司会

 はい、ありがとうございました。非常に実情にそった質疑をいただいたと思います。たいへんありがとうございました。自動車のところで言いますと、ビデオにもありました通りですね、世の中で言われています単に乗るだけではなくて生活に密着したと、こういったところが改めて見えましたし、色んな産業に影響があるのかなというふうに思いました。あと、ご説明は短かったですけども、二輪車の方については実績が非常に堅調であるということで、これは非常に日系の関係の方も多いというふうにうかがっておりますので、明るいニュースじゃないかなというふうに思います。たいへんありがとうございました。拍手をお願いします。

 それでは続きまして、コンサルタント部会ですね。前半、コーヒーブレイク前の最後のコメントになります。吉田部会長の方からよろしくお願いいたします。

 

コンサルタント部会

吉田幸司 部会長

                     

  皆さんこんにちは。コンサルタント部会長をさせていただいております、KPMGの吉田と申します。時間通りですとあと10分ぐらいしかないので、時間通り終わらなかったら大変申し訳ないんですけども、なるべく短くポイントをまとめてお話しさせていただきたいと思いますので、最後までお付き合いいただければと思っております。

 最初のページは他の部会長の方々がお話しされておりますので、割愛させていただきます。2ページ目からになりますけども、これ、前回ですね、2月の時にもご紹介させていただいたんですが、何かといいますと、KPMG、私どもの属しているグループですが、年に1回ですね、世界各国のCEOの方に今の景気はどうですかという質問をさせていただいているアンケート結果というところになります。

 年に1回、前回は2月にご紹介させてもらったんですが、毎年1月か2月にさせていただいているものですから、ちょうど今回の上期のタイミングに結果が間に合ったということで、ちょっとご紹介させていただいているものになります。今回はですね、前回、日本が入っていなかったじゃないかというようなコメントもあったものですから、今回は最初から日本を入れさせていただきました。

 今回の調査はですね、全世界で64カ国の2535人のCEOの方から回答をいただき、このうち日本は100人。ブラジルは50人となっております。一つおことわりしたいんですが、グローバルというところがあるんですけども、グローバルのところについては、これ64カ国全部ではなくて、11カ国を選んで1300人のCEOの方のコメントだけになっておりますので、64カ国ではなくて11カ国とお考えいただければと思います。

 今後3年間ですね、自分が成長していく自信があるとかですね、世界が成長していく自信があると答えた割合がどうかというところなんですけども、こちら、日本は結構低めになっていると。グローバルもそれなりに低めになっている。これ実際ですね、ブラジル、高めになってはいるんですけども、ブラジル、実は、去年同じ調査をした時には53%でしたと。それが今74%になっていると。自国のところですね、ブラジルが成長していく自信があるかどうか。これは76%。昨年79%ということで、自国にはあまり変わりはないんですけども、非常に自信があるというところになってくると、9%から42%まで増えているということで、ブラジルの経営者は非常に世界経済に自信を持ってきていると。

 何が大きく違うのかなというところなんですけども、やっぱりボルソナロ大統領、去年のタイミングではまだ大統領が誰になるのか分かりませんでしたというのが、新しい大統領になったと。これからやっぱり経済良くなっていくんじゃないかというふうに思った経営者の方が多かったんじゃないかなというところですね。

 一方で、自社のところですね。前回は自社の成長に自信があると言っていたのが100%でした。今回は88%になりましたということで、世界が伸びます、国が伸びますと言っているのに、自社についてだけは自信がありませんという方が12%いたということで、なぜ下がったんだろうとちょっと考えたんですけども、一つだけ思い当たるのがGDPの成長率。年初2.8%と出てました。自社が2.8%以上今年伸びるだろうか、3年間GDP以上伸びるだろうかと思った時に、ちょっとブラジル人保守的になって、そこまで伸びないというふうに考えた経営者がいたんじゃないかなと想像したところになります。

 あと、今後自分が成長していくに当たってですね、何が最も脅威になるかと。いくつかの選択肢があるんですけども、そこから一つだけ選んでくださいという質問をしました。グローバルと日本、非常に結果が似ています。特に一番上ですね、昨今の地球の状況を表していると思うんですけども、気候変動リスクが今後リスクとして一番高いんじゃないかと。まさにですね、フランスとかの異常気象もありますし、このブラジルにおいても確かに、最初冬すごく暑かったのに今寒くなっていたりとかですね、やっぱり異常気象という状況が起きているというのは言えるんじゃないか。それに対して、グローバルと日本については、やはりここに対しては今後のビジネスにリスクがあるというふうに考えているということが言えると思います。

 一方、ブラジルですね。これ、実は気候変動リスク、出てきていません。どうだったんだろうかと色々見ましたら、一応選んだ経営者はいましたと。二人でしたと。結局4%ですね、50人中2人だけが気候変動リスクが今後高まっていくというふうに考えていたという結果になっております。

 もう一つご紹介させていただきたいのが、これですね、最近よく言われているところだと思うんですけども、低酸素、クリーンテクノロジーに対する世界の流れを予測して取り組めるかが自社の成長になると、最近のこの環境を考えたことが自社の成長になるかというところですけども、ちょっと日本の結果は出ていなかったんですが、グローバルとブラジルだと明らかにブラジルの方が低いというところで、やはり日本の企業さん、日本も気候変動が非常に激しくなっているものですから、そういう意味では日本企業さん、この気候変動に対して非常に取り組みが進んでいるという意味では、ブラジルがこの率が低いというところを考えると、日本企業さん、この環境ビジネスでブラジルに入って来る余地はあるんじゃないかと個人的には思ったところになります。

 ただですね、皆さんニュースでご存知だと思うんですけども、今アマゾンの方で今までにないぐらいの火災が生じています。ボルソナロ大統領が言っているのは、何か環境団体が変なことを言っていると、あれは別に火事じゃないというようなことを言って、ボルソナロはどちらかというと環境保護よりも開発を重視していると言われておりますので、ボルソナロ大統領がいる時は、この環境の部分については話がもしかすると進まないかもしれないというふうに言われているんですけども、将来的にはやはりこの環境のところというものは注目を浴びていくはずであるというふうに言えるんじゃないかなというところになります。

 次のところですけども、昨今のビジネス環境を考えると、非常に早くビジネスが変わって行っているという中で、じゃあそのビジネスを自分が変えていくのか、今までの市場を自分が壊して変えていくのか、もしくは、相手が行くのをそのまま追随していくのかというところになるんですが、そのところについては、日本は結構控えめですね。59%となっています。実際これは去年48%でしたので、率は上がってきているんですけども、ブラジルは76%ということで、やっぱり自分が壊していくんだと、自分がフロンティアになるんだという意識が非常に強いんだなとここで感じ取られたところになります。

 そのためにはやっぱり失敗はどうしても出てきます。やっぱり、新しい事を挑戦する、100%うまくいく訳はありませんと。特にシリコンバレーの用語で良く言われているのは、皆さん聞いたことがあると思うんですが、Fail fast、失敗しながら始めるというのがよく言われています。これがGoogleが成功した秘訣とも言われていますし、Amazonの社長も何十億ドルも損失を出したというふうに言われておりますので、Fail fastというのが受け入れられる土壌があるかどうかというところが、ひとつ、この市場を破壊していくところで非常に重要なキーワードになるのかなと。失敗から学ぶ社風を作っていくかどうかというところについては、大体グローバルもブラジルも日本も高いと。一方でそれを受け入れる土壌が既にできているかというところなんですが、日本人、中々、控えめなところがあると思うんですけども、失敗を受け入れていると言い難いと。41%しかありません。ブラジルは70%ということで、土壌はもうできているよと、いくらでも失敗してもいいよと言っている経営者が、一応結果としては多かったというところになっております。

 CEOアンケートの中をもうちょっとご紹介させていただきたいんですけども、レジエンスという言葉を皆さん聞いたことありますでしょうか。2013年度のダボス会議の時にこの言葉が出てきたかと思います。一般的に国際競争力が高い国=レジリエンス力が高い国というふうに言われておりまして、日本は違いますというふうなダボス会議の時の報告書になっています。

 このレジリエンスって何か、そのまま訳すと回復力というふうになるかと思うんですけども、日本語で何かいい言葉がないかなと考えた時ですけども、イメージだと七転び八起きというのがやっぱりぴったりくるのかなと。やっぱりビジネス、右肩上がりで上がっていく訳ではありません。失敗することもあります。失敗して下がるんですけど、それを打ち破って上がっていくということで、こけても立ちあがるというふうに考えていただければ分かりやすいのかなと。じゃあこけても立ちあがって、どのビジネスを本当にやっていくんだというところのアンケートとしては、日本企業についてはコアの事業を守ることが一番大事ですと。ブラジルは結構分かれておりまして、その中で私が個人的に着目したのは、やっぱり市場を壊していくんだと、本当に新しい事をやっていくんだという比率が非常に高いと。24%になっていました。

 一方で、じゃあ壊していくんだったらスピードというのは非常に大事だなと思った時なんですけども、そのスピードというものが企業の存続を左右するかとなってくると、結構意外とブラジルは60%で日本よりも少なかったと。ここらへんについては、すみません、なぜ少ないのかまではですね、私も色々資料見たんですけども、自分でも考えたんですが、中々ちょっと思い浮かばなかったところではあるんですが、自分がフロンティアとして頑張っていくけども、まあスピードは別にそこまでじゃないよという意味では、ブラジル人の気質をもしかすると表しているところなのかなというふうに思ったところになります。

 CEOの調査の最後のところになるんですけども、こちら挙げさせていただいたのは、いま時代が変わっていきます、各部会長の方からもありましたけども、働き方も変わっていきますと。そうすると、人に求められる能力というのは必ず変わってきますと。であれば、その人が、働き方が変わっていったことによって求められる能力が変わっていくことに対して、企業としてそれをちゃんと教育していきますかというところに対して、4割以上の従業員に対して教育しているかというところですと、グローバルだと82%なのが、ブラジルは結構低く68%になっていたと。社内で育てていくという人が7割ぐらいはあるんですけど、グローバルから見たら少ないと。じゃあ、十分新しいスキルを持った人が街中にいるのかなと、労働者マーケットにいるのかなというところいなった時に、ブラジルの経営者としてはそんなにいませんと。新しい技術を持った人を雇おうとすると難しいと答えているのが66%になっているというところでは、これはコンサルタント部会の話にもなったんですが、これからの企業さん、生き残っていくためには教育が非常に大事だと。国の教育ではすごい時間がかかると、20年、30年かかってくるという意味では、自ら企業さんが従業員を教育していくことが大事じゃないかと。それによって会社を強くしていくという中では、いまブラジルの企業の中では、教育をやってスキルの習得を予定しているというのは68%と他の国よりも少ないという意味では、日本企業さんは残念ながら結果がなかったんですけども、日本企業さんはやっぱり教育を大事にするかと思いますので、皆さんの会社でブラジル人の方に対して教育をやっていくというのは、今後皆さんの会社が強くなっていくための一つの方策かもしれないというふうに思ったところになります。

 ここで一応CEOのアウトルック調査について終わらせていただくんですが、それ以外にも実は、サイバーセキュリティの件とか、中国の一帯一路政策についてどう思うかとか、色々項目があったんですが、ご興味あればまた別途お話しさせていただければと思います。

 ここからちょっと視点を変えまして、コンサルタント部会の副部会長の今井さんの方からご提供いただいたデータになるんですけども、ブラジルに海外の会社が投資していく時にどういう手法を重要視していきますかという中の一つとして、JPモルガンが出している新興市場証券指標というのがありますと。これを見ていただくと、ルセフ大統領の政治混乱の時はリスクが上がっていましたというところが、直近ではだんだん下がってきていますと。どれぐらい下がっているのかなというところで、確かにブラジルがBRICsと言われたころよりはちょっと高いかもしれないんですけども、だんだん下がってきているという意味では、この指標だけ見ると、外資から見ると投資をしていくというのはもしかすると魅力的に映るかもしれないというふうな一つの指標になっております。

 続いてBOVESPA指標と海外直接投資というところなんですが、皆さんご存知の通りBOVESPAはどんどん価格が上がってきました。ただ、上がっていった中としては、国内の機関投資家とかの投資が多くて、海外からの投資は下がって行ったというところで、リスクとしては下がっているはずなのに、株式市場への投資というふうに見ていくと、国内機関投資家が増えて海外からは逃げて行っているという状況になっていったというところになります。

 ではブラジルの株式市場というものをですね、他の海外の市場と比べたらどうかというところになります。この点線で囲っておりますMDBとか、あと隣のYTBのところを見ていただければと思うんですが、どのぐらいブラジルの株式市場が価格が上がったか、時価が上がったかというところなんですが、時価の上がり方については、日本とか韓国、アジアは中々低いんですけども、ヨーロッパ、アメリカと比べるとブラジルの株価の上がり方というのはそんなに遜色ないのかなと。

 一方で、株を投資していく一つの指標として使われる、このPEと書かれているところなんですけども、株価収益率ですね。株価を一株当たり利益で割った時の指標がどうですかと。これ一般的に、14~20が適正数値だと言われています。そういう意味では、ブラジルは11.87、という意味では、株式市場としては投資するには魅力的、価格がちょっと安いふうに出ていると言えるのかなと。もしかすれば、リスクが高いからやっぱり株価が上がりきっていないというふうに言えるのかもしれないというところですね。ちなみにNasdaq、23.8とちょっと高めになっているんですが、Nasdaqはアメリカですけども、新興市場となっておりますので、どちらかというと期待高の銘柄が多いものですから、Nasdaqは通常一般的には高めの数値になると言われているところになります。

 そういうブラジルの株式市場ですけども、じゃあこの上期に上場した会社が何社ありましたかというところになります。残念ながらブラジルの上場した会社は2社しかありません。一つは、皆さん利用したことがあるかもしれませんが、スポーツ用品をやっているCENTAURO、ここが上場しました。もう一つが、一応民間の電力会社としては契約者数2番目を持つと言われておりますNEOENERGIAというところの2社しかブラジルの株式市場に新たに上場した会社はありませんでしたというところになります。

 今後ブラジルの株式市場に新しくどういうところが上場する予定をしていますかというところを少し調べたものになります。下3つはですね、Caixaが4つの民営化をすると言っているところの3つになるんですが、上から2つ目、3つ目ですね、ここのSmartFit、皆さん見たことがあると思うんですけども、フィットネスですね、今上場をねらっておりますし、あと、私個人的には使ったことがないんですが、このVivaraというジュエリーの会社ですね。私はお店の中にも入ったことがないんですが、一応旗艦店はモルンビーショッピングの中に入っていると言われていますが、そこも今後上場していこうということで、Vivaraについては既に上場申請書が出されていて、10月に上場を予定していると言われているところになります。それでもやっぱり数は中々ちょっと少ない感じになってくるんですが、じゃあこれを世界と比べたらどうかというところが次のスライドになります。

 グローバルのIPOの動向。特に今年2019年度はアメリカにおいてIPOバブルと言われております。実際件数もですね、6月までにアメリカ97件、日本もそれなりに多いんですが、日本は38件ということで、世界的にIPOの件数が非常に多くなっていると。どういうところが多かったかといいうところですけれども、多分皆さん大体名前を聞いたことがある、有名なところだと思うんですが、Beyond Meatですね。非常にこれについては上場の時から株価が非常に上がったところになります。あと、上場して投資家をがっかりさせた銘柄として代表株として言われるのがUberとLyftと。皆さんよく使われていると思うんですが、Uberについては結局、上場してもこの第2四半期も赤字でしたということで、Uberは一度も今まで黒になったことがないというところですけども、上場していると。

 で、今後ですね、一応上場されると期待されている会社名をこちら下に6つほど挙げさせていただきました。皆さん知っている会社ってありますでしょうか。多分有名なところではAIRBNBとかは有名だと思いますし、その下のWEWORKというところも皆さんご存知かと思うんですが、この中でですね、一つ色々調べていきますと、右側のRobin Hoodという会社があります。これ、モバイル株取引ということで、2013年に会社ができましたと。で、これ、最近資金調達をしましたと。この資金調達をした結果、どれぐらいの時価総額があったかとなってきますと、8200億でしたと。日本の会社の今株式市場に上がっている上場会社で8200億となってくると、どのような会社があるかというのを調べてみますと、大成建設さん、これが8251億円、日本の株式の中で151番目でした。この上に来るのが出光興産さんが8300億円ということで、たった6年でこのような会社の規模にも追いついてきているというような会社が今後上場してくる会社としてアメリカに控えていると。あとですね、この左側の一番上のPLANTIRというところについては、日本のOKWAVEという会社が実は出資をしているんですが、ここについては上場する時に、今410億ドルと言われておりますので、4兆5000億ぐらいの価値が出るんじゃないかというふうに言われておりまして、そういう意味では今後アメリカにおいては非常に上場株の期待も高いものがあると。ただ、今まで上場株の有望だと言われていたWEWORKについては、結局この第2四半期も赤字でしたということで、WEWORKって本当に価値があるのかというのはちょっと疑問点がつくというのが最近噂されているところになります。

 あと、株価収益率の比較というところで、先程言った株価収益率がアメリカとブラジルを比較してどうかというところです。これ、何を取ってきてあるかというと、ブラジル会社でアメリカに上場している会社の株価収益率を取ってきているものになります。結局、なぜアメリカに上場するのかというと、お金がすぐ回収しやすいからと言われているところを証明しているところになると思うんですが、PagSeguroについては株価収益率が36倍とか非常に高い率になっているんですが、ブラジルで上場している会社は一番高くても21倍というところで、やっぱりブラジルよりもアメリカで上場した方がお金という面では企業家にとっては良いと。ただアメリカで上場すると株主からのプレッシャーも高いですし、規制当局からの規制も厳しいというところで、そっちがあっても高いお金を取りにくるのか、まあそこまでではないブラジル市場に上場するのかというのは、これは企業家さんの判断かなというところになります。

 ブラジルのスタートアップ企業、今まで投資額というところで一例を見ていましたけども、ソフトバンクさん、最近よく言われていると思います。ソフトバンクさんの投資がありましたという中で、ソフトバンクさんが南米で50億ドルの投資をすると発表された後、ネットで色々調べた限り、今のところソフトバンクさん、合計で南米に投資している金額はRappiも入れて20億ドルぐらいだと思いますので、ソフトバンクさんまだ30億ドルぐらい投資できる枠を持っているというところになりますので、まだまだソフトバンクさんは盛んに投資してくるのではないかなというふうに個人的には思っているところになります。

 すみません、ちょっと時間がないので。時間があれば税制改正をお話ししようと思っていたんですが、飛ばさせていただきます。

 ブラジルにおけるスタートアップ企業、最近よく言われていると思うんですが、新しい企業形態ができていますというところを少しだけご紹介させていただければというふうに思います。

 今回ですね、どこの市場をお話しさせていただこうかなと考えました。よく言われるFinTechもあります。ブラジルなので農業系のAgritechもありますと。あと、それ以外にやはりHealthtechもあったりとか、あと2018年度からかなり注目を浴びてきている法律関係のLegaltechというのもありますと。そういうのがあったんですが、今回はRetailtechとEdTech、小売と教育のものについてピックアップさせてもらいました。他のところについてもしご興味があれば、今後のシンポジュームでお話しさせていただきますし、個人的にもお話しさせていただければというふうに思います。

 ではなんでこの二つを取ってきたかというところなんですが、Retailtech、小売ですね、Amazonが出てきましたと。実際Amazonを利用された方がAmazonのサービスはひどいと、こんな小売は伸びないということを仰る方もいらっしゃるかもしれませんが、Amazonが本格進出で出てきましたと。あと奇しくも、昨日ですね、メキシコ駐在されている方はご存知かもしれないんですが、FEMSAというメキシコの大手の小売りが、ブラジルのシェルのガソリンスタンドを運営しているRaizenと組んでコンビニ事業をやっていきますということで、メキシコの会社が本格的にブラジルのコンビニ事業に入ってきたということもあって、こちら、小売りついては元々ブラジルはポテンシャルが高いと言われていた所はあったんですが、投資も実際起きてきているというところで挙げさせてもらったところになります。

 あとEdTechについては先程お話しさせてもらいましたけども、ブラジルで従業員さんに教育していくことが大事じゃないかと。これが企業さんにとって、今後企業の競争力を高めていく一つになるんじゃないかとお話しさせてもらいましたので、このEdTechについても取り上げさせてもらいましたというところになります。

 じゃあRetailtech、ブラジルは今Retailtechどんな感じかというところなんですが、会社数、調査の結果ですけども、FinTechは553社ということですが、Retailtechについては269社というところで、まだまだ小さいです。ただ、Retailtech、ポテンシャル高いと言われていたんですが、どれぐらい高いかと示すところとしては、やっぱりインターネットユーザーが非常に多いですよとか、eCommerceの占有率が4%しかないと。アメリカは10%だと。実際、このeCommerceの成長率を見た時には、ブラジルはこれは12%伸びましたと。伝統的なところは2%しか伸びていないというところについては、eCommerceについては非常に伸びていっている。あとブラジルでインターネットでものを購入する人は、皆さん既に購入されていると思うんですが、購入数量が増えていくというところでは、Retailtechというところについては非常に今後伸びていくことが期待されるんじゃないかというところになります。

 代表的な会社、どういうところがあるかと、実はこれいくつか用意しているんですけど、時間もないので割愛させていただければと思うんですが、一つだけご紹介させてもらうと、このWinwinという会社ですね。どういうものかというと、アプリを入れると、ショッピングモールとかどこか近くに行くとその近くの店舗にある割引券、クーポン券がぽこっと入ってきますというものをブラジル人が開発しましたと。アイデアとしてはポケモンGoから来ましたという意味では、日本人のアイデアがブラジルのスタートアップ会社によって利用されたというケースで、中々これ面白いケースだなというふうに思ったところになります。

 あとEdTtechですね。EdTechは今どういう市場になっているかというところですが、会社数については364社ありますと言われております。ただ、コーポレートビジネス、会社に特化したものについては8%しかなくて、初等教育がほとんどですというふうに言われているところになります。ただ、一応ブラジル、先程言いました、教育していくかという比率、グローバルからは低いんですがそれでも7割ぐらいあったという意味では、ブラジルの社員教育というのはやっていくということは、ブラジル人は考えているというところは一つ言えるのかなというふうに思います。そういう意味ではEdTechに対する期待値というのはブラジルでも非常に高いんじゃないかなと思うところになります。

 それでは、あとはスタートアップ企業との協業というところで、どういうところの協業があるかというのをいくつか紹介させてもらっているんですが、時間の関係で一つだけ紹介させていただくとですね、皆さん行ったことありますでしょうか、ブラジルにもAmazon Goのような無人店舗がありますと。最初は2017年にビトリアの方でできたんですけども、サンパウロには今年の3月にできました。私行ってきました。無人店舗なので、どうやってやるんだろうなと思って。アプリも何もダウンロードしないで行ってしまったがためなんですが、お店の前でQRコードを読み取ったら、クレジットカード番号もそこで入れないと当然入れないんですけども、お店の前で携帯を持ってクレジットカードを持って立つのはちょっと勇気がなかったので中には入らなかったんですけども、一応ブラジルにはこうやって無人店舗ができている。実際Amazonn Go、アメリカには今13店舗、将来的には何百店舗も広げていこうとなっているかと思うんですが、Carrefourもこういう試みを今始めているというところで、新しいビジネス形態がどんどんブラジルには出てきているということが一つ言えるのかなというところになります。

 あと、EdTechのところもですね、インターネットを使って教育をやっていくというところについて今非常に盛んになっているというケースがこちらになるというところです。

 最後ですね、それ以外の分野でも非常に色々と、新興企業と伝統的な企業が組んでやっているビジネスがありますというところの紹介になります。特にVale、ダムの事故があったと思うんですが、そのダムを使わずして選鉱できる技術の会社、Newsteelというのがあるのを、そこを買収していると。それが本当にうまくいくと、Valeのああいうような事故は将来なくなるかもしれないというところで、そういう意味では、先程言った七転び八起きではないんですけども、何か壁に当たった時に打ち破る一つの手としてこういう会社があるのかなというふうに思ったところになります。

 最後にというところなんですが、基本的には景気の波がありますと。景気の波にブラジルをあてはめると、こちらですね、株価は上がってきている、景気回復の途中にあるんじゃないかと。そういう意味では、アメリカはもうかなり株価も上がりすぎていて、景気も好調だと言われているのであれば、今後ブラジルはアメリカに向かっていく可能性もあるんじゃないか、という意味では、非常に苦しい時かもしれないんですが、新しいビジネスも起きているこのブラジルにおいては、皆さんの努力によって今後さらに皆さんの会社が伸びていく可能性もあるんじゃないかというところになります。

 以上、駆け足になったんですが、私の方のセミナーは終了させていただきます。

司会

 ありがとうございました。ご質問よろしいでしょうか。いかがでしょうか。よろしいですか。それでは、吉田部会長たいへんありがとうございました。時間がないと何回も仰っていただいて、税制改革の説明を飛ばしてでもスタートアップ投資の話をされたということで、ブラジルもずいぶん変わってきたなというふうに、それだけ興味のある話題だったんじゃないかなというふうに思います。ありがとうございます。今ですね、3時30分でございます。予定3時15分でしたけど、15分遅れではございますけど、まあ根拠はないですが帳尻はたぶん合うと思いますので、予定通り15分間休憩をとらせていただきます。3時45分にこちらにお戻りいただければと思います。吉田部会長たいへんありがとうございました。

 

コーヒーブレイク

 

後半の部

司会 大久保敦 企画戦略委員長

                               

 時間になりましたので、これより業種別シンポジュームの後半に入りたいと思います。私、後半の司会を務めさせていただきます企画戦略委員長の大久保でございます。Jetroサンパウロ事務所の大久保でございます。よろしくお願いいたします。それでは、早速ですね、化学品部会の発表から入りたいと思います。村松部会長より発表をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

化学品部会

村松正美 部会長

                  

 皆さんこんにちは。化学品部会部会長を務めます、パイロットペンの村松と申します。本日は余計な事はさておいて、化学品部会のアンケートの調査の内容についてご説明したいと思います。

 式次第にのっとりまして、化学品部会、8つの市場がございますが、それを6つの市場に決めまして発表したいと思います。それと、まとめ。最後に副題、内外の環境変化にどう対応するかということを発表していきたいと思います。

 化学品部会所属企業・団体は全部で75社ございます。アンケートに協力いただきました企業・団体は21社で、そのうち工場保有が10社ございます。アンケートにつきましては、8つの市場の売上と利益をそれぞれ、増加、不変、減少の3つの表現で回答いただきました。ただし、増加、減少につきましては、どのぐらいの増加なのか、どのぐらいの減少なのかについては細かい資料はございません。表現として増加、不変、減少の3つで表現しております。

 それでは、その8つの市場はどんなものかと申しますと、一つは輸送関連、自動車、二輪車など。ヘルスケア関連、食品、化粧品、医療品など。それと農業関連、農薬、飼料、酵素など。そして印刷関連、インキ、製紙など。機器関連、電気電子、医療など。それとコンシューマを対象とした筆記具、接着剤、潤滑剤など。それと建設関連、服飾関連となって、8つの市場がございます。本日はこれから6つの市場をとらえまして、状況をご報告いたします。アンケートの総数は40件でありました。

 それでは、8つの全ての市場、2019年上期の振り返りを見ていきたいと思います。売上で22.5%が増加と答えられております。悪くなっていない、不変を含めますと67.5%。利益は、増加と答えられたのは8%。不変を含めますと全体で55%と回答を得ております。

 それでは下期、どうなるんだろう、どう臨みたいというところにおきましては、47.5%が売上の増加を見込んでおりまして、不変を含めると85%が回復を望んでいるというデータが入っております。利益は37.5%が増加と見込み、不変を合わせまして85%と回答を得ております。データから直接読み取ることはできませんが、細かい各会社のデータを見ますと、下期、楽観的な見方はまだできないのかなというような感じを受けております。

 それでは市場ごとに、上期どうであったか、下期どうなるだろうというところをご説明したいと思います。

 まず輸送関連。自動車、二輪などですが、用途は内外装のプラスチック部品、エンジン用シール材、樹脂添加剤などとなっております。売上が増加したと答えられたのは15.4%と低く、不変をあわせて約70%、69.2%の回答を得ております。輸送関連では、皆さんもご存知のように、アルゼンチンの景気後退などで市場が低迷しているという回答を得ております。利益面でも、増加が15.4%、不変を含めますと61.5%の回答を得ております。売上の減少の主な要因は、やはり先程申しましたアルゼンチン向けの輸出の不調、あるいは新モデルへの展開がなかった、あるいは価格競争が激化しているよという回答を得ております。

 それでは下期どうなるんだろうと、どうしたいというところを含めまして、発表いたします。下期では売上増が増えて、不変が減っております。売上増は25%、不変を含めると69.2%、約70%。わずかに復調は望んでいるという状況になっております。利益面では23%が増加と見込み、不変を含めると84.5%と、維持が増えると見込んだというデータが入っております。自動車分野では売上増の原因に挙げられたのは、下期新規採用があるだろうと、増加するだろうと見込み、新規採用に期待するとしたデータと、あるいは新規メーカーへの拡販もねらっているよというようなデータもいただいております。逆にマイナス面におきましては、やはり輸出市場の回復の遅れ、あるいはエタノール市場の下落、さらにはますます激化する価格競争、これが予測されるというようなデータをいただいております。

 続きましてヘルスケア関連。食品、化粧品、医療品など。用途は食品添加剤、包装フィルム、改装着色剤、それと一般医薬品などとなっております。まず上期はどうであったかといいますと、売上が増加したと答えられたのは42.9%の回答を得ております。ヘルスケアでは商品が健康志向ニーズが増加したと、こういうことを挙げておりまして、また化粧品市場は非常に堅調であったと、需要が堅調であったと回答を得ております。利益面では増加が28.6%の回答を得ております。逆に、やはりアルゼンチン向け輸出の減少や、原材料の高騰、これによって利益が減ったということが言われております。また、ヘルスケア関連でも価格競争が厳しくなっているということも挙げられております。

 下期展望では、売上増加が75.4%と高くなっております。不変を含めますと85.7%。市場回復の望みを強めているという状況が見て取れます。利益面では42.9%が増加と見込み、不変を含めますと85.7%と、さらなる回復を見込んでいるというデータが上がっております。売上が増えたその要因に挙げられたのが、国内需要の堅調、また健康志向ニーズのさらなる増加、それと新規取引先の開拓も進めているよというような話をいただいております。逆にマイナス面では、やはりアルゼンチン向けの輸出の減少、あるいは原材料の高騰といったことが挙げられ、厳しい面ものぞかせております。

 次に農業関連。農薬、飼料、酵素などであります。用途は殺虫剤、殺菌、除草剤、飼料添加剤などとなっております。まず上期の回顧ですが、売上が増加したと答えられたのが50%であり、不変を含めると62.5%でありました。農業関連では顕著な伸びがあったということでデータをいただいております。反面、ジェネリック攻勢や、中国製品の供給不足、あるいは高騰といったことが挙げられております。売上増の主な要因は、やはり好調な農業生産、ここにきての大豆の需要の拡大、綿の作付面積の拡大といったことが売上増になったという回答を得ております。利益面では37.5%が増加と回答を得ております。

 それでは下期どうなるんだろうと。展望におきましては、売上増加が62.5%、上期を上回る予測をしております。不変を含めますと87.5%と、さらなる市場の回復の期待を強めているというデータが上がっております。利益面では50%が増加と見込み、不変を含めますと87.5%と、期待を大きく寄せているというデータが上がっております。売上増の要因に挙げられたのが、大豆需要、好調な農業生産、あるいは綿の作付面積拡大を期待といったことや、ソフト面では農薬審査登録処理の若干の短縮が好材料として、期待として挙げられているという情報もあります。反面、やはりジェネリック品の激化が予測され、価格競争もさらなる厳しさが出るとも予測されております。

 続きまして印刷関連。インキ、製紙など。用途は出版、パッケージ用インキ、印画紙などとなっています。上期の回顧につきましては、売上増加したと答えられたのは残念ながらなく、安定需要があったとして不変が75%を占めたという状況です。反面、やはりマイナス面は価格競争も厳しいよと、ここでもそのようなデータが上がっている。あるいは原材料の高騰が挙げられております。利益面では50%が減少として回答があり、非常に厳しさを浮き彫りにしております。

 下期の展望では、売上増加が50%と回答があり、不変を含めますと100%と、市場回復の期待を強めております。利益面では50%が増加と見込み、不変を含めますと75%と、これもまた期待を高く寄せているという状況であります。売上増の要因に挙げられたのが、販売品目の増加や新規案件の増加、売上実施を検討しているといったような内容の回答が寄せられております。反面、価格競争のさらなる激化、これが予測されると回答が寄せられております。

 続きまして機器関連。電気・電子機器、医療機器などであります。用途は眼科治療用デバイス、あるいは透析装置、外装部などとなっております。まず2019年の上期の回顧ですが、売上が増加したと回答したのはゼロで、厳しさが伝わる内容になっております。不変を含めますと75%。状況は変わらなかったというデータであります。利益面では売上と同じく厳しく、マイナス面ではドイツ、アジアメーカーとの競争の激しさが増えたこと、あるいは人件費高騰があったよということで、市場の回復の遅れを指摘しております。

 それでは下期の展望につきましては、売上が25%で、不変を含めると100%というデータがあり、市場の回復の期待を強めているということであります。利益面では25%が増加と見込み、期待を大きく寄せているというデータになっております。売上増の要因に挙げられたのは、競争力のある価格づくり、あるいはテクニカル営業強化を急ぐとしております。反面、上期と同じように、ドイツ、アジアメーカーの動向が非常に気になるという回答も上がっております。やはり、価格競争もさらに激化するだろうというようなデータも上がっております。

 次にコンシューマ。お客さん相手の筆記具、接着剤、潤滑剤などであります。用途は個人用筆記具、あるいはビジョンケア材料となっております。まず上期どうであったかと申しますと、売上が増加したという回答は残念ながら得られず、不変であったという厳しい回答が寄せられております。利益面では50%が増加、50%は減少と、分かれたデータになっております。マイナス面は市場の減少や購買力の低下が挙げられております。また、その一因として安価なインドや中国製品の攻勢が強まり、さらにコストダウン対応が迫られているという状況が伝えられております。

 それでは2019年の下期、その展望はどうであるかというと、売上増加が50%と回答があり、不変を含めると100%ということで、市場回復の期待を強めているというデータが上がっております。利益面でも50%が増加と、強い回復見込みを期待しているというデータが寄せられたということであります。売上増の要因に挙げられたのは、一つには新規製品の投入、機械化によるコストダウン対策、これをやっていこうということであります。反面、市場の減少や購買力減少はこのまま続くんだろうというデータが上がっております。また、中国製品の動向と価格競争の激化を懸念しているというデータも上がっております。

 それでは化学品部会の全体を見てみますと、上期と下期、それぞれやはり業種によっては好調なものもあれば、回復の遅れ、あるいは下期においては農業関連は好調維持といったデータが上がっておりますが、全体的にはやはり楽観的な見方はできないかもしれないという状況のデータが上がっております。脅威といたしましては、やはりジェネリック品の攻勢、それと中国、インドの安価製品の台頭というようなデータも上がっているということであります。その対策として、下期にやはり新製品の拡販をやっていきたい、ニッチ市場の開拓をしたい、営業強化、取引先の開拓といったものが挙げられております。

 続きまして副題、内外の環境にどう対応するかということにつきまして、各企業から挙げられた関心事としてまとめてみました。

 まず、農薬登録審査の短縮ということで、許認可プロセスの簡素化あるいは敏速化を望むということで、関心事として寄せられました。最近は若干スピードが上がったというようなお話も聞いておりますが、やはりさらなる改善が必要だというふうに関心事として寄せられております。

 続きまして、規制緩和。これは一つには広告表現の規制緩和を求めると。具体的には一般医療品の販売の広告規制において、世界的に見て非常に厳しいと。ここをグローバルレベルまで緩和を期待したいという関心事が寄せられております。その中に、広告表現の規制緩和として、タレントの起用なども考えているよというような関心事を寄せられたということです。

 それと、もう既に皆様ご存知の、年金・税制改革の動向はどうなるのかと。それと、物流需要の増加を期待しているよということで、それぞれの関心事が挙げられて、ちょっとまとまりがつきませんが、副題として列挙させていただきました。

 以上で化学品部会の発表を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

司会

 村松部会長どうもありがとうございました。全体としては、まあ色々業種によって違いはありますけれども、2019年下期というのは、楽観はできないけど上期よりは良くなったということで、若干アルゼンチンの動きとかですね、足を引っ張る動きがありますけれども、やはりヘルスケアですとか、農業が良いと言われていましたね。それからあとはヘルスケア等ですね、内需関連は比較的いいんじゃないかと、そういった印象を受けました。脅威としては、ジェネリック品の攻勢とか価格競争ということで、新製品拡販や市場開拓、営業強化、取引先の開拓といったところが課題としてあって、あと内外環境の変化への対応として、まあ去年も出ていましたけどね、農薬登録の審査を短縮するということ、これ今回初めて出ていましたけど規制緩和ということで、広告規制の緩和というのは今回初めて出た動きだったかと思います。

村松部会長

 まだ世界レベルより厳しいという回答をいただいております。

司会

 それから年金・税制改革の動向ということで、ちょっとコンサルタント部会で時間がなくて省略されましたけど、関心があるということかと思います。以上の発表につきましてご質問のある方、挙手をお願いできればと思います。いかがでしょうか。では、質問ないようですので、化学品部会の発表は以上とさせていただきます。もう一度盛大な拍手をお願いいたします。

 それでは、引き続きまして電機・情報通信部会の発表に移りたいと思います。電機・情報通信部会は、今年の6月ですか、電気電子部会から名称を変更しまして、運輸サービス部会の情報通信の企業さんが電気電子部会の方に入られて、名称が電機・情報通信部会ということになっておりますので、また新しい内容の発表になるかと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、小渕部会長代理ですね、発表をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

 

電機・情報通信部会

小渕洋 部会長代理

                  

 ただ今ご紹介に預かりました、小渕と申します。私どもの部会はですね、電気電子部会と称しておりましたが、今大久保さんから仰っていただいた通り、この6月より電機・情報通信部会と部会名を変えさせていただきまして、部会長はNECの髙田でございますが、本日は都合がつかず、誠に申し訳ございません。私NECの小渕と申しますが、代理でプレゼンさせていただきたいと思います。あとですね、大久保さんの方からご紹介がなかったので、新しい部会の名称、前の電気電子の気は気体、gasの気だったんですけど、機械、machineの機に変わりましたので、こちらもあわせて新しい部会名、よろしくお願い申し上げます。

 まず、最初に部会の中のアンケート結果の方からご報告申し上げさせていただきたいと思います。今年の2月の時点で2019年のですね、通年の展望をさせていただきました。その展望と比べて、今回の半年経ったところのアンケートではですね、部会の中の販売動向が改善すると回答いただいた企業の割合が残念ながら減ってしまったという状況でございまして、維持ないしは悪化という回答をいただいた企業の割合が少々増加してしまっていると、こういうのが上半期終わったところのアンケート結果でございます。

 このアンケートの結果はですね、3つぐらい理由が挙げられると思うのですが、販売動向改善が少なくなってしまったアンケートの結果としては、まず一番目に、年初に期待していたほどブラジルの景気が回復しなかった。それから2番目に、レアル安の価格をですね、国内の販売・サービスの価格に転嫁できないという環境が続いているということと、それから3つ目に、隣のアルゼンチンの経済危機が、ブラジルから対アルゼンチンビジネスをやっておられる企業が多いのですが、そのビジネスに隣の国のビジネス環境が影響してしまった、というふうにして私ども分析をしております。

 また、このアンケートでコメントが多数あったことをちょっといくつかお話しさせていただきたいのですが、一つ目が、日本とメルコスールのEPAの早期締結への期待、これがまず一つ目。それから、2番目に韓国ないしはEUとメルコスールのFTAが進捗の状況、これについてのコメントが多数ございました。韓国やEUとですね、メルコスールのFTAが先行してしまいますと、日本企業はメルコスール域内でビジネスの環境で非常に不利になるということでございますので、日本とメルコスールのEPAの早期締結が急務だという意見が非常に、まあご想像の通りだと思いますが、非常に多かったということをここで述べさせていただきたいと思います。また、あと皆様もご注目されていらっしゃると思いますけども、ブラジルの年金改革、それから税制改革の動向ですね、これも当然ながら国内の景気に大きな影響を与えるというふうに判断を我々も、している部会の会員企業が多くてですね、引き続き当部会内でもモニタリング、注目していきたいと、こういうアンケートのコメントが多かったということでございます。

 次にですね、当部会の業界の動向について触れさせていただければと思います。まずはですね、ブラジルの国内のセルラー、携帯電話の回線契約数、ちょっとこれについて触れさせていただければと思います。ブラジルの携帯電話回線の契約数は、総数でですね、約2億3000万回線でございます。これはですね、ほぼ世界の人口に比例するのですけど、1番が中国、それからインド、アメリカ、インドネシア、続いて世界第5位がブラジルであると、こういう回線数になっております。

 左のグラフでございますけど、ブラジル国内のVivo社が7000万回線以上で1位を誇っていると。ClaroとTIMが6000万回線で激しい2位争いを演じているという状況でございまして、その下のグラフ、左の一番下がこれが民事再生中のOiでございますけれども、4000万回線弱ですね、ということで大きく差が開いているということでございます。

 それから右のグラフはですね、これは4Gの回線契約数でございますけど、ブラジルでは第4世代と呼ばれる4Gのですね、回線が急に普及してきていると。各社の契約数はここ2、3年で増加が急になっている。グラフで見ていただくと分かる通りでございまして、大体ですね、ブラジル国内のセルラー、携帯電話の契約の約半分、ざっくり半分がいわゆる4G、第4世代に移行していると、こういう姿になっているということでございます。

 巷では5G、5Gと言われているのに、前のページで言ったようにようやく半分4Gになってきたというのがブラジルなんですが、世界全体に目をちょっとここで転じさせていただくと、皆さんご存知の通り第5世代、いわゆる5Gと呼ばれているサービスが段階的、少しずつではあるんですけどスタートしています。というのが他の国、先進国の状況でございます。4Gから5Gになると通信速度が大体100倍に上がると言われております。それから同時にですね、接続できる端末の数がかなり増加するということと、我々が色んな端末を見て行って応答で感じる速度も約10倍以上に向上すると。これが4から5になると起こる現象だと言われていて、別の言葉で言うと、光ファイバーだとか有線とですね、そんなに遜色のない通信がこのモバイルの世界でも可能になると言われて、世界が劇的に変わりますよと、IoTとかそういう世界などで画期的な変化が5Gになると起きると言われています。

 今年の4月3日にですね、アメリカと韓国で、両国が競うような形で世界最初の5Gの商用サービスが、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、スタートされました。ただしですね、速度も対象地域も限定的でございますので、今後、もっと、出てくるスピードとかエリア、そういったものが拡大、増加していくということで、まだ5Gも始まったばかりだというふうにご理解頂ければよろしいかなと思います。では日本ではどうかということでございますが、日本での5Gですけども、今年の夏、日本の夏、キャリア各社が順次5Gのプレサービスを開始して、来年の東京オリンピックまでに商用の5Gサービスを開始したいということで予定していると、こんな状況が日本でございます。

 ひるがえってブラジルでございますけども、ブラジルでの5G対応ですが、先月ちょうど5Gに関する意見公募というのが実施されまして、来年3月には通信事業者向けのですね、5Gの周波数割り当ての入札が行われるという予定でございます。ちょうどそういう5Gに関する動きがブラジルでも起きたということで、来年に周波数の割り当てが入札されると、こんな状況でございます。あとブラジルではですね、中国企業のファーウェイが5Gの基地局、これは5Gになると基地局をたくさん作らないといけないんですけども、その製造工場の建設のためにブラジルに8億ドル規模の投資をすると発表しています。なので、今後本当にそれが実現していくのか、実行されるのかというところを注目したいなというに考えている次第でございます。

 携帯の話はちょっとやめまして、次、固定回線ですね。固定回線の方の契約数について触れさせていただければと思います。ブラジル国内の固定電話の回線契約数は、これ左のグラフですが、日本と同じに減少傾向、やや減少傾向ですと。それから、右のブロードバンド回線、これはインターネット回線でございますけど、これは逆に増加傾向にあるということでございます。固定回線が減少している一方で、ブロードバンドの回線は増えていると、こういうことでございまして、大手のですね、ブラジル国内の通信事業者には大きな変化はないんですが、一方でこのインターネット回線のブロードバンドの方は中小規模のプロバイダの会社、このOthersという灰色のところのグラフがぐわっと伸びているんですけど、こういったところ、例えばブラジルでいうとAlgar社とか、そういった企業が契約数を伸ばしてきていると、こういう姿が展開しています。

 次のページに行かせていただきます。これは携帯・固定通信事業のですね、企業の売上推移でございます。売上に目を向けますと、業界全体でみるとですね、携帯、固定どちらもほぼ、ざっくりですけど横ばいに推移しているところです。ただし、民事再生中のOi、第4位のOi社の売上は低下してしまっていると、こういうのが構図でございます。

 次にですね、ITデバイスの売上に触れさせていただきます。携帯電話、いわゆるガラケーですね、それだとかあとはPC、パソコンの売上は減少傾向です。一方で、まあ皆さんご想像もされてて実感もあるかなと思いますけど、いわゆるスマホ、それからタブレット、こういったITデバイスの売上は引き続き増加していいると、こういうマーケットでございます。

 通信インフラですね。右の通信インフラ関係への投資を見ますと、通信事業者のネットワーク投資、これが引き続き上昇をかなりしているということと、それから先程も触れさせていただきました、来年以降の5Gですね、第5世代の5Gのインフラの投資が来年以降始まれば、さらに通信事業者の投資が高まっていくんじゃないかなと、こう期待している次第でございます。一方でですね、世界のネットワークインフラの投資トレンドは、通信機器のハードウェアからクラウドに移行してコストを抑えようというこういう動きもございますので、ブラジル通信事業者が今後どういったですね、選択をしていくか、どういうふうに推移していくか、この点でも注目をしているということを触れさせていただきました。

 次にですね、ブラジルのITサービスとかソフトの支出の傾向という切り口で見させていただきますと、IT関連のコンサルですね、どうやって設計していくかというコンサルだとか、実際にそれを設置していくインプリメンテーション、それから、いわゆるマネジメントクラウドサービスとかのサービスへの支出は非常に、グラフを見ていただくと分かる通り、これも増加しているということで、中でもIT関係のコンサル、それからマネジメントクラウドへの支出は今後さらに増加するというふうに見ております。それから、ソフトウェアがありまして、これは経営管理ソフトへの支出、例えばここにも書いてあるんですけど、ERP、これはエンタープライズ・リソース・プランニングだとか、SCM、サプライ・チェーン・マネジメントとかのこういった経営管理ソフトですね。経営管理系のソフトというのも投資が各企業さんはしてきていて、これも今後伸びていくんじゃないかというふうに予測しています。

 次に、テレビをはじめとしました家電の方について触れさせていただきます。

 テレビはですね、昨年のワールドカップロシア大会、この特需がございましたので、去年販売台数が非常に伸びました。それから、ワールドカップ以降もですね、昨年度並みの水準をこのテレビは例えば維持していたんですが、今年の4月ぐらいに入ってから減速してきているという傾向が残念ながら見られているという状況でございます。それからオーディオですけども、オーディオは逆にワールドカップ大会以降にマーケットが回復してきて、以降横ばいで推移してきたという動きがありました。あと製品の中の特色でいくと、スリーボックス型といったやつ、本体があってスピーカーが別々にある、これをスリーボックス型というんですけども、そういったオーディオの販売台数は減少しているんですけど、いわゆるワンボックス、一体型になっているものについては引き続きブラジルでは好調になっているという様相を呈しております。

 ちょっと切り口を変えまして、マナウスフリーゾーン、Zona Franca de Manausについてちょっと、業界の中でこういった意見が出てきたので、触れさせていただく次第です。

 連日のようにですね、韓国とかEUとメルコスールのFTAの報道がされております。これらFTAが韓国とかEUの方で先行して発効してしまいますと、このマナウスのフリーゾーンで工場を持って作っておられる企業のメリットが非常に少なくなってしまうと。高い国内のロジコストの分が不利になってしまうのではないかという声がかなり出てきています。マナウスフリーゾーンがですね、さらに発展ないしは維持していくためにはインセンティブが不可欠なわけでございますけども、ボルソナロ政権が今やろうとしている年金改革に続く次の重要な施策である税制改革と、このマナウスのフリーゾーンへのインセンティブをどういうふうに、この税制改革とフリーゾーンへのインセンティブを併存、共存させていくのかというのがキーになるかなというふうに我々見ている次第でございます。

 それから、じゃあ具体的にブラジル、ボルソナロ政権がこのフリーゾーンに対してどういうふうに発言しているかということでございますけれども、先日、この税制恩典、それからインセンティブは非常に重要だというふうにコメントしていたこともございますので、今後それが具体的にですね、どういうふうになっていくのかということに引き続き着目していきたいというふうに考えている次第です。

 次ですね。韓国とメルコスールのFTAです。昨年9月から韓国とメルコスールの間でFTA交渉がご存知の通り進められています。この交渉はおそらく来年の中頃に終了をするかなという見通しでございますが、そうしますと例えばSamsungだとかLGのですね、韓国メーカーがウォン安を前面に出した低価格販売攻勢、これを展開し、さらにしてきて、シェアを伸ばしてくるんじゃないかということでございますので、韓国とのFTAが締結されますと電子製品、それから自動車およびその部品も当然そうだと思いますが、さらに安く韓国から輸入されることになり、ますます韓国勢が勢いづくということになるかと思いますので、早期の日本とメルコスールの間のEPAの締結が急務というのがアンケートでも非常に多かったということでございます。

 それから、すみません、また違う話題で、米中関係の影響がこの中南米に、ブラジルを含む中南米にどういうふうになるかと、ちょっとこれについて触れさせていただきます。

 米中関係、悪化していますと。中南米は基本的には親米路線をとっているということではあると思うんですが、一方でですね、中南米にとっては中国は非常に重要なパートナーだということもあり、関係が強化しているように見えています。例えば、中国の通信機器メーカーである、ファーウエイと同じような会社であるZTEという企業がありますが、それはですね、アルゼンチンのサンサルバドール市から市の中の監視システムを既に受注して、導入をしております。この中国のZTE社はですね、たびたび報道にも出てきますけど、ウイグル地区の監視システムにも関わっているということでですね、情報セキュリティの面から米国政府がこのアルゼンチンの案件に懸念を示しているというようなこともみられるということですね。

 それからあと、アメリカによる禁輸措置問題で今話題になっている中国のファーウェイですけども、先程述べさせていただいた5G、第5世代の関連のプロジェクトから、中国のファーウェイの締め出しをブラジル政府としては行わないというのをですね、先日ブラジルのアミルトン・モウラン副大統領は発表したということもありますので、親米路線はとっている中南米ではある一方、中国はビジネス上の重要なパートナーとして排除していないということが起こっているということをちょっと触れさせていただきます。

 中国勢が中南米においてこういった営業活動を強化しておりますので、今後日本勢も官民一体となって、ブラジル政府筋とのですね、関係構築を引き続き行っていきたいなと、行う必要があるというふうに我々認識しております。

 最後のページになります。最後に要望について触れさせていただきたいと思います。

 日本とメルコスールの間の、これも繰り返しになっていますけども、日本とメルコスールの間のEPA締結の促進、これをぜひお願いしたいなということと同時にですね、ライバルでございます韓国、それからEUとメルコスールの間のFTAの進捗のモニタリングを引き続きお願いして、引き続き情報をいただければなというふうに考えておりますので、よろしくお願いします。

 それから、隣のアルゼンチン市場ですね。ブラジルからビジネスを行っている企業もたくさんございますので、アルゼンチンはこの間予備選があって厳しい状況だというふうに認識しておりますので、今後もこの大統領選挙の動向も含めて、引き続きアルゼンチンの政治経済動向をウォッチして、それから情報をご共有いただければなというのがご要望事項、お願いになります。

 それから、最後になりますが、中国・韓国勢の、繰り返しになりますがアグレッシブな動きがございますので、これに対応するためにですね、日本勢も一体になって活動を引き続きしていきたいというふうに考えておりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

 以上になります。ありがとうございました。

司会

 小渕様、どうもありがとうございました。ただ今のプレゼンにつきましてご質問のある方、挙手をお願いできればと思います。いかがでしょうか。

小渕部会長代理

 私この部会に移って日が浅い、一部の方は分かっていらっしゃると思いますけど、あまり難しい質問をされるとですね、商工会議所さん経由でご回答させていただきますとなるかもしれませんが、お手柔らかにお願い出来ればと思います。

司会

 じゃあ、特にいじめたいという方はいらっしゃらないようなので。一応、小渕様のプレゼンですね、若干増加・維持が割合が減ったということですけれども、テレビなんですかね、そこはですね。この部会、電気電子部会の時には、日本・メルコスールのEPAというのはですね、だんだん回数を追うごとにですね、声が強くなってきたかなという印象がございます。その影響というのはやっぱり韓国・メルコスールのEPAの交渉が来年半ばに合意するのではないかといった懸念と、あとEU・メルコスール、まあフィリップスですかね、そういった競合が激化する懸念があるといったことなのかなというふうに考えております。また、アルゼンチンの動きのモニタリングという話がございましたけれども、ちょっとここはですね、対応していきたいと思っておりましてですね、来月、9月の17日にですね、アルゼンチンセミナーをですね、商工会議所の方でやりたいと思っております。うちの紀井所長がこっちに来ると言っておりますので、ちょっとセミナーをお願いしたいと思っておりますので、ぜひ参加をいただければと思います。あといろいろ宿題も他にいただいておりますので、この辺はですね、商工会議所、それから大使館様、それから総領事館様と色々話し合いながらですね、前向きに検討できればというふうに考えておりますので、ご協力を今後よろしくお願いできればと思います。以上、盛大な拍手をもってですね、終了したいと思います。ありがとうございます。

 引き続きまして食品部会の発表に移ります。佐々木部会長より発表をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

食品部会

佐々木達哉 部会長

                   

今年の7月から前任の黒崎に代わりまして食品部会長を拝命いたしました、ブラジル味の素の佐々木でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。夕方も大分遅くなって参りましたので、食品部会は分かりやすい身近な事例を多めに入れるスライドで対応しておりますので、ぜひお楽しみいただければというふうに思います。

 まず発表内容ですが、このような形になっておりまして、前半に会員の企業様からいただいたアンケート結果ですとか声に基づいたまとめ、それから最後に副題ということで、内外の環境変化にどう対応するかということについてお話しをいたします。

 こちらが食品部会の会員の企業様でございます。左の方の箱が食品部会を主登録にされているところで17社。それ以外にサブ登録ということで、他の部会に入っていらっしゃいながら食品部会にも登録いただいている会社さんが42社ということでございます。グレーになっている会社様から今回、アンケートであったり資料の提出を頂戴したということでありますので、ご紹介をさせていただきます。

 まず市場および会員企業状況ということでございますが、小売市場ということで、食品部会、小売の状況と非常に密接な関係があるわけでございます。2016年以降の回復基調が19年も継続ということでありますが、流通の動向というところに少し変化が起きておりまして、いわゆる一般のスーパーマーケットのところが少し伸びが鈍い、止まっているという一方で、キャッシュアンドキャリーという大型の業務用スーパーの業態、ロードサイド等でC&Cと書いた看板をご覧になる方も多いと思いますけども、この部分が伸びてきております。これは統計上もこういうデータが出ておりますし、各社様からの状況の報告の中でもこういう実感があるという声を多くいただいておりまして、このところが大きな変化なのかなというふうに思います。キャッシュアンドキャリーの形態は日本でもありますけれども、総じて、業務用の商品とかも含めて販売をしておって、単価が安いという傾向がありますので、ここが特徴の一つということになります。

 また、外食の市場については安定して拡大傾向が続いているということで、市場統計等を見ると、景気動向が悪いので、外食を控えて内食にというようなデータも一部見られますけれども、大きなトレンドとしては外食の拡大傾向は続いているというふうにみてよいのかなと考えております。

 これから2枚ですが、会員企業様からいただいた、それぞれの所属する業界の市場の動向と会員企業様の状況ということであります。調味料、醤油、酒類、コーヒー、チョコレート、即席めんといったのがまずこのスライドでございまして、やはり全体的に家庭用の商品の状況は微減もしくは横ばいというところがある中で、先程触れましたキャッシュアンドキャリーのところが伸びているという声もいただいておりますし、あとは、後ほど出てまいりますけども、いわゆる二極化といって、プレミアムをお求めになるお客様と低価格をお求めになるお客様が完全に分かれてきているということ。これはブラジルだけではなくて、グローバルでこういう傾向に食品はありますけれども、このブラジルにおいてもそういう傾向が出てきていると。後ほど事例をご紹介いたしますけれども、こういったところが目立つところかなと。

 それからコーヒーにつきましては、国内の市場拡大中。また、原料のコーヒーの生豆の豊作が続いておりまして、相場も低位で推移ということで、前半のパートの中の商業統計のところでもご紹介ございましたけれども、コーヒーについては非常に、輸出のインスタントコーヒーも国際的に競争力が維持できているという状況であるということでございます。

 それから二つ目ですけども、乳酸菌飲料、外食、農産加工、B to Bの素材、あるいは関連業種ということで、こちらからも動向をいただいております。この中でいくつかキーワードとして挙げておりますけれども、これも先程のプレゼンにございましたが、いわゆるナチュラル志向といったトレンドに対して、非常に根強い、もしくはきわめて強い志向の伸びというものを感じるというところが出てきておりまして、これも今後の大きなトレンドの一つであろうというふうに実感をしております。これもブラジルだけということではなくて、グローバルにほぼ同じ状況になっておりまして、ここは非常に食品にとっては大きな変化というふうに私自身も考えております。

 これからのキーワードということで、市場の今後というふうになりますけども、3つ挙げております社会保障制度改革等、政権の運営の行方次第ではありますけれども、景気全体は回復基調にあり、今後も緩やかな成長は期待できるのではないかというような声が多かったと思います。一方でやはり先行きの不透明感というものは残っているのも事実で、企業としてはこういったところへの変化への対応は必須であると状況としてはあまり変わらないということと、ライフスタイルの変化に伴いまして、お客様、消費者のニーズに新たな変化が来ているということで、品質へのこだわり、あるいは健康志向、ナチュラル志向、あと二極化といったようなところがトレンドとしてかなり出てきているのかなと感じております。

 この環境変化への備えということで、会員企業様の事例でありますけれども、まずは景況感の変化に対応できる基礎体力の強化ということで、現場の創意工夫による継続的なコストダウン、あるいはキャッシュフローの管理等というところに非常に注目が集まってきていること。あと為替変動への対応については、これまでもこういうふうに取り組んでおりますけれども、やはり為替感度を高めて状況を常に分析するというようなことが必要であろうということ。あとは、3番目に挙げておりますけれども、表示規制や税制変更への備えということで、ここについては次のスライドでも紹介しておりますが、いかに迅速に正しい情報を収集・対処するかということがキーということになります。これは、情報はですね、正しい情報というのは中々難しくて、かなり人によって持っている情報に質に差があるということもありますが、例えばこのあと触れます表示規制については、各社さんが持っている情報をうまく情報交換したり勉強会等することで、よりお互い、部会全体としての認識を強めて行こうということが部会の中でも確認されましたし、関係省庁との取り組みについても、オールジャパンチームということで一体となって取り組んでいくということを是非やりたいというような声が上がっております。

 この表示規制ということで一枚紹介しておりますけれども、こちらは食品の栄養成分に関する警告表示規制ということで、FOPラベリングというふうに書いております。砂糖ですとか、ナトリウム、まあ塩分だと思っていただいて構いません、それから飽和脂肪酸といった栄養成分をですね、ある水準を超えて含む食品には、警告表示を商品のパッケージの前面に行うというものでありまして、二つの方式があり、ここで示しています黒いマークを前面につける方式と、信号機のように赤青黄色でタイプということで、すでにこういう法規制が導入されておりますペルーですとかチリではこの黒いマーク方式、エクアドルは、通常信号機方式と言っていますけども、こういった方式ということであります。見ていただいてお感じになると思いますけども、非常にこの黒いマークがつくとですね、なんか体に悪いものだというイメージがストレートに伝わるということで、先日私も導入されたペルーのマーケットを見てまいりましたが、売り場の数多くの商品にこういった黒いマークが付加されており、なおかつ黒いマークがつくことで、お客様がお買い上げになる回転個数は明らかに落ちているというような店主の声もいただいております。

 これ、今ブラジルが一応検討途中に入っておりまして、どちらの方式をとるかということも含めて、今情報を収集しているところでありますが、非常に食品業界にとっては影響の大きい法規制というふうになります。これ、法規制ということでいうとそうなりますけれども、グローバルにいわゆる健康志向が強まっている中で、こういった形で国民の健康を守ろうという動きはラテンアメリカ以外にも起こっているわけでありまして、これは法規制に対して正しく理解することはもちろんですけれども、これを受けて我々としてどういうふうにこれにうまく対応していくかということを当然考えていく必要があるだろうということであります。ただ、非常にこれは影響の大きい法律だなというふうに感じております。

 それでは、続きまして副題のカッコ2番ということで、内外の環境変化にどう対応するかということで、新たな市場トレンドやお客様のニーズをとらえた施策ということで、いくつか事例を挙げてご紹介をいたします。

 まず、確かな品質へのこだわりということで、一部のものについては日本発のブランドの価値の認識ということになりますが、そうでないものも含まれます。ここのスライドで紹介しておりますのは、外食のチェーンということで、一幸舎さんですね。リベルダージに店がございますけれども、主力の豚骨ラーメンにこだわらず、お客様の嗜好に合わせてラインナップを展開して、非常に業績がよろしいということで、フランチャイズ展開を既に検討されているということと、2号店の検討も開始されているということで、どこの地区に出すかというのは一応情報をいただいているんですけど、まだ確定ではないということで、居酒屋スタイルにしたいということのようでございますが、楽しみにしていただければというふうに思います。

 それからキッコーマンさんの事例ですけれども、醤油ベースの液体調味料だけにこだわらないということで、わさびソースを発売されたということであります。ブラジルのお客様、わさびにあまりなじみがないというふうに思われるんですけども、やはり、ちょっと食べてみたいなと、ただこれまできっかけがなかったというところをうまく提案されましてですね、ハンバーガーですとかディップソースに使うということで、好評を得て、こういったトライアルもされているということでございます。

 それからコーヒーのところでは、先程触れました通り、コーヒー自体は非常に好調でありますが、その中でイグアスコーヒーさん、フリーズドライの乾燥設備への投資ということで、いわゆる凍結乾燥スタイルの品質の高いコーヒーになりますが、付加価値の高い製品を増産して、商品のポートフォリオの見直しを図られておられる。

 それから三井アリメントスさんについては、ドリップコーヒーの新発売ということで、ブラジルのナショナルメーカーとしては初めて一杯取りのドリップコーヒー、日本だと最近なじみがありますけども、カップの上に一杯ずつぱかっと置いてですね、お湯を注ぐというスタイルです。ブラジルのお客様にとってはなじみがないわけですけども、逆にお湯さえあればどこでも飲めるというところを提案するということで、こちらも反応は上々で、こういったトライアルもされておられると。

 それから、即席めんのところでは、カップヌードルでありますけども、市場シェア、数量・金額とも好調ということでございます。カップめんが全体を牽引されているということで、昨年シーフードを発売されましたけれども、今度はカレーを発売されるということで、もう発売が決まっておられるということでございますが、ブラジルでカレー味を出すにおいて非常に本社との間でたいへんなバトルがあったというふうに聞いております。その辺の経緯は浅野社長にぜひ聞いていただければと思います。新しい商品ということと、補足情報といいますか、前回のこのシンポジュームで浅野社長が自らご出演されたTVコマーシャルが非常に好評だったというご紹介をしたというふうに聞いておりますけれども、実は8月25日がラーメン記念日ということだそうでございまして、これはチキンラーメンが発売された日が8月25日ということで、それに関連付けたキャンペーンということで、それを展開されて、今度は脇役でありますというふうに仰っておられますけども、再びデジタルコンテンツに浅野社長が登場されるということで、ちょうど昨日からですね、日清食品さんのFacebook、InstagramあるいはYoutubeで公開が始まったということで、脇役とはなんなのかというのを是非興味のある方は実際にご覧いただければというふうに思います。ちょうど今日に合わせたかのように昨日からオンエアが始まっているということなので、ぜひご覧いただければと思います。ただ、ああいったキャンペーンはものすごいフォローがついてですね、新しいアイデアとしては非常にユニークな成功事例ということで、グローバルにも有名になってきました。こういった取り組みを続けるということ。

 それから、弊社におきましては、調味料と書いてありますけれども、調味料というよりは、いわゆるトップアスリートの皆様を支援するということで、日本でビクトリープロジェクトということで展開してきたプロジェクトをブラジルにおいても開始をいたしました。アミノバイタル、あるいは栄養バランスを考えた「勝ち飯」というメニュー展開ということで、ブラジルのオリンピック、パラリンピックを目指すアスリートの方々の支援を具体的にスタートさせていただいているということでございます。

 それから、健康志向ということでは、例えば機能性の糖質・酵素剤というナガセさんの商品についても、これについても現地パートナーとの共同開発によって、減糖ですね、糖分を減らす、あるいはクリーンラベル等の食品領域におけるソリューションの提案をされているということ。

 それから、3番目ですけども、高付加価値志向と低価格志向の二極化への対応ということでは、東麒麟さんについては低価格帯の清酒を大幅にリニューアルされて好調ということで、競合のお酒のメーカーさんと同じ価格帯なんですけども、圧倒的に品質が良いというところが実現できたということで、プレミアム価格帯と低価格帯の両輪で市場開拓を進めるという戦略を進められておられます。

 それから、新たな流通チャンネルへの対応という事例では、乳酸菌飲料、ヤクルトさんでありますけども、主力品のヤクルトの40のライトというものに、通常は6本パックで売られていますけども、これの3本パックというものを発売されました。6本パックだとスペースがなくて入らなかった小さい店とかの開拓もこれで可能になるということで、そういった工夫が新しいチャンネルを開拓するというところに非常に分かりやすい成功事例になっているのかなというふうに思います。

 ということで、最後に、ということになりますけれども、チームジャパンとして、企業の垣根を越えて積極的な交流や連携をやるということで、これは食品部会の会員の企業様に工場見学をしていただいたと聞いておりますけども、そういう機会を。あるいは先程の法規制といった共通の問題に関する情報交換会等をやって、お互いの強みをいかした情報交換と、あとはビジネス上の協業なんかも可能性を模索していきたいということで、最終的には事業を通じてブラジル社会、消費者への貢献ということを、変化を見極めて対応しながらも成長していこうということを目指していきたいというふうに考えております。

 以上になります。

司会

 佐々木部会長どうもありがとうございました。ただ今の発表につきましてご質問のある方、ぜひとも挙手をお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。チームジャパン、年々強化されていて、非常に熱いなというふうにですね、毎回毎回そう思っておりまして、特に、チームジャパンってジャパンが入っていますので、日本のブランドの価値を再認識して、やっぱり日本のこだわりとかですね、日本人がもっているお客様への配慮とかですね、そういうのが商品のパッケージなんかにも生かされていたり、あと日本が得意とするチームワークで色々情報交換しながら対応していくということでですね、非常に素晴らしい取り組みなのではないかなと感じた次第でございますので、チームジャパンの発展を祈念してですね、ぜひジェトロの方でも参加させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。それではただ今の発表に盛大な拍手をもって終了したいと思います。

 続きまして、運輸サービス部会の発表に移りたいと思います。湯原部会長、発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

運輸サービス部会

湯原慶 副部会長

                      

 皆さんこんにちは。運輸サービス部会で副部会長をやっております、日本郵船の湯原と申します。よろしくお願いします。では早速発表に進みたいと思います。

 まず海運業界の方から発表させていただきます。ブラジルに主に関係するコンテナ輸送、自動車輸送、ドライバルク、ばら積み輸送について2019年上期の回顧を報告いたします。まずコンテナ輸送ですが、ブラジル、アルゼンチンの経済低迷にもかかわらず、マーケットは堅調に推移し、2018年上期と比較し物流は増加しました。特にセカンドクォーターは顕著です。これは為替安によるものと見ております。

 次に自動車の輸送ですが、2019年上期のブラジル輸出台数は前年同期比の約42%減、輸入は昨年並みとなっております。この輸出の激しい落ち込みは、ブラジルの自動車輸出の約7割を占めるアルゼンチンが2018年半ば以降深刻な経済危機に直面しており、国内販売が減少したことによって同国向け輸出が大きな打撃を受けたものという結果となっております。

 続いてドライバルク輸送ですが、ブラジルの主要貨物の輸出量推移はこの左のグラフの通りです。上から鉄鉱石、穀物、砂糖の折れ線グラフになっております。お気づきの通りですが、鉄鉱石の輸出が、グラフでは5月までの数字で6月の数字は含まれていないんですが、セカンドクォーターが急激に落ち込んでおります。これは1月に発生したVale社の鉱山ダムの決壊事故による影響です。これにサイクロン来襲による豪州産鉄鉱石の輸出減も重なり、特に鉄鉱石輸送に従事するケープサイズといわれる15万~30万デッドウェイトトンの大型船舶の船舶需要が急激に緩み、上期のスポット市況が暴落いたしました。汎用性のある7~10万デッドウェイトトンのパナマックスといわれる中型船型の市況も、この大型船型の市況にある程度ひきずられる格好で、ファーストクォーターに底打ちはしたものの、様々な要因で横ばいが続いております。挙げられるとすれば米中貿易戦争の影響がありますが、中国におけるアフリカ豚コレラの大流行による飼料輸入減が響いているものと見られます。2019年上期の南米穀物輸出は前年比増加しましたが、ブラジルの輸出量は前年を下回っております。

 続いて19年下期の展望です。コンテナ輸送ですが、米中貿易摩擦や世界経済の低迷のおそれもあって、またアルゼンチンの大統領選などの不確定要素があるものの、需給は何とか持ちこたえるのではないかと予測しております。

 次に自動車輸送ですが、ブラジルで自動車を製造しているメーカー各社は新規市場の開拓に努力していますが、同国最大の完成車輸出先であるアルゼンチンの消費が麻痺状態、次期大統領選の前哨戦の結果改革後退派が頭角を現し、将来の経済への悪影響も懸念され、引き続き厳しい状況が続くものと思われます。

 ドライバルクの輸送については、上期は厳しい状況が続きましたが、下期は輸送需要は比較的緩やかに回復していくものとみられています。Vale社の北部ダムの増産や、ミナス・ジェライス州ブルクツ鉱山の操業再開などによるブラジルの鉄鉱石輸出増が市況回復のドライブ要因になると期待されています。そして、鉄鉱石供給の回復が中国の輸入増にもつながるとみています。一方、米中貿易戦争は特に南米からの穀物輸送需要増への期待を抱かせますが、中国、ベトナムでのアフリカ豚コレラの流行によって飼料としての穀物需要が減っている事なども影響し、それほど増加しないものと思われます。

 最後に、国連の船舶による大気汚染防止規則の改訂で、2020年1月1日より、船舶からの硫黄酸化物排出規制が全世界的に強化されることになっています。同規則順守にはいくつかの対処方法がありますが、世界的規模でできる現実的な対応策としては、高価格な超低硫黄燃料への切り替えを行うしかなく、運航コストが上昇することになります。船会社は常日頃からコスト削減に努力しておりますが、この運航コスト上昇を全て引き受けることは経済的には成り立たないことから、ご利用いただく荷主殿にも相応のご負担をお願いせざるを得ない状況です。具体的には船会社から荷主殿のご担当には説明させていただいている、もしくは説明させていただくことになりますが、何卒ご賢察賜り、ご理解いただきますよう、この場を借りて改めてお願い申し上げます。

 続いて航空旅客業界に移りたいと思います。まず2019年上期の回顧ですが、航空需要としてブラジル民間航空庁Anacのデータから旅客需要、RPK、有償旅客キロと、座席供給量、ASK、有効座席キロ、座席利用率、搭乗客数の4つの指標を国際線と国内線でそれぞれ示しております。ここにある数字の国際線は、ブラジルの航空会社のデータのみとなっていますので、ご承知おきください。

 ここにある数値を見ると、南米の航空業界を取り巻く環境は良さそうにも見えますが、そもそも、有償旅客キロは運送量、有効座席キロは生産量の伸びを示す指標ですので、そこに客単価、売上利益率などが伴わないと、生産能力は大きく伸びたけど売れず安売りして収支は赤字になるのと同じで、この指標だけでは航空会社の収支の良し悪しは判断できません。実際に、至近の12月にAviancaブラジル航空が民事再生手続きをとりましたし、アメリカン航空のリオ=ニューヨーク線からの撤退などがありましたが、業界情報によると、南米路線を就航しているそれ以外の外国航空会社にも収支状況が厳しい会社があると聞いています。

 ここで、国内線のサンパウロ=マナウス間の平均運賃と国際線のサンパウロ=東京間の平均運賃を例にとりたいと思います。すいません、お手元の資料ではなく、前のスライドをご覧になっていただきたいんですが、サンパウロ=東京間の方が、距離が7倍なのに、なぜ運賃が同じぐらいになるのかということをちょっとご説明したいと思います。理由としては南米特有のコスト構造があります。毎年CPIで5%程度ずつ着実にコストが上がり、グアルーリョス空港の発着料も高いため、ブラジルを本拠とする航空会社は高コスト構造になるのですが、Aviancaが破たんしたことによって国内線が寡線化し、競争のない路線で価格をつり上げて、そのコストアップを吸収する傾向が見られ、国内線は価格が上昇していると考えられます。しかし、国際線は運賃は国際競争力にさらされているため、料金は簡単には上げられず、短距離線の国内線と長距離線の国際線が同じぐらいの運賃になるというような状況が起きています。そのため、国際線を就航している航空会社は、常にコストアップ分をどこで削るかということに頭を悩ませ、機材費や預け荷物の制限の強化などサービスの見直しを迫られるという構造になっております。

 続いて下期の展望ですが、南米に進出している日本企業の皆さんの懐事情も同様に苦しいらしく、従来はJALのビジネスクラスの常連企業の中にも、LATAMコードシェア便名での発券が散見されるようになってきました。例えば、一部のレグをアメリカンやJALが運航しているフライトでも、LATAMで通しで発券をすれば比較的安い運賃で購入することができますが、その場合には次のような障害が発生いたします。

 例えばLATAM運航便は旅行会社やウェブで事前に指定できる座席が少ないため、JALで発券した場合にはLATAMに頼んでご指定のお席を手配することは可能なんですが、これがLATAMで発券した場合にはそういった対応はできないということになります。また、手荷物のミスコネクションやダイバートなどトラブルが発生した際にも、JALで発券いただければJALからLATAMに掛け合うことができるんですが、LATAMで発券した場合には、これはJALとしては裏でカバーリングを実施してお手伝いすることができません。あと、本人の認識がなく、価格のみでコードシェア便名で発券をすると、年間のフライト数などの要件を満たせず、翌年のマイレージの更新時にステータスが下がってからあわてることになるなど、自己管理が難しくなっております。

 最後に、内外の環境変化への対応という点で、自助努力への具体的な取り組みについてお伝えします。競争環境が厳しい中、これからも引き続き、安心して日本まで乗り継げる日本品質のサービスを地道に継続していきたいと思います。また、現地通貨決裁のクレジットカード使用でたまるポイントをJALの航空券と交換できる制度を開発しています。そして、クレジットカード会社と提携し、航空運賃を分割払いできる制度の導入も進めております。

 続いて物流業界に移りたいと思います。まず2019年上期は新政権による景気回復への期待に伴う物流増を見込んでいたものの、1月~4月の累計取扱量は全ての輸送モードで前年に比べて低調に推移しました。年金改革反対といった抗議行動は各地で発生するも、税関など公的機関のストライキ発生はなく、物流停滞は発生しませんでした。3月末にトラック運転手が、原油の国際価格高騰による国内燃料の上昇、政府の補助金拠出による燃料価格据え置きが年度末で終了したことに起因して、再びストライキを示唆しました。しかしボルソナロ大統領がディーゼル油の値上げ調整頻度を調整するといった対処案を示したため、パラナ州で40台程度のトラッカーが抗議運動をした以外は大きな混乱もなく、沈静化しました。ただし、根本的な解決にはなっておらず、今後もストライキの要因になる可能性を秘めています。経済回復が大きく進展する材料も見当たらず、航空業界、海運業界いずれも輸出入のスペースは余剰であるため、運賃高騰にはつながっておりません。

 あと、ロジスティックスコンサルタント会社、ILOS社の調査で、2018年6月から2019年4月までの内航船、カボタージュの取扱量は前年同期と比較して18.2%の増加と発表されました。2019年第1四半期に限りますと、21%増になっているということです。内航船の取扱量が増加した要因は、ひとつに2018年5月末のトラックストライキの影響、二つ目にトラック運賃の値上がりによる貨物が海上輸送にシフトしたものと考えられています。

 かかる状況下、インフラ省のタルシジオ・フレイタス大臣は、政府として内航船利用の推進を明言しています。その内容は、1、今後2、3年以内に内航船の取扱量を現在の3倍にすることが目標であるということ。2、内航船利用によるトラック長距離輸送を短距離輸送に代え、トラック運転手のコスト、運行時間の削減を図るというものです。

 内航船利用の推進にあたる課題は次の4点と考えています。1、内航船を運航する会社が10社程度しかいない。2、主な取扱貨物は肥料、ボーキサイト、セルロース、鉱石類で、工業製品の輸送での使い勝手をいかに良くするか。3、運賃およびリードタイムの改善。4、内航船の規制および税制の変更です。国内輸送の60%をトラック輸送に依存するブラジルでは、トラック輸送の高コスト化、運転手の高齢化、道路整備をはじめとしたインフラ整備拡充の代替としてモーダルシフト、つまり内航船の利用の推進は理にかなっていますが、内航船を利便性のある身近な輸送手段にするためには、環境整備を含めさらなる投資と時間が必要と考えます。

 木製の梱包材を使用した輸入貨物が空港・港に到着した際の検査が厳格になっています。検査が厳格になった理由は、農務省、MAPAの検査で昆虫が見つかったことに起因しています。木製の梱包材は国際基準であるISPM15で定められた熱処理、あるいは燻蒸処理スタンプが必要なんですが、最近スタンプが不鮮明であるという理由で梱包材の積み戻し手続きをしないと輸入貨物が引き取れないという事態も発生しています。余計なリードタイム、コストを避けるためには、輸出者とともに定められた処理の実施の徹底、あるいは木製以外の梱包材の使用の検討をお勧めいたします。

 あと、サンパウロ市内の橋梁の破損および、安全基準に達していない橋のメンテナンスに伴って、道路の閉鎖が続き、交通渋滞が蔓延化したことにより、市内物流に影響を与えました。

 以上が上期の回顧です。続いて下期の展望に移ります。

 物流業者への米中貿易摩擦のインパクトは大きく、サプライチェーンの変化に合わせた物流ネットワークの拡充や、プラットフォームの整備が必要と考えます。緊迫した中東情勢が原油価格を左右するため、航空、海上そして陸上輸送の燃油費に多大なインパクトを与えます。最終的には物流コストに反映されるため、注視が必要です。昨年起きたトラックストライキを再び発生させないため、政府の適切な対策を切望します。

 そして、税関システムの導入が遅れています。本年末には導入の見込みでありますが、現時点では確約されていません。新システム導入による混乱を最小限に抑えるためには、貨物量が少なくなる年末に導入するのがタイミング的には良いと考えますが、2020年2月に延期になるものとも言われています。

 あと、従来からの要望ですが、通関、貿易関係の各法令の見直し、手続き簡略化への動きに期待します。海上輸送においてはMARPOLの条約改正に伴う、船舶燃料の硫黄濃度規制強化が2020年1月から実施されるのに伴い、燃油費の上昇が見込まれます。そして、空港、港湾、道路インフラ整備の促進にも期待をしております。

 今年、旧運輸省を継いでインフラ省が設立され、タルシジオ・フレイタス大臣が就任しました。ブラジルは世界経済フォーラムで発表された世界競争力レポートのインフラ面でラテンアメリカ9位、世界で81位でした。同大臣は、国際競争力を高めるため、まずラテンアメリカの交通インフラのリーダーになることをビジョンとして掲げていますが、実現に向けた行動力に大いに期待したいと思います。

 次に、航空貨物業界の2019年の回顧です。世界の動向としては、主要地域を中心に荷動きが鈍化しています。左側のグラフは2014年から現在までの世界航空貨物量の推移になります。赤線が実績、青線が季節調整後の輸送量を示しています。

 2019年の業界全体のFTK、貨物トンキロメートルは、2019年初めには前年比3.5%伸長するとの予測でしたが、6月末には0%に見通しを下方修正しました。つまり2018年と同レベルになると予測しています。貨物主要レーンであるアジア=太平洋間の停滞が主要因ですが、他地域の動きも同様に鈍化しています。米中貿易摩擦の影響が大きいと言えます。南米の動向は、この地域の政治的および経済的な不確実性にもかかわらず、低伸長ではあるものの、前年比1.3%の増となっています。

 ブラジルの動向はIATAブラジルが発表した2018年7月から2019年6月の実績に基づきますが、対前年比で1.68%のプラスとなっています。レーン別では欧州向けが好調である一方、北米向けが低迷しています。特筆すべき点としては、ブラジル発コロンビア向けが二桁の伸長となりました。主要な輸送品目は医薬品、化学品、自動車部品が挙げられます。同期間、ブラジル発の航空貨物は貨物需給がひっ迫しておらず、値上げ要素はないものの、燃油費は中東情勢の影響を直接受けるため、継続的に不確定要素となります。航空施設のインフラ整備が特段進んだという訳ではありませんが、空港での貨物搬入・搬出の遅延等は発生しておりません。

 続いて下期の展望です。IATAは今年の世界の航空貨物業界マーケットの見通しを2018年並みへと下方修正しました。先行きの見えない米中貿易摩擦、世界景気の停滞が背景にあります。米中貿易摩擦によるインパクトは大きく、サプライチェーンの変化に合わせた物流ネットワークの拡充やプラットフォームの整備が必要と考えます。米中貿易摩擦がブラジル=中国間の荷動きにどのような変化を与えるのか、動向を注視したいと考えています。コスト面では、2019年下期は燃油費が上昇傾向にあるとの見通しです。その理由として、中東情勢の不安および船舶燃料のIMO2020規制導入に伴う価格上昇圧力が挙げられます。

 このIMO2020は船舶燃料の規制なんですが、新規制で定められた低硫黄の船舶燃料は、航空燃料であるジェット燃料と同じ中間留分の石油精製カテゴリーにあたるため、需要が大幅に上昇し、その結果価格上昇につながると考えられています。輸送業界の燃料需要は世界経済の動向に左右されます。景気が堅調に推移すれば輸送業界からの需要が高まり、その逆であれば燃油価格上昇圧力が緩和されます。ただし、IMO2020の開始は、石油需要の歴史において比類のない需要シフトをもたらずイベントであり、どの程度石油市場に影響を与えるか不確実です。しかし、燃油費は航空会社の最大の費用項目であり、各社ともリスク管理戦略に組み込んでいますので、現時点で燃油費の上昇の可能性は非常に高いと言えます。

 あと、税関システムの導入に伴う航空需要に与える影響は限定的と考えています。

 ブラジル航空業界を支えているのは欧米とのトレードであり、欧米の景気に大きく左右されます。景気の低迷時には利用者のコスト削減意識の高まりと相まって、航空サービスの需要が低下する傾向にあります。かかる状況下、業界で生き残るためには、新たな需要の掘り起こし、利用者のニーズに合致した低コストサービスの開発・販売が必要であると考えており、鋭意取り組んでいく所存です。

 あと6分50秒ですので、もう少し辛抱しながらお付き合いください。

 最後に旅行ホテル業界です。2019年上期の回顧ですが、ABRACORP、ブラジル・ビジネス旅行代理店協会の発表では、第1四半期は国内線の発券枚数が8.8%増、売上額は11.3%増と顕著な伸びを示しました。一方、国際線は発券枚数がマイナス0.57%、売上額がマイナス4%と微減となりました。航空会社別で見ますと、売上額では国内線はGOLが35.6%で1位、Azulが32.2%で2位、LATAMが23.6%で3位でした。国際線の売上高ではLATAMが19.1%で1位、アメリカンが13.8%で2位、ユナイテッドが11.2%で3位でした。やはり便数の多い航空会社が上位を占める結果となりました。

 Aviancaブラジル航空が経営破たんした影響で、2018年4月から2019年4月の1年間で国内線運賃が平均で30.9%上昇しました。Aviancaが運航していた路線に限っては、その上昇率は39.9%でした。

 我々日系旅行代理店にとって、日本からブラジルに来る旅行者の地上手配業務は商売上、常に大きな割合を占めてきました。しかしながら、あいかわらず日本からブラジルへ来る旅行者は減少傾向にあります。2013年から2017年までの4年間にブラジルへ来た日本観光客の推移をこの数字で表しておりますが、2016年はオリンピックがあったため前年よりも増えておりますが、それ以外の年は日本旅行者数が年々減っていることが分かります。2018年は前年比5%ほど日本旅行者が増えていますが、これはブラジルが日本人に対し短期滞在目的の電子ビザを発行し始めたことにより、商用と観光の区別がつかなくなったため、商用目的の渡航者の数字も含まれているものと分析できます。

 先日、NHKがサンパウロ在住日本人が殺された事件を報道した際に、ブラジルでは日本人や日系人が標的になっているといったおおげさなニュースを流したり、「これでわかった!世界の今」という番組でボルソナロ大統領が銃の規制を緩和しようとしているというニュースを紹介した時に犯罪現場の生々しい画像を見せたりしていましたが、こういうニュースは当然、視聴者にブラジルは危険だということを強く印象付けます。ニュースを見た日本の家族が心配して電話をしてこられたという方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。結果、日本からブラジルに来る旅行者は減少傾向にさらに拍車をかけることになり、旅行代理店の商売もいっそう厳しくなることが懸念されます。

 今年7月19日に、日本で南米、特にブラジル向けのアウトバウンド業務を専門に手掛けていたウニベルツールという旅行社が49年の歴史に終止符を打ち、廃業しました。これも日本からブラジルへの旅行者が減ったことが大きな原因と考えられます。

 次に2019年下期の展望です。全体的な見通しとしては、社会保障制度の改革案が9月中にも上院で可決される見込みとなり、それによってブラジルに対する国際的な信頼が回復、ブラジルへの投資が増え、経済が好転することが期待されます。旅行市場もその恩恵を受けて旅行数が増えることが期待できます。

ラグビーワールドカップが9月から日本で開催されますが、ブラジルはラグビーが盛んではなく、もちろんワールドカップにも出ませんので、このイベントによる恩恵は全く見込めません。ちなみに、アルゼンチンはワールドカップ参加国なので、アルゼンチンからは大量のサポーターが日本を訪れるものと思われます。

 あと、東京オリンピック開催まで1年を切り、ブラジルでのチケット販売も開始されました。ご参考までにブラジルのオフィシャルサイトのリンクがこちらに書いてあります。オリンピック期間の航空運賃はもう出ていますので、下期は問い合わせが増えることが期待されますが、実際にオリンピックを日本までわざわざ見に行く人も少ないと思いますので、東京オリンピックによる恩恵はこれもあまり期待できません。

 あと、100%外資の航空会社のブラジル国内線への参入が認められました。既にAnacが第1号として、グローバリア系のエアヨーロッパに対して運航許可を出しています。ブラジル国内線を就航する航空会社が増えることで、競争が促進され、運賃が下がることが見込まれています。

 ブラジルの景気があいかわらず低迷する中、上半期もこの狭い日系マーケットの中で十数社の旅行代理店が、わずかな手数料や国際民間航空局、IATAが定めた支払期日よりも長い期日をオファーするといった、決して健全とは言えない状況の中で顧客の争奪戦を繰り広げております。そのため、旅行代理店の経営状況はさらに厳しくなっています。この状況は改善されるどころか、逆に悪化の一途をたどっています。こういった状況の中、各旅行代理店が健全な競争ができるよう、いかに差別化を図っていくかが引き続き今後の課題と考えています。

 最後にトピックスを二つ紹介します。新移民法になって外国人登録証がRNEからRNMに切り替わりましたが、RNMにはブラジルに入国した年月日が記載されておりません。よって、RNEからRNMに切り替えた人で、ブラジルに10年以上居住している人は、JRパスを購入する時にRNMと一緒にRNEのコピーの提示が求められるようになりました。RNMに切り替える時にはRNEのコピーを必ず取っておきましょう。

 国内線は受託荷物の個数によって運賃が異なるということは今や当たり前になりましたが、国際線の航空会社でも受託荷物を有料にするところが出てきましたので、予約の際には注意が必要です。詳しいことはご利用になられる旅行代理店にご確認ください。

 以上です。

司会

 湯原部会長、どうもありがとうございました。多岐にわたる、情報通信が抜けてもかなり多岐にわたるプレゼンになっているかなというふうに思います。ただ今のプレゼンにつきましてご質問のある方、挙手をお願いできればと思います。いかがでしょうか。後半まだ誰も質問されていませんけど、いかがですか。よろしいですか。それではですね、盛大な拍手をもって運輸サービス部会の発表を終わりにしたいと思います。

 それでは最後の発表になります。生活産業部会、今年1月から生活産業部会として、今回2回目になります、生活産業部会の発表に移りたいと思います。今川部会長よろしくお願いいたします。

 

生活産業部会

今川尚彦 部会長

                       

 生活産業部会部会長、戸田ブラジルの今川です。今年、生活産業部会は、建設不動産部会と繊維部会が合併しまして新しくできた部会です。生活産業部会としましては今年として2回目の発表となります。まだ中々ですね、建設不動産と繊維ということで接点が見出しにくくて、今回もですね、旧部会それぞれの発表をあわせたような内容となりますので、ご了承ください。それと、ちょっと私事ですけども、昨日から風邪をひいていまして、朝から大量摂取で薬を飲んで何とかこの場に立っているんですけれども、途中でしゃべれなくなったらスターツの森口さん、よろしくお願いします。

 生活産業部会はですね、主に部会員は16社あります。16社あるんですが、非常に多岐にわたっておりまして、建設、不動産、あと繊維のほかにですね、エネルギーサービス、ファスニング、エンジニアリングプラスチックなど非常に多種多様です。そのために、業種ごとの動向としては非常にまとめにくくてですね、半期ごとに実施しているアンケートの回答を基に、まず一つ目としましては各部会員企業の現状をお伝えします。続いて、二つ目として旧建設不動産部会の業界の概況をお伝えして、さらに三つ目としてはEcogen社さんのビジネスモデルの紹介、最後に旧繊維部会さんからカーペット市場についてのお話をさせていただきます。

 それではまず、ご覧のグラフですけれども、こちら各会員企業の昨年と今年の上期、それと下期を含む来年の予測を2017年比で表したものです。業種が多岐にわたるため、業界ごとではなく、企業ごとに説明をさせていただきます。左側4社は旧建設不動産部会員、右側が旧繊維部会員となっています。

 まず旧建設不動産部会は、上期は建設のA社、一番左側ですね、A社が一昨年比で40%まで上期は落ちています。B社は130%と伸ばしていますけれども、下期および来年以降はですね、同水準もしくは増加という予測をしております。ただ、リセッション前と比較しますとまだまだ低水準な状況ということが言えます。いずれも、これまでの発表にもありました、各産業界からの工事の請負を中心としていますので、各産業界の設備投資動向に大きく影響を受けるということです。

 次に不動産のC社についてですけれども、一昨年比で昨年、今年ともに倍近くに伸ばしております。ただこちらもリセッション以前の業績と比べますと、まだまだ低い水準から抜け出せていないということが言えます。

 次に、見ていただいて目をみはる部分だと思いますけども、エネルギーサービスのD社、こちらがですね、その他の会員企業とは比較にならないような急激な売上増を示しております。今年が28倍、来年については60倍という非常に大きな予測を立てております。同社については後ほどまた成功例として紹介をさせていただきます。

 次に、右側の旧繊維部会4社についてですけれども、G社を除いてあまり大きな変化がないと、増減がありません。言い換えれば、リセッション時からいまだ大きな回復がないということが言えます。2016年に繊維業界から撤退したG社はエンジニアリングプラスチックをメインとする新事業に取り組んでおります。ただこちらは自動車生産台数の減少、伸び悩みに影響を受けまして、昨年から今年にかけて落ち込んでおります。ただ、下期、来期は回復する見込みであるという報告を受けております。

 今回、シンポジュームの副題である環境の変化について、どのようなものがあり、どう対応しているかについては、各会員企業よりご覧の内容が上がってきております。業種や事業により、業績に影響を及ぼす変化は様々です。

 国内変化においては、建設業はやはり各産業界の設備投資動向に影響を受けるため、建設請負業のみからの脱却が大きな課題となっております。

 ガスエネルギーサービス業においては、ガス価格の影響を受けるため、ガス以外のエネルギーを扱った事業への多角化を図っています。

 繊維業界は業界全体が落ち込んでおり、厳しいながらも高付加価値の商品の開発、あと販売促進に努めています。

 国外の影響としては為替という回答が最多でありました。これに対し、内製化や地場材料の調達、あと、全世界的にグループ全体で調達して変動幅を抑えるといったような対策がとられております。

 不動産企業においては、ブラジル進出日系企業へのアテンドをメインとしていますので、日本の景気とあと不動産価格、国際情勢などが影響をしております。対策としては、今後ブラジル企業や各個人への事業拡大を模索しているということです。

 続いて、エンジニアリングプラスチックとアグリビジネスを展開する部会員は、世界的にいま脱プラ、脱化学農薬といった国際世論ですね、あと気候変動といったものが影響を受けるというのがあがっております。

 以上が部会員の現状をお伝えしました。続きまして建設・不動産部会から業界の概況をお話しいたします。まず建設業界についてです。

 建設部門は常に不況のあおりをまともに受け、回復も他の業界に比べてずいぶん後に回復してくるというのが常です。GDPの成長率を示したご覧のグラフですけれども、緑色の棒グラフが全体のGDPを表しています。これに対しまして、紫色が建設部門です。2014年以降ですね、建設が極端にGDPが下がっておりまして、2017年以降、全体では回復していますけれども、いまだに建設部門としてはマイナス成長が続いているという状況です。

 2019年の第1四半期は全体が0.2%のプラスだったのに対しまして、建設はいまだマイナスの2.2%でした。第2四半期の全体GDPは、今月の頭の中銀の発表によればマイナス0.13%ということでしたが、その他のFGVのモニターによれば0.2%プラスということで、近々発表される国立地理統計院のGDP発表、これが最終公式発表で分かると思いますが、どちらにしてもあまり良い結果が出ていないということになります。これに対しまして、建設部門の第2四半期も引き続きマイナス2.2%ということが現在見込まれております。これにより、2014年からですね、5年にわたって建設部門ではマイナス成長が続いておりますけれども、まだまだ引き続きプラスに転じない、非常に厳しい状況が続いております。危機的状況にあるのではないかというふうに思っております。

 次に、建設に携わる就業者数ですね、これについてです。8月初めに公表された統計によれば、建設部門の上期の新規雇用は約6万5000人上昇と。昨年下期と比べて約3%増ということでした。ただ、2013年から18年の5年間で120万人の就業者数が減っております。これも他産業と比べても非常に際立った減少幅だと思っております。これに対しまして、2019年上期はですね、6万5000人増えてはおりますけれども、過去5年間の減から比べると約5%ですね、回復したというに過ぎない状況で、まだまだ建設需要、あとそれに従事する建設従事者の需要がないというのが言えます。

 先程から述べていますように、建設業の回復というのはやはり、他産業のですね、好調な業績に伴うものが非常に多いです。ですので、やはりブラジル全体のですね、目に見える回復基調、これがなければ中々回復はできないのかなというふうに感じています。経済回復のスピード感が今なかなかない。ややもするとリセッションにまた入ってしまうという可能性を秘めている中で、やはり公共工事・事業を含めて各業界の投資意欲がなかなかは上がらないというのが見て取れると思っております。また、今後将来にわたり安定成長がなかなか見込めないという中で、建設業界各社は体力勝負に入っているというふうに感じております。先程も述べたように、建設請負業のみからの事業形態から脱却しなければならないというふうに、非常に強く感じている訳です。

 続きまして、不動産市場の概況についてお話しいたします。こちらはサンパウロ市に限っての報告となりますので、ご了承ください。

 サンパウロ市のマンション市場は2018年以降回復をしてきております。2014年から2017年の成約数は1万6000戸~2万3000戸と低調でしたが、昨年は約3万戸を記録し、今年はさらにそれを上回る勢いとなっています。月当たり3000戸程度で推移しておりましたが、6月に6300戸を記録し、上期の累計は1万8000戸を上回っております。市場としては好調な状況になっております。市場供給数と売却数のバランス指標である成約率、こちらも上昇傾向にあり、6月は単月で21.5%を記録しております。

 あと、まあ皆さんの関心にも関わって来ると思います、賃料についてですけれども、賃料につきましては物価上昇程度の家賃上昇が見られます。あと、サンパウロ市の南部の辺りの新築物件は非常に人気が高くて、賃料の上昇率も高い傾向にあります。ただ、日本の、皆さんのよく住まわれているパウリスタ地区ですね、この辺りは非常に、新しいアパートの供給が少なくてですね、古い建屋が非常に多い。その分賃料は横ばいで進んでいるということです。ただしですね、コンドミニオとかIPTUとかっていうのはですね、毎年10%程度上がっていっていますので、住居費としてはやはり上がっていっているというのが現状でございます。サンパウロ市のアパート、マンションに対してですね、事務所関係についてはかなり不調な状況です。空き物件も多くなってきていまして、その分、築年数が古い物件であったり、価格交渉ができる、逆に皆さん、企業的にはですね、事務所の家賃、賃料を交渉する時期にはなっていると思います。

 以上がサンパウロ市の不動産市場の概況報告でした。続きまして、3つ目はですね、Ecogenさんの、これをビジネスモデルの一つとしてですね、皆さんにご紹介をいたします。先程もちょっと述べましたけれども、今年、来年と急激に売上を伸ばされている企業様で、どういうことが成功につながったかという、少しヒントになればと思って報告させていただきます。

 まずEcogen社はですね、英国ブリティッシュガス傘下企業の子会社として2002年にサンパウロで設立をされております。約17年前になりますね。2012年に東京ガス子会社と三井物産が共同出資し、ブラジルの天然ガス利用設備を活用したエネルギーサービスの専門業者となりました。その後、2016年に東京ガスが全株式を譲渡し、三井物産の100%子会社となった会社です。

 事業としましては、熱源より電力と熱を生産し供給するコジェネレーションシステムサービスです。2015年以降は天然ガスだけでなく、バイオマスを使った蒸気の製造等、多角化を進めてきました。現在、サンパウロ州、リオ州を中心に、国内15州で78件のプロジェクトを遂行しており、主な客先が工場、ショッピングセンター、商業ビル、ホテル等になっております。

 Ecogen社は今年に入り、先程から重ねて報告しておりますけれども、急激に業績を伸ばしております。上期の売上が昨年同期の28倍と。来期が60倍ということになっております。この不況下にあって、驚異的に業績を伸ばしているのはなぜなのか。今回のシンポジュームの副題でもある、環境変化への適応のひとつの答えではないかということで、今回これを報告いたします。

 不況時には、どの企業もですね、まずコストの抑制、これにかかると思います。まず投資の初期コスト、それからランニングコスト、これらを絞っていくのが一般的です。こうした顧客ニーズをとらえるのが、三つのソリューションを挙げるEcogen社のサービスです。

 最もインパクトが大きいのは、初期投資のコストです。これに対するソリューションでありますけれども、ガス発電設備建設費をEcogen社が全て負担すると。それをその後数年かけてリーシングの形を取ることで、お客さんの方はですね、設備投資費用が不要になると。また、ランニングコストについても、まあブラジルでは電気代というのは非常に高いですから、安価な電気でランニングコストを下げていくということにも非常に魅力的なサービスということが言えます。

 また、先程の電気料についでですけれども、ガス発電および、あと分散型電力に対する優遇制度とかですね、再生エネルギーの活用といった色んなスキームでですね、コストカットを提案していくということをされております。さらに、電力の自由市場からの電力調達に関するコンサルティングサービスや、先程から述べている、初期の設備投資、建設、あとそれを運営、メンテナンスをしていくということについて一貫したパッケージでのサービスをされているということです。こうしたセールスポイントが、不況時でさらに効果を発揮し、受注につながっているのではないかというふうに推測をいたします。

 あと、同社によればですね、今年の業績急伸の主因は、政権交代という環境変化に慎重だった企業が、今まで様子見をしていたのが少し投資側に向いたと。さらに、先程もあったように、初期投資がいらないというようなですね、非常に魅力的なソリューション、あとそれにあわせて大型案件の受注が今回あったということです。かねてからの営業努力や企業戦略ですね、これが奏功していると言えます。この、初期投資をEcogen社さんが負担をしているんですけれども、まあこういうスタイルというのは中々、膨大な資金力がないとですね、中々できないので、どのような企業でもできることではないんですけれども、ただ、時代のニーズ、変化にあわせて業績を伸ばしているということは言えると思います。

 最後になります。最後は旧繊維部会の発表として、カーペット市場について紹介をさせていただきます。ここからの資料についてですけれども、これは旧繊維部会から出られた副部会長の、関西人の方が作成されたプレゼンテーションですので、ちょっと今までと雰囲気が若干変わりますので、ご了承ください。

 まず、ブラジルでもカーペットはたくさん生産されておりまして、50社以上のメーカーが約2500万平米の規模で生産をしております。2500万平米といってもピンとこないと思いますけれども、坪で言えば750万坪。東京ドームで言えば530個分ということです。で、関西人が作りましたので、関西人向けに言いますと、甲子園球場で言いますと640個分ということです。まあ中々ピンと、それでもこないですよね。ということです。

 使用される原料としましては、この場合、糸ということになりますけれど、約3万5000トンの糸が使用されています。この市場の中の数%を占めるプレミアムゾーンに入り込んでというのが、先程から述べている、繊維業界さんの高付加価値の部分ということになります。

 さて、カーペットにも非常に色々な種類があります。非常にオーソドックスなタイプ、あと織物を工夫した形のもの、あとジャガードタイプ、それから天然繊維をふんだんに使ったもの、その他、大きくは10数種類のカーペットが存在すると言われています。また、厚みについてもですね、非常に多種ありまして、事務所に使われているような毛足の短い5ミリ程度の厚みのものから、リビング等に使われる毛足の長いラグまで、これも非常に多くの種類がございます。あと、業界的にはですね、使用される素材としては、多種使用されておりまして、まあ強く軽さがあり値段の安いポリプロピレンから、ぬめりと光沢のある高級なナイロンが使用されたりしております。

 あと、カーペット糸のもう一つの特徴はですね、非常に太い、とにかく太い糸が使われております。皆さんが着ておられる衣服に使われているような糸の数十倍、あるいはもっと太い糸が使用をされております。これらの糸にはですね、色んな種類のカーペットを、お客様に対して提案を、開発をしております。現在の開発のキーワードは、ウールライク+ソフトということであります。このソフトというのが、衣料全般的に、そして世界的に現在言われていることでございます。

 ブラジルは非常におしゃれな国でですね、そして住まいについてもそのおしゃれ感を演出するのが非常に好きな国民性というか国です。リビングや寝室、そして玄関、トイレなど様々な場所に、色々なカーペットを敷き詰めて、皆さん利用されております。

 最後、皆さんにおかれましてもですね、ブラジル生活で、カーペット一つで生活空間変わりますので、ぜひおしゃれな生活空間に、新しいライフスタイルに挑戦されてみてはいかがでしょうか。

 以上、生活産業部会の発表とさせていただきます。ご清聴ありがとうございます。

司会

 今川部会長、どうもありがとうございました。ただ今の発表につきましてご質問のある方、いかがでしょうか。結局後半は質問が出ていませんけれども、それではですね、生活産業部会の発表を以上で、盛大な拍手をもって終了したいと思います。

 以上で、前半5部会、後半5部会、計10部会の発表をすべて終了いたしました。内外の環境変化にどう対応するか、最後の生活産業部会でですね、その答えがなぜか、コスト削減需要のビジネスと。やっぱり環境変化でやはりコストを削減しないといけないといったところをとらえてですね、そういった需要をとらえてビジネスをされたEcogen社のビジネスというのが非常に印象的だったかと思います。

 それではですね、ここで本日出席いただいております在サンパウロ日本国総領事館の野口総領事より、本日の各部会の発表につきまして講評等ございましたらお願いしたいと思います。それでは野口総領事、よろしくお願いいたします。

 

講評

在サンパウロ日本国総領事館

野口泰 総領事

                     

 こんにちは。長時間にわたりまして、ご苦労様でございます。私の方からですね、今日のシンポジューム、途中からの出席となりましたけれども、いくつかちょっとお話しをさせていただければと思っております。

 私、今年の4月の初めにですね、東京で行われました日伯賢人会合という、賢人というのはwise manですね、日伯両国の経済界の重鎮の方の会議に出まして、そこで非常に感じましたのはですね、日本の出席者の方から非常に問題意識としてありましたのは、いま世界でですね、非常に不透明感がただよっていると。まあヨーロッパはBrexitがどうなるか、そして米中の経済的な摩擦がある中でですね、こうした中でやはりブラジルというのが非常に魅力的になってきているんじゃないかと。人口も多く、天然資源にも恵まれ、農業のポテンシャルもあり、非常な潜在力を秘めるブラジルというのが、こうした、大きなエコノミーが不透明感がただよう中でですね、ブラジルへの注目を非常にされているんじゃないかなという印象を、日本側の出席者の話を聞いて思ったところであります。今年になってですね、ボルソナロ大統領、まあpro-buisinessな大統領がブラジルにできたということでですね、そうした期待を非常に感じたところであります。

 そしてブラジル側もですね、今回は閣僚クラスの方も出席されて、賢人会合ですね、ここでやはり日本に対する熱い視線というのを感じました。おそらくそれはですね、今ブラジルが非常に経済的には中国に大きく依存していると。輸出の3割は中国でですね、こうした中国だけに頼るといいますか、依存する体質はあまり健全ではないんじゃないかということでですね、そこでアジアの伝統的な友好国である、まあ日系社会もある、そうしたブラジルにとっての日本の重要性というのが高まっているのではないかというふうに感じたところであります。

 ボルソナロ政権は、大統領の方は日々いろんな発言がですね、取り沙汰されておりましてですね、まあ政治的にはちょっとごたごたしている面もあるのかなという感じもいたしますけども、かたや経済政策についてはですね、まあこれはボルソナロがかなり、パウロ・ゲデス経済大臣に任しているということもありまして、比較的まあ堅調といいますか、6月末のEUとのFTA交渉の妥結と。20年以上にわたって妥結に至らなかったのがようやくこの政権になってできたというは一つの成果ではないかというふうに思っております。もちろんこれから最終的な文書を詰めたり、あるいは批准手続きというのはまだまだ時間がかかるかもしれませんけども、まあ一つの大きな成果ではないかというふうに思っています。そして年金改革も下院を通過しましてですね、税制改革もいろいろ検討が進んでいるようでございます。そうした経済政策についてはですね、比較的堅調に推移しているのではないかというふうに思っております。

 そして今、ラテンアメリカ、中南米を見ますとですね、中南米の2大エコノミー、おそらくメキシコ、ブラジルだと思うんですけども、メキシコがロペスオブラドールという、左派政権になってですね、かたやブラジルが、保守政権といいますか、右派政権になった中でですね、これまでは全く逆だったんですね。メキシコが非常にビジネスがしやすいと、経済が自由化されていてしやすいという中でですね、日本企業がどんどん行っていて、日本企業数も今メキシコの方がはるかに多いんですけども、そうした大きなピクチャーがちょっと変わってきたかなと。メキシコが若干ビジネスがやりにくくなる中でですね、ブラジルの重要性というのが高まっている面もあるのではないかなというふうに思った次第であります。

 いずれにしましても、今日も何度も指摘がありましたけれども、日・メルコスールEPAのですね、交渉についてですね、日伯経済合同委員会、7月の終わりに開催されました合同委員会でも提言をいただきましてですね、たいへん重く受け止めております。何とか、こうした声を受けてですね、政府としても動かすように引き続き検討を進めてまいりたいというふうに思っております。

 そして最後に、中国ですとか韓国の動きについていくつかお話しがありました。中国につきましてはですね、ご案内の通りドリア・サンパウロ州知事が8月の上旬に中国を訪問されてですね、上海にサンパウロの、事務所といいますか、サンパウロの経済代表事務所を設置する等、あるいはファーウェイの投資が発表される等ですね、色々動きが出てきたところであります。こうした中で、ドリア州知事はですね、9月の中旬には日本にも行かれるというふうなことを聞いておりまして、まあ日本との関係にもですね、意を用いておられるということをご紹介しておきたいと思います。

 そして韓国についてはですね、まあ日韓関係非常に厳しい所でありますけども、韓国はですね、8月の上旬に韓国文化センター、これはちょっとパウリスタ大通りから離れたところにこれまであったんですけども、それをパウリスタ通りに移転する形でですね、オープニングをされております。多分にジャパンハウスがパウリスタ通りにできたということもあって、移転されたというふうな見方もありますけども、非常に、韓国のK-POPをですね、前面に打ち出した文化施設になっておりまして、こうしたところでどういった、文化あるいは経済の推進をしていくかということも引き続き注目をしていきたいというふうに思っております。

 とりあえず私の方からは以上でございます。本日はどうもご苦労様でした。

司会

 野口総領事、どうもありがとうございました。それでは、本日、在ブラジル日本大使館より濱浜坂参事官、そして塩野書記官が出席しておりますので、お二人から挨拶とコメントをですね、もしありましたらお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

 

在ブラジル日本国大使館

濱坂隆 参事官

                  

 ただ今ご紹介に預かりました、在ブラジル日本国大使館の濱坂でございます。先程野口総領事の方から、内政、外政、包括的な講評がありましたから、私の方からも一言申し上げさせていただきます。

 大使館では、日本企業の支援、これを一つの大きな柱として掲げております。ただ残念ながら我々、大使館はブラジリアにありまして、これはブラジル政府との接点を持つという点では非常にアドバンテージはある一方で、中々日本の企業の方々の、どのような活動をされているのか、あるいはどんな課題があるのか、中々直接お話を伺う機会がありません。残念なことです。そうした中、今日のシンポジュームで皆様のお話を伺うことができました。非常にありがたい機会だと思います。この場をお借りしまして、カマラの事務局、プレゼンターの皆様、そして各部会に参加の皆様にありがたく御礼申し上げます。

 本日、業界ごとに様々な課題、大きなポイントとしてご指摘いただきました。自動車部会のプレゼンでは私も質問させていただきましたが、こうした課題、我々がブラジル政府関係者とお話しする場で指摘したり、意見交換したり、あるいは追加情報を得たり、こうした形でフォローしていこうと思っております。また、日本とブラジルの間には様々な政策対話、こういったダイアローグの機会があります。こうした機会を使って取り上げて、状況の改善、こういったことを図っていきたいと考えております。

 また、本日のサブタイトル、内外の環境変化、この要因として年金・税制改革の状況、韓国、EU、これらのメルコスールとのFTA、こういった情勢が何度か指摘されております。これに対しまして、我々どもも当然情報として追いかけております。何かの機会に皆様とその情報を共有させていただきたいと思っております。

 また、日本とメルコスールのEPA、これ先程野口総領事の方からもお話しさせていただきましたが、我々として非常に重たく受け止めているところでございます。今現在では検討中ということでございますが、皆様の企業活動に対して望ましい環境となるような形で進めていきたいと、そのように思っております。

 最後になりました。電機・情報通信部会より、官民一体の取り組み、こういった重要性が要望されております。それに対する大使館の答えとしては、ぜひやりましょう、この一言をもちまして私の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

司会

 濱坂参事官、たいへん力強いお言葉をいただきまして、どうもありがとうございます。それでは、塩野書記官よりご挨拶ならびに、もしコメント等ありましたらお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

 

在ブラジル日本国大使館

塩野進 書記官

                   

 ただ今ご紹介をいただきました、日本大使館経済班の塩野でございます。国土交通省からこの6月に着任をいたしまして、本日初めてお会いする方もたくさんいらっしゃいますけども、今後とも様々意見交換させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。また本日は貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。着任したばかりでございますので、私から何かコメントということはございませんけれども、一つ思いましたのは、私国土交通省でこの5年、10年、建設業、観光業、それから海運業に関係する仕事をしてまいりました。その中で一貫して共通したテーマとして日本で取り組んで参りました、例えば働き手の処遇の改善、優秀な人材の確保、生産性の向上、あるいはICT、AIといった新技術への対応、こういったテーマについては本日もたくさんお話しをいただきましたので、日伯関係なく普遍的なテーマなのではないかなというふうに思った次第でございます。一方で、ブラジルの今後の見通しの中で、隣国アルゼンチンの動向ですとか、あるいはボルソナロ政権の税制改革をはじめとした構造改革の今後の進展、そういったことについても皆様からご関心事項としてご教授をいただきましたので、私どもしっかりブラジリアで情報収集をして、皆様と共有をさせていただきたいというふうに思います。今後ともよろしくお願いいたします。

司会

 塩野書記官、どうもありがとうございました。ただ今6時10分、ちょっと10分オーバーしてしまいましたけれども、以上で本日の業種別部会長シンポジュームを終了したいと思いますが、終了にあたりまして、閉会の辞を讃井総務委員長にバトンタッチしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

閉会の辞

讃井総務委員長

                             

 あらためまして讃井でございます。長時間にわたりまして、今日はお疲れ様でございました。大変ありがとうございました。前回申し上げたんですけども、ずっと高い所から座ったまま大変申し訳ございません。1分だけお時間を頂戴したいと思います。

 まずもって、本日お付き合いいただきました野口総領事、あと大使館の方から濱坂様、塩野様、ご参加いただきまして大変ありがとうございました。今回のセミナーでですね、各種要望というのがいくつか出てきておりましたけれども、税制ですとか、規則ですとか、特にEPAの課題、これについては先程総領事の話にありましたけども、日伯経済合同会議でも大きく前進をしている、こういった状況にあるかと思っておりますので、引き続き官民ご一緒させていただいてですね、カマラ、進出日本企業の、あるいは在ブラジル企業の盛りたてにいきたいというふうに思ってございます。

 あと、先程ご案内ありましたけど、9月17日ですね、アルゼンチンのセミナーということもご案内させていただいております。ブラジル、メルコスール、世界、あるいは産業構造、色んな意味で変化が起きているというのは踏まえつつですね、今後やっていければなと思います。

 皆様の発表自体はですね、目先不透明、どちらかというと暗い内容が多いかなと正直思ったところではございますけども、ただし民営化ですとかイノベーションだとか、新しいアイデアだとか、オールジャパンだとか、そういった言葉の中でですね、希望の持てるところというのは必ずあると思いますので、次回は半年後の2月に向けてということですけども、ぜひともカマラの活動を通じまして、皆様で力をあわせてですね、盛りたてていければなというふうに思います。

 一つだけ、今回のこの資料はおそらくカマラのウェブサイトに全てアップされると思うんですけど、ちょっと私も自分のところで思ったのは、若干資料が、明るくない部分も多いものですから、間違ったインプットにご本社なりなんなりならないようにですね、適宜見られる方を想像して、補足をしていただくというのが大事なことなのかなというふうに思いましたので、そこは考慮いただければというふうに思います。

 すいません、長くなりまして恐縮でございますが、今日は大変ありがとうございました。この後懇親会が外でご用意されているということですので、ぜひご参加いただければと思います。以上で終わります。ありがとうございました。

2019年上期の業種別部会長シンポジウム

2019年上期の業種別部会長シンポジウム

テーマ:「2018年の回顧と2019年の展望」
副題: 『成長への期待、変化への対応』
日時:   2019年2月28日(木曜日)
13時~18時 シンポジューム(途中コーヒーブレイクが入ります)
18時~19時 懇親会(カクテルパーティー)                  
会 場: ホテル インターコンチネンタル
(Hotel Intercontinental São Paulo , Alameda Santos, 1123 – Tel.: (11) 3179-2600 )

発表順序:(発表者および発表順は必要に応じ変更の可能性も御座いますので予めご承知おき下さい)
前半の司会: 讃井慎一(さぬい しんいち)総務委員長
13:00~13:05    開会挨拶     安田篤(やすだ あつし) 副会頭    (損保ジャパン日本興亜)
13:05~13:35    ①  金融部会    津田 双羅(つだ そら)    部会長         (ブラデスコ)
13:35~14:00     ②  貿易部会    猪股 淳(いのまた じゅん)    部会長    (伊藤忠)
14:00~14:25    ③  機械金属部会    植田 真五(うえだ しんご)    部会長     (三菱重工)
14:25~14:50     ④  自動車部会    下村 セルソ(しもむら せるそ)    部会長    (トヨタ)
14:50~15:15     ⑤  コンサルタント部会     吉田 幸司(よしだ こうじ)    部会長     (KPMG)
xxxxxxxxx コーヒーブレイク (15分) xxxxxxxxxxxx    
後半の司会: 大久保 敦 (おおくぼ あつし)企画戦略委員長
15:30~15:55     ⑥  化学品部会     村松 正美(むらまつ まさみ)    部会長    (PILOT PEN)
15:55~16:20     ⑦  電気電子部会    日比 賢一郎(ひび けんいちろう)    部会長    (ソニー)
16:20~16:45     ⑧  食品部会     黒崎 正吉(くろさき まさよし)    部会長    (味の素)
16:45~17:15    ⑨  運輸サービス部会     吉田 信吾(よしだ しんご)    部会長     (NYK DO BRASIL)
17:15~17:45    ⑩  生活産業部会(建設不動産・繊維)     今川 尚彦(いまがわ なおひこ)    部会長    (戸田建設)
17:45~17:50       講評    野口 泰(のぐち やすし)総領事    在サンパウロ日本国総領事館
17:50~17:55       閉会の辞    讃井慎一(さぬい しんいち) 総務委員長            

2019年上期業種別部会長シンポジウムの各部会の発表プレゼンテーション掲載

Pdf金融部会

Pdf貿易部会

Pdf機械金属部会

Pdf自動車部会

Pdfコンサルタント部会

Pdf化学品部会

Pdf電気電子部会

Pdf食品部会

Pdf運輸サービス部会

Pdf生活産業部会

Pdf全プレゼンテーション

2019年上期の業種別部会長シンポジウムテープおこし記事掲載

前半の司会 讃井慎一 総務委員長

 皆様、こんにちは。時間を少し過ぎておりますけども、天候の悪い中お集まりいただきましてありがとうございます。若干遅れていらっしゃる方がおられるので少しお待ちしましたけども、過ぎましたのでそろそろ始めさせていただきたいと思います。

 今日はですね、2019年上期業種別部会長シンポジュームでございます。私、本年度カマラの総務委員長を拝命しています、みずほ銀行の讃井と申します。前半進行させていただきますのでお付き合いください。後半はですね、企画戦略委員長の大久保さんの方に進行の方を渡したいと思ってございます。

 それでは早速ですけども、開会に当たりましてですね、安田副会頭よりご挨拶をいただければと思います。安田さんよろしくお願いします。

 

開会挨拶

安田篤 ブラジル日本商工会議所副会頭

 皆さんこんにちは。SOMPO SEGUROSの安田でございます。本日は土屋会頭がご不在ということでですね、私が代理で本会の開会のご挨拶をさせていただきたいと思います。

 今回のシンポジューム、キーワードは、お手元にありますように、経済成長への期待、それから変化への対応ということでですね、ここ3、4年、ブラジルの経済をご覧になった方はご承知の通りですね、2015年、16年、2年間マイナス成長、17年、18年は1%台の低成長ということで、まあ若干もやもやした時期が続いたんですが、今回新政権に替わったということでですね、潮目は変わってきているのかなというふうに思っております。

 まあ巷の景況感調査なんかでもですね、去年の10月ぐらいから大分改善の兆しが見えておりまして、今からちょうど半年前、前回のシンポジューム、2018年の8月、この時はちょうど大統領選の直前ということもあってですね、まあ選挙前の不透明感一色という感じでしたけれども、今回、明けまして2月はですね、まあかなり視界が良好になってきているということでございます。

 ブラジルにつきましては、2003年から長く労働者党の政権が続いておりまして、まあこの間、世界的にはTPP11であるとか、あるいは日本とEUのですね、EPAが結ばれたというような、世界は自由貿易の流れの機運に乗っていますので、まあ今回このボルソナロ政権になりまして、まずは国内の地固めということで、年金改革であるとか、財政改革等々を進めつつですね、まあブラジルも世界に羽ばたいていく時期だというふうに認識しております。

 これに合わせて当会議所もですね、この機会に攻めに転じたいということで、ただ攻めるにあたってですね、やはりそれぞれの業界ごとの特性がございますので、ぜひ今日の機会にですね、この業界の動きというのをですね、会員の皆様が共有できるような、そんな場にしたいと思っております。

 本日は各業界のですね、最前線でビジネスに携わっておられる方々がですね、各部会ごとにコンパクトな発表をしていただきます。総領事館からは野口総領事にお越しいただいて、後ほどご講評をいただく予定になっております。

 今日は前半5部会、後半5部会、間にお休みをはさんで10部会の発表になりますけれども、会議所の部会再編という意味ではですね、今回大トリを務めていただきます生活産業部会、これは以前の建設不動産部会と繊維部会が合体して新しい部会になっていますので、その辺が今回の違いかと思います。

 来週からカーニバル休暇ということで、お休み前の雰囲気。サンパウロの街並みもですね、サンバのバテリアの音なんかが聞こえてきて、ちょっとお休み的な雰囲気ではあるんですけれども、今日、お休み前にですね、皆さんぜひ頭の整理をしていただいて、来週以降、カーニバル休暇以降ですね、ブラジルはやはりカーニバルが終わらないとビジネスが始まらないというような雰囲気もあるので、来週以降すぐに現状にキャッチアップできるような、そんなご準備をしていただければと思います。

 あらためまして、本日、お忙しい中、皆様、雨の中ご参集いただきまして、本当にありがとうございます。これをもちまして私のご挨拶と代えさせていただきます。どうもありがとうございました。

 

司会

 安田副会頭、たいへんありがとうございました。お話にありましたけど、今回の副題はですね、「成長への期待、変化への対応」ということで、前回から6ヶ月経ってですね、より皆様いろんなことに取り組まれていると、期待も込めてこういった副題にしてございますので、そのあたりを確認できればいいのかなというふうに思ってございます。庶務的なことですけども、今日は10の部会に発表していただきます。お手元にスケジュールあると思うんですけども、まあすでに5分遅れていますが、多少の前後はあるにせよですね、時間は意識いただきまして、ご発表いただき、あと質疑応答等もしていただければと思いますので、タイムキープの方はぜひご協力の方をお願いいたします。

 それでは早速、最初は金融部会の方からお願いいたします。津田部会長、よろしくお願いします。

 

金融部会

津田双羅 部会長

 皆さん、こんにちは。金融部会長を務めております、ブラデスコ銀行の津田でございます。本日は、シンポジュームのテーマでございます2018年の回顧と2019年の展望を念頭に、ブラジル経済動向、銀行業界動向、保険業界動向について簡単にご説明をさせていただきます。それでは3ページ目をご覧ください。

 本スライドの左側ではですね、2018年ブラジル経済の振り返り、右側で2019年の見通しについてポイントをまとめております。まず2018年の振り返りですが、2018年は世界経済全体が循環的な成長軌道にある中ですね、ブラジル経済も比較的良好な成長見通しの下、一年のスタートを切りました。しかしながら、2018年の中頃にかけて、ブラジル内外で各種リスクが顕在化した結果、年中頃以降は経済成長が減速し、2017年と同水準の経済成長率での着地となりました。

 結果的にですね、緩やかな経済回復基調は維持したものの、経済成長に力強さを欠いた背景といたしましてはですね、以下のボックスに記載させていただいております逆風があったと考えられます。

 まずは、国内の要因といたしましてはですね、ブラジルの大統領選挙の年であり、政治・経済の先行きに対して非常に不透明感が強かったことが挙げられます。大統領選という重要なマイルストーンを控えて、積極的な投資や消費は増加しがたい環境であったと考えております。加えまして、かような環境の下ですね、トラック運転手のストライキによってですね、ブラジル経済・社会の歪みや脆弱性が改めて顕在化し、国民の将来への不安を惹起したことも逆風となったと考えています。

 次に、経済成長を減速させたブラジル国外の要因として、米国金融政策と通商政策の影響を挙げられます。前者の米国の金融政策ですが、昨年は良好な経済環境を背景に、米国が金融正常化を目指して緩和的であった金融政策から引き締めに転じたことで、新興国からの資金流出やですね、新興国の通貨の切り下げが発生いたしました。ブラジルも他の新興国同様、相応の影響を受けました。

 後者の米国の通商政策に関しまして、懸念されておりました米国と中国の貿易摩擦が本格化いたしまして、双方で高関税措置を採る等の動きがございました。かかる動きは、経済成長の成長を妨げる一つの要因となり、ブラジルの経済成長へも負の影響を与えたと考えております。

 続きまして、スライド右側の2019年の見通しのポイントについてお話いたします。結論はですね、2018年と同様、緩やかな経済回復基調が継続するという見通しではございますが、背景が若干異なります。

 まず成長ドライバーですが、昨年は世界経済の好況に支えられた経済成長を想定しておりましたが、本年はブラジル自体のファンダメンタルの改善に牽引された成長を想定しております。2019年の世界経済の成長は減速する見通しであり、ブラジル経済にも相応の影響が出ると想定されます。昨年比、厳しい外部環境が想定される一方で、ブラジル経済のファンダメンタルは相応に強く、短期的な脆弱性は低くなっており、循環的な景気回復局面にあると考えられます。

 続きまして、リスク要因ですけれども、2018年と2019年ではリスクの質が若干変容していると考えています。2018年は、大統領選後、次にどのような政権により、どのような政策が進められるかというところが判断できない、きわめて不透明な環境でございましたが、2019年は政権も政策も相応に明確になったことから、政策そのものに対するリスクは後退し、政権による政策の実行力がリスクとして意識されるようになりました。したがいまして、2019年ですね、ブラジルが力強い経済成長を実現できるか否かを見通す上で最も注視すべきリスク要因は、今は新政権の年金改革をはじめとした政策の実現力に変わったと考えております。

 新政権が掲げている各種政策は、ブラジルの中長期的な潜在成長率を押し上げ、持続可能な成長を可能にすることにつながると考えられるものが多く、マーケットにも支持されております。同政策が実現できるとですね、ブラジルの経済成長を力強く後押しする追い風ともなり得ますが、反対にですね、政策の実現力に疑義が生じるような場合は、今の期待が不安に変わり、ブラジルの経済成長にとって逆風となる可能性もあると考えています。議会での年金改革法案の協議状況等、政策の実現状況をですね、一定のマイルストーンを置いて確認できるようになったことですね、確認することである程度先行きを見通すことが可能になったという点は、昨年と比較して改善した点と考えております。

 それでは続きまして、ここからは具体的な数字を追いながらご説明をさせていただきます。次のスライドは2012年以降の主要経済指標の推移と予測についてまとめております。次ページ以降ですね、一つ一つの計数についてはご説明いたしますので、ここでは説明を割愛させていただきますが、各指標とも2019年は改善するものと見込んでおります。次のページは、GDP成長率について推移をグラフにしたものです。

 2003年から2010年にわたる8年間のルーラ政権においては、リーマンショックの影響を受けた2009年を除いて、概ね年率3%から7%の安定した成長を遂げました。しかしながら、ジルマ政権では徐々に経済が減速、過剰な景気刺激策の反動もあり、2015年、2016年の2年間は景気後退となりました。2016年の大統領弾劾、政権交代を経てですね、2017年、テメル政権の下、緩やかな回復基調に戻りましたが、景気後退期の2年間、合わせて7%のマイナス成長分を打ち返すには至っておらず、景気後退前と比べると完全には経済は戻っておらず、依然として回復の途上にあると考えられます。

 2019年の予測値、2.8%と置かせていただいているんですけれども、こちらの予測値は、年金改革が採択されることをある程度前提とさせていただいております。2019年の前半は昨年と同程度の緩やかな経済成長を見込んでおりますが、まあ年金改革法案にある程度目鼻が立ったですね、年後半以降に、本格的に経済が加速していくのではないかというふうに予測しております。

 続きまして、経常収支です。労働者党政権下、積極的な財政、金融政策の下、内需拡大を図った結果、特に2007年以降のルーラ第二次政権以降ですね、赤字幅が拡大し、2014年には1000億ドル、GDP対比で4.2%の赤字を計上いたしました。一方で、2015年以降はですね、政府支出を抑えたことによってですね、過度な景気刺激策等の効果も剥落し、景気後退にも至ったというところがありますけれども、経常収支だけを見ると、経常収支の赤字幅は大幅に減少いたしました。今後、順調に経済成長が力強さを取り戻した場合は、経常収支の赤字幅が徐々に増えてくることも予想されますが、テメル政権以降ですね、政府予算に上限を設定しているということから、過度な政府支出を伴う景気刺激策等が採られる可能性は低い状況でございますので、当面はこの経常収支については健全な水準で推移すると考えております。

 続きまして基礎財政収支です。2013年までは黒字を維持しておりましたが、2014年あたりから景気減速の影響で税収が伸び悩み、支出のコントロールも中々難しく、赤字に転じ、そのまま現在に至っておる状況です。テメル政権の時にですね、歳出上限法の施行等、支出の抑制、財政規律の回復を図る取り組みを進めたことや、緩やかではあるものの景気が回復基調にあることを受け、徐々に赤字幅は減少傾向にございます。歳出上限法にてですね、支出のキャップですね、支出のコントロール自体はできる形になっておりますので、新政権のリーダーシップの下、年金改革法案が可決され、中長期的なブラジル経済の成長に必要な政府のインフラ整備等への予算が確保できるようになれば、経済成長が再び加速し、中長期的には基礎財政収支の部分もプラスに転じることが期待できるのではないかと考えています。

 続きまして、失業率の推移です。ルーラ政権下では失業率は低下基調にございましたが、2015年からの景気後退を受けて雇用調整局面に入り、失業率が11%から12%台の高い水準となりました。2017年後半以降ですね、雇用環境は若干ですが改善傾向にはございますが、引き続き高い水準となっております。失業率は経済成長の変化に少し遅れて反応する傾向がございますので、景気後退前までの水準への回復は相応に時間が要する見込みでございます。

 続きまして、消費者信頼感指数でございます。真ん中の青線で示されているグラフが消費者信頼感指数となっております。2015年に最悪の水準を記録いたしましたが、政権交代以降、少しずつ回復傾向にございます。昨年5月から6月にかけてのトラック運転手によるストライキによって、ブラジル経済や社会構造の脆弱性が露呈して以降、一旦減少いたしましたが、大統領選以降急速に回復しており、足元では景気後退前の水準まで戻ってきております。

 注目されるのは、赤線で示された将来への期待感の部分と、灰色、一番下ですね、灰色で示された現状認識の間に大きな乖離が生じていることです。消費者の将来への期待感がきわめて高いことがうかがわれる一方で、現状認識としてはまだまだ本格的な回復に至っていないと消費者は認識しているということが分かります。消費者信頼感指数は消費行動の先行指標とも言われておりますので、今後、実態もですね、少しずつ消費者信頼感指数の水準に近づいていくことが期待されます。一方で、新政権への期待が先行している部分もあろうかと思いますので、引き続き動向は留意が必要と考えています。

 続きまして、CDSですね。ブラジルリスクの増減を表す指標である5年物のクレジットデフォルトスワップと、対USドルのレアル為替相場の推移についてご説明申し上げます。クレジットデフォルトスワップは、2018年は大統領選の年であったことに加え、トラックスト等の影響もあり、不安定な動きとなりました。一時的に高水準となることもございましたが、大統領選後は減少に転じ、2016年の年初に450bpsを超えていたCDSが、足元では169bpsと景気後退前の水準まで戻ってきております。投資適格の新興国のCDSがだいたい130bps程度と言われておりますので、まあ相応にマーケットからの信頼は戻ってきていると考えられます。

 一方で為替につきましてはですね、ブラジル・レアルのボラティリティの高さについてはですね、皆様ご高承の通りかとございますが、過去5年間の推移を見ても、政治経済イベント等の影響を大きく受けて乱高下してきたことが分かります。2018年はブラジルの大統領選挙を控えた政治・経済情勢の不透明感に加えて、米国政策金利の引上げ、貿易摩擦の本格化といった外部要因もあり、レアルに下落圧力がかかり、特にトラック運転手によるストライキの際は、一時的に1ドル=4レアルに近い水準まで下落いたしました。大統領選以降は比較的落ち着きを取り戻し、足元は3.7近辺で推移しております。CDSのみがレアルの変動要素ではないためですね、一概には申し上げられませんが、マーケットからの信用力が高まっていることを鑑みると、今後、少しずつレアル高に進んでいくことが考えられます。しかしながら、年金法案が通らない等ですね、国内の政情不安が再燃するようなことになりましたら、再びレアル下落圧力が急速に高まり、1ドル=4レアルを超えるようなですね、レアル安局面へ突入することも想定されますので、引き続き動向には留意する必要があると考えています。

 続きまして、サンパウロ証券取引所の株価指数の推移です。ブラジルに対する投資家のセンチメントはここ2、3年で改善してきておりまして、トラックスト等で一時的に下振れしたことはあったもののですね、一貫して上昇基調にございます。足元では、歴史的な高値水準を更新し、10万ポイントの大台に迫る水準となっております。市場関係者の中ではですね、年金改革等の政策が実現されるような場合にはですね、12万ポイントに迫る可能性もあるというふうな声も出ておりますので、引き続き相場は堅調に推移するのではないかというふうに見ております。

 続きまして、インフレですね。棒グラフがインフレ率、横に入っている点線がインフレターゲットとなっております。2016年以降インフレを沈静化し、2017年にはインフレターゲットの下限に近い水準になっております。2018年は国内経済の回復、レアルの下落等を背景に、若干インフレ率が上昇。2019年は微増となる見込みです。

 続きまして政策金利の推移です。2016年のインフレ率の沈静化を受けて以来、景気刺激を目的とした金融緩和を進め、足元、6.5%まで下がっております。短期的にインフレ率が大きく上昇する環境にないことから、当面は現状の水準で推移することが見込まれます。

 続きまして、外国直接投資の推移です。外国直接投資は2015~17年まで、ブラジル経済の先行き不透明感が強い中ですね、低い水準で推移しておりました。2018年に景気後退に入る前のですね、2014年の水準まで回復いたしましたが、2019年もまあほぼほぼ同程度の水準となると見られております。

 次のスライド、こちらのスライドは金融部会所属の各金融機関にご回答いただきました、2019年、2020年の予測数値について、予測最大値と最小値というレンジで表記をいたしました。Focusと呼ばれる、100以上のブラジル金融機関の予測をブラジル中銀がまとめた指標トレンドもご参考までに比較しております。

 まずGDP成長率ですが、2019年が2~2.8%、2020年が2.5~3%と、Focusと同様ですね、各行とも緩やかな成長の継続を見込んでおります。一方、年金法案をどの程度織り込むかという点には違いがありですね、金融部会の参加メンバーの中でもレンジが開いている要因となっております。

 インフレ率は2019年が3.8~4.3%、2020年が4%と、概ね政府が定めるインフレターゲットのレンジ内に収まるものと見ております。

 為替レートは2019年が3.6~3.7レアル、2020年が3.6~3.8レアルと、足元の水準で比較的安定するものと見ております。

 年末の政策金利は、2019年が6.5~8%、2020年は若干金融引き締めに動き、7.5~8%へと、緩やかに金利引き上げに向かうものと予測しております。

 続きまして、ブラジル経済に関する金融部会参加社の今後の経済見通しについてコメントをサマリーしたものでございます。

 まず、一項目目のですね、ブラジルが本格的な経済成長に転じる契機となるものは何か?、という問いに対する回答が一つ目です。まずは、構造改革の実行ということで、社会保障制度改革、財政改革、税制改革、政府保有企業の民営化等をどこまで具体的に前に進めることができるかといった点がポイントとなります。かかる取り組みを着実に現政権が実行に移すことを通じて、内外マーケットの信頼を勝ち得、低インフレ、安定的な低金利環境を構築するとともに、本格的な個人消費の回復や企業の投資活動の活発化へつながるものと考えております。

 次の項目は、今後、ブラジル経済に影響を与える外的な要因があるとすれば何か、またどの様な影響か、という問いかけです。米中貿易摩擦やBrexit等の問題を背景に、世界経済の見通しが急速に不透明になってきており、実際に足元の世界の経済成長は減速しております。国際社会の不透明な状況は2019年以降も続くことが想定され、ブラジルへの影響も避けられないと考えております。

 個別国で申し上げますと、貿易、直接投資とも、きわめて重要な割合を担う中国の動向は引き続き注視が必要と考えております。また、本年は隣国アルゼンチンが大統領選挙という年でもございますので、同国の先行き不透明感が強まっております。もし、アルゼンチンの次期政権がマーケットの信認を得られないような場合には、一層の混乱が生じる可能性もございます。アルゼンチンがさらに厳しい局面となった場合は、隣国であり、かつ自動車産業等でもですね、非常に関係の深いブラジルにも相応の影響が出る可能性があると思われます。

 最後の項目。短期、中長期のそれぞれの時間軸でブラジル経済はどのように変化していくと考えられるか、という問いかけです。変化の方向性は以下二つと考えます。

 一つは、各種構造改革を通じて、ブラジルがビジネスフレンドリーな環境へ移行していくことです。政権は各種改革に真摯に取り組む姿勢を示しており、多くの国民は改革の必要性について認識しております。この環境で改革を着実に実現していくことができれば、短期的には市場の信認を得て、経済環境が安定し、本格回復へ移行することが期待できますし、中長期的には、教育、インフラ等への資金が適切に配分されることで、潜在成長率が引き上げられ、持続可能かつ力強い発展につながるものと考えております。

 二つ目は、ブラジルでも高齢化が進んでいくということです。各産業が高齢化社会に適応する中で、IOT、AI等の各種技術革新を通じてですね、生産性を引き上げると同時に、多くの関連する新しいビジネスを誕生させることが期待されます。ブラジルは先進的な発想や技術等を取り入れることには長けており、変革を受け入れる柔軟性にも富んでいると考えられますので、環境変化の局面に立ち向かった際にはその強みを発揮するのではないかと期待しております。

 では、かような変化にどのように備えるか、ということですが、日系企業としては、通常時にはスリムな社内体制を維持しつつも、潮目が変わった時に迅速かつ集中的に人、モノ、金を投下できるようにですね、準備しておくこと。常日頃から本社経営陣ともブラジルの状況を密に共有し、迅速に動けるような明確な戦略・戦術を決めておくことが大切と考えます。

 私ども金融機関といたしましても、適切にお客様の成長のお役に立てるように、世の中の動向を注視するとともに、安定的な資金の供給、的確な金融商品のご提案や、サービスのご提供、情報発信等に努めていくことが必要だと考えております。ブラジル経済動向のご説明はこちらで終わらせていただきます。

 続きまして、銀行業界動向についてご説明いたします。

 まず、貸出残高の推移です。2011年以降、毎年二桁ペースで増加しておりました融資残高合計は、2015年には6.7%と一桁の伸び、2016年以降はマイナスでございました。2018年は、個人向け貸出のみならず、法人向け貸出も回復に転じ、貸出は緩やかながらもようやく回復基調に転じたと考えられます。

 次のスライドは、業界全体における平均貸出利鞘の推移になります。2017年以降は政策金利の引下げや金融機関による審査の厳格化、クレジットポートフォリオの改善等を背景に貸出利鞘は縮小しております。

 続きまして、不良債権比率の推移です。2015年以降、景気後退による企業の資金繰り悪化等のですね、影響を受けて、延滞債権が増加していきましたが、2017年6月以降は景況感の回復に伴い、企業業績も改善に向かい、法人向け、個人向けともに不良債権比率は改善傾向にございます。この不良債権比率の低下ということがですね、金融機関の貸出余力につながるということもありですね、各行とも積極的な融資スタンスを示し始めておりますので、2019年はこれまで以上にですね、本格的にクレジットの回復が期待されるのではないかというふうに見ております。

 続きまして、保険業界の動向です。2018年、2019年の保険市場の動向についてご説明いたします。

 保険料収入ですが、ブラジルの保険監督庁であるSUSEPの統計データによりますと、2016年の1.5%を底に、2017年は4.2%、2018年は6.6%の成長を実現しております。保険市場の成長トレンドがはっきりと見て取れると思います。

  続きまして、保険種目別の保険料収入ですが、生命保険分野ではですね、10%と、引き続き高い成長を維持しております。生命保険のニーズが高まっていること、また、銀行セクターにおける個人融資の回復に伴い、団体信用保険が伸びていることが主な要因と考えられます。2017年にはマイナス成長を記録した自動車保険が、2%と弱いながらもプラス成長に転じております。また、保険料規模としては小さいですが、マリン分野も大きく伸びております。

  次のスライドは、保険種目別の損害率のデータです。全体では損害率が44.7%と、昨年対比2.2ポイントの改善を見ました。しかしながら、この大きな要因は、2018年年初の雨季に降雨量が少なく、水害があまり発生しなかったこと、また、5月のトラック業者のストライキや、6、7月のサッカーワールドカップで交通量が減少したことにより自動車保険の損害率が改善したことです。つきましては、表面的な数値ほどですね、実態は改善していないと思われますので、2019年の動向は引き続き注視する必要があると思います。

 最後のスライドとなりますが、今後の保険市場の成長見通しについてご説明いたします。

 2019年のブラジル保険市場の成長見通しは、損害保険、生命保険、傷害保険ともに引き続き高い成長が予測されています。ブラジルにおける保険の普及率は日本や欧米に比べると低い状況にありますが、中長期的に中間所得者階層が増加いたしますと、保険商品に対するニーズは高まってくると思われます。

 最後になりますが、足元、ブラジル経済はですね、循環的な回復基調にございますと。ございますが、なにぶん諸行無常でございますのでですね、再び難しい局面に直面するリスクは常にあると我々も理解しております。私ども金融機関といたしましてはですね、ブラジルの金融セクターの健全性はブラジルの強みの一つであると考えておりますので、目先の環境変化に右往左往するようなことはなくですね、お客様の事業の発展を一貫して支援できるように、これからも不断の努力を行って参りたいと考えております。長時間にわたりご清聴いただき、ありがとうございました。以上です。

 

司会

 津田部会長、たいへんありがとうございました。よろしければご質問ある方、挙手いただければと思います。いかがでしょうか。じゃあ1点だけ、15ページのところのですね、皆様ご関心あると思うんですけども、為替の予測ということだと思うんですけど、まあ見通しは3.6~3.8ぐらいということで比較的安定していますということなんですが、前回の発表が3.2~3.5ということで、半年前と全く外れていますよねというのはあるんですが、これは確か私の記憶ですと8月下旬に急激にレアルが下落して、取りまとめの都合だったというふうに記憶していますので、ただまあ一方で色んな事があるので、皆さん色んな情報を集めていただくのがいいのかなということが気付いた点。それと1点だけ、これは全て共通すると思うんですが、年金改革の、いろいろこれは見通しがありますけども、どのような前提で見通しを立てておられるのかというところだけ1点お知らせいただければと思うんですが、いかがでしょうか。

 

津田部会長

 ブラデスコとしてはですね、年金改革の程度にですね、まあいくつか段階があると思っているんですけれども、テメル政権の時に掲げていた年金改革案が大体真ん中ぐらいのレベル感の年金改革案で、いまボルソナロ政権下で提出された年金改革案というのは結構踏み込んだ内容のものになっていると考えておりまして、一方で、テメル政権がいろいろ譲歩して最後に出した年金改革法案というのが、かなり、まあ内容としては中身の薄い内容となっているというふうに見ているんですけれども、この3つある中では、ちょうど間をとったぐらいのですね、まあある程度国民としても受け入れやすいレベル感の年金改革法案が、今提出しているものほど踏み込んだ内容ではないものが通ったという前提で私どもは予想値を作っております。

 

司会

 はい、ありがとうございました。では、ご質問がないようでしたら金融部会からのご発言をこれで終了とします。たいへんありがとうございました。

 それでは、続きまして貿易部会の方からお願いいたします。猪股部会長、よろしくお願いいたします。

 

貿易部会

猪股淳 部会長

 高い所から失礼いたします。貿易部会の部会長を務めさせていただいております、伊藤忠商事の猪股でございます。早速ですが、18年の回顧と19年の展望ということについて説明させていただきます。

 まず、最初にですね、貿易額の推移でございます。前回同様ですね、半期ごとの貿易額の推移を示しております。左側の青い棒グラフが輸出額。右側の緑色の棒グラフが輸入額。また、この折れ線グラフが貿易収支を表しております。

 2017年のブラジルの貿易収支は、これは半期ごとですけども、通期で670億ドルの黒字ということでありましたが、18年につきましては、貿易黒字は通期で587億ドルということで、貿易収支は縮小いたしました。しかしながら、輸出額、輸入額ともにですね、上昇しておりまして、2016年の上期を底といたしましたところから、まあ回復基調が続いているのではなかろうかというふうに見ております。

 為替につきましてはこの下段に書いておりますが、17年の期中の平均は3.18レアルと。一方18年につきましては、為替の動向については皆さんご存じの通りでございますが、平均で3.68レアルということでございました。

 続きましてブラジルの輸出でございます。商品別に記載しております。輸出総額を見てまいりますと、金額ベースでは10.2%の増加。数量ベースでは2.3%の増加ということでございます。で、ここには数字を記載しておりませんけども、直近10年のピークでありました2011年、これ2560億ドルだったんですけども、ここに次ぐ輸出額ということでございます。

 輸出額の構成比ではですね、相変わらず一次産品が全体の49.7%を占めているということでございまして、国際市況に大きな影響を受けるという輸出構造は相変わらずでございます。

 一次産品につきましては、前年比18.1%、数量プラス4.5%増ということでございます。この中で金額構成が一番大きい大豆でございますが、大豆は金額で29.1%、数量で22.7%の増加でございました。金額を見てみますと、大豆は中国向けの輸出がこの大豆輸出の実に82%を占めたというのが18年の状況でございます。17年は79%でしたので、まあ中国向けの輸出が非常に大きいんですけども、17年からさらに伸びているということでございます。

 半製品を見てみますと、金額、数量ともに落ち込んではいるんですけども、非常に高い好調な国際市況を示しておりました木材パルプはですね、金額で31.6%、数量も10.6%という伸びを示しております。

 工業製品の中ではですね、まあ数量は落ち込みましたが、金額ベースではプラスと。中でも燃料油、いわゆるディーゼルオイルですね、が金額、数量ともに伸ばしまして、ご覧の通りの数字になっているということでございます。

 続きまして、向け先別の輸出でございます。輸出額の増加率が大きい国はちょっと分けて囲ってあるんですけども、やはり中国向けの伸びが大きく、35.2%前年比増ということでございます。17年と比べまして金額も大きく伸びておりまして、輸出の構成も5%伸びているということで、やはり米中貿易戦争によってブラジルの輸出における中国の存在感が増えた結果であろうというふうに見ております。

 対日輸出は、前年、17年は5位だったんですけども、18年は9位ということで、減少率はここに記載しております10ヶ国の中で最も大きく、マイナスの17.6%という状況でございます。

 続きまして輸入でございます。また商品別なんですけども、輸入総額は金額で前年比プラス20.2%、数量が2.3%増ということでございます。増加が目立つ品目としましては、一次産品では原油、それから小麦でございます。半製品ではアルミニウム、まあ金額的にはそんなに大きくはありませんけどもアルミニウムが40%増と。それから色々な合金関係が54.6%増という状況でございました。

 続きまして国別・地域別の輸入でございます。中国は2017年の下期にアメリカを抜きましてトップになりましたが、18年も27.1%輸入額を伸ばしまして、引き続き1位を維持するという結果になっております。一方日本を見ますと、日本は15.8%の増加で9位ということになっております。

 続きまして、日本の貿易に焦点を当てて説明させていただきます。左側が輸出でございます。輸出は前年対比で17.6%のマイナスということでございます。まあ全体はマイナスではあったんですけど、増加率が高い品目を見てみますと、大豆、木材パルプ、オレンジジュース、大豆かす等が挙げられます。減少率が高かった品目としましては、鶏肉、アルミニウムというのが挙げられます。鶏肉につきましては、まあ2017年に発生いたしました食肉のスキャンダルの影響がまだ引き続き残っているんだろうというふうに見て取れますし、アルミニウムにつきましては、これは一例ですけども、日本のナショナルプロジェクトでありますアルブラスという会社がございますが、これは新聞報道にもあったんですけども、原料のアルミナの調達にちょっと支障をきたしました関係で生産量減少と。それがそのまま輸出減につながったという側面はあるかというふうに考えております。

 続きまして輸入でございます。日本からの輸入でございますが、こちらにつきましては15.8%増加ということになっております。増加率が大きかったのは自動車、トラクター部品、乗用車。金額比は小さいんですけども、金属用のマシニングセンタとか工作機械がですね、非常に大きな伸びを示しているという状況でございます。

 続きまして直接投資でございます。左側のグラフは2011年からの直接投資額の推移を示しております。このグラフでいきますと、2011年が通年で695億ドルということで非常に高い数字だったんですけども、以降減少。ちょっと14年から持ち直したんですけども、18年につきましては13年を下回る、このグラフの中では一番低い結果ということになっております。やはり18年は、年初は期待感もあったんですけども、期中トラックストがございましたり、まあ大統領選を取り巻く不透明感がありまして、全体的に投資が抑制されたのではなかろうかというふうに見ております。また、各国別に減少で見てみますと、アメリカが33%減ということで昨年の1位から2位に落ちているということでございます。日本はですね、順位は12位ということですが、17年から比べますと109%ということで、増加率は伸びているという状況でございます。

 続きまして業種別の直接投資でございます。やはり一次産品が45%ということで伸びております。ただし金額構成比の大きい工業、あるいはサービス業というのは減少しております。サービス業につきましては41.6%の減少ということでございますが、その中でも金融、同補助サービスという項目が117.3%の増加。またITサービスが169.5%の増加ということで、増加率が目立っているという状況でございました。

 続きまして、日本からの直接投資でございます。これは10年間をプロットしておりますけども、10年間では2011年が最も直接投資額が大きく、14年以降は減少しておりました。18年は17年比で回復は見せましたが、まあ2倍以上伸びているんですけども、これグラフを見ていただくと分かる通り、依然低いレベルの直接投資であったということが言えると思います。

 続きまして、2018年の回顧でございます。これは先程ご説明ありました通り、18年の成長率は1.1%ということでございます。確定値待ちというふうに本表には記載させていただいておりますが、本日の報道によりますとこの1.1%が確定値ということになっております。まあ18年の年初はやはり経済成長への期待感があったわけですけども、途中から、まあ色んな不透明感と、一言で言ってしまいますけども、等々でですね、この期待感からは大きく落ち込む結果になったのではなかろうかというふうに考えております。

 為替につきましては、8月のシンポジュームの時点ではですね、18年の年末の為替をまあ3.7レアルというふうにお話しさせていただきましたけども、やはりその後、大統領選動向とかですね、米中貿易戦争、トルコショック、等々がございました関係で、安く推移しまして、年末は3.9ということで終了したという状況でございました。

 続きまして19年の展望でございます。19年につきましては、ボルソナロ政権が目指す財政改革、それから経済活動の自由化拡大、国営企業の民営化が、うまく進みますと、経済はやはり成長が期待されますし、我々日本企業としましても投資のチャンスが生まれてくるのではなかろうかというふうに考えております。

 このような前向きな経済環境の中で、GDP成長率につきましては、まあ18年の1.1%を上回りまして2.5%の成長は期待できるのではなかろうかというふうに見ております。実際、2月15日の中銀のアンケート結果を見ますと、2.48%の成長と。また1月21日のIMFの見通しでは2.5%という予測になっておりますので、まあこのぐらいの成長率が現段階では期待できるんだろうというふうに考えております。

 為替レートにつきましては、まあブラジルの金融政策に大きな変更はないというふうに考えております。足元は3.73レベルで推移しておりますけども、19年の為替レートは現時点では3.5から4の間というふうに我々としては考えております。まあアメリカの金利政策がですね、金利の上げ止まりというんですかね、というような状況が言われております。また、ブラジル経済の成長も期待されております。為替市場はこういうことはもう織り込み済みだというふうには思いますが、そういう中での3.7台、足元の推移ですので、やはりこのレベルを中心に動いていくと現時点では考えるのが妥当なんではなかろうかと。逆にこのレベルの推移で、我々の経営計画であったり、事業計画であったりというのを立てていくのがやはり妥当なのではなかろうかというふうに考えております。

 一方、国外に目を転じますと、ブラジル経済に影響を与えるようなアメリカ、ヨーロッパ、中国の景況感の悪化、米中貿易戦争、アメリカの内政やBrexitですね、等々、実際、経済動向に不透明感がない時はないと思うんですけども、ブラジル経済に影響を与える不透明感はやはり依然残っているというのがブラジル国外の状況ではなかろうかというふうに見ております。

 最後でございますが、まあ今回の副題であります「成長への期待、変化への対応」ということで、貿易部会としまして部会の各社の皆様にアンケートを取りました。この各社様の意見、アンケート結果をですね、簡単に取りまとめておりますので、皆様これを参考にしていただければというふうに思っております。以上でございます。

 

司会

 猪股部会長、ありがとうございました。ご質問、ぜひよろしくお願いいたします。多少時間が前倒しになっていますので、ご遠慮なくお願いできればと思うんですけど。すみません、進行の腕がなくて申し訳ありません。35ページのですね、もしお分かりになれば、今更なんですけども、オランダというのは輸出が非常に多いということなんですが、これ何か特徴的なものがあるんでしょうか。

 

猪股部会長

 このオランダからの投資の内訳というのは実は把握できておりませんで、ただですね、要は税務上の問題で、オランダを経由した投資がやはり増えているのではなかろうかなと。だから実態として、オランダからの投資というよりは、オランダを経由した投資というのが実態なのではなかろうかというふうに思います。

 

司会

 輸出もそうなんですかね。

 

猪股部会長

 輸出も、だから、輸出のインボイシングというんですかね、それで結構オランダとかルクセンブルグとかを使って輸出するブラジル企業は多いかと思います。

 

司会

 分かりました。他、よろしいですか。では野口総領事、ありがとうございます。マイクをお願いします。

 

野口総領事

 どうもありがとうございます。先程の質問と関連するんですけれども、投資をしている国のリストでですね、私もよく質問を受けるんですけれども、中国が入っていないというのがあって、これは先程も言われたように、色んな国を経由して入ってきているのではないかという見方もあるんですけども、そこについてはどういうふうに、理解といいますか、まあ対外的に説明したらいいのかというのを、お分かりだったらちょっと教えていただければと思っています。そういう第三国を経由した投資、要するに中国は色んな、電力セクターとか、そういうところでブラジルにも非常に多額な投資をしているというふうに報道をよく見聞きするんですけども、他方で国別の対内直接投資では中国という名前は出てきていない訳ですけども、そこらへんはどういうふうな形で中国の投資というのをこの表から読み取ればいいのかということですね。そういうところをもしお分かりだったら教えていただければと思います。

 

猪股部会長

 この中でですね、いわゆる投資を、経由国で、オランダ、ルクセンブルグ、バハマもそうですしケイマン、バージンというのは、やはり税務的な恩典がある国で、ここから中国を抽出するのは難しいと思うんですけども、実際その、色んな新聞発表とか見ていますと、やはりこれらの国の過半のお金の出元は中国なのではなかろうかというふうには考えております。

 

司会

 はい、ありがとうございました。他、よろしいですか。はい。それではこれにて貿易部会のご発言を終了とします。たいへんありがとうございました。

 それでは続きまして、機械金属部会、植田部会長からよろしくお願いいたします。

 

機械金属部会

植田真五 部会長

 皆様、こんにちは。ブラジル三菱重工の植田でございます。機械金属部会長を務めさせていただいております。当部会は多岐の事業分野に携わる、機械および金属に関連するメーカーならびに商社の方々を中心としたメンバーで構成をされております。本年2月現在で50数社の皆様に代表者として登録をしていただいております。

今回のシンポジュームでの発表にあたり、事前に各社の状況に応じてレポートをまとめていただきました。また、2月11日の月曜日には部会を開催して、情報および意見の交換を行いました。本日はその内容を発表させていただきます。

 まず私の発表の構成でありますけども、当部会の事業環境に関係するマクロ指標を説明させていただきます。続いてセグメント別に、鉄鋼、電力、建設機械、自動車およびその他の産業、オイル&ガス、ならびに紙パルプの状況を説明させていただきます。まとめ方は、昨年8月に開催された2018年下期のシンポジュームの時と同様でございます。最後に副題である「成長への期待、変化への対応」ということで部会メンバーの意見を紹介させていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

 それでは、マクロ指標ということで、最初はブラジル工業生産の状況をグラフにまとめたものであります。これはブラジル地理統計院の資料です。2014年以降2018年末までを示していますが、ご覧の通り、2014年、15年、16年はマイナスが続いて、中でも15年と16年は、先程もありましたけれども、GDPのマイナス成長という非常に厳しい時期でありました。多くの企業の方々が大変苦労され、景気の回復を強く望んでいた時期でありました。

2017年に入ってプラスに転じ、18年もそれが継続すると期待をしておりましたが、5月に大きなマイナスとなりました。これはトラック運転手のストライキの影響であると理解をしております。その後、年末にかけてマイナスが続いておりますが、これは大統領選挙の前後、さらには新政権発足までの様子見ということが表れている結果だというふうに理解をしております。

 次は土木建設指数を示したグラフです。これもブラジル地理統計院の資料でございます。2012年を100として、その後の推移を折れ線グラフで示しています。それぞれの年ででこぼこはありますが、傾向としては2017年に向けて低下が続き、2017年で底を打ったものの、その後上がったり下がったりということで、安定しているとは言い難い状況だと思います。

 我々の部会が深い関心を示している設備投資意欲も全体としては戻りきっていないという意見も多く出されました。ただ、これまで手を入れることができなかった生産設備の老朽化対策としての更新需要等、一部に光が見え始めている業種もございます。新政権が発足して、さあこれから、という時に、ヴァーレの鉱山ダムの決壊や、大統領の子息に対するスキャンダル等、不安な部分もありますが、機械金属部会としては、何か変えてくれるだろうというボルソナロ大統領への期待感が具体的な表れとなり、経済の活性化につながることを強く願っています。

 ここからはセグメント別の状況を説明させていただきます。

 まず鉄鋼でございます。ブラジル鉄鋼協会がまとめている数値を使っています。左上に2014年から18年までの年間の粗鋼生産推移を示しております。その右側に昨年の粗鋼生産、国内販売、輸出を示しています。

 左のグラフから、2016年に底を打った後、17年に大きく改善をして、2018年も引き続き対前年比で増加いたしました。昨年8月の時点では、5月のトラック運転手のストの影響で減速が大きいのではないかと心配をいたしましたが、結果は若干ではありますが前年を超えることができました。

 また、国内販売は回復をしてきた自動車業界の牽引により増加傾向が続き、対前年比8.2%の増加となりました。

 輸出については対前年比で減少傾向が継続し、最終的には4%のマイナス。輸入は国内景気の回復により3.3%のプラスとなりました。

 2019年の展望といたしましては、景気回復に期待を寄せつつも、そのスピードは依然緩やかな見通しという状況下、自動車、機械設備ならびに建設部門での鋼材需要が復活してくると予想をしています。一方で、米国の通商拡大法232条の影響や、EUのセーフガード措置といった保護貿易に対する懸念は払しょくできない状況です。

 しかしながら、長い目で見れば、ブラジルの一人当たりの粗鋼消費量はまだまだ低く、今後の伸びしろは大いに期待できると認識しています。さらに、自動車分野での軽量化、EV化、環境対応等、鋼材需要分野における質的な変化も含めてビジネスチャンスの期待をしています。

 続いて電力です。こちらはエネルギー研究公社の資料です。左の棒グラフが2014年から昨年までの電力消費量の推移。右の棒グラフが2018年の電力消費の内訳を示したグラフです。

 2018年の回顧といたしましては、2017年に前年を上回る消費量となり、続いて昨年も対前年比で1.1%増加したということで、回復基調が続いておりまして、過去最高だった2013年、14年のレベルに近づいてまいりました。この資料の中には含まれておりませんが、昨年の電力オークションの結果を見ますと、風力や太陽光といった再生可能エネルギーによる発電が占める部分が多く、発電単価を大きく下げて増加しているという状況であります。昨年の5月時点では、前年同月比で、トラック運転手ストはあったのですが、まだその影響は出ていなかったのか、2.9%の増加を示しています。

 2019年の展望としては、汚職にまみれた旧労働者党政権下の政治経済の混乱から脱却し、堅実な経済成長を期待する中で、エレトロブラスの民営化や、PPIによる民間資金を利用したインフラ投資の拡大等、新政権の具体的取り組みの行方を注視しつつ、経済が回復した時に取り残されぬよう準備をしていく必要があると思っています。

 当部会関連企業が関係するバイオマス関連の新規案件の動きは依然低調でありまして、紙パルプや製鉄といった業界の業績回復が見られるので、これらの分野での新規プラントの受注や大型メンテナンス案件の具体化を期待しております。

 次に建設機械に関してです。これは2012年を100とした建設機械の生産実績を示す折れ線グラフであります。この資料からも、2017年まで生産の減少が続き、その後回復傾向にあるという推移をご理解いただけると思います。

 2018年の回顧といたしましては、国内販売は前年比プラス47%と、当初予想であった8%を大幅に上回る伸びを見せました。その理由としては、まずレンタルや農業向けが好調であったことが挙げられます。さらに言える事は、落ち込みが心配された選挙から年末にかけての時期に官公需が好調で、建設機械需要を下支えしたことがございます。そして、長年にわたった景気低迷による建設機械の需要減少が底を打ったと感じることができる点であります。

 続いて、今年の展望といたしましては、国内では昨年好調であったレンタル関係はその勢いを維持すると期待していますが、昨年後半の需要を下支えした官公需の落ち込みを懸念しています。

 一方、輸出に目を向けますと、米国経済の先行き懸念や米中摩擦の悪影響を受ける可能性も高く、予断を許さない状況と認識しています。

 しかしながら、もう少し長い目で見ますと、新政権による民営化をツールとしたインフラ整備の再始動の予感もあり、新技術、イノベーションを含めて一気に景気が加速する可能性もあるので、流れに遅れないための準備と構造強化を着実に進める必要もあると思っています。

 続きまして、自動車その他の産業関連セグメントです。資料としては、左下に自動車生産協会がまとめた自動車生産台数の棒グラフを、その上にブラジル地理統計院が発表したその他機械の生産動向、これは2012年を100とした指数で表した資料を準備いたしました。この資料からもお分かりいただけるように、上のグラフが示す当部会メンバーが関連している製品の生産動向の傾向は一定しておりません。したがって、当部会のメンバーが関わっている分野の状況を一口で語るのは非常に難しいところがございます。このグラフを参考にしていただきながら、当部会メンバーが実際のビジネスを通じて感じている点を中心に、昨年の状況と今後の展望を紹介させていただきます。

 まず切削工具に関してです。この製品の主力ユーザーは自動車産業であります。この自動車産業は長いトンネルからようやく抜け出し、回復傾向が鮮明化していることはこれまで申し上げてきた通りです。この自動車産業に加えて、農業、金型分野、航空機ならびに医療分野といったところも堅調に推移している状況下、切削工具の需要は昨年に続き今年も回復傾向が継続するものと期待しています。

 次に、回転機械において重要な部品となるベアリングでありますが、自動車の状況を連動して需要は回復傾向にあります。不安要素としては、お隣のアルゼンチンの経済混乱による同国向け自動車輸出の減少で、ブラジルの自動車産業が悪影響を受けて順調な回復に水が差されることであります。

 金属加工油剤や潤滑油に関しても、自動車産業の影響を受けてベアリングの同様の状況であると言えます。不安材料としては、ブラジル通貨であるレアルが安くなり、または原油価格高になることで、輸入原料の材料が急上昇することです。

 小型ディーゼルエンジンにつきましては、昨年は5月に発生したトラック運転手のストライキの影響で約1月間販売ができず、その機会を逸してしまった時期がありました。今年は輸送車両用の冷凍機や農業機械向けといった需要に対して、日本製の多気筒エンジンを中心として販売の回復傾向が続く見込みであると予想をしております。

 トラクター分野に関しては、2018年は前年同期との比較で105%と、2年連続の増加を示しました。2019年は農作物の収穫は概ね良好と予想されるものの、最大の輸出国である中国の経済動向とボルソナロ政権の対中政策を注視する必要があると思っています。販売全体としては昨年並みか若干上回るものと予想しています。

 ポンプに関しては、2018年は農業や一般産業向けが好調で、一昨年対比で増加するものと見込んでおりました。今年についても、新規投資や省エネ目的による設備更新需要により、業界として回復基調が維持されることを期待しております。

 プラント向けの制御機器関連としては、2018年は経済成長がプラスに転じたことを背景にしまして、ここ数年低調な推移を見せていた石油、石油化学、紙パルプや鉄鋼といった業種で既存設備の更新需要が増加したと感じています。また、石油・ガスの上流工程や、紙パルプ業界では新規投資も復活してまいりました。今年もこの傾向は継続するものと期待しています。ただ、製鉄業界においては既存設備の更新や最新鋭化といった動きは各社によって異なるので、しっかりと情報を入手して、臨機応変な対応が求められると思っています。

 移動式クレーンやレーザー切断機は依然として厳しい状況が続いておりまして、2019年もまだ種まきの時期であると認識しております。

 最後にオイル&ガスと紙パルプセグメントの状況です。資料としては、ブラジル地理統計院の石油製品、紙パルプの生産実績を、2012年を100とした指数で表したものを準備いたしました。石油製品の生産実績は赤の折れ線が示しています。

 2018年の市場の動きといたしましては、ペトロブラス社がコア事業である石油・天然ガスの開発や生産に資本を集中する中で、GDPのプラス成長は年初からの原油価格上昇を背景に、洋上の生産貯蔵設備であるFPSOの新規建設に対する期待感が高まりました。その一方で、内需に関わる下流の石油化学分野では投資は減少するという傾向にありました。

 2019年に目を向けますと、昨年末に発表されたペトロブラス社の5ヶ年計画において年間3隻のFPSOの建設計画が含まれており、需要拡大の期待が増しています。ただし、石油価格は昨年末より原油安に転じており、予断は許されない状況と言えます。

 紙パルプの生産実績は青い線が示しております。昨年は5月のトラック運転手のストによる一時的な影響はありましたが、パルプ需要全体の拡大により生産・輸出とも対前年比で増加する結果となりました。今年につきましても、紙パルプの大手企業が中規模のプラント建設計画を発表しており、ビジネスチャンスの拡大に期待をしております。

 以上、当部会を取り巻く環境について、2018年を振り返り、また2019年を展望いたしました。最後に、副題である「成長への期待、変化への対応」ということについて部会メンバーの見方を紹介させていただきます。各位から提出していただいた内容を部会長として私がまとめさせていただいたものです。

 これまで説明申し上げた通り、われわれ機械金属部会としては経済の回復は実感し、一部で業績回復に反映されているところはあるものの、ボルソナロ新政権の各施策の具体化が待たれる状況下、引き続き不安も払しょくしきれないということだと思っております。その中で、1.期待要素とポテンシャル、2.不安要素、そして3の変化への対応という、この3点にまとめてお話しをさせていただきます。

 まず、期待要素とポテンシャルでありますが、より鮮明な経済の回復と、民間主導、あるいは貿易拡大政策に大きな期待とポテンシャルを感じています。具体的な内容でいいますと、鉄鋼分野のところでも申し上げました通り、ブラジルの一人当たりの鋼材消費量は依然低位にあり、まだまだ伸びしろがあると期待できることや、ペトロブラスの設備投資計画が増加する中でのビジネスチャンスです。

 その半面で不安要素もあります。各種の改革や規制緩和にはとても時間がかかることは過去の歴史が証明しています。そして、期待感で膨れ上がっているボルソナロ新政権の実力はまだ未知数であることも、不安要素と言えばその通りです。それを考えますと、我々機械金属部会メンバー企業の業績を大きく左右するインフラ、建設市場の本格回復は今年ではなく、来年、2020年以降となるのではないかということも念頭に入れて事業運営をする必要があります。アルゼンチンとブラジル以外の南米諸国の景気動向や、米国の保護貿易の拡大がどこまでいくかという心配も現実的に存在します。

 それでは、我々としてこの変化にいかに対応するかでありますが、あまり前のめりになるのではなく、今年は新しい政権の力量を含めてその成り行きを見極める年と位置付けて、不安要素に伴って生じるかもしれないネガティブサプライズに備えた取り組みを継続しつつ、景気動向にかかわらず、持続的に成長して利益を出し続ける強固な企業体質を構築することが肝要であると思っています。

 その具体策としては、積極的な人材投資、または生産性向上と教育によるものづくりの強化といった地道な活動が例に挙げられると考えておりますが、各社おのおののサイズや実力に応じ、身の丈に合った諸対策を講じる必要があるというふうに思っております。

 ご清聴ありがとうございました。

 

司会

 はい、植田部会長、たいへんありがとうございました。ご質問ある方、挙手をいただけますでしょうか。よろしくお願いします。

 

発言者

 ありがとうございました。丸紅の藏掛です。建設機械のところなんですけども、鉱山向けですね、マイニング関係の今年の需要についてはどういった見立てでしょうか。

 

植田部会長

 私、細かなその数字を手元に持っていないので、適切な答えにはなっていないのかも分かりませんけども、やはり景気が回復してくると、ブラジル経済を支えている鉱山分野はですね、伸びてくると。したがってそれに必要な建設機械というのはですね、現在彼らが持っている設備をしっかりメンテナンスしていくという活動に加えて、新しい機械も需要は出てくるものだというふうに、一般的な期待は持っております。

 

発言者

 ありがとうございました。

 

司会

 ありがとうございます。他、よろしいでしょうか。ご質問のある方は挙手をいただければと思いますが。

 

発言者

 こんにちは。2019年にブラジルでどの部門が最も有望かということについて、どのような見通しをお持ちでしょうか。

 

植田部会長

 はい。質問どうもありがとうございます。私の今日の発表の中でも申し上げたんですけども、機械金属部会、非常に多くの業種がありまして、今回、部会を通して意見交換した中ではですね、やはり、早く、そういう意味で数字が上がって来るのは切削工具の分野だというふうに思っております。とにかく工場を稼働する時に、そういった消耗品をしっかりと補充していくというのは重要なことであると考えておりますので、その点は早いと思っております。

 

司会

 よろしいでしょうか。他、ご質問のある方おられますか。はい。それでは植田部会長、たいへんありがとうございました。それでは続きまして自動車部会の方からお願いいたします。下村さん、よろしくお願いいたします。

 

自動車部会

下村セルソ 部会長

 皆さんこんにちは。自動車部会の下村と申します。私から自動車部会の報告をいたします。今回は、去年の振り返りと今年の展望などについて、二輪、四輪の順に説明いたします。

 まずは、始めに四輪の振り返りです。新車市場についてです。14年以降大きく縮小していますが、16年から回復しました。18年は257万台、前年比115%と大きく伸びました。経済回復と金利低下が消費者の需要を押し上げました。

 続いて月別の販売台数です。去年の販売は、トラックドライバーストライキがありましたが、それでも前年より良く、前年比14%増えました。後半は大統領選挙など心配な要素もありましたが、前年比115%増えました。

 次に生産と輸出です。18年の生産台数は288万台でした。国内市場が好調でしたが、アルゼンチン向けの輸出が減ったため、前年より少し増えるにとどまりました。輸出台数については、主な輸出国アルゼンチンの市場が縮小し、前年比82%でした。

 次に、新車・中古車別の市場です。このグラフから、中古車は横ばいで、新車所有が伸びている事が分かります。中古・新車トータルで1300万台を超え、順調に伸びています。

 続いてブランド別の台数とシェアです。フォルクスワーゲン、VWですね、新型Poloが好調で、前年比でシェアが2%増え、大きく成長しました。日系メーカーは、販売台数を伸ばしながらも、生産制約などからシェアを少し落としています。ただ、ここ数年のトレンドを見ると、Fiatなど欧米メーカーが台数シェアをかなり落としましたが、日系メーカーが台数シェアを伸ばしています。

 次に今年の展望です。こちらは2019年の予測です。自動車市場は経済回復に伴い引き続き拡大するものと見ています。生産も314万台で前年比9%増、輸出は59万台で前年比減と見ています。これは先程言ったアルゼンチンの市場が減るためです。

 続いて長期展望です。長期展望としては、重要なテーマはこちらになります。ブラジルの自動車産業の長期指針で、競争力強化に関わるRota2030、大気汚染防止のための排ガス規制、将来のビジネスモビリティであるモビリティサービス、そしてモノ・人の流れを変えるFTA。本日はこの4つを説明いたします。

 自動車政策については先回のシンポジュームで7月に発表された内容を説明しました。内容をおさらいすると、優れた技術の現地化に向けてR&Dとエンジニアリング投資が強化され、燃費改善やセーフティなどの技術の導入が促進されます。新たにサプライヤー育成プログラムも入っています。

 その後、12月に法令として正式に発効されました。インセンティブの対象や基準はブラジルでビジネスをする上で重要であり、日系メーカーが競争力のあるビジネスを展開できるように政府に働きかけていきたいと思っています。

 続いて排ガス規制です。去年11月、環境省の委員会で、2022年、2025年以降の排出ガス規制の大枠が決まりました。ブラジルの自動車メーカーにとって、規制導入のタイミングがとても厳しいので、販売できなくなる車種が出てくる可能性があります。これを避けるためには、規制導入のタイミングが現実に即したものになるよう政府に働きかけることが大事です。

 現在、グローバルでは自動車業界が100年に一度の大変革期を迎えていると言われる通り、Connected、Autonomous、Shared、Electricの流れでブラジルにも来ています。シェアリングやエレクトリックについては各社が実証実験を進めており、今後成長する分野を見据えて、業界を超えたプロアクティブな取り組みをしていく必要があります。

 日本では米国とのタッグ、協定や、東アジアにおけるRCEPが注目されていると思います。日メルコは、経済規模でGDP約8兆ドル、約4億人の大規模な経済圏であり、今後さらに成長する市場であることを考えると、日本にとても重要な市場だと思います。自動車部会としては、日メルコEPAの早期交渉開始に向けた活動を後押ししていきたいと考えております。

 続いて、日系ブランドの対応について説明します。先程話したように、Rota2030については、インセンティブを活用するため、今後発行される細則をしっかり見ていく必要があります。Proconveについては、規制導入のタイミングが現実に即したものになるよう、政府や関係機関に働きかけていくことが大事です。また、今後拡大するモビリティサービスを見据えて、業界を超えたプロアクティブな取り組みをしていく必要があります。州税やIPIについても、問題解決のため最大限努力していきたいと思います。今日話したことを次のスライドにまとめます。こちら、本日のまとめとなりますので、見て下さい。

 続いて、二輪業界について説明します。まず生産・販売についてです。二輪市場でも、去年前半から市場が回復し、後半もその傾向が継続。去年の販売は96万台です。前年比118%と7年ぶりに前年を上回りました。経済の緩やかな回復や、政策金利が低く維持されている事などから、特にローン販売で購買意欲が改善しています。一方輸出は、アルゼンチン経済の減速により、前年比83%となりました。

 こちらは登録ベースの月別の販売です。大統領の経済政策への期待が高まる中、18年後半は全ての月で前年を上回り、回復傾向がより鮮明となりました。

 最後に二輪販売の支払い形態別推移です。緑のグラフ、ローンによる販売比率を示していますが、金利が低く抑えられ、金融機関からの貸出が過去3年で最高水準ということもあり、ローン販売が伸びていることがお分かりかと思います。金利の安定や、失業率の改善で、販売が増え、今年も二輪市場のさらなる回復を期待しています。

 これで私の発表を終わります。ありがとうございました。

 

司会

 はい。下村部会長たいへんありがとうございました。では、ご質問よろしくお願いいたします。

 

発言者

 岡と申します。下村さんのコメントをちょっと聞きたいんですけど、たしかこの前、GMも撤退するっていうそういう噂も流れたし、Fordはサンベルナルドでもう工場を撤退しますよね。そのコメントをちょっとお聞きしたいんです。

 

下村部会長

 絶対そういう質問出るかと思ったんですけど。はい。FordとGMは、バックグラウンドは同じと思います。ブラジルの厳しい市場の中に今がんばっているんですけど、ただそれぞれのカンパニーのストラテジーはちょっと違うんですね。やっぱり、Fordがプロダクトが、いろいろあって、ちょっと悪くなっているんですね。GMはやっぱり、何とかがんばっていきたいけど、何とかもっとサポートをいただけるためにそういう動きをやっているかなと思います。ただ、日系メーカーですね、トヨタ、ホンダ、日産は変わらない。ブラジル、まあ今は、いつでもイサオが言っているようにこういう形ですけど、こういう形ですからね。絶対戻ると思っていて、しかも、さっき話した、この国がまだ伸びると思っていて、インベスティメントは続けます。例えばトヨタが去年インダイアトゥーバ工場に1Billion Reaisぐらいインベスティメントしまして、今年からハイブリッドFFVを生産します。ホンダも実は、今月かな、今月から、新しい工場でも生産が始まっているし、日産もどんどんエレクトリックカーを入れています。だからそういう意味では、日系メーカーはブラジルから出るつもりはありません。ちゃんとインベスティメントをやりますと、安心してください。ただ、ここにいる、色々うちのサプライヤーあるんですけど、一緒にがんばらないといけないので、よろしくお願いします。

 

司会

 はい、ありがとうございます。他、ございますか。どうぞ。

 

発言者

 いつもお世話になっています。谷口です。ひとつお聞きしたいのは、ブラジル政府に対して、電気自動車とかハイブリッドに対してね、もう少し恩恵がもらえるべきなところ、全然交渉がうまくいっていないのは、ANFAVEAの方でも、例えばGMとかフォードとかがあまり力を入れていないという意味なんでしょうかね。もう少し本当は、恩恵をもう少しもらって、例えばハイブリッドを買っても一時的にはIPVAの減税があったんだけど、今のドリアになってからまた高う決めてくれたんですけど、そんな邪魔をするような連中と何か交渉できないのかなと思ってちょっと悔しいんですけどね。それだけちょっとお聞きしたい。

 

下村部会長

 さっき私のプレゼンテーションで話した通り、これから大分変ります。日系メーカーはハイブリッドとか電気のところ、もっとできると思いますけどね。ただ、他のカーメーカーもできることはあるんですけど、たぶんまだ、他のカーメーカー、エタノールとかFFVはインベスティメントしまして、だからまだどうなるかはっきり決まっていないんですよ。たぶんまだ、そういう、FCAとかエタノールにフォーカスするかもしれない。いずれにしても、日系メーカーはやっぱりそういう新しいトレンド、エレクトリック、ハイブリッドについては、やります。インセンティブがなくてもやらないといけない。こういうトレンドになりますというのは、うちは見ているんですね。ただ、政府は去年12月に、たとえばRota2030の中にはハイブリッドFFVに、ブラジルで生産したら3%IPIリダクションできるという新しいルールができたので、そういう意味ではちょっとサポートしているかもしれない。ただ、新しい政府はそういうインセンティブがそんなにあれじゃないですから、まあこれからアプローチしましてですね、どうやってやるか、ちゃんとANFAVEAと一緒にやらないといけないと思います。ただ、先月、うちの社長がドリアと会って、ドリアがやっぱり、何とかサポートしますので、一緒に、インセンティブまでもらうとかそういう話ではなくて、だけどそういうトレンドにサポーティブな活動をできるだけはやりましょうと、そういうことはあります。ただ、言った通り、もうちょっとね、そういう新しい技術が、問題はボリュームですから、今ボリュームがないので、ちょっと助けないといけない。その後、ボリュームがあったら、助けなくても、皆やらないといけないと思っているんですね。だけど最初はやっぱりちょっとやらないといけないので、その辺がもうちょっと政府の理解をやらないといけないかなと思っていますので、はい、一緒にやりましょう。

 

司会

 はい、ありがとうございます。ではもう一つ質問、お時間ございますが、もう一方ぐらいいかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございました。非常に、環境対応であるとか、モビリティであるとか、Rota2030とかこの辺りが具体的になってきているのかなというのが非常に、色んな情報が出てきているというのが私個人的には印象的に思いましたし、まあ今後、今おっしゃったような、より効果のあるといいますか、スピード感をもった対応にぜひ期待したいなと思うところです。ありがとうございました。それではこれで自動車部会さんからのご説明を終了とします。たいへんありがとうございました。

 それでは前半最後となります。コンサルタント部会の方からお願いいたします。吉田部会長、よろしくお願いいたします。

 

コンサルタント部会

吉田幸司 部会長

 本年度よりコンサルタント部会長をさせていただいております、KPMGの吉田と申します。前半最後ということで、ちょっとお疲れのところもあるかもしれませんけども、何とか時間通りに終わらせたいと思いますので、最後までお付き合いいただければというふうに思います。

 本日、たぶん、お手元に資料印刷されてお持ちになられている方もいらっしゃるかもしれませんが、すみません、昨晩にちょっと一部修正を入れさせていただいたところがございまして、ちょっとお手元の資料とスクリーンで一部違う所があるかもしれませんけども、その時はスクリーンの方を見ていただければというふうに思います。それでは、私の方からコンサルタント部会の内容についてお話をさせていただきます。

 まず、最初にですね、ひとつビジネス環境のお話をさせていただく中で、ご紹介させていただきたいところといたしまして、こちらですね、実は世界各国の1300人のCEOの方にアンケートを取らさせていただいて、その結果をまとめさせていただいたものとなっております。日本からは100名、ブラジルからは53名、ラテンアメリカ全体で見ると278名の方々からですね、ご回答をいただいた内容というところになっております。ちなみにこのアンケートをしたのは2018年の1月、2月ということで、ちょうど1年前ですね、1年前に各国のCEOがどのようにして経済を見ていたかというところの一つの参考数値として見ていただければと思います。

 世界とブラジルという形で比較させていただいておりますが、世界経済については3分の2の人が成長していくと。ブラジルは半分ぐらいの数値で成長していくというふうに見ていますよと。一方ですね、自分の会社が伸びていくんだというふうに見ているところは、グローバルでも強気だと思うんですが、90%と。一方でブラジルはですね、全員が絶対伸びるんだというふうに見ているというところです。中々これはブラジルらしいなというふうに思ったところです。

 一方、成長していくにあたって何がリスクかというところを質問させていただいたところ、まあグローバルは中々グローバルらしいなと思うんですけども、保護主義への回帰というところで55%というのが一番高いですよと。あとはですね、やっぱり最近の技術の進化が激しいものですから、破壊的技術のリスクとかですね、サイバーセキュリティのリスクが上がってきていると。一方、ブラジルですね、やっぱり自社の運用のところでオペレーションリスクが高いとかですね、あと、ブラジルらしいなというところなんですけども、金利の上昇というところがビジネス上のリスクというふうにブラジル人のCEOは見ているというのがこのアンケートから見て取れるかと思います。

 ちなみにですね、2017年度、実はアンケートさせていただいているんですけど、ブラジルで2017年度、58%の人がリスクだと言っていたのがですね、2018年で消えたものがあります。これですね、インフレーションの上昇ですね。2017年度はインフレリスクがあると思っていたのが、2018年度にはそれがなくなったというのがこのアンケートから見て取れるところだというふうになっております。

 これが1年前のCEOの方々が見ていた経済の見方というところなんですが、実際どうだったかというところで、地政学リスク、もう各部会の方が発表されていますけども、地政学リスクが高まりましたねとか、あとはトラック運転手のストライキ、あとボルソナロ政権の誕生といったところがブラジル経済にも大きく影響を与えているかなと。

 あと、コンサルタント部会らしくというところではあるかもしれませんが、法律や規制の改正もありましたと。税制についてはeSocialの適用、BLOCO Kが規模にかかわらず全面適用になったとか、あと税務申告のデジタル化の流れ、Rota2030の導入とかですね、法律ではデータプライバシーの導入とか、労働法の改正、まあ2017年度ですけど、ありましたと。あとは会計ですね。売上とか、金融商品会計基準。国際財務報告基準が変わったことによってブラジルの基準も変わりましたと。あと、2019年度、今年からはですね、賃貸、オフィスの賃貸も、これを、オフィスを使うという権利とオフィスを借りている事に対する支払い義務、これを両立てしないといけないという会計基準が今年、2019年度から導入になるということで、法律の部分も色々と変わっているというところが見て取れるかと思います。

 あと、ビジネスの変化といった時に、やはり最近の大きな変化ということで、デジタル化の流れというのが非常に大きな一つのポイントかなというところで、デジタル変革のところについても今回CEOのアンケートを取っておりますので、その内容についてこちら紹介させていただいております。

 この技術の革新によって自分のビジネスがなくなってしまう、いやいや技術革新によって自分のビジネスがさらに伸びるんだと、どう思いますかというところなんですが、グローバルではほとんどのCEO、95%がビジネスが伸びると。ブラジルは100%ですね。この技術革新が自分の会社をさらに大きくしてくれるんだ、成長させてくれるんだというふうに信じていると。

 また、AIですね。AIを導入することによって、日本ではAIの導入が仕事を奪うと。我々のような仕事もですね、AIが仕事を奪うランキングのトップの方に入って来るんですけども、まあそうは言っているところで、グローバルとブラジルではAIの導入がさらにビジネスを作っていく、雇用を生み出すんだというふうにポジティブに見ているというのがアンケート結果に出てきました。

 実際にじゃあ、AI、どこまでブラジル企業が取り組んでいるかというところについても、こちらアンケートさせていただいているんですけども、これがですね、私正直、AIはまだそんなに入っていないだろうと思っていたんですが、アンケート結果を見るとですね、一部導入とか、試験的に導入というので、足しても85%と。ほとんどの企業が何かしらのAIに取り組んでいるというのがブラジル企業の状況というところですね。これかなり高いなと、正直、びっくりしたところです。ただ、ご本人の意見なので、本当かどうかちょっとわからないところもあるんですけども、一応そういうような結果が出ているというところです。

 あと、AIの導入によって、どんどんデジタル化、人の手が入らなくなっていきますので、それによってどういうところを改善していくかと聞くと、大体皆さん、利便性が上がるとか、コストの削減とか、さらに成長していくだろうということで、AIに対して非常にポジティブな意見が多かったというのがアンケート結果になっております。

 今まではアンケート結果のご紹介になるんですけども、ここからちょっとスライド3枚ほどでですね、絵だけになっているんですけど、そんなの皆さん分かっているよというところかもしれませんが、最近のビジネスのバリューチェーンの変化というところについて簡単におさらいをさせていただければなというように思います。

 向かって右側ですね、右側の図が多分今までのビジネス形態というところになるかと思うんですけども、ものを作る会社さんであれば、サプライヤーさんからものを買って、そこを作って、お客さんに売っていくと。基本的にはバリューチェーンは上流から下流に流れていく垂直的バリューチェーンというのが一般的に言われている流れではないかなというところなんですが、最近ですね、皆さんアマゾンを使ったり、ネットを使ったり、色々されているかと思いますので、実体験されているかと思うんですけども、もうサプライヤーさんが直で顧客と結び付くと。で顧客側も、別に代理店とか企業さんを通さずに、もう直で連絡を取り合うということで、複数、ネットワーク的な、色んなところがつながるようなバリューチェーンに変わってきているというのが最近のビジネスの流れじゃないかなというふうに言えるかと思います。

 一つ、産業としてのご紹介、私がしゃべるまでもないかもしれませんけども、伝統的バリューチェーン、自動車ですと、OEMさんですね、自動車メーカーさんが自動車を作って代理店に売りますと。それを我々みたいな消費者が買いますと。で、買った後は当然自分たちはガソリンも入れに行きますし、政府に税金も払います、保険も入ります、ローンをするときには金融機関の方に行きますとか、あと修理だと工場に行きますというような、こういうようなバリューチェーンになっていましたと。それが、先程下村部会長からも話がありましたけども、モビリティサービスというふうな動きの中で、今後、車を所有して何か使うというわけではなくて、サービスとして見ていくと。またそのサービスをどうやって企業が見ていくか、サービスのチャンスをどう見ていくかというところで言われているのが、このデータアグリゲーションのところですね。データを集めて、それぞれターゲットに合ったマーケティングをやっていくと。その情報を使った上で、どのようなものがその顧客に向いているかというのをやっていくというところで、ますますこのバリューチェーンの方が変わって行っているというのが今のビジネスの流れかなというところになります。

 すみません。ちょっと話がポンポンと飛んでいくような感じかもしれませんけども、ここからは少しグローバル資本市場の変化というところについてお話させていただければと思います。こちら、どこの年代を取るかとかですね、どのタイミングで取るかによってちょっと順位が確かに前後するところもあるんですけど、ひとつ、世界の株式市場の時価総額というところについて、こちら比較させていただいております。

 2007年と2018年のトップ10と。なぜ2007年かというふうに思われるかもしれませんが、一応ですね、リーマンショック前ですね、リーマンショック前にどういうところがトップ10だったか。で、直近ですね。直近だと世界でどういう所がトップ10になっているかというところなんですけども、リーマンショック前ですね、エクソンモービルがトップ10でした。この時の時価総額が確か5000億ドルぐらいというのがトップ10となっています。それ以外もですね、シェルとかBPとか、エネルギー関係の会社がやっぱり大きいですし、やっぱりGEですね。最近はちょっとGE、昨年度は大きな減損とか株価を落としてしまったんですけど、という辺りが2007年時点では世界のトップ10として名を上げていますと。

 ところが2018年、約10年経った後ですね、どうなっているかというところなんですけども、皆さん良く使われているアップル、アマゾン、アルファベット、マイクロソフト、フェイスブックといったデジタル、インターネットっていう会社がトップ10のしかもトップ5に入ってきています。これらトップ5の会社、時価総額は全ての会社が7000億を超えていると。特にアップルについてはですね、一時期1兆ドルを超えていたということもありますので、デジタルの企業についての時価総額というのはどんどんどんどん高くなっているというのが世界の株式市場の状況かなと。

 あと、有望株というところで、ちょっと一番左側に挙げさせていただきましたけども、皆さん、このうち全ての会社を知っているという方はどれぐらいいらっしゃいますでしょうか。正直、私全部知らなかったです。全部知らなかったですけども、色々調べていくと、確かに世界でも非常に成長有望株として見られていると。特にウーバーとか、これは皆さん利用されているんでご存じだと思うんですけども、ウーバーについては2019年度中に株を上場させようというような動きになっていますけども、ウーバーについては問題は赤字です。設立以来ずっと赤字ですと。大体株式市場上場する前は前の年黒字にならないといけないんですけども、ウーバーは赤字と。ただ、ちなみに南米諸国だけでは10%とかの利益が取れているらしいんですけども、アメリカの方でかなり熾烈な争いをしていて、アメリカで大きなマイナスを出していると。ただ、やはりウーバーについてはかなり注目ということで、今年中に上場するんじゃないかなというふうに言われているところです。

 という形で、非常に株式市場も10年間で大きく変わりましたと。実際皆さんの生活も、このような企業が出てきたことによって大きく変わったんじゃないかというふうに言えると思います。

 一方で、ブラジル資本の市場のところですね。ブラジルの株式市場のトップ10を、これも2007年と2018年で取ってみました。これを見ていかがでしょうか。結構ですね、2007年と2018年、あまり差がないんじゃないかなというふうに見られるところもあるかなと。特にペトロブラスにつきましてもですね、2007年だと1位、2018年だと2位にいっているとかですね、なっているかと思うんですけども、まあ変化としてあえて言えるとすると、やっぱり銀行さんが2018年度は結構上に来ていると。資源系が2007年ではあったのが、ペトロブラスとヴァーレだけになっているとか、2018年は銀行系が増えてきているというのが言えるかなと。

 あと時価総額もですね、これはドルで見てしまうとあれなんですけども、2007年は確かペトロブラスが820億ぐらいだったのが、2018年では600億ぐらいまで下がっているということもありまして、これは石油価格の下落とか為替の下落とかも影響しているかと思うんですけども、株価で見ると資源系は下がっていると。金融機関は逆に数も増えてきていますので、金融機関の時価総額は上がっているというのがブラジル市場かなと。

 実際ですね、株式の時価総額の全体の産業ごとに占める割合を見ていくとですね、金融機関は2007年度が11%ぐらいだったのが、2018年度には27%まで増えていると。あと、ここには書いていないんですけども、大きな変化として、教育系の企業とか、小売系の企業とかが、2007年度は上場会社がゼロだったのが、2018年度にはそういう会社が出てきているということで、ここの表には出ていないんですけども、ブラジルの株式市場も少しずつ変化が出てきているというのが言えるんじゃないかなというふうに見ているところになります。

 そういう中で、今度はユニコーン企業ですね。皆さん聞かれたことがあると思いますけども、ユニコーン企業というのは時価総額が10億ドル以上の新興の会社で、テクノロジーを持っていて、非上場、設立10年以内というところで言われていますけども、これ非常に小さくて見づらいんですけども、そのような会社がどのタイミングで誕生してきたかというところについて、一応時系列でグラフにしたものですね。どの会社が何というのは細かすぎるので、そこは割愛させていただくとして、ここで見ていただきたいのが、これは世界の動きですけども、2014年度以降にこのユニコーン企業というものがものすごく増えてきていると。ということは、2014年度以降でかなりのスピードでデジタル革新が起きているというのが、今のこの会社の数からも見れるんじゃないかなというところですね。

 ちなみに日本でのユニコーン企業、これはすでにユニコーン企業でなくなってしまったんですけども、メルカリがユニコーン企業としてありましたと。ただ、メルカリはもう上場してしまいましたのでユニコーン企業から外れているというところですね。

 じゃあブラジルのユニコーン企業、どういうところがありますかというところですね。これ、各社さんがどういうビジネスをされているかというところについては、ジェトロさんが昨年の11月ですね、2018年11月にスタートアップ企業の調査をされてそのレポートを出されておりまして、そこにも細かく書いておりますね。各社さんが何をやられているかはそれを見ていただければなというように思うんですけども、一応ブラジルでは7社のユニコーン企業が代表的に言われているというところですね。皆さんも99とかご存知だと思いますし、もしかするとフェイスブックとかでnubankですとぽこっと広告が入ってくるとかですね、pagseguroですとタクシー運転手にカードで支払おうとするとpagseguroの機械を持ってくるとかですね、ということで、身近なところに世界にも実はこのユニコーン企業が感じられるというところになってきているところかなと。

 ここには書いていないんですけども、これ以外にユニコーン企業だというふうに言われている企業が実はあります。これ、挙げていないのではですね、オフィシャルに実は発表がなくてですね、ニュースだけになっているんですけども、皆さんご存知でしょうか。ソフトバンクが投資したGympassですね。これ、ソフトバンクが投資したと新聞には出ているんですけども、ソフトバンクもGympassも発表していないので分からない、オフィシャル出ないので挙げていないんですけども、Gympassという会社がありまして、そこがユニコーン企業になっているんじゃないかというふうに言われているというところですね。

 あとここに、まだユニコーン企業に達してはいないんですけども、ユニコーン企業になるんじゃないかと言われているのが、もしかすると利用されている会社もあるかもしれませんが、ContaAzulという会計のクラウドサービスですね。いま会計、外注されている会社さんがたくさんあるかと思うんですけども、外注じゃなくても中でやろうと、しかも経費を削減しようというところで、ContaAzulというのをもしかすると利用されている会社さんもあるんじゃないか。こちらも将来的にはユニコーン企業になるんじゃないかというふうに言われているところになります。

 ということで、ブラジルも、証券市場上位だけを見るとあまり大きな差はないように見えるかもしれませんけども、下位まで見ていくと色んな産業が出てきていますと。あとユニコーン企業も、数は7社で少ないんですけども、前のページで見ていただきました通り、世界も最初は少なかったのが2014年を境に爆発的に増えてきている。ということは、ブラジルもこのユニコーン企業、またはその前のスタートアップ企業というのがどんどんどんどん増えていく可能性があるというふうに言えるかなというところになります。

 またこれ、アンケートの方に戻るんですけども、こうやって新しい企業が今起きているという中で、その世界の1300人の経営者に、今後成長のためにどういう策が必要ですかと聞いたところで、ここですね、特にどっちがどっちという訳ではないんですけども、見ていただきたいのは、ブラジルの方だと3つ目と4つ目ですね。スタートアップ企業のためのインキュベータープログラムの策定、革新的なスタートアップ企業と連携ということで、新しく出てきた企業と連携していく、新しく出てきた企業に対してどうやってサポートしていくかというところが、今後の成長に必要だということが、グローバルの方のCEOも言っていますし、ブラジルのCEOも言っているというところになるかと思います。

 またですね、今後3年間の成長のために最も重要な戦略ということで、一つだけ選んでくださいとやった時なんですけども、グローバルもブラジルも第三者との提携が一番大事だと、そういう意味では、さっき話しをしたスタートアップ企業との提携、これはスタートアップ企業への投資をしていくということも非常に重要というふうに考えているというふうに言えるのかなと。あと、グローバルとブラジルで、あえて、大きな差はないんですけども、どこか差があるかなというふうに見た時に、グローバルはオーガニック成長、内部で育てていきましょうというところを強く意識している一方で、ブラジルはM&Aとかジョイントベンチャーというところで、外のどこか会社を買いましょうとか、外と手を結びましょうというところをちょっと考えているというのが一応言えるのかなと思ったんですけども、下の方に行くとですね、M&Aやる気ありますかと聞いたら、グローバルの方は27%なんですが、ブラジルはたった13%しかやるというふうに言わなかったということで、何か上のアンケートとちょっと矛盾しているような回答になってしまっているんですけども、このように、M&Aの方もブラジルの中では一応成長の戦略として考えているというのが、一応、数は少ないんですけどあるというところですね。

 実際M&Aがこの2018年度どうだったかというのが次のスライドですね。こちらですね、ずっと、このM&Aの件数の中には普通の買収以外にも増資も入っているので、他のもしかすると出てくる資料と数字が違うかもしれませんけども、何件あったかと。ブラジル国内の件数と海外からの投資という件数で、合計すると2018年度は最高件数でしたと、967件と。ただ、よくよく内容を見ていくと、ドメスティック、ブラジル国内での取引が多かったです。海外からの投資という意味では、やはり2018年度は様子見というところもあったかなというところで、件数は2017年度よりも減りましたというところがM&Aの実績ですというところに表れた数値になっております。

 ここまで色々と話が飛んできたんですけども、最後に一つだけ、今のデジタルの流れが進んでいるというところで、デジタルを取り入れて会社を改善してきたところを一つご紹介させていただければなというところで挙げております。聞いたことがあるかもしれませんけども、Aliarというところで、医療の画像診断センターの会社ですね。2011年度設立の2016年度上場した会社で、確か従業員が5000人。900人の医者と提携をしているという会社で、画像診断の医療センターと。こちらの会社ですね、困っていたことが大きく3つありましたと。

 すごいコールセンターに問い合わせと。どういう問い合わせがあったかというと、この保険適用になりますかとか、非常に単純なことがすごい数でコールセンターに問い合わせがありましたと。

 内部のコミュニケーション。患者さんが来ましたと。患者さんの症状によって、この人は軽いといったら青、ちょっと重いと黄色、重症患者は赤という色分けをしていて、赤の患者さんになると上司に必ず相談しないといけない。過去同じような症状であった人でも、赤になったら必ず相談しないといけないということで、本当は相談しなくてもいいような内容でも赤だから相談するということで、内部のコミュニケーションが非常に多くなっていましたと。

 あと診断予約ですね。診断予約を取ったんですけども、来ないとかですね。あと健康診断のような時、皆さん想像していただければいいと思うんですけど、健康診断とかで、前の日にご飯を食べてはいけませんよと言われたにも関わらず食べてくる患者さんと。実は私もやったことがあってこれ医者に怒られるんですけども、そうやって患者さんが結局言うことを守らずに来てしまって、その結果無駄な時間を過ごしてしまうということもあってですね、非常にコミュニケーションのところで苦労していた会社というところですね。

 この会社が、これをなくすために今どうやっているかというところで、絵だけなんですけども、どんどんデジタルを、今のテクノロジーを使いましょうと。予約を受け付ける時もサイトから入れてもらうとかですね。あと、チャットボットですね。チャットボットを使うことによって、同じ問い合わせだったら標準化して、標準化で答えられるようにする、内部も同じような質問であったらチャットボットによって標準化して同じように答えていくということを進めていきまして、ものすごい件数、連絡が減って、ものすごく効率的になったというふうになっております。

 で、この会社、今取り組みをですね、ずっとしていっているんですけども、その取り組みを始めたのが2018年の4月からと。ほんの1年ぐらい前ですね、今2019年で大分良くなって来まして、2020年度までに、これLIAって書いてあるんですけど、何かというとAIの名前ですね、このAIを作り上げてほとんど自動化にしていきましょうと。また、患者さんから問い合わせを受けるだけではなくて、患者さんの方にも有益な情報があれば発信していきましょうということで、どんどんどんどんデジタル、テクノロジーを使って患者さんへのサービスのレベルアップをやっていきましょうということを今この会社は取り組まれているというところですね。

 ですので、ブラジル企業も世界にもれず、テクノロジーに対しては非常に敏感に、新しいものをどんどん取り入れていこうという姿勢は、この会社の例からも見て取れるのかなというところになります。

 最後ですね。コンサルタント部会のまとめというところで、じゃあこのような中で、日系企業さんはですね、今後どのようなところにビジネスチャンスがあるのか、どういうことを考えないといけないのかというところなんですけども、今一度、じゃあなぜブラジルに来たのかなとか、今中国企業が非常に攻勢をかけてきているところもあるかと思うんですけども、今一度、自分がなぜブラジルに来て、じゃあブラジル人がそもそも何を我々に期待しているんだというところを見直すことによって、新たなビジネスチャンスというのが見えてくるかもしれない、とかですね。あと、非常に今、ダイソーさんとかすき家さんとか日本から受け入れられています。また、コンサルタント部会の中で話がありましたけども、おもてなし精神、日本のサービスというものが非常にブラジル人に受け入れられているということであれば、日本のこのブームを利用したビジネスということで、コンシューマーマーケットとかサービスというところについては、さらにビジネスチャンスがあるのかもしれない、とかですね。

 あと農業分野。ブラジルは農業分野が非常に大きな部分だと思いますし、多くの会社さんも投資されているかと思うんですが、この農業分野のところについても、今スタートアップ企業がどんどん出てきています。ドローンを使った、農薬を撒いたりとかですね、画像診断とかもどんどんやって、効率的に農作物を作っていきましょうということを始めるスタートアップ企業というのが非常にここに出てきていますというところもありますので、農業分野の元々のブラジルの強みのところにスタートアップ、日本のテクノロジーというのを組み合わせていけるのも一つの考えじゃないかと。

 あとは、やっぱりどこの部会も今言っておりますけども、今後の改革に対して備えていくことも重要じゃないかというところがコンサルタント部会のまとめというところになります。

 以上が私の発表となります。ありがとうございました。

 

司会

 はい、たいへんありがとうございました。皆様ご質問の方、よろしければ挙手の方お願いいたします。

 

発言者

 非常に画期的な報告をいただいて、ありがとうございます。質問はですね、ここで言うブラジル企業というのは当然外資系も含むという理解でいいのかなと考えているんですけど、その確認とですね、ちょっと日本と比較するとどうなるのかなといったところがちょっと気になってましてですね。スタンスの違いとか、例えば。一番関心があるのはスタートアップ企業との連携といったところで、どのぐらい関心があるのかというところですね。もし情報があればということで。一番聞きたいのは、実は皆様参加されている中でどのぐらい関心があるのかというのが本当は一番聞きたいところなんですけども、その辺分かる範囲でお願いできればと思います。

 

吉田部会長

 ご質問は、スタートアップ企業についてのところでよろしいですかね。

 

発言者

 そうですね。ブラジル企業、グローバルってありますけども、もし日本というカテゴリを加えた場合、どういった特徴的な違いがあるのかというのがもし分かれば教えていただければ。

 

吉田部会長

 実はこれ、日本のアンケートのやつもあって、最初入れていたんですけども、ちょっと時間的にも厳しくて取り除いたところがあるので、細かいものはもしご要望があればお渡しすることはできるんですが、日本企業とブラジルと世界の大きな違いというと、このAIのところですかね。まずAIによって雇用を生み出せる可能があるかないかというところについては、実は、ある程度日本の会社、AIによってなくなると言われてはいるんですけども、実は経営者に聞くと、AIがあっても雇用は増えると思っている経営者、これ実はそれなりにいましたと。一方で、AIをどれだけ導入しているかというところについては、日本企業はもうちょっと数が少ないというところが一つあったかなというところですね。あとは、今後の成長戦略というところについても、日本はオーガニック成長、内部で育てていこうという所が非常にパーセンテージが大きかったなというのが私の今の記憶のところになります。スタートアップ企業との連携のところについては、ブラジル、私も今回お話させていただく時に色々調べさせてもらったんですけども、結構ブラジルは政府を挙げてですね、スタートアップ企業を支えていこうという動きは最近かなり出てきているのかなと。また、民間企業の中にもですね、これジェトロさんの資料の中にも出てきてはいるんですけども、民間企業でもこのスタートアップを支えていきましょうということで、アクセレレーターとかですね、インキュベーターとしての活動をされている民間企業さんもたくさんありますので、かなりブラジルは、このスタートアップ企業を盛り上げていこうという動きはかなり見られるのかなと。一方、日本は正直、私はネットで見ても日本はやはりスタートアップが中々盛り上がっていないというような話は聞くことは聞いています。なぜその違いがあるのかというのは、そこまでは勉強不足で分かっていないところではあるんですけども。

 

司会

 はい、ありがとうございました。他にご質問よろしいでしょうか。はい。大変興味深いお話をたいへんありがとうございました。今スタートアップ等々ですね、どちらかというと日本企業全体が割と問われていることなのかなというふうに思います。一方でブラジルは割とオーナーの方が即断即決という、そういう傾向もあるんじゃないかというふうにちょっと思った次第ですけども、日本の進出企業の皆さんもたくさんおられますので、新しい時代に向けてがんばっていこうということなのかなと思います。それでは、コンサルタント部会の発表をありがとうございました。それではこれで10部会のうち5部会までご発表いただきました。予定通りでございまして、今3時15分ですけども、これから15分間コーヒーブレイクということで、お休みを取りたいと思います。3時30分にまたお戻りいただければと思います。ありがとうございました。

 

後半の部 司会

大久保敦 企画戦略委員長

 そろそろ時間になりましたので、これより業種別部会長シンポジュームを再開したいと思います。よろしくお願いいたします。私、後半の部の司会を担当させていただきます、企画戦略委員長でジェトロサンパウロ事務所の大久保でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは早速、各部会の発表に移りたいと思います。またタイムキープ含めてですね、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。まず、化学品部会からの発表をお願いしたいと思います。村松部会長より発表をいただきます。村松部会長、よろしくお願いいたします。

 

化学品部会

村松正美 部会長

 今期、化学品部会の部会長を務めます、筆記具のパイロットの村松と申します。飛べないパイロットであります。よろしくお願いします。筆記具がなぜ化学品部会の部会長をやっているの、というところ、謎解きは別といたしまして、業界のただ今勉強をしております。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、化学品部会の8つの関連する部門がございますが、その中で6つほど紹介させていただいて、進めたいと思います。輸送関連、ヘルスケア関連、農業関連、印刷関連、機器関連、コンシューマー、そして総括と。最後に、メンバーの意見をまとめまして報告させていただきますが、副題として「成長への期待、変化への対応」ということで進めさせていただきます。

 まず、化学品部会のアンケートの調査内容についてご説明いたします。化学品部会所属企業は、団体を含めまして73社。アンケートに協力いただいた企業は、団体含めまして22社であります。そのうち工場を保有する企業が10社。アンケートにつきましては、8つの市場から売上と利益を増加、不変、減少というこの3つの表現で回答いただきました。その8つの市場は、先程申しましたが、輸送関連、自動車、二輪車など。ヘルスケア関連として食品、化粧品、医薬品など。農業関連といたしまして農薬、飼料、酵素などを含んでいます。そして印刷関連、インキ、製紙など。機器関連としまして、電気、電子、医療などを含みます。最後にコンシューマー、筆記具、接着剤、潤滑剤など。この分野からご説明いたします。その他には、建設関連、服飾関連となっております。アンケート総数は43件いただいております。

 それでは全体の報告から進めていきたいと思います。化学品部会の全ての市場をまとめた資料でございます。2018年の回顧といたしまして、化学品部会、8つの全ての市場を見てみますと、2018年の振り返りでは、売上が65%が増えていますよと回答いただいております。決して悪くなっていないけど不変だというのを含めますと、全体で86%という数字をいただいております。利益につきましては、増加と答えられた企業は全体の47%。不変を含めますと総体で77%という回答を得ております。

 そして、今年の2019年の展望、どう攻めるんだ、どうなるんだというところにつきましては、売上につきましては70%の企業が増加と見込んでおります。さらに不変を含めますと、実に98%が回復基調を見込んでいるという結果が出ております。利益につきましては、58%が増加と見込み、不変を含めますと、91%が回答されております。増加と不変を含めまして91%の回答を得ております。

 それでは、市場ごとに詳しく見ていきたいと思います。

 まず、2018年の回顧、輸送関連。自動車、二輪車などを含みます。用途につきましては、内外装のプラスチック部品、エンジン用のシール材、樹脂添加剤などを含んでおります。2018年回顧、振り返りには、増加したと答えられた企業が71%と高く、不変を含めますと86%で、輸送関連では市場が回復した、生産増につながっているという回答を得ております。利益面では、増加が50%。不変を含めますと76%の回答を得ております。

 売上増の主な要因といたしましては、新車種に採用された、あるいは新規需要、新規雇用獲得といった動きがあったと報告を受けております。しかしながら、マイナス面としては、価格競争が激しくなっているということを挙げております。二輪部門、二輪車はどうであるかというと、緩やかな市場の回復であったと振り返っております。マイナス面で、コスト低減要請が非常に厳しく、価格競争の激化を挙げております。総体的には、売上が増加したけど、反面、やはり価格競争、あるいはコスト削減要請というものが非常に厳しいというような報告になっております。

 それでは2019年、どうなるんだ、どう見ているんだというところでありますが、売上の減少は減り、不変が増えているという結果になっております。売上の増が64%。不変を含めますと93%と高く復調を見込んでいるという結果になっています。利益面では43%が増加と見込んでおりまして、不変を含めますと76%が維持・増えると見込んでいるということでございます。

 売上増の要因に掲げられております、新規採用、新規車種に期待するといったことと、新規メーカーへの拡販も狙っているということが挙げられております。逆にマイナス面でありますが、やはり価格競争がますます激しくなると予測し、二輪車部門ではコスト低減要請に対応せざるを得ないと。あるいは、価格競争がますます激しくなると予測しているということであります。かなり、売上は伸びますが、やはりメーカーとしての価格、あるいはコスト低減要請について対応していかなくてはならないという厳しい状況には変わりないという結果が出ております。

 続きましてヘルスケア関連。食品、化粧品、医薬品などでありまして、用途につきましては、食品添加剤、包装フィルム、海藻着色剤、一般医薬品などが含まれます。

 2018年の回顧につきましては、売上が増加したと答えられた企業が75%ありました。ヘルスケアでは、食品が健康志向ニーズが増したことを挙げ、化粧品・医薬品では市場が回復傾向にあったと回答を得ております。利益面では増加が63%の回答を得て、売上増の主な要因としては、新規得意先の開拓、あるいは営業活動の強化といったこと。さらに新規案件の増加があったと回答をいただいております。ヘルスケアでのマイナス面では、やはり価格競争が厳しくなっているということを挙げておられます。

 続きまして2019年の展望でありますが、売上が75%と前年と変わらず、しかし不変を含めますと100%と、市場回復を期待を強めているという結果が出ております。利益面では75%が増加するとし、不変を含めますと100%維持ができると見込んでおるということであります。売上の増の要因につきましては、新規開発案件が実績化すること、営業活動のさらなる強化、あるいは新規取引先の開拓をさらに推し進めるといったような報告を受けております。また、残念ながらマイナス面ではやはりここでも、価格競争がさらに厳しくなるというような話も伺っております。

 次に農業関連。農薬、飼料、酵素などを含んでおります。用途は殺虫剤、殺菌、除草剤など、診断薬原料などを含んでおります。

 まず2018年の回顧。売上が増加したと答えられた企業が71%ありました。ほとんど変わらないよという企業を含めますと、全体で100%ということであります。増加と不変で100%。従いまして、農業関連では堅調な伸びがあったという報告を受けております。反面、ジェネリック攻勢や、アルゼンチンの干ばつといったことが挙げられております。そして、売上増のもう一つの要因といたしまして、販売品目の追加があったこと、新案件の増加もあったという回答を得ております。ここでも、価格競争についてはやはり厳しいということが挙げられております。今まで、各関連企業につきましては、価格競争におきまして非常に厳しいという回答を得ております。

 今年、2019年の展望、どうなんだろうということにつきましては、売上増と見込んでいるのは71%。前年と変わらず、不変を含めると、やはり前年と変わらず100%と。市場の回復の期待を強めているといったことであります。利益面では、43%が増加と見込んでおりまして、不変を含めますと100%と、さらに期待を寄せているというところであります。売上増の要因につきましては、市場の伸びを期待している、あるいは作付拡大を期待、アルゼンチンの回復を期待といったような内容と、さらに、販売品目の増加、あるいは新規案件の増加に力を注ぐといった回答を得ております。また、反面ですね、ジェネリックの激化が予想され、さらに価格競争のさらなる厳しさが出ると予測をしているということであります。

 次に印刷関連です。用途につきましては、パッケージ用インキ、あるいは印画紙などを含んでおります。2018年の回顧につきましては、売上が増加したと回答いただいたのは100%。回復が見て取られたということであります。売上増の主な要因につきましては、販売品目の追加があった、さらには新案件の増加もあったということで回答をいただいております。非常に好調なように見える業種でありますが、反面、やはり価格競争は厳しいということを挙げております。利益面では75%が増加したと回答を得ております。不変はゼロでありました。

 続きまして、2019年、どうなるんだろうということでありますが、売上増につきましては75%と、前年から減少が見られております。不変を含めますと100%と期待を寄せているところでありますが、さらなる市場の回復を強めてほしいと期待しております。利益面では75%と、前年と同様に見込んでおり、不変を含めますと100%と期待を強めております。売上増の主な要因としては、やはり販売品目の増加や、新規案件の増加、さらに、値上げを実施したいということで回答を得ております。やはり価格の競争のさらなる厳しさ、これも出てくるだろうという予測もしております。

 続きまして機器関連。電気、電子、医療などを含みます。用途につきましては、眼科の治療用デバイスなどが挙げられております。透析等ですね。まず2018年のどうであったか、振り返りにつきましては、売上が増加したと答えられた業者が25%と、非常に厳しさが伝わって来るアンケート結果であります。不変を含めますと100%。まあ変わらない、売上は伸びなかったけど去年とそう変わらないよというのを含めますと100%という状況であります。利益面では売上と同じく、やはり25%と厳しく結果を出しております。そんな中、市場が厳しい中、医療現場の需要が増えたことが挙げられております。厳しいんだけど、医療現場の要請が強かったと、需要が強かったということであります。反面、ドイツ、アジアといったメーカーとの競争が厳しさを増している、市場の回復が遅れているといったようなアンケート結果にもなっております。売上につながった要因といたしましては、一つには、競争他社が不在と、いないよということが挙げられております。また、マイナス面では、価格競争が厳しくなったということが挙げられております。

 2019年はどうかといいますと、売上増が75%と、大きく期待しているところであります。不変を含めますと100%。やはり市場の回復の期待を強めているといった結果になっております。利益面では75%が増加と。それを見込みまして期待を寄せているといったところであります。75%と期待している売上の増の要因につきましては、医療現場の需要の堅調な維持、あるいは市場の回復を期待する、既存事業の拡大にも力を注いでいこうということで、売上増の要因となるだろうとしております。しかし、反面、ドイツ、あるいはアジアのメーカーの動向がやはり気になるということが報告されております。また、価格競争もさらに激化するだろうという予測も立てているということであります。この業種につきましても、機器関連につきましても、やはり価格競争は避けて通れないといったようなアンケート内容になっているということであります。

 続きましてコンシューマー関連。筆記具、接着剤、潤滑剤など。用途は、筆記具全般、ビジョンケア材料、車両用タイヤなどを含んでおります。この分野では、売上が増加したと答えられたのが25%で、やはり厳しさが伝わってきております。不変を含めると75%。利益面では売上と同じく、25%と厳しい数字が出ております。そんな中、市場が厳しい中でありますが、輸送関連につきましては消耗品の需要増加があり、具体的にはトラック、バス、その他のタイヤの生産が増加したということが報告されております。マイナス面では、市場の統廃合による縮小、あるいは、中国製品の台頭が見られ、価格競争の激化があったと回答を得ております。利益面では、売上と同じく25%の増加にとどまりました。やはり厳しい市場であったということであります。

 2019年、今年はどうなるんだということでは、売上は50%まで回復するだろうという期待を寄せております。不変を含めますと100%。市場回復の期待を非常に強めているといったところであります。利益面でも50%が増加と見込みまして、期待を寄せているところであります。売上の増える要因に挙げられるものの中で、やはり輸送関係の消耗品の需要が堅調であるという見込みをされている。さらに、市場の開拓も推し進めたい。さらに、商品の認知度を向上させたいということで、売上向上を図っていきたいということであります。逆に、マイナス面としては、やはり、中国製品の動向、価格競争の激化というのは避けて通れないだろうというふうに見ております。

 続きまして、総括といたしまして、2018年の回顧、全体で見ますと、売上増加が43件中28件。65%の企業の方々から増加があったという結果を得ております。2019年の展望といたしましては、70%の企業が売上の増加を見込むという数字をいただいております。売上だけの数字を見てみれば、2019年度の回復が見られるといった数字であります。市場はどうであったかというと、18年につきましては、振り返ると、穏やかな需要の回復があったんじゃないかというような全体的なアンケート結果であります。そして、2019年の動きはどうかというと、回復傾向が進むんだろうと、まあ望むといったような回答を得ております。また、全体としますとやはり、価格の話が出ておりましたが、脅威といたしましては、2018年に出てきましたアジア圏の台頭、ジェネリック品との競合、2019年におきましても同じくアジア圏の台頭、続くであろうと。ジェネリックとの競合、これも脅威であるというような回答を得ております。

 2018年、それに対してどう対応したのかというのは、新規取引先の開拓、あるいは新商品の投入、コストの見直しをして対応を取ったというような報告をいただいております。

 2019年につきましては、さらに得意先の拡販、新規取引先の開拓、新商品の投入、コスト見直し、それにコスト低減を対応しなくてはならないというようなところが挙げられていると。

 続きまして、副題です。「成長への期待、変化への対応」ということで、許認可プロセスの簡素化、敏速化を望むということでありますが、聞き取り調査の中では、登録までに8年以上かかると聞き取りをいたしまして、業種の違う私は非常に驚いたということで、8年、あるいは10年というような期間を待たされるというのは非常に厳しいなという感じがいたしました。これも簡素化・敏速化を早急に望むといったところであります。

 さらには、税制改革。これにつきましても、まあ二重課税ですとか、そういうのを含めまして早期の改革を望むといったところであります。ビジネス環境の整備も同じく望むということであります。

 全体、その動向を見極めて、素早く行動に、いかに移せるかといった対応はしなくてはいけないんだろうなというようなことを考えております。

 せっかく壇上に登らせていただきましたので、化学品部会の中に入っている、ちょっとだけ筆記具の分野をご説明させていただいて、お時間を少しだけいただきたいなと思っています。

 筆記具の世界的なシェアから、あるいはブラジルのシェア、マーケットはどうなんだろうというところを簡単にご説明し、ボールペンの構造、あるいは、なんで化学品部会に入っているのかなということも解明できればいいなと思っています。

 まず、世界的な筆記具の市場といたしましては、数年前のデータなんですが、25兆円から28兆円ぐらいあると。現在では、まあそれより超しているんだと思うんですが、そのぐらいの市場があると言われています。世界のトップ5のシェア、トップ3のシェアだとちょっと出てこない企業があるので、ナンバー5までお話ししますと、ナンバー1はNewellという企業であります。この企業はアメリカに本社を置きまして、ブランドのマネージメントをするところです。具体的には、万年筆のパーカーだとか、ウォーターマン、これを有しております。メーカーを有しております。これがナンバー1。ナンバー2はBIC。かの有名な、フランスを代表する筆記具であります。現在はフランスには工場はありませんが、ナンバー2ということであります。BICにつきましては、某大統領がこよなく愛しているブランドであるということであります。

 ナンバー3はCrayolaという企業でありまして、これも米国に本拠地がありまして、特にクレヨンが強い文具メーカーであります。第4位、おかげさまで出てきました、パイロットが第4位であります。第5位がドイツの鉛筆メーカー、STABILO。第6位が同じく画材メーカーのドイツのFaber-Castellというところで含めております。

 それでは、ブラジルはどうであるかというと、ブラジルの市場は、まず筆記具、ボールペンの市場を言いますと、BICが70%、1レアルから2レアイスぐらいの価格帯ではBICが70%のシェアを取っております。当社はというと、まあ残念ながら数%といったところであります。

 その筆記具のカテゴリー、もう少し見ていきますと、マーカー、マジックとは決して言わないんですけど、マジックと言うと内田洋行になってしまうので、マーカー。油性マーカーの市場は、おかげさまで当社が80%をいただいております。そのうち、ホワイトボードマーカーにつきましては、70%のシェアをいただいていると。そのほかがBIC、それと現地メーカーということになっております。

 それでは、あまり長くなってしまうと怒られてしまいますから、ボールペンの構造だけちょっと簡単に説明させてください。ちょっとだけ。やめた方がいいですか。じゃあ後ほど、どこか機会がありましたら。どうもありがとうございました。

 

司会

 村松部会長、どうもありがとうございました。ちょっと後ほど、懇親会等でもですね、ちょっとその話題になればと思いますので、よろしくお願いいたします。ただ今の発表につきまして何か質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。はい、どうぞ。

 

発言者

 許認可プロセスの迅速化、8年、10年かかるとおっしゃいましたけど、この先程の分類でいきますとどこに属してます?医薬品とかですか。

 

村松部会長

 許認可プロセスにつきましては、農薬関係が、非常に時間がかかるよというようなアンケートをいただいておりました。

 

発言者

 分かりました。

 

司会

 農薬だと、ANVISAですか。ですね。はい、分かりました。よろしいでしょうか。では、化学品部会の発表は以上とさせていただきます。村松部会長どうもありがとうございました。

 それでは引き続きまして電気電子部会の発表に移りたいと思います。日比部会長より発表いただきます。よろしくお願いいたします。

 

電気電子部会

日比賢一郎 部会長

 皆さんこんにちは。電子電気部会で部会長を担当しています、ソニーの日比と申します。よろしくお願いします。電子電気部会ですけれども、まずは民生用の電気機器、あと産業機械、あとはアプリケーションとソフトウェアをベースにITのソリューションを提供している企業さんで構成されている部会です。ではさっそく今日のプレゼンを始めさせてもらいます。

 まずこちらが本日のアジェンダになります。まずはじめに市場および生産動向のアップデート。続きまして、毎回半期ごとに部会メンバーに対して行っている景況感調査の結果報告。そして、前回のシンポジュームでもご質問がありました、電子電気部会の特徴的な活動のひとつでもあるマナウス経済特区のオペレーション概要と課題点を、今回の機会を利用しまして少し紹介できれば思っています。そして最後に、本日の副題でもある「成長への期待、変化への対応」に則して、部会メンバーからいただいた商工会議所あるいは日本、ブラジル政府への要望の要約ということで締めたいと思います。では次お願いします。

 まず市場動向ですが、電子電気部会、取り扱いの業種が非常に多岐にわたっていまして、まとめるのは難しいので、今回はその中の一例としまして、まあ弊社の取り扱い商品なんですけども、テレビとオーディオ機器、またオーディオの中でもブラジルの北東部を中心に市場規模が比較的大きい、いわゆるミニシステムですね、の市場動向について簡単に説明させてもらいます。

 チャートの左側がテレビ、右側がオーディオの市場規模で、青線が販売台数の12カ月の移動累計、赤の横線が対前年比を示しています。ご覧いただけますように、赤の縦棒ですね、真ん中にあるところですけども、これが2017年の1月になりますが、両カテゴリーともに需要は2016年の末を境に対前年ベースで回復基調に転じております。またテレビは、皆さんご記憶にある通り、昨年の6月、7月にワールドカップがございましたので、そのおかげで特需があり、市場がその時期跳ね上がっております。一方オーディオミニシステムは、市場自体は現在も縮小傾向が続いているんですが、昨年末より各社が新商品、新カテゴリーを投入し、対前年比ベースでは年末から回復の兆しを見せているという状況になっています。

 続きまして、こちらのチャートが主要家電製品のマナウス経済特区での生産数量の推移となります。総じて、ほぼ全カテゴリーにおきまして、前年を超えるベースでの売上が推移しております。唯一電子レンジのみが対前年を下回っておりますが、これは一昨年、2017年からの市場在庫調整が昨年行われたと伺っております。

 続きまして、景況感調査の結果報告に移らさせてもらいたいと思います。冒頭でも説明しましたが、こちらは毎年半期ごとに部会メンバーに対し景況感の意識調査を行い、その結果をまとめたものです。ご覧いただければお分かりの通り、今回のアンケート調査では、18年の回顧、19年の展望のどちらにおいても、悪化と回答された企業の方はゼロで、全メンバーの皆さんが維持あるいは改善と回答されており、これからもビジネス環境は回復基調にあるということがうかがえるかと思います。では次お願いいたします。

 そしてこちらが部会メンバーからのコメントをサマリーしたものになります。まず18年の回顧ですけれども、トラックスト、レアル安、大統領選などネガティブ要因となるイベントはあったものの、各社の自助努力により、回答企業の全てが対前年でプラス成長を達成したという力強いコメントが多々ありました。また19年の展望につきましても、新政権による諸改革への積極的な取り組み等から、ブラジル経済状況の好転を期待し、19年に関しても引き続き売上成長を見込むというコメントが多くありました。そして、このモメンタムを維持・拡大させていくために、各社ともに販売施策を強化させていく、ただしその一方で、こちらに書いてありますような、政治経済、金利等のリスクに備え、各社ともに事業体質、資産管理等を引き続き厳しくしていくというコメントもいただきました。

 以上が景況感調査の結果報告となります。続きまして、本日もう一つの議題ですけども、マナウスのフリーゾーンに関してですね、今回の機会を利用して少し説明させていただきたいと思います。

 まず、マナウス・フリーゾーン。おそらくお耳にした方はいらっしゃると思うんですけども、Zona Franca de Manausですけれども、この制定の目的ですが、まず二つ、地域開発と国家保安の確立という2点が大義名分となっております。マナウスは、ご覧いただければ分かるように、ブラジル北部の国境に面しており、国防の観点からも大変重要な意味を持つ都市です。人口は200万人超の都市で、国内では7番目に大きい都市となっております。

 現在このマナウス経済特区に進出している企業は全部で400社超。そのうち日系企業が32社と聞いております。また、このマナウスゾーンがですね、法令にて制定され、実際に経済特区としてのオペレーションを開始したのがですね、記録を見ますと1967年の2月28日となっていまして、偶然にも52年前の今日がマナウスのオペレーションが開始された日となり、今日が52回目のアニバーサリーとなります。

 また、これまでの間ですね、幾度となくこのマナウスのフリーゾーンの税制恩典の期間延長がなされたんですけれども、現時点で法令上ではですね、2073年、たいへん長い期間ですけれども、までこのマナウスゾーンでの税制恩典は有効と法令上では制定されています。

 この写真を見ていただければ分かるんですが、先週ですね、野口総領事にですね、実際にマナウスまでお越しいただいて、パナソニックさんと弊社の工場を視察していただきました。それと同時に、今日発表しますオペレーション面での概要と課題点も共有させてもらいました。この場を借りまして野口総領事にはお忙しい所わざわざお越しいただいてありがとうございました。

 続きまして、一番重要なところなんですが、マナウス経済特区でどういう税制恩典があるのというところなんですが、実際税制恩典のルールは非常に、業種、オペレーション、形態により様々で、一言で言い表すのは非常に難しいんですが、今回はあくまでも一般的な情報共有という形で、大括りでこのようにチャートにまとめてみました。

 まずですね、一点目なんですが、マナウス経済特区に登記した企業に対しては法人税の25%が減免。続きまして、一番大きいインパクトがあるところですけれども、工業製品税、いわゆるIPIですね、が、マナウス経済特区で生産された部品に関しては100%免除。そして州税にあたるICMSですが、該当商品によりこのパーセンテージが違いますが、55~100%減免。また、マナウスに原材料として持ち込まれる素材部品に関しては、最大88%までの輸入関税の減免。そして、国が徴収するPIS/Cofinsですね、に関しても、3.65%までの減免となっております。繰り返しますが、このチャートはあくまでも、今回のために一般的なパーセンテージを利用したので、業種により個々違うので、今日は一般的なサマリーとしてご理解ください。

 続きまして、マナウス経済特区の現在のオペレーション概況ですが、まず左上のチャートですね、棒線のグラフがあると思いますが、こちらがマナウス経済特区での生産高になります。青の棒線がレアルベース、オレンジの棒線がドルベースになります。レアルベースでは2018年の生産高大きく伸ばしておりますが、ドルベースではほぼほぼ横ばいなのが見て分かるかと思うんですが、これはやはり為替の影響が一番あるんじゃないかと思われます。しかしながら、右下ですね、チャートを見てもらいますと、これはマナウス経済特区に持ち込まれた輸入材、これは黄色の棒線ですね、それとマナウスから輸出されたもの、こっち緑です、の推移のチャートなんですが、輸入材はドルベースでも、こちらはドルベースの棒線なんですが、ドルベースでもしっかり伸びておりますので、為替の影響はあるものの、各社ともに昨今の経済状況の好転に伴い、先行きのビジネス経済に向けた仕込みを行っているのではないかと思われます。

 続きまして、左下のチャートですけれども、こちらはマナウス経済特区で働く従業員の方の数の推移ですね。こちらも数年間ほぼ横ばいが続いていますが、まあ我々生産設備ですとか、常に生産効率を求めていますので、生産のオートメーション化、あるいはロボット等の導入により、生産面の効率化が図られているんじゃないかというふうに見ております。

 最後に右上の、経済特区の業態別の比率ですが、電気機器、パソコン、携帯を中心としたIT機器、二輪、オートバイですね、それとあと化学製品で全体の約8割近くを占めるという状況に今なっています。

 続きまして、まあこれだけ見るとマナウス、非常においしいビジネスだという感じなんですが、マナウスの経済特区でビジネスをするにはいくつかの制約があります。それをですね、今日一部ご紹介するとともに、ここにやはり大きな課題点も存在しておりますので、こちらも少し合わせて紹介したいと思います。

 まず、今までに説明してきた税制恩典ですね、を得るには、ある一定の割合で部品の現地調達をクリアする必要があります。これはPPBと呼ばれているんですけれども、具体的な例を挙げますと、例えば弊社の商品でテレビですと、テレビで税制恩典を受けるには、皆さん良くご存知、リモコンですね、リモコンは100%部品から現地調達、そして現地で製造しないといけないというルールがあります。あるいは、基盤の一部、あるいはメモリーの一部といった主要なコンポーネントにも現地調達のルールが課されています。最近のトレンドとしてはですね、この現地調達のルールが年々厳しくなってきています。現地調達の比率が上昇傾向にあります。問題はこの現地調達する部品自体のですね、質とコスト競争力が問題で、彼らは規制で守られているので、ここの技術革新が非常に遅れているんですね。なので、質・コストともに非常に、粗悪と言っては言葉は悪いんですけど、世界標準からするとやや見劣りするという状況です。なので、せっかく税制恩典を受けてもですね、この部分でかなり相殺されてしまう部分がある現実がございます。

 もう一点はですね、現在の装置組立産業ですと、部品の送付というのは、すでに部品サプライヤーから送付される時にですね、複数の部品を組み合わせて、モジュール化と呼ばれるんですが、モジュール化された形で送付されるのが一般的なんですが、マナウス経済特区ではあくまでもひとつひとつの部品単位の輸入、そしてマナウスでの組み立てが義務付けられております。これもひとつ作業効率の悪化を招いているという要因でもあります。

 もう一点ですが、経済特区は税制恩典を与えることで産業の誘致を図ることが目的なんですが、同時にですね、常にアマゾナス州の州の税制アップというターゲットも同時に持ち合わせているので、毎年のようにルールが変わるんですね。ルール改訂が行われます。このルール改訂が突然起こったりするので、我々としては非常に採算構造の確定、決めるのが難しい、あるいは先行きも不透明なので、結果として投資判断が難しいという課題もございます。

 こういったいくつかの課題点に関しまして、現在ですね、我々の電機業界を代表した産業団体でエレトロスというのがあるんですが、そこを通じてですね、マナウス経済特区の窓口機関であるSuframaという機関があるんですが、そこと今協議を重ねて改善を図っているんですが、ここはぜひとも、野口総領事も来ていただいたので、ぜひとも日本政府からも強いサポートをいただけたらなと思います。

 以上がマナウスのオペレーションの概要を簡単にまとめたものなんですけど、こちらが最後のページになります。本日の副題でもある「成長への期待と変化への対応」に則してですね、部会メンバーからいただいた、商工会議所、日本あるいはブラジル政府への要望のサマリーとなります。

 まず1点目ですが、前回のシンポジュームでも話題となった、日本とのEPA締結推進のところですが、特に産業機器の業界ですね、欧州勢の競合が非常に激しくて、欧州とブラジルとの間のEPAの動きにたいへん注目しております。ぜひ日本政府にお願いしたいのは、我々が、日本が優位にならずとも、少なくとも劣後しない環境は最低限確保していただきたいという要望が出てきております。

 また、先程述べました、昨今の米中摩擦の影響もあり、特に中国からの官民一体となったブラジルへのアグレッシブなアプローチが昨今顕在化していますが、日本もですね、負けないように官民が一体となった関係構築をぜひ進めてほしいというリクエストも出てきております。具体的にいくつかの例が出ているんですが、商工会議所を通じたオールジャパン連携。具体的には五輪と連携した日本の技術展、日本の省エネ技術紹介セミナーといったことなどをやったらどうかといった具体的なコメントも出てきております。

 最後ですが、先程ご説明したマナウスのところですけれども、マナウス特区でオペレーションをしている企業メンバーからは、先程述べた課題点に関してですね、やはり税制恩典ルールの適正かつ公平な運用をぜひともお願いしたいというリクエストが出てきております。

 電子電気部会からは以上です。ご清聴ありがとうございました。

 

司会

 日比部会長どうもありがとうございました。ただ今の発表につきましてご質問のある方、挙手をお願いできればと思います。よろしいでしょうか。それでは電気電子部会の発表は以上とさせていただきます。日比部会長、どうもありがとうございました。

 引き続きまして、食品部会の発表に移りたいと思います。黒崎部会長より発表をいただきます。よろしくお願いいたします。

 

食品部会

黒崎正吉 部会長

 味の素の黒崎でございます。よろしくお願いいたします。

 本日はこの大きく3本立てで、1に食品部会会員企業、2に市場および会員企業状況、3に本日の副題「成長への期待、変化への対応」という形でご報告させていただきます。

 まず、食品部会企業でございますけれども、食品部会も様々な業態で構成されていると。特徴はですね、懇親会ですか、の参加率がきわめて高い。前回もそうだったんですけど、一方ですね、このシンポジュームへの参加率が低い。ちょっと寂しいというところがございますが、非常に明るい部会ということで、みんな前向きにがんばっておるという部会でございます。

 市場概況ということでございますが、まず小売市場全体は2016年以降緩やかな回復基調が継続しております。ただし、一般のスーパーは落ちております。対前年、18年度95%になっているというふうに見ております。一方、キャッシュ&キャリー、これは本来業務用スーパーからスタートしておるんですけれども、低価格で販売しておると。で、今は一般消費者にも開放しておると。これが対前年で118%ほど伸びていると。そういったことで全体の底上げがなされて、小売市場は伸びているという状況。つまり、流通構造の変化も同時に起きているということでございます。当然、消費者は低価格志向がさらに強まっている、プラス、品質へのこだわりというのもさらに強くなってきているというのが状況でございます。また外食市場については、対前年で108%程度ということで、安定的な成長が続いているというふうに見ております。はい、お願いします。

 続きましてセグメント別会員企業状況ということでございますが、まず最初に、やはり18年度、食品部会の企業もトラックストライキの影響が大きく出ました。ただ、リカバリーをですね、各企業とも非常に迅速に努力をしたということ。また、メーカーでございますので、為替変動、原料輸入、あるいは、業態によっては国内販売、あるいは輸出といったことで、為替影響がですね、ポジ、ネガ双方に期を追うごとに出ているという状況でございます。また、大統領選後はですね、市場が新政権を好意的に受け止めて、消費も好転しつつあるというふうに見ております。

 それでは、主な企業状況ということでございますが、調味料、これ弊社でございますけれども、こちらの方の市場は先程申し上げた通り、活動状況としましては主要商品でシェアアップというのが図れてきているという状況でございます。

 次にしょうゆ、これキッコーマンさんですけれども、やはり輸入しょうゆは輸入コスト等に加え流通マージン、ご存知のようにこの国は非常に高い。で、現地メーカーとの価格差から厳しい競争が続いていると。ただし、右側にございますけれども、新たな手をキッコーマンさんもどんどん打って、始めてきていると。これは後ほどご紹介させていただきたいと思います。

 酒類。こちらもですね、こちら東麒麟さんですけれども、市場としてはやはり低価格志向と。じゃあそこにどう手を打っていくのかというのが去年の課題でしたけれども、18年度、具体的な手を打って、19年度につながる対応が東麒麟さん取られていますので、これも後ほどご紹介したいと思います。

 コーヒーにつきましては、これは三井アリメントスさんとイグアスコーヒーさんでございますけれども、コーヒーについては豊作による生豆価格下落により競争は激化も、国内市場は103%で拡大。輸出インスタントコーヒーも国際競争力を維持といったような状況の中で、それぞれ、18年度、あるいは将来に向けての工夫をされていますので、後ほどこれも紹介させていただこうと思います。

 即席めん、これ日清さんですね。総需要はやはり、キャッシュ&キャリーですね、全体を押し上げていると。18年度すばらしいのは、金額シェアで過去最高を更新中と。これ、コミュニケーション戦略も相まってですね、非常に良い効果が出ているということでございます。これも後ほど少し紹介させていただきます。

 食肉のNHフードズん。鶏肉ですね。生産量はトラックストライキ等の影響で調整が行われ、対前年微減という状況でございますが、新たな取り組みをですね、右にございますようにNHフーズさんも取られ始めているということで、攻めの方に移っているという状況でございます。

 乳酸飲料。こちらはヤクルトさんでございますが、ヤクルトさんの商品は独特の商品でございますので、市場として中々捉えられないというか、ヤクルト自体が市場と。とはいえ、似ている商品の競合はあるという中での戦いということでございます。

 香料。食品添加剤等ですね。高砂香料さん等ですけども、前年に比べて好転の兆しということでございます。右にございますように、日系企業のイメージをしっかり活用した戦略を進めていこうという状況でございます。関連業種、こちらにございます通りですね、ありますので、ご覧ください。

 それでは次に、これからのキーワード、市場の今後のポイントを我々なりに分析、整理した内容がこちらでございます。

 一つ目、他の部会でもございましたけれども、景気は回復基調にあり、新大統領就任によってですね、市場は歓迎ムードと。急激な成長はですね、市場、望めません、というふうに見ております。ただし、緩やかな成長が期待できるだろうと。まあそういった中で流通の力関係、構造も変化してきていますので、そこも見逃さずに対応していく必要があるであろうと。

 片カッコ2でありますが、一方、とはいえまだまだ先行きに不透明感が残ることも事実であろうと。為替相場、食品関連の場合、表示規制ですね、の問題、あるいは、どこも一緒ですけど税制、あるいはトラックストライキ等ですね。我々としては、企業として不測の事態に備えたリスク対応は必須であろうということでございます。

 3点目。また消費者のライフサイクルの変化に伴って、消費者自身のニーズが新たに変化してきていると。そして、先程申しましたように、品質へのこだわり、あるいは健康へのこだわりといったことがさらに強くなってきていると。

 大きく3点挙げていますけども、先程も言いましたように、低価格志向の強まり、高付加価値や品質へのこだわり、そしてデジタルツールの普及と多様化が与える影響も非常に大きくなってきているということでございます。

 それでは、ここから副題の「成長への期待、変化への対応」を踏まえて、これからのキーワードはということでございますが、食品部会としては大きく二つに整理させていただきました。一つは、三つの戦い。もう一つは、リスクマネージメントの強化ということでございます。

 一つ目の三つの戦い。三つをどういうふうに選んでいるかといいますと、一つは当然ですけれども競合との戦い。そのためには消費者ニーズの掘り起こし、さらなるですね。スペシャリティ―による差別化。つまり、付加価値をどうつけていけるか。真似されないものをどう作っていけるか。単に商品だけではなくて、サービス等々も含めてですね。そして、低価格志向に対しての価格戦略ということです。単に価格競争に入らない価格戦略といったものをどう作り上げていけるかというのがポイントになってくるだろうと。

 二つ目は、時間との戦い。こちらの方はスピードとタイミングというふうに我々の中では整理しております。一つは製品サービス開発のスピードアップですね。許認可も含めた開発のスピードアップ。事業環境ほんとうに早く変化しますので、変化への迅速な対応をどうできるのかということ。これはスピード。三つ目。成長の機会を逃さないということですね。こちらの方はタイミング。まあ、チャンスが来たら、がばっと掴むということですね。中々、チャンスが来たら、がばっと掴まないと、すっと前を通り過ぎるともう中々掴まえられませんのでね。色んなケースがございますが、成長の機会を逃さないと。

 三つ目は固定概念との戦いと。どうしても我々、過去の成功体験、失敗体験から、知らないうちに固定概念を作っておりますけれども、この変化の激しい中で、どうそれを我々自身が打ち破っていけるかということが大切だろうと。そういった意味では、一つ目は既存ビジネスの強化と革新。そして二つ目は、さらに踏み込んで新たな製品、あるいはサービス、事業ポートフォリオの進化といったことにチャレンジしていく必要があるだろうと、メーカーとしてですね。三つ目。デジタルトランスフォーメーションと書いておりますけども、これから先、もう既に始まっておる訳でございますが、まだどの企業も十分な対応ができていない。あるいはデジタルトランスフォーメーション対応とそれをどう活用するかというレベルにはまだまだこれからというところですので、固定概念を打ち破っていかにこれをですね、メーカーとして取り組んでいくか。逆に言うと、固定概念、特に年を取ってきている人たち、私も含めてなんですけど、頭かたい訳ですよね。デジタルトランスフォーメーションとか言われても、ふんなんて言って。分からないことを限界にしないようにですね、我々リーダーとしてやっていく必要があるだろうということでございます。

 それでは、この三つの戦いに沿ってですね、ちょっと各社の具体的事例をご紹介したいと思います。

 まず一つ目ですけれども、競合との戦いでございますが、これは東麒麟さんの例です。東麒麟さん、清酒で低価格競合品に非常に悩まされていた訳ですけれども、実は東麒麟さん、18年度に低価格帯清酒の大幅なリニューアル、これは競合に価格でミートしつつ、圧倒的な品質差を出していると。価格だけではありませんと。消費者に合わせて低価格は用意したけれども、価格競争にさらに入らないような品質差異というのを作って行ったということであります。そして同時に、これまでの高価格帯、フードサービスも好調ですので、高価格帯の清酒も売れる訳ですね、その両輪で回していくという取り組みでございます。

 しょうゆ、キッコーマンさんの例でございますけれども、こちらも先程ありましたように、輸入、非常にマージンかかる。そして、ブラジルには非常に伝統的なブランドの低価格のしょうゆがある。そしてブラジルの人はその味に慣れているという中で、苦労されておりますけれども、非常に東麒麟さんと似た戦略であります。液体調味料。新コンセプトの現地志向の、価格がミートするもの。しかも差別化ができるもの。ということで、現地の志向に合わせたものを、やっぱり伝統あるしょうゆという一つのコンセプトを乗り越えていくというのは非常にたいへんな訳ですけれども、そこを乗り越えての商品開発。と同時に、写真にございますように、非常においしい、我々にとっておいしい新鮮な、常にですね、しょうゆも、これも高価格ですけれども、両輪で回していくということでございます。

 これ、競合との戦いでご紹介させていただいておりますけども、ある意味では固定概念との戦いといったようなこともあったかと思います。

 あと、キッコーマンさんでいうと、キッコーマングループの中のJFCさんがブラジルに本格参入。事業拡大路線にこれからさらに入っていくということで、食品部会、全面的に応援をしていきたいというふうに思っております。

 競合との戦い。続きましては、コーヒー、三井アリメントスさんの例でございますけれども、グルメコーヒー、カプセルコーヒーの拡充ということで、こちらの方は逆にブラジル人のニーズに合わせて、高品質を重視する製品ラインナップを拡充しているということでございます。

 チョコレート。これハラルドさんですけども、母体の不二製油さんが油の技術をもっていらっしゃると。その技術を使って、ブラジルでのチョコレート市場に新たな商品を展開していこうと。スペシャリティ―ですね。それが、日本ではない、チョコレートピザドッセ、チョコレートのピザですね、そういったチャレンジを始められているということでございます。

 競合との戦い、多いんですけど、ヤクルトさんの例でございます。プロバイオティクス普及の取り組みと。これは競合との違い、商品品質のレベルの違いというのをしっかり敷衍していくと、普及していくという取り組み、そこで差別化を作っていく。これは非常に地道な活動を続けていらっしゃると。ただし継続は力なりと。これを継続していくということでございます。

 食肉、NHフーズさんでございますけれども、ウルグアイに拠点を移すと。ブラジルからですね。南米リソースを集中と。で、欧州および米国の巨大市場に加えて、食料需要が急増するアジア市場に食肉を提供。海外売上の拡大の加速をめざすということでございます。これによって、まあ大胆な判断をされた訳ですけれども、田島社長ですね、こちらの、ウルグアイに引っ越すということに相成りました。田島社長はブラジルの方が好きだそうです。そうなので、食品部会継続して関係を維持していこうということにいたしております。

 次、時間との戦いでちょっと挙げさせていただいておりますのが、これもヤクルトさんの事例でございます。ご存知のように、ヤクルトさんの強みはヤクルトレディですね。これ、IT技術を駆使して、現場情報、売りの情報をタイムリーに電子伝票で集約すると。それによって、動き方を瞬時に決められるという取り組みに入ってらっしゃってきています。こちらは時間との戦い、スピードということでもあるし、過去の固定概念というものを打ち破ってということでもあるかと思います。

 NHフーズさんも、時間との戦いでは、先程他の部会でも出てきましたけれども、商品の登録ですね。発売の期間をどう短くできるかといった取り組みをしている。

 次は弊社なんですけれども、あまりにも環境変化が激しいし、リスクが多い訳なので、これは何とかせないかんというので、New Action Planという簡単な仕組みを、私自身が作っちゃいました。社内で。何をやっているかといいますと、常に課題、常にリスクというのを、常に洗い出している。各部門がですね。それを常に統合して早く手を打っていくという、最初はうまくいきませんでしたけども、何とか機能するようになってきたということで、ちょっと僭越ながら入れさせていただいております。

 最後、固定概念との戦いでございますけれども、これはイグアスコーヒーさんの例でございますが、IT技術を活用した製造メンテナンス管理等の強化によるさらなる製造効率の向上ということで、ここでもデジタル活用というのが始まる、さらに強化していく。AIの活用も含めてですね、さらに進化がこれからされていくということでございます。

 固定概念との戦い、味の素ですが、アミノバイタルというのを売っておりますけれども、ちょっと、高いんですよね、あれ。で、粉体なので、日本人にはいいんですけど、ブラジルの方にちょっと飲みにくいとかね。アミノバイタルは粉体だと思い込んでいる訳ですね、勝手に企業として。だから、粉体にこだわらないぞと。そこは固定概念を破るぞと。e-Commerceだけで売っていたんですけど、まあ一部PLゴルフ場とかありますけども、やっぱり一般のスーパーにも置こうと。ポンジアスーカル10店選んで、交渉して、これ食品部の方がアミノ酸部じゃなくてやっている訳ですね。で、10店に入りましたと。1週間置きましたと。ある店、4個売れましたと。でもポスデータ見たら、売れているのは本当は2個なんですね。2箱なんです。要は2箱万引きにあっている訳ですね。まあ、これをどう見るかと。やっぱり、ポテンシャルはあるんじゃないかと。でもちょっと高いぞということなので、現地生産に向けたスタディを加速しています。これは、コマーシャルですけどね。19年度中には半額ぐらいの価格で皆さんにご提供できるようにがんばりますので、ぜひお使いください。

 固定概念との戦い、最後、これは日清さんの素晴らしい例です。一つはですね、即席めん業界のスペックと相いれない乾麺の、規制ですね、重量規制みたいなのにあっていた訳ですね。これ、今までは受け身でそれに合わせるパターンが多かった訳ですけども、自らロビー活動を展開。で、スープを含む即席めんですね、ラーメンはその規定の対象外にすると。だから重量も非常にフリーに販売できるようなことができて、この業界には貢献しているというのが一点。

 もう一点、今日ぜひご紹介したいのがですね、新たなコミュニケーション戦略です。Youtube、Facebookを活用したユニークなコミュニケーション戦略を構築。これ、シリーズになっているんですけども、ブラジル人消費者に対して、これからもお好きなようにラーメンを調理してください、こういう調理の仕方しかないんですよではなくて。ブラジルの消費者の方の味覚は非常にレベルが高いということと、あともう一つは、やっぱりブラジルの皆さんは非常にですね、ユーモアを解する方々だと。そこにジャストミートして、YoutubeやFacebookを活用したコミュニケ-ション戦略を展開されているということでございます。

 これ、懐かしい写真でございますが、日本放送系だったと思いますけど、欽ちゃんが司会をやっているスター誕生、日曜日にやっていたと思うんですけどね。これ若い方はご存知ないと思います。これ、私が中学校のころ、青春時代ですよね、毎週楽しみに観ていましたね。野口総領事も昔ご覧になっていました?スタ誕ですね、そうですね。色んなスターが誕生いたしましたよね。やっぱり野口総領事もご覧になっていたと。平田事務総長はちょっと年代が上ですよね。そうですね。失礼しました。まあ、この前は映画からスターが出ていた訳ですね。そして、スター誕生に代表されるようにテレビからどんどんスターが出て行ったと。テレビの時代ということですね、当時。そして今は、ということで、これが日清の浅野社長です。これ、Youtube、Facebook、SNSですね、デジタルです。これ、製作費はですね、正直にはおっしゃっていただけませんでしたけども、ものすごく安い値段で作ったそうです。そして、Youtube、Facebookで、2月の最近の時点で1500万回の動画再生が記録されています。さらに伸びています。

 これ、たぶんこの中でもご覧になった方いらっしゃるんじゃないかと思うんですけども、ご覧になった方ちょっと手を挙げていただいてよろしいですか。ありがとうございます。野口総領事ご覧になっていますか。若い方の方が多いのかと思ったらそうでもないんですね。すばらしいですね。1500万回、さらに伸びています。私、一応調べてまいりました。1500万回がどのぐらいの意味を持つのか。正確には僕の部下が調べたわけですけども、例えば、2年前に大ヒットした「君の名は」という映画。これは日本だけでなくて世界中、特に人口の多い中国で爆発的にヒットした「君の名は」という映画、ご存知ですよね、皆さん。私も日本出張の時5、6回観ましたけども。これの予告の動画再生が1600万回。もうすぐこれを、浅野さん抜きます。ちなみにですね、もうちょっと感覚的に、人気がある歌手で、歌で再生されている、調べました。氷川きよしの「きよしのずんどこ節」。150万回。もうめじゃないわけですね。あとはですね、ちょっと前にはやったピコ太郎の一番再生された動画が1.3億回。まだ開きがあるんですね。ただ、日清さん、これからシリーズでやりますので、2、3年後にはこれも抜くかもしれません。ということで、食品部会の中では浅野さんのことをザ・スターと呼ばせていただいておりまして、この前の懇親会の時にですね、浅野さんの隣に座って、ザ・スターとか言ったら、いや黒崎さん、たいへんなんですよと。PL行ったらキャディさんが全員私のことを知っているんです。私、ブラジル中でどうも面が割れているようです。やっぱり身の安全を守らなきゃいけませんからね。注意してください、ということで、リスクマネージメントも大切よということを確認しあった次第でございます。

 で、リスクなんですけれども、リスクマネージメントの強化もセットだよということでございます。一つは為替変動リスク。為替感度をしっかり見て、一喜一憂、どうしてもしちゃんですけど、できるだけしないように。為替が振れて利益が変わる訳ですけれども、うまく行っているのか行っていないのか、為替感度をしっかり見ておかないと評価を間違ってしまいますので、ぜひそういったことを我々していこうと。

 あとブラジル特有のリスクですね。こちらにあるようなリスクでございますけども、こちらの方は食品部会で勉強会を開いて、勉強していこうじゃないかということでございます。

 3番目。将来的な環境変化へのリスク対応ということでございます。これは基礎体力の強化、他の部会でも発表、同じ内容ございましたけれども、我々もこれが必要だろうと。それは、やはりメーカーですので、現場での創意工夫でのコストダウンということもございますし、やはりキャッシュマネジメントの強化ということが今後非常に重要と。PLだけではなくて、BSキャッシュフロー、そして全バリューチェーンで何が我々できるかといったような取り組みをさらに強化していくということかと考えております。

 事業運営、事業を成長させる事業マネジメントと、リスクマネジメントは、別物ではなくて、表裏一体でやっていかないと、どこかでつまずくだろうというのが我々の考えで、リスクマネジメントの強化ということでございます。

 最後に、食品部会、Team Japanとしてがんばっていこうと。企業の垣根を超えた積極的な交流、これは食品部会にとどまらず、他部会ともということです。そして、互いの強みを生かした協業、アライアンスみたいなことですね、ができないか、これからちょっと模索していきたいね、という話になっております。我々の事業を通じてブラジル社会、消費者への貢献、を通じてさらに成長と。で、リスクに十分に備えながら成長の機会を逃さずチャレンジしていこうということでございます。ご清聴ありがとうございました。

 

司会

 黒崎部会長、どうもありがとうございました。前回三つの戦いという言葉が出てきて、今回さらに、非常にバージョンアップしてですね、具体的な取り組み事例、そしてYoutubeの話も出てきて、非常に参考になったかと思います。ただ今の発表につきましてご質問のある方、いかがでしょうか。挙手をお願いします。よろしいでしょうか。はい。それでは食品部会の発表は以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして運輸サービス部会の発表に移りたいと思います。吉田部会長、よろしくお願いいたします。

 

運輸サービス部会

吉田信吾 部会長

 それでは運輸サービス部会の説明の方に入らせていただきます。NYKの吉田と申します。よろしくお願いいたします。

 当部会なんですけれども、物流、航空貨物、海運、航空旅客、旅行・ホテル、そして通信ITと、6つの細かいセグメントに分かれております。それぞれのセグメントについて、18年のレビューと、19年の展望についてご説明させていただいた後でですね、「成長への期待、変化への対応」というテーマについてですね、改めて業界まとめてご説明させていただきたいというふうに思います。

 まず、一つ目のセグメントであります物流なんですけれども、皆様の認識している物流という言葉とですね、業界内の物流、あるいは物流業界という意味はですね、若干意味が異なるかもしれないので、ちょっと補足説明させていただくと、物が動くものを全て物流というふうに理解されている方もいらっしゃるかもしれませんが、ここで言う物流というのは、主にBtoB、かつDoor to Doorのビジネスを営む、主にフォワーダー業、通関とか倉庫業といったものを含むフォワーダー業のサービスのことを指しております。

 この業界の18年の回顧でございますが、最大のトピックはですね、やはりトラック運転手のストライキというところかと考えております。特にですね、業界として採り上げたいのはですね、ストライキそのものというより、このストライキによって顕在化した物流インフラの脆弱さだというふうに考えてございます。ストライキで停滞した貨物がですね、港湾に多くたまり、そして動き出した時にですね、その荷物、大量の貨物をさばききれなかったこと。いわゆる港湾ターミナルのキャパシティの問題。それとですね、その滞ったことから、緊急性が増して空港に流れた貨物が、また今度は空港で停滞してしまったという、この問題が非常に大きかったのではないかというふうに考えております。ここにあります写真、これはカンピーナスのビラコポス空港の混雑状況を撮影したものでございます。それを踏まえてですね、2019年の展望の方に移りたいと思います。

 まずですね、一般的な話を申し上げますと、2019年は経済の伸長とともに輸出入の貨物ともに増加するというふうに期待しております。加えまして、ブラジルの方もe-Commerceが年々盛んになってきておりまして、いま規模は2兆円程度の規模なんですけども、さらに拡大していくということで、自然増でいくとですね、中々ここで期待できるというところでございます。ここでですね、期待されるのが、やはり、先程2018年の回顧で触れました空港・港湾のインフラの一層の整備ということになります。ここは非常にブラジル政府頼みになるところが大きいんですけれども、ここ数年のインフラ投資ですね。空港・港湾といったところへのインフラ投資のトレンドを見てみると、実は2014年をピークにですね、右肩下がりとなっているというところでございます。ここでですね、新政権に替わりまして、これがどう動くかというのが我々の注目事項でございます。

 すみません、ちょっと昨日気づいたので、資料を代えられなかったんですけども、この数字が3桁間違っていまして、これ、80kビリオンというと日本円で日本の国家予算並みになってしまうんですけども、これはkを除いてですね、2018年でいいますと27.8、28ビリオンレアイスということで、日本円で約8000億円ぐらいですね。それぐらいの投資であったということでございます。

 ストライキというのは非常に我々懸念事項ではございますけれども、まあ明るい話題といたしましては、昨年から始まっておりますPortal Unico。これ、昨年は輸出ブロックの方が稼働開始したんですけれども、今年はいよいよ輸入のところが、輸入ブロックの方、DU-IMPというのが始まり、これによってですね、プロセスが大幅に改善されるということが期待されます。

 あとですね、海上貨物につきまして、一つ、これ2020年の話なんですけれども、SOx規制というのが始まりまして、これがどういうふうに動くかと。おそらく2019年の後半ぐらいから具体的な事が分かってくると思いますので、ここも我々としては注視していかなければいけないと。お客さんにもかかわってくる非常に大きなポイントだと考えております。

 続きまして、海運業界の方に移ります。コンテナとドライバルク、それと自動車船という三つの切り口でご説明させていただきます。まずコンテナはですね、これは基本的には景気連動産業でございまして、2018年はですね、割と堅調に動いたというところでございます。ドライバルクにつきましてもですね、比較的堅調に推移していたんですけれども、年末にですね、ちょっと中国の景気の方が減速して、軟化傾向にあるという今の状況でございます。自動車船。ここは先程も説明がありましたけれども、アルゼンチンの経済危機というのを原因にしてですね、第3四半期から大幅に減っているというような状況でございます。

 2019年の展望ですけれども、コンテナ船はですね、まあ先程も色々なご説明がございましたけれども、中国経済の減速ですとか、米中貿易戦争の行方とかですね、Brexit等々の不安定な要素はあるのですけど、GDPの成長に連動してこの業界も伸びていくのではないかという割と楽観的な見通しを持っております。ドライバルクにつきましてはですね、これはもう完全に中国の景気次第という非常に相関関係が高いものなんですけども、加えましてですね、先日起きましたブラジルの鉱業ダムの決壊によって生産そのものが減ってしまうのではないかというところがいま気になっているところです。また、経済が上向けばですね、ブラジルのレアルは強くなりますので、それが結果として一次産品の価格を押し上げて、競争力を下げるというところは懸念されるところかというふうに思います。

 航空貨物の方でございます。航空貨物、世界的に割と堅調に伸びている業界でございます。全世界で3.5%ぐらい伸びたんですけれども、南米の方はさらに伸びが大きくてですね、北米-南米、この縦に南北を結ぶ航空貨物に関しては5.4%ということで、世界の平均の成長率よりも大きかった。加えましてですね、量は少ないんですけれども、南米間ですね、ブラジル-コロンビアだとか、ブラジル-チリといったところというのは10%伸びていると。これ、ひとつの原因はですね、ストライキによる反動というところはあるのですけれども、一方で自然増のところもあってですね、ここは非常に手堅く2018年は伸びたというところでございます。

 2019年の展望につきましても、引き続き好調であろうと。全世界的にも18年並みの伸びが期待されているというところでございます。また、ブラジルについてはですね、米中貿易摩擦によるプラスの効果があるというちょっと期待もしているというようなところです。全体的に、ブラジルの航空貨物はですね、調子は良いのですけれども、マイナス要因としてはですね、やはり輸出入のインバランスがですね、非常に大きいと。要は入って来る貨物の方が多くて、中々出ていくものが少ないというところでですね、価格にそれが反映されてしまうと。まあ我々業界として期待するところはですね、航空貨物というのは元々運賃負担力のある、高付加価値のものを運ぶための手段になりますので、ブラジル発のそういった高付加価値の競争力のあるものがですね、ブラジルから出てくるというところに期待したいというふうに考えております。

 航空旅客の方に移ります。2018年の回顧ですけれども、実は国内線、国際線ともにですね、数も増えて売上も増えていると。ただ、国際線の方に注目していただきたいんですけれども、実はですね、売上を使用者数で割った単価は実は下がっていると。ここに航空旅客の中々苦しい現状が見て取れます。すなわちですね、非常に競争が厳しいと。コストは皆さんご存知の通り年々上がる中でですね、国際競争、中東勢ですね、中東勢なども入ってきて非常に、売上の方は頭打ちになっている中でですね、非常に厳しい競争を強いられていると。それが証拠にですね、昨年の12月にAvianca、これはAviancaのブラジル法人になるんですけれども、ここが民事再生法を申請したりですとか、あるいはリオの駐在員の方が割と頻繁に使われていると聞いているんですけれども、リオ-NY間のアメリカン、これが撤退してしまったというあたりでですね、非常に、あまり景気の良い話が聞こえてこないというようなところでですね、中々解決の糸口が見えてこないというふうに聞いております。

 2019年の展望といたしましてはですね、ちょっと悲しいかな、航空会社のLCC化が進むというようなことを言われております。すなわちですね、コストも下げられない、料金も上げられない中でですね、料金を細分化して、安い運賃で乗られるお客様に対してはですね、荷物代を取ったりですとか、座席指定、これは元々はただだったんですが、そういったものを取って生き残りを模索していくような状況になっているというところでございます。

 旅行・ホテル業界。ここ、ちょっとですね、航空の話が、前の資料とは母集団が全然違うんですけれども、大体傾向としては同じですね。国内線は発券枚数も売上高も単価も全部上がっているという状況。国際線については、発券数と売上高は上がっているけれども、単価については下がっているというような状況でございます。ここで注目すべきはですね、三つ目のホテルのところでございまして、稼働率、平均宿泊費、ともに実は上がっております。当然売上高の方も上がっている訳なんですけれども、割とずっと辛い状況だったホテル業界にひとつ光が差してきたというような感じがしております。あと、この業界に属します旅行代理店の方からもですね、色々コメントをいただいているんですけれども、中々、特に日系のですね、代理店さん、10数社の旅行代理店に関しましてはですね、狭い日系マーケットというところでですね、非常につばぜり合いをしているような状況が続いてですね、中々厳しい状況にあるという状況だと、これが続いているというふうに聞いております。

 この業界の2019年の展望でございますが、一つ我々として希望を持っているのがですね、ボルソナロの新政権の優先課題の一つに観光促進があるというふうに聞いているところでございます。具体的にどのような施策が出されるのかというところまではまだ分かっていないのですけれども、一説によればですね、日本人に対して観光ビザの免除の検討をしているというような話も聞こえておりまして、こういう話があるとですね、少し日本からのお客さんなんかについても起爆剤になるのではないかというところを期待しております。また、ブラジル発の観光に関して言えば、景気が良くなればですね、ドル安レアル高というところが進みますので、それによってですね、海外への旅行者も増えてくるのではないかという期待をしているというところでございます。

 ここでですね、がらっと変わりまして、通信IT業界の方のご説明をさせていただきます。通信ITにつきましては、さらにですね、モバイル業界、それと通信業界と分けてご説明させていただきたいと思います。SIMカードのキャリア間接続料の値下げによって、二つあったSIMを一つにしたりするというようなこともあって、数字だけを見るとですね、前年比3%と、携帯電話契約数が前年比マイナス3%となっているんですけれども、実質的にはそういったSIMの一本化みたいのがありますので、実際は堅調に伸びておりましてですね、普及率も現在110%と、かなり高い水準にございます。性能の方に関しましてもですね、2G、3Gから、どんどん4Gの方にですね、移行して、マーケットとしては緩やかに成長しているというふうに認識しております。

 この2018年でですね、目立った傾向というのは、今までの、いわゆる携帯電話というよりはですね、IOTの契約者が飛躍的に伸びているというところでございまして、2018年の成長率というのはですね、前年比で約21%ということでですね、台数にして約400万の契約が増えたということになります。2017年がこの半分ぐらいだったというので、この成長というのはかなり大きいと言えるかと思います。

 キャリア別のマーケットシェアにつきましては、Vivoが32%、Claro25%、TIM24%、Oi16%というところでございます。

 2019年の展望の方に移ります。今ちょっと我々が業界として注目しているのはですね、LPWAという、低消費電力、そして広範囲のそういうサービス帯なんですけれども、これの認可というものに我々業界としては注目してございます。これ非常に使い勝手の良いサービスになるんですけれども、ブラジルでも2018年初めに認可される予定だったものがですね、遅れていて、今後の進展についても不透明というところです。これが一つ、大きな注目事項でございます。

 もう一つ、5Gですね。5G、これについてもですね、もうそろそろ、本当であれば導入される予定だったんですけれども、これもですね、もう1年ぐらいまた遅れるのではないかというような話になっております。5Gの導入というのは、世界的には2019年から20年ぐらいというふうに言われておりますので、残念ながらですね、ブラジルというのは周回遅れだと言わざるを得ないというふうに考えております。日本の総務省相当でありますAnatelの認可がもう少しすみやかに進むということを今この業界としては願っているというところでございます。

 モバイルは以上でございまして、通信の方にいきますとですね、2018年はだいたい、インターネットユーザーも1000万ユーザー増えて、いま1億5000万というところでございます。この数、絶対数で言えばですね、当然南米では1番なんですけれども、まだ契約率という、人口に占める割合という意味ではまだ下位の方にいるという状況なので、言い換えればまだここに成長の余地があるというところかと思います。この業界の注目すべき点はですね、割と大手3社、NET、Vivo、Oiがですね、メジャーな会社なんですけれども、これを足しても70%ぐらいで、他の中小が非常にシェアを伸ばしているという傾向が見て取れます。2019年の展望ですが、光ファイバー網エリア拡大や、通信品質の改善というのが期待されているというところですね。

 今のモバイル、通信、総括いたしましてですね、IT業界全体として見ますと、2018年、非常に多くの企業がビジネス成長をしましたと。老朽化の設備の更改ですとか、クラウドサービスの利用ですとか、セキュリティの導入といったところでですね、大きな成長を見せたと。こういった中で見えてきた課題というのは、ITの進歩の激しい中でですね、それをコントロールできる人材、ITエンジニアの確保。それとインフラですね。高品質、広帯域の通信回線の確保というのが課題となって、それがまさに2019年の我々が取り組んでいかなければいけない課題だというふうに考えております。

 以上を踏まえましてですね、テーマの方に移らせていただきたいというふうに思います。これも6業界、ちょっとセグメントごとにご説明させていただきます。

 まず物流につきましては、非常に自然体で、経済の成長とeコマースの拡大というところで成長が見込まれる一方でですね、インフラの脆弱さが露呈し、また政治改革への反発に伴うストライキというのが懸念されるというところでございます。対応といたしましては、まずは、他力本願なんですけども、ブラジル物流インフラの拡充という所に期待したいと思います。そのためにはですね、ボルソナロ政権の政権運営の方に期待したいというふうに考えております。あと、Portal Unicoですね。先程申し上げた、輸入ブロックのですね、導入というものが、早く、そしていい形でですね、導入されることを我々としては願っているというところでございます。

 海運につきましては、まずコンテナなんですけれども、ここは純粋にコンテナの貨物は増えていくと考えております。その中で我々がすべきこと、日系キャリアとしての強み発揮というところなんですけど、元々日系キャリアはですね、日本のメーカーさんの海外進展とともに歩んできた歴史がございます。いまコンテナというものがどんどんコモディティと化している中でですね、我々はいわゆる、現地の工場にジャストインタイムで届けるという使命感を持っておりますので、それを強みとしてですね、日系企業さんと一緒にここは成長していくチャンスだというふうに考えております。

 自動車輸送はですね、輸入は今後、経済が良くなれば輸入は増えるんですけれども、まあアルゼンチンのショックのようなことがありまして、輸出が下がっていくという事態が想定される中で、ここは臨機応変に、サービスを改編しながら生き延びていくということかと思います。

 バルクにつきましては、これはもう完全に中国の経済次第というふうに考えております。

 航空貨物。これはですね、引き続き成長が継続されるというふうに考えておりますし、米中貿易摩擦による漁夫の利を得るというところもちょっと実は期待しております。その中で、輸出入のインバランスによる運賃の上昇を懸念しているというところでございます。まあ我々の願いとしては、アウトバウンド貨物のですね、これは非常に業界の思いなんですけども、運賃負担力の高い工業製品、こういうものがですね、ブラジルで作られていくことに期待しているというようなところでございます。

 航空旅客はですね、先程申し上げましたように非常に厳しい状況が続いておりますので、この景気回復によってですね、好循環、ポジティブスパイラルの方に変わるということを、今我々としては期待しております。景気が回復して、航空機需要が増え、便の消席率が上がってですね、単価増、というところをですね、考えております。一方、日系キャリアとしてはですね、戦略の絞り込みを行っていまして、高単価の顧客層への高品質サービスの提供ということで、例えば現地通貨決済の自社カードを開発したりだとか、現地で購入可能な自社ウェブを開発したりとかいう方向に今舵を切っているというところでございます。

 旅行・ホテルもですね、2019年は比較的明るい見通しを持っているんですけども、ドル安レアル高による海外旅行者増と販売の成長というところを期待しているんですけれども、こういう時こそですね、ホテルに関しては設備投資。やはり、例えばリオなんかではかなり老朽化の激しいホテルが多いですから、そういったところでですね、もっとちゃんと設備投資をしていくチャンスと捉えると。代理店につきましては引き続き厳しい競争はあるのですけれども、お客様のニーズにかなった商品の提供と、そのための豊富な知識、経験の獲得というのをしていかなければいけないというふうに考えております。

 最後ですね、IT通信。ここはIOT分野の成長というのが2019年としては考えられております。それに限らずですね、色々なところでの成長が見込まれますことから、まずはレベルの高いITエンジニアを確保すること、それと高品質かつ広帯域の通信回線を確保するというところが課題になってくるんだろうというふうに考えています。

 ちょっと業界のセグメントが細かく分かれておりまして、全体としてちょっと総花的な資料になってしまったんですけれども、何か皆様のお役に立てれば幸いでございます。以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

 

司会

 吉田部会長、たいへん多岐にわたる分野でございますけれども、非常に成長への期待、変化への対応というテーマにつきまして、非常に分かりやすく簡潔に取りまとめて発表いただきまして、どうもありがとうございました。ただ今の発表につきましてご質問のある方、挙手をお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは運輸サービス部会の発表は以上とさせていただきます。吉田部会長、どうもありがとうございました。

 それでは最後の発表となります。生活産業部会の発表となります。今川部会長より発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

生活産業部会

今川尚彦 部会長

 ブラジル戸田建設の今川です。本日大トリの発表をさせていただきます。非常に長時間のこの会議、最後、皆さんお疲れでしょうけれども、最後まで辛抱してですね、聞いていただけたらと思います。

 今年1月末に、建設不動産部会と繊維部会が合併しまして、新しく生活産業部会が発足しました。部会長を務める事になりました。どうぞよろしくお願いいたします。生活産業という名の部会ですが、建設不動産業界と繊維業界の接点を見出すことはたやすいことではなく、本日の発表は旧両部会の発表内容をあわせたものとなりますので、ご了承ください。

 まずは建設不動産業界の概況、繊維業界の概況、最後に生活産業部会の紹介をさせていただきたいと思います。

 それでは建設不動産市場の概況についてご報告します。ご覧のグラフは、2010年から今年の予測まで、10年間のGDP成長率の推移を示したものです。グレーが全体のGDP成長率、オレンジが建設、青が不動産となっています。中央銀行が2月15日に発表しました2018年のGDP成長率は1.15%でした。本日発表された数字は1.1%となっております。年初は2.4%程度が見込まれていましたが、5月のトラック運転手のストライキ、長引く政情不安等で下期にかけて減速。直近予測の1.3%も下回る結果となっております。2019年の予測としましては、新政権が推し進める年金制度改革等が成功すれば、2.5%程度の成長が見込まれるとされています。

 不動産は、昨年と今年のデータがございませんが、2017年までの動きは全体とほぼ一致した成長率を示しております。一方、建設は2014年から5年間に累計21%減退をしております。全体がプラスに転じた2017年以降もマイナス成長が続いております。2018年はマイナス2.6%前後でしたが、今年は何とか1.3%程度の成長が予測をされております。

 建設市場は他産業同様、2014年下期から不況に見舞われましたが、主要建材の生産量を見ればその落ち込みぶりがはっきり分かります。ご覧のグラフはブラジル地理統計院が実施している工業生産調査における、セメントの消費量と、鉄板コイルの生産量です。建設市況の指標となるセメントと鉄板コイルの生産量は、リセッション前の2012年を100とすると、2018年まで約7割程度まで落ちております。

 建設業界はどの国においても不況のあおりをまともに受け、回復も他産業より遅れるのが通例です。先程金属部会様からの発表にもございましたけれども、2020年以降の回復というふうになると思っております。ブラジルの現状は、2017年まで続いた景気低迷に加え、公共工事の大幅な減少と政界汚職事件が大きく影響しております。公共工事は過去の財政失策と、景気低迷に伴う歳入減で大幅に削減され、いまだに再開のめどが立っていません。

 次に建設コストの変動について説明いたします。年々確実に発生するインフレにより、建設コストも上昇しております。その中で特異なのは、人件費の上昇です。グラフは2007年から2018年までの建設コストに対する人件費と材料費の比率の変化を表したものです。2014年にリセッションが始まり、建設業界が低迷しているにもかかわらず、人件費は年々上がり、不況にあえぐ建設業界をさらに圧迫する一因となっております。

 次に、建設就業者の数について見てみます。上のグラフはブラジルの全体失業率です。直近の調査では、昨年第4四半期が11.6%となっておりました。最もひどかった1年前の13.7%からは2%の減で、改善はしつつあるものの、あいかわらず高止まりが続いています。下のグラフは建設就業者数の増減を表したものです。建設部門は2014年以降、正規雇用者を減らす一方で、過去4年間の離職者数は累計100万人に上っております。昨年は5年ぶりに増に転じましたが、1万7000人にとどまっており、ここ数年間で大幅に減少した建設就業者数の回復にはまだまだ程遠い状況でございます。

 次に不動産市場について報告いたします。2015年、16年と低迷したものの、持ち直しをしてきております。これを後押しするのがマイホームの購入です。政策金利は昨年2月に6.5%まで下がり、1年間変動をしておりません。過去2年間はインフレも低く、持ち家購入の動機となっております。グラフは2015年から18年の退職金積み立て制度、FGTSと、連邦貯蓄銀行の不動産融資の申込件数と総額です。FGTSの方は変動幅が小さいですが、連邦貯蓄銀行のSBPEは2016年、17年と落ち込んだものの、2018年、昨年は大きく増えております。

 上のグラフは、2017年1月から昨年9月までの全国の新築マンション販売と制約の累積件数。下のグラフは同期間の市場供給数です。上のグラフの通り、発売、制約ともに伸びているため、下のグラフの市場供給数は減り、近年目立っていた売れ残りマンションの数が減って、供給バランスが改善されてきていると言えます。

 次にマンションの平均価格についてですが、昨年第3四半期までの直近15ヶ月の上昇率を見てみますと、2017年3月を基準とした際に2%から7%の上昇率で推移しております。昨年7月以降は全国建設コスト指数、INCCを下回り、最近は約2年前の価格水準となっています。平均価格は地域によりばらつきがありますが、全国平均では平米あたり6123レアルでありました。

 次に賃料の推移を見てみます。FIPEZAPの統計はオーナーの取引希望価格をまとめたものであり、実際の賃料とは若干違いますが、分かりやすく賃料として今回説明をさせていただきます。先程のマンションの平均価格同様、賃料はここ1年間は2%程度の上昇率で推移しており、総合物価指数と比べても低い水準です。今年に入ってからも、ほぼ動きがなく、この傾向は当面は続くと見られています。

 以上、簡単ですが、建設不動産部門の概況を報告させていただきました。続いて、旧繊維部会からいただいた繊維業界の傾向を報告いたします。

 2018年は紡績の主原料である原綿が急激に高騰し、繊維業界、そして紡績業界を直撃いたしました。いまだに原綿のポジションは厳しいものがあります。それに対してこれからどうするかということですが、相場に左右されない定番商品からの脱却と競争力の強化、より強固な企業体質づくりを行う必要があります。このたびは全社の相場商品からの脱却についてご紹介いたします。

 ブラジルの繊維業界は、Tシャツをはじめとする丸編みが40~50万トンの糸を1年間で消費をしております。デニム関係が20万トン、タオルが10万~15万トン、その他10万~20万トンとなっております。あわせて約100万トンの市場ですが、ここに上位数%のプレミアムな市場を形成、創造したい、そう考えております。本日は、デコラソンという、生活に密着した、そしてやすらぎを与えるソファーやカーテンの市場に対してのプレミアムな開発を紹介いたします。

 こちらは、今年1月にフランクフルトで開催されたハイムテキスタイル展です。多くの情報をここで収集し、開発につなげ、お客様への情報提供を行います。こちらの赤枠に注目してみます。こちらを拡大しますと、生地のカラーと外観、形状のサンプルとなっております。そして、サンプル群の中でも赤色のこの生地に注目してみますと、生地の表面の凹凸感等がございますが、これを研究して、下のような新しい、このような糸の形を考え出して開発していくということになります。同様に、このカーテンについても、細かくクローズアップしてみますと、繊維の業界ではロングスラブと言っておりますが、この形状を参考に新商品開発を行ってまいります。そして、唯一無二の商品でプレミアムゾーンを形成したい、市場に新しい価値を提供したいと考えております。

 最後に、情報提供の一環としまして、今の注目カラーをご紹介いたします。現在の注目カラーはピンク系とグリーン系になっております。先程のイベントにおいても、例えばソファーとかカーテンですね、ピンクやグリーンでリビングのカラー構成を提案するブースもたくさんございます。一方で、確かにこれらのカラーは存在しますが、摩訶不思議な部分もございます。このように、日本では至極当然の活動をこのブラジルでも行い、プレミアムな生活環境のご提供につながればと考える次第です。

 最後に、まあ今年からですね、新しい生活産業部会というものができまして、この生活産業部会の今後の取り組みについて少し紹介させていただきます。

 旧建設不動産部会と旧繊維部会が統合ということでも、中々その接点というのは見つけることが難しくて、我々部会会員もですね、非常にまだとまどっている状況です。しかし、生活産業という言葉に注目すれば、新たな視点での展開が可能になるのではないかと思っております。

 これは、経済産業省の、子供向けのホームページです。皆さんちょっと頭が疲れていると思いますので、この簡単なやつで行きたいと思います。生活産業とは、人間が快適に、便利で、安心して、楽しく暮らすこと、全てに関わる複合産業となります。その中でも一般的には、衣食住および環境、娯楽などにおいて、一般消費者を顧客対象とするビジネスを指しております。製品で言えば、私たちの日々の生活に密接に関係する製品全てとなります。経済産業省の定義では、繊維、アパレル、服飾品、住宅、建材、住宅設備、家具、インテリア、生活、スポーツ用品、伝統的工芸品等とされています。この中の繊維、アパレル、服飾品は旧繊維部会に深く関わっております。住宅、建材、住宅設備は旧建設不動産部会に直結をしております。しかし、それだけでは全体を網羅しているとは言えません。生活産業は、業種を横断して、私たちの生活の質の向上をもたらす重要な複合産業です。繊維と建設不動産だけで生活産業部会を構成するよりも、多くの関連企業に広く参加していただくことで充実した部会になると考えております。

 我々は活動方針としまして、会議所内会員ならびに、関連業界への有用な情報の発信を掲げております。特化した業種にとらわれず、幅広く全体を見渡せる部会として存在し、情報を共有していきたいと思っております。情報交換会や勉強会も予定しており、関心のある方には広く開いていきたいと考えております。もちろん、懇親会やゴルフコンペも予定をしております。

 現在、商工会議所事務局でも、その他の部会の再編成を考えられております。主要部会員のみならずですね、準部会員でもオブザーバーの参加でも結構です。この機会にぜひ入会をご検討いただければと思っております。以上で発表を終わります。長らくのご清聴ありがとうございました。

 

司会

 今川部会長、どうもありがとうございました。ただ今の発表につきまして、ご質問のある方、挙手を。お願いいたします。マイクをお願いします。

 

発言者

 疲れているところ質問してごめんね。だけど、ちょっと本当に疑問に思ったのが、あれだけ失業率が高いのに、なんで人件費が高くなっているの。というのが、正直言って、他の業界みんなね、再ネゴしちゃっているんだよね。もうお前たちの給料高すぎて払えないから、今後続けるためには給料下げるしかないと。今回GMもそれをやっているんだよね。だからそういったところで、御社の業界だけがなんでこんなことができるのかなと、ちょっと不思議なもので、すみません。

 

今川部会長

 ご質問ありがとうございます。我々というか、建設業界についてですけれども、非常に、作業員とかですね、人手というのが非常にかかっております。で、我々、当然、弊社の社員だけのみならず、現場には色んな協力会社のスタッフがいたり、作業員がいるんですけれども、彼らは組合に守られておりまして、毎年、業績に関係なくですね、給料が上がっていきます。ですので、弊社のスタッフを入れ替えてもですね、中々、建設コスト全体のコストとしては上がっていくと。ですので、先程もちょっと説明しましたように、ここ数年間で、元々は材料費の方が高い比率を示していたんですけれども、今は逆転しまして、建設費にかかる人件費の方がウェイトを占めているというのが現状です。まあこれはブラジルの法に守られた労働者保護の形が表れているのかなと思っています。

 

司会

 はい。他に質問ございますでしょうか。いかがでしょうか。はい。それでは生活産業部会の発表は以上とさせていただきます。今川部会長、どうもありがとうございました。

 以上で、前半5部会、後半5部会、計10部会の発表を全て終了いたしました。最後に、時間が5分ぐらい余る結果となりましてですね、ちょっと時間はあるんですけれども、今回、2018年の回顧と2019年の展望、そして副題のテーマは「成長への期待、変化への対応」となっており、各部会から様々な発表がなされたかと思います。各業界の景況感としてはですね、やっぱり2019年は18年よりも若干いいのかなというふうな感触がですね、確認できたかと思いますけれども、やはり国内景気にかなり頼っている部分があって、外部環境は必ずしも良くない、不透明なところがあると。あと、アルゼンチンの影響なんかもございますので、予断はできないといったことが挙げられるかと思います。

 まあ、一部業界ではですね、例えばブラジルの社会変化に対応している、例えばヘルスケアですとか、そういったところは底堅くですね、成長が期待できるといったことが言えるかと思います。そうした、中々、リスクへの対応というところも、やっぱり重要になってきますので、そうした中でですね、やはり、発表の中で特に印象的だったのは、利益を生み続ける強固な企業体質といった指摘が挙げられたかと思います。その具体例としてですね、人材投資ですとか、コスト見直し、生産性の向上、教育、そして、例えば営業力の強化ですとか、新商品投入ですとか、それから、デジタル化、イノベーションへの対応とか、そういった課題が挙げられたかと思います。あと、日系としての強みというのもですね、指摘があったかと思います。

 あと、今後の景気のところですけども、かなり年金改革への期待、構造改革の先頭に立つ年金改革への期待、ここの動向がですね、やはり重要視されているなという。まあこれが実現できないとですね、その他の構造改革が中々進んでこないといったところかと思いますので、ちょっとその辺はですね、期待でもあり、リスクでもあるということではないかというふうに考えております。

 あと、発表の中で色々ご要望もいただいておりましてですね、ビジネス環境、特に許認可、8年、10年かかってようやく認可されるとか、そういったところを迅速化、簡素化してほしいとかですね。あと、税制改革。それから、電気電子部会ではですね、欧州・メルコスールEPAに劣後しないことといった要望が挙げられております。また、オリンピックと連携した日本技術展をやったらどうかとかですね、省エネセミナーをやったらどうか、あとチームジャパンへの取り組みとか、そういった具体的な要望とか取り組みが挙げられたかと思います。

 では、本日ですね、特別に出席いただきました在サンパウロ日本総領事館の野口総領事に、本日の各部会の発表につきましてですね、講評、コメントをいただければと思います。それでは野口総領事、よろしくお願いいたします。

 

講評

野口泰 在サンパウロ日本国総領事館総領事

 皆さんこんにちは。長時間にわたりまして御苦労さまでございます。

 私、着任しましてからこれが3回目のカマラのシンポジュームでございますけれども、これまで2回と比較するとですね、かなりポジティブと言いますか、皆さんの表情も明るくなったかなという感じがいたしております。まだまだ不透明感はぬぐえないところはありますけれども、色んな意味で、先程大久保所長の方からもお話がありましたが、明るい兆しもちょっと見えてきたかなという感じがいたしております。

 確かに昨年はですね、トラック運転手のストとか、あるいは大統領選挙の帰趨がどうなるか分からないという不透明感が漂う中でですね、日本企業さん、様子見というふうな状況が強かったと思います。その後ですね、大統領選挙がありまして、ボルソナロ新政権が1月から発足をしております。

 ボルソナロ政権ですね、非常に経済の自由化というのを政権の大きな柱として位置付けておられると思います。非常にプロ・ビジネスな政権が誕生したのではないかと。まあ税制を簡素化するとかですね、あるいは、今日も日本企業さんがご苦労されている色んな許認可とかですね、輸入の審査とかですね、そういったビューロクラシーをできるだけ排除していくということもおっしゃっておりますけども、まだ総論にとどまっていまして、中々具体的な各論にまでまだ踏み込んでいない状況ではありますけれども、こうしたボルソナロ政権の経済自由化の政策、方針というのをですね、今後フォローしていきたいというふうに思っています。

 特にですね、繰り返し言及のありました年金改革でございますけれども、私がニューヨークのマーケットを見ておられる方なんかとお話ししますとですね、ニューヨークのマーケットでもブラジル経済を見る時に、一丁目一番地が、どうも年金改革が議会を通るかどうかと。これが通ればですね、国際的なマネーが本格的にブラジルに注目をするのではないかというふうな感じがいたしております。ただ、これが通らなければですね、非常に失望感が広がって来るのかなということでですね、その年金改革についての動向を見極めて、フォローしていきたいというふうに思っております。

 今日は、ここで活動しておられる日本企業の皆様方のですね、見方というのをたいへん勉強させていただきました。実は昨年の半ばぐらいにですね、JBICさんがですね、日本企業の本社にアンケート調査をした結果というのがちょっと印象に残っていますので、ご紹介をいたしますと、ブラジルというのはここ20年ぐらい、ずっと中長期的な有望国のトップ10に入っていたんですね。一番良い時は上位5位以内にも入るという、そういう、非常にやはり、新興国として注目を浴びていたんですけれども、昨年の調査ではですね、とうとうトップ10から落ちてしまったようでして、12位に落ちてしまったということだったようです。

 ただ、若干ブラジルに対する見方というのが、ちょっと上向きになってきているといいますか、下げ止まっているのかなという数値も出ておったようでして、ブラジルでこれから企業活動を活発にしますという日本企業さんの比率がですね、2011年以来ずっと下がってきたのが、昨年の調査では若干上向いてきたと、比率が上向いてきたということで、そういった意味でも明るい兆しはあるのかなというふうな感じがいたしております。

 こうした、ボルソナロ政権ですね、本格的な政権が誕生したということで、日本政府、特に官邸の方もですね、非常にブラジルの動きに注目をされておられます。1月にはですね、スイスのダボスでダボス会議が行われまして、ボルソナロ大統領にとって初めての国際的なデビューになったわけですけども、そこでもやはり、安倍総理がですね、ボルソナロ大統領と初めての会談をされる等ですね、日本政府としてもこの政権と本格的にがっつりですね、つきあっていきたいというふうな意向を示しております。特に今年は、日本がG20の議長国にもなっておるということで、5月にはG20の財務大臣会合が日本で行われてですね、パウロ・ゲデス新経済大臣もですね、ぜひお越しいただきたいというふうに思っておりますし、さらにG20の首脳会議がですね、6月の下旬に大阪で行われまして、これにつきましてはボルソナロ大統領は安倍総理大臣に自分は出席しますというふうに仰っておられますので、こうしたハイレベルの対話を通じてですね、ボルソナロ政権の具体的な政策というのがですね、さらに判明をしてくるのではないかというふうに思っております。

 いずれにしましても、ボルソナロ政権、最初の6ヶ月が勝負だと言いますか、まあロケットスタートと言いますかですね、この最初の6ヶ月に矢継ぎ早に改革をしていきたいというふうなことでですね、年金改革もですね、この6ヶ月でどうなるかというのが、非常に注目をされているところだと思います。

 そして日本とブラジルの間ではですね、インフラについてのインフラ会合というのを、まあこれは日本企業の皆さん方にも入っていただきましてですね、今年の前半にもですね、また第3回目のインフラ会合を、おそらく日本で開催をすることになろうかと思います。こうした対話を通じてもですね、日本としての、ブラジルのインフラプロジェクトへの関心とか、あるいはブラジルの新政権がどういったインフラについての政策を打ち出してくるかというのをですね、聴取できればと思っていますし、7月には、下旬にですね、ここサンパウロで日伯の経済合同委員会というのも開かれてですね、そういったところでブラジルの新しい政権の政策というのが見えてくるのではないかというふうに思っております。

 今日の発表でですね、日・メルコスールEPAについてのご要望、あらためて承ったところであります。実は昨年来ですね、カマラの方でタスクフォースを作っていただいてですね、官房長官にも要望書をいただいているところであります。実は昨年のアルゼンチンでのG20の会議の時にですね、安倍総理が出席される時にですね、ぜひ前進を図ってほしいというようなご要望であったんですけども、残念ながらその時にはですね、はかばかしい前進というのは図られてはおりません。ぜひ今年にですね、私としては何とか前に進めていきたいというふうに思っておりますが、

 まずですね、ブラジルのボルソナロ政権がですね、このメルコスールに対してですね、まあ若干政権の中では、メルコスールとしての交渉というよりかは、バイの交渉、ブラジル一国での交渉というのをほのめかしている発言も時々耳にしております。今のところは、メルコスールとしてFTAをやるというふうな方針に変更はないというふうなことにはなっておりますけども、そうしたブラジル政府のですね、メルコスールとの距離の置き方といいますか、そういったものも、今後見極めていきたいと思っていますし、そして今年はですね、日本は選挙の年になっております。

 EPAの交渉を始めるとなるとですね、非常に政治的にセンシティブな品目があるということで、日本政府の中でもですね、やはり政治レベルの方々にご相談をしていかなければならないわけですけども、今年は亥年でありますけども、12年に1回ですね、統一地方選挙と参議院選挙が同じ年にあると。今年は4年に1回の統一地方選挙が4月に行われまして、7月には参議院選挙が、3年に1回の参議院選挙、4×3で、12年に1回、亥年はですね、必ず大きな選挙が行われる年になっていまして、こうした選挙の年の中でですね、各省の政治レベルともご相談しながら、日・メルコスールEPAというのをですね、どういうふうに動かしていくかというのを引き続き検討していきたいというふうに思っております。

 そして、ソニーの日比社長の方からですね、マナウスのフリーゾーンで活動されておられる日本企業の取り組みに関しまして、現地の調達の比率の向上を求められているという、非常にご苦労されている中でですね、私も現場に行きまして、関係者のお話を聞きまして、あらためて困難さというのを感じたところでありますけれども、ちょうどこの業界団体と言いますか、エレトロスのですね、会長さんがですね、3年前までマナウスにおられまして、マナウスの総領事館が日本に招へいをしたことをきっかけにですね、非常に日本とは良い関係にあるということで、ぜひこうした会長さんにもですね、この問題意識をぶつけていきたいというふうに思っております。

 いずれにしましても、次回は8月に行われるということだと承知しておりますけれども、8月にはですね、年金改革法案が無事通ってですね、日本企業さんの様々な前向きな動きをまたお聞きする機会になればというふうに思っていますので、最後にそうしたことを祈念いたしまして、私の挨拶とさせていただきます。本日はどうもご苦労さまでした。ありがとうございました。

 

司会

 野口総領事、どうもありがとうございました。以上で本日の部会長シンポジュームを終了するにあたりましてですね、閉会の辞を讃井総務委員長にですね、バトンタッチしたいと思います。讃井総務委員長、よろしくお願いいたします。

 

閉会の辞

讃井慎一 総務委員長

 讃井でございます。本日は半日、長い間たいへんお疲れ様でございました。冒頭申し上げるあれだったんですけども、私ども、こんな高い所から、座ったままで、たいへん、半日間失礼いたしました。野口総領事におかれましては、ご講話いただきまして、コメントもいただきましてたいへん感謝しております。ありがとうございます。

 今ご案内ございましたけども、次回のシンポジュームは8月に予定されております。全般的には非常に明るい兆しがあるのかなというふうに私も思ってございますので、今後、半年後にですね、またこういった、カマラの一番大きなイベントの一つでもありますので、情報共有ができる場を楽しみにしているというところでございます。

 一点だけ、先程来いろいろとコメントありましたけども、まあ世の中、第4次産業革命だとかですね、産業構造の変化とか、こんなことが言われておりまして、日々の事業の中ではですね、当然ブラジルはどうするんだという話はあるんですけども、やはり世界中で起こっていることはブラジルでもやはり起こっているのかなというのは、これは、バリューチェーンの話があったりですね、Youtubeの話があったりだとか、色んな事がございましたので、あるいはむしろブラジルの方が、スピードだとかそういったところで優れていて、場合によっては学ぶところもあるのではないかなというふうに思ったところです。この辺りは既存のビジネスとは別にですね、今後のチャンスじゃないかなというふうに思いますので、このたびは私も非常に印象深く思ったところだったので、コメントさせていただきました。

 そういった意味では、生活産業部会ということで新しい部会として初めてご発表いただきましたけども、年初来申し上げていますが、部会の所属会社の社数であるとかですね、事業の内容の見直し、この辺り、より活発に活動していく中でですね、色んな見直しを今、総務委員としてですね、事務局とも、あるいは皆様ともご相談しながら進めているところ、こういったのも自然な流れなのかなというふうに思いますので、色々とご相談をさせていただきたいなというふうに思います。

 簡単でございますけども、皆様のご発展と申しますか、半年後にまた明るいご報告会ができるようにということを祈念しまして、ご挨拶とさせていただきます。たいへんありがとうございました。

 それで、ご案内と思いますけども、この後、出たところで懇親会がございます。有料でございますけども、お一方80レアルということでありますが、ふるってご参加いただければと思います。あらためまして、たいへんありがとうございました。

 

2018年下期の業種別部会長シンポジウム

                 2018年下期の業種別部会長シンポジウムのテープおこし記事掲載中

テーマ:「2018年上期の回顧と下期の展望」
副題:「大統領選を直前に控えて〜変化の時期への準備と戦略は」
基調講演:川辺 純子 城西大学副学長
日時:   2018年8月23日(木曜日)
13時~18時 シンポジューム(途中コーヒーブレイクが入ります)
18時~19時 懇親会(カクテルパーティー)                 
会 場: ホテルマクスードプラザ
(Maksoud Plaza – R. São Carlos do Pinhal, 424 – Bela Vista, São Paulo – SP   Tel.: (11) 3145-8000)

前半の司会: 木下 誠 (きのした まこと)総務委員長  
13:00~13:05 開会挨拶 松永 愛一郎 会頭    
13:05~13:25   基調講演: 川辺純子 城西大学副学長(20分) テーマ: 在外日本人商工会議所の活動 ―アジアを中心に―
13:25~13:50 ①  金融部会 安田 篤(やすだ あつし) 部会長    (損保ジャパン) 
13:50~14:15  ②  貿易部会 猪股 淳(いのまた じゅん) 部会長 (伊藤忠) 
14:15~14:40 ③  機械金属部会 植田 真五(うえだ しんご) 部会長  (三菱重工) 
14:40~15:05  ④  自動車部会 下村 セルソ(しもむら せるそ) 部会長 (トヨタ) 
15:05~15:25  ⑤  コンサルタント部会     西口 阿弥(にしぐち あや) 部会長  (EY) 
         
xxxxコーヒーブレイク (15分)xxxx    
         
後半の司会: 大久保 敦 (おおくぼ あつし)企画戦略委員長
15:40~16:05  ⑥  化学品部会  羽田 徹(はねだ とおる) 部会長 (日本曹達) 
16:05~16:30  ⑦  電気電子部会 日比 賢一郎(ひび けんいちろう) 部会長 (ソニー) 
16:30~16:55  ⑧  食品部会  黒崎 正吉(くろさき まさよし) 部会長 (味の素) 
16:55~17:20 ⑨  運輸サービス部会  矢澤 吉史(やざわ よしもと) 部会長  (NTT) 
17:20~17:45 ⑩  建設不動産部会  今川 尚彦(いまがわ なおひこ) 部会長 (戸田建設) 
17:45~17:58   講評 野口 泰(のぐち やすし)総領事 在サンパウロ日本国総領事館
  コメント 山中 修(やまなか おさむ)公使 在ブラジル日本国大使館
  着任のご挨拶 真鍋 尚志(まなべ たかし)公使 在ブラジル日本国大使館
17:58~18:00    閉会の辞 木下 誠 総務委員長              

 

シンポジウム記事 → http://jp.camaradojapao.org.br/news/atividades-da-camara/?materia=18695

 

Pdf金融部会

Pdf貿易部会

Pdf機械金属部会

Pdf自動車部会

Pdfコンサルタント部会

Pdf化学品部会

Pdf電気電子部会

Pdf食品部会

Pdf運輸サービス部会

Pdf建設不動産部会

Pdf全プレゼンテーション

 

                2018年下期の業種別部会長シンポジウムのテープおこし記事掲載

 

前半司会

 

                     

                              木下誠 総務委員長   

 そろそろ開始時間になりましたので、これより2018年下期業種別部会長シンポジウムを開催いたします。私、前半の部の司会を担当させていただきます、総務委員長で三菱UFJ銀行の木下でございます。どうぞよろしくお願いいたします。後半は企画戦略委員長の大久保さんに司会をバトンタッチさせていただく予定でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、シンポジウム開会にあたりまして、松永会頭よりご挨拶を頂戴したいと思います。松永会頭、よろしくお願いいたします。

 

開会挨拶

                    

                      松永愛一郎 ブラジル日本商工会議所会頭

 2018年度下期シンポジウムに多数お集まりいただきまして、たいへんありがとうございます。また本日は、多数のゲストの方にも参加していただいております。簡単にご紹介させていただきますが、まず最初に、川辺信雄早稲田大学名誉教授、ならびに、奥様の川辺純子城西大学副学長様にご参加をいただいております。川辺名誉教授の方はですね、ブラジルの自動車産業、これについてのご調査のために今回ご来伯されたということでございます。奥様の純子副学長様にはですね、当地の日系の商工会議所の活動についてのご調査ということでいらしていただいています。とりわけ、純子副学長はですね、アジアを中心とした在外の商工会議所の活動について造詣が深く、本日も基調講演としまして、在外の商工会議所の活動についてご講演をいただだくことになっております。我々商工会議所のメンバーとしてもですね、参考になるということで、非常に楽しみにしております。よろしくお願いします。

 続きまして、ブラジリアの大使館より山中公使ならびに真鍋公使にもご参加をいただいております。さらに、当地からですね、サンパウロの総領事館の野口総領事にもお越しをいただいております。皆様には恒例ですが、シンポジウムの最後にご講評をいただければというふうに思っております。また、最近ご着任されました真鍋公使には着任のご挨拶の方もよろしくお願いします。

 加えて、パラー日系商工会議所から山中副会頭にも今日お越しいただいております。遠いところありがとうございます。

 商工会議所の一つの目玉となっていますシンポジウム、これは半期に一度開催をさせていただいております。業種別の部会長様に、経済分析、業界分析、今後の動向等をですね、各社プレゼンをいただくという建て付けになっております。今回の副題は「大統領選挙を直前に控えて-その準備と戦略は」ということになっております。各部会長の皆さんからもそういった視点でのプレゼンが為されるものと思っております。私も非常にその内容に興味を持っているところでございます。

 さてブラジルですが、もう大統領選挙も間近でございます。本命不在と言われている大統領選挙でありますけども、新しい大統領には是非、構造改革の手を緩めず、このまま推進をしていただいて、中長期的な経済発展を達成するように、そういった運営を切に期待するところでございます。

 また、ブラジル以外に目を転じますと、トランプ政権の米国第一主義、あるいは今盛んに報道されております米国と中国の貿易戦争、あるいはトルコ、イランといったような地政学リスク、そういったものが顕在化をしておりますが、一方で地域の経済連携という動きも非常に顕著になっております。既に報道の通りではございますが、日本・EUのEPA、あるいはTPP11というものはもう既に基本合意されております。一方でRCEPについても議論が深まっているというふうに仄聞をしております。

 こちらのメルコスールでございますが、アルゼンチンのああいう経済状況といったものはございますけども、メルコスールとしましては、EUとのEPAを推進をしていく、続きまして韓国、あるいはカナダとのEPA交渉も開始をするというふうに報道されております。そういった中ですね、皆さんご存知の通り、我々商工会議所としましても、そういった他国に遅れることなく、日本・メルコスールのEPA、この早期の実現に向けての活動を強化しているところでございます。今日のプレゼンの中でもですね、そういった日本・メルコスールEPAといったようなところがリファーされるんじゃないかというふうには思っております。

 また、今回のシンポジウムなんですけども、会員以外の方にも自由にご参加をいただいております。また、今日いろいろと投影する資料ですが、こちらの方についても商工会議所のホームページにアップさせていただきます。ですので、会員以外の皆様でもブラジルでの経済活動を推進をしようという方々にも裨益するような、そういった努力をしているところでございます。

 最後になりますが、今日のシンポジウムに備えていろいろとご準備をいただきました部会長の皆様、ご関係者の皆様、厚く御礼を申し上げまして、私の開会の挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。

 

司会

 松永会頭、どうもありがとうございました。それでは続きまして、今回特別にご参加いただきました城西大学副学長の川辺様よりご講演をいただきたく思います。それでは川辺様、お願いできますでしょうか。

 

基調講演 

             

                            川辺純子 城西大学副学長

テーマ: 在外日本人商工会議所の活動 ―アジアを中心に―

 皆様、こんにちは。城西大学副学長の川辺でございます。結婚式以来こんなに高い席に上がるのは久しぶりでございまして、たいへん緊張しております。また本日は、このサンパウロで、しかも商工会議所の活動に参加されている皆様の前で商工会議所の話をさせていただくというのは、たいへん光栄に思っています。

 私が商工会議所の研究をしていると言いますと、商工会議所が研究の対象になるんですか、というお話をよくされます。私がこの研究をしようと思ったのは、マレーシアに滞在している時、主人がマラヤ大学で1年間教えましたので、その時初めてアジアの日本人商工会議所へお伺いしたことがございます。その時に、商工会議所、何をやっているんだろうと思ったのが研究の始まりでございます。その後ですね、商工会議所を研究している人がたまたま誰もいなかったものですから、まあニッチな市場で私が研究をすることになりました。

 今日は20分ということですので、まず商工会議所について、どういうところなのかというお話しをしまして、次にアジア全般における日本人商工会議所、どれぐらいあるかというようなことを話をしたいと思います。それから、私すでに何ヶ所かの商工会議所を研究していますので、マレーシアと、それから香港、この二つを事例にですね、この二つがどういう活動をしているのかということをご紹介したいと思います。最後に、いま世界が大きくグローバル化していますので、商工会議所も非常に大きな課題を抱えていると、今後どういう方向に行ったらいいんだろうということを少しお話しをさせていただきたいと思います。

 まず、商工会議所ですけれども、日本にももちろんございます。世界中にあります。基本的には商工会議所法に基づき、市など一定地域の商工業者によって組織される、自由会員制の非営利法人というふうに定義されています。ただし、海外における場合は、商工会議所法に縛られない場合もございます。会社法で会議所をつくっているところもあります。それから、非営利法人という場合もありますし、団体ということもあります。というふうに、色んな使い方がされていますので、必ずしもこれが定義というわけではありません。

 ただし、目的は一緒です。商工業の改善・発展です。それから、会議所の財政はですね、会員の皆様の会費によって賄われている。それから活動も、会員の方が計画して実施されているという特徴をもっています。

 組織と活動についてちょっとお話しをしますと、会員の皆さんが共通の課題をやっぱり抱えている、それを組織というものを通じて何らかの形で解決をしようというものです。それから、執行部と呼ばれる指揮部門が活動計画を立てていきます。そして、事務局の統一管理の下に、基本的には部会、業種別の部会ですね、それから委員会が中心になって計画を実施していくというものです。

 ひとつ事務局について言いますと、アジアにある商工会議所の事務局はだいたい3つのタイプがあります。一つは、地元の方が事務局として担当されている。それからもう一つは、日本から、日商とか、東商とか、そういうところから事務員を派遣してもらっているというところがあります。それからもう一つは、そのどちらでもなく、JETROが事務局を兼ねて運営をされていると。大体こういう3つの事務所があると思います。

 それから、2番目にですね、アジアにおける日本人商工会議所ですけれども、これは日商のホームページから調べましたら、大体、世界には86カ所、いま商工会議所があります。ただし、海外の商工会議所は日商に報告義務はございませんので、実際はこれよりも多いです。この中で、欧州、北米、大体17、18ですけれども、そのうち最も多いのがアジアなんですね。29カ所商工会議所がございます。

 そのアジア地域の内訳が隣の表です。韓国、中国に3カ所、香港、台湾、フィリピンにも3カ所あります。カンボジア、マレーシア、それからシンガポール、タイ、インドネシア、インドには4カ所ございます。バングラディシュ、スリランカ、パキスタンには2カ所ございます。ミャンマー、ベトナム、3カ所。ラオス、UAE、ネパールとなっております。

 ここに一応商工会議所と書きましたけれども、各地域では呼び方はそれぞれです。商工会議所といったり、日本人、あるいは日本という場合もありますし、日本商工会、あるいは日本人会の中に商工部あるいは商工会というものがあるものも含めてこれだけのものがあるということです。

 それで、私は商工会議所があるところはどこでも研究対象になるので、アジアだけではなくてトルコにも行ったことがございます。トルコは西と東、それから南北の十字路ですので、非常にビジネスチャンスとしては日本企業がこれからどんどん出て行くところなので、ここは間違いなく商工会議所ができると思っていたんですけれども、ちょっと時期尚早でですね、まだ日本人会の中の商工部としてしばらくやっていくということでした。そうこうしているうちにトルコの政治的リスクが起こりまして、しばらくはちょっと商工会議所は無理かなというふうに思います。

 それから、この中ではバンコクの日本人商工会議所の50年史というのを書きました。それからミャンマーも行きまして調査をいたしました。調査をする時に、じゃあ何に基づいて書いていくかといいますと、基本的には理事会の議事録です。それから、会報を出していらっしゃるところが多いので、会報をずっと見ていきます。これは比較的研究がしやすいんですけれども、中には会報が出ていない商工会議所というのも多くあります。例えばミャンマーとか、それから香港もそうですね。そういう場合は、事務局、あるいは執行部にお願いをして、こういう研究をしているんですけれども内部資料を見せていただけませんかという形で、これはミャンマーと香港は調査をしてまいりました。

 それでは続きまして、マレーシアと香港の事例のご報告をしたいと思います。基本的にはですね、アジアにある日本人商工会議所の役割は何なのかと考えた時にですね、二つ考え方があると思います。一つは、進出先国の政府が日本企業に何を求めているのか。もう一つのタイプは、日本企業が何を求めるのか、というふうに二つに分かれるのではないかと思います。

 一つのタイプ、タイプAとしますと、政府が非常に日本企業に大きな役割を求めているのがタイ、あるいはマレーシアです。それから、政府は経済には、市場には介入しない、レッセフェール経済を展開している香港では、ほとんど日本企業に政府は何もまあ期待をしないというふうに考えていいと思います。

 まずタイプAの方をご説明しますと、アジアの途上国の場合は、企業がない、あるいは企業化が育っていないという時に、外国の企業を工業化の推進役として求めていくことが多々あります。マレーシアはその例です。そうすると、商工会議所の役割というのは、政府が日本企業に求めている政策の実行に協力すると同時に、その過程で日本企業は様々な課題を抱えていきますので、その間での調整の役割をしているというのが見られます。

 それから、香港のようなタイプBの場合は、その調整の役割は必要ないので、日本企業が何を求めているのかというところが焦点になります。その場合は、日本企業は、香港なら香港におきまして、地場の企業、あるいはアメリカ、イギリスといった多国籍企業との競争、これに勝っていかなくてはいけない。というところで一番重要になってくるのが、まあ情報であろうというふうに思います。そうすると、会議所の役割は、情報を提供するということになると思います。ただしこの情報も、時代が変わりますとまた変化していきますので、その都度その都度その求められる情報を提供していく、あるいは収集していくということになると思います。

 それではまず最初にタイプAのマレーシアの事例をちょっとご紹介したいと思います。マレーシア日本人商工会議所は、通称JACTIMというふうに皆さん言っています。こちらは1983年に、中曽根首相とマハティール首相とのトップ会談で決定したというふうに言われています。が、もちろんこれが実現するためには、現地の日本企業が長い間ですね、商工会議所の設立を待っていたと、願っていたという事情がもちろんあります。それで、マレーシアの場合は商工会議所法ではございません。カンパニーアクトといいまして、会社法で設立がされています。現在の会頭はですね、パナソニックの井水さんが会頭をされています。会員は現在585社でございます。設立された時は121社でしたから、大体、5倍まで行きませんけどそれぐらいに増えているということが言えます。

 会議所活動の基本と成る部会ですけれども、マレーシアには7部会あります。それから、部会を超えて共通の問題を解決する時には委員会というものを作りますけれども、この委員会が8つあります。この部会の内容とか委員会の内容を見ますと、おそらくその国の特徴というのが良く出ているのではないかなというふうに思います。

 それから、JACTIMの特徴はですね、地域にも部会があるということなんです。マラッカとジョホールとペナンとペラに部会がございます。JACTIMのもう一つの特徴としましては、実は第2代鈴木一正会頭は22年間会頭職にありました。この方は時のマハティール首相と個人的に非常に強いつながりがあったと、関係を構築されていたというのが背景にありまして、こういう関係の下にJACTIMは活動をしてきました。

 具体的にですね、次にJACTIMの活動をご紹介したいと思います。マレーシアの場合は、マレーシア政府が政策を変化することによって、日本企業に求める役割は変わってきていると。大きく分けて二つに分けられるというふうに思います。

 マレーシアは、多民族国家というのが非常に大きな影響を与えておりまして、戦前はイギリス資本、それから移民で来た中国人ですね、この方達が資本蓄積をしていたわけですけれども、戦後になると、多民族国家であるというところから、人種暴動が1969年5月に起きます。そうすると、この人種暴動が起こったことによって、マレーシア政府は、この原因は商業的に高い地位にある中国人と農業、漁業にある貧しいマレー人との間の暴動であるというふうに考えまして、マレー人を将校部門に引き上げたいというところで、ブミプトラ政策というものを打ち出してきます。これはマレー人優遇政策というふうに言われていまして、基本的には、資本所有、それから雇用においてマレー人30%、その他のマレーシア人40%、それから外国人40%というふうに数値目標が義務化されます。

 その時にですね、マハティール首相がルックイーストという形で、重工業を推進していくために日本企業を相手に選ぶわけですね。ルックイーストは日本の、その当時大きな発展をしていた日本に学べということですから、日本の経営、技術、それから勤勉な働き方、こういうものを日本に学ぶという形で日本企業にずいぶん大きな期待を寄せますし、政策として出してきたわけですから、これに応えないわけにはいかない。その時に、現地の日本企業はたいへん困るわけですね。というのは、1970年代の初めには大きな反日運動が起こっていまして、この反日運動だけは二度と起こしてはいけないと。しかしルックイーストを実施していく上で、日本企業のプレゼンスが大きくなってくる、あるいはルックイーストへの協力が足りないというふうになってくると、また反日運動が起こってくるのではないか。

 こういう、相手が政府の場合に一企業では対応できない、そのためにはやはり公的な組織が必要だということで、日本人商工会議所を立ち上げていきます。その時に、先ほど言いましたように、中曽根首相、それからマハティール首相の力が大きかったことは言うまでもありません。

 それで、じゃあマレーシアが推進しようとするHICOMを推進していく上でどういうことを実際にしていくかというとですね、一つはマレーシア政府と通産省、あるいは色んな省とのですね、対話を開始していきます。それまでは定期的な対話というのはやっておりませんでした。これを定例化していきます。

 それから、政府に対して直接、政策提言をしていきます。2000年までに6つやっていますけれども、例えば外資政策だとか、それから労働改正法に対する提言だとか、日本企業側にとってこういうふうにしてほしいというような要望、あるいはこういうふうにしたらいいということを提言という形にして、マハティール首相に出しています。この提言は、マハティール首相から要求される場合と、JACTIMの方から提言する場合と、両方のケースが見られます。それで、この時期の提言活動でJACTIMが誇りに思っているのは、100%外資の出資を認めさせたということを非常に強調されています。

 あとは、ベンダー・デベロップメント・プログラムという、中小企業育成政策なんですけれども、これはマレー人の中小企業を育成しようという政策です。これに対して現地の日本企業は、アンカー企業として、現地のマレー人の中小企業を指導して技術を教えていくというようなこともやっています。これが第一段階です。

 2000年以降になりますと、アジア通貨危機でマレーシアも大きな打撃を受けます。それから、グローバル化が進展してきます。そうすると、マレーシアの政策もですね、大きく変わってきています。アジアの中で進展する自由貿易、グローバル化、そういうものに対応するために、産業の高度化というもの、あるいは競争力の強化、そういうものを全面的に打ち出してきます。そうすると、JACTIMの役割というのは、ルックイーストへの協力、政府への協力ということからですね、マレーシアと共に経済発展をして、競争力をもっていこうというふうな役割に変わってきます。

で、その政策変更の下でですね、具体的にJACTIMがやっているのは、マレーシア文化支援、マレーシアの企業としてですね、よき企業市民として存在するんだということで、JACTIMファウンデーションというのを創立20周年につくっております。これは元々経団連がやっていたもので、JACTIMはマレーシアの窓口だったんですけども、20周年を機に独立して、金銭的にも財政的にもJACTIMが持とうということをやっています。これは会員全員加入です。強制的に加入をするということです。

それから2番目に、中小企業支援策。地元の中小企業を育成するということで、中小企業に支援をしています。これは日本の日商あたりからも支援を得て、個別に技術指導をするとか、そういうことをやっています。それから、雇用マッチングということで、日本企業と現地の人との職の橋渡しですね、こういうことも最近はやっています。ですから、JACTIMの役割も2000年代以降ですね、大きく変わってきている。それはやはりマレーシア政府の政策が変わったからだと言うことができます。

 それでは、これとは全く逆にですね、市場経済の下で活動している香港の事例をご紹介したいと思います。香港日本人商工会議所は1969年に設立されました。この母体はですね、日本人クラブの中にあった経済部、こちらから独立をしたものです。だんだん法人会員が増えてくるとですね、日本人会では対応できなくなってきて、商工会議所を作ろうということでできたものです。こちらは法的根拠は商工会議所法という法律の下に設立をされました。現在は住友商事の桜井さんが会頭をされています。

 こちらの会員は、最初、69年は99社だったんですけれども、今は655社に増えています。香港の場合は部会がたいへん多くて13部会ございます。その中には分科会というのも入っています。分科会というのは、部会の中をさらに細分化して業種ごとに集まった分科会という理解です。こちらですと、ライフコミュニケーションだとか、そういうところが少しよそと違うところかなというふうな感じはします。委員会は5つございます。

 香港の場合の、特徴といいますか、大きな影響を与えた出来事というのは、やはり香港の中国返還です。それまでは香港の中のことだけを考えてやっていればよかったのが、今度は中国を視野に入れなくてはいけなくなった。しかも、一つの国の中で二つの制度が採用されているというところで、香港にとっては中国というところが大きな活動範囲として入ってきます。

 その香港の活動の内容についてご紹介したいと思います。香港の場合は、政府が日本企業に何かを特別に求めるということはありませんので、まあ自由に、平等にやってくださいということで。ただし、香港が置かれた政治的、あるいは経済的変化によって、今度は日本企業の方が求める情報が変わってくるという状況が起こってきます。これが大体二つぐらいに分けられまして、50年代から出て行きますけれども、一つは中継貿易から加工貿易へ移っていくと。そうすると、従来ですと、日本の海外進出はまず商社が出て行って、次に金融、運輸が出て行く。次に製造業が出て行く。そしてそれに従って、それを補完するサービス業というのが出て行きますので、香港の場合もやはり商社が最初に出て行っています。それが加工貿易へと変わってくるので、製造業がうんと増えていきます。その中で、基本的には、例えば業界ごとの講演会だとか、あるいは視察旅行だとか、そういうことをやってきました。

一番大きな出来事というのは、1980年代中ごろからですね、香港返還というのが非常に大きな課題となってきます。その香港の返還に関して、香港の商工会議所に特徴的だと思われるのは、中国のある日本商工会議所と交流会を開いているということなんですね。そこにある、北香交流会といいますけども、1990年から2000年まで19回にわたって情報交換会をしています。これは北京の大使館、それから商工会議所、それから香港の領事館、それから香港の商工会議所、この4者がですね、協力をして、開催してきた交流会です。その中で、香港は中国のことを知りたい、中国は香港を通じて中国のことを知ってもらいたいという思惑がありまして、具体的には例えば、中国政府の外資政策だとか、あるいは金利政策だとか、あるいは農業政策だとか、そういうふうな情報交換をしています。

 それで、97年に返還されるわけですけども、香港の日本企業の活動範囲というのは、どんどんどんどん、華南経済から中国本土へと広がっていくわけで、北香交流会の次に、広東省にある日本人商工会議所、11カ所12団体ありますけども、そことの交流会を開いて、広東省の経済の情報を得ようと。それから広東省の方はですね、香港商工会議所を通じて、中国政府の方に何か問題があった時にものを言ってほしいというような思惑がありまして、交流会を始めています。ただし、この交流会はですね、やっぱり広東の方が負担が大きいということで、6回の会合をもって終わっております。

 というふうに、香港の場合は、香港政庁の政策によって日本企業こういうことをしてくださいというのはないので、日本企業が求める情報な何なのかということを中心に活動しています。

 以上、簡単にJACTIMと香港日本人商工会議所をご紹介しましたけども、この二つを比較してみますと違いが大きく見えてくると思います。マレーシアの場合はやはり、まあ香港もそうですけど、歴史というものが非常に大きな役割を果たしている。で、マレーシアは多民族国家であったということ。で、中国資本を中心に使うことができなくなった。その代わりを果たしていくのが日本企業。で、その時に日本企業は政府の政策実行への協力を求められるわけですけれども、問題もたくさん生まれてきます。その問題を解決する方法として、商工会議所が調整の役割を果たしたと。

 ただし、もしかしたらマレーシアの場合は特別かもしれない、というのは、この鈴木会頭とマハティール首相とのたいへん強い個人的な結びつきというのが背景にあるからです。しかし、大なり小なりタイでもこういう傾向が見られますので、タイもマレーシアと同じように、日本企業に対して大きな役割を期待しているということが言えます。もう一つ言えばですね、マハティール首相が返り咲きましたので、で日本にももう2度も来て、またルックイーストということを強調されていますので、またJACTIMの役割は大きくなるかもしれません。

 香港の場合はですね、基本的にはこれはレッセフェール経済ですから、自由に競争してください、そのために必要な情報を自分達で集めるということです。香港の場合はですね、講演会、情報交換会、いろんな形で情報交換・収集を行っています。

 ただし、JACTIMも、それから香港の場合もですね、日本大使館の役割非常に大きいです。それからJETROの支援もたいへん大きいです。ですから、官民、合同といいますか、協力体制でやってきているということが言えます。

 こうやって違いは見られたわけなんですけれども、現在両者ともグローバリゼーションというものにどういうふうに対応していこうかということを今求められています。

 アジアで何が起こっているかというと、通貨危機を契機にですね、グローバリズムに対応するためには地域全体で協力しなくてはいけないということで、地域統合が起こってきています。地域の中で自由貿易を推進していこうと。これも、色んな枠組があってですね、色んな枠組の中でそれぞれに対応していかなければいけない。

それから産業の高度化。例えば宇宙ビジネスだとか、バイオ医療だとか、ICT、こういう産業育成をねらっています。その方法としては、政府はクラスター政策というものを出してきているわけです。その中で、多国籍企業として日本企業はここでもやっぱり大きな役割を果たしていくと。こういう時代になった時に、地域における日本人商工会議所の役割、こういうものがですね、変化してきているのではないかというふうに思います。

 見てきましたように、会議所にはタイプAのもの、政府と日本企業の調整機能を果たす商工会議所、それからタイプB、情報収集・提供サービス型の商工会議所がございます。これはもちろんこのまま残っていくと思います。ただし、活動範囲が一国の中にとどまらなくなってきています。それから、アジア全体が、世界の工場、あるいは世界の市場として大きな役割を果たしてきておりますので、その中で協力と、それから競争が起こる中で、日本企業もいろいろ対応されているわけですけれども、それを代表する商工会議所、どういうことが求められているかというと、一つはですね、アジアの場合は一国ではなくて、在アジア日本人商工会議所全体として協力、連携して問題に対応するということが考えられます。実際に在アセアン日本人商工会議所連合会というのがもうできあがっておりますので、こういうところで情報交換、あるいは協力して、何かお願い事をしていくとかですね、提言をするとか、そういうことをしています。

 それから、日本人だけではなくて、地元の商工会議所、あるいは他の機関、外国の商工会議所、こういうものをITを使ってネットワーク化をして協力体制を作るということもできるのではないかというふうに思います。それで、問題が多様化して、広域化しておりますので、このような方法を使って、これから個々の課題に商工会議所は挑戦をしていくのではないかというふうに、アジアの例ではそういうふうに思っております。

 それから、本商工会議所に関してはですね、これから是非研究をしてみたいというふうに思って、今回来たわけです。タイプAかもしれないし、タイプBかもしれないし、あるいは他のもう一つのタイプCというのがあるのかなというふうに思いながらですね、チャンスがございましたら研究を是非させていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

 

司会

 川辺副学長様、本当にありがとうございました。それでは各部会長からの発表をいただきたいと思います。発表者の皆様におかれましてはですね、時間オーバーされる可能性もあると思いますので、その際は司会の方からですね、合図をさせていただきます。是非タイムキープにご協力いただければと思います。それでは、まずはじめに金融部会の安田部会長より発表をお願いしたいと思います。安田部会長、よろしくお願いいたします。

 

金融部会

           

                               安田篤 部会長

 皆さん、こんにちは。本年度、金融部会長を務めております、損保ジャパン日本興亜の安田でございます。本日は、ブラジルの経済動向、それから銀行業界動向、あとは保険業界動向ということで、3本立てで簡潔にご説明をさせていただきたいと思っております。

まあ大統領選直前ということでですね、先行きなかなか見通しにくい時期ではあるんですけれども、今日の副題であります、「変化の時期への準備と戦略」という切り口に少しでも近づけるようにお話しができればと考えていますので、20分ほどお付き合いください。

じゃあまず最初のスライド。こちらの方にですね、上期のブラジルの経済を振り返った上で下期がどうなっていくのかというところですね。10月に大統領選挙を控えているということで、政治面での不透明感があるものですから、経済面では若干停滞気味の時期になるということを予想しております。

それから、世界経済全体の動きについては、循環的な成長軌道に乗ってはいるんですけども、ブラジル経済自体がいま緩やかな成長性を示している一方でですね、ブラジルの内外のいろんなリスクというものが顕在化しておりまして、目先の経済成長の見通しに若干の下方修正、これを加えざるを得ないというふうに考えています。

 経済成長の見通しを下方修正した主な外的な要因は二つありまして、一つは米国の金利政策ということでですね、これはあらかじめ想定されていたことではあるんですけれども、米国が金融の正常化を目指して政策金利を上げ始めた結果、ブラジルをはじめとした新興国からの資本の流出であるとか、あるいは新興国の通貨の切り下げ、これが発生しております。

ブラジルは潤沢な外貨準備をはじめ、ファンダメンタルの方は比較的しっかりしているということに加えてですね、中央銀行が適切に市場と対話をしているということもあって、いわゆる通貨危機のような状態に陥るには至っておりませんけれども、他の新興国と同様ですね、資本の流出であるとか、あるいはレアル為替の切り下げということもありますので、相応の影響を受けているということでございます。

 それからもう一点、二点目はですね、米国の通商政策ということで、これは米国と中国の貿易摩擦、これが本格化しておりまして、双方で高関税措置を採るということが実際に見られております。こういった動き、世界経済全体の成長を妨げる要因になっておりまして、例えばアメリカだけでもそのGDPの成長率を0.5%ぐらい引き下げているというふうにも言われておりまして、ここにもまあ注意が必要だと考えます。

 あと内部要因、これはブラジルの内部要因ということなんですけれども、大統領選挙を控えてですね、政治的に不透明感が高まっている中、先般のトラック運転手のストライキ等々ですね、経済・社会のゆがみ、これがですね、脆弱性を浮き彫りにしたということで、国民の将来への不安が惹起されたというような現象が起きております。

 それから基礎財政収支。要はお金の方なんですけども、これは引き続き赤字基調が予想されておりまして、特に年金改正をはじめとする諸改革、これに実際に手を付けるということが先決と考えております。実態的には、今年はちょっと難しいので、来年以降、新政権の課題になるというふうに見込んでおります。

 それから失業率の方ですね。これも今12%台のところで高止まりという感じがしておりまして、まあ本格的な消費の回復には現在至っていないということとですね、世界的に新興国のリスクオフの動きがレアル為替の弱含みの要因になっていまして、ブラジルの国内の政策金利、これも6.5%というところで、まあこれ以上下げるのは厳しいかなという状況にまで来ていると。

 こういった状況の中で経済の回復の契機として望まれるシナリオというのはですね、まずは新政権、安定政権が着実に構造改革を進めていくということが第1点。それから外的要因の鍵となるのは、特に貿易、あるいは直接投資におけるブラジルと中国の関係、これの関係次第ということも言えるかと思います。また、今後の経済に変化を与える要因としてですね、実態にそぐわない規制を緩和する、あるいは撤廃する、あるいは新たな技術革新による産業構造の変革、こういったものが求められております。

 全体的な話は今みたいなところなんですけども、次のスライドから少し具体的なケースを追いながらですね、ご説明をさせて頂きたいと思います。

 このスライド、これは2012年以降の主要経済指標の推移と予測についてまとめております。特にですね、約半年前の本年3月1日時点で、このシンポジウムで予想した数字と今の変更点を中心にご説明をさせて頂きたいと思います。

 まずは上のところのGDPの成長率というところですけれども、世界経済の改善、あるいは国内の各種景気刺激策等を背景としましてですね、景気の拡大が加速しておりまして、2018年は2.7%のプラス成長を予測しておったんですけども、先ほどご説明したような、米国の利上げであるとか、あるいは貿易摩擦等々でですね、世界経済の成長が減速しているということと、ブラジルの国内でもスト等の影響がありまして、現時点では2018年のGDP、まあ1.1%ぐらいということで、前年2017年の実質の伸びと同じぐらいの数字にまで下方修正をするに至っております。

 それから、ブラジルの経済の将来に対する不安というのが根強くてですね、内需の低迷を背景にしまして、貿易収支の方は黒字幅が年当初に想定していた金額よりも若干拡大をしておりまして、600億ドル程度を見ております。それから小売の売上動向指数については、年初予想3%と見ていたんですけど、これを少し下回る2%ぐらいになるのではないかと言われています。

 それからレアル安の展開、これがですね、予想よりも強く進んでおりまして、インフレ率の予想率を若干上方修正して4.1%ぐらいのインフレを見ているということであります。

 それからSelic政策金利。これはですね、まあインフレを抑えてきた過程の中でですね、これまで一貫して利下げの局面を現出して参りましたけども、まあここにきてレアル通貨を防衛する必要が出てきたということで、現行の6.5%程度の水準で下げ止まっているということでございます。

 続きまして、各指標の推移、これをちょっと中長期的なスパンで見ていきたいと思っています。まずは次のスライド、GDPの成長率の推移でございます。これはですね、2003年から2010年の、8年間のルーラ政権において、リーマンショックの2009年の例外を除いてはですね、概ね年率で3%から7%の比較的安定した経済成長を遂げてきました。ただ、2015年からのジウマの第二次政権以降ですね、2年連続のマイナス成長に転落しまして、2017年以降は緩やかなプラスということで、新たな方向性を模索していると、こういう状況であります。

 次のスライド、これは経常収支の推移でございます。これは、ルーラ政権の下ですね、まあ積極的な財政、あるいは金融政策の下にですね、内需の拡大を図ってきた結果、特に2007年ルーラ第二次政権以降についてはですね、赤字が拡大致してきて、2014年には1000億ドル、GDPでは4.2%の赤字を計上しています。一方で2015年以降、これはですね、経常収支の赤字幅、着実に減ってきておりまして、以前のような政府主導による投資とか、あるいは景気刺激策、こういったことに大きく依存することなく、足元のGDPというのはほぼほぼ実力通りかなというふうに見ております。

 それでは次のスライドは、プライマリーですね、基礎財政収支、対GDP比ということです。2013年まで黒字を維持しておりましたけども、2014年あたりから景気の伸び悩みということでですね、法人税等々の企業からの税収が減ってしまっているということに加えて、労働者党政権、長く続いておりますので、まあ支出のコントロールができていなかったということで、赤字基調に転じたまま現在に至っているということで、現政権の下で色んな改革の実現を準備してきておりますけれども、中々この結果が出るには至っていないというのが実情です。

 次のスライドは失業率推移ですね。これはですね、ルーラ第一次政権の2003年ごろから失業率、じわじわと低下してきたんですけども、2015年の景気低迷、このあたりから数字が逆行しております。企業側は2017年ぐらいからは雇用の調整局面に入ってきたということで、失業率の方は二桁第、11%から12%台の高いところで推移しています。まあ2017年後半以降ですね、雇用環境改善の兆しはございますけども、現在2018年の見込みについてはやはり12.5%ぐらいを見込んでいるということでございます。

 次のスライドは、消費者の信頼感指数というところですね。この指数は2015年ぐらいに最悪の水準を記録して、その後、少しずつ回復の基調にございます。ただ、今年の5月、6月、色んな、トラックストライキであるとか、社会構造の脆弱性の露呈とか、こういったことがございまして、消費者指数というのはこれに敏感に反応してちょっと悪化しているというのが現状でございます。

 次のスライド。こちらはCDSですね。いわゆるクレジット・デフォルト・スワップ、ブラジルのリスクの増減、これを指標で表したものでございます。これとブラジルのレアルの為替、これを比べ合わせておりますけれども、過去5年間の推移を見ましても、色んな政治経済イベントに左右されているということが分かります。

 2017年につきましては、テメル政権の政策への市場の信任ということでですね、為替は比較的安定的に推移しておりましたけども、この2018年に入って、大統領選挙を控えてですね、政治・経済情勢きわめて不透明ということに加えて、米国の金利の引上げ、貿易摩擦問題といった外的な要因が加わってですね、レアルに下落の圧力がかかっているということです。特にトラック運転手のストライキの時にはですね、一時的に1ドル=4レアルに近い水準に下落しました。

 中央銀行は、市場と対話しながら効果的な市場介入を行って、一応1ドル=3.7~3.9レアルぐらいの、いわゆるボックス圏の中で安定的に推移してきておりましたが、大統領選前後でのイベントの発生であるとか、あるいは外的なレアル下落圧力というのが強まれば、やっぱり1ドル=4レアルの壁を超えてしまうんじゃないか、というような原稿を先週ぐらいにちょっと用意していたんですけど、今週に入りまして、まあ案の定レアルの方は4を超えているというような状況でございます。

 クレジット・デフォルト・スワップの方なんですけども、これは2016年に政治的な混乱が一服したことでですね、それ以降一環して減少の傾向にございましたけれども、2018年、為替とほとんど同じような動きをしておりまして、まあ直近でトルコリラの大幅下落等々もございまして、現在は300bps前後で推移しているという状況でございます。

 次のスライドはBovespa、サンパウロ証券取引所の株価指数移です。こちらはですね、ブラジルに対する外からの投資家のセンチメント、まあこの2、3年できわめて改善はしておりまして、トラックのスト等で一時的に上下はいたしましたけれども、8月の上旬は、いわゆる歴史的な高値と言われる80000ポイント、この大台を越える水準で推移しておりました。ただまあ、直近の内外要因、あるいは新興国リスクの高まりということで、現在では75000から78000ぐらいの水準で推移しております。

 次のスライドはインフレ率の方の動きでございます。棒グラフの方がインフレ率、それから横に入っている点線の方はインフレのターゲット、これを示しております。インフレターゲット、現在は下限が3%、上限は6%ということで、2016年以降インフレはまあ収まってですね、17年にはインフレターゲット下限に近い水準まで来ております。2018年も、国内経済の回復、あるいはレアルの下落等を背景に若干インフレが高まるかなというような見通しをしております。

 次のスライドは、政策金利、Selic金利。こちらの方はですね、2016年以降インフレが沈静化して以来、景気の刺激を目的とした金融緩和というのを進めておりまして、足元は6.5%程度ということですけれども、直近、新興国通貨が狙い撃ちされているということで、例えばお隣のアルゼンチンなどは通貨防衛措置として政策金利を一気に5%上げるというような、極めて荒っぽいやり方をしているということもあって、ここにきてブラジルの方も利下げの局面はそろそろ底かなというふうに見えます。

 次のスライドは外国直接投資の推移ということで、これはブラジルの中銀が発表している外国直投の推移で、これは直近3年間、だいたい700億ドル台の水準をほぼほぼ維持しておりまして、2018年も同様のレベルになるというふうに見ています。

 それから次のスライドですけども、これは金融部会に所属しております各金融機関様の方にご回答頂いて、2018年、2019年の予測数値、予測については最大値と最小値というレンジで表記をしております。ご参考までに、そこにあるFocusというのはですね、これはいわゆる、ブラジル中銀が100以上の金融機関の予測を基にまとめた指標トレンドということで、あわせて横に並べて置いております。

 まずGDP成長率の予想ですけれども、2018年については1.1%~1.5%ぐらいのレンジ、それから2019年については2%~2.5%ぐらいのレンジを見ております。いずれも、中銀のFocus同様ですね、緩やかな成長が継続するだろうというふうに見込んでいる中でですね、前回発表させて頂いた今年の2月時点の予想と比べると、成長のスピードが鈍化しているということが見て取れます。

 それからインフレ率の方ですけれども、こちらの方は2018年が4%~4.1%ぐらい、2019年は4.2%~4.25%ぐらいということで、これは政府が定めているインフレターゲットのレンジとほぼほぼ見合っているということです。

 為替レートにつきましては、2018年が3.6~3.95レアル、それから2019年については3.6~4.0レアルというふうに見ております。これも半年前ぐらいの前回予想と比較しますと、まあ内外の情勢が変わっているということで、レアル安のさらなる進行を今回見込んだという形になっています。

 それから年末時点での政策金利につきましては、今年度2018年度末は6.5~6.75、2019年は若干金融引き締めの方向に転じて、7.25~8.5%ぐらいということで、まあ緩やかな金利引き上げに向かうものというふうに予測しております。

 次のスライド、こちらの方はですね、金融部会の金融機関様の方にですね、今後の見方についてコメントを頂きまして、これをサマリーしたものでございます。

 まず最初の一項目。「大統領選をはじめとする政局展開が不透明である中、本格的なブラジル経済の回復、その契機となるものは何か」という問いに関するご回答です。

 まずはですね、構造改革への継続的な取組みと実行、これが1番ということで、具体的には社会保障制度の改革であるとか、税制改革、財政改革、あるいは政府保有企業の民営化、労働改革、企業コンプライアンスコストの低減、投資促進のための2国間協定等々、こういったものをどこまで具体的に前に進められるかというのが鍵になると思います。

 このような取組みを通じまして内外のマーケットの信認を勝ち得ることによって、レアル為替の切り下げ圧力を落とし、あるいは低インフレ、安定的な低金利環境の構築、本格的な個人消費の回復に繋がるものというふうに考えています。また、貿易、こちらの方は特に中国向けの輸出の伸び、これを本格化すること、これもまあブラジルの成長ドライバーとしては重要なことだというふうに考えております。

 次の項目、これは、今後、ブラジル経済に影響を与える外的な要因があるとすれば何か、またどの様な影響なのか、という問いかけに対する答えです。

 米国金利の引き上げを含みます、グローバルな金融政策の正常化に伴ってですね、世界的な金融引締めの動きというのは実際すでにアルゼンチン、トルコ等々、元々その経済基盤が脆弱な新興国からのキャピタルフライトを招いておりまして、ブラジルでも昨今のレアルの減価が進む中ですね、影響が顕在化しているということでございます。引き続き、世界的な金融緩和の政策が一気に巻き戻しの局面に入ることで、グローバルな資産アロケーション、これを見直しする可能性がある中ですね、各国の動向にはいましばらく注意が必要というふうに考えます。

 また、EUの政治動向であるとか、米国、中国、ロシア、北朝鮮、中東等々のいわゆる地政学リスク、こういったもの、国際社会の不透明な状況である中ですね、これが2018年以降も続くということを想定しておりまして、こういったリスクが顕在化した場合にはやはりブラジルへの影響も避けられないというふうに考えています。

 個別国で申し上げると、やはり中国の動向、これは引き続きよく見ていかなきゃいけないということで、中国からの直接投資に限らずですね、様々な国からの直接投資、これがブラジルに対して出てくれば、これは良い意味でひとつの転換期になるというふうに思っています。

 それから最後、もうひとつの項目。これは、ブラジル経済は今後どの様に変化していくかと、またこういった変化に日本勢としてどのように変化に対する準備、戦略をしていくかという、こういう問いかけでございます。

 一つは、ブラジル自身が各種構造改革を通じてですね、マーケットフレンドリーな環境を整備するということ、これにどれだけ努力を重ねるかという点でございます。労働法の改正を含め、色んな改正に本格的に取り組む、こういった姿勢は見せているので、多くの国民は改革の必要性を強く認識しておりますので、大統領選の結果にかかわらずですね、改革路線、これは大筋では続いていくだろうというふうに考えます。この流れの中でですね、持続的に改革が実現できれば、ブラジルコスト、あるいは実務運営上の障害等々、こういったものが緩和されて、ブラジルのイメージ、これを大きく塗り替えられるチャンスがあるというふうに思います。

 二つ目。これはですね、ビジネスの価値基準というのがですね、モノからサービスに動いていく中でですね、IOTであるとか、AI、ロボティクス等々の新しいテクノロジー、こういったことを駆使することによって、ブラジルの産業構造、これを飛躍的に変えてですね、多くの新しいビジネスモデルの誕生につなげるということがポイントになるかと思っています。

 ブラジルは幸いにして、そういった先進的な発想であるとか技術を前倒しで大胆に取り入れるということにかけては長けておりまして、変革を受け入れる柔軟性もあるので、そういった技術的な革新の環境変化、こういった局面に立ち向かった際には強みが発揮できるのではないかというふうに思います。

 では、こういった変化の時代、どのように備えられるかというところですけれども、通常時にはスリムな社内体制を維持しながらもですね、ここぞという時ですね、いわゆる潮目が変わった時にですね、迅速かつ集中的にヒト・モノ・カネというのを投入できる準備。特に日系企業の場合はですね、常日頃から本社の経営陣に対して、どういったタイミングでブラジルにベットをするのかと、あるいはこういうタイミングだったらしないのかということをですね、あらかじめ十分に打ち合わせしておきながら、いざという時に迅速に動けるような、こういった明確な戦略・戦術を決めておくということが重要かというふうに思っています。

 私ども金融機関といたしましても、こういった変革の時代の中でですね、いかにタイムリーにお客様のお役に立てるかということを常に意識しながら、安定的な資金の供給でありますとか、あるいは適切な金融商品のご提供、サービス等々に努めることを改めて認識しつつ、ブラジル経済動向のご説明を終わらせていただきたいと思います。

 続きまして、銀行業界と保険業界の業界動向について簡略的に説明をします。

 まず銀行業界の方ですね。最初のスライド、これは銀行の貸出残高の推移です。2011年以降、毎年二桁ペースで融資残高というのは増えてきましたけれども、2015年には6.7%と一桁の伸び、2016年以降はマイナスになっております。2017年は、個人向けの貸出は若干増えておりますけれども、昨年に引き続いて景気低迷による企業資金のニーズが落ちているということと、金融機関の保守的な与信運営等々ございまして、法人向けは全セクターにおいて減少。2018年上期はですね、個人、法人共にですね、前年並みの水準で推移しているということで、貸出残高の方はようやく底打ち感が見えたかなという感じでございます。

 次のスライドは、新規与信に対するですね、平均利ざやの推移ということで、これは2017年、政策金利自体が引き下がったということでですね、個人向けを中心にですね、貸出の利ざやは縮小しております。

 次のスライドは不良債権比率ということで、これは2015年以降、景気低迷が続く中ですね、企業の資金繰り悪化等々の影響を受けて、いわゆる延滞債権というのは増加しておりましたけども、2017年6月以降景況感の回復が少し見えてきたということで、個人・法人共に不良債権の比率は改善しております。

 銀行業界については、リーマンショック以降今年ちょうど10年目ということで、節目の年なんですけども、IMFのレポートにおいてですね、世界景気が停滞するリスクが指摘される中ですね、足元の先行きの不透明感は若干強まっているということで、いまのところ、世界経済、あるいはブラジル経済が一気に致命的な危機に陥るという兆しはございませんけれども、引き続き注意、警戒が必要というふうに考えています。

 ブラジルの金融セクターについてはですね、その健全性というのが一つの強みになっておりまして、銀行業界としては、目先の環境変化、これに右往左往することなく、お客様の事業を持続的に支えることのできるように引き続き不断の努力を重ねて参りたいというふうに思っています。

 最後に保険業界の方のご説明をいたします。最初のスライド、これはですね、いわゆる保険料収入の推移ということで、2018年1月-6月累計の保険料の収入の伸びというのは前年同期比で6.3%プラスということで、昨年、同期間比ではプラス2.7%ということで、改善の兆しは見えております。ただ、マーケットの成長の予測と比較すると若干下回っているというのが現状でございます。

 次のスライドは、保険種目別の保険料収入でございます。種目別ではやはり生命保険の分野が10%超の伸びを示しております。まあ雇用が改善してきたということに加えて、企業の新規ベネフィットの導入であるとか、あるいは団体信用保険、こういったものが好調に推移しているということで、あとは、これまでマイナストレンドであった自動車保険、こちらの方もですね、まあインフレ率並みには回復していると、こういう状況でございます。

 次のスライドは、損害率の方ですね。損害率の方はですね、2018年1-6月の累計で43%ということで、昨年比では2.8%ぐらい損害率は改善しているということでございます。

 それから次のスライドに行きまして、ブラジルの保険市場の成長の見通しということですけれども、こちらの方は、2018年の保険市場の成長見通しということで、これは損害保険、生命・傷害保険共にですね、対前年を上回る成長を予測しております。

 2018年以降のブラジル経済の先行き、若干の薄日が灯っているようにも見えておりますけども、政治的な不透明感を中々払拭はできていないということで、失業率は高止まり、個人消費も中々戻ってこないということで、景気回復の兆しが中々見えない中で保険業界もですね、まあ若干厳しい状況が続くのかなというふうには見込んでいます。

 ただし、中長期的に見ますと、社会構造が変わっていく中で、ブラジルというマーケットの中での保険商品のニーズというのは間違いなく高まっていくというふうに見ておりますので、まあこの辺を中長期的に見ながらですね、保険業界としても今から準備を進めていくというふうに考えております。

 以上、私の方からの金融部会からの発表でございます。

 

司会

 ご質問、ご意見等おありになる方、挙手をお願いできますでしょうか。はい、ありがとうございました。このような不透明な時期にですね、マクロ経済の見通しを話すというのは非常に難しい作業だったかなと思いますけども、安田部会長、本当にどうもありがとうございました。

 

安田部会長

 どうもご清聴ありがとうございました。

司会

 それでは続きまして、貿易部会の猪股部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

貿易部会

           

                            猪股淳 部会長

 貿易部会長を務めております、伊藤忠商事の猪股と申します。早速ではございますが、ブラジルの貿易環境に係ります2018年の上期について振り返りたいと思います。

 こちらに示しておりますグラフは、半期ごとの貿易額の推移でございます。左側の青色が輸出額、右の緑色が輸入額を示しておりまして、折れ線グラフは貿易収支と。またですね、真ん中より下の方に赤い線が引いてありますが、こちらは貿易収支の黒字ラインを示しております。

 17年のブラジルの貿易収支はですね、670億の黒字ということで、2年連続で黒字幅を更新しているという状況でございます。2018年上期につきましては、貿易黒字は、やや縮小してはおりますものの、輸出額、輸入額ともに上昇いたしまして、2016年上期の底からはですね、回復している状況が見て取れるということでございます。

 一方、安田さんのお話しにもございましたけれども、5月の全国のトラックストライキ、あるいは通貨安の影響、それから10月の大統領選等々と、貿易環境も不透明感がただよっているというふうに考えております。為替につきましては、ご説明あった通りですけれども、17年の期中平均が3.18レアルと。これが今年の4月以降どんどんレアル安が進みまして、ついには4を突破してしまったという状況でございます。

 次のスライドで、18年上期の輸出入についてご説明したいと思います。

 輸出動向につきまして、商品別に展開しております。この表ではですね、輸出商品を一次産品、半製品、工業製品の3つに大別しております。それぞれの輸出額の構成比では、一次産品がですね、やはり全体の約半分、48%を占めております。まあブラジルの貿易構造はですね、国際市況に大きな影響を受けがちな構造に何ら変化はないということでございます。18年の輸出総額は、数量ベースでは2.1%となっておりますが、金額ベースでは5.6%のプラスということでございます。

 続きまして、輸出、向け先別の輸出でございます。表の左側がですね、上位10カ国。右が地域別の構成比を表している円グラフになります。日本向けはですね、第9位で5.2%の減少ということでございます。また、右側の円グラフから分かりますことはですね、やはり比率として中国、欧州向けが比率高いんですけれども、全体としてやはり地域に偏りがない、向け先のバランスが取れた輸出体制が構築されているという状況は上期も継続しております。

 続きまして、商品別の輸入動向でございます。輸入総額につきましては、数量は昨年比5%のマイナスではありますが、金額では17.2%のプラスというふうになっております。金額構成で見ますと、やはり工業製品が全体の8割以上を占めておりまして、その中でも特に大きな増加が目立つ品目といたしましては、これは増加率ですけれども、中国からの輸入を中心とする送受信機。これは数量でも34.6%というふうに大きな伸びを示しておりました。今度、燃料油ですね。アメリカからの輸入を中心とする燃料油のディーゼルですけれども、こちらは金額・数量ともにですね、大きく伸びているというのが上期の状況でございます。

 工業製品に続く構成比を占める一次産品の中では、やはり原油、天然ガスがですね、数量・金額ともに増加しているのが見て取れます。半製品系では銅ですね。銅版、アルミニウムがやはり金額・数量ともに増加しているというのが上期の状況でございます。

 輸出と同じく、輸入の主要相手国でございます。左側の表ですが、2017年下期にですね、アメリカを抜き去りまして、中国が輸入相手国のトップになったわけですけれども、18年上期もですね、金額を伸ばして、1位のポジションを維持しているという状況でございます。日本は輸出と同じで、9位というポジションでございます。

 右側の地域別の構成比でございますが、これも輸出と同じでやはり中国、ヨーロッパからの輸入が多い状況ですが、やはりバランスの取れた輸入が図られているということが見て取れるかと思います。

 続きまして、日本にフォーカスいたしまして、対日貿易でございます。左側が輸出でございます。昨年比ですね、伸び率としましてはマイナス5.2%ということでございます。鉄鉱石、それから鶏肉、コーヒー豆、アルミニウムが輸出額を減少させているという一方で、大豆、航空機関係、大豆関連ですが大豆かすの輸出が伸びているという状況でございます。

 一方、右側に目を転じまして、輸入でございます。輸入につきましては、合計で26%の伸び率を示しました。特に伸びが大きかったのは、工作機械ですね。これがですね、700%近い増加ということでございます。その他ですね、自動車、トラクター部品、乗用車というものの輸入の伸び率が目立っているという状況でございます。

 続きまして、直接投資についてでございます。左側のグラフはですね、2011年から直接投資額を半期ごとに表しておりますが、話しはですね、年間と半期とちょっと混ぜながら話したいと思いますが、隔年ベースで見て行きますと、2011年、直接投資は695億ドルというのを記録いたしました。以降ですね、12年、13年と減少したのですが、14年から持ち直しました。ただ、皆さんご記憶に新しいと思いますけども、16年上期にぐんと落ち込みましてですね、それが徐々に持ち直しまして、17年は2012年と同じレベルまで回復してきております。しかしですね、貿易の状況と異なりまして、2018年の上期を見ますとですね、16年の上期と同水準というふうになっております。

 右側が国別の直接投資の内訳ですが、この中で特に下落が目立つのがですね、アメリカ。金額的にもインパクトが大きいですが、アメリカからの投資額減少が顕著に見て取れるというのが2018年上期の直接投資の状況でございます。

 続きまして、業種別に直接投資の内訳を見てまいります。一次産品の伸び率がですね、126%弱ということで、合計では構成比の大きい工業、サービスが減少したため、一次産品が伸びているものの、全体では約29%のマイナスというのが、直接投資の伸び率というか、マイナスですね、下降があったのが2018年上期でございました。

 工業関係では、化学・木材・木材紙パルプ・紙製品が186%の伸び。非鉄金属鉱産物が100.8%の伸びと、投資が大きく伸びておりました。サービス業ではですね、投資は合計で減少しているんですけれども、その中でも伸びた業種が、金融、約320%、倉庫・運送関係が270%強ということで、全体ではサービス業関係は落ち込んでおりますが、業種別で見ると、非常に直接投資が伸びている分野もあるということでございます。

 続きまして、日本からの直接投資の推移でございます。この10年間ではですね、2008年、2011年あたりに投資がどんと大きく伸びておりますが、2014年以降はですね、減少しております。2018年の上期はですね、17年に比べると回復したという状況ではございます。すでに2018年の上期の状態で、2017年の年間の投資額を上回っているという状況ではございますが、金額、棒グラフの大きさをご覧いただくと分かる通り、やはり日本からの直接投資は減少傾向にあると言わざるを得ないというふうに考えております。

 続きましては、2018年のブラジルの貿易環境に関わる下期の展望ということについてでございます。金融部会の安田さんからもご説明がありましたが、やはり不透明感が非常にあるというのは皆さんご承知の通りだと思います。不透明感があることを背景にですね、やはりGDPの成長率は下方修正になっているという状況で、年初ほどの景気の期待感というのは薄れていると言わざるを得ないと思います。為替につきましても、足元のレベルが回復してくるというのは非常に考えにくいと。これはやっぱり、アメリカの金利の上昇含みを残した金利据え置き、トルコの地政学的な問題ですね、それから短期的には、大統領選挙の世論調査でも為替が上下するぐらいなものですから、やはりレアルが高い方向に進むというのは非常に考えにくいので、今、下期、ここ数カ月ですけども、やはり今の4を中心とした、4をちょっと下回るとは思うんですけども、まあ単なる予測ですけども、レベルで推移していくんだろうということが予測できるのではないでしょうか。

 ただ、不透明感はありますけども、経済自体がマイナスに転じるというシナリオはやはり考えにくいということで、2018年の下期の貿易環境はですね、いま足元の状況が継続していくのではなかろうかというふうに考える次第であります。

 まあ、不透明感、不透明感ということで、これも皆さんご承知の通りではあるんですけども、やはりブラジルの大統領選挙、米中の貿易戦争の動向と、あと最近出てきていますトルコの問題等々ですね、やはり不透明感があると。もちろんアルゼンチンの情勢も不透明感に一役を担っているということでございます。 

 ただ、不透明感と言いましても、まあ貿易という観点でみますとですね、例えば米中貿易戦争などは、ブラジルなど南米は農産品の輸出を行っておりますので、米中貿易戦争の、恩恵というわけでもないんですけども、中国向けの輸出増という恩恵が出てきているのも事実であります。なので、不透明感はあるんですが、マイナスばかりとも言えないというのが貿易の環境ではなかろうかというふうに考えております。

 最後ですね、「大統領選挙を直前に控えて~変化の時期への準備と戦略は」ということでございます。こちらにつきましてはですね、今月初めに貿易部会で懇談会を開催いたしましたが、そこで準備と戦略という点に関しましてですね、参加者の皆様からこのような意見が出されました。それを列記しております。皆様のご参考になればと思いまして、1枚スライドにさせていただきました。

 私からは以上でございます。どうもご清聴ありがとうございました。

 

司会

 猪股部会長、どうもありがとうございました。ただいまの発表につきまして、ご質問、ご意見等ございますでしょうか。特にございませんでしょうか。どうもありがとうございました。

 それではですね、引き続き機械金属部会の発表に移らさせていただきたいと思います。植田部会長より発表いただきます。植田部会長、よろしくお願いいたします。

 

機械金属部会

                  

                                                      植田真五 部会長

 皆様こんにちは。ブラジル三菱重工の植田でございます。機械金属部会長を務めさせていただいております。

 当部会は、機械および金属に関連するメーカー、並びに商社の方々を中心としたメンバーになっております。今回のシンポジウムで発表するにあたりまして、事前に各社にレポートをまとめていただき、またですね、部会を開催して情報および意見の交換を行いました。本日はその内容を発表させていただきます。

 構成といたしましては、まず、当部会に関係するマクロ指標を説明させていただきます。続いて、セグメント別に鉄鋼、電力、建設機械、自動車およびその他の産業、オイル&ガス、紙パルプおよび業務用空調、こういったセグメントの状況を説明させていただきます。最後に、副題である「大統領選挙を目前に控えて~変化の時期への準備と戦略は」ということでまとめさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 それでは、マクロ指標ということで、最初はブラジル鉱工業生産の状況をグラフにまとめたものです。ブラジル地理統計院の資料です。2013年以降今年の7月までを示していますが、ご覧の通り、2014年、15年はマイナスが続いて、皆様も大変苦労された期間でありました。2017年に入ってプラスに転じ、18年もそれが継続すると期待をしていましたが、7月に大きなマイナスとなっています。これは、5月に発生したトラック運転手のストライキによって国内物流が混乱し、原材料の入荷ができなかったり、製品の出荷が滞ってしまったと、こういったことが大きく影響していると思っています。加えて、本日の副題にもありますように、大統領選という政治・経済的にも大きな影響を与えるイベントがあるだけに、当部会としても気を揉む現下の状況であります。

 次は土木建設指数を示したグラフです。これもブラジル地理統計院の資料です。2012年を100として、その後の推移を折れ線グラフで示しています。それぞれの年ででこぼこはありますけれども、傾向としては、2013年から17年に向けて右肩下がりの状況で、底を打った後、17年の後半からプラスに転じているということなんですけれども、まだ設備投資意欲は低いと言える状況ではないでしょうか。選挙直前は案件が動かない、とよく言われますけれども、選挙後も、新体制が有機的に動き出すには時間がかかり、それまでの期間はですね、不透明な時期が続くのはないかと考えております。

 後で別の資料を用いて説明いたしますが、当部会においては、この指数とビジネスの関係が深い建設機械を扱っておられる各社も、回復傾向は見られるものの、不安は払拭しきれないというような状況というふうに考えております。

 ここから、セグメント別の状況を説明させていただきます。まず、鉄鋼であります。ブラジル鉄鋼協会がまとめている数値を使っています。左上に2013年から17年までの年間の粗鋼生産推移を示しております。その右に、今年の5月までの粗鋼生産を示した表を準備しています。

 上期の回顧としてはですね、左のグラフから、2016年に底を打った後、17年に大きく改善をして、2018年も引き続き対前年比で増加はしているんですけれども、やはり5月のトラック運転手のストの影響、これ今までの2人も述べておられましたけれども、そういったことの影響で減速しているというような状況であります。

 国内販売は、回復をしてきた自動車業界の牽引によって増加傾向にありますが、先ほどのグラフでお示ししたように、建設業界等依然として需要が低迷しているところもあり、盛り上がりに欠けているといったような状況であります。

 輸出については、対前年比で減少傾向。輸入は国内景気の回復を期待して、若干増加傾向にあると見ていますが、世界市場は5億5000万トン分の余剰生産があって、その半分、2億8000万トンは中国と言われております。したがって、今後の為替動向によって大きく変化する可能性もあるとブラジル鉄鋼協会は懸念を示しているという情報もございます。

 下期の展望といたしましては、4つの観点から不透明な状況が続いており、引き続き今後の動向を注視する必要があると思っております。4つと申しますのは、まず、これまでも何回か申し上げたトラック運転手ストの影響に伴う景気の停滞でございます。2つ目はまさに10月の大統領選挙。3つ目は、お隣のアルゼンチンで起きている通貨安に伴う自動車等の輸出販売への悪影響、ということです。最後はですね、4つ目は、アメリカの保護貿易措置が及ぼす世界的な影響と。こういったことでございます。

 続いて電力でございます。これはエネルギー研究公社の資料でございます。左の棒グラフが2013年から昨年までの電力消費の推移、右の棒グラフが2013年、14年、および17年の電力消費量の内訳を示しています。

 今年上期の回顧といたしましては、ブラジルの電力消費は左のグラフが示すように、2017年に前年を上回り、今年の5月までの1年間の消費量で見ましても、特に産業用の増加によって前年同期を上回っているというような状況でございます。5月時点での前年同月比では、トラック運転手ストはあったんですけれども、まだその影響は出ていなかったのか、2.9%の増加を示しています。産業別に見ますと、これカッコの中の数字でございますけれども、自動車がプラス13.4%、化学がプラス5.4%、プラスチックがプラス3.8%、金属がプラス3.4%となっております。

 下期の展望としては、エレトロブラスの民営化が遅れている等ですね、電力設備投資を巡る動向が不透明で、引き続き状況を注視する必要があると思っております。また、当機械金属部会の企業が関連しているバイオマス関係の発電設備はですね、新規の案件の動きはまだまだ低調が続くのではないかというふうに予想されておりまして、アフターサービスに力を入れていく必要があるというふうに見ております。

 次に、建設機械であります。先ほどマクロ指標として土木建設指標をお示しいたしましたが、ここでは建設機械生産実績をグラフで表しています。ブラジル地理統計院が、鉱物採掘および建設機械・装置として分類している数値でございます。

 上期の回顧といたしましては、土木建設指数と同じように、建設機械自体の需要も2017年まで落ち込んでおりましたが、2018年の1~5月の需要は、製品分野によっても異なりはするんですが、対前年比で20~30%、またはそれ以上の増加が見られるといったこともあります。輸出に目を転じますと、米国向けがアルゼンチン向けの減少を補うという、ほぼ同様の傾向も示しております。

 他方、下期を展望いたしますと、これまで官公需が増加して建設機械の需要を下支えしていたものが、選挙直前直後の公共工事ストップによって減少に転じる事や、不透明な政治情勢が経済界の投資心理に微妙な影響を及ぼしていることから、上期の勢いが継続するのかどうか、これも慎重に見極める必要があると思っております。また、輸出につきましては、米国の保護貿易措置や、IMFの支援を受けているアルゼンチン経済、この影響を注視することが肝要というふうに思っております。

 続きまして、自動車その他の産業関連セグメントです。資料といたしましては、左下に自動車生産協会がまとめた自動車生産台数の棒グラフ、その上にブラジル地理統計院が発表したその他産業機械の生産動向。これは2012年を100とした指数でございますが、その資料を準備しております。機械金属部会のメンバーは非常に多岐にわたっておりますので、一口で語るというのは中々難しいところがございます。この2つのグラフを参考にしていただきながら、当部会メンバーの肌感覚といいますか、実際ビジネスを行う際に感じている状況をご紹介させていただきます。

 まず切削工具に関してです。この業界の主力ユーザーは自動車産業でありますが、色々なところで言われております通り、自動車の生産は回復してきております。大いに期待したいところではありますが、先にも申し上げたトラック運転手のストの影響や、大統領選を控えた微妙な時期ということから、先行きの不透明感は払拭しきれないという大きな捉まえ方をしています。その中で、農業機械や金型分野は比較的堅調に推移をしているというふうに見ております。切削工具分野としては、不安はあるものの、需要は今後も上向いて、下期もこの傾向が継続するものと予想をしております。

 次に、各種の回転機械に使用されるベアリングでありますが、これも自動車生産の状況と連動して、需要は横ばい、あるいは回復傾向と予想しています。今後、下期としては、現下のレアル安がどこまで行くのか、大統領選挙の行方がどうなるか等によって、こういった不安要素によってですね、前年と比べて余り大きな伸びは期待できないのではないか、微増というような見通しを立てています。

 金属加工油剤・潤滑油の業界に関しましても、自動車生産に連動して比較的堅調に推移をしていると見ていますが、その伸び率が鈍化傾向を示しているという若干不安要素もございます。課題は、レアル安と原油高に伴う輸入原料価格の急上昇というふうに見ております。

 小型ディーゼルエンジンの市場全体としては、上期・下期とも落ち込み傾向であると分析しておりますが、日本製の多気筒エンジンは堅調な見通しを持っております。トラクター分野は、ブラジル経済の回復とともに2017年に需要が戻りましたが、今年に入って再び落ち込んでいるというふうな状況です。下期に関しても、やはり大統領選挙の結果が、農業省の政策にいかに現れて、その投資心理にどのような影響が与えられるのか、こういった不透明感を感じております。ポンプに関しては、回復傾向にあるものの、全体的には足踏み状態と言ったところでしょうか。

 また、プラント向けの制御機器関連としては、2017年にプラスに転じたGDP成長率、原油高、およびパルプ需要の増加等に伴って、石油とか石油化学、紙パルプ、鉄鋼といった業種で現状設備の更新投資に対する投資意欲の回復傾向が見られるんですが、最終的な投資決定までには時間を要するものと、引き続き市場をよく見る必要性を感じております。

 次にオイル&ガスと紙パルプセグメントの状況です。資料としては、ブラジル地理統計院の石油製品・紙パルプ等の生産実績を2012年を100とした指数で表したものを準備いたしました。石油製品の生産実績は赤色、紙パルプは青の折れ線グラフで示しています。

 市場全体の動きをしては、今年1月にはバレル=60ドルだったものが、7月に70ドル近辺になったように、原油価格がですね、引き続き上昇してくるものというふうに見ています。また、ペトロブラスの投資計画もございまして、オイル&ガス市場はガス生産とかガス処理設備といった上流分野でのプロジェクトが活性化する予想がありますが、まあ大統領選を控えて大型の投資は先送りされる傾向も感じています。一方で、下流である石油・ガス化学は設備を縮小する傾向が見られておりまして、日本からの機器輸入は当分先になるのではないのかなというふうに考えております。

 紙パルプ業界においては、需要は拡大傾向にあるものの、トラック運転手ストの影響もあって、直近の生産は減少傾向にあると言えます。ただ、紙パルプ大手企業が中規模プラントの計画を持っているというような情報もございますので、これに期待をしたいというふうに考えております。

 最後は業務用空調セグメントです。ブラジル冷凍空調協会から入手した業務用空調の需要の推移でございます。これは、冷凍トンというですね、冷凍能力を表す数値を縦軸に取った棒グラフとなっております。

 2017年に若干の回復を見せて、下期から空調機の需要時期である今年の初頭までその傾向は続きましたが、需要期が終わったということと、これまで述べました色々な不安による経済回復の鈍化ということがございまして、上期は前年比103%とわずかな増加にとどまっています。今後は、10月の大統領選挙とか、気候にもよりますが、10月以降の需要期に5%~10%伸びてくれるということを期待をしております。

 以上、当部会を取り巻く環境を2018年上期および下期にわたって見て参りました。最後に、「大統領選を直前に控えて~変化の時期への準備と戦略は」という副題に対する部会メンバーの見方を紹介させていただきます。これは各位からいただいた内容を私部会長としてまとめさせていただいたものです。

 これまでご説明申し上げた通り、各指標では、数年間のトレンドの中では景気回復傾向は確かなようですが、一方で不透明感が拭えないというのが正直なところだというふうに思っております。しかし、ここでブラジルというのをもう一度見直して考えた時に、まあブラジルというのは、為替レートの変動を含めて、政治・経済的には常に変動と先行き不透明はつきものであるということで、何かが変わるたびに一喜一憂して、やり方を変えるというものはいかがなものかと、決して得策ではないというふうに考えております。会員企業が各関係先との長期的・継続的な信頼関係を構築し、維持する事が不可欠であると考えております。さらに、大統領選直前に活発に議論がされるようになった日本・メルコスールEPA締結等の新しい動きを通じて、ブラジルの製造業に貢献するという視点も必要ではないかと思っております。

 ご清聴ありがとうございました。

 

司会

 植田部会長、どうもありがとうございました。ただいまの発表につきまして、ご意見、ご質問等ございますでしょうか。特にはございませんでしょうか。それでは、植田部会長、どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、自動車部会の発表に移りたいと思います。下村部会長より発表いただきます。お願いいたします。

 

自動車部会

                    

                                                     下村セルソ 部会長

 皆様、こんにちは。自動車部会長の下村と申します。これから自動車部会の報告をします。よろしくお願いします。今回は、今年の上期の振り返りと下期の展望について、四輪、二輪の順に説明いたします。

 はじめに、四輪の上期の振り返りです。

 新車市場についてです。12年以降、大きくシュリンクしていますが、16年から回復しました。18年上期は約117万台、前年比114%と大きく伸びました。輸入車の比率は12%と、Inovar Autoの輸入車制限の解除もあり、7年ぶりに前年を上回りました。

 続いて月別の販売台数です。1月~4月は前年比120%と大きく伸びました。5月、6月はトラックドライバーストライキがありましたが、それでも前年を超えました。

 続いて生産、輸出です。上期の生産台数は144万台、前年比114%の好調です。輸出台数については、上期として約38万台と過去の最高でした。

 次に、新車・中古車別の市場です。中古車市場も新車同様に前年を上回りました。中古車、新車トータルで1200~1300万台レベルです。

 続きましては、ブランド別の台数とシェアです。テーブルを見てください。5 年前からトレンドを見ていくと、Fiatなど、これはBig4、欧米メーカーが台数・シェアを落としていましたが、日系メーカーが台数・シェアを伸ばしています。ここはちょっと頑張っております。ただ、今年の日系メーカーは、市場拡大に追いつけずシェアを少し落としています。

 次に下期の展望です。こちらから2018年の予測です。

 国内市場は大統領選挙の不安がありますが、先回の通り250万台程度を見込んでいます。前年比112%で、昨年に引き続き拡大する見込みです。

 生産・輸出台数については、生産は302万台、輸出は77万台と、先回予測から少し減らしています。これはトラックドライバーのストライキの影響でReintegraがリダクションしたことや、アルゼンチンの市場が減るためです。ただ、前年比ではいずれもプラスになると見ています。

続きまして、長期展望についてです。

 まずはRota2030についてです。前回のシンポジウムでは、Inovar Autoに比べて次の点が変更になると話しました。WTOで問題になったIPI罰則の軽減、より長期スパンでプログラム、セーフティ、コネクティビティ、新しい技術分野の強化、などです。2月から3月に発行する見込みたったのですけど、そこから大分遅れまして、7月6日にやっとRota2030のprovisional measureが発表されました。

 内容は先回説明したものから大きく変わっておりません。まず、生産工程の現地化要件がなくなります。そして、すぐれた技術の現地化に向けてR&D、エンジニアリング投資が強化されます。また、燃費改善やセーフティについては新しい技術の導入が促進されます。新たにサプライヤーの育成プログラムのイントロダクションをされます。

 また、Rota2030の発表と一緒にエコカー向けのIPI減税が発行されました。こちらは11月から始めます。今までの排気量から、燃費とCurb Weightの分類に変わりました。問題は、下の通り、今と比べてハイブリッドやPHV、ベネフィットはほとんど受けてないです。11月の施行までまだ時間があるので、さらなる税制優遇を政府にお願いしていく必要があると思っています。

 続きまして、今回のテーマである、変化の時期における日系ブランドの対応について説明します。

 まずはじめに、ここで伝えたいのは、次の政権にかかわらず、自動車政策やフリーポリシーはすごく大事ということです。RotaとIPIは先ほど話しましたので、EPAについて話します。

 メルコスールと日本のEPAについては、昨年からカマラでタスクフォースをつくったり、EPAのアンケートをやったりなど、いろんな活動をしてきました。アンケートの回答率は、自動車部会では100%、全体では70%でした。そのうち、日本とのEPAを必要と言ったのは84%とたいへん高かったです。

 一方で、日本サイドには、アメリカのFTAやRCEPがあります。メルコスール・日本のEPAのプライオリティが下がるのではないかと心配しています。11月にはブエノス・アイレスでG20もありますので、自動車部会としては、ヨーロッパ、 韓国とのEPAに遅れないように日本政府にできるだけ早く交渉を始めてもらいたいと思っています。

 今日お話したことを次のスライドにまとめます。

 今年後半は、Rota、IPI、EPAなど大きな動きがありますが、サプライヤーを含めた自動車業界は、長期的な視点に立って環境変化に負けない事業体質を自分たちでもつくっていく必要があると思っています。

 最後に、今日お話した内容に関連する、これまで行ってきたブラジル政府への提言です。コスト削減、競争力強化につながる抜本的な取り組み。自由貿易の促進。長期的なdirectionを持った自動車政策の発行。業界全体がワンチームとなって、引き続き政府に提言していきますので、どうか皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

次、二輪です。まず、生産・販売についてです。

 二輪業界もようやく市場が回復してきました。1月~6月の販売は45万台、前年比112%と、年の前半としては7年ぶりに前年を超えました。二輪のお客様となる所得層でも、失業率の改善から購入マインドが高まっています。また、輸出も前年比127%となったので、生産台数は49万台、前年比117%となりました。

 こちらは登録ベースの月別販売です。1月~6月は、3月以外はすべての月で前年を上回りました。金利が低くなっているため、クレジット販売が少しずつ回復しています。今年後半は大統領の選挙がありますので、今後の状況をしっかりと見ていく必要があります。

 最後には、支払い形態別のグラフです。緑はローン販売比率です。厳しい状況が続いていますが、少しずつ回復していることがわかるかと思っています。金利の安定や失業率の改善でローン販売が増加し、年後半も市場がさらに回復することを期待しています。

 これで私の発表を終わります。ありがとうございました。

 

司会

 下村部会長、どうもありがとうございました。ただいまの発表につきましてご質問等ございますでしょうか。ぜひとも積極的に議論して参りたいと思いますので、何かございましたらお願いいたします。特にございませんでしょうか。それでは自動車部会の発表は以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。

 そうしましたら、続きまして、前半の部最後になりますが、コンサルタント部会の発表に移りたいと思います。西口部会長よりお願いいたします。

 

コンサルタント部会

                    

                                                        西口阿弥 部会長

 皆さん、こんにちは。コンサルタント部会のEYの西口です。どうぞよろしくお願いします。

 まずは、コンサルティング会社の実績について話したいと思います。大きく二つに分けられまして、ビジネスサービスとコンサルティング会社のサービスに分けました。

 ビジネスサービスについては、法律、会計、ITメンテナンス、セキュリティーシステム、広告、人材派遣、自動車リースのサービスとなります。

 下の表のコンサルティングサービスでは、監査、税務、コーポレートファイナンスなどのサービスとなります。

 ビジネスサービスとコンサルティングサービスは、2014年度をめどに伸びております。ただし、コンサルティングサービスに関しましては、2015年はペトロブラス汚職事件、政治経済不安定による企業のコスト削減により、コンサルティングサービスはマイナスの伸びとなっております。特に、ぜいたくなサービスと言われていたデジタル関連のサービスは先送りされた模様です。監査や税務、それ以外の企業のコスト削減やプロセス改善などのコンサルティングサービスについてもマイナスとなりました。

 コンサルティングサービスの今までの動向とチャレンジについて話したいと思います。2016年から2017年までは一般的にブラジル投資案件は減り、企業戦略に関わる事業のポートフォリオのマネージメントや、事業戦略にかかる業務は減りました。2016年からは汚職防止対策のためのリスク分析や、その防止ポリシーの構築、コンプライアンスなどのサービスは増えておりました。2017年には特に事業のリスク、オペレーションのコスト削減についてのサービスが増えました。

 2017年から2018年前半は、デジタルソリューション業務についてのサービスは金融機関やバックオフィスにも導入が多くされるようになりました。特に、投資した資本に対しての利益分析が必要、コスト削減や販売拡大が課題となっている場合には、データーアナリティクスに関するサービスも増えております。データーアナリティクスに関しては、人事などでもリテンションのための従業員の行動の分析や、社内の労働裁判の提訴傾向を分析するようなデーターアナリティクスのサービスも新しく出てきました。

  ロボティクスについてのサービスは、大企業、あるいは中小企業でもマニュアル業務が多い企業が導入している傾向にあります。AIについてはまだ議論に留まっており、実際サービス提供はほとんどありません。

 コンサルティング会社の課題について話したいと思います。特に監査法人の業界で言いますと、いまトランスフォーメーションの時期と言われています。特に会計、法律、税務に関わる業務で、オートメーション化する範囲は多くあります。その際にどのような業務をオートメーション化するか、それによって減少する伝統的なサービスの代わりにどういった新しいソリューションを出せるかが課題となっております。

 また、政治・経済不安定により、社内での投資も先送りとなり、どこへデジタル関連などの戦略的な投資を行うかも課題となっております。特に税務やコンサルティングサービスのノウハウを生かし、ソフトウェアやテクノロジー会社と一緒に、システムやツールをパートナーシップによって開発をしています。どのようなソリューションをどの会社と一緒に開発していくかというのも大きなチャレンジとなっております。

 サービスの地域でのスタンダード化とは反対に、各国に合ったサービス、カルチャーに合ったサービスを提供することが重視されるようになりました。例えば、ウェブナーを使って、効率的にサービス量の削減のため好む国もありますが、face to faceで話す国ではそういったサービスの提供の仕方も変わってきます。

 経済不況に伴い、競合会社や顧客からのプレッシャー、またはサービスによってはコモディティ化され、どのように差別化をして、サービスに付加価値を与えることができるかというのも課題となっております。

 コンサルタント部会での会合では、大統領選について簡単に説明を行ってはどうかという意見がありましたので、簡単に紹介したいと思います。

 この表は、大統領候補者の政治的立場が分かるものが左にあり、右の表には8月20日現在に行われた支持率調査の結果と、ご参考のため下の段には候補者の簡単な紹介となります。

 こちらの支持率の調査はルーラが出馬しないことを前提に、副大統領候補のフェルナンド・ハダジが候補となった場合の、8月20日現在のIbopeの調査となります。PT党では、獄中にある元大統領ルーラも立候補しております。ルーラが2審でも有罪判決が出ているので、立候補が無効になる判決が出ると思われます。しかし、ルーラが出馬可能となった場合には、8月20日現在、ルーラの支持率は37%、ジャイル・ボルソナロが18.8%、マリーナ・シルバ5.6%、ジェラルド・アルキミン4.9%、シロ・ゴメスは4.1%となっております。10月7日の選挙に備え、ルーラが出馬しない場合、右翼のジャイル・ボルソナロの支持率が1位となっております。

 ブラジルは、第1次選で50%以上の得票がないと2次選がございます。マーケットにはオープンのジェラルド・アルキミン、ブラジルのセントロン、つまり小さな党の集まりがございますが、その支持を得ております。その支持によって、8月後半に始まるTV放送時間でのキャンペーン時間も長く取ることとなっており、メリットがあると言われております。

 右翼のボルソナロは、ブラジルのトランプと言われています。マイノリティのアタック、刑罰に関する姿勢、軍事政権の支持者であることから、支持率もありますが、不支持率も高いと言われております。ソーシャルメディアに力を入れており、フェイスブックでも500万以上のフォロワーがいます。

 シロ・ゴメスは元PT党。マリーナ・シルバも元ルーラ政権の環境相であったため、投資家からの人気はございません。

 一般的には、まだ誰が当選するか分からないと言われております。ハダジ、アルキミン、ボルソナロ、シロ、マリーナ・シルバは2次選に行く可能性がある候補者であると言われております。

 コンサルタント部会での会合では、ブラジルでの成功するためのヒントがあるのではないか、特に上場企業で最近株が値上がりする企業について、ヒントがあるのではないかと話し合いました。

 EYのストラテジストと話した際には、ブラジルではいくつかのヒントがあると言っておりました。

 まずは、デジタルとフィジカルチャンネルの組み合わせです。2017年から2018年7月末までの上場企業の株の上昇を見ても、Magazine Luizaは2位となっております。Magazine Luizaは1975年、小さなプレゼントのお店から始まり、今は全国740店舗、9つのディストリビューション・センターを持っています。今は販売のチャンネルとして、お店、インターネット販売、電話での販売、ソーシャルメディアでも販売をしております。インターネット販売は2017年はグループ全体の26.3%を占めました。

 顧客とつながるサステナビリティでは、会社内のサステナビリティだけではなく、顧客が消費する商品にサステナビリティを体験できる場合のことを指し、環境に関してのサステナビリティはNaturaがその例と言えます。詰め替え用の容器を販売することで、プラスチックも54%の節約、商品にもアマゾンの自然の植物などを利用したり、オーガニックのアルコール使用などが挙げられ、顧客もそれを体験できるようにしています。

  良いサービスを超えるカストマーエクスペリエンスでは、良い商品・サービスだけではなく、競合と差異化を図ることが難しくなっており、スターバックスの例のように、サービスや商品だけではなく、良い体験も大切ではないかと言われています。ブラジルのFleuryの戦略は、カスタマーエクスペリエンスを考え、ブラジル企業ホスピタリティー団体では200企業のうち、6年間連続でホスピタリティーのあるナンバー1の企業に選ばれております。子供の遊び場や、女性用の店舗もございます。

 デジタルによる利便性ですが、おなじみのUberやタクシー利用の99Taxiは皆さんご存知だと思います。Pão de Açúcarでは、去年の中旬から新しいアプリを設け、元々のPão de Açúcarの会員の顧客の消費の習慣を分析し、顧客の購入の多い商品にディスカウントを設けております。インターネット販売も行っております。

 最後に、顧客のライフサイクルに沿って顧客のニーズを予測するアマゾンは、ブラジルでは匹敵する企業はありませんが、何かヒントとなるのではないでしょうか。

 最後に、コンサルタント部会での会合では、日系企業様へ、ポジティブで投資のヒントとなるメッセージを伝えるべきではないかということで、話し合いで出た点をお話しします。

 まず、先ほど申し上げました、ブラジルで成功しているケースを分析。先ほどのスライドで、過去7カ月で株価が値上がりしている上場企業や、成功しているケースを分析すると、会社や事業などに何らかのヒントがあるのではないでしょうか。戦略、商品、サービス、コストダウン、効率向上のヒントが得られるのではないかと考えました。

 日本ブームの活用。ジャパンハウスの無印良品が好評であったことや、すき家、ラーメンなどがブームの中、日本ブームをうまく利用できる手はないでしょうか。ブラジル市場にあった工夫をし、活用できるのではないかと話し合いました。

 Rota2030。こちらについてはもうご説明ありましたが、皆さん分析されておりますが、インセンティブプログラムを最大に活用することが大切だと思います。

 最後に、長期的にはインフラへの投資。大統領選後、政治経済、良い兆しが見えるといいのですが、インフラはまだブラジルでは不備であること、PPPで投資するチャンスがあると言われております。

 コンサルタント部会では以上となります。

 

司会

 西口部会長、どうもありがとうございました。ご質問、ご意見等あれば、積極的にお願いできればと思います。どなたかございますでしょうか。西口部会長どうもありがとうございました。

 これで前半一旦終了ということなんですけれども、ちょっと時間がありますので、私の方から簡単に前半のまとめということでお話しをさせていただきますと、2018年の上期につきましてはですね、5月のトラックドライバーのストライキまでは比較的順調だったけれども、その後、米中の貿易戦争であるとか、トルコを発端としたエマージング売りに巻き込まれて、大統領選の先行きの不安もあいまってですね、不透明感が高まって為替が急落。下期は総じて軟調な展開を予想する方が多かったかと思います。それに対する準備、戦略ということなんですけれども、まあそうした環境下にあってもですね、ブラジルのアップダウンに一喜一憂せず、企業自身の強みを生かすことを考えて、やるべきことを着々と進めるということで、やるべきことというのはですね、例えば本邦企業間の連携であるとか、地域、例えばメルコスール等、地域を面で捉えた戦略の推進、また、Rota2030等ですね、にかかわるブラジル政府向けの政策の提言等、こういったお話だったかと思います。

 大久保さん、何か、もしコメントがおありになれば。

 

大久保敦 企画戦略委員長

 急に振られてしまったんですけれども、あとですね、為替リスクのミニマイズというのが、変化への対策としてよく話が出ていたのと、あとは長期的な信頼関係構築ですとか、やはり一喜一憂しないという話しも出ていたかと思います。あと、自動車部会の方ではですね、日・メルコスール、EU、韓国とのFTAに劣後しない内容を早く、交渉をですね、進めていくというような、色んな要望もたくさん出ておりましたので、そういったことがクローズアップされているのではないかなと思います。あと、日本ブームの活用とかのアイデアも出て、これも面白いなというふうに考えております。以上でございます。

 

司会

 はい、ありがとうございました。後半はですね、先ほど申し上げました通り、大久保さんに司会の方をバトンタッチしたいと思います。拙い司会でしたが、どうもありがとうございました。そうしましたら、後半はコーヒーブレイクをはさみまして、今15時20分でございますので、15時35分から、15分間お休みを入れてですね、再開したいと思います。どうもありがとうございました。

 

コーヒーブレイク

 

後半の司会

                    

                                              大久保敦 企画戦略委員長

 これより2018年下期業種別部会長シンポジウム後半戦ですね、こちらの方に移りたいと思います。よろしいでしょうか。はい、では後半の部を始めたいと思います。よろしくお願いいたします。私、後半の部の司会を担当させていただきます、企画戦略委員長のジェトロの大久保でございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。それでは早速、各部会の発表に移りたいと思いますが、タイムキープを含めてですね、皆様のご協力をお願いできればと思います。

 まずは化学品部会から発表をいただきたいと思います。羽田部会長より発表をいただきます。羽田部会長、よろしくお願いいたします。

 

化学品部会

                  

                                                     羽田徹 部会長

 (※冒頭音声なし)。よろしくお願いします。早速始めさせていただきます。化学品部会ですが、自動車などの産業向け素材からですね、食品などの消費者向け製品まで、非常に多岐にわたる市場に関わっております。よってですね、その市場一つ一つ、全部お話しすると、たいへんなことになってしまいますので、かなりまとめる形でお話しさせてもらいます。それと、他の部会さんと重なるところ、むしろ依存するところ、多いということで、マクロ的な業界動向分析というのはここでは割愛させていただきます。

 いつものように、当部会ではですね、アンケート形式をとりまして、メンバー皆さんの業績推移ですね、それと取り組みというのをベースにお話しを進めていきたいと思います。

 今回もアンケートをとっております。20社から44件の回答を得ております。その中から、多い順に上から、今日は3つ、輸送関係、ヘルスケア関係、農業、この3つを話したいと思います。

 まず全体の話になります。参考のために左側に前回のシンポジウムの結果を載せておきました。前回ですね、メンバー皆さんに対して、2018年、皆さんの業績どのように推移すると思いますか、という問いをしております。その結果です。約8割のメンバーがですね、売上・利益ともに増加するであろうというふうに見通しておりました。今回のアンケートの結果が右の2つになります。

 上期、実際にどうでしたか、業績推移は上期どうでしたか、ということ。もう一つ、下期、どのように推移するとお考えですか。そういった問いに対するアンケートの結果です。半期ごとと年間というのを単純比較は難しいんですが、今回の結果、少し気になるところが、不変、減少を見込む割合が少し増えてきてしまっているかなというところだと思います。では具体的に見て行きます。

 まず輸送ですね。自動車関係の部材となります。前回シンポジウムではほとんどの会社さんが増加を見込むという結果でしたが、今回、上期、実際に前回の予想通りとなっております。下期については、減少を見込むところ、1社出てきましたけれども、基本的には当初予想通りかなと。先ほどからもあります、自動車の増産、これに伴う販売増というのが主な増加要因なんですけれども、他に例えば、欧米メーカーへの攻略成功したというような、まあ新規開拓ですね、とか、部品メーカーのニーズに応える形で輸入在庫ビジネスを始めましたと。少しリスクをとる取組みが始まっている、そういう理解をしました。ただ一方で、特に韓国勢ですが、価格競争が深刻化しており、今後の懸念として示されておりました。

 続いてヘルスケア。食品・化粧品・医療品周りの材料となります。2018年見通し、前回シンポジウムですね、この時には全社が増加すると見込んでおりましたが、今回はちょっと違った形で返ってきております。

 この分野、販売時期に季節性があるので、簡単には申し上げられないんですが、ちょっと気になるところをこれで見る限りは、減少してしまった、もしくは見込むというところが出ているところですね。実際には全ての分野で回復傾向にあるとのことです。そのトレンドを逃さないように、販売チームの増員に取り組んでいるところもございました。一方で、価格競争、特に欧米ですね、が激化するというようなことが懸念として挙げられていました。また、一部原料の高騰ということで、利益を圧迫していると、そういった事例がございました。

 続いて農業分野になります。これは農薬でほぼ構成されております。ブラジルの農業、GDPの2割ぐらい占めるわけですが、依然好調です。昨年農業生産が史上最高を記録したわけで、ブラジルGDPのプラスを牽引いたしました。今年、そこまで行かないけれども、史上2番目レベルの農業生産が見込まれております。その部分については非常にポジティブです。

 しかしながら、その農業生産を支える農薬についてはちょっと違った見方をしております。私、農薬業界に身を置いておりますので、少し、ここの部分はですね、良い機会だと思うので、マクロ的なところからお話ししたいと思います。

 まず、これですね。農業に利用可能な水と土地が、どこに、どれだけ豊富にあるのかの世界地図です。水玉が大きければ大きいほど水が豊富にある。赤が濃ければ濃いほど、農業利用できる土地が大きいと、そういうふうにご覧ください。

 水に関してはブラジルが断トツトップです。赤いところ、ロシア、アメリカ、ブラジル、土地が豊富にあるということですが、農業を考える時にもう一つ重要な条件、気候条件ですね。その観点から見ると、ロシア、アメリカというのは非常に厳しい冬があると。一方ブラジルではそういったものがなく、年平均で1.8回作付けができると言われております。それらのことから、ブラジルというのは農業に最も適した国であると言われており、今後の人口増加に伴う食糧増産の需要を支える世界の台所としてブラジルが期待されているわけです。

 そのブラジルの国土になります。8億5100万ヘクタールありますが、この円の左側、約半分がですね、森林、川、浸水地帯となっております。ここはもう手をつけてはいけないエリアになっています。そして時計回りに、市街地、住宅地、工場地帯ですね。そして次に赤いところ、これが農業用地になります。7800万ヘクタール。結構大きなスペースで放牧地があります。そして小さいですが、林業用ということになっておりまして、一番下の空白のパイですね、ここが不毛の地と言われるセラードを中心とした遊休地となっております。

 ブラジル農業、まだまだポテンシャルがあると言われておりますが、その理由です。ちょっとサークルがずれておりますが、まずこの下のパイ、遊休地を農地として有効利用可能だと言われております。もうひとつ、放牧地、これも一部有効利用可能だと言われております。田舎に出張される方、ご存知だと思いますけれども、広大な土地にですね、牛が悠々と放牧されていると。アメリカと比べると、面積あたりの牛の数というのはブラジルは非常に少ない。つまり土地をもうちょっと有効活用できるわけですね。そういったことから、農業転用ができると期待されています。これらもろもろを合計すると、現状の農地を3倍強にできると言われております。

 そういったポテンシャルを背景に、ブラジルの農作物の今後の作付けの見通しがこういうふうに出ております。最も大きな作物、大豆の話をしますが、左上ですね、これまで大体年間平均成長率5%で順調に伸びてきております。これ、イメージでどんなものかというと、日本の全国水稲面積ぐらいのサイズがですね、毎年増えてきているというのが、ブラジルの大豆でございます。で、今後も引き続き安定して伸びていくというふうに見られております。

 この背景には中国需要の高まりがございます。今の米中貿易摩擦をみていると、このスピードというのはもっと早く増えていくのかなというふうにも考えられます。

 このほか、コーン、シュガーケーン、ウィートなども増えていくと見られております。ほかにコットン、コーヒーとございますが、この6作物で、ちなみに、ブラジル農薬商品の約8割カバーしております。

 その農薬です。これ世界市場になりますが、大体年間ですね、500億ドルから600億ドルの間にあります。世界ナンバーワン市場がブラジルとなっております。続いて、アメリカ、中国、日本というふうになっております。そのブラジル農薬市場における農薬メーカーのトップ10ランキングをここに紹介したいと思います。

 今ですね、農薬業界、業界再編が起こっております。これ、我々の農薬ビジネスにもどう影響してくるのかというのは非常に分かりません。そういうこともあってですね、ここは業界再編、グローバルなですが、そういったこともあわせて紹介したいと思いますが、ブラジルナンバーワン、バイエルです。これ、アメリカのモンサントという会社を買収して一気に1位に躍り出ています。買収金額が660億ドル。信じられない金額ですが、1位に出ております。今年の6月、ようやくですね、世界各国の独禁法審査が通って、ようやく一つの会社として稼動を始めたばかりです。

 2位に陥落したのがシンジェンタ。これ元々、ノバルティスとゼネカの合併企業ですが、2年前に中国のケムチャイナがR&Dをベースにした会社がほしいということで、420億ドルで買収しています。

 そして3位にダウ・デュポン。これはお互い生き残りをかけて合併したわけですが、これも6月にですね、無事合併完了ということで、一つの会社としてようやく稼動を始めたところです。そしてBASFなどと続くんですが、7番目にUPL、これインドの会社ですが、この会社、今月の頭にですね、9番目にあるArystaというアメリカの会社を42億ドル、現金で買収するということを発表しました。

 ということで今、農薬業界というのはこういうことが起こっています。

 ちなみにブラジル市場で10位に位置しているのが日系のIHARAという会社です。これは日本の農薬関係会社の共同出資の会社です。ちなみに弊社もその1社になっております。

 ここで2つ申し上げたいんですけれども、まず一つ目、この業界再編。非常に多額を投資して、合従連衡進んでいます。今後ですね、この投資回収のために、非常に積極的な戦略で市場に出てくると思われます。その影響がですね、我々のブラジルビジネスでどういうふうに出てくるのかというのが、分かりません。戦々恐々としているところです。

 もう一つ、ジェネリックの台頭というところです。この表ですね、青枠と黄色枠に分けております。青枠はR&Dをベースにした会社になります。つまり、年間何十億円レベルの研究開発投資をして、新規の農薬を生み出そうと努力している所です。黄色枠、特許切れ化合物、いわゆるジェネリックですね、これをベースとした会社になります。このグラフ、3年の販売推移なんですが、青枠見ていただくと、R&Dの会社、軒並み売上を落としております。一方で黄色枠、ジェネリックをベースとしている会社、これが売上を伸ばしてきているということで、我々日系、R&Dベースですが、非常に大きな課題を突きつけられているのが現在の状況です。

 では、農薬市場の見通しになります。過去3年、少し足踏みしていました。天候不順だとか、病害虫の発生がなかったということで、流通在庫の問題が大きくありました。ここにきて在庫消化が進んだと言われていまして、回復基調に入りました。作付面積の拡大に伴って農薬市場も安定して伸びていくというふうに見ております。

 回顧と展望、農業分野に戻ります。申し上げましたように、農業生産、作付面積、非常にポジティブであります。それに伴う形で農薬市場も安定して伸びていくというふうに見ておりますが、当部会としてはですね、あまり楽観視はできないというような結果になっております。その理由が、ジェネリックの台頭と、大手の合従連衡による影響の不安感というところでございます。

 では全体の総括に参ります。大方の市場で回復基調にあるのは事実です。これまで通りの地道な営業活動、コストダウン、続けつつ、輸入在庫ビジネスの開始とかですね、そういった新規事業の構築、また人員を増強するというような少し前向きな、リスクをとった取組みを始めております。

 一方で、ジェネリックを中心とする中国、そして韓国、欧米との価格競争の激化というのが課題として挙げられておりました。部会懇談会の中でも、まあ何となく、コンサバ感が漂っていたんですが、多分その要因がですね、大統領選挙の後の影響が、まあどうなるのか分からないということで、そういったものが多く横たわっていました。

 それらを総合的にまとめると、この下期というのは、まあ攻める準備はしつつも、少し様子見かなというふうな言葉でまとめることができると思います。

 最後になりますが、変化の時期への準備と戦略はということで、部会メンバーの皆さんから回答をいただいて、それをワードクラウドにかけましたところ、出てきたキーワードがこの上の部分になります。事業、需要、為替、大統領などなどですね。

 メンバー皆さんの取組みというのをですね、これらキーワードを軸に集約してみました。とにもかくにもですね、大統領選、どうなるのか分からないと、その後の影響というのは不透明であるということで、一喜一憂せずにですね、これまでの取組みというのを粛々と続けていくというのが、まず基本中の基本にありました。とはいうものの、市場回復基調にもありますし、大統領選後も、需要、それが本物化するであろうという期待もありますので、需要拡大に期待してですね、在庫の確保に努めるところ、また、工場増産のための投資を検討しようと考えていらっしゃるところ、ございました。また、投資環境の整備が進むと期待してですね、M&Aなどの可能性を探るというような体制をご検討始める会社さんもいらっしゃいました。最後になりますが、まあ為替がどちらに動くか分からないということで、周辺国への輸出の強化に取り組んでいらっしゃるところ、また、原料を国内品に切り替えようと検討されているようなところがございました。

 はい。以上になります。ありがとうございました。

 

司会

 羽田部会長、どうもありがとうございました。ただいまの発表につきまして、ご質問のある方、挙手をお願いできますでしょうか。はい、よろしくお願いいたします。

 

発言

 羽田さん、どうもありがとうございました。三菱商事の松永です。今のご説明でですね、ブラジルは非常に、農薬なんかのポテンシャルが大きいと。その一方で、ジェネリックだとか、大手の合従連衡、なかなか厳しいなということなんですけれども、今のプレゼンにはなかったんですけれども、以前私がちょっと聞いたのはですね、結構ブラジルの場合は、輸入通関じゃなくてですね、不正の密輸ですね、農薬もかなりあるというような話を聴いたことがあるんですね。ただ、今のプレゼンにそこに触れられていないというのはですね、非常にそれ、量としてはnegrigibileなのか、あるいは当局がしっかり取り締まってですね、この辺の密輸が減っているのか、その辺のことをちょっと教えていただければと思います。

 

羽田部会長

 ご質問ありがとうございます。減っておりません。パラグアイあたりから入ってきます。ブラジルの登録制度、非常に厳しいものになっています。登録制度そのものでですね。反面、その周辺国というのはまた違った登録制度がございますので、ブラジルの審査にもかかわらず、周辺国、登録取得できるケースがあります。そういったものが平気で国境を越えて入ってきております。まあ、約1割ぐらいじゃないかと言われています。よろしいでしょうか。

 

司会

 ほかに、はい、お願いします。

 

発言

 島津製作所の的場といいます。ちょっと本題からは外れる、どっちかというと枝葉末節の質問かもしれませんけど、農薬のことを詳しくご説明いただいたので。先週のニュースでちょっと気になるニュースがあったんですけど、除草剤のグリフォサートが使用禁止になるかもしれないという、背景には何かアメリカの損害賠償の問題があるみたいなんですけど、あんなメジャーな除草剤がほんまに使用禁止になると、ブラジルみたいな大規模農業にとっては致命的なんじゃないかとちょっと心配なんですが、ご専門家的にはどんな見方をされているか。

 

羽田部会長

 これを使えないとなると、多分、思ったような収穫できないと思います。ブラジルの農業、大打撃だと思います。これもですね、グリフォサート、再評価にずっとかかっているんですけども、Anvisaがなかなか評価進まなかったという背景があります。で、まあ周辺国の動きもあるんでしょう。そういったことから、連邦裁判所だったと思うんですけども、もういいかげんに評価始めなさいということで、ちょっとドラスティックな命令を出したのかなというふうに受け取っております。ただ、こうするとブラジル農業壊滅しますので、農業省を中心にですね、マッジ大臣自らですね、このオーダーを覆す準備を今しているところだとコメントしたりですね、業界挙げて反論したりしております。これは当然農薬業界だけではなくて、使用する農家さんたちもですね、なくなるとたいへんな事になりますので、そういったことで、ちょっとどうなるか分かりませんけれども、大豆播種というのが9月から始まりますので、それまでに何らかの結論が出てくるのかなというふうには見ております。

 

司会

 はい、ありがとうございました。もう一人。

 

発言

 日本経済新聞の外山と申します。ちょっと1点教えて頂きたいんですけど、為替、足元のレアル安がですね、化学品業界、特に農業界に与えるインパクトというのをですね、ちょっと教えていただきたいんですけれども、結構私取材をしていると、為替安で輸出競争力が増えるみたいな話も聞く一方で、そういう、農薬とか肥料とか、輸入しているものがコスト増になるというあれで、どっちでも良くないよねというような話はよく聞くんですけれども、ここら辺、売っている側の業界からするとどのようなインパクトがあるんでしょうか。

 

羽田部会長

 非常に難しい、複雑な質問なんですが。おっしゃる通り、こちらの、特に大豆農家ですね、大豆を売る時にはドルでやっていますので、レアル安というのは非常にポジティブではあります。けれどもおっしゃる通り、農業資材というのはほぼ輸入ですので、レアル安ということで、コスト高になっているのも事実です。農家の利益率が下がっていると言われています。一つには、レアル安ではあるものの、大豆の価格がですね、昔ほど上がってきていないということがあります。それと、トラックストにあったように、ロジコストが非常に上がっておりますので、そういったことから利益率が下がっているというのは事実です。ただ、今、中国とアメリカの貿易摩擦ありますので、そういったところで、今、大豆がブラジル産注目されていますので、そういったところで、大豆の価格自体が上がれば非常に農家にとってもいい傾向に入ると思います。よろしいでしょうか。

 

司会

 はい、よろしいでしょうか。それでは、羽田部会長どうもありがとうございました。

 引き続きまして、電気電子部会の発表に移りたいと思います。日比部会長より発表をいただきます。日比部会長、よろしくお願いいたします。

 

電気電子部会

                   

                                                       日比賢一郎 部会長

 皆さん、こんにちは。電気電子部会の日比と申します。よろしくお願いします。電子部会はですね、まず民生品、あと産業向けの電気資材を取り扱う企業の皆様、あとは電子部品を取り扱う企業の皆様、あとはソフトウェア、アプリケーション、ソリューションを取り扱う企業の皆様から構成されている部会です。毎年恒例なんですけれども、電気電子部会もですね、アンケート調査と、一度部会を開きまして、今日はそのアンケートの結果と、あとは部会でいただいた色々なコメントを中心に発表させていただきたいと思います。

 まず、今回のテーマである2018年上期回顧と下期展望ですが、始めに前回のシンポジウムの時の電気電子業界の事業環境をおさらいしたいと思います。

 当時は過去数年続いていたブラジルのリセッションから一筋の灯が見え始めた状況だったかと思います。違った表現で言えば、どん底、底打ちといった状況から、回復の兆しが見えてきた時期とも言えるかと思います。ただし、事業領域、商品カテゴリーによって回復のスピードが違っていたのも一つの特徴でした。またマクロ的には、ブラジルの大きな課題でもある財政赤字の問題が大きな懸念点でもありました。

 続きまして、昨今の事業環境でございますが、一時は安定感を見せていたブラジル経済でしたが、グローバル市場では米国の金利政策、米中での貿易戦争。そしてブラジル国内では、皆さんもコメントが多々ありましたが、5月のトラックスト、混迷する大統領選からの政情不安によるブラジル・レアル安、また、低空飛行を続けている国内の景気回復等が、我々の業界成長に影響を与えつつあります。

 こちらのチャートは、我々の業界の液晶テレビと携帯電話の小売販売の推移を示したチャートになります。ご覧いただけますように、液晶テレビに関しましては、昨年の3月以降堅調に需要は回復しております。特に今年の4月以降ですね、皆さんよくご存じのサッカー・ワールドカップがございまして、そこでの特需が大きく業界を伸ばす一つの要因になっております。

 その一方で携帯電話。携帯電話といえば世界的に伸び盛りのカテゴリなんですが、こちらは昨年の2月にプラス成長に転じておりますが、昨今伸びが鈍化傾向にあり、直近では対前年比でほぼ横ばいといった状況が続いております。

 こちらのチャートは、主要家電製品のマナウス経済特区での生産数量の推移になります。左から、液晶テレビ、携帯電話、電子レンジ、エアコン、そしてオーディオとなります。それぞれでこぼこはありますが、経年推移でみますとどのカテゴリも成長基調にあると言えるんですが、その中でも、売上を継続的かつ堅調に伸ばしているカテゴリとしては液晶テレビとエアコンが挙げられるかと思います。特に液晶テレビ、これは弊社でも扱っている商品なんですけれども、特に都市部ですね、都市部では4Kテレビや大型インチの商品。そして地方では中・小型の液晶テレビがよく売れており、ブラジル全土にわたり特徴のある商品構成で需要が増えているのが特徴と言えます。次のページに移らせてもらいます。

 こちらのチャートは2018年2月時点と、今回での、上期の回顧と下期展望のアンケート結果の推移を示したチャートになります。ご覧頂いてお分かりの通りに、2018年2月時点に比べ、今回のアンケート調査では、18年上期回顧に関しては、改善と回答いただいた企業メンバーが2月より大幅に増えているのが特徴ではないかと思います。その一方で18年度下期展望になりますと、改善から維持に回答を変えた企業メンバーが増えており、やはりこの辺りは昨今の政情不安、レアル安といった政治経済環境の変化を敏感に表しているのではないかと思います。

 さらにここをもう少し深堀りしてみますと、18年上期回顧で改善と回答された企業メンバーのコメントをいくつか抜粋しますと、消費の回復、需要の回復、設備投資の回復、自社努力の成果といった、経済の回復を感じ取ることができるコメントが多くあります。

 一方ですね、18年下期展望のところで維持と回答された企業様のコメントを見てみますと、景気回復の当社想定からの遅れ、大統領選による不透明感の増大、それに関連して政府向け需要ですね、政府向け商談の停滞、耐久消費財需要の腰折れ、レアル安による値上げ、といったコメントが出ており、内容が先行きの不透明感、直近経済の閉塞感、停滞感といったトーンに変わっているところが印象的だと思います。

 ここでサマリーなんですけれども、18年上期に関しましては、耐久財・消費市場の回復と自社努力によるプラス成長。特に産業向けビジネスは顧客の需要拡大に伴い堅調に推移、といった攻めの状態でしたが、一方18年下期に関しましては、景気回復の遅れ、レアル安、大統領選の不透明感による投資の抑制あるいは見直し、事業体質のさらなる強化、バランスシートの管理強化といった守りの姿勢に変わってきているかと言えると思います。

 ただし今後に関しましては、景気の穏やかな回復と、市場の将来性への期待をしながら、販売力の強化をしつつ、顧客基盤をしっかりと作り、生産面においても、設備投資、人員の強化は、状況をしっかり見つつもタイムリーに行っていきたいとコメントする企業のメンバーの方々が多く見受けられました。

 次ですね、シンポジウムの副題ですが、「大統領選を直前に控えて~変化の時期への準備と戦略は」というテーマなんですが、当部会でコメントしていただいたものはこちらに書いてあるんですが、昨今大統領選の行方に対する深い不透明感はありますが、それに対応して、レアル安、為替ですね、に対しての対応。あと政府支出の抑制に対する対応。これは具体的には、政府のみではなく、民間からの取り込みも積極的に行っていく。あとは状況の悪化、改善、この両面ですね、を想定した準備を怠らないといったようなコメントをいただいております。

 最後になりますが、当部会から商工会議所、ブラジル政府、日本への要望ということで1枚用意しました。こちらのサマリーですが、政治・経済・為替・治安の健全化・安定化への努力。新規事業や輸出拡大へのインセンティブの積極的・継続的な供与。もろもろの税制面での優遇・改善。ビジネスインフラ・環境の整備。ファイナンス、ファンディング、パートナリングの支援・連携促進。あと、欧州、韓国とメルコスールのEPA締結の動きが出ていますが、これに遅れを取らない日本・メルコスールEPA締結に向けての迅速なアクション。といったようなコメントをいただいております。

 私からは以上になります。ありがとうございました。

 

司会

 日比部会長、どうもありがとうございました。ただ今の発表につきまして、ご質問ある方、挙手をお願いします。よろしいでしょうか。それでは皆様、拍手でもってですね、電気電子部会の発表を終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、食品部会の発表に移りたいと思います。黒崎部会長、発表をお願いいたします。

 

食品部会

                  

                                                    黒崎正吉 部会長

 味の素の黒崎でございます。よろしくお願いいたします。食品部会の方からは、この3つの柱で本日はご報告をさせていただきます。はい、お願いします。

 こちらが食品部会会員企業ということで、44社。色んな業態で構成されておりますので、部会の議論もですね、色んな視点でのポイントが出てきて、非常に勉強になると。ただ、これを一つにまとめるというのは大変難しいという特徴でございます。ただ、議論の後ですね、懇親会に入りますと、saudeの発声とともに一瞬にして一体感が生まれるといった特徴を持つ部会でもございます。それでは早速次のポイントに入って参ります。

 二つ目はこの3点で、市場および会員企業の状況と、あるいは頑張りといったところをご報告させていただきたいというふうに思います。こちらの方がですね、市場全体の状況、我々がとらえております市場全体の状況ですけれども、売上高伸長率については16年度以降ですね、直近に至るまで緩やかな回復基調という状況でございます。特に、これ最近明確に気づいてきたところなんですけども、キャッシュ&キャリー、これAssaiであるとか、Atacadaoといったチェーン店でございますけども、相対的に店頭価格が低い大型の業務用スーパーという位置づけでございますが、業務用だったのが今は一般消費者の方も自由に使える、どんどん一般消費者の方がそっちに流れているという業態、キャッシュ&キャリー、こちらの方が非常に伸びていると。これが全体を、緩やかな成長を押し上げているという状況でございます。

 今まで主力だったスーパー、あるいは大型スーパーの状況はどうかというのがこちらでございます。これはNielsenデータでございますけれども、Nielsenはキャッシュ&キャリーまでフォローできていないんですね。そういう中で、ご覧いただけますように、全体としてはまだマイナス成長です。その中で、飲料、あるいは食品といったものもマイナス成長という状況でございます。この1枚目、2枚目で何が言えるか、これ2つあるというふうに我々考えております。

 市場全体は緩やかな回復を示しておりますけれども、流通の中での力関係といったものがどんどん変わってきていると。そういった意味では、我々各社、販売面、あるいは販売戦略、流通戦略というのはきちんと合わせて行かないと遅れをとるぞ、という点が一つ。また、消費者の起点で見て行きますと、引き続きといいますか、よりですね、消費者の方々の低価格志向というのが強まってきている。これは今後も続くであろうと。さらに、その低価格志向の中でも、品質についてはよりこだわりが消費者の方々強くなってきているという傾向が見て取れるというのが市場の全般的な状況でございます。

 それでは次にですね、会員企業の現状、活動状況、成果といったところですけれども、ここにございますように、やはり食品部会もですね、18年上期、トラックストライキ影響などで景気の不透明感が増している中、会員企業は各々の課題対応と機会を生み出す取組みを継続しておると。全体を通しますとこういうふうに言えるだろうと。

 今回は9例、11社の事例について具体的にポイントで皆様にご報告をしたいというふうに思います。表の左側は18年上期市場動向ということでございます。右側が、会員企業の成果と課題。課題、あるいは挑戦、チャレンジということでご覧ください。

 一つ一つポイントでご説明しますが、調味料につきまして、これ弊社の例でございますけれども、5月のトラックストライキ、大きな打撃を受けましたが、6月、概ね回復ということで、全体では良い状況になってきている。ただし、レアル安、輸入原料のコストアップへの対応、あるいは消費者ニーズに対応した製品開発が必要だというのが課題でございます。輸入原料を使っている各メーカーは共通の課題をこういうふうに持っているということでございます。

 次に、しょうゆ、これキッコーマンさんですけれども、当地での使用形態、味覚、嗜好に合わせて開発した「しょうゆ液体調味料」、これはしょうゆではなくて、しょうゆ液体調味料という製品コンセプトの下、新たなプロダクトポートフォリオの策定をされたと。まあ攻めですね。よって、これからのチャレンジは、日系のみならず、ブラジル人の方々、消費者の方々にブランド認知の拡大をどうしていくかということが大きなチャレンジになっているということでございます。

 酒類。こちらは東麒麟さんの方ですけれども、東麒麟さんの方は販売面、流通面の戦略をさらに強化されて、売上拡大につながっているという成果を出されています。

 コーヒー。こちらは、国内は柔軟な価格対応と付加価値型商品の拡売もあり、好調に推移。輸出品も成約率が向上というふうに報告しておりますが、これは2社ございまして、ブラジル国内市場、付加価値型商品次々に発売されているのが三井アリメントスさんで、売上拡大が続いているという攻め。で、輸出品ですね、これはインスタントコーヒーと生豆でございますが、特に生豆の方で成約率が去年に比べてぐっと上がっているというのがイグアスコーヒーさん。要は、機において敏と申しますか、タイミングですよね、それをがっちりとらえて、アジア勢との戦いがあるわけですけども、そちらに価値を進めているということでございます。ただし、輸出、やっぱりこれトラックストライキの後、他でもございましたけども、輸出向け税還付制度見直しですね、これへの対応が今後の課題になっているといったようなことでございます。

 次にチョコレートですけれども、これはハラルドさんでございます。トラックストライキの影響で売上ちょっと落ちてますけれども、利益面は改善をしているということ。で、今チャレンジをされているのが、やっぱりチョコレートはイースターの時期の卵型のチョコレートは1年の中で相当な量を売っていた、それがちょっと平準化されてきちゃっているわけですね。年間を通していかに売れていく製品を開発していくかというところへのチャレンジが始まっているということでございます。

 即席めん。これは日清さんでございます。これはカップヌードル「シーフード」の上市、これが好調と。これやっぱり、食品はおいしさが一番の基本でございます。そして、ブラジルの消費者の方においしいと思ってもらえる商品を出すことができたということでございます。

 食肉。こちらにつきましては、NHフーズさん、日ハムさんでございますけれども、日本向けの鶏肉は回復傾向。あと、南米諸国向けの肉の増加。国内では食肉原料、例、ラーメン周りの材料で、先ほどコンサルタント部会の方から日本ブームを活用しろという話がございましたが、すでにNHフーズさんはこの取組みに着手ということでございます。

 乳酸菌飲料。こちらの方はヤクルトさんでございますけれども、トラックストライキの影響を最も大きく受けた企業の一つです。やっぱりトラックストライキは、賞味期間が短い商品、例えば野菜とか果物のようにですね、ヤクルトさんも短いわけですね。そこでの打撃というのは、売上面では取り返しできませんけれども、この間にも生産部門での各種コストダウン、利益力の強化ということに取り組まれたということでございます。新たなチャレンジも、ヤクルトさんの中では、宅配ビジネスモデルの革新ということで始まっているということでございます。

 あと、食品添加剤、香料。こちらは高砂さんとナガセさんですが、対前年実績増と。両社とも良い成績で来ているということでございます。現地系顧客や中小規模顧客等へのアプローチ枠を拡大していると。攻めに転じているということでございます。あとは、新たなる製品開発というのが今のチャレンジと。

 今11社をご紹介いたしましたが、非常に厳しい環境の中でもそれぞれですね、こうやって成果を出し、課題を明確にしてやってきているということが言えると思います。

 そういったことを踏まえて、市場の今後のポイントを3点整理しております。

 1点目はどの業種も一緒ですね。不透明感、大統領選を控えた不透明感、これは同じでございます

 2つ目。ライフスタイルの変化に伴い、新たな消費者ニーズが顕在化してきていることに加えて、特に食品・飲料についてですね、先ほど申しましたように低価格志向の強まりが見られる。これは当面継続していくだろうと。低価格志向でしかも質を求めるニーズは高まってきている、あるいは細かくなってきているという状況でございます。

 3点目は、一つはトラックストライキ以降も課題は残っているということ。まあ、再発もあり得るだろうというふうに見ております。あとはやはりレアル安。輸入原料のところですね。これ共通して言えることです。あるいは税制。様々なリスクへの対応がこれからさらに迫られるであろうというふうなポイント。この3点が今後の見方でございます。

 そういった中で、これからのキーワードということで食品部会で選びましたのは、3点。リスクへのしっかりとした備え。ブラジル人消費者の方のニーズへの徹底適合。3つ目が、1、2を踏まえたポジティブなチャレンジをやっていこうということでございます。

 それでは最後の副題。今の3つのキーワードにそってご説明いたします。

 一つ目はリスクへのしっかりとした備えですけれども、まあリスクへの備えの徹底強化ということでございます。非常に具体的な話で申し上げれば、トラックストライキ再発、これに対してどう備えていくか。我々1回学んだわけですので、いかにそれをきちんとより強く準備できるかということでございます。

 二つ目。こういった中でやはり、企業として利益創出力の強化をいかにやっていくか。先ほどのヤクルトさんの、現場の創意工夫による製造コストダウンといったことが典型ですけれども、それを各社やっていくということ。あるいは、為替動向に応じた適切な原料買付けや、現地調達比、他の部会の発表でもありましたけれども、比率のコントロール。あるいは、複数購買を徹底的に進めていくといったことは急務ということでございます。

 3点目。やはり利益だけではなくて、PLだけではなくて資産効率をどう強化していくか。ROAあるいはキャッシュマネージメントをいかに強化していくか、キャッシュをよりどう生み出していくかといったところにも、このリスクが多い中、あるいは変化の中でチャンスが多い中に備える上では必要かなということでございます。

 総じて申し上げれば2つ。一つは徹底的にリスクを洗い出していこうと。それは臆病なほどに洗い出していくと。臆病なほどに洗い出して何も起こらなかったら、ばかじゃないの、じゃなくて、それでよかったんだと思うことだと思っております。

 あと、トラックストライキがございましたように、ピンチをどう力に変えていくかということかと思います。ピンチはいろいろ、またやっぱり想定しても起きると思いますので、それをチャンスに、あるいは力に変えていくぐらいの意志を持っていくことが必要かと思います。

 ブラジル人消費者ニーズへの徹底適合。二つ目でございますが、こちらの徹底適合は大きく二つの視点で整理いたしました。

 一つは、スペシャリティーの追求による競争力強化。ここで申し上げていますスペシャリティーというのは、他社、あるいは競合他社が真似できない、あるいは真似しにくいことをスペシャリティー、つまり別の言い方をすると、それによって付加価値がつく、さらに言えば適正な利益がとれる、なぜならばスペシャリティーによって価格競争に入らなくていいということでございます。スペシャリティーの追求というのが一つの視点でございます。

 例えば、即席めんで先ほど、シーフード、ブラジルの消費者の方に受けていると、日清さんですね、申しましたが、それもスペシャリティー。なかなか真似ができない味。だけど、こちらにありますように、もう一つは、生産R&Dだけではなくて、販売面。要は今まで他のラーメン会社が手をつけていないチャネルへの拡売。これもスペシャリティーなんですね。スペシャリティー×スペシャリティー。これはさらに強くなるスペシャリティーですということでございますので、こういった取組みを日清さんがされているということでございます。

 食肉。NHフーズさん。先ほど申し上げましたようにラーメンもありますけれども、実はブラジルのお肉屋さんに行くとブロックのお肉が多いんですけれども、スライスされたお肉が非常に少ないですよね。そこにやっぱり、利便性といったところに目をつけられたスペシャリティーが展開しているというのがNHフーズさん。

 食品添加剤。これ長瀬さんの例でございますが、トレハロースというスペシャリティー素材をいかにより活用していくかという視点でのチャレンジが始まっています。日本ではお餅や麺に使われる素材でございますが、ブラジルの消費者に合わせていく。ブラジルでスペシャリティーを作るという点では、チョコレートやケーキといったところへ使えないかというチャレンジが今始まっていると。これもスペシャリティーだと思います。

 しょうゆ、キッコーマンさん。先ほど申しました通り、新たなチャレンジが始まっているわけですけれども、これは新たな製品戦略、あるいは製品コンセプトづくり、プロダクトポートフォリオの転換によって、しょうゆ液体調味料でブランド認知を高めていこうということのチャレンジでございます。我々メーカーですので、最終的には究極のスペシャリティーはブランドかというふうに思います。そういったチャレンジが始まっているということでございます。

 ブラジル人消費者ニーズへの徹底適合ということで、二つ目の視点はですね、ブラジル人社会の変化への適切な対応ということでございます。一つ目は健康志向ですね。こちらは減塩、減糖、それ以外にもいろんなチャンスがこれから出てくるということでございます。

 二つ目、消費者行動の変化。先ほどの説明でもご報告しましたが、ハラルドさんの例で、新たな季節性に左右されない商品開発へのチャレンジと。

 三つ目。Facebook、SNSの普及。これに我々は、食品部会、あるいは我々企業がどう応えていくのか。単なるワンウェイコミュニケーションじゃなくて、2ウェイをどう活用していくのか。食品部会、全般的にはデジタル対応は多分遅れていると思いますけれども、デジタルの波はもう受けざるを得ない。何がどう変わるか分からないということは、しっかり備えて、さらに活用していけるようなレベルに我々なっておく必要があるだろうと。SNSの普及がなければ、今回のトラックストライキもあんなに大きなものにならなかったわけですよね。そういったことも踏まえてやっていこうということでございます。

 3点目ですね。リスク、あるいは消費者ニーズの1、2を踏まえた上で、ポジティブなチャレンジを、食品部会としては、それぞれのスタンスでやっていこうということでございます。

 事業環境の変化をチャンスと捉えたチャレンジということでございます。一つは既存ビジネスモデルの見直し。これは例で、先ほどヤクルトさんのですね、受発注、宅配の仕組みを変えていこうと。SNS、スマートフォン、インターネットを活用してですね、この伝統的で強かったやり方を変えていこうと。したがって、ヤクルトレディの動きも変革していこうという取組みにチャレンジされています。これも非常にポジティブなチャレンジということかと思います。

 あるいは、エリアの視点で言うと、ラテンアメリカにもっと出て行こうと。こちらの方は、長瀬さんやNHフーズさんが既に開始されています。他の企業も追っていきたいというところでございます。

 三つ目ですけれども、プロダクトポートフォリオ、さらには事業ポートフォリオの進化と革新ということでございます。従来の事業ポートフォリオに捉われない新たなビジネスへの挑戦ということ。まあビジネスモデルを作っていくというぐらいの志を持って、東京本社に輸出していくぐらいのですね、そういうモデルでチャレンジしていければというふうに思います。

 ポジティブなチャレンジということでございますが、まあチャレンジにつきものなのは何かというと、失敗でございます。私もたまに、部下に、チャレンジする、なんて言って、しますと言うわけですね。お前、でも失敗するかもしれないよ、どうするのと、すると、覚悟を決めていますと言うんですね。まあそれはいいからと、確かに必要条件かもしれないがと、毎回覚悟を決めて毎回失敗していたんじゃ、これは何にもならんと。ということで言うと、やっぱりポジティブなチャレンジをする上で、失敗した時にその失敗を失敗で終わらせないといいますか、失敗してそこから機会を作る、あるいはそれをどうつなげていくといった、シンプルな方法論を各社持って戦っていくべきだろうというふうに我々考えているということでございます。

 それでは最後でございますけれども、食品部会、Team Japanとしてがんばっていきたいということでございます。互いの強みを生かした協業や、連携の可能性を模索、これからしていきたいなというのが、食品部会の議論のひとつの結論でございました。例えば、長瀬さんがお持ちのスペシャリティー素材、トレハロースを、我々ブラジルのチームの中で、他のところでも使えないか、それで一緒に協業できないかといったようなこと。あるいは、この表にございますように、食品部会だけではなくて、他業種部会との可能性はないだろうかといったようなことも、これから模索していければというふうに思います。そして、事業だけではなくて、コーポレート部門、あるいは人事部門、労働関係の部門。カマラさんで労働部会がすごくよく頑張っていただいていると。それをいかに我々活用できるのかなといったような視点も含めた連携の模索をこれから是非やっていきたいと。そしてそれは、結果として(2)にございますように、事業を通じてブラジル社会、消費者への貢献をしていこうじゃないかという志を持っていきたいと。もちろん事業から出てきた利益の一部をCSRで活用していくということは継続でしょうけれども、ここのポイントは、事業を通じて、メーカーなので、商品なのか、サービスなのか、あるいはプラスアルファ、何かできるのか、ブラジルの社会・消費者に貢献していくということをベースに頑張っていきたいと。それが成長のサステイナビリティを支えるものになるだろうというのが食品部会の考え方でございます。

 最後に、食品部会としては、Team Japanとしてそういったベースを持ちながら、3つの戦いをやっていこうじゃないかということでございます。一つは、競合との戦い。徹底的に勝ち抜くこと。そこにはやっぱりスペシャリティーが必要であろうと。で、スペシャリティーは一つだけではなくて、掛け合わせるスペシャリティーができれば最高だろうと。そしてブランド価値を高めていくということ。

 二つ目は、時間との戦い。時間との戦いの一つはですね、やっぱりスピードですよね。今まで2年かかっていたもの、これをいかに1年でできるか、1年かかっていたものをいかに半年でできるか。いろんなリスクがある、そして環境変化は非常に激しい、あるいは速度を増している、その中でいかに我々はスピードアップできるのか。これが一つの勝負だし、もう一つの時間との戦いの視点では、タイミングですね。いくつかの食品部会の企業でタイミングをバシっと捉えて良い業績に結び付けている事例がすでに出てきておりますけれども、タイミングを逃さない。よく、チャンスの女神は前髪しかないと申しますけれども、通り過ぎたらもうつかめない、チャンスが来た時にがばっとつかまえるということをやっぱり意識して、やっていくということかと思います。

 最後3点目、3つの戦い、固定概念、既成概念との戦い。我々、個としても、組織としても、成功体験、失敗体験に基づいて、知らないうちに固定概念、既成概念ができているというのが現状だと思います。特にやっかいなのは成功体験ですよね。それをいかに破っていくかということが大切な戦い。なぜならば、固定概念、既成概念が我々のチャレンジをさせない一番の原因になるのではないかなというふうに思っています。

 こういったことで、Team Japanとして食品部会、明るくですね、がんばっていくという所存でございます。ご清聴ありがとうございました。以上です。

 

司会

 黒崎部会長、どうもありがとうございました。ただいまの発表につきまして質問のある方、ぜひ挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。はい、では松永会頭よろしくお願いします。

 

質問

 三菱商事の松永です。黒崎社長、どうもありがとうございました。日系の食品業界の方がですね、非常に努力をされているというのが良く分かりました。また、食品に限らずですね、色々示唆に富んだアドバイス、最後の部分など非常に参考になるかと思いました。ありがとうございます。今のプレゼンに、直接関係ないかもしれませんけれども、先週、今週とですね、日本の国会議員の先生がこちらに結構いらっしゃってまして、いくつか質問を受けて私自身回答ができなかったんですけど、まず一つは先週、宮腰総理大臣補佐官がいらっしゃって、泡盛をぜひ輸入したいということとですね、やっぱり芋焼酎、なんで輸入できないんだ、みたいな話があったんですね。私も黒崎さんと同じでウィスキー派なので、あまり芋焼酎とか関心は高くないんですけど、あれは若干、何かの成分が高すぎる、だから入れないというんですけど、そんなに健康にですね、本当に被害があるのかどうか、良く分からないし、本当のところはですね、ああいうところはやはりカシャッサなんかを守ろうとしているのか、その辺の、どうしてあんなにあそこだけ厳しいんですかと、いつ輸入再開できるんですかというのが一つ。もう一つがですね、まさに昨日なんですけども、平木経産省政務官がいらっしゃって、平木政務官から受けたご質問はですね、ここのブラジルのスーパー、商品棚を見てもですね、例えばアメリカだとかヨーロッパのメーカーさんのお菓子や食べ物はたくさんあるんだけど、日本のが少ないですよねと。あれはどうしてですかと、こういうご質問を受けたので、もしお分かりになればちょっとその辺をお話しいただければと思います。

 

黒崎部会長

 はい。まず芋焼酎、非常に大切な質問だなと、個人的にも。正直言って、よく知りません。昔は大丈夫だったんですよね、海童とか。

 

発言

 一定の基準が決められていて、他の焼酎は大丈夫なんですけど、芋焼酎はなんか引っかかってしまうということで、そもそもその基準が何の根拠があってできたかというのは次の宿題にしてください。

 

黒崎部会長

 二つ目の、日本のお菓子ですね。少ないですよねということですけれども、これもちょっと、本当は正直言って良く分からないんですけれども、ただ、例えば日本のチョコレートですね、私いつもスーツケースいっぱいお土産で持って帰って部下たちにあげるんですけど、ものすごくやっぱりおいしいと言うんですよね。本当はチャンスあると思うんですけれども、日本のメーカーさんの意欲の問題なのか、あるいは税制上どうなのかというのは、ちょっと確認してみないと分からないと思います。ちょっと残念ですよね。

 

司会

 他に質問ございますでしょうか。はい、よろしいでしょうか。ちょっと、日本食材が並んでいないというのは、私どもの努力不足というのもあるかもしれないので、頑張っていきたいと思います。それでは、食品部会の発表は以上とさせていただきます。黒崎部会長、どうもありがとうございました。

 引き続きまして、運輸サービス部会の発表に移りたいと思います。矢澤部会長より発表いただきます。よろしくお願いいたします。

 

運輸サービス部会

                   

                                                        矢澤吉史 部会長

 運輸サービス部会、NTTブラジル、ウィスキー派の矢澤でございます。よろしくお願いします。前回ですね、時間制限オーバーでたいへんご迷惑をおかけしましたので、なるべくスライドを減らしまして、時間制限内に収まるように進めたいと思います。よろしくお願いいたします。

 運輸サービス部会は6つの業界の集合体でございます。物流、航空貨物、海運、航空旅客、ホテル・旅行、で我々IT・通信という、実にall inclusiveな業界になっています。今回の発表資料も6つの各業界チームの方にですね、作って頂きまして、発表になります。よろしくお願いいたします。

 まずですね、物流でございます。昨年です、下半期から発生しています税関ストライキに加えまして、5月末にはトラック運転手のストライキがほぼブラジル全土にて発生したことが記憶に新しいと思います。主要幹線道路が封鎖され、国内、輸出入ですね、貨物に大きな遅延が発生して、ガソリンの供給も絶たれ、郊外ではバスの運転停止や、肉や卵、野菜がスーパーから消えるといった事態が発生して、生活基盤やビジネスにも大きな影響を及ぼしました。一方でですね、2018年の上半期のブラジルの貿易黒字は299億3300万ドルで、輸出額は対前年比で5.6%増、輸入額は対前年比で7.2%増となっています。

 貨物ですね、後から少しずつ回復してですね、新規のブラジルの相談や進出の引き合いも増えているということでございます。

 ブラジルの引越し荷受け、日本通運さんの実績では、昨年下半期同様、赴任者が帰任者の数を上回るという傾向が続いていまして、引越し荷物の件数は対前年比でプラス36.7%となっているようです。棒グラフですね、日本発船便の輸出件数を示しております。東アジア、南米向けは減少傾向。北米、中米は増加している傾向というふうに思います。

 下半期に関しましては、引き続きストライキ、税関ですね、のところに注視が必要で、先月一旦停止していました税関ストライキも今月から再開ということになっているようです。

 続いて航空貨物になります。トラックストライキの影響で緊急貨物が増加しまして、いわゆる特需というものが発生しまして、航空貨物は輸出・輸入共に貨物量が急激に増えたということでございます。特にですね、輸出に関しましては、対前年同期比で21.7%増。グアルーリョス空港では対応が追いつかず、現在も輸出貨物の荷受け制限を実施中といわれています。結果ですね、カンピーナスのビラコポス空港、輸出貨物が集中し、ターミナルへの搬入、最大で3日ぐらいかかっているという情報もございます。

 輸出貨物ですね、遅延のほかに、トラック料金の値上げ、そして航空貨物の運賃の大幅上昇も同時に発生しているといった状況でございます。このストライキによる輸出貨物増加は来月までは継続する見込みで、貨物のスペース確保のためには早めのブッキングが必要ということでございます。棒グラフはサンパウロの両空港の上半期の輸出量の大幅アップが見て取れるものだと思います。要因はですね、先ほど申しました通り、トラックストライキということが分かります。

 次は海運でございます。ブラジルに最も関係の深い3つの船、コンテナ船とドライバルク、ばら積み船、自動車に分けて見ていくんですけども、まず上半期ですが、コンテナ船は全世界的にですね、4~5%程度ですね、穏やかな増加があり、大型船のピークを迎えてスペースの供給量が必要以上に増え、運賃水準は概ね下っているという傾向でございます。

 ばら積み、ドライバルクですけども、世界的に回復基調でございまして、ブラジルも鉄鉱石や大豆等ですね、中国経済に支えられて好調ということでございます。自動車はですね、トラックドライバーのストライキなどネガティブな要因がございましたが、昨年から継続して輸出は好調ということでございます。

 下半期の展望でございますが、日系ですね、海運業界で最も大きなトピックスは、Ocean Network Express、ONEということでございますけれども、日本郵船、商船三井、川崎汽船のコンテナ部門が統合して誕生した新会社でございまして、ONEという総称でございます。統合当初ですね、不具合もございましたが、現在は状況も落ち着きつつあるということでございます。

 コンテナはですね、割合安定した世界情勢を反映しまして、海上の動きも増加する傾向で、ただ一方で、ロシア、イランへの経済制裁や、トランプ大統領の保護主義的な発言、言動ですね、行動も含めて、それへの報復。中南米にあっては、アルゼンチン経済が引き続き懸念条件ということでございます。

 ばら積みですね、ドライバルクにつきましては、米中貿易摩擦の影響が心配事項と。自動車は、ブラジルからの輸出の75%を占めるアルゼンチン経済の行方が焦点になっているようです。

 次はですね、航空旅客になります。上半期の国内線の有償旅客キロは対前年比でプラス4.2%、提供座席キロも前年比で4.2%増で、利用率80%を維持していると。堅調な伸びがあるということでございます。

 国際線は、ブラジル系ですね、航空会社の累計ですけども、有償旅客キロは対前年比でプラス15.8%、提供座席キロも前年比でプラス19.4%ということでございますけども、一方利用率はマイナス2.5ポイントで、この数字は、座席の規模の拡大でありましてですね、旅客数は大幅な増加となっているという状況でございます。

 下半期の展望につきましては、国内線は上半期同様に緩やかに航空需要が増える見込みでございますけども、一方で大統領選の影響により旅客の移動に鈍化の懸念もあるということでございます。

 国際線は下半期も旺盛な需要が続き、増便が期待されています。例を挙げますと、LATAM航空のサンパウロ=ボストン線が週4便追加され、エミレーツがですね、サンティアゴ=サンパウロ=ドバイ線を週5便追加と。エミレーツに関しましては、既存のサンパウロ=ドバイを含めると週12便ということになっているようです。

 特記事項としましては、前回のシンポジウムでも申し上げました、サンパウロ市内と空港を結ぶ鉄道、CPTM13号線ですね、今年3月、予定通り無事開通しています。6月から本格運行をしているということですけども、利用した方はいらっしゃいますでしょうか。いたら手を挙げてもらえますでしょうか。1人、ということで、そんなような状況でございます。

 またですね、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、ブラジルからの訪日数をいかに増やすかと。旅行商品の企画や、航空運賃低減が課題になっているということでございます。

 また、近年話題のエンブラエルですが、7月末現在での日本航空会社の保有機台数につきましては、日本航空グループが32機、フジドリームエアラインズが12機ということになっているようです。

 続きまして、旅行・ホテル業界になります。上半期の実績ですけれども、表をご覧ください。こちら、ブラジルビジネス旅行代理店協会という協会の発表した数字でございます。第1四半期はですね、国内線の航空券発券枚数はプラス1.5%と。売上は約10%と大きな伸びを示しておりますが、これはですね、国内線の運賃が平均的に値上がりしたということを示しているようです。一方ですね、国際線、発券枚数は対前年比プラス9.7%、売上も8.3%増と、伸びているかに見えますが、為替ですね、の影響で、これを差し引きますとドルベースでの売上はほぼ前年横ばいという状況なようです。

 次にですね、ホテル業界になります。対法人向けの営業成約数ということでございますけれども、宿泊数では20%減っています。一方で、売上は前年比で6.5%増と。この要因につきましては、ホテルの宿泊単価が平均的に上がったことが要因と言われています。また、旅行代理店を経由しましたホテルの販売は減少傾向が続いていると。対法人販売でもインターネット経由の販売、予約成約が増加している傾向だということでございます。

 下半期の展望ですが、景気回復の遅れ、ブラジル経済への不信感、ドル高レアル安継続、等ですね、本格的な弱みがありまして、旅行市場は上半期よりも悪化することが懸念されています。ネット経由での個人向けの販売ですね、航空券やホテルですけども、BtoCはさらに増え、各日系旅行代理店は積極的なデジタル化、法人営業の強化、独自の新しい旅行企画、ネットでは難しいようなきわめて細かなサービスとアフターケアというものを追及していく必要があるかと思います。

 またですね、日系移民の110周年記念イベントが各地で開催されていますが、日本からブラジルへのインバウンドですね、旅行、インバウンドで業務を後押しするような大きなイベントは今後あまりなく、治安の悪化や経済回復の鈍化もあり、残念ながら日系旅行業界のインバウンド業務を押し上げるような動きは見つからないということでございます。

 一方で、アウトバウンドでございますけれども、顕著に伸びる見込みがある分野がございますと。それは、日本へのですね、就労目的の渡航、移住という分野でございます。日本は不足している労働力を補う必要がございまして、海外からの労働力をですね、積極的に受け入れる事が経済発展には必要と言われていますけども、ブラジルからの就労目的の渡航も移住も今後まだ伸びていくものと見込まれています。一方で、日系四世へのビザ発給、受け入れ制度も先月スタートということでございますが、ちょっとネガティブなお話としまして、日本語検定試験4級以上、18歳以上30歳以下の年齢制限、家族の帯同ができないと、非常にビザ発給条件が厳しくて、これを使って日本に仕事に行く人がですね、どれだけ増えるかは非常に疑問だという声も上がっています。

 最後にですね、赤の字で書いています、粉のトピックスです。まあ怪しい粉もあるんですけども、コーヒーや赤ちゃんの粉ミルクのことを指しています。アメリカ行きの機内持ち込みは注意が必要ということでございまして、基本、350ミリリットル、12オンス以上の粉類の機内持ち込みはアメリカへは不可能になりましたということです。詳細は皆様がお使いの旅行代理店にお問い合わせください。

 最後に、IT通信になります。最初、モバイルから入ります。上半期の回顧ですが、携帯チップ契約数はですね、景気低迷の影響に加えて、キャリア間の接続料金の値下げで、複数チップを保有する必要がなくなり、引き続きですね、103万の減少となっています。4Gに関しましては、2G、3Gからの移行が順調に進んでいまして、上半期で約1343万増加と。ブラジルマーケット、市場の49%を占めるに至りました。マーケットシェアですけども、引き続きVIVOが、32%ですかね、トップでございます。

 下半期の展望ですけども、LPWA、あまりちょっとなじみがないと思うんですけども、Low Power Wide Areaという、消費電力を抑えて遠距離通信を可能にする新しい通信方式なんですけども、これが今年中に認可予定となっています。これがですね、認可されますと、何があるかと言いますと、通信コストの大幅な削減が実現します。特にですね、こういったもので、IoT分野ですね、より一層の成長が見込まれて、今後数年で、農業分野を中心に、機械やインフラのセンサーですね、監視用のIoTサービスの開発も急速に進んでいくものと思われます。また、4Gですね、LTEのより一層の普及、私はまだあまり、いまいち実感ができていませんけども、動画やビッグデータを活用したソリューションもさらに開発が進み、インターネットのトラフィックはさらに増えていくものと見込んでいます。

 次はブロードバンドになります。最新の情報では、ブラジルのインターネットユーザーは世界第6位でございます。日本よりも多くてですね、昨年より5%増えているという状況でございます。ユーザー数では南米1位ですけども、これは人口が多いだけということで、表のCの通りで、人口あたりの普及率は決して高いわけではありません。

 表のDですね。Dにつきましてはブロードバンドのマーケットシェアになります。NETですね、30%、VIVOが25%、Oiが20%ですが、これはどんどんマーケットのシェア下げていまして、これに対抗してSkyとかですね、あとTIMといった新しい業者が、特に郊外の方でシェアを奪って伸ばしているというのが大きな原因になります。

 下期の展望としましては、光ファイバーのカバレッジエリアの拡大や通信品質の改善が期待されます。こういった通信インフラの改善が進めば、クラウド型ですとか、色んなインターネットを経由したサービスもどんどん増えてですね、さらに利用料金も下がっていくというふうに見込まれています。

 IT業界を総括いたしますと、ブラジルはですね、今年3月、テメル大統領が「E-デジタル」という法令に署名しました。この法令はですね、ブラジルの国家デジタルトランスフォーメーション戦略の実施方針で、かなり多分ハイレベルな話なんですけれども、ITインフラの強化や、IoTの拡大方針も含まれているとなっています。このですね、ブラジルのE-デジタルですけれども、次回の9月のカマラの昼食会で、まさにこのブラジル国家デジタル戦略局長ご自身からご講演があるというふうに聞いております。

 このようにですね、デジタル化はクラウド系サービスのニーズも増えて、さらに情報セキュリティ、IT投資もすでに顕著に増えていますけども、一方でですね、こういった分野に精通したITエンジニアはなかなか確保できないというジレンマもございます。

 下期の展望ですが、グラフが示しています通り、クラウドビジネスの市場は今後3年でさらにぐんぐんと伸びる予想があります。BPOですね、Business Process Outsourcingという分野に関しましても同様でございまして、どんどん業務を外部へ移行するプロセスも加速しています。こういったBPOですとか、情報セキュリティですね、あとクラウド、外部の委託はますます増えていきますけども、同時にですね、外部の方の先の情報漏えいも非常に増えていますと。外部へ委託する場合には、非常に、信頼性をベースにですね、かなり慎重になる必要がございます。

 以上、6つの業界の現状と見通しを発表させていただきました。そしてですね、副題の、変化の時期への準備と戦略ですが、まずは変化の時期の変化とは何かを見てみたいと思います。

 ハーバードビジネスレポートでは、2000年以降、デジタル化による既存のビジネスの破壊。すでにですね、Fortune500の半分以上の会社が消滅しているとレポートしています。

 また、44%のビジネスリーダーは、彼らの既存ビジネスモデルが5年以内に消えると言っています。

 8割の従来型の伝統企業は、3年後には10%のシェアを失い、世界中の8割の会社が、今後生き残るにはデジタルトランスフォーメーションが必要と言っています。

 あと、ブラジルにはですね、本当に変化の時期が来るのかという声もありますけれども、皆様の言っていますレアル安ですね、の継続や、選挙後ですね、経済が仮に上向いても、内需指向が強まって輸出が伸びないんじゃないかとか、結局は中国経済に左右されると言った要素が多分にあるという意見がありました。そのためにですね、大統領が代わっても、中国がどうなっても、生き残り、成長していくためにはどんな準備がいるかという観点で、部会内の意見を集約させて頂きました。

 まずですね、イニチアチブ。新たなビジネスチャンスですね。盛んに皆さんも言われています、新規分野への積極的な投資。前回はBtoBtoXという言葉でご紹介しましたが、社会の問題解決や新しいバリューチェーン、そういったものに視点を置いたアプローチ。ブラジルでいえば、経済だけでなく、スポーツ、芸術、文化と様々な新規分野への投資ですね。日伯交流の活発化が必要だということですね。

 そしてあと、一方で変わってはいけないものもあるということで、エッセンスの尊重、維持というのも大事で、日本企業の本質的な価値ですね、あとバリューというものは決して変えてはいけないものだという声もありました。こういったエッセンスという意味では、日本人の心、エッセンスを尊重、維持しているブラジル日系社会とのですね、さらなる融和と協調発展は、我々日系進出企業がブラジルでこれから成長するためには必要と、大事なエッセンスという声もありました。

 最後はですね、我々経営自体のデジタルトランスフォーメーションということで、もはやですね、デジタル化は、IT担当に丸投げではなくて、経営者自体が考えるという時代に入っています。経営の効率化ですね、あと見直し、データ分析によってスピーディーな、客観的な経営判断が必要ということで、活用の幅をどんどん広げていくべきと思います。キーワードはデジタルトランスフォーメーションと。外界の変化に応じて、どんどん変化を返すべきと、強く感じます。

 以上でございますけども、こういった変化の時代でございますけども、昨日かな、ご案内させてもらいましたITセミナーもこういった情報収集にご活用ください。9月20日、木曜日の3時からですね。商工会議所の大会議室で予定しております。NTTグループからDocomoのIoTのビジネス責任者ですとか、昨年に続き竹内という者が、IT戦略=ビジネス戦略というテーマで講演させていただきます。あとですね、今年は特別ゲストを呼びまして、シリコンバレーですね、サンフランシスコに本社を置くパロアルトネットワークスからですね、情報セキュリティの専門家も呼んで、最新の脅威やソリューションというものをご紹介申し上げます。ぜひふるって応募をよろしくお願いします。

 最後にすいません、もう一点この場をお借りしまして、実は9月の末をもちましてNTTブラジルの勤務を終えまして、弊社グループがM&Aをしました会社の方に移ります。これをもちまして運輸部会長を、本流の物流ですね、NYK、日本郵船の吉田社長の方に交代します。私、細谷さんと交代してからまだ間もないんですけれども、短い間で非常にいろんな勉強をさせていただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。どうも、ありがとうございました。

 

司会

 矢澤部会長、どうもありがとうございました。ただいまの発表につきましてご質問のある方、挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいですか。それではですね、運輸サービス部会の発表は以上とさせていただきます。矢澤部会長、どうもありがとうございました。

 後半の部はかなり早いペースで、もう最後の発表となります。建設不動産部会の発表です。今川部会長より発表いただきます。よろしくお願いいたします。

 

建設不動産部会

                   

                                                       今川尚彦 部会長

 4月から建設不動産部会の部会長を務めています、ブラジル戸田建設の今川です。本日は建設不動産部会を代表し、部会内の各部会員の現状、建設不動産業界の現状、各社の取組みなどについて報告させて頂きます。よろしくお願いします。

 まず各社の2018年上期の業績を、アンケートの回答を基に振り返ります。グラフは2016年上期を100とした場合の2017年、2018年の受注高です。赤が2016年、緑が昨年、オレンジが今年です。4社のうち建設Aは、2016年比で昨年は2倍、今年は2.5倍と受注増となっています。まあただこれは、半期での受注推移であります。通期予測としては過去2年と同水準となる見込みで、近年向上しているとは言えないという状況です。建設Bは昨年落ち込みましたが、今年は一昨年のレベルに回復しています。不動産は好調で、過去2年間と比べて今年は約30%の増となっています。最後のインフラ建設は、公共事業の中断が影響し、今年は特に伸び悩んでいます。

 上期の全体的な出来事としましては、為替の悪化、それとトラック運転手のストライキが挙げられます。為替は年始に1ドル=3.2レアルだったのが、6月には3.7レアル、現在に至っては4レアルまで下がってきているという状況です。10月の大統領選の結果次第では、さらに悪化することも予測されております。

 5月に起きたトラック運転手のストライキは、約10日間にわたって全国で流通がストップ、全ての社会機能が麻痺寸前にまで陥った異例の出来事でした。当社でも、工事現場に資材が届かない、社員・スタッフが出社できないというような影響が出ておりました。

 部会内の上期の特徴としまして、産業全体では昨年よりやや上向きの景況感がありますが、建設は経済状況の影響を少し遅れて受けるため、いまだ案件の少なさ、小規模化が続いています。ただ、慎重姿勢の日系企業と比較して、非日系企業ですね、ブラジル、あと欧米企業は徐々に投資が戻ってきております。建設2社ともに非日系案件の比率が高まってきます。しかしながら、予算が絞られた設備投資ですので、受注競争は厳しく、競争力の向上と利益の確保が大きな課題となっています。

 駐在員向け住宅斡旋業の不動産は、ここ数年の駐在員と帯同家族数の減に歯止めがかかった感はありますが、これまで通りの業務形態では売上増は見込めず、付加価値サービスや現地向けのサービスを充実させなければなりません。

 インフラ建設は昨年から公共インフラ関連事業の多くが中断していることが大きく響き、業績が悪化しました。事業資金が滞り、事業主の支払い不履行が相次ぐなど、業界全体が苦境に立たされています。事業再開を働きかけるなどの交渉に注力していますが、同業他社の中には他工種工事に転向する企業も増えてきています。

 続いて建設不動産業界の現状についてお話します。ご覧のグラフは、全体のGDPと建設部門のGDPを比較したものです。右側の緑が全体、左側の紫が建設部門です。ブラジル経済は昨年、3年ぶりにマイナス成長から抜け出し、1%ではありますがプラスに転じました。一方で建設部門は回復が遅れ、2016年から3年にわたり、マイナス9%からマイナス5%台とマイナス成長が続いております。ただ今年は、0~1%程度が見込まれており、今年ついにですね、マイナスからの脱却が少し見え始めたというところです。大統領選の結果によるところが大きいですが、2019年、来年以降ですね、プラス成長が続く機運を感じることができます。

 次に失業率について見てみます。6月末の失業率は12.7%。2017年から高い失業率が維持されたままです。失業者数は依然として1320万人を数えています。ブラジル地理統計院の発表によれば、国内の正規雇用者数はピーク時の2014年から今年5月までに400万人の減少が発生しております。建設業の正規就業者数は、2014年の第2四半期と今年との比較では125万人の減。2014年の84%となっています。このように、建設部門の雇用状況は依然として厳しい状況です。

 次に不動産市場についてお話しします。ご覧のグラフはサンパウロとリオの住宅の売買および賃貸の取引希望価格を指標化したFipe Zapの2008年からの年間上昇率の推移です。青はサンパウロの売買、赤がリオデジャネイロの売買、緑はサンパウロの賃貸、紫はリオの賃貸の数値です。水色が総合市場物価指数のIGP-Mです。過去10年間を振り返ってみますと、2014年までは住宅価格上昇率がIGP-Mを上回っております。特に2010年、11年、12年は上昇率が顕著で、不動産バブルの様相を呈していました。ブラジルの経済が落ち込んだ2014年下期以降は、売買、賃貸ともに歯止めがかかり、2015年から2016年にかけ上昇率は、赤いラインの下ですね、マイナス側になっております。今年に入り、サンパウロはややプラス側に戻りつつあります。

 次にサンパウロ市内のマンション市場を見てみます。グラフは2009年から2018年までの分譲マンションの販売戸数と成約戸数です。左側が販売戸数、右側が成約戸数になっています。2014年までは新規販売が3万戸の水準で推移しています。2013年までは成約戸数も非常に高い水準が維持されています。ところが、2014年に成約戸数が激減、2015年、16年は販売・成約ともにそれまでの約3分の2まで減っております。昨年は販売が3万戸台に戻り、成約も2万3000戸に回復しております。今年は、5月までの実績をみますと、販売数は昨年よりも減っても、成約数は昨年とほぼ同水準となることが予想されています。不動産市場の回復が少し見えてきているということが読み取れます。

 以上、建設部門と不動産部門の概況、状況をお話ししましたが、次は、これからの変化にどう対応していくかについて報告いたします。

 建設、不動産、インフラ部門は、どの国においても景気の波に翻弄されやすい業界です。ご覧のグラフは1980年から約40年間のGDPの成長率の推移を、ブラジルと日本で比較したものです。日本は2010年に大きく低下していますけれども、それ以外はですね、ほぼ0から5%でプラス側で上下をしながら安定的な成長を40年間続けています。これに比べブラジルは、40年間で3度の大きな波があります。マイナス5%からプラス10%と、非常に大きく激しく変化していることが分かります。10月の大統領選挙によるところは大きいですけれども、先ほどまでの報告の通り、他業界に比べ少し遅れていますが、来年以降の景況感の回復が少し見えてきています。しかしながら、長い目で見ると、また新たな経済の浮き沈みの波が来ることは間違いないと思われます。特に浮き沈みが激しいブラジルにおいて、時代の波に翻弄されないような確固とした事業形態を持つことが肝要です。これまでの事業形態を見直し、新たな挑戦をしていかなければならないと強く思っております。

 非常に難しい課題ですが、避けて通れない道であり、新たな事業や技術の導入に挑戦している各社の取組みを今から報告させていただきます。

 まず一つ目は、インフラ建設に従事しているCGC社様の事例です。CGCは地盤改良という特殊土木技術を武器に、主に公共事業の土木工事を行っています。しかし近年、政治家の贈収賄事件等の影響で公共工事の多くは中断、停止をしております。このため、下期は大統領選等もあることから、ますます先の見えない公共事業から、民間事業の建設工事への割合を増やしていっております。左の写真は新築建物の地下5階の状況ですけれども、床の施工不良により水が湧き出ていたところを防水処理で補修を行った事例です。右側、既存建物の地下1階で地盤の改良工事を行ったものですが、他社が持っていない小型機械を狭隘部で使用しております。今までの公共事業に依存した営業活動から、民間事業へ活路を見出そうとしています。他社が行わない丁寧で確実な施工、アフターフォローで、新規顧客やリピーターの獲得を目指しています。

 次は、建設のHOSS建設の取組みです。HOSS建設は古いコンクリート建造物のひび割れ診断を行い、崩落等の事故を未然に予防する技術を導入しています。「HIVIDAS」という技術を使えば、従来の人による目視・打音調査の代わりに、高感度赤外線と熱画像で同時撮影。画像処理により、ひび割れや、浮き・はく離等を抽出、損傷展開図を作成できます。人の経験のみに頼るのではなく、遠隔地から画像で継続的に診断、適切な対応ができます。ブラジルは鉄骨造よりもコンクリート造が非常に多い構成になっています。老朽化の進んだ建築物も非常に多くあります。これから需要増加が予測されるリニューアル、メンテナンス事業に対し、他社が持たない新たな技術で差別化を図っていきます。

 最後は当社、ブラジル戸田建設の取組みです。当社は新規事業として、パラグアイへの進出、それと風力発電に取り組んでおります。まず一つ目のパラグアイですけれども、近年首都アスンシオンの建設ラッシュが著しく、建設部門の成長率が2016年は18%、昨年は8%の増加率でした。いくつかの日系企業を含め、ブラジル製造業の進出がここ数年注目されております。

 ブラジル製造業の進出が増えている大きな要因の一つは、コストの低さです。ご覧の通り、パラグアイと南米の他国を比較した場合、賃金、電力料金、法人所得税、付加価値税ともに格段の安さになっています。賃金についてはブラジルと比較して約3分の2。電力では約5分の1。法人税では3分の1。付加価値税も3分の1です。安定したインフレや為替、順調に成長するGDP、南米諸国の中では優良な国際格付けをもった要素が進出を後押ししております。

 パラグアイのもう一つの大きな利点は各種税制優遇措置です。税制優遇措置としては、投資企業に10年間の免税を保証する法律、単一課税1%のマキラ制度、フリーゾーンなどがあります。先週就任したベニテス新大統領は、公共インフラの改善、製造業のさらなる企業誘致を公約に掲げております。さらにビジネス環境が整うことが期待できます。また、ブラジルと比べ労働訴訟が少ないのもパラグアイの魅力です。以前パラグアイである日系企業のお客さんとお会いしてお話しを聞きました。2013年に進出、アスンシオンの首都近郊に従業員数約2000人規模の工場をもつ日系企業さんです。これまでの4年間、昨年までですね、4年間で、わずか2件の労働訴訟しか発生していないということです。それに比べて、まあ当社の話になりますけれども、ブラジルでは毎年10件以上の労働訴訟が発生、現在も80件程度労働訴訟を抱えているというのが現状です。

 右下のグラフは、ブラジルの新規労働訴訟件数を労働法改正前後で比較したものです。昨年11月の労働法改正により、今年1月から6月の新規訴訟件数は昨年の同月比で約4割程度減っております。しかし、新法施行直後は大幅に件数は減っておりますけれども、最近は減少幅が少なくなってきています。レベルがまた元に戻っているというのが現状です。各企業様とも、ブラジルで非常にご苦労されている訴訟対策、これには非常に膨大な時間と作業量、費用がかかります。我々一足先にパラグアイにおりますので、皆さんをパラグアイでお待ちしております。

 それではもう一つの当社の取組みです。もう一つの新規事業は風力発電です。建設事業者としてではなく、発電事業者としての参画を目指しております。ブラジルでは近年、再生可能エネルギーが飛躍的に発達しております。水力発電への依存度が高いブラジルでは、昨今の異常気象による渇水問題、環境保護、農業用水確保の問題から、水力以外の再生可能エネルギーへの転換が求められています。

 表の通り、ブラジルの風力発電の設備利用率は40%強と、世界的にみてもきわめて高い。また、発電コストを他国と比較しても低コストとなっています。日本の当社の本社では、浮体式洋上風力発電といいまして、海上に浮かぶ風車を建設し、2年前から商用運転が始まっております。このノウハウを海外展開していきます。今後さらに需要が見込まれ、安定的な収入を獲得できることを目的とし、ブラジルで初の当社の海外発電事業を目指しております。

 こうして各社とも、新たな事業、新たな技術の導入により企業価値を高め、差別化により、短期的なものでなく、時代の変化にも柔軟に対応できる事業形態を目指していっております。

 以上、建設不動産部会の発表とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

 

司会

 今川部会長、どうもありがとうございました。ただいまの発表につきまして、ご質問のある方、ぜひとも挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。前半部分が押していましたので、ちょっと時間ありますので、ぜひ前半部分も含めて。はい、お願いします。

 

発言

 ありがとうございました。三菱商事の松永です。最後の風力発電なんですけど、これは設備利用率というのは、風が吹いている時間というのは、一日のうち回っている時間ということですよね。

 

今川部会長

 そうです。実際発電している。

 

松永会頭

 それでコストは、これはドルで、これは陸上ベースということですよね。海上のこの、浮体のあれではなくて。

 

今川部会長

 陸上です。

 

松永会頭

 ブラジルでこういう浮体の洋上のやつを取り込もうみたいな、そんな動きもあるんですか。

 

今川部会長

 うちとして今考えているのは、陸上です。海上じゃなくて陸上です。ただ、事業としてのノウハウというのは一緒ですので、そのあたりは活用していこうというふうに思っております。

 

司会

 はい。他に質問ございますでしょうか。はい、山中公使、お願いいたします。

 

発言

 前半のやつでもよろしいですか。すいません、前半のところで一個質問があってですね、猪股社長にプレゼンしていただいた話のところで、54ページの対内直接投資のグラフの中で、2018年の上期、これ前半だけだったと思うんですけども、17年の通期を超えているということで、ある意味で増加率としてはかなり高い直接投資、日本からの対内直接投資の増加額なんじゃないかなと思うんですけど、これは何か具体的な理由というか、大きな投資案件があったのかどうか分かりますか。

 

猪股部会長

 申し訳ありません。これはブラジルの中央銀行の数字を拾ってきてプロットしている図ですので、詳細な内訳まではちょっと分かりかねるんですけども、金額的にはですね、17年が5億4000万ドル、で6億6000万ドルということで、そんなに投資額としては大きくないわけですね。例えばエネルギーであったり、鉱物資源であったりというところでの投資というのはこんな金額ではとても収まりませんので。だから、色々なその、例えば日本が投資している工場のですね、追加の増資とかですね、そういうものの積み上げなんだろうというふうには思っていますけども、大きな投資がこの18年の上半期であったというのは、私の中ではあまり認識がないですね。

 

司会

 はい。すいません、建設不動産部会の今川部会長の発表終わりましたので、最後、拍手でもってですね、ちょっと席に戻られてしまいましたけども。すいません、進行が。ありがとうございました。

 まだちょっと時間ありますので、前半も含めてですね、ご質問のある方、ぜひとも挙手をお願いできればと思います。はい、では松永会頭。

 

発言

 すいません、また松永です。電気電子部会の日比さんにちょっとご質問なんですけどね、最後のところで日本・メルコスールのEPA、これもぜひということで、力強いお言葉をいただいてありがたいなというふうに思っているんですけど、一方でマナウスの、税関特区というんですか、あそこで、EPAがですね、これ実際に発効すると、日本から持ってくる部品なんかが無税で入るので、そこのメリットはありますよねと。マナウスのあそこの経済特区を利用して、その税金のメリットを享受しながらものを作っていたのが、EPAができちゃうと色んなところから入ってきてですね、そうなるとデメリットになるので、あそこにいる業者さんの中には、やっぱりEPA反対だというような会社さんがいるのかなと、こういうことなんですね。

 

日比部会長

 ご質問ありがとうございます。回答はイエスアンドノーなんですけども、やはりEPA(以下、音声なし)税制上のメリットがうまく使えなくなるんじゃないかという危惧感は当然我々も持っています。ただし一方でメリットもあるので、これはどちらがいいのかというのは具体的な施策を見ないと分からないところもあるので、部会で話した時も、これは両方の、メリット、デメリットがあるよねということになっています。

 

司会

 ありがとうございました。他に質問ございますでしょうか。日通の細谷さん、帰られる前に何か質問ございますでしょうか。これだけは帰られる前に質問しておきたいということがもしあれば。特によろしいですか。すいません、ちょっと無理に振ってしまいましたけども。

 それでは、以上で前半5部会、後半5部会、計10部会の発表を全て終了いたしました。今回の副題のテーマは、「大統領選を直前に控えて~変化の時期への準備と戦略は」ということで、各部会からですね、色々な発表がなされました。特に多かったのがですね、まあブラジルは常にフラクチュエイト、ブラジル経済フラクチュエイトしていて、不透明感はつきものなので、一喜一憂しないと。長期的な信頼関係の構築とか、長期的な視点で環境変化に対応できるように体質を強化しなければいけないというような意見がございました。

 それから、そういった中でですね、日本の強みですとか、高機能、高付加価値に取り組む、スペシャリティ―の強化、といったような意見が出ておりました。そして、これまでの取り組みをですね、粛々とやると。地道な営業活動、コストダウン、新製品投入とかですね、そういった意見がですね、出されておりました。

 また、そういった中で、リスクへの備え、リスク分散というのもですね、皆さん、各部会で色々なコメントが出ていたかと思います。例えば為替リスクのミニマイズですね。それからキャッシュマネージメントの強化といったこと。レアル安対応ですとか、それからコストダウン。そうした中でパラグアイの活用というような話も出ていたかと思います。また、公共部門へのですね、顧客が多い場合ですね、顧客基盤の転換といったところもテーマとして出ておりましたし、また、現地調達の強化ですとか、輸出を強化していこうとか、さらにはリスクへの対応として最悪シナリオにも対応を準備しておくといった意見が出ていたかと思います。

 そうはいうものの、今後ですね、ブラジルが飛躍的に発展する可能性も出てきますので、将来に対する予測に対してしっかり研究をしていくといった意見も出されたかと思います。そうした中には、新規事業ですとか、ビジネスモデルの見直しですとか、投資M&Aといった意見や、それからブラジル人の消費ニーズを徹底的に適合させるために色々考えていくといったような意見も出ていたかと思います。また、日本ブームの活用ですとか、成功事例の研究といったことも挙がっていたかと思います。

 それから、あとはですね、Team Japan、連携というのもキーワードとして出ていたかと思います。Team Japanとして協業、連携していく。それから日系社会との連携、協調といったような意見もございました。

 いずれにしましても、変化の時期への準備と戦略で、黒崎部会長から3つの戦いということでですね、競合、スピード、タイミング、時間、既成概念との戦い、チャレンジをしていくといったことが大事というような指摘があったかと思います。また、デジタル化へのビジネス変革への準備ということで、ジャック・ウェルチのですね、組織の内部変化が外部へかについていけなくなった時、終わりがすぐそこに来ているといったような話があったかと思います。

 それではですね、ここで、本日特別参加いただきました、我々商工会議所の名誉顧問であります在サンパウロ日本国総領事館の野口総領事、そしてその後、ブラジル日本大使館の山中公使にですね、本日の部会の発表について講評、コメントをいただきたいと思います。それではまず、野口総領事、よろしくお願いいたします。

 

講評

                   

                                        野口泰 在サンパウロ日本国総領事

 どうも、高い所から失礼します。野口でございます。長時間にわたりまして、皆様本当にご苦労さまでございました。本日、様々な部会のですね、発表、お聞きをいたしまして、共通していたといいますか、印象に残っておりますのは、中々いまブラジル、難しい時期といいますか、忍耐の時期というか、我慢の時期というか、まあ様子見の時期というふうに捉えておられる方が多かったかなという印象を持っております。もちろん様子見の中でもですね、今この時期にですね、色々打てる手を打っていこうというふうなお話が多々あったかとは思っております。

 考えてみますと、今、中南米でですね、中南米の大きな3つのエコノミー、これがブラジルとメキシコとかアルゼンチンだと思いますけども。ブラジルはやはり大統領選挙が目前に控えておりまして、中々、大統領選挙後のブラジルが見通せないといいますか、不透明な状況にあるということもありますし。メキシコは6月に新しい大統領が選出をされてですね、ロペスオブラドールという左派系の大統領が12月に就任するということで、この経済政策がどうなるのかということについても、まあ不透明感があるとは思いますし、さらにメキシコは、NAFTA見直しという非常に難しい、何と言いますか、交渉といいますか、局面に立たされているということで、メキシコも中々不透明な状況にもあると。さらにアルゼンチンはですね、今日も色々と議論になっておりましたように、国際金融市場で色々、攻撃をされているというか、非常に標的になっているような、それによって、通貨安等のですね、状況にあるということで、この中南米の3つの大きなエコノミーがですね、いずれも困難な時期に直面しているのかなというふうな印象をもったところであります。

 それから、松永会頭の方から、ここ最近日本の国会議員の方が来られているということで、先週は宮腰光寛内閣総理大臣補佐官と。宮腰補佐官はですね、総理官邸におられて、日本の農水産品のですね、海外への展開に力を入れておられる方でありますけれども、宮腰補佐官は滞在中、カマラの昼食会に出席をされ、さらにFiespともですね、意見交換をされ、そして日系団体、特に県人会連合会、山田会長なんかともお話しをされてですね、そこで非常に、日メルコスールEPAを強く望まれているというメッセージは受け取られたところであります。11月30、12月1日にG20のサミットがブエノスアイレスで開かれる際にですね、安倍総理が南米に来られると、アルゼンチンに来られると、メルコスールの一角の国に来られる際にもですね、何かできないかというふうな問題意識を強くお持ちいただいたところであろうかと思います。特に、日本が農水産品を輸出したい、より関税を下げる、非関税障壁をもっと下げていくためにも、まあEPAというのが必要性が出てくるかと思いますので、そういった認識をもって帰られたところでありますので、ご報告をいたします。

 さらに、経済産業省の政務官をされておられます平木政務官もですね、昨日、何名かの商工会議所のメンバーの方ともお話しをされ、日メルコスールEPAについての問題意識をさらに高めたところでありますし、来月には、まだ確定はしておりませんけれども、外務省ですとか、農林水産省の政治レベルの方ももしかしたらサンパウロにお見えになるかもしれませんので、そうした政治レベルの方にですね、引き続き日メルコスールEPAの必要性というのを持っていただきたいというふうに思っているところであります。

 もう1点、今日の議論とは直接関係ありませんけども、宮腰内閣総理大臣補佐官が今週の火曜日にですね、ジャパンハウスで、泡盛と和牛の夕べと、鹿児島牛を含む和牛とですね、それから泡盛を中心とする日本のお酒をプロモーションするイベントを主催をしていただいたところであります。その際にですね、発表されましたのが、これまでブラジルが福島県産の農水産品の規制、これをしていたのをですね、解除するという決定をですね、火曜日に発表したということでございます。これによってですね、中南米地域ではブラジルが最後の規制をもっていた国でありましたので、その規制の障壁が取られてですね、地域全体として福島の農水産品の規制がなくなった地域と、これはアジア、ヨーロッパ、アフリカでもまだ全部なくなった地域はありませんので、中南米地域が初めての地域となったということで、今後の福島県産の農水産品の海外展開、特に福島の復興にも資するですね、そうした取り組みを我々としても支援をしていきたいというふうに思っています。

 最後に、矢澤部会長の方から日系四世のビザに対するコメントがございまして、日系四世のビザにつきましては、三世までとは違ってですね、ご指摘の通りいくつかの条件、まあ日本語の能力がN4という、それなりに日本語がしゃべれる、理解できる要件ですとか、あるいは年齢制限ですとか、あるいは家族を連れていけないですとか、いくつかの条件が付されています。こうした条件が付されている背景としましてはですね、やはり90年代以降、出稼ぎブームの中で、多くの日系ブラジル人が日本で働かれておりまして、今も20万人弱の日系ブラジル人がおられましてですね、日本の製造業、この人で不足といわれる製造業の中でですね、貴重な貢献をされているというふうに承知をしております。この90年代以降の多くの日系ブラジル人が直面された問題、特にご子弟の教育の問題、言葉ができないので学校になじめない、通学が困難になってくる、中々そういった学力、学歴がつかないので非常に困難な生活を強いられる、というふうな経験をふまえてですね、日系四世の方にはですね、ぜひ日本を知っていただいて、将来日本とブラジルをつなぐ懸け橋になっていただきたいという思いはありつつもですね、やはりこれまでの経験を踏まえて、同じような、なんと言いますか、困難を抱えられないように、特定の条件をつけさせていただいているというところでありまして、いずれにしましても、7月の1日に制度が始まりまして、今後の動向も見据えてですね、何か必要がある場合には何らかの改善策等を採ることもあり得るかとは思っているところではあります。

 簡単ではございますけども、私の最後の言葉といたします。どうもありがとうございました。

 

司会

 野口総領事、どうもありがとうございました。続きまして、山中公使よりコメントをいただきたいと思います。山中公使よろしくお願いいたします。

 

コメント

                   

                                        山中修 在ブラジル日本国大使館公使

 在ブラジル大使館経済班公使の山中でございます。高いところから失礼させていただきます。本日はこのシンポジウムにお招きいただきまして、ありがとうございました。私、昨年8月にブラジルに着任して、その直後に実はこのシンポジウムに一度ご招待をいただいていた経緯があるんですけども、出席できなかった経緯がありまして、1年経ってようやくこのシンポジウムに参加させていただきまして、非常に、個人的にはちょっと感慨深いものがあります。私の前に野口総領事から重要な点を結構網羅していただきましたので、私からはちょっと簡単なコメント等させていただきたいと思います。

 まず、ブラジリアからサンパウロに来て毎回感じることでございますけども、やはり経済活動のダイナミズムというのを実感できるというのが非常に大きな違いだと感じています。ブラジリアからブラジル経済を見ておりますと、どうしても統計の数字とか、連邦政府の政策を通じた経済活動という形で見ることになりまして、実際にこう、日々経済活動に携わられている皆様の、日頃の研究・検討の成果というのをこういう形でうかがえたのは非常に参考になりました。

 もちろん、商工会議所の方々から普段お話を聞く機会多いんですけども、会員の皆様方の共通の関心事項になってしまうということが多くて、個別の各分野でのこういった草の根的な活動の実態、関心事項について掘り下げた形で話をうかがう機会は少ないので、今回非常に学ぶところが多かったと思います。

 本日のシンポジウムで出てきたキーワードを非常に単純に言えば、皆さん不透明感に非常にさいなまれているということで、特にこの大統領選挙の話ですけども、実はこの大統領選挙、当然大使館としても集中してフォローしているところですけども、まさにこの半年、全く先が読めません、不透明ですというふうに言い続けていてですね、気がついてみると投票まで50日を切っていると。こういう状況でこの不透明感というのは、本当に、中々ブラジル史上でもないんじゃないかというふうに思うところでございます。さりながら、大使館としても引き続き情報収集、分析に努めていきたいと思っています。

 そうした中で、それの対応策として、ブラジルの不透明感というのは今に始まったことではなくて、これまでもずっとそうだったんだということで、そこはそういうものだと割り切って対応していくというのが一つの知恵かなというふうに思って聞かせていただきました。さりながらですね、そういうふうに、変わらぬ一面として、ブラジル規制当局の対応の時間があまりにもかかるというところ、ここは誰が大統領になっても変わらぬ面はもちろんあるんだとは思いますけども、先ほど福島県産農産品の輸入解禁の話が出ました。振り返ってみると、まあ私もその一端で、ANVISAと色々やり取りをさせていただきましたけども、皆さんの中には結構時間かかったなと思われる方も多いと思います。それでも我々一応、大使はじめ、ANVISAにつむじを曲げてもらわないように、手を変え品を変え、色々工夫してアプローチして、今回ここに辿り着いたという部分も、私から言えばそういう部分もあります。

 ということで、ブラジル、変わらぬ面はあるんですけども、今後、皆さん日々鋭意工夫されて、知恵を絞られている中で、その足元にも及びませんけども、規制当局に対して色んな角度から、引き続き無い知恵を絞って、いろいろ皆さんのお役に立てるような手助けを大使館としてもしていきたいなという風に考えています。

 また、多くの方が触れられた日・メルコスールEPAの話についても一言申し上げさせていただきたいと思います。まずは、東京にはるばる赴かれて、日伯経済合同委員会の場で、日・メルコスールタスクフォースが主導してこられたメルコスール進出企業の方々の意識調査結果を、東京の記録的な酷暑に劣らぬ熱弁で語られた松永会頭に敬意を表させていただきたいと思います。

 ご承知の通り、日本政府の方針は、まだ検討中ということでありますが、経団連、CNIの共同報告である日本メルコスール経済連携協定に向けたロードマップが日本政府に正式に提言として提出されると承知しております。これによって検討がより具体的に進むことを期待しております。我々大使館といたしましても、そういった検討に資するよう、メルコスールとEU、そして韓国、カナダ等とのFTA交渉について、皆様のご関心も念頭に置いて引き続きフォローしていきたいと思っています。また、この皆様の熱意をしっかりと東京に伝えていきたいと考えております。

 以上、簡単ではございますが、私のコメントとさせていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

 

司会

 山中公使、どうもありがとうございました。プログラムではこの後、在ブラジル日本大使館に着任されました真鍋公使よりですね、着任のご挨拶ということでお願いできればと思います。よろしくお願いします。

 

着任のご挨拶

                  

                                    真鍋尚志 在ブラジル日本国大使館公使

 先ほどご紹介いただきました、在ブラジル日本国大使館に経済担当公使として参りました真鍋と申します。よろしくお願いいたします。そしてまた、今日はこのシンポジウムにご招待いただきまして、ありがとうございました。

 7月31日に着任して、まだ1カ月も経っていないということで、ちょっと私がこの場でブラジル経済について何か申し上げるのはまだ時期尚早だと思いますので、今回はご挨拶ということで簡単に自己紹介させていただきたいと思います。

 私、外務省に研修語学というのがありまして、私、野口総領事と同じくですね、スペイン語研修ということです。それで今までは、古い順に言うとメキシコ、スペイン、ペルーで勤務して参りました。そして今回は、初めてのポルトガル語圏のブラジル、しかも中南米随一の大国であり、BRICSの一角でもあるブラジルでの勤務ということで、非常に楽しみにして参ったところでございます。

 私が外務省の本省の東京にいる時にはですね、主に経済局、それから中南米局で勤務をして参りました。経済局ではですね、特に一番最後経済局で経験したポストで、EPA、今回も日メルコスールEPAの話が大分出ておりましたけれども、EPA交渉を担当しておりました。具体的には、RCEP、日中韓FTA、それから日オーストラリアEPAを担当しておりました。RCEPと日中韓FTAはまだ交渉が立ち上がって間もない頃の交渉会合を何度か経験させていただきましたし、それから日オーストラリアEPAについては逆に、交渉の最終盤ですね、交渉をまとめて署名して、国会で承認されるというところまで担当をさせていただきました。日メルコスールEPAについては、まだ検討中ということでございますけれども、この日メルコスールEPAの可能性ですとか、必要性につきまして、また皆様とも色々と意見交換させていただければというふうに思っております。

 私としてはですね、着任してこれからですね、日本とブラジルの経済関係強化のために精一杯取り組んで参りたいと思いますし、また、先ほどTeam Japanという話もございましたけれども、まさにTeam Japanとしてですね、皆様からもご意見、ご助言、あるいは叱咤激励、陳情などいただきながらですね、ぜひ一緒に取り組んで参りたいと思いますので、これからよろしくお願いします。今日はどうもありがとうございました。

 

司会

 真鍋公使、どうもありがとうございました。以上で本日の業種別部会長シンポジウムを終了するということになりますけれども、終了するにあたって、閉会の辞をですね、木下総務委員長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

閉会の辞

                      

                                                         木下誠 総務委員長

 はい。まずは、5時間超にわたるですね、長いシンポジウムにご参加いただいて、活発にご議論いただきましてありがとうございました。ご講演いただいた川辺副学長、ご講評いただきました野口総領事、山中公使、たいへんありがとうございました。またご挨拶いただきました真鍋公使にも御礼を申し上げます。

 本日は、大統領選を直前に控えて~変化の時期への準備と戦略は、というテーマで各部会から発表いただきましたけれども、こうした不透明な時期ではありますが、ブラジルのポテンシャルの高さというのはですね、ブラジルに働く我々には非常に実感できるものではないかというふうに思っております。ぜひ、カマラの皆様で結束してですね、さらにブラジルの魅力をブラジルの国外にもですね、我々の本社の人間にもアピールしていきたいというふうに思いますので、ご協力をお願いできればと思います。

 いくつかの部会から頂戴しましたご要望、アイデアに関しましては、松永会頭の下、政策対話委員会を通じて、引き続き検討・対応させていただければと思います。本日はたいへんありがとうございました。

 なお、この後ですね、懇親会をご用意させていただいております。会場はちょっと少し分かりにくいらしいんですが、この扉を出て左に曲がって頂いて、ガラスの壁を突き当たってさらにもう1回左ということらしいので、ちょっと非常に難しいんですけども、皆様ぜひ探り当ててですね、ぜひふるってご参加いただきますようお願い申し上げます。

 本当に本日はどうもありがとうございました。

 

 

2018年上期の業種別部会長シンポジウム

2018年上期業種別部会長シンポジュームプログラム(テープおこし記事掲載)

テーマ:「2017年の回顧と2018年の展望」

副題: 『いま求められる新たな視点は』

日時:   2018年3月1日(木曜日) 

13時~18時 シンポジューム(途中コーヒーブレイクが入ります)

18時~19時 懇親会(カクテルパーティー)

会 場: ホテル インターコンチネンタル
(Hotel Intercontinental São Paulo , Alameda Santos, 1123 – Tel.: (11) 3179-2600 )                                                                                                         

Pdf2018年上期の業種別部会長シンポジウムプログラム

各部会発表資料

Pdf金融部会

Pdf貿易部会

Pdf機械金属部会

Pdf自動車部会

Pdfコンサルタント部会

Pdf電気電子部会

Pdf食品部会

Pdf運輸サービス部会

Pdf化学品部会

Pdf建設不動産部会

Pdf繊維部会

Pdf全プレゼンテーション

2018年下期業種別部会長シンポジウム

「2017年の回顧と2018年の展望」、副題: 『いま求められる新たな視点は』

(3月1日、インターコンチネンタルホテル)

 

前半の司会

小池淳介 総務委員長

                    

 まだ入場途上のお客様もいらっしゃるようですけども、お時間になりましたので、これより2018年上期業種別部会長シンポジウムを開催させて頂きます。私は前半の司会を担当させて頂きます、総務委員長の小池でございます。よろしくお願いいたします。なお後半は企画戦略委員長の大久保さんに司会をバトンタッチさせて頂く予定です。それでは、シンポジウム開会にあたりまして、会頭の松永さんよりご挨拶を頂戴したいと思います。よろしくお願いします。

 

ブラジル日本商工会議所

松永愛一郎 会頭

                    

 皆さんこんにちは。会頭の松永です。本日の2018年上期シンポジウムに、皆さんお忙しい中多数お越しいただきまして、ありがとうございます。今日はですね、後ほど、サンパウロ総領事館より野口総領事にもお越しいただくことになっております。シンポジウムの最後に、総領事の方からはご講評とコメントをいただくことになっております。

 さて、商工会議所のこのシンポジウムなんですけども、毎回ご説明させて頂いています通り、商工会議所の活動の中でも重要な活動のひとつというふうに位置づけております。業種別に11の部会がございまして、それぞれの部会長がそれぞれの視点でもって、経済分析、今後の動向等を発表していただくということになっております。今日のシンポジウムにあわせて、関係者、相当な時間をかけてですね、プレゼン資料も含めて準備をしてきています。少しでも皆様のお役に立てばというふうに思っています。

 また、このシンポジウムですけども、会員の皆様以外の企業の皆様にも参加いただけるという形にしております。プレゼン資料につきましても、商工会議所のホームページの方でアップさせていただきますので、そちらをご覧頂くということも可能でございます。これも、日本企業がブラジルにおけるプレゼンスを少しでも向上させるということのお役にでも立てればと、その一助になればということで、そういう対応をさせていただいております。

 さて、ブラジルの経済ですけども、長年のリセッションをようやく昨年抜け出し、まあ停滞から成長に転じているというような感触を持っています。2018年度におきましては、マクロの数字もまあだんだん良くなってきていると、こういう中で今日のシンポジウム、部会長の皆さんがどういった発表をするのか、私自身も非常に興味を持っております。

 加えてですね、ブラジルで今年最大の皆さんの関心事項といいますと、やはり10月の大統領選挙。この選挙の結果如何、経済に与える影響も非常に大きいわけですが、今の構造改革、経済路線、これを引継ぐような新たな指導者が出てくればというふうに願っておる次第です。

 また。ブラジル以外の中南米に目を転じましても、アルゼンチンのマクリ政権、着実に経済改革を推進しておると。昨年末、チリでもピニェラ大統領が再選されまして、経済に大きく舵を切るというふうに思われます。こういったその流れの中でですね、日本・メルコスールのEPAといった議論も今年は本格化するというふうに思っております。我々商工会議所としましても、オールジャパンという旗の下、日本・メルコスールEPAの締結に向けたお手伝いを全力でさせていただきたいというふうに思っています。

 今回の副題、「いま求められる新たな視点は」ということになっています。今まで申し上げたような状況の、本当にプラスの変化、この中で各部会長さんがそれぞれの分析を皆さんに発表してくださるというふうに思っています。

 最後になりますけども、今日のシンポジウムにあわせて色々と長時間、本当に時間をかけてご準備をしていただいた関係者の皆様に厚く御礼を申し上げ、私からの開会の挨拶に代えさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

 

司会

 松永会頭、たいへんありがとうございました。それでは早速各部会の発表に移りたいと思います。行き届かぬ点も多々あろうかと思いますけれども、タイムキープも含めまして皆様のご協力をいただければと思います。先ほど会頭からお話しありましたけれども、今回の副題は「いま求められる新たな視点は」とさせていただいております。

 半年前の前回は「回復途上のブラジル経済-いま打つべき戦略は」ということで発表を各部会より頂戴しまして、皆様のお話の中では、新商品などの付加価値提供による差別化、あるいは優良人材の確保、周辺国への輸出強化、買収戦略、このような事業基盤の強化でビジネス拡大を目指すことが重要というお話しを頂いたと記憶しております。

 そして今年ですけれども、経済回復が徐々に現実となってきております中で、ブラジル政府による色々な構造改革、あるいは今年の10月の大統領選、そして日本・メルコスルEPAの動きといった重要な課題やイベントが控えております。このような中で、今回の副題に「新たな視点」という言葉を使わせて頂きました背景は、皆様の経営環境についてはまだ不透明で厳しいというというところも多々あろうかと思いますけれども、周囲を見渡せば中国系や欧米系が積極投資をしているということで、経済がプラス成長する見込みである今年の中でですね、我々日系企業もいつまでも外部環境を嘆いているわけにもいかないということで、前向きにですね、ここから未来に向けて新たな発想、新たな視点を是非語り合えればという願いを込めさせていただいております。

 前置きが長くなりましたけれども、ここで各部会長様からの発表をいただきたいと思います。それではまず初めに、金融部会の安田部会長よりお願いいたします。

 

金融部会

安田篤 部会長

                    

 皆さん、こんにちは。長丁場になりますので大変疲れると思うんですけども、冒頭金融部会ということで、金融部会からの話はですね、どちらかというとある意味ウォーミングアップというか、頭の体操というか、去年から今年に起きたことの整理ということでやりたいと思いますので、その後各部会で、業界ごとの深く突っ込んだ話があると思いますので、その入口のところを務めさせていただきたいと、そういうふうに思っています。

 今回、副題が「新たな視点」ということで、我々もなるだけポジティブな視点、あるいは切り口、これが見出せるような、こういう数字を見つけてですね、折りしも今時期としては2018年度の業務計画等々を作る真っ最中ということなので、何とかそういうことで会員企業様のお役に立てればと思っております。

 お時間だいたい30分弱程度ということなので、よろしくお付き合いの程お願いします。

 そう致しましたら、スライドに入る前にですね、2017年全体の振り返りということで、国際社会の方では、トランプ大統領の就任ということと、アメリカがいきなりパリ協定の離脱をしたと。あとは米国における大型減税の成立等の、こういった動きがあったほか、イギリスではEUの離脱の正式通知、それからマクロン・フランス大統領の就任、朴大統領の罷免等ですね、国際社会の方でも去年は引き続き政治の不透明な環境が際立ったと言えるかと思います。

 一方で世界経済の方はですね、各国の中央銀行の金融緩和策、これが背景となって、約10年前の2008年の金融危機、その後の欧州債務危機、この辺をようやく脱してですね、循環的な成長軌道に転換した年というふうに言えるかと思います。

 転じてブラジルの方はですね、同じく政治面ではテメル大統領の下、ゆっくりとした構造改革、汚職撲滅に関する動きということと、経済の方では、世界経済に伴ってですね、資源需要拡大等を背景にして、まあブラジルの経済も少しずつ良くなってきていると。まあ回復に転じた年だというふうに考えられると思います。

 それでは、最初のスライドの方なんですけども、2017年のブラジルの主なトピックスということで、3つの箱がございます。一つ目の箱は、汚職捜査の進展ということで、ペトロブラスのからみのラヴァ・ジャット作戦。これは去年末で第47ステージまで進展してまいりました。昨年5月にはテメル大統領の収賄容疑が浮かび上がってまいりましたが、10月に議会は訴追の要求を否認したということで、そこは一段落ついたと。一方で、ルーラ元大統領への2審の有罪判決というのが今年の1月に下りたということで、汚職捜査はそれなりに進展していると。

 2番目の箱の、テメル大統領の改革についてはですね、そこにいくつか挙げてある通りで、公営企業のインフラの民営化であるとか、こういった話が発表されたということで、そこはひとつの進展。それから、長い間中々動かなかった労働法の改正、これがようやく動き、昨年の11月に施行されたというのは大きな一歩だったと思います。最後に、年金改革の方は採択をどんどん延期したんですが、残念ながら先月、2月中の採択は見送ってですね、まあ実態的には年末あるいは来年回し、新政権への課題になるのかというふうに考えられております。

 それから3番目の箱、これはですね、外部の格付け機関がブラジルをどのように見ているかというところなんですが、これはムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズともにかなり厳しい見方をしておりまして、ムーディーズは昨年5月に格付けをBa2に引き下げ、S&Pは格付けをBB-にしております。それから、そこには書いていませんけども、今年の2月にフィッチも同様にBB-まで引き下げて、S&P、ムーディーズについては投資適格から3ノッチ下ということになっております。

 次のスライドに行きまして、マクロの動きですね。2012年以降の主要マクロ指数の動きを表にしてございます。こちらの方はですね、まずは主な指標についてご説明させていただきますと、まず1番最初の行ですね。GDPの成長率ということで、こちらは2017年、世界経済の改善や国内の各種景気刺激策等を背景にして、ようやく2015年からの2年連続のマイナスを抜け出して、2017年、まあプラス1%ぐらいの見込みになっております。

それから、2つ下にいって、貿易収支、こちらの方はですね、2014年に初めての赤字になりましたけども、国内経済の低迷による内需の停滞と、それに伴う低調な輸入を主要因としまして、2015年、2016年、2017年は3年連続で黒字を確保しているということでございます。2018年についても、コモディティ価格は好調、引き続き黒字を確保できる見込みであります。ただ一方で、内需の回復に伴いまして輸入も増えるということが予想されるので、黒字の幅は若干少なくなるのではないかというふうに見込んでおります。

それから、3つほど下にいって、株価の動きですね。これはいわゆるBovespa、サンパウロ株式指数の動きですけども、こちらは景気低迷、政治的な混乱を要因にですね、2012年から15年まで一貫して前年末終値割れを記録しておりまして、最低値で2016年1月、終値で37000ポイント程度まで落ちました。その後、まあ各国の金融緩和策等の影響でですね、世界中に資金余剰の状況が生まれて、海外投資家のリスクテイクの意欲が改善してきたということと、テメル政権の構造改革が着実に進んでいる中でですね、ブラジル国内の経済基盤も改善しているということを背景にですね、Bovespaも回復しております。2018年に入りますと、相場が非常に強気に展開をしまして、85000台の近辺で推移しているという状況でございます。

それからもうひとつ下にいきまして、政策金利とインフレ率の動きなんですけれども、こちらの方は、2017年、国内需要が非常に弱いということで、インフレ率はインフレターゲットの下限に近い水準に着地しております。また、インフレ圧力が低い環境の中でですね、金融緩和を推進して、歴史的に最も低いSelic金利、7%まで政策金利を下げております。足元、今年6.75まで引き下げておりますけども、今後の経済情勢によってはさらなる引き下げも考えられるというふうに見込んでいます。

そういたしましたら次のスライド、5ページ目ですね。これはGDPの成長率について述べたものでございます。こちらの下の方の年ベースで、ちょっと長いスパンで見ていただくと分かりやすいんですけども、過去、4年刻みでですね、2003年から2006年までが第一次ルーラ政権、2007年から2010年、これが第二次のルーラ政権ということで、最初の8年間はルーラ政権の動きを示しております。この間はきわめて成長が著しい時期だと。唯一2009年、マイナス0.1となっていますけども、これはまあ前年のリーマンショックの影響ということで、この影響も2010年にかき消されているということでございます。で、2011年からジルマ政権の第1次、これが最初の2011から2014年の4年間、で2015年以降がジルマの2期+テメル政権ということですけども、ここで2014年ぐらいから若干かげりが見えて、2015、16というのがマイナスが続いて、ようやく2017年にプラス成長。2018年についても2.8%ぐらいの成長が見込まれていると。こういう推移でございます。次のスライドをお願いします。

次はプライマリー収支ですね。プライマリー、こちらの方いわゆる歳入マイナス歳出で、金利部分の入り繰りはなしで、純粋な歳入マイナス歳出の数字を対GDP比にしたパーセントがこちらです。こちらの方もきわめて対照的なグラフになっておりまして、2013年まではですね、プライマリー黒字を維持しておりましたけども、2014年以降の景気鈍化、これは歳入の方、入ってくる方が非常に少なくなってしまったということで、14年以降赤字に転じて、引き続き赤字と。まあ、テメル政権の中で、色々な歳出抑制の試みをやっておりますけども、まだ道半ばという印象でございます。

 では次のページに行っていただいて、これはCDSと為替レートの対比表なんですけども、CDSというのは色々なところでよく出てくる指標、クレジット・デフォルト・スワップといいまして、例えばブラジルの国債のデフォルトリスク、それをヘッジするためのコストがどのくらいなのかと、こういうものを示した指数でございます。これは単位はベーシス・ポイント。ですからその表の左の方ですね、の目盛りが、例えば150というのはそのコストをヘッジするために年率で1.5%ぐらい払わないといけないと。ですからリスクが上がれば、このコストは上がると、こういう構図でございます。これとレアルの対ドルレート、それを組み合わせた表がこちらです。レアル対ドル表示はその右側の表でございます。

 これを見ますと、一目瞭然で相関関係が強いということは言えると思いますけれども、そうですね、2016年ぐらいまでは大体ぴたっとはまっておりまして、2017年になりますと若干乖離が見られております。ただ、これはですね、基本的に2017年というのが、先ほど申し上げたSelic金利、一貫して金利を下げているということで、レアルは中々防衛しづらい局面にあったということと、逆にドル金利はじわじわと上がっているということもありましてですね、ここの評価はまあ、レアルの為替が3.3ぐらいで前後したというのは、ある意味レアルが安定的に推移したというような市場の評価でございます。これを受けてこのCDSの評価でもですね、まあ実際にはテメル政権の政策、好感をもってですね、これを受け止めて、リスクプレミアム、いわゆるCDSのリスクプレミアムはどんどんと減っていったということで、170ポイントぐらいまでですかね、大体下っているというのが去年から今年にかけての動きでございます。

 次のページは、株式相場、Bovespa指数ですね。こちらのスライド、まあマクロのところでも申し上げたんですけれども、ブラジルに対する投資家のセンチメントというのは一貫して改善をしているということで、すべからく大体の主要銘柄、まあ一律回復基調になっております。年末時点で85000前後のところにつけているという数字でございます。次のページをお願いします。

 次のページは、インフレ率の方ですね。インフレ率の推移については、そこの表の通りなんですけども、青の点線ですね、これが政府が決めているインフレターゲットの上限値と下限値、その中間値ということで表にしてございます。そうですね、2010年以降、まあ一貫してターゲットの上限、このころのターゲットって大体上限が6.5%ぐらいだったんですけども、ここに張り付いておりまして、2015年だけぽこっと上がっておりますけども、これは過去の公共料金の引き上げを抑えていたものを一気に上げたというような特殊要因がございます。この辺の、インフレターゲット上限値に張り付いていたものが、2017年については逆にほぼ下限値の数字ということで、この傾向は2018年も続くだろうというふうに見ています。ただ、2018年以降、あるいは2019年になりますと、若干景気の回復が見込まれておりますので、これでまあ国内の消費が戻ってくるということで、インフレは若干上がるかなというような見通しも一部でございます。

 それから次のスライドは、これは政策金利、Selicと呼ばれている金利の動きでございます。こちらの方はですね、2016年、インフレ率がようやく沈静化したということを受けまして、いわゆる金融緩和の方がブラジルでも進んできたということでですね、2017年末の政策金利は7%まで引き下がっていると。足元6.75ぐらいまで来ていますので、まあマーケットの環境次第ではさらに下げるかということも見込んでおります。ただ2018年、インフレ率が戻ってくるということで、こちらの方も政策金利を逆に上げて引き締めていくという局面が2018年、2019年にあるかもしれないというような見込みがございます。

 それから次のページは、外国直接投資の動き。こちらの方は2016年、17年、大体800億ドルぐらいの動きですので、一応18年も同様の水準を見込んでいるということでございます。

 それから次のスライド、これは失業率の推移でございます。これはですね、ここ数年景気低迷のインパクトを受けて、2016年から17年、失業率は大きく上がっているということで、2017年の第4クォーターで12.4%まで上がったということなんですが、2018年については、今の感じだと若干これが改善する見込みをもっております。

 次のスライドなんですけども、こちらの方はですね、恒例になっていますマクロの経済指標の予想ですね。これを会議所の金融部会の、特に金融機関の方にお願いをしてですね、各銀行さんから予想を出して頂いたものの取りまとめになっています。この数字は実は2月19日に回答をいただいたものなので、その後の動きについてはこの材料の中に入ってございませんので、その点お含みおきをお願いします。

 まずGDP成長率の予想の方なんですけど、大体2018年の予想として2%から3%を見ていると。一方でこのFocusって書いてありますけど、これはいわゆるブラジルの中央銀行がブラジルの主要金融機関の予測を集めて作ったFocusの数字もご参考までに書いてあるということでございます。

 それからインフレ率。こちらの方はですね、2018年の予想で3.9から4.4ぐらいを見ていると。2019年については4.2から上は6.0ぐらいまでインフレを見ておりまして、ここはFocusの予想よりも商工会議所の予想が上回っているということでございます。

 それから為替レート。こちらの方はですね、2018年については3.2から3.5.2019年は3.15から3.8。19年はちょっとレンジが広がっておりますけども、これは19年以降新政権ということなので、中々ちょっと予想がつきにくいということで、幅がこうやって広がったのかなというふうに我々は見ております。

 それから次のページに行きまして、これも各社さんから予想的なコメントをいただいたんですけども、3つ箱がありまして、若干今回のテーマ「新たな視点」というのをちょっと意識して、まあ無茶振りして質問させていただいたところもありますけども、最初の箱はですね、大統領選、不透明で分からないんだけども、どういう契機でもってですね、ブラジルの経済の回復がはかられるのかというところですね。これを聞いたところ、そこに書いてあるようなそういうコメントをいただいております。ただ残念ながら、一番最後のところですね、年金改革法案の可決、これは中々今年中に決着がつきそうにないという状況でございます。

それから2番目の箱はですね、何か外からの要因でもってですね、ブラジルの経済に刺激、影響が与えられないかという投げかけにつきましては、各社さんから、まあグローバルな金利正常化の流れであるとか、特にブラジルに影響の強いEU諸国の動きであるとか、地政学リスクの顕在化、中国経済の動きということに加えて、最後に対ブラジルの直接投資の質ということで、これは、いわゆるブラジルへの投資というのが今まで資源とか原料一辺倒であったのが、違うタイプの投資、例えばサービス業等々への投資も含めてですね、新しい投資の形が出てくるということが外的な要因になるのではないかというようなご判断かと思っています。

 それからもうひとつの箱ですね。これはですね、ブラジルをこれまでと違った見方で捉えるとしたらどんな見方をしたらいいんだろうかというような投げかけに対するご回答でございます。一つはマーケットフレンドリーな環境への改革ということで、これは我が商工会議所でも政策対話委員会で色々なテーマにしてきたテーマかと思っています。それから、さっきちょっとご説明した格付けの評価と実際の資金フローの相関関係の低下ということで、かなりブラジルは今まで格付けに左右されてきたところがございますけども、本当に実力があればですね、格付けには左右されないその評価の視点が見れるんじゃないかというようなお話しかと思います。それからもう一つは、ものからサービスへの転換というような、こういう見方があるんじゃないかということです。

 それから、マクロの方で最後になりますけども、たまたまですね、2月の7日にメイレレス財務大臣がですね、いわゆる金融機関のCEOを集めてコンフェレンスをいたしました。この際に、メイレレスさんの発言の中で一部ご参考になるかなと思って、3つほど挙げさせて頂きます。

 一つ目は改革事案について、メイレレス氏にとっては労働法の改正に続いてですね、2月に年金改正の法案を可決に持って行きたかったと。ただ、これは実は2月7日の時点でのコメントなので、その時点で彼は、もし2月に可決しなければ、問題は2018年中は無理なので、2019年以降の次期政権の課題になるだろうというコメントをされておりました。それから、これに続いての改革ということで、税制改革、電力部門の改革、あるいは中等教育の改革等々を挙げておられました。

 それから2番目、これは2018年の成長率、この辺をどう見ているかという点については、3%強の成長を見込んでいると。ただそのためには、いわゆる消費の過熱だけではなくてですね、本格的なインフラの投資、その改革事案の実行、これが必須条件であるということでですね、まあそれなりの成長は見込まれると。ただ、成長があるので、若干のインフレの反動というのは見込まれますけども、これは彼が作っているインフレターゲットの範囲内であるというようなコメントがございました。

 それから3番目。これは一番難しい、読みが難しい、大統領選がどうなるのかというところなんですけども、これもメイレレス財務大臣の発言としてですね、ちょっとあまり固有名詞は出さないようにしますけども、彼としては、いわゆる極右政権についてはブラジルについては拒絶率が非常に高いので、中々こういう政権が政権をとるのは難しいんじゃないかというコメントをされておりました。逆に労働者党についてはですね、まあルーラ自身、あるいは代替候補が必ず出てくるだろうということで、まあ代替候補についても皆さん大体ご想像はついているかもしれませんけども、昨今の新聞などでは代替候補も色々汚職の問題があるというようなことも疑われております。それからPSDBについては、いわゆるテレビ司会者、これは非常にカリスマ的な人気があるということで、この人だったらPTとまともに戦えるんじゃないかというようなコメントもございました。

 最後に、自分自身はどうなのかという点については、もし自分が大統領選に出馬するとすれば、3月中に党派を決めないといけないと。今彼自身が所属している党派というのは非常に弱小なので、影響力の強い党派のサポートは必要であると。というようなコメントを大体メイレレス氏がしていたということなので、この場でご報告させていただきたいと思います。

 マクロ関係の話は以上なんですが、すみません、ちょっと時間が押し迫っておりますので、次の銀行業界の話と保険業界の話はちょっと端折ってご説明させて頂きたいと思います。

 まず銀行業界の話なんですけども、貸出残高の方ですね。これはその表の一番下にピンク色になっている合計のところがございまして、貸出残高、2010年以降二桁でずっと伸びてきたんですが、やはり15年、16年、17年は、16年からマイナス成長を余儀なくされているということで、これは実際に資金需要も減っているということに加えて、まあ金融機関の保守的な与信運営によるものだと考えています。

 次の17ページ、これはいわゆる貸出利ざやの動き、それを 個人、法人、全体ということで、利ざやの方も、これは金利の絶対水準が下ってきたということで、17年以降ですね、利ざやが少なくなっているという動きは見られると思います。

 それから次の18ページ。これは不良債権の比率ですね。これにつきましてもですね、延滞債権というのが、そうですね、16年ぐらいまで伸びてきたんですけども、ようやくここにきて景況感が回復して、企業業績も良くなってきたので、不良債権の比率も回復基調にあるということでございます。

 それから金融機関、業界全体の話としましてはですね、まあブラジルもリーマンショック10年経ってですね、かなり色んな危機を乗り越えてきたということで、ブラジルの金融セクター全体はですね、まあ民間地場銀行とメガ3、それとバンコ・ド・ブラジル、カイシャ・エコノミカ等々のいわゆる強大な金融セクターがございますので、基本的には、若干の危機、これを乗り越える強靭性をもっているということで、この金融セクターの健全性がブラジルの強みの一つになりますので、銀行業界としても引き続き強固な金融システムの構築に努めてまいりたいということでございます。

 続きまして、保険業界の方のお話。最初の表は、これはいわゆる保険料の推移ということで、保険料につきましても2015年、16年、若干のプラスではありますけども、これはインフレの伸び率以下ということで、2017年、これはまだ11カ月の数字ではございますけども、ようやく4.5%ということで、インフレを少し上回る数字に、増加トレンドにシフトしているという状況でございます。

 次のスライドは保険種目ごとの保険料の収入。これを見ますと、一番下の青い部分ですね、これは自動車保険の動きなんですけども、自動車保険の方はあいかわらずマイナスということなんですが、その他の種目、いわゆる火災保険、生命保険、いわゆるマリン保険、こういったものがかなりプラスになっているので、全体を引っ張ったという結果かと思います。

 次のスライド、こちらは損害率の方ですね。損害率、全体の数字ではですね、2016年11カ月で47.5。これが2017年は44.8ということで、損害率は全体では改善をしております。ただ一方で、運送保険であるとか、外航保健、いわゆるマリン種目、こちらの方の損害率が悪化しているということで、特に貨物等々の盗難事故、これは依然として多発している状況は続いております。

 それから最後のスライド、こちらはブラジル保険市場の成長の見通しということでありますけれども、2018年の成長見通しということで、全体では6.6%ぐらいの成長を見込んでおります。いわゆる損害保険、いわゆる生命保険、どちらも6%台伸びるということで、まあようやく本格的な成長が今年以降見込まれるのではないかというふうに読んでおります。

 すいません。ちょっと端折ってしまいましたけども、私からの説明は以上でございます。

 

司会

 安田部会長、ありがとうございました。それではここでご質問のある方いらっしゃいましたら、挙手をお願いいたします。はい、お願いします。

質問者

 お世話になっております。日本経済新聞社の外山と申します。マーケットのところについてですね、ちょっと教えて頂きたいんですけれども、私も今日GDPの記事を書いていて、どの程度明るいトーンで、どの程度抑えるのかというのに非常に頭を悩ましたんですけども、良く私も取材していて分からないのが、今のマーケット、外部環境がですね、先ほどS&Pとか格下げの話が出てきたと思うんですけども、S&Pが下げた時も、Fitchが下げた時も、マーケットとしては大きな反応はなく、取材してみると織り込み済みだとか、昔のレアル高だったころに比べるとレアルが安いから、相対的な割安感で買われているという話で。テメル政権の年金改革の棚上げにしても、ちょっと若干今マーケットが甘やかしているから、そういう意味で切迫感が去年に比べてなくなっているのかなという気がするんですけども、果たしてこの、まあブラジル政府とかブラジル経済にとっては良い環境だと思うんですけど、この環境というのはいつまで続くのかと。大分その、格下げしても、財政赤字がどうこうという話になっても、まあ今のところは大きな波乱もなくですね、行っているんですけども、外部要因が、ブラジル以外の外部要因ではなく、ブラジルの中の問題で、この非常に、良い環境というか、というのはこれは今後も持続可能なんでしょうか。どのように見られていますか。

 

安田部会長

 ご質問ありがとうございます。そうですね。まあ先ほどちょっと申し上げたように、いわゆる外部格付けは確かに悪くなっているという状況なんですけども、これは中長期的にはですね、例えばブラジルの国内企業が外で調達をするというような必然性に迫られた時に、まあ今の格付けだと非常に厳しいという状況は将来的には見られると思うんですけども、目先を見ますとですね、一応ブラジルの経済が自己完結しているというところもあってですね、あえて外に調達源を求めなくてもですね、今自国内で資金調達もできるということでですね、そこはまあ今までのブラジルとはちょっと違う構造になってきている。ここはまあ、ある意味、ブラジル自身も自信を持って来ているということなので、多分これは5年前、10年前のブラジルでは中々やりにくかった、つまり、外の環境が崩れると一気に崩れるというところがですね、さっきもちょっとご説明したように、例えば金融セクターについてもですね、かなり強固な基盤を持って来ているということなので、それが今は何とか維持できているということなんですけども、ただおっしゃるように市場環境がまた変わってくるとですね、世界との関わりという中でですね、まあ調達の弁が立たれてしまうということは、ブラジルにとっては非常に難しい状況なので、そこはちょっと我々も見極めていかないといけないかなというふうには考えています。

 

司会

 はい、ありがとうございました。他にご質問ございますか。はい。若干時間が押し始めておりますので、では安田部会長、たいへんありがとうございました。

 

安田部会長

 どうもありがとうございました。

 

司会

 それでは引き続きまして、貿易部会の今井部会長よりお願いいたします。

 

貿易部会

今井重利 部会長

                    

 皆さんこんにちは。貿易部会をやっております、伊藤忠の今井でございます。今日はよろしくお願いいたします。次のページお願いします。

 まずは、定番なんですけど、17年の貿易の回顧と18年のレビューということで、これはですね、いつもの半期ごとの輸出入額の推移ということでございますが、左側の縦の線が輸出入額、右の縦の線が貿易収支。輸出がですね、この左から半期ごとの青の棒グラフ。その横の緑の棒グラフが輸入ということでございますが、直近の16年、17年を半期ごとに見ていただきますと、特にですね、輸出がかなり伸びている。輸入もそれなりに伸びているということでございまして、特に輸出はですね、穀物の輸出量がかなり増えているということと、コモディティ価格の上昇ということがドライバーという結果でございます。年間の貿易収支はですね、17年は670億ドルの黒字と。で、16年は477億ドルの黒字という結果でございますが、一方ですね、貿易額そのものの数字を見ますと、例えば11年から14年を見ていただきますと、半期ですね、輸出額も輸入額も大体1200億ドルのレンジが続いておりまして、それに比べると、16年、17年と伸びていますけど、やはり本格的なところの貿易額にはまだ届いていないと。そういう面からも、貿易全体で見てもですね、まだ開発途上かなというのがまあ数字上は見て取れるのかなというふうに思っております。

 次、輸出と輸入を別々にいきますが、まず輸出からでございます。これもですね、いつものようにまずジャンルはですね、一次産品、半製品、工業製品と分けておりますが、右の一番下の輸出総額の増減率ということで見ていただきますと、金額ベースですと17.5%、数量ベースですと7.2%増加しているということなので、先程のですね、穀物をベースにした輸出量の増加とコモディティの金額の増加というように見ますと、まあざっくり言いますと、数量で7.2%なので、価格で大体10%、トータルで金額で17%伸びたというふうに読み取れるのかなというふうに思っております。あとコモディティ、アイテムごとに見ますと、上の方から大豆、鉄鉱石、鶏肉の一次産品とかですね、あと半製品につきましては鉄鋼半製品、工業製品につきましては特に自動車の輸出というのがかなり伸びたというのが、アイテム別には見て取れます。次のページお願いします。

 次は国ごとでございます。やはり中国とアメリカというナンバーワンとナンバーツーがかなり伸ばしているということでございまして、特に中国はですね、大豆、鉄鉱石、原油の輸出。アメリカはですね、原油とか鉄鋼製品の輸出が伸びておりまして。日本も伸びておりますけども、これは後でご説明します。あと、インド、メキシコ、スペイン等ですね、こういう国も伸びている。全体で17.5%でございます。

 右が、円グラフで、地域別の輸出先ということで表してございますけども、まあ中国が伸びているのでアジアが相対的に輸出先としては伸びてますけど、全体的にはですね、世界各地域、まんべんなくブラジルは輸出しているなというのが見て取れます。それで、あと真ん中にですね、輸出総額、年間で2177億ドルとありますけど、これは先程申し上げたように、ピークの時はまあ年間で2400から2500億ドルの輸出だということで、まあ輸出伸びていますけどまだピークにはもう少し達していないという状況でございます。次のページお願いします。

 次はですね、輸入でございまして、これもですね、一次産品、半製品、工業製品と分けていますけども、これまた一番右の一番下で輸入総額、全体で増減率を見ますと、金額で9.6%、数量で6.9%ということなので、まあ輸入は数量に応じて金額も伸びているという状況でございます。アイテムでいいますと、半製品はですね、銅版とか合成ゴムも伸びておりますけども、やはりこの下のですね、送受信機、これ中国からがかなり入ってきているということなんですけど、送受信機。あと燃料油、これアメリカでございますけど、もかなり伸びて、トータルで9.6%という結果になっております。次のページお願いします。

 次はこの輸入の国別でございますが、全体で9.6%ですけど、やっぱり中国が一番伸びていまして、先程申し上げたように、送受信機とまあ各種工業製品が伸びていると。アメリカは先程の燃料油と工業製品が伸びている。あと、ずっといきますと、メキシコがですね、20.1%増で、これは自動車部品周りの輸入が伸びているというふうに統計上なっております。あとチリがですね、19.8%伸びているんですが、これは銅版、銅の板類が伸びているというふうになっております。右側の地域別も、円グラフ作っていますけども、これもですね、輸出とほとんど同様の地域ごとになっておりまして、まあブラジルはですね、従来と同じなんですけど、中国の伸びでまあ輸出と同じようにアジアがだんだん多くなっているんですが、基本的には輸入も輸出もまあまんべんなく地域ごとに取引しているというのが現状でございます。次お願いします。

 次は今度、対日でございまして、左側は輸出でございます。全体で14.3%の伸びなんですけど、このグラフどおりなんですが、主に伸びているのは鉄鉱石とか鶏肉とか、合金とかですね、窒素化合物、こういうのが輸出としては伸びていると。右側が輸入でございまして、やっぱり輸出に比べて輸入の方が、伸びてますけどちょっと少なくて、5.5%なんですが、基本的には自動車とかですね、自動車部品関係、半導体、機械類が伸びているというのが結果でございます。次のページお願いします。

 今度は対ブラジルへの対内投資でございまして、左側の棒グラフで過去数年間の推移ですけども、2011年がですね、697億ドルでピークですけど、それ以降も年間だいたい600億ドルぐらいで推移しているのかなというふうに見て取れるんですが、例えば右側のグラフの16年と17年を見ましても、16年の537が17年は603億ドルということで、過去数年の平均に戻ってきたかなというのがレベル感でございます。

 国別にはですね、アメリカがかなり伸びていると。で、一つ空けた下のバージン諸島がすごく伸びているんですけど、この辺はですね、多分中国かなと思われます。一説によりますと600億ドルのうち中国がそのうちの200億ドルぐらい占めているという説もございますし、かなり中国がやはり来ているのかなという感じでございます。

 問題は今度、日本でございまして、日本はこれまた17年はかなり急激に投資額が減りまして、5億ドル強ということで、全体でも0.9%しか占めないということで、やはり日本の地盤沈下がすごく激しく感じられるということでございます。次のページお願いします。

 これは分野別でございますけども、同じように一次産品、工業製品、サービス業というふうに分けましたけども、やはりサービス業がですね、かなり投資分野としては伸びているということで、工業製品分野の投資も伸びていますけど、やはりサービス業で、電気、ガス、運送業関係がこれかなり伸びていて、これは特に中国がですね、水力発電所とか、送電網、これを買収したということで、その大型投資がかなり効いているんじゃないかというふうに考えております。次のページお願いします。

 これはですね、いつもと違う、日本の対ブラジル投資の過去10年間というのを作ってみたんですけども、2011年はですね、75億ドルということで大きいんですが、これはキリンさんがですね、当時のビール会社を約30億ドルで買収したというのがあるんですけども、それを除いてもですね、45億ドルぐらいということなんですが、一方、右の方の過去4年を見てみますとですね、例えば2014年がですね、37億ドルだったのが、もう4年で、倍々ゲームの逆の二分の一ゲームになっていまして、昨年は5億ドル強ということで、かなり低くなっているというのが大きな課題じゃないかというふうに考えております。次のページお願いします。

 これはですね、前回のまとめなんですけども、今回のテーマの視点のところもやはり前回のが生きていると思っていまして、地道にこういうことをやっていくのがですね、今も必要なのかなと思って、前回のを少しまとめたんですけども、やはり、体制をきちんと維持とか、中長期的観点から検討する、成長分野・景気の変動を受けにくい分野を選択hしていく、融資とかそういう制度を検討する、ブラジルならではの個別案件とか付加価値のある市場を開拓するとか、パートナー、ブラジルの将来性、あとは投資・貿易の課題を当局へ提言と、この辺は地道にずっとやっていくのかなというので、皆さんのリマインドも含めましてもう一回挙げさせて頂きました。次のページお願いします。

 これ最後のページなんですけども、今回のテーマでございまして、「いま求められる新たな視点は」ということで、まず現状認識で、上の左から行きますけど、ブラジルの国内景気回復していますと。ただ輸出入の相手の他の国も経済成長していますと。という中で、我々本社の目をどうやってブラジルに持ってくるかというのがやはり大きな課題でございまして。右側に書いたのが現状トピックでございますが、これは皆さんご存知の通りでございます。

 で、その大きい矢印の下で、今申し上げましたけど、2018年は確実に輸出入も増大するでしょうと。対内投資も、巷間18年は800億ドルに達する可能性があるというふうに言われてますし、そういう中でやはり日本の企業をもっと呼び込まなきゃいけないというのが大きな課題というふうに認識しておりまして、それをするために、下の四角の中で丸を五つつけさせていただきましたけど、これは部会の中で皆さんのご意見もいただきまして、まとめたんですけど、やはり成長分野、日本の強みを生かせる分野をまず見極めましょうと。IoT、AIから始まって技術、サービスの例をいくつか挙げておりますけども、やはり日本が勝てる分野、技術、サービスを見極めるというのがまず一つポイントなのかなと思っていまして。

 二つ目は、今がチャンス。ブラジルは多分、今年も回復途上で、多分2019年が本格回復なのかなというふうに言われておりまして、私もそういうふうに思っておりまして、やはり今来ないと遅いですよと。というアピールをしていくのかなというのが一つあるのかなというふうに考えております。

 三つ目はですね、ブラジル特有の、190万と言われている日系社会がございますので、こことのですね、連携、協働をですね、さらにやはり強化していくと。やはりブラジルの日系社会の人脈も含めてですね、それも活用しながらですね、アピールして、何とかブラジルへの投資を引き出していくということが一つ視点であるのかなと思います。

 四つ目はですね、中南米横展開の推進ということで、ブラジルに来れば、ブラジルだけじゃなくて、中南米の展開をできるというのが一つの観点かなと思っていまして。例えば、会員様の一つの企業の例で、チリのサーモンに投資しましたと。で、そのチリのサーモンをブラジルに持って来て販売を開始しましたという例のご紹介がありましたけど、やはり中南米展開の面白さというのをやはりアピール、一つするのかなと。

 最後の5番目は従来と全く同じでございまして、やはり投資しやすい環境づくりを引き続きですね、当局、関係者に働きかけ、推進していくということでございます。

 私のプレゼンは以上でございますが、最後にすみません、私事なんですけど、私貿易部会2年間務めさせて頂きましたけど、3月末で帰国することになりまして、帰国して東京の伊藤忠で金属関係の仕事をしますので、また皆様と引き続き接点あると思いますけども、よろしくお願いします。あと後任がですね、猪股というのがまた金属資源から4月に来ますので、この貿易部会もですね、猪股が担当させていただきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いします。色々お世話になりまして、どうもありがとうございました。

 

司会

 今井部会長、たいへんありがとうございました。貴重な意見を多々ご発表いただけたかなと思います。ご質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。よろしいですか。それでは今井部会長、あらためましてたいへんありがとうございました。

 続きまして、機械金属部会の池辺部会長によろしくお願いいたします。

 

機械金属部会

池辺和博 部会長

                    

 皆さん、こんにちは。機械金属部会、日立製作所の池辺と申します。よろしくお願いいたします。2017年の回顧と2018年の展望ということで、今日の私の発表内容ですけれども、まず機械金属部会の会社のビジネスに関連するマクロ関係の指標を3点ほど見て頂きまして、その後セグメント別の状況を発表させていただくんですけども、機械金属部会はですね、54社の多種多様な業種、分類の企業が会員となっておりますので、毎回のことですけれども、このシンポジウムに向けてレポートを提出して頂いた企業をこのように、鉄鋼、電力、それから建設機械・業務用空調、切削工具・ベアリング・ドライブシャフト、それからトラクター、非汎用圧縮機という5分類の形で分類させて頂いた上で発表させていただきます。そして最後に、今回の副題となっております「いま求められる新たな視点は」ということについても触れさせていただきたいと思います。

 そうしましたら、まずマクロ指標関係ですが、先ほどの今井さんと同じく、私もですね、この機械金属部会の部会長を2年間やらせていただいておりまして、これが4回目のシンポジウムの発表なんですけども、今回初めてですね、対前年比マイナスじゃなくて回復基調だというような発表ができることをですね、嬉しく思っております。

 これはブラジルの鉱工業生産の対前年比の推移をグラフ化したものでございます。まあ我々の機械はですね、生産現場で使われることが多いということで、製造業のお客様が多いわけですけども、その製造業の生産の推移ということで、これは先回にも報告させていただきましたが、2014年の4月以降ですね、昨年の1月まで、34ヶ月連続で前年比を割るというマイナスで生産活動が停滞しておりました。で、昨年の2月にですね、35ヶ月ぶりにプラスに転じて、その後4月、6月とプラスになり、まあ長いトンネルを抜けたということを報告させていただきました。その後、6月以降、今年の1月までですね、8カ月連続のプラスとなっておりまして、少なくともこのグラフにある2012年以降ですね、8ヶ月連続のプラスという経験はなかったですから、ここにおいても生産活動の回復が裏付けられるのかなというふうに見て取れます。

 ちなみに、マイニングの鉱業を除いたインダストリーだけの工業で見ましてもですね、昨年1年間で2.5%のプラスということで、これも2010年以来の回復と。自動車業界が20.1%、家電で10.5%という成長をした耐久財がですね、13.3%になったというのが、まあ貢献しているものかと思います。

 続きまして、段ボールの生産のやはり対前年同期比較ですけども、これもやはり経済、生産活動が活発になりますと、段ボールの需要が梱包、輸送に増えてくるということで、製造業の活動の一つの目安と言えるかなと思いまして、ここに挙げております。

 これは四半期ごとの前年比較で、2017年の第2四半期まで、ここにプロットされております。これも先回、2013年の第4四半期から2016年の第4四半期までですね、13四半期連続でマイナスが続いていたということを報告させていただきました。で、昨年の第1四半期にですね、14四半期ぶりに若干のプラスに転じたんですけれども、再び第2四半期でマイナスということになっています。ただ、この段ボールの販売の方は昨年2017年の1年間で約5%弱伸びているというデータがございますので、この後の2017年の第3、第4四半期はですね、おそらくプラスに転じているものと思います。従いまして、先ほどの鉱工業生産と同様、この段ボールにおいてもまあ生産活動が底を打ってですね、回復基調に転じたということが言えるかと思います。

 続きまして、これは建築業界の実績でございます。我々の機械金属部会の中にはですね、建設機械や空調設備関連の会社もございまして、建設市場の動向というのも気になるところでございます。

 これも四半期ごとの前年比較でございまして、先回も報告させて頂きましたが、2014年の第2四半期以降ですね、これ去年の第3四半期までプロットしておりますが、相変わらずマイナスが続いております。おそらく2017年の第4四半期もですね、まあ浮上には至っていないんじゃないかというふうに思われます。政府財政の赤字によってですね、インフラ投資が見送られていること、それから企業の設備投資が抑制されているということ、ラバ・ジャットによってゼネコンの体力が低下しているという、このような影響を受けているものかと思われますけども、今年は選挙の年ということもありましてですね、この建設業界の回復はやはりいましばらく時間を要するのかなというふうに思っております。

 以上のマクロ指標を受けまして、我々機械金属部会の状況を報告させていただきます。

 まず鉄鋼関連ですけども、このグラフにありますように、ブラジルの粗鋼生産がですね、6年ぶりにプラスに転じました。前年比で10%の増加となっております。これは一昨年の後半から稼動を始めている新会社、CSP社という会社の前半部分が純増になっているということもありますけども、国内需要も回復しているということが言えるかと思います。その表れとして国内販売ですけども、自動車・家電の生産が回復してきておりますので、鋼板類がですね、そこにもありますが6%伸びております。ただ、先ほど見ましたように、建設業、あるいは機械等の需要の回復は遅く、条鋼類は依然マイナスの3%ということで、全体では2%の増加というふうになっております。輸出に関しては、先ほど紹介しました、バーレと韓国企業の合弁でありますCSP社がですね、スラブを生産しておりまして、大半を輸出している関係でですね、半製品が17%の増加ということで、全体で14%の伸びとなっております。輸入に関しましては、やはり自動車生産の回復ということで、鋼板類の輸入がですね、72%対前年比で伸びているということがございますので、全体では24%の増加というふうになっております。

 2018年の展望ですけれども、国内販売はですね、やはり自動車の生産の継続的な回復ということ。それから機械・建設需要も穏やかには伸びていくんじゃないかというようなことがありまして、鉄鋼協会の方ではですね、国内販売は4%の伸びを見通しておりまして、生産もそれに合わせたような伸びになるだろうと。ただし、2013年のピークに戻るのはですね、まだ10年先、2028年になるだろうというような予測になっております。

 輸出に関しましては、ブラジルの鉄鋼ですね、アメリカ、あるいはEUでアンチダンピング訴訟の対象となっている関係でですね、鋼板類の伸びは期待できないというような見込みになっております。

 あと、休止しておりましたウジミナスのイピランガ製鉄所第1高炉がですね、この4月に再稼動されるということで、製鉄会社もですね、ここ4、5年設備、保守等への投資を凍結しておりましたものですから、我々機械金属部会の鉄鋼関係社としましてはですね、これからこの製鉄会社の設備、あるいは保守の投資への積極的なくみ取りをやっていきたいと思っております。

 続きまして電力です。経済活動の回復に伴いまして、電力消費もグラフにありますように、3年振りに前年比をアップしまして、昨年は0.8%増えております。特に工業部門ですけれども、これは一昨年の10月まで32ヶ月連続で減少していたんですが、昨年は1.3%の増加ということで、一般家庭も0.8%、それから商業部門も0.3%の増加ということでですね、電力使用が増えているということからも、経済活動が上向きになっているということが言えるかと思います。

 これを受けてと言いますか、2016年、一昨年ですけども、29件、158メガワットしか実施されなかったエネルギーオークションがですね、昨年の末ですけども、2つの89件3160メガワット分のですね、オークションが実施、落札されました。その中にはガス、風力、太陽光がですね、前年より大きく伸びているというような結果になっております。

参考までですけど、この円グラフはですね、ブラジルの発電手段別の構成比なんですけれども、風力がですね、一昨年、約6%だったのが、昨年は8%まで伸びておりまして、能力的には12.8ギガワットの風力発電の能力があります。これはブラジルが世界8番目の風力発電の国になっておりまして、ちなみに1、2、3はですね、中国、アメリカ、ドイツです。

2018年と言いますか、今後の展望ですけども、ここのエネルギー研究公社によりますと、今後年間500メガワットくらいのですね、バイオマスの発電がまず予想されると。一方で大型発電案件はですね、あまり期待できないということで、分散型発電所がこれから建設されるだろうということですから、我々機械金属部会の電力関係社としましては、これらバイオマス、あるいは小型・分散型発電所向けのですね、需要に取り組んでいきたいなと思っております。

 次は、建設機械・業務用空調です。我々の部会には建設機械や業務用空調の会社がございまして、やっぱり建設業に密接している関係で、先ほどの建設業の動きというのが気になるところですけども、先ほども言いましたように昨年も大きく落ち込んでおりまして、まだ回復の兆しが見えないというのが状況でございます。

 その影響をまともに受けたといいますか、ここにあります油圧ショベルの販売ですけれども、昨年も3年連続の前年比ダウンと、91%。この3年でですね、ごらんのように約半減以下まで落ち込んでおります。ただ、道路や土木工事用の機械全般、ブルドーザーとかバックホーとかというものはですね、昨年の第3四半期に底を打った感がございまして、対前年、年間では2%の減でとどまっておりまして、市場の過剰在庫もですね、一掃されたというような見方が出ております。それに加えて、各社の努力の成果でもあるんですけど、輸出が前年比54%と、2016年に続いて2年連続で50%以上の伸びとなっている関係でですね、生産そのものは36%の増ということになっているようです。

 業務用空調ですけれども、これは工業・商業の回復、しかもこれが下期ということで、下期はこちらの夏ですから、空調の需要期も重なりましてですね、昨年の後半、7月から12月はですね、対前年12%増と。年間になおしても5%増ということで、3年ぶりに前年比をアップする結果になっております。

 2018年の展望としましては、まあ建設業界の回復はやはり2019年以降になると予想しているんですけれども、まあこれ以上の前年割れはなくですね、希望的観測ですけれども、横ばい程度になるだろうということで、ショベルは前年比横ばいを予想しておりますし、あと道路・土木工事機械全般ではですね、8%ほどの増加を予想しております。あと業務用空調、空調関係ですけど、これも商工業の回復を受けてですね、5から10%%の伸びが期待できるのではないかというふうに見ております。

 続きまして切削工具・ベアリングその他ですけれども、これは主要顧客先が自動車業界ということで、私のすぐ後に自動車部会の方からこの自動車に関する詳しいデータは発表されるものと思いますけれども、これは皆さんご承知の通り、自動車生産、昨年はですね、4年ぶりに回復しまして、前年比25%増の270万台になったというふうに言われています。2018年もですね、生産においては13%、販売においては12%の増加になるだろうというのが自動車業界の予測になっております。

 これを受けまして、切削工具・金属加工油剤ですけれども、やはりこれの影響がございまして、各社ともですね、前年実績を二桁伸びに、前年がかなり落ち込んでおりました関係もありまして、二桁伸びたというふうになっています。また、自動車業界以外のですね、農業機械、金型分野等の産業もですね、比較的順調に推移しているということで、こちら向けの販売も好調だというふうにうかがっております。

 2018年も、先ほど自動車が13%生産が伸びるというふうに予想されていました関係で、この切削工具・金属加工油剤関係もですね、二桁の伸びを予想されているようです。

 あと、ベアリング・ドライブシャフト関係。これも自動車生産の回復に加えてですね、遅れておりました二輪車の生産もですね、昨年の下期以降やっと増加に転じたということ。ただし一般産業機械向けの農業機械の販売は、増加したもののですね、やはり市場在庫との調整があった関係で生産は前年比を割ってしまったということがあってですね、全般では前年比微増であったというふうに聞いております。

 2018年に関しましては、先程来ありますように、自動車生産の継続回復、それから二輪の生産もですね、7%から9%の増加を見込めると。それから一般産業機械の方も、景気の回復とともに需要増が期待できるということ。さらには、自動車の補修市場となっています、消費者向けのアフターマーケットもですね、堅調に推移しているということで、まあ全般的にですね、明るさが増すような年になるのではないかというふうに見ております。

 最後に、トラクターと非汎用圧縮機ですけども、皆さんご承知のように農業は昨年非常に好調でですね、政府の農業向けの低利融資もですね、順調に実行されたということで、トラクターの需要もですね、これも4年ぶりに前年比アップというふうに、約3%アップということになっております。やはり2018年、今年もですね、農業生産、農作物の収穫は概ね良好というふうな予想になっておりますので、このトラクターの需要もですね、今年は二桁増も期待できるんじゃないかというふうに見ております。

 一方で、この非汎用圧縮機ですけども、これは自動車や農業ではなくてですね、資源開発や石油関連等が主要用途なんですけども、ペトロブラスの投資抑制、それから若干回復はしていますが資源価格の低位安定等があってですね、このコンプレッサーの需要の方はここ3、4年は非常に低調に推移しております。このコンプレッサーの輸入のグラフですけども、ほとんど市場が輸入品なものですから、ほぼこれが市場というふうに言っていいと思いますが、ご覧のように2015年で前年比60%、2016年はさらに30%ということで、ほぼ壊滅的な状態になっております。2017年は、数字上は158%と、まあ3年ぶりに回復したような数字になっていますけども、絶対額的に言いますとこれは、メンテナンス需要の増加ということで、例えばScrewコンプレッサーでいいますと依然ダウンしてですね、ほぼゼロの状態というふうになっています。

 2018年の展望ですけれども、まあ原油価格の上昇によってですね、上流の石油生産の方は活発化し始めておりまして、従来からの引合いがですね、現実化していくことを期待しております。一方で、下流の石油化学の方はですね、当面投資の縮小傾向が続いておりまして、回復は4、5年先となるのではないかというふうに見られておりますので、当面はこの上流向けの営業に力を入れていくということになっております。

 以上が我々の業界の状況報告でした。では最後にですね、本日の副題となっております「いま求められる新たな視点は」ということについて、部会の方から頂いた意見をですね、整理した形でご紹介させていただきます。

 全般的には各社、今だからという特別な視点はなくてですね、従来通り地道な活動、努力を継続していくというような話でしたけれども、新規需要・新規顧客の創出というような話がありました。一例としましてはですね、ブラジルの土木建築においてコンクリート構造のシェアが高いということで、土木建築用の鋼材の消費規模はですね、あまり大きくないということがあります。したがって、これからのインフラ投資拡大に備えてですね、土木建築における鋼構造の利点、工期の短縮だとか、施工のしやすさ、それから人件費の圧縮等ですね、建築コンサルタントや設計事務所に積極的にPRして、鋼材そのものの需要を創出しようというような取組みでございます。

 他に、製造業への設備の自動化、あるいは統合設備の利点を啓蒙することによって、ブラジル製造業の競争力向上に貢献するという謳い文句でですね、自社販売を増やしていくというお話しもございました。

 それから、量の拡大から質の拡大への経営。それから変化に柔軟に対応できる組織作りということで、これどちらもですね、まあ大幅な需要減等、ボラティリティの高いブラジルですので、この対応力を強化ということを言っているのかと思います。

 それから、最後になりますけども、景気の回復や需要拡大を見据えて、将来の成長に向けての投資機会の模索、見極めを行っていくというところもございました。

 以上が機械金属部会の発表でございます。ご清聴ありがとうございました。

 

司会

 はい、池辺部会長、たいへんありがとうございました。それではここでご質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。どんな質問でも結構ですので、ぜひよろしくお願いします。非常に広範な、多岐にわたる分野をご分析いただいてですね、ご発表いただいて、たいへんありがたかったかと思いますし、全般的には回復の兆しが見れるけれども、まだちょっとまだらかなというところではあるかなという印象は受けました。ではすみません、簡単な質問をひとつだけ。ちょっと私素人的に、詳しいことは分かっていない前提でお聞きしますけど、中国勢であるとか、あるいは欧州勢、それから米系、先ほど貿易部会の発表にも色んな国が投資を伸ばしているという話がありましたけど、機械金属部会さんの中でいうと、日系以外との競合というところで何かお気づきの点とかございますでしょうか。

 

池辺部会長

 ご承知の通り、ブラジル、欧米の企業がもう大分昔から投資して、製造もしておりますので、新たな競争という訳じゃないですけども、やっぱり欧州企業、米州企業ですね、やっぱり我々の一番のライバルといいますか、競合相手としてはその既に進出してここで実績をあげている欧米企業、もちろん中国が最近盛んに投資していますので、これはこれでまた新たな脅威かと思いますけども、今現在という意味ではやはり欧米企業がですね、もう既にインサイダー化している欧米企業がやはり一番の競争相手かと思っています。

 

司会

 わかりました。では、松永会頭、よろしくお願いします。

 

松永会頭

 質問じゃなくてですね、細かい点の訂正なんですけど、一応マイナーシェアホルダーとしまして、弊社、ウジミナスのイピランガってこれ書いてあるんですけど、イパチンガが正でございます。以上です。

 

司会

 貴重なご意見ありがとうございます。他にご質問ございますか。それでは池辺部会長、たいへんありがとうございました。

 続きまして、自動車部会の下村部会長によろしくお願いいたします。

 

自動車部会

下村セルソ 部会長

                    

 自動車部会の下村セルソと申します。よろしくお願いします。皆様こんにちは。私は自動車部会の報告をいたします。今回は主に、2017年の振り返りと、2018年の展望について、四輪、二輪の順に説明いたします。

 まず始めに、四輪の2017年の振り返りです。

 2017年の自動車市場は約224万台、前年比109%でした。2013年以降ずっと自動車は縮小していますが、昨年は5年ぶりに前年を上回り、やっと市場が回復しました。ただし、レンタルやフリート向けなど、ダイレクトセールの比率は縮小しており、今後注意が必要だと思っています。

 続いて月別の販売台数です。2017年の初めは100%前後で行ったり来たりしていましたが、5月から8ヶ月連続で前年を超えました。市場の回復が鮮明になっています。また、在庫についても、1カ月台前半で推移しており、引き続き適正な水準です。

 こちらは生産と輸出の推移です。2017年の総生産台数は約270万台、前年比125%と昨年を大幅に上回りました。また、輸出台数についても約76万台で過去最高でした。

 次に新車・中古車別の販売台数です。新車・中古車の合計台数は近年、120から130万台レベルで推移しています。昨年は新車・中古車ともに前年を上回りました。

 続きまして、ブランド別の販売台数とシェアの実績です。16年から17年に向かってFiatを除くビッグ4はシェアが上昇しました。日系ブランドは引き続き堅調な販売を続けています。

 2017年をまとめると、最大のトピックは、市場が本格的な回復基調に入ったことだと思っています。良かった面は、まず経済指標がさらに好転したこと。自動車販売も国内販売台数、輸出台数、生産台数が前年を上回り、また、労働法改正案が可決され、労働法の近代化が進むといった点も、業界にとってはポジティブに受け止めています。

 一方では、懸念事項としては、テメル大統領や政府高官、スキャンダルが話題になる等、引き続き政治面が不安定なことです。市場回復に向けた準備が整いつつある中、政治面の安定がどういう影響をおよぼすか、注意する必要があると思います。

 次に2018年の展望についてです。こちらは昨年の状況を踏まえた、自動車部会としての2018年の予測です。まず国内市場については、ANFAVEA同様の250万台程度を見込んでいます。前年112%程度で、2017年に続き市場はさらに拡大すると見ています。生産台数の予測も、ANFAVEAと同様の303万台で、こちらも昨年に続き拡大する予想をしています。

 続きまして、長期の展望についてです。長期の展望について説明を、少し昔から並べてみました。

 1年前の2017年の2月は、底打ち状態にあると言いました。半年前の2017年8月は、回復の傾向が見られるが、安定的な回復になるのはまだ分からないと言いました。そして今回は、回復に入りました、と言いたいと思います。長期的に年間300万台レベルの回復も期待されますが、そのスピードは昔よりゆっくりで、政治状況が市場に与える影響について引き続き注意して見ていく必要があります。

 次に、長期展望のトピックスとしては、まだ正式に発表されていませんが、Inovar-Autoに代わる自動車政策、Rota2030を紹介します。ポイントとしては、WTOの指摘があり、IPIの罰則が緩くなること。また、CAFÉなどの規制が長期スパンであること。それから、セーフティやコネクティビティなど、新しい分野を強化する狙いがあることです。こういった動きをよく見ながら、ビジネスを進めていく必要があります。

 続きまして、日系ブランドの課題への対応について説明します。まず昨年からの継続としては、ブラジルの厳しいビジネス環境に対応するため、現地生産とユースの強化を図る点です。

 次に新たな視点として、メルコスールと各国のEPAについてです。メルコと欧州は既に交渉に入っており、韓国とは事前の協議を終えています。また、中国とも協議がスタートする可能性があります。日本とはまだ協議に入っておらず、このままではサプライヤーを含めた業界全体として、大幅に影響を受けることになります。メルコと日本のEPA交渉の推進を図ることに、各社では課題の洗い出しと対策立案を早期に実施する必要があります。

 また、ブラジルコストを低減し、競争力を強化しないと、EPAの相手からブラジルは飲み込まれてしまいます。EPAの推進と競争力強化をセットで進めていかなければいけないと思います。

 最後は、お客様のニーズは変化して、スピードが速いです。電動化と環境対応、安全、コネクティビティへの対応を確実にやっていく必要があると思います。

 それでは、四輪の総括へ移ります。2018年は販売・生産台数ともにさらに拡大すると思われます。しかしながら、大統領選挙など、政治の影響に注意が必要であります。また、EPAの動きからも目が離せません。これに対する対応としては、引き続き環境変化に負けない事業体質強化を推進すること。具体的に、現調化と輸出によるコスト、為替影響の低減です。加速するためには、企業努力のほかに、官民連携での自動車産業の枠組づくりが必要です。また、メルコ・日本のEPAを推進するとともに、変化が激しいお客様のニーズを確実につかむことも大事だと思っています。

 こちらは、そのような背景を踏まえた政府への提言です。新技術の導入の促進、自由貿易の促進、コスト削減、競争力の強化につながる抜本的な取組みなどについて、業界全体で議論していく必要があると考えております。

 四輪の説明としては以上になります。引き続き業界一丸となって粘り強く提言を続けていくことが大事ですので、どうか皆様のご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。

 続きまして、二輪について状況を説明いたします。まず生産・販売の動向です。

 景気が緩やかに回復する一方、高い失業率などの影響で、2017年の国内販売実績は81万台、前年比95%と、6年連続で前年割れとなりました。一方、生産は、輸出が増加したことから88万台とほぼ前年並みとなりました。二輪市場は昨年に比べると下げ幅が縮小しましたが、まだ回復に至っていない状況です。

 こちらは登録別の月別販売推移です。前年比で見ますと、5月と10月に前年同月を上回り、その他の月も下げ幅は縮小傾向にあります。

 最後に二輪販売の支払い形態別推移です。緑のグラフはローンによる販売比率を示していますが、与信審査の厳しい状態が続いているローン比率が少々回復傾向となっていることがお分かりいただけると思います。このような状況から、クレジット緩和、金利低下などにより、2018年は緩やかな回復を期待しています。

 以上で自動車部会の報告を終わります。ご清聴どうもありがとうございました。

 

司会

 下村部会長、たいへんありがとうございました。それでは質問おありの方、よろしくお願いします。じゃあ外山さん、お願いします。

 

質問

 日経新聞の外山と申します。ありがとうございます。ちょっと一点、メルコスールについて教えて頂きたいんですけれども、日本政府とメルコスールのEPAというのはずっと前から言われていて、中々現実的に進まないという中で、先ほどもおっしゃったように欧州、EUであったり、また韓国も新たに始めるということで、あちらの方は具体的なレールに乗っている状況なんですけども、具体的に、欧州であったり韓国が先にEPAを結ぶと、日系メーカーにとってどのようなデメリットがあるのか、具体的にどういうところで競争が降りになるかというのをですね、例えばフォルクスワーゲンとかフィアットとかヒュンダイに対して日系メーカーはどこら辺で劣後するのかというところをですね、ちょっとその危機感というのを教えていただけますか。

 

下村部会長

 質問ありがとうございました。すみません、私の日本語はちょっと上手じゃないんですけども、何とか頑張って答えます。その通りで、例えば、色々皆さん頑張っているんですけど、輸入のコンポーネントまだ多いんですね。うちはまだ日本から輸入しているんですけど、18%程度輸入税がかかって輸入しています。例えば欧州とFTAができる場合には、それゼロになります。そうすると、うちは18%払っていて、例えばフィアット、GMとか欧州でビジネスできる会社はゼロに全部なりますので、その影響でだいぶコスト的には大きくインパクトがあります。さらに、当然ですね、うちは頑張らないといけない、安くしないといけないんですけど、まだ時間かかると思います。ですから先に欧州と他の国が早くやったらですね、うちは遅くなってですね、大分影響があると思います。それは部品だけじゃなくて、機械もそうです。うち、トヨタの例で言うと、まだ機械はほとんど日本から輸入しているんですけど、それはまださらに20%とかそういうタックスがかかるんですけど、それは欧州から輸入したらゼロになりますので、その辺も大きな影響があると思います。そういうふうに今考えております。当然、本当はうち、全部現調しなきゃいけないんだけど、先ほど言ったようにまだ時間がかかりますので、だから日本とのEPAを同じタイミングで。前かどうかじゃなくて、同じタイミングでやらないと、そういう影響が大分インパクトがあるかなと思っています。

 

外山氏

 ありがとうございました。

 

司会

 はい、ありがとうございます。では会頭お願いします。

 

松永会頭

 セルソさん、ありがとうございました。私の方からは2つ質問があります。一つはですね、メルコスールの中で、ブラジルとアルゼンチンがこれから関係を強めていかないといえないと思うんですけども、一方でアルゼンチンへの車の輸出の超過が相当、新聞なんかにも出ているんですけど、これを受けて、じゃあブラジルはアルゼンチンへの自動車の輸出の数を減らすのか、あるいは他の国に輸出するのか。あるいはアルゼンチンの自動車の輸入を増やすのか。どういった方向でいくのか、分かれば教えて頂きたいというのが一つです。

 

下村部会長

 はっきり良く分からないんですけど、ただ、一つ考えるのは、今ブラジルとアルゼンチンが60%の国産化できたら、税金ゼロでやっています。この状況が欧州になりますので、欧州カーメーカーはその方がもっと持ってくる可能性があると思いますし、もう一つ、先ほど話しました新しいテクノロジーですね。コネクティビティとか、セーフティのところが入りますので、その辺、多分うちはそんなに同じスピードでいかないので、そうすると欧州からどんどんもって来るかなと思っています。そういう可能性があるかなと思っています。

 

松永会頭

 分かりました。ありがとうございます。あともう一つがですね、ご説明いただいたRota2030ですか、これができるとですね、電気自動車の製造だとかそういったものというのが、輸入も含めてですね、増えるんですかね。あまりブラジルは電気自動車ってそんなに、他の国に比べるとですね、あまり取り上げられていないような感じがするんですけど、これはどういうふうにご覧になっていますか。

 

下村部会長

 まず、Rota2030ですね、本当に大事なことだと思っています。それだけじゃなくて、今までどっちかというとInovar-Autoが5年間だけのスパンでやったんですけど、Rota2030が15年のスパンになっているんです。それはですね、うちに対しては大事なことです。やっぱりもうちょっと将来のフォーカスがないと、計画的なビジネスはできないんですよね。例えば、どこまでセーフティであることが必要になるかどうかを決めるとか、ちゃんと15年のスパンが見えたらですね、うちはもっと現調できるし、色々計画してきちんとできると思います。それがなくて変わったり、一番困っているところです。まずこれは一番良いところだと思っています。EVのことは、確かにおっしゃる通り、まだ時間がかかります。なぜ時間がかかるかというのは、やっぱりEVはインフラが必要ですね。電気のプラグとか、どこに入れるか、そういうところが時間がかかるんですけど、だけど、と言いながら来るんですよ、いつかに。で、さっき言ったEPAになったらものすごく早めに来るかもしれない。ただ、ブラジルのインフラがまだ時間がかかるものですから、だからうちは、他のカーメーカーにしても、例えばハイブリッド、そんなにインフラがいらない車をやったらどうですかと。それは、100%EVより、そのステップをいって、市場が大きくなるなら多分そうなるかもしれない。だけど、ブラジルがもう一つディスカッションがあるのが、そういいながらCO2のreductionを目指しています。その時ブラジルはエタノールを言うんですよね。エタノールはやっぱり一つの大きなCO2に対しては良い方法ですから。ただ、これはブラジルだけですからね。だから、どうなるか、まだANFAVEAの中でも政府と一緒にディスカッションしているんですけど、ただ、言いたいことは、確かにEVとかそういうレアレッジはそんなに早く来ないと思っているんですけど、いつかには来ますので、うちは準備しないといけない。だからRota2030を、例えばR&Dのインベスティメントとかそういうものもやって、色々、サプライヤーもちょっと強化して、そういうプレパレーションをやらないと。一気に来ると皆困るんですよね。だから、例えばEVになっちゃうと、エグゾーストパイプ売っている会社ですね、EVになるとエグゾーストパイプないんですよね、困るんですよね。だからちょっとずつステップをいかないといけないと思っているんですけど、ただ将来そういうことは来る、絶対来ると思っていますので、だけどそう言っても準備を始めましょうと今思っています。

 

松永会頭

 ありがとうございます。

 

司会

 はい、ありがとうございました。

 

質問

 すいません、引き下げられるという発表がなされましたけども、これの導入時期というのがいつごろかということについて教えていただければと思います。

 

下村部会長

 それは、私も知りたいです。ただ、本当は色々、ANFAVEAとか、非常に、1年かけて今ディスカッションしています。これを言ってもいいか知らないんですけど、うちはMDICと一緒に色々やりました。やりましたけど、足りなかったのはファゼンダですね、エコノミックの調整が、根回し、最後にしたので、それが大間違いと思っています。今は、皆がRota2030必要ですと、それは間違いなく大体政府の中にコンセンサスはあると思いますけど、ただその中にはインセンチーボがありますので、そのインセンチーボのバジェットが今ファゼンダとMDICを中々ディスカッションできなくて、今待っています。その中にも、色々、テメル大統領もペンションプランのディスカッションをしたり、政治家的な交渉になってですね、ちょっとおかしくなったんです。ご存知の通り、Inovar-Autoですね、12月に終わりました。皆1月から新しいRota2030が始まると思ったんですけど、中々delayになっています。今言っているのは、3月のエンドか、今考えているんですけど、本当かどうか分からないです。もう一つの質問はEV、ハイブリッドのIPIのreductionですね。これも、Rota2030は関係なくて、そういうところもあったんですけど、政府の方から、MDICの方からも、やりますと言ったんだけど、中々やってなくて、今うちも、いつになるかいえないんですけど、ただ、いつ出るかどうかも今のところフォーカスできません。

 

司会

 はい、ありがとうございました。他にご質問ございますでしょうか。私、ひとつだけすみません、確認なんですけど、63ページでブランド別のシェアというページがあったんですけど、これは、聞き逃したかもしれません、販売ですか、それとも生産台数のシェアになりますか。

 

下村部会長

 販売です。

 

司会

 ちょっと素朴な疑問だったんですけど、真ん中の2016年の縦の列、拝見したら、日系3社の台数がですね、2013年と比べても、まあ、マーケットは縮小しているにも関わらず、踏ん張って頑張って、それほど日系3社は下げずに、シェアも伸ばしてきたと。ところが、2017年でマーケットが少し回復してくると、リバウンドするのが、ビッグ4というか、ここで言うとGM、フォルクスワーゲンさんが台数を比較的伸ばされているというところで、そこらへん、ターゲットとされている購買者層が違うとか、戦略の違いが出ているのか出ていないのか、そこについてちょっとコメントがあれば。

 

下村部会長

 これは、トヨタの例で回答しますけど、うちは確かにそのとおりで、ただ、うちはもうキャパシティがないんです。さっき言ったように、ユースも増えたし、全部まとめると、各カーメーカーはちょっと状況が違うと思うんですけど、トヨタの場合は全工場がフル残業で、土曜日もフルで出ていてですね、それ以上もうできません。だから本当は、もしもっと作るキャパシティがあったら、多分もっと上がったと思うんです。うちは、まあ基本的には続いて上がったので、それがキャパシティがなくてちょっとそこに対応できませんでした。だから、今年うちは、まあしょうがなくて、三直を今考えております。ただ、これはトヨタの状況で、他のカーメーカーさんはよく分からなくて、たぶん色々あると思います。

 

司会

 承知しました。ありがとうございます。それでは下村部会長、たいへんありがとうございました。続きましてコンサルタント部会の西口部会長にお願いいたします。

 

コンサルタント部会

西口阿弥 部会長

                    

 皆さん、こんにちは。コンサルタント部会、EYの西口です。どうぞよろしくお願いします。

 まずブラジルの政治・経済環境について、簡単にお話したいと思います。

 ブラジルの2018年GDP予想は2.8%と予測され、2017年の1.1%を上回ることが期待されています。経済活動回復に伴う失業率の低下、製造業部門の生産回復、一般消費者向けクレジット部門の拡大、クレジットの延滞率低下などの要因が挙げられます。インフレはブラジル中央銀行が目標としている4.1%を上回る可能性は低く、金利も低い事が期待されています。ブラジルは直接投資の受入れは引き続き高いことが期待されていますが、大統領選挙の結果によってブラジルの市場、投資家に不安を高める要素となる可能際はございます。

 最近の動向としては、2018年大統領選挙において有力な候補がなく、出馬候補がまだ定かではありません。選挙結果によって将来の不確実性が大きく左右されます。年金改革、税制改革の実行も遅れ、政府財政の改善は選挙後となってしまいました。

 良いニュースとしては、2017年7月に労働法改正の執行が決定され、11月に施行されました。また後で話しますが、この改正は労働者と企業での交渉を可能とする規定が多く盛り込まれております。

 ブラジルリスクシナリオとしては、先程申し上げました、直接投資は去年と同じくらいを期待していますが、大統領選の結果により減少する可能性はございます。対内公的債権残高はGDP比較約74% で、まだ高い数値となっています。必要な改革も先送りされ、短期的な減少は見込めません。ブラジルコストはまだ課題で、複雑な税制、インフラの不整備、ブロクラシーの問題などの課題はまだ多くあります。中国の経済成長率もブラジルの経済に影響を与えるのではないかと言われております。

 こちら、皆さん、各部会のプレゼンテーションで詳しいお話をされているので、簡単にご説明したいと思います。どの業界も一応、見込みとしては成長する見込みとなっております。不動産業に関しては、低いインフレと金利の低下で業界の投資と消費が増えるのではないかと言われております。住宅購入に関しましては、ブラジル貯蓄・不動産・信用協会では、2018年の住宅購入向けクレジット総額は、前年の1010億レアルよりも15%増加することを予想しております。

 サービスについては、経済回復をあおって、特にメディア、広告、コンサルティング会社は成長率が上がるのではと言われております。

ブラジルのサービス業ですが、ブラジルのIBGE、ブラジル国家統計局での統計は、正式に設立されたブラジルの会社で20人以上の従業員を雇用している場合のサービスのボリュームと収益の統計をとっています。サービスは金融関係、教育と医療サービスを除いたものになります。大きく4つに分かれておりまして、まず宿泊・食事などを含む家族に提供されるサービス、情報通信・技術・オーディオ・ビジュアル・出版・通信サービス。三つ目は、専門家理その他のサービス。4番目に運輸・郵便、こちら航空・船・トラック輸送、倉庫などを含んだサービスに分かれております。

 2017年のブラジルでのサービス業のボリュームは、去年と比べ2.8%マイナスとなりました。2.8%のマイナスですけれども、2014年以降の高指数で、2016年には5%マイナス、2006年は3.6%マイナスを記録していました。運輸サービスについては、特に貨物や倉庫について、製造業の回復に直接ひもづいたもので、製造に関わる原料などの輸送に関わるものだそうです。

 経済は回復しつつありますが、その他のサービスについては一歩遅れて反応するのが一般的と言われております。家族へのサービスについても、2017年で、個人の所得の増加はありましたが、一般的はサービスではなく物品の購入に使われた傾向にあります。公的機関も財政難なため、まずは外注サービスをカットするのではないかと言われております。

 ただ、良いニュースとしては、2017年12月には同年11月に比べて1.3%のプラスとなっています。2018年のブラジル経済の状況によって業界の回復、成長率も伸びるのではないかと言われております。

 コンサルティング会社の増加している案件や、よくある事例としては、まず景気が良くなったことによるM&Aや投資の問い合わせが去年末から少しずつ増加しております。一時止まった案件などを再検討しているケースもございます。

 あと、引き続き問い合わせがあるのが、情報の量が多くなっている事で ITセキュリティによる対策をされている会社が多くあります。日本でも仮想通貨のセキュリティについての報道などもされております。

 不正防止や不正調査についての問い合わせも引き続きあります。腐敗防止法規定の対応や、内部通報制度を設けている会社も多くあります。不正調査については、特定の不信感をもって問い合わせるケースもあります。また、買収先が公的機関と取引が多く行われている場合の調査を依頼されるケースもございます。

 税務については、引き続き移転価格の問い合わせが多くあります。よく使われている再販売価格基準法、PRLを適用する会社が多くありますが、計算によって調整額、つまり追加で法人税を多く納税する必要がある場合には、その他の基準法が可能ではないかなどの問い合わせがあります。ブラジルはOECDに加盟したいと希望していますが、そのためにはブラジルの移転価格はOECDのルール、あるいはそれに近いものに改正する必要がございます。あと税務については、間接税 、特にICMSのクレジット滞留についての問い合わせはまだございます。商工会議所でもセミナーなど行われておりますが、会社のキャッシュフローを圧迫するため、大きな悩みとなっております。ただし、そういった対策を採っても、どの州も税収不足のため、その回収許可が遅れている傾向にございます。

 あと、南米の組織編制についてですけど、こちら、ガバナンス目的であったり、効率化を図るためストラクチャーについて検討される案件もございます。南米戦略ですが、その国々の税務、労務、カルチャーなどを考え、検討しております。

 最後に、以前に比べアルゼンチンの問い合わせも増えました。アルゼンチンでの投資の問い合わせは、ブラジルを除いての他の南米国よりも多い傾向にございます。アルゼンチンに既に子会社がある場合は、追加の投資がマクリ大統領以来多くなっている模様です。エネルギー関係やマイニング投資の興味も増えております。

 コンサルタント部会で、「いま求められる新たな視点は」ですけども、コンサルティング会社から見て新たな視点は、景気が良くなったことにより通常会社は利益も増え、不良債権の処理、固定資産の減損なども多くなり、会社がフィットな状態で、赤字から黒字になった、あるいはそういった予定の企業が多く、増えています。会社にとってはとても良い結果となります。

 税務では、ブラジルは繰越欠損金は、限度はありますが、無期限で繰越が可能となっています。赤字の場合は、多くの場合、法人税を納税する必要はありません。したがいまして、黒字になりますと、法人税を納税することになります。法人税を納税し始めるに当たり、税務、節税対策、コンプライアンスなどが必要になると思われます。

 また、コンサルタント部会での打ち合わせでは、ビジネスモデル、戦略についても再検討する機会ではないかと話し合いました。ビジネスモデルですけれども、経済環境、テクノロジー、消費者の動向が以前より早いスピードで変わっています。常にイノベーションについて考え、戦略を考える必要があるとは以前から言われております。第4次産業改革の中、将来が不明で、付加価値を見出すための長期的な戦略はとても難しいと言えます。その中で、ブラジルの市場にあった日本の商品や、インターネットによる販売での物流の変更や、ブラジルで実際に売れる商品は何かを考えるのはどうかと話し合いました。

 ブラジルでの戦略を考える場合、三つの要素を考える必要があるのではないかと話し合いました。まず1に、ブラジルはとても大きな消費基盤があること、国土面積も世界5位、850万平方キロメートル、人口も2億770万人、こちらも世界5位であり、最近の購買力向上に伴い、大きな消費市場があります。

 次に、国土面積は広いんですけども、ブラジルの市場は地域によって異なる事です。例えばブラジルの南部と北東部では現実が違います。ブラジル国内での各地域の戦略を考える事も必要かと思われます。

 3つ目は、日本や他の国に対し特有性があることです。自動車でいいますと、フレックスタイプはブラジルに特有なタイプとなったり、会話するのも電話よりWhatsAppというアプリでのメッセージを送る方法が最近多くなっているため、伝統的な電話通信会社の競争相手は変わって来ました。ブラジルのメディアでは、例えばグローボなどの伝統的なテレビの放送局ですけれども、競争会社はNetflixだと言っています。

 労働法改正は2017年11月に施行され、ブラジル統一労働法が74年ぶりに改正されました。従来は、多くの労働訴訟をまねき、ブラジルでは企業の競争力を阻害する意味でブラジルコストのひとつと呼ばれてきました。この改正により、現地進出日系企業にとっても、これまで過剰に課せられた労働コストを少しでも削減できる可能性があると考えられます。

 今回のブラジル労働法改正の大きなポイントとしては、規定の明確化および労働契約の柔軟性の向上が主な点です。労働法の改正によって、労働訴訟が少しは減少するのではないかと見込まれております。2017年では、1カ月約20万件を突破していたにもかかわらず、新労働法施行後、12月では労働訴訟案件は約8万4000件にとどまりました。ただし、ブラジルでは一時的に労働訴訟は減りましたが、今後どうなるか分からないのが現状です。改定での変更された規定で、労働訴訟で提訴側が敗訴した場合には、労働裁判費用、弁護士費用などを敗訴した側が負担することになりました。従業員が提訴した際には、提訴した内容が不実であることは会社に証明責任はありますが、敗訴する可能性が低い、根拠のない提訴をするケースは少なくなるのではないかと言われております。

 ただし、改正反対であった裁判所の判事などの判例がまだないので、実務上の対応についてはまだ十分検討の上、慎重に判断する必要はございます。

 大統領選挙の結果によって経済が左右される可能性がありますが、良くなることが見込まれた際に、投資について準備されるのはいかがではないでしょうか。選挙後に準備を始めるのでは遅いのではないかという意見もございます。ブラジルでの投資の機会ですが、エレトロブラスの電気会社の民営化の計画をはじめ、今では約75社の民営化の計画がございます。

 また、日系企業ではない他の他国企業の投資動向としては、ブラジル政府は医療と教育に関し予算を制約する代わりに、民間にインセンティブを規定し、投資の柔軟化を図っています。ご存じのとおり2015年には医療関連会社への外資の投資が認められました。

 ブラジルの健康保険会社の保険料が増大、高齢化が続いています。大都会でもブラジルの公的保険制度、SUSへの不満度はとても高いです。ブラジルでは約40%の国民は、病院がない、あるいは離れた場所に住んでいます。そこで、ブラジルでは新たなビジネスモデルが要求されております。最近ブラジルの会社では、よく町で見かけるDr.Consultaなど、高齢者向けにおさえた保険料を提供している会社もございます。

 教育では、ブラジル教育省はオンライン教育での規定を柔軟化しました。特に大学や大学院でのオンラインの教育についての施設の開設の際の要件の柔軟化、科目によってはオンライン教育を認めるようになりました。ブラジルの投資家とパートナーシップで投資を検討している外国企業が多くあります。

 また、コンサルタント部会でのミーティングでは、景気回復を機に売りに出ているブラジルファミリー企業が多くあるようですので、そこでもチャンスが見受けられます。

 以上となります。

 

司会

 はい、たいへんありがとうございます。非常にご示唆に富んだご意見、ご発表だったかと感じました。ご質問等ございませんでしょうか。はい。

 

質問

 リオに住んでいる堤と申します。後半ちょっと出れないので、この時間の質問になっちゃったんですが、本当だったら池辺さんにご質問した方が良かったかもしれませんけども、数年前からローカルコンテンツというのがね、結構リオに住んでいると毎日、特に油関係とかがあるものですから、聞くんですが、今日まだ一言も出ていないんですね。というのが非常に不思議だと、多分地域性があるのかもしれませんけども、思った点と、例えばペトロブラス、ラバ・ジャットの話が冒頭でちょっとリファーされて、今年頭に5カ年計画が新しく出て、8兆円規模の新たな指針が出て、それに向かって、幸いペトロブラスも深い海から出る油が、予定通り以上のですね、何と言うんですかね、貢献で、州とか市とか、あるいは国全体の財政を潤すというような方向性に間違いなく私も行っていると思っているんですけども、話は、さきほどのローカルコンテンツに戻ると、あまりサンパウロでは、例えば進出されている方々が多いので、多分出ない傾向があるかもしれませんが、リオの場合は例えば油の周辺を求めて日本から地方のメーカーさんたちがですね、ひょっとしたら売れる物がないかとか、お見えになって、どうしても精神的な足かせとして、ローカルコンテンツの話が出ると、まあちょっと腰が引けるというのが、まだ、去年から今年にかけても繰り返されているんですね。

ジェネラリースピーキングで、そのローカルコンテンツというものをどうサンパウロの、例えば池辺さんだったら機械の分野でお感じになっているのか、あるいはコンサルタント部会で、あまりローカルコンテンツというテーマがかき消されつつあるのか、というのがちょっと、興味という意味で質問としてさせていただきたいと思います。ちなみに、ローカルコンテンツというのは、リオでもですね、ペトロブラスが色々と大きな開発・生産機械を買う時に必ずテーマとして出るんですけども、例えば90%の要求がゼロになったりですね、要するに、輸入メーカーさん、こちらで見ると輸入する対外のメーカーさんたちに非常に有利な形で今、色んな機械が海外調達という形で入って来るような、間口が広くなりました。これは、ある意味で日本から見てもいいことだと思うんですけど、私はノルウェーとかヨーロッパの機器メーカーのコンサルタントもやっているんですが、彼らが来ても必ずローカルコンテンツというのがやっぱりこう、精神的な足かせになっているというか。サンパウロではあまりそういう話が出ないので、ちょっと違いを、数年前よりも今日新たに、景気が良くなったからもうそういう話題が出ないのかなというような感じでちょっと受け止めちゃっているんですけども、何かあまり、そういう話は出ませんか。

 

西口部会長

 そうですね。コンサルティング会社ではですね、まあ企業さんからローカルコンテンツについての、計算といいますか、ローカルコンテンツについてのそういうサービスの問い合わせはあるんですけれども、何かサンパウロで違った、サンパウロ州での動きは私の方では聞いていないですね。何か変わるということは。

 

質問

 話題になる場面というか、フィールドがあまりないのかもしれませんですね。私、Abimaqという全国機械工業連盟のエネルギー部門の会長の顧問みたいなことをちょっとやっていて、エネルギーなので、リオになると必ずその、何と言いますか、施設産業の方々が、組合レベルでローカルコンテンツのことをアピールするんです。要はプロテクションということになるんでしょうけど。6500社も全国にある会員をもったAbimaqの中で、かなりの部分はサンパウロにメーカーさんたちが散らばっているはずなんですけども、そういう、雰囲気的に今、ローカルコンテンツを楯にとって、例えば日本からの進出を拒もうとかですね、あるいは対外の障壁を作っちゃおうとか、そういうようなネガティブな動きに包まれているような空気感というのがあまりないということなんでしょうか。

 

司会

 はい、ありがとうございます。コンサルタント部会さん以外でも構わないと思いますけれども、もし、すでにご発表いただいた部会さんからでも、もしご意見あるいはご回答あれば、お願いできますでしょうか。はい。堤さんありがとうございます。

 

発言

 三井物産の土屋でございます。ローカルコンテンツの件に関して、私どもリオでもこちらでも色々やっておりますので、事実上この数年を見ていますとですね、今おっしゃっていたようにローカルコンテンツで縛りを入れてくるんですが、現実にはコストだとかを見るとですね、ローカルコンテンツだけではコスト高になる、ペトロブラスをとってもですね。ということで、結局入札してもですね、値段が合わなくなったりということもあって、見ていると、やっぱりそこらへんのところはローカルコンテンツの縛りを入れて、コスト高で現地産業を保護するというよりは、むしろやはり効率だとかコストを考えて、ある程度ペナルティを払ってでもですね、輸入品を入れて、製品あるいはプロジェクトを完成するというような方向に、例えばペトロブラス1社見てもですね、行っているのかなということで、確かに一時期のローカルコンテンツの縛りというのと比べると、ペトロ自身見てもですね、私どもから見ると少しやはりその辺のところは変わってきているということもあって、もちろん分野ごとによりますが、特に大きな8兆円という投資規模で進めていくようなペトロを見てもですね、ローカルコンテンツで高いお金を払うというよりは、むしろ効率、あるいは将来のことを考えて、輸入品ももちろん受けていくというふうになりつつあるので、これが撤廃されるかどうかというのは言いきれないと思いますが、数年前と比べると、あまり気にしなくなってきている。ローカルコンテンツの要求してもどうせ無理だよというふうに、私どもなんかは思っていますので、その辺はちょっとトーンが変わってきたというのが現状ではないかと思います。

 

司会

 はい、貴重なご意見ありがとうございます。自動車部会さん、機械金属部会さん、ございますか。

 

発言(池辺氏)

 例えば電力業界なんかで、再生可能エネルギーに投資される方はですね、BNDESのファイナンスを受ける場合はですね、ローカルコンテンツが要求されますよね。最近これ聞かないのは、BNDESそのものが最近あまりファイナンスしていないというのがあるのかなとも思いますし、案件もそれだけ少なくなっているんじゃないかという気もします。いずれにしましても、BNDESのファイナンスを受ける場合は当然ローカルコンテンツというのは出てくるんですけど、自己ファイナンスする場合はこの問題は出てこないということで、最近はその話は聞かないというのが実態ですね。

 

司会

 はい、ありがとうございます。面白い着眼点をご提供いただきまして、またご回答いただきまして、たいへんありがとうございます。ちょっともう時間もやや押してきておりますので、ここで前半を終了させていただきたいと思います。西口部会長、たいへんありがとうございます。

 今からコーヒーブレイクに入らせていただきまして、予定通り3時半から午後の部を開始したいと思います。よろしくお願いいたします。

 

後半の部

司会 大久保敦 企画戦略委員長

                    

 そろそろシンポジウムの後半戦を開始したいと思いますので、皆様ご着席をよろしくお願いいたします。間もなく開始いたします。ご着席お願いいたします。

 はい、それでは時間になりましたので、2018年上期業種別部会長シンポジウムの後半戦をですね、開始したいと思います。私、後半の部の司会を担当させていただきます、企画戦略委員長でジェトロサンパウロ事務所の大久保でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速各部会の発表に入りたいと思います。タイムキープを含めて、皆様のご協力をお願いいたします。まずは化学品部会の発表に入りたいと思います。羽田部会長より発表をいただきます。羽田部会長、よろしくお願いいたします。

 

化学品部会

羽田徹 部会長

                    

 皆さんこんにちは。今年から化学品を担当することになりました、日本曹達の羽田と申します。昨年の4月にブラジルに着任してから1年弱、まだまだ勉強不足のところもございますけども、御指導いただきながら役割を果たして行きたいと思っています。よろしくお願いします。3時55分まで時間いただいております。よろしくお願いします。

 まず、初めにブラジルの化学業界、統計が出ておりますので、少し話を触れたいと思います。そして本部会の昨年の回顧と今年の展望について分野ごとにお話したいと思います。そして最後に副題である「いま求められる新たな視点は」についてお話して終えたいと思います。

 ブラジル化学工業会の統計が出ております。2017年業界売上、3793億レアルということで前年比1.2%増加しております。ドルに換算すると8.2%の増加となっております。主に自動車関連、白物家電関連、建築関連で需要増大が牽引したと報告されております。

 視点を変えまして、貿易収支を見てみたいと思います。2017年、マイナス234億ドルということで、前年比赤字が6.3%増えているという報告になっております。輸入依存が進んでいるというような状況です。ブラジル石油・ガスの生産量、年々増えておりますけれども、依然原料価格に競争力がない、まだ電力など生産コストが高いということで、輸入の依存が年々続いております。

 将来の化学業界における投資見込みについてもですね、縮小していくと見られておりまして、今後ますます輸入依存というのが進んでいくと見られております。

 そんな中、本部会についてです。回顧と展望ということで、例年通りアンケート形式で、メンバーから業績の推移、また見通しを聞きとっております。化学品部会、所属70社からなっております。その中からアンケートに協力いただけたのが26社。昨年と同じ個数になっております。工場保有がそのうち14社ということになっています。

 本部会が関わる市場、ご覧のように多岐にわたっております。アンケート総数として55件、その中から多い順番に、輸送、ヘルスケア、農業、印刷とお話したいと思います。次お願いします。

 まず化学品部会の集計です。このグラフ、見方を説明しますと、縦軸に回答件数、横軸に業績の推移を売上、利益で並べております。

 まず2017年、どうであったか。かなりの数で増加という結果が返ってきております。一方で、不変、減少したという結果もあります。不変・減少の総数と増加を比べると、半分半分ということで、業績が分かれた年でした。2018年については、減少を見込むメンバーさん、かなり減りまして、大方が増加すると見ております。これが全体像です。次お願いします。

 では分野別に見てまいります。四輪・二輪に代表される輸送というくくりでまず紹介したいと思います。用途が、内外装プラスチック部品、エンジン用シール剤、樹脂添加剤、着色剤などとなっております。

 取り巻く市場環境。昨年はですね、自動車部会からも説明ありました通り、四輪の生産・販売台数の増加。一方二輪では、市場低迷というような状況でした。自動車向けに供給しているメンバーさんにおいては増加したという結果が多かったのですが、二輪に関しては不変だった、もしくは減少した、というような結果になっています。

 そのような中、各社の増減要因というのも聞きとっております。自動車向けに供給されているメンバーさん、自動車の生産台数増加による販売アップに加えて、価格対応や機能性原料の紹介を通して、顧客の再獲得、または新規開拓というのを成し遂げております。また、現地生産化を進めたり、アルゼンチン輸出で成長したというメンバーもいらっしゃいました。一方、二輪分野、市場低迷している中で、汎用品、いわゆる中国・韓国品との競争激化が進んでいるということで苦労されておりました。また、顧客の与信枠を減らさざるを得ず、受注減ということになってしまったというケースもございました。次お願いします。

 2018年の展望です。自動車。生産台数の増加。二輪においても市場が回復するという意見もありました。それを受けて、グラフでご覧のように、減少を見込むメンバーさんがなくなり、増加するであろうという非常に明るい見通しとなっております。各社さんの取り組みを聞きとったところ、機能性原料の投入だとか、新規開発アイテムを立ち上げる、また販売条件に前向きな柔軟性をもたせてはどうかと、そういったアイデアも出ておりました。

 本部会のメンバー、最も多くが携わるこの自動車の分野で減少を見込むところがなくなったというのは非常に明るい兆しだと思います。次お願いします。

 ヘルスケアというくくりにさせてもらっています。用途として、食品添加剤、包装フィルム改良剤、包装着色剤、化粧品原料、一般医薬品などとなっております。

 食品以外、化粧品、一般医薬品については市場回復せずということで、それぞれが関わる分野で業績が分かれる結果となっておりました。皆様の売上増減の要因を聞きとったところ、新規開発アイテムを増加させたり、顧客の輸出案件に協力して業績を伸ばしたという企業がありました。また、販売体制の見直しや、販売費を積極投入して一定の伸長は見せた。とはいうものの、価格競争の激化が進んでおり、増加を果たせなかったというメンバーもいらっしゃいました。また、重要顧客との契約が終了したことで受注減やむを得ずといったケースもございました。次お願いします。

 ヘルスケアの2018年の展望です。一変しております。食品、化粧品、一般医薬品、全ての分野で市場回復が見込まれております。各社の取り組みとしては、販売費の継続投入、セールス増員、新商品の上市、周辺国へさらに展開していこうということで、皆さん増加を見込んでいます。

 先程の自動車分野と、このヘルスケア分野で、アンケートの約半分になります。そこで減少を見込むメンバーがいなくなったというのは非常に、景気回復が本格化してきているのかなと期待させてくれるところです。次お願いします。

 農業分野です。用途、いわゆる農薬、飼料添加剤、診断薬原料などとなっております。2017年、この分野、天候にも恵まれ、歴史的な豊作の年でした。また、中国向けを中心とする農産物の輸出、食肉の輸出、堅調に推移し、ブラジル経済を下支えしていました。一方で、農薬についてなんですけども、欧米の大手の過剰販売の結果、流通在庫膨大になっておりました。その関係で、最終ユーザーである農家レベルでの使用量というのは増えているんですけども、我々メーカーの出荷が縮小したという現象が起こっておりました。

 そんな中、各社の取り組みですが、新製品の上市や周辺国への展開などを通じて増加させたというメンバーがおりました。一方で、これも農薬なんですが、中国を中心とするジェネリックの攻勢が強まっているということで、値段対応を余儀なくされ、増加を果たせなかったというケースがございます。また、遺伝子組み換え作物の浸透、これにより自社製品の使用場面がなくなってしまったということで減少したケースもございました。次お願いします。

 2018年の農業分野での展望です。ただ今作付けシーズン真っただ中でございます。天候も良く、作柄も良好と。最大の作物である大豆、これが過去最高の収穫量になるであろうと見通されております。農薬の約半分が大豆向けですので、このおかげで農薬の流通在庫の整理も進むだろうと期待されております。ただ一方で、ジェネリックの攻勢という大きな課題は目の前に横たわったままであります。

 各社の取り組みについてです。スタッフを増員させたり、販売網の拡充ですね。新製品の上市。周辺国への展開を強化するということで、成長を計画するメンバーいらっしゃいましたが、一方でジェネリックの攻勢。ジェネリックに対する対抗のためにですね、価格対応というのはやむを得ず、ということで、売上はキープするけど、利益は減ってしまうであろうと見ているメンバーさんもいらっしゃいました。

 これまでの自動車、ヘルスケアと違って、ずっと好景気が続いてきた農業分野です。今年も好景気だと思っておりますけども、メンバー皆がポジティブなわけではなく、現状維持が妥当だろうというふうに意見の分かれる特徴をみせております。

 続いて印刷分野です。用途は出版・パッケージ用インキ、感熱紙原料、印画紙などです。

 大変苦労した昨年だったと聞いております。市場の低迷、在庫過多、価格下落傾向。顧客のニーズも変化してしまって、販売減という状況。輸出でがんばったけれども、カバーしきれませんでしたというような状況。ということで、増加したメンバーさんいらっしゃいませんでした。次お願いします。

 2018年、印刷分野での展望です。少し状況が好転するようです。印刷・インキ分野の需要低迷というのは続くようですが、一部の分野では高機能化が求められており、成長機会となっております。また感熱紙原料、需要増が見込まれております。そうした中、製品ラインナップの見直しをし、高機能製品の投入、また、新顧客を開拓、周辺国への展開を強化というようなことで成長を計画しております。一方で、価格の競争激化は避けられず、減収減益やむなしというようなメンバーもいらっしゃいました。業績が増加と減少に分かれるという結果になっております。次お願いします。

 以上でアンケートの約8割をカバーしました。ここで総括に移りたいと思います。

 17年の回顧としてですね、見てみますと、約半分、53%の回答が売上増加という状況でした。昨年この場でのシンポジウムで総括されました、我慢の時期はまだまだ続くであろうという言葉を引用するならば、17年の回顧はですね、我慢の時期は終わったと言えるのではないでしょうか。また、機能原料や新規案件の立ち上げ、販売体制の見直しなど、成長への布石を打ったという年でありました。

 2018年の展望です。約8割が売上増加を見込んでいる、とても明るい状況です。これまで遅れてきた一般消費者の購買意欲も復調するであろうと。そういった中、機能原料や新商品のさらなる投入、価格対応や販売条件の前向きな見直しという積極的な話も聞かれました。まさに、攻める時が来た、という言葉で総括したいと思います。次お願いします。

 最後に副題、いま求められる新たな視点は、についてです。企業努力の面から見ますと、これまで話してきた通り、ここには書いておりませんけれども、三つに集約されると思います。まず一つ目が、機能製品の投入や新規開発アイテムの立ち上げということで、変化する顧客ニーズにいかに対応するか。そして二つ目。価格対応や販売条件の前向きな見直し・検討。そして三つ目。国内販売体制の拡充、また周辺国の販売体制の構築、そういった視点から各社の取り組みがみられたかと思います。

 それに加えて、ここの下の方に書いてあります、環境配慮型製品に可能性があるのではないかという意見もありました。例えば、生物農薬に着手しているところもありましたし、自動車分野、当局が規制の改革を突然やってくることを想定し、準備をしておくべきではないでしょうかというような意見もありました。また、競争激化の中、コスト削減のための設備投資、いまこそ必要ではないかというような意見もありました。

 いずれにしましても、この意見交換を通じて非常に強く感じたのはですね、ビジネス環境の整備、これなくして、やはりさらなる積極的な攻めには出にくいというジレンマです。例えばこの上の方に書いてあります、許認可プロセスの簡素化・迅速化。例えば農薬の場合、申請から登録まで約5年から7年かかってしまいます。これでは市場ニーズが変わってしまっておりますので。また次の、輸入ごとの品質検査、これもそうですね、簡略化。また、メンバーが最も苦労されている税制。簡素化のみならず、関税の軽減、国内工場を持っていらっしゃるメンバーの中には国内生産品に対する優遇などの意見もありました。

 また、労働法。これさらに修正ありきと聞いておりますが、この法的安定性の確保というのは、雇用主としてぜひ求めたいところです。また、違法品ですね。オリジナル品に便乗したまがいものの取り締まりを強化するべきだというような意見もありました。企業努力だけではどうにもならない部分なのですが、むしろカマラの活動、政府、当局への要望といったところと重なるのですが、この必要性というのをあらためて強く感じたところです。

 はい。時間にもなりましたので、ここで化学品部会の話を終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

 

司会

 羽田部会長、どうもありがとうございました。ただ今の発表につきまして、ご質問のある方、挙手をお願いできますでしょうか。いかがでしょう。やはり発表の中で、結構、ジェネリックの攻勢とか、中国・韓国品との価格競争とか出てきましたので、やはり、市場の変化のニーズにあった新たな商品、原料をいちはやく投入するには、やはりネックとなっているのは、許認可プロセスが非常に時間がかかるというのがネックになっているというところが浮き彫りになって、やはり政策対話の重要性というのが再認識されたという発表であったかと思います。それではですね、質問ないようですので、化学品部会の発表は以上とさせていただきます。羽田部会長、どうもありがとうございました。

 それでは引き続きまして、電気電子部会の発表に移りたいと思います。千野部会長より発表をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

電気電子部会

千野浩毅 部会長

                    

 皆さん、こんにちは。電気電子部会の発表をさせていただきます。実は私、ここでこういうふうに発表するのは7回目になるんですけど、このチャートを使うのは6回目です。手抜きじゃないかと言われるかもしれないんですけど、最初に私がここに来た時、2014年の10月だったんですけれども、まあその時からすでに景気の後退というのが始まって、翌年の夏、15年の夏にはリセッションに突入ということで、その時に使ったチャートがこれなんですけども、電気電子部会の会員各社というのは、耐久消費財であったり、産業用の機器であったり、あるいは公共投資向けの色んな機器であったり、そういうのを生業にしている会社になるわけですけれども、それに対して、ここに書いてありますように、レアルは安くなるわ、リセッションだわ、失業はもうどんどん増えるわ、インフレ、高金利、政局は混乱しているし財政赤字だと、一体何重苦だろうという、こういうふうな状況になりまして、当時は一般消費者向けの耐久消費財、それから産業用、公共事業向け、これ全てがどん底というような状況になったと。これが2015年から16年ぐらいまで続いた状況だと思います。次お願いします。

 で、今日現在どうなんですかというと、これもある程度、今までいろんな発表があった中でのコンセンサスだと思うんですけども、レアル安ですとか、リセッションもまあ一段落し、インフレも収束し、という中で、まあまだちょっと、財政赤字ですとか、政局、混乱ではないけどもやっぱりまだかなり不安定と。それとラバ・ジャットなんかもあると思うんですけれども、そうした状況の中で、まあ一つ言える事は、前回もお話しましたけれども、一般消費者向けの耐久消費財というのはこれは明確に回復しているという状況が見えるんですけども、一方で産業用の機器ですとか、公共事業向けのこういった需要というところに至っては、まだまだ回復っていうところまでは来ていないということで、この電気電子部会の中でも、扱う商品ですとか、事業の領域によって、回復のスピードというのはかなり異なるのかなと、こういうふうな状況が続いています。次お願いします。

 これは一般消費者向けの商品の販売動向ということで、液晶テレビとスマホですね、これの動向についてのデータになります。これは小売店での販売のデータを月別に見たものです。Gfkという第三者機関のデータになります。これは前回8月にもお話したんですけど、液晶テレビは3月ぐらいから、スマホは2月ぐらいからかなり需要がぐっと回復してきて、前年を上回るようになってきたと。前回8月でしたので、そういう傾向になって来ましたよということをお話したんですけれども、今回お見せするのは12月までのデータになるですけども、その後もですね、こういった液晶テレビですとかスマートフォン、こういったものに関して言うと、回復の傾向がずっと続いております。テレビで言うと前年比3割アップというのをずっと維持していますし、スマホも前年比2割ぐらいというところがずっと維持されていると。

 この赤いラインが単月で前年に対しての成長率というのを示していまして、これで見ていただくと、テレビ、それからスマホ、それぞれが2月、3月ぐらいからぽーんと赤い線が上がって、100%を超えてそれを維持しているというのが見ていただけるかと思います。一方で青い線ですね。これは12カ月の移動累計で、業界の大きさがどういうふうに推移しているかというのを表しているんですけれども、これもやはり昨年の1月、2月ぐらいというところをボトムにして、ぐーっと上がってきていると。テレビに関しては、ワールドカップ終わったぐらいでは年間で1400万台ぐらいの規模があったんですけれども、一時期それが800万台を切るぐらいまでのレベルに落ちたんですけど、それが1000万台規模までぐーっと回復してきた。ちなみにテレビは、普及率ですとか、耐用年数から考えると、大体1000万から1100万台ぐらいというところが業界の規模、適正規模というふうに見られていますので、ほぼ適正規模に戻りつつあるということです。次お願いします。

 これはオーディオの販売。同じように小売りの販売のトレンドを今回はもってきました。オーディオに関してはですね、どちらかというとオーディオコンテンツというのが昔はCDですとか、USBのコンテンツですとか、そういうものがあったんですけれども、最近はもう完全に電子化が進んでしまって、オーディオ機器そのものの需要というのがどちらかと言うと衰退傾向にあるという中で、景気の回復の割には中々回復してこないというふうなカテゴリだったんですけど、実はオーディオ商品の販売動向で見ても、昨年の6月ぐらいに底を打って、もうこれ以上あまり落ちなくなってきたということがあるので、まあこれを見ても、結構一般商品というところでいうと、かなり鮮明な回復の傾向があるのかなというふうに思っています。次お願いします。

 続きまして、これは生産ですね。マナウス地域での家電製品の生産のトレンドをまとめたものです。先程見ていただきましたように、液晶テレビ、スマホ、こういったのはどちらかというと必需品に近いようなアイテムになるかと思うんですけども、こういったカテゴリについては非常に回復が早くて、販売が回復するよりも若干早く、2016年の後半ぐらいには回復の兆しが見えて、それが維持されていると。電子レンジ、エアコンというのは実はリセッション突入前には非常に成長率の高い、これからの成長商品というふうに見込まれていたんですけれども、これがリセッションで一回落ちましたと。ところが今度2016年から17年にかけて、ここは大幅に、かなり大きな改善をしてきているというのが見て取れます。あと、一番右にあるオーディオですけど、これもずーっと下落してきたのが2017年には下落の傾向が止まって、まあ前年を維持するぐらいの生産数量になっているというふうなデータになっています。次お願いします。

 これもいつも、うちの部会の恒例なんですけども、売上高、前年に対して今年はどうでしょうかと、こういうふうなアンケートをしていまして、パーセンテージで何%増えますか、何%減りますかというふうな形でアンケートお答えいただいているんですけども、昨年の8月の時点で2017年どうなりそうかという質問に対して、一番上に書いてありますけども、14社から回答をいただきまして、改善するだろう、10社、72%。維持レベルであると、7%。まだまだ悪化していると、21%。こういうのが昨年8月時点での17年の展望でした。これ、17年実際に締まってみて、結果はどうでしたかというのが今回のアンケートの結果になるわけですけれども、17年に関して言うと、良いニュースでとしては、悪化するだろうと、3社なんですけど、この割合が減っていると。で、改善がちょっと減っているんですけれども、実はこれ、100%から109%という前年比のものは維持というところに入れていますので、まあそういった意味で言うと、概ね良くなっているというふうに見てとれるかと思います。

 一方で今度、18年はどうでしょうということに関しては、ここにありますように改善9社、維持3社、悪化はゼロというふうになっていますので、かなり、今年に関して言うと昨年よりは期待できそうだというふうなのが全体のコンセンサスになっているというふうに見て取れます。次お願いします。

 この辺の、17年どうだったか、18年どうなりそうということに関して、色んなコメントをいただき、また色んな議論をしたんですけど、それをまとめたのがこのチャートになります。

 まず17年の回顧について。マイナスというのはこれはネガティブな側面、プラスがポジティブ。プラスマイナスと書いてあるのはですね、ネガティブ、ポジティブどっちにも転び得るような要素であり、変化であるというものをここに類別しています。

 まずネガティブな方ですけど、これは色々すでにコメント出ていると思うんですけども、産業系の投資、公共投資、この辺の停滞がずっと続いていたと。ラバ・ジャットの影響もありましたと。あとは、特需の減少。これは2016年が実はオリンピックの年で、オリンピックの年にあわせて結構色んな特需があったと。17年はなかったということで、そこがマイナス要因になりましたと。あとは、自社の状況以上に取引先の経営困難、例えば資金難によってものが買えない、信用が縮小している、こういったところで中々ビジネスがうまく回っていかないと。こういったところにネガティブな要因があったと。

 ポジティブな方ですけれども、一般耐久消費財、この辺のビジネスに関しては底打ちから回復というのが非常に鮮明になってきたと。為替が安定し、金利の低下によって、そういうところで事業の機会というのが増えてきたということ。それからあと、電気電子部会の中でも結構自動車関連で色々商売があるということで、先程自動車の部会の方からも報告あったと思うんですけど、自動車が回復してきているということで、ここもやっぱりビジネスオポチュニティとしてかなり大きく回復しているというのがポジティブな要因。それと、自社努力の成果。これはリセッションを機に、あるいはリセッションの前から、数に頼るのではなくて、商品力ですとか、コスト体力の強化、販売戦略の刷新、新規ビジネスへのチャレンジ、あるいは輸出にもっと力を入れてみるとか、各社さんが色んな努力をされている訳ですけれども、そういった努力が、2年3年やっている中でどんどん花開いてきているといったこと。それとあとは、需要がある程度回復してきたのにあわせて、投資の再開ですね。増産の対応ですとか、新規ビジネスへの投資、こういったものに対して積極的に取り組むようになってきた。こういったことが挙げられています。

 最後のプラスマイナスですけれども、競争というのが再開されてきたと。今まではみんな、各社ひーひー言っていて人の事なんか考えていられないという感じだったんですけれども、マーケット環境というのが正常化してくると、競争環境というのがまた元に戻って来ると。まあいい意味で言うと市場が活性化している。悪い意味で言うと収益にはインパクトがありますねということで、そういう意味でプラスマイナス。それから、景気回復後の成長シナリオが不明。これは、1%の成長、2%の成長というと、成長はしているけれども、普通はこれ低成長って呼びますよねと、この先どうなるんでしょうねといったところ。それと、あと、顧客企業の事業モデルが変化していますと。これは、リセッションを機にということもあるんでしょうけど、先程もビジネスモデルの変革みたいなことがいくつかコメントで出ていたと思うんですけど、そういったことが色んなところに起こっている。ハードからソフトへ、あるいは、今まで長く取り引きをしていた取引相手でも、まあマルチベンダー化をしますだとか、色々こう、経営上の工夫というのが変わってきているといったことが挙げられます。あとは、結構大きく伸びているのがこのEコマースですね。このEコマースがどんどんどんどん拡大してくることで、流通業界の構造が大きく変化していると。これにどういうふうに対応しなきゃいけないのかというのが結構大きな課題になってきたということです。次お願いします。

 2018年、展望としてのコメントを同じようにまとめてみました。ネガティブな領域としては、まあこれは引き続きなんですけれども、産業投資、それから公共投資、この辺の回復がまだまだ遅れていて、これがぐーっと回復してきたなという実感がまだないということです。それから、グローバルボラティリティに関する懸念というのがあるんですけれども、昨今、為替がものすごく変化している時というのは、実はブラジルの要因じゃなくて、トランプさんが何かやったとか、中国で何かが起こったとかいうので結構荒れる領域があって、そういったところに引っ張られる、こういうところの不透明感があるということ。それから、EPAの話がさっきから出てたと思うんですけども、もちろん日本もこれからメルコスールとの間でEPAの話というのは色々進んでいくんだろうなという期待はあるものの、一方でやはり他の国を見てみると中国、フランス等々、こういったところはすでに色んなことを始めているという中で、非常に危機感は強いということです。

 プラスの領域で言うと、景気の回復というのは継続するだろうし、物価、為替というのもそれほど暴れないんじゃないかというふうな期待があると。それから改正労働法、これは間違いなく色んなメリットをもたらすだろうという期待があります。それから自社努力の継続。まあこれは色んな工夫をしながらやってきたものというのも努力を継続・拡大していると、そこに対して結構自信が出てきている、といったところがプラスの面ですね。

 プラスマイナス、両面あるところなんですけれども、まず大統領選挙。これはあらゆる部会の会員の方が全て大統領選挙だと。まあ皆さんもここにいらっしゃる方は皆そうだと思うんですけれども、一体どうなっちゃうんだろうと、これが一番気になると。それから年金改革の行方。こういうのによってはプラスにもマイナスにも転びますよと。それから、今年はワールドカップの年になります。ワールドカップの年になると、家電製品、特にテレビなんかがワーッと売れるんですけれども、まあそういった需要拡大というプラスの面もあるんですけど、一方で、需要拡大をねらった各社の動きというのが激しくなりますので、そうするとマーケットが乱れると。それが最後、過剰在庫につながったりするとマイナスの面もあると。こういった面も含めて、ワールドカップはオポチュニティであり、リスクであるという認識をしているということです。あとは事業環境変化、ここにどう対応していくのか。特に顧客、それから取引先、こういったものはずいぶん変わってきているんだということを認識しながらやっていく必要があるだろうということです。

 サマりますと、市場回復の速度、度合い、これは電気電子部会の会員の中でもですね、事業領域や商品カテゴリによってまだまだ差があると。特に産業用、公共投資、このへんはまだ厳しい状況から脱したとは言い切れないなということです。それから、景気回復の流れの中でですね、事業規模を再拡大、もう一回元に戻していくんだという、こういったところへの準備を、あまりおっかなびっくりじゃなくて、しっかり進めようというふうに変わってきているのかなということ。それから、リセッションの時から取り組んできた、市場の量的な拡大に頼るのではなくて、差異化ですとか、新規事業、体質の強化ですとか、こういったところをよりどころにした事業運営を維持強化していくと。あと、事業環境の変化ですね。これを見定めた事業展開というところを留意しながらやっていかなきゃいけないだろうと。で、最後になりますけど、大統領選挙、年金改革、これは懸念ですといったところになります。

 今回いただいたシンポジウムの副題、「いま求められる新たな視点は」ということについてなんですけど、中々これ難しいんですけど、中で出たポイントとしては大きく分けると二つあります。一つは IT通信環境っていうものの進化、それから急拡大の中で、特にこれの影響で市場の質的な変化というのが起きていると。消費者のITリテラシーというのが非常に高度化しています。非常にお客様は賢くて、お店に行って店員の意見を聞いてものを買うなんていうことはなくて、自分が欲しいものなんていうのは、インターネットに行って検索をして、アメリカでいくらの値段で売っていて、じゃあブラジルの中ではどこで一番安く買えるんだろうと、そういったことをあっという間に調べますし、じゃあこの商品本当に良い商品なのか悪い商品なのかというのに関していうと、あらゆる口コミのデータというのを駆使して、やっぱり私はこれを買おうということで、非常に賢い消費者という、今までと全然違った消費者の像になってきているといったこと。それから、Eコマースが拡大していて、このEコマースと、それから既存の店売りですね、こういったものとの間でどういうふうに我々の商売を組み立てていかなきゃいけないのかということをよくよく考えなきゃいけない。それから、特にIT通信環境の変化の中で、広告、プロモーション、それから顧客へのアプローチの手法というのがやっぱり大きく変わってきているということをよく認識する必要があると。それとあとは、企業間の情報連携、コミュニケーション、こういったもののあり方というのも大きく変わっているということを認識する必要があるだろうと。この辺を含めて、特にIT通信環境、この変化を見据えて、これにどう対応していくかという、そういう視点が必要だろうというのが一つ。

 それから、IT関係にも関連するとは思うんですけれども、やはり技術革新のスピードがものすごく速くて、電子化、ソフト化、IoT、それからAI、ロボテクスと、色々話題になってきているものというものが、まあぼんやりしているとあっという間に世の中に広がってしまうと。こういったところに対してもアンテナを高くして、早い対応をしていくということが必要だというふうな話が出ています。

 最後、商工会議所、ブラジル政府、日本政府への要望ということになります。これも前回とあまり変わってはいません。特に一番下の項目ですね、日本メルコスールEPA締結の動きというのがある中で南米周辺国との輸出入拡大に向けた手続き、税制の改革、体系的な取り組み。先程もあったんですけど、中国、フランスのような官民一体となったような取り組み、そういったものにやっぱり負けないようにしないといけないよねといったようなことが挙げられております。

 最後になりますけれど、私ごとなんですけれども、私も3月末でブラジルを去ることになりました。3年半色々とお世話になってありがとうございました。ブラジルはですね、難しい国だし、色々面倒くさいこともあるし、何よりも日本からすると地球の裏側というのもあって、中々積極的にやろうかなっていう気になりにくい。しかもつい最近までリセッションとかあったりしまして、中々、だから皆さんも日本の本社に対してブラジル一生懸命やろうよって中々苦労されているところあると思います。私もそうでしたけれども、なんですけれども、やっぱりこう、3年半やらせていただいた中で言うと、この市場は非常に大きいし魅力的だし、何よりもブラジルっていうのは日本とか日本人が大好きな国なので、そういったことも含めてですね、本当に可能性の大きいマーケットだと思いますので、リセッションもあってこれから上昇気流にあると思いますので、皆様ぜひ、がんばってください。皆様の成功をお祈りしております。どうもありがとうございました。

 

司会

 千野部会長、示唆に富む新たな視点、そして要望ですね、いただきましてありがとうございました。ただ今の発表につきまして、ご質問のある方、挙手をお願いできればと思います。挙手をよろしくお願いいたします。はい。マイクお願いできますか。

 

質問

 お世話になっております。日本経済新聞の外山です。2点お願いします。1点目が、Eコマースの伸長のところなんですけれども、去年アマゾンが参入して、大分何かこう、地元メディアなんかを見ていると、ブラジルでもついにE-commerceが盛り上がっているという話を聞くんですけれども、メーカーさんから見てこのブラジルにおけるE-commerceというのがどの程度インパクトがあるものなのかというのをですね、ちょっと教えて下さい。あともう1点、中国、フランスの官民一体となった活動とあるんですけど、これって具体的にどういうことを彼らがやっているのかというのを、よろしければ教えていただけますか。お願いします。

 

千野部会長

 まずE-commerceについてお答えしますと、アマゾンの参入というのは確か去年の年末ぐらいに発表されたと思いますね。ただ、実はアマゾンが来る来ないにかかわらずですね、ブラジルってすでにE-commerceは、一つはメルカードリブレ、それからブラジルの中にあるB2Wですとか、一般の家電リテーラーが持っているE-commerce、こういったものがもうかなり大きくなっています。なので、実際にアマゾンが入ってきて、彼らに勝てるのかというようなところの方が正しいんじゃないかなというふうには思います。もう一つ、これですね、中国、フランスの取り組みなんですけど、これはですね、確かNECさんのコメントだったと。今日NECの方ってどなたかいらっしゃいますか。いないか。すいません、別途、

 

質問者

 では別途、NECさんにまた取材します。ありがとうございます。

 

司会

 よろしいでしょうか。他に質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。はい。それでは電気電子部会の発表は以上とさせていただきます。千野部会長、どうもありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、食品部会の発表に移りたいと思います。黒崎部会長より発表をいただきます。黒崎部会長、よろしくお願いいたします。

 

食品部会

黒崎正吉 部会長

                    

 食品部会、味の素の黒崎でございます。よろしくお願いいたします。

 本日はこの大きな3つの流れでご報告させていただきたいと思います。

 まず最初に、食品部会、会員企業42社ということでございますが、こちらにございますように、業種といいますか、主な商品ですね、今回ちょっと挙げてみました。皆さんにご覧いただこうと思いまして。ご覧いただいていますように、コーヒーから、お醤油から、即席めん、あるいは調味料、あるいはお酒類、あるいは外食というふうに、各メンバーですね、それぞれ様々な事業状況を抱えている中で、それぞれのストラテジーでやっている企業の集まりでございます。したがいまして、会議の時に議論は活発でございますけれども、中々、この手でいこうとか、この1本で行こうみたいなのは難しい、まとまりにくい部会のひとつかというふうに思っています。ただ、ところが、会議が終わりまして懇親会に行くとあっという間に一本化するという、たいへん元気の良い部会かというふうに思っております。本日はこれまでの流れとちょっと変えまして、今までよりも、そういったことですので、各食品部会企業の取り組みの事例を少し挙げていきたいなというふうに思っています。とはいえ、まず市場の状況ですね。どういった状況かというところから入らせていただきます。

 こちらがですね、ブラジルスーパーマーケット協会のデータなんですけれども、こちらにありますのは、16年度から17年度にかけてスーパーマーケット、まあ我々の主戦場なわけですけれども、緩やかな回復傾向が継続しているということですけど、17年年度に入って、正直言って、こういう回復傾向にあるなというのは私などは感じ始めたというのが実態でございますが、今後もスーパーマーケット全体としては18年度以降も回復していくだろうというふうに見ております。ただしこれは、食品に限らず、電機、あるいは衣料といったトータルですね。皆さんご存知のように何でも売っていますので、こちらのスーパーマーケットは。そのトータルでの伸びということでございます。ただまあ、良い傾向ということでございます。

 じゃあ食品、あるいは飲料といったところはどうなんだろうかと。これはニールセンのデータでございますが、こちらにありますように、ちょっと読ませて頂きますが、食品、直近4半期にて、7割を占める主食の出費節約が要因で、伸長率はまだ下落傾向と。ところがコーヒー、チョコレートの主力嗜好品、これ本当にブラジル人の消費者の方にとって嗜好品と言えるのかどうか分かりませんけども、生活必需品に近いのかもしれませんが、こちらは増加しておりますと。ところが、高価格のヨーグルトは大きく下落、例えばですね。

 かたや飲料。直近の4半期にて6割を占めるアルコール飲料は下げ止まり感があると。ただこれはビールを中心にして、まあ下げ止まり感がある状況。ただし、高価格のものはまだ下落しているというのが状況でございます。非アルコール飲料、特に炭酸飲料ですね、これ継続して下落していると。

 これ、我々のスーパーでの食品・飲料の実感とは若干、トータルとしてずれているような気がするんですが、よくよくこれ、見てみますとですね、どういうことが言えるかと。全体としては落ちているんですけども、高価格品が軒並み落ちているんですね。ところが、低価格品は伸びていると。その足し算がまだマイナス基調であるというのがどうも実態のようでございます。高価格品、まだまだ厳しいぞと。低価格品が今伸び始めていると。でも、よくよく見ますとですね、じゃあ低価格なら伸びるのかということでございますけれども、それもそうではなくて、消費者の目はより厳しくなってきていると感じています。低価格、というよりも、やっぱりそこにきちんとした価値がある。つまり、消費者の方が、買いたいよと、買えるよと、これアベイラブルな価格というふうにちょっと言わせて頂きますけども、低価格というよりも、アベイラブルな価格、そこにきちんとした消費者の方が求めて頂く価値があるというところが、伸びている要因と。あとでまた出てきますけども、トータルとしては伸びていくだろうけど、この傾向は続くのではないかなというふうに見ております。

 それでは、先ほど申しましたように、食品部会のそれぞれの企業、業種での17年度の市場動向のポイントと、会員企業の状況ということで、簡単にご報告いたします。

 調味料。これはまあ弊社のことですけれども、市場はやっぱりアベイラブル、あるいは低価格な粉末調味料が伸びているんですけども、高価格な付加価値型のメニュー用調味料ですね、は大きく下落していると。だからまだ、そこまで価値を認められていないということだと思います。弊社の場合も、まあ市場以上に汎用性のある粉末の調味料は伸びておりますが、やはりメニュー用調味料は大きく落としているといったような状況ですね。

 酒類。東麒麟ですね、銘酒東麒麟。中々やっぱり、辛い状況がここ数年続いておりましたが、やっぱり17年度、東麒麟さん手を打たれて、売上は前年並みで着地の見込みと。今後さらに新たな手を強化していく状況ということでございます。

 コーヒー。豊作で、原料相場は軟化に転じていると。日系会員企業の方は、価格競争に入らないようにどう付加価値型の商品開発をして打って出るかということを準備されている、あるいは新たにスタートしているという状況です。

 チョコレートについては、13年以降ずっと落ちてきていましたが、ここに来て18年以降も増加傾向というのが見て取れます。

 即席めん。市場がシュリンクしましたけれども、会員企業は売り上げ増という中でシェアアップと。

 あと、食肉ですね。こちらについても、日本への輸出だけではなくて、今後どう販路を広げていくかという検討に会員企業は着手しているという状況でございます。

 ひとつにまとめるのは難しいんですけれども、市場の現状・今後と。現状は先ほど申し上げた通りです。いかにアベイラブルな商品、価格、そしてそこに、より見方が厳しくなっている消費者の方に価値を認めてもらえるかといったことが必要になってくるということでございます。で、2)の今後でございますけれども、景気全体の緩やかな回復に伴い、下げ止まりつつある食品・飲料への出費は徐々に回復していくものと、我々はある意味楽観的に見ています。ただし、先程来出ていますけれども、大統領選の結果、あるいはそれと連動して失業率がどうなっていくかといったところが、我々の業界にとっては非常に大切なポイント。やっぱり我々は、失業率でいいますと、要は胃袋の数で勝負をしていく、胃袋の数どれだけとれるかということでございますので、やっぱり失業率も大きなポイントとなってくるということでございます。

 これから求められるキーワードということでございますけれども、そういった中で、とはいえ、我々食品部会、一つは先程来申しましたアベイラブルな価格ですね。提供可能な製品のさらなる強化。もうひとつは、スペシャリティーの追求と提供ということかと思います。このスペシャリティーも、まあ簡単に言いましたら、付加価値。しかも、消費者の方に受け入れられる付加価値ということになってくるかと思います。はい。お願いいたします。

 それでは、最後の副題でございますけれども、今回はそういったことで、まあスペシャリティーの強化。あるいは、二つ目は、将来に向けた事業インフラの強化といった視点で、会員企業でのですね、既に始まっている取り組み、あるいはこれからやろうとしている取組みについてご紹介をさせて頂きたいと思います。

 まずこれ、スペシャリティーの強化のところですけれども、酒類、これは東麒麟さんですけれども、やっぱり高価格の東麒麟、高品質で苦労されていましたが、新製品が登場しております。スパークリングサケと、3種類ございます。こちらはアベイラブルな価格のカテゴリで、非常にスペシャリティー、付加価値をもった商品ということでございます。これをエリア限定で発売が開始されているということでございます。ちなみに、Made in Japanさんですか、私土曜日毎回、単身ですのでそこで食品を調達するわけですけども、Made in Japanさんにもございます。売上好調でございますので、お寄りの際にはちょっとお試しください。たいへんにおいしくございます。

 二つ目の例でございますけれども、スペシャリティー。これはおしょうゆ、キッコーマンさんの例ですが、これはやはり、地場の低価格の商品に対抗するのが非常に常に厳しい状況があるわけですけれども、要は価値を認めてくれる層を見極めるということと共に、こちらにラーメン専門店、居酒屋等々ございますけれども、皆さんご存知のように、ブラジル、サンパウロのラーメンの質は本当に高いですよね。世界的に見ても。そういった中で、やはり価値の天然醸造を認めてくれるところへの納入。それにとどまらず、開店、あるいは原料対応等ですね、サポート、ソリューションをしていってスペシャリティーを作っているという例でございます。

 さらに、先ほどございましたコーヒー、価格競争に入らないぞと、一部入らざるを得ない部分はございますけれども、そこでスペシャリティーをどう作るかということで。これは三井アリメントスさんの例でございますけれども、3種類のカプチーノということで付加価値型商品を強化していくという例でございます。

 あと四つ目、これ、食品添加剤、ナガセさんの例でございますけれども、景気低迷中の顧客への提案を通じた機能訴求を継続してきたという中で、トレハロースという素材でございますけれども、それが甘味料ですね、の味覚、糖質を、トレハロースの技術によってより砂糖に近づけていくということで、いま顧客が増大しているという状況でございます。これもスペシャリティーの例かと言えると思います。

 最後のポイントでございますけれども、一応ここでは将来に向けた事業インフラの強化というふうに銘打っていますが、これからのチャンスに備えて、既に打っている手を強化する、あるいは新たに手を打っていくということの例でございます。

 こちら一つ目は、キッコーマングループさんの例でございますけれども、JFCですね。USAを、15年からこちらにキッコーマングループさんとして導入されて、しょうゆだけに限らず、ソリューション提供ができるように、色んな商品をそろえていくという手を打っておられまして、これをさらに強化していくという事例でございます。

 2)は、これはヤクルトさんの事例ですが、2018年にこちらでの創業50周年ということでございますけども、彼らの販売手法というのはひとつのスペシャリティーでもあり、強い事業インフラですね。それをさらに強化していこうという取組みを始めていらっしゃると。

 食肉。NHフーズさんの例でございますけれども、先ほど申しましたように、日本のみではなく、輸出先をですね、ラ米に販売エリアを拡大していく準備をしていくという状況でございます。

 最後は高砂香料さん。これもナガセさんの例ですけれども、こちらも販売地域の拡大ということを取り組んでいるということでございます。

 各社各様でございますけれども、いずれにしてもこのチャンスをどうつかむかと。出遅れてはいかんと。機において敏にいくということかと思います。さらに申せば、この機に、事業ポートフォリオ、あるいはプロダクトポートフォリオのですね、さらなる進化というか、あるいは転換みたいなこともですね、これから食品部会各社にとって重要なポイントになってくるのではないかというふうに考えております。以上でございます。

 

司会

 黒崎部会長、どうもありがとうございました。ただ今の発表に就きまして質問のある方、挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。化学品部会では、例えば、許認可プロセスの簡素化・迅速化とかですね、輸入ごとの品質検査の簡略化とか、そういった要望が出ていたんですが、その辺がネックになって、食品部会の方ではそういった話というのはございますでしょうか。

 

黒崎部会長

 基本的にはですね、似ていると思います。同じような課題は各社抱えていると思います。Anvisaとの対応をどうしていくのかとか、そういったことも、我々が事業を拡大していく上で重要なポイントになってくるし、色んな規制がやはりございますのでね、それをどう解決していくかというのは常に各社抱えている課題です。

 

司会

 はい、ありがとうございました。他に質問のある方、いらっしゃいますでしょうか。後ろの方、一人、お願いいたします。マイクお願いします。

 

質問

 すいません、キャノンの大沢と申します。宅配のところでですね、宅配に関する物流に関してはどういうふうに考えていらっしゃるのかなと思いまして。先程アマゾンの話もありましたけど、彼ら最初、オンラインのブックスで来て、それでやっぱり実際のものとしては物流が悪いということで、参入を大分遅らせているんですけど、このブラジルの物流網というのをどういうふうに考えられて、強化したいと。

 

黒崎部会長

 ひとつは、やっぱり広大な国であると。そうなので、例えば弊社の場合、やっぱり物流をどう効率化していくか、しかもそのコストを下げてどうやっていくかというのは、もうずっと課題です。あともう一つありますのは、弊社の場合も今後Eコマースをどうやっていこうかというのは当然検討をしておりますが、要は、物流効率、あるいはこんだけ広いところでということで考えた時、あるいは原料の物流インフラみたいなのを、ブラジルのですね、考えた時に、ここは手は打たなきゃいけないんだけれども、そうそう簡単にはですね、他の国みたいにはいかないのではないかなというのは、私の個人的な感想と今の見方です。ただ、これは必ず準備をしていかなければならないと、Eコマース対応ですね、というふうに思っております。

 

質問者

 ありがとうございました。

 

司会

 ほかに質問ございますでしょうか。それでは、食品部会の発表は以上とさせていただきます。黒崎部会長、どうもありがとうございました。

 それでは引き続きまして、運輸サービス部会の発表に移りたいと思います。今回は矢澤部会長より発表をお願いしたいと思います。矢澤部会長、よろしくお願いいたします。

 

運輸サービス部会

矢澤吉史 部会長

                    

 こんにちは。今年ですね、運輸サービス部会長を拝命しました矢澤と申します。よろしくお願いいたします。NTTがなぜ運輸サービス部会かと、ちょっと違和感があるかと思うんですけど、我々もデータの運び屋ということで、運び屋仲間ということで、運輸サービスの部会の方に入れてもらっていると思っております。よろしくお願いします。

 実はですね、運輸サービス部会は業界的には6つに分かれておりまして、まず物流、航空貨物、海運、航空旅客、ホテル・旅行と、我々ITということで、非常にですね、コングロマリットのような様相を呈しております。今回ですね、発表資料の方も各業界のチームの方に作っていただきまして、質問の方もですね、各業界チームの方にお答えいただくということで、ご了承いただいております。それでは発表に入らせていただきます。

 まずは物流になります。ブラジルのメインの貿易港でありますサントス港が、17年ですね、1年間に扱った貨物の量は、輸出・輸入ともに前年度を上回っております。輸入貨物は、肥料、軽油、そして肥料に使われる硫黄の扱い量がですね、上位を占めているという状況でございます。輸出貨物はですね、とうもろこし、大豆など穀類と、砂糖、これら3品目で扱いの量は輸出貨物の全体の6割を占めているということでございます。

 展望でございますけれども、昨年下期より開始しました税関ストライキが、まだ現在も続いております。今後も注視が必要ということでございます。特にですね、書類監査扱いや検査扱いの場合は通常よりも許可が非常に長いということでございます。

 昨年ですね、景気低迷により駐在員の数が減っているということでございますけれども、海外引越荷物を見る限りでは増加傾向に転じるということでございます。

 トピックスでございます。昨年より木材の規制、特に梱包資材等で使われる木材の燻蒸規制、これは病害虫の侵入や蔓延防止が目的ですが、強化されております。規制に従わない場合は、輸入手続きができず、戻しを命じられるという状況でございます。注意喚起をお願いいたします。

 続いてですね、航空貨物でございます。輸入・輸出ともにですね、ブラジル全空港の70%の取り扱いをするグアルーリョス、あとビラコポスの輸出入統計を見ますと、輸入が対前年比が22.5%増、輸出は対前年比7.9%増となっているようです。輸入はですね、2014年水準に近く、輸出の方はその水準を超えているとなっております。

 展望でございますが、景気上昇により、原材料を含む物品の輸入が伸びると思われます。一方でですね、輸出・輸入ともに、需要増によるスペース不足や、運賃の上昇が懸念されております。

 トピックスでございますけども、空港インフラのですね、拡充が進んでおります。民営化、すでになっているものは、左の方ですね、青の字で書いてございますけども。右側の方ですね、今年の民営化が入っております。サルバドール、フォルタレーザ、ポルト・アレグレ、フロリアノポリスという空港4つですね、民営化対象となっております。

 次はですね、海運になります。ブラジルに最も関係が深い3つの船ですね、コンテナ船と、自動車船、ばら積み船に分けて見ていきたいと思います。

 まずですね、コンテナ船ですけども、市況は世界経済の回復に伴う荷物の増加が、世界全体でプラス4%となっています。これにより運賃水準は回復傾向にありますが、大型新造船投入による船腹供給も出ており、全般的には運賃は上がりにくい状況が続いていますと。グラフが小さくて申し訳ございませんけども、左下でございます。前年同期比で輸入がプラス13%弱、輸出は前年並みでございます。

 世界の主要コンテナ船は、船腹供給過剰が続いていますので、コスト競争力を強化する目的でM&Aやアライアンス再編に向けた動きが続いていると。で、赤字で書いてございますけれども、邦船では日本郵船、商船三井、川崎汽船様ですね、3社がコンテナ部門を統合し、新会社のONE、Ocean Network Expressをつくりましたと。2018年4月よりサービス開始を予定しています。

 グラフの真ん中になりますけども、自動車船でございます。昨年末よりですね、回復の兆しがございますけども、自動車販売数にしても数字で表れているかと思います。しかしながら、今年は概して、国内需要の低迷から、各社メーカー様は輸出に比重を置き、貿易実績にもその数字が顕著に出ているということでございます。特にトラック・バスを含めた完成車は、輸送は輸出がアルゼンチン向けを中心に前年比でプラス48%と大きく躍進する一方で、輸入はマイナス10%と、基本的にはアルゼンチンとかですね、輸出・輸入のアンバランスが大きくなっているということでございます。極端に言うと、アルゼンチン向けはマンパンで、ブラジル向けはガラガラということでございましょうか。

 次ですね、右下のグラフでございますけれども、ばら積み船でございます。今年はですね、世界経済の回復で荷動きがプラス5%の見込みとなっております。特にQ4は、中国ヨーロッパを中心に鉄鉱資源等の需要が伸びていまして、17年全体の輸送需要を大きく支える結果となっているようです。17年のブラジル全体のばら積み船の値動きは、鉄鉱石を中心に前年同期比で、輸出がプラス8%弱となっております。

 18年の海運ですが、同じく3つの船に分けてお話いたします。

 まずコンテナ船につきましては、荷動きは、欧米経済が個人消費を中心に好調を維持しています。ブラジルの成長鈍化の懸念はあるんですけども、中国の景気も後押ししまして、全世界でプラス4%の増加が見込まれています。一方で、船腹供給量も4%程度ですね、増加が期待されていまして、運賃はこれも上がりにくいという傾向でございます。

 自動車船ですけれども、輸入・輸出量のアンバランスな構図は変わりません。ブラジル・アルゼンチンの貿易においては、二国間協定の縛り、すなわちですね、完成車・自動車部品の輸出価格がブラジル 1.5に対してアルゼンチン1.0、輸入税回避のため輸出・輸入量の調整が検討される可能性があります。全体ですね、輸送需要としては、アルゼンチンを中心に南米全体へ販路拡大も含めて、増加と見込んでおります。

 ばら積み船については、中国を中心に引き続き貨物輸送の需要が伸び、新造船投入による船腹供給も緩やかな伸びに収まると見込まれているということです。

 次ですね、まあ我々駐在員にも一番なじみがある航空旅客になります。

 まずはですね、ブラジル国内線。有償旅客キロですけども、対前年比プラス3.0%、提供座席キロについては対前年比プラス1.2%、利用率は1.4ポイント上昇しまして81.3%と、年間を通して堅調な実績を維持しています。

 国際線に関しましては、ブラジル系の航空会社の累計ですけれども、有償旅客キロは対前年比プラス12.2、提供座席キロは対前年比プラス10.5、利用率は1.3ポイント上昇して85%となっております。旺盛な需要が続いているということだと思います。

 世界的にもですね、日本への観光が注目されています。ブラジルからの訪日数も、日本の政府の統計データによりますと、対前年比で18.2%と伸びてはいるんですけども、規模の方はまだ月3500人程度ということでございます。

 見通しでございますけども、国内線は17年に続き緩やかに回復すると思われていますけども、昨今話題になっています大統領選の影響で旅客移動の鈍化が懸念されます。

 国際線はですね、16年のリオ五輪の以降、運休や減便、または撤退が相次ぎましたが、18年はですね、LATAMによる新航路の開設、エミレーツの増便など、路線拡充の動きが活発化しているということでございます。

 また今年はですね、日本人移民の110周年でございます。記念行事等でブラジル=日本間の旅客の流動が増えると思われています。また、アルゼンチンではG20やユースオリンピック等の政治面・スポーツ面での大きなイベントが開催予定ですので、こういったところの南米全体への航空需要も増えるという期待がされます。

 特記事項が2点ございます。1点目ですけども、サンパウロ市内とグアルーリョス空港ですね、アクセス鉄道、2018年3月末、今月末ですね、もしくは4月初旬に開業する予定。あくまでも予定だと思うんですけども、となっているようです。ちなみに、ルス駅=空港間の直通電車もあり、所要時間の方は35分となっているようです。

 2点目でございますけれども、アメリカのボーイング社によりますエンブラエルの買収報道がありましたが、ブラジル政府は容認しない姿勢を示しているということでございます。参考までにですね、日本のエアラインによるエンブラエル機保有機数はですね、2018年1月現在でございますけれども、日本航空グループ 29機、フジドリームエアラインズ 11機で合計40機となっているようです。

 次はですね、ちょっと各スライドを見てまいりますけども、これが先ほど話しました空港アクセス鉄道になります。エンジェニェイロ・ゴウラールからグアルーリョスの間に作られますと。CPTM 12号線のブラスから直通運転され、繰り返しになりますけど、ルス駅と空港間では直通運転も1日数本あるようです。ただしですね、懸念事項ですね、空港駅はターミナル1の近辺にありまして、ターミナル2、3を含めてですね、巡回バスでの移動となるようです。時間は書いていませんけども、徒歩も可能と書いていますね。

 次はですね、ブラジルの国際線の月別の輸送実績になります。17年においては、最も多い月は12月と。1月は前年割れでしたけども、2月以降は全て前年実績を上回っている状況でございます。

 次はですね、ブラジルの国際線のエアライン別の輸送実績です。ブラジルをだいひょうしますLATAM航空ブラジルが圧倒的に強いと。GOLも年々伸ばしている状況でございます。

 次はですね、ブラジルと、2国間ですね、2国間の輸送実績でございます。最も需要が多いのはやはりアメリカでございますと。全体の20%を占めている状況で、ヨーロッパもですね、基本的には移民政策等の背景もありまして、輸送実績は比較的大きいということでございます。

 次はですね、国際都市間の輸送実績になります。サンパウロ=ブエノスアイレスが最も多く、南米域内でも最大の高需要路線ということでございます。

 次はですね、ブラジル国内の月別の輸送実績でございますけども、ドメスティック、一番需要が多いのは、月は1月でした。1月から2月は前年実績を下回っていますし、3月以降は前年を超えているという形かと思います。

 次はですね、ブラジルのドメスティックのエアライン別の実績でございますけども、実績では、GOLですね、GOLが一番多いと。LATAMもほぼ拮抗している状況でございます。

 航空、最後のページは、ブラジル国内都市間の輸送実績でございます。サンパウロ=リオデジャネイロの需要は非常に旺盛で、国内路線の8.7%でございます。以上が航空旅客でございました。

 次はですね、ちょっと字が小さくて申し訳ございません。旅行・ホテル業界でございます。

 17年はですね、国内線・国際線ともにですね、航空券の発見枚数、売上においては前年比で大きな伸びがありました。特にですね、国際線においては発券枚数がプラス25%と。売上高は22%と大きく改善しています。

 国内ですね、ホテルの方ですけども、前年比で売上がマイナス5.3%でした。このマイナス要因の大きな理由は、客室占有率は前年比1.7%で高いんですけれども、客室のレートですね、平均レートがマイナス6.9%下ったことが原因と言われています。

 展望でございますけれども、ブラジルの景気回復に伴い、航空券ですね、国内・国際ともにより一層改善することが期待されます。

ホテルでございますけども、同じくブラジル主要都市における客室占有率はさらに改善が見込まれているという状況でございます。

 18年はですね、平昌五輪、今月はパラリンピックが控えていますけども、また7月にはロシアでサッカーのワールドカップの開催があります。まあこれに関しましては、ブラジルからわざわざ観戦に行く人はほぼいないだろうということで、日系旅行社、これらのイベントの恩恵うけることはないということが書いてあります。あとですね、今年は、繰り返しますけどもブラジルの日系移民110周年記念と。記念行事が7月の日本祭りで開催されます。日本政府、あと官公庁から多くの来賓が見込まれているようです。

 あとですね、出稼ぎ関連ですね。ここ数年、ブラジルの不景気とですね、日本の好景気でですね、かなり出稼ぎが増えているということでございますけども、この傾向は18年も続くということでございます。また、日系四世ですね、の就労・在留についてのですね、意見公募が先月をもって終了し、年内に日系四世を対象にした査証発給ですね、新しい基準ができれば、さらに日本への出稼ぎが増えるという見込みが伝えられています。

 ブラジルの景気が回復基調ではあるんですけども、日系進出企業様の拡大がすぐには期待できない状況の中で、今年も狭い日系マーケットの中でですね、10数社あります日系旅行代理店さんですね、わずかな手数料や、IATAが定めた、支払期日よりも長い期日をオファーするような、健全とは言えない条件でお客様の争奪戦が展開されているようです。旅行代理店様の経営状態はさらに難しくなると、様相を呈しているということでございます。こういった状況下では、やはり各社がですね、新サービスや新しい商品で差別化を測っていくことが大事かなと思います。

 トピックスは2点ございます。1点目ですけども、まずですね、2018年1月12日よりですね、ブラジル政府が日本国籍者に対して、観光と商用に限り、インターネットによる電子査証ですね、e-VISAの発給を開始しました。従来通りブラジルの領事館でも申請も可能でございますけども、大きな違いは、e-VISAは2年間有効期間ですね、領事館の発行のものは3年間ということでございます。

 2点目はですね、昨年11月に新移民法の施行令第9199号が発布されましたと。新移民法の運用がすでに開始されているということでございます。

 やっと最後に、ITになりました。まずはですね、携帯モバイルでございます。全体的な契約者数は、長引く景気の低迷もありましてですね、キャリア間の接続料金値下げ。あと、複数SIM保有者の減少が続いて、17年下期で約700万減少しています。しかしながら、4Gですね、に関しましては、2G、3Gからの以降が順調に進んでいまして、前年比で70%増加。ブラジル市場の43%を占めていると。3Gの契約者数を完全に超えました。

 展望としましてはですね、話題に出ていますIoTですね、M2Mではですね、Narrow Band IoT、これ簡単に言いますとですね、家電やセンサーにつける広帯域を必要としない、いわわゆるLETですね、のチップですが、その許認可が、18年上期、もうすぐ下りる予定だということでございます。このNarrow Band IoTを使いますとですね、モバイル課金ですとか、決済ですね、スマートフォンを利用したサービスがさらに増加していくというふうに見込んでいます。まあこういった状況の中で一歩一歩、前回のITセミナーでも申し上げたとおりですね、2045年のターミネーターの世界が来ると、一歩一歩近づいているわけです。かたやそういう危機感も感じられる状況です。

 次にですね、インターネットでございます。インターネットのユーザー数は1億3911万人です。世界の第4位ということでございまして、総人口あたりの普及率で見た場合には65.9%になっております。これはですね、アルゼンチンや南米のほかの国と比べてもですね、非常に低い数字でございます。決して高くないということが見て取れます。

 ブロードバンドですね、マーケットシェアにつきましては、皆さんお使いのNETが31%ですね。あとVivo、Speedy等ございますけども、27%。Oiが22%。上位3つともですね、減少傾向にあるという状況です。これはですね、Skyですとか、新しい業者の参入が大きな原因になっております。ブロードバンドですね、アクセス数の方は2867万ですね、前年度比7.2%上昇となっております。インターネットの平均速度は、ブラジルは6.8Mbpsと、前年の約1.5倍ではありますが、これは他の日本とかと比べると非常にまだ低い数字となっています。

 展望でございますけれども、個人のですね、インターネット利用がどんどん増えていますと。ビジネスにおいても、ILP丸ですとかそういったシステム利用で、どんどんこれもまた増えるという傾向でございますね。あとまあ、大都市以外、サンパウロ郊外でもですね、例えば高速化ですとか、低廉化、安定化が非常にいま進んでいましてですね、さらに提供のエリアの方も拡大していくということが伝えられています。一方でですね、こういった需要ですね、個人の動画サービスですとか、企業のクラウドの利用なんかも含めてですね、大容量のデータがどっと流れているわけです。こういう中でですね、既存の回線の圧迫ですとか、スピードの低下なんかも場所によっては起きているようです。

 次ですね、こちらITの総括になります。引き続きですけども、国際間の海底ケーブルはですね、敷設が続いていますと。Seabrasの1の運用がサンパウロ=ニューヨーク間でもうすぐ開始されますし、無線用の通信の人工衛星SDGCの打ち上げも成功していますと。どんどん通信インフラは拡大しているということでございます。こういう形で、通信格差がどんどん減ってくるということが期待されています。あとですね、SaaS、これはソフトウェアアドサービスの略なんですけども、あまりなじみがないかもしれません。例えば今お使いのGoogleAppですとか、あとはDropboxなんかがこのSaaSの例なんですけど、アマゾンの方ですね、要するにクラウド経由のサービスの利用もどんどん増えてくるということでございます。これも企業のITのクラウド化や、IT業務のアウトソーシングがどんどん進んでいるということの一例です。

 皆さんお使いのですね、99タクシー、あると思うんですけども、過去日本のソフトバンクが投資しましたけども、これも中国企業により買収の報道発表がありました。あと、再建中のOiですけども、これにも中国の通信大手が意欲を示していますので、中国勢が非常に今この通信分野に入ってきていると。我々も危機感を抱いています。

あと、ランサムウェアですね。ランサムは身代金ということですけども、基本的にはですね、こういった目的で、コンピュータのいわゆるウィルスでございますけども、ロックしたりとかですね、使えなくするといった被害がどんどん増えています。我々の昨年のITセミナーでも触れましたけども、一旦こういったものに感染しますとですね、甚大な被害が出るということで、ますますですね、こうした対策は必須でございます。ここにございますように、ブラジルは攻撃先としても世界第2位、攻撃元としてもですね、第5位というですね、まあセキュリティーホールだらけの国と。ハッカーの格好のえじきになっている国でございます。非常に注意が必要です。

 展望としましてはですね、同じく引き続き国際インフラ、通信インフラの拡充が見込まれますと。ブラジルとアルゼンチンを結ぶ海底ケーブルなんかもどんどん増えています。更なる国際通信改善が見込まれます。またですね、企業向けのクラウド、ITO、ITアウトソーシングもですね、どんどんITプロセスを外部に委託する動きが増えているということでございます。同時にですね、サイバーセキュリティですとか、そういったことも需要が増えていると、増加していくものというふうな傾向でございます。先ほども話がございましたように、オラクルですとか、アマゾンやグーグルなんかもですね、どんどん南米に来ていますと。そういったハイパースケーラー向けのハイスペックな箱、器ですね、データセンターなんかもどんどんできていまして、ますますサンパウロ近郊、こういったインフラが増えていくものといった傾向でございます。当然それに伴ったインターネットの需要も増えていくという状況でございます。

 以上、6つの業界のですね、現状と見通しを発表させていただきました。最後にですね、いま求められる新しい視点ということで、6つの業界から色んな意見が出ましたということでございます。要約しますとですね、ここにございますように、現状の打開、それから新たな価値の創造、市場への需要創造型アプローチということに集約されました。各意見を5つほど紹介しますと、経済以外の文化・スポーツ・芸術等の分野での交流ですね。日本との交流の活発化ですね。相互理解の深化が必要と。あとはですね、触れていますけども、ITですね、新サービスや新ビジネスモデルに向けた攻勢のIT投資も必要と。

 あと、運輸ということでですね、細かいお話しになりますけども、日系物流関係会社様連携で、ブラジル日系企業様向けの、工場から部品・製品の一貫輸送等、陸上海上含めたパッケージで輸送効率を高め、かつコスト競争力が出るような新サービスの提供と。あとは、南米域内ですね、アルゼンチン、ウルグアイへのですね、通関業務への取り組みを増やすという意見も出ています。あと、ブラジルの悪い点をあまり言い訳にせずですね、良い点を見つけて事業を創っていこうという意見も出ました。

 今日この中でですね、私の分野、B2B2Xモデルということで、少しITに特化して話をさせていただきます。B2Cですとか、B2Bとかよく聞くと思うんですけども、今はインターネットの世界以外にも、一般のビジネスでも使われる言葉です。ここにございますように、B、2は英語のtoと、でB2Xということでございますけども、初めのBはですね、我々のような通信業者ですとかAIですとか、クラウドとか、そういったいわゆるインフラ・サービスを提供する業者になります。その先がですね、今度はメインプレーヤーになります。メインプレーヤーの方は皆様がですね、誰でもなれる世界ということでございます。アイデア次第でメインプレーヤーになれるということでございます。で、その皆様の業界のエンドユーザーに提供するサービス、それは付加価値であったり、新サービスであったり、安全ということで、企業様のですね、現場ですとか、個人のメンバーとか、色んな方々がいらっしゃるということでございます。先ほど言いましたように、各産業分野ございますと。製造業ですとか、農業ですとか、交通をはじめとした分野、まあブラジルに一番親和性がある分野でございますけども、こういったところでですね、この普及が進んでいます。実はですね、安全運転、交通渋滞の緩和ですとか、いわゆるバスの運行システムなんかも、非常に我々NTTグループも注視をしていましてですね、こういったところで試行実験をこれから検討している最中でございます。バスの運行システムに、センサーをつけてですね、安全運転の管理ですとか、業務の効率化なんかも含めて試行実験を検討しております。こういったところでですね、新たな需要発掘と、新しい価値の創造ということで、最後ですね、運輸サービス部会締めくくらせて頂きます。どうもご清聴ありがとうございました。

 

司会

 矢澤部会長、広範囲にわたる分野でたいへんだったかと思いますけども、ご報告と、あと非常に興味深い視点をいただきまして、どうもありがとうございました。ちょっと時間が押しているんですけども、質問ある方はですね、挙手をお願いできればと思います。いかがでしょうか。よろしいですかね。はい。そうしましたらですね、矢澤部会長、どうもありがとうございました。

 引き続きまして、建設不動産部会の発表に移りたいと思います。奥地部会長より発表をいただきます。奥地部会長、よろしくお願いいたします。

 

建設不動産部会

奥地正敏 部会長

                    

 ブラジル戸田建設の奥地でございます。本日はよろしくお願いします。本日の建設不動産部会の発表としましてはですね、ご覧のように、まずは市場の概況ですね。それと、部会内の企業様の動向。そして、最後に副題であります、いま求められる新たな視点に関してですね、各社様の具体的な取組みをですね、ご説明をしたいと思います。

 それではまず、建設不動産業界の市場の概況ということでございます。このグラフは2007年以降のGDP成長率を、経済全体とですね、そして建設・不動産で比較したものです。グレーが全体、そして青が建設ですね。そしてオレンジが不動産です。

 ブラジル経済は2017年第3四半期以降ですね、回復のきざしを見せ始めています。ブラジル地理統計院が本日発表した昨年のGDP成長率は、通年でプラス1%ということで、2年連続のマイナス成長を脱することができました。世界銀行が1月初旬に発表した予測では、今年は2%の成長が見込まれるということになっております。その一方でですね、景気減退が始まった2014年以降、不動産業界ではですね、横ばいが続いているという状況です。また、建設に関してはですね、2014年以降、マイナス2.1%、マイナス6.5、マイナス5.3という大幅な原則が続いていまして、昨年2017年についてもマイナス5%ということになっております。

 先ほどの機械金属部会の池辺部会長の発表にもありましたように、建設不動産業界においてはですね、いまだ不況を脱し切れていないというのが現状かと思います。

 続きまして、このグラフは2014年以降の全産業の四半期ごとのGDP成長率を示したものです。建設と不動産は太い棒線で、建設は青、不動産はオレンジで示しています。先ほども申しましたように、不動産は2014年以降大きな増減がなく、まあ一定を保っているということですね。これに変化がみられたのは昨年第3四半期で、ようやく回復に向かうきざしが出てきたということでございます。また、建設に関しては、下に大きく伸びている青い棒ですが、他の産業と比べて落ち込みが目立っているということですね。黄色の製造業も大きく一時落ち込みましたが、こちらについては自動車業界が牽引しまして、昨年下期以降ですね、プラスに転じているというような状況でございます。

 次に、このグラフはセメントの国内売上高の推移でございます。日本でもこれは同じですけども、建設市場の景況というのはですね、セメントの売上に表れてくるということですね。全国セメント産業組合の統計によれば、セメントの売上は2014年に約7000万トンを記録しましたが、その後一気に減少し始めまして、2015年は6400万トン、2016年は5700万トンですね。そして2017年、去年は5380万トンという結果で、売上高は過去3年間に24%も下落しているというような状況でございます。

 次に、このグラフはですね、建設就業者の増減を表しています。ブラジルの全体失業率は昨年第4四半期は11.8%ということでございました。元々失業率が高いところに、不況が影響しましてですね、2016年に10%を超え、昨年第1四半期には13.7%を記録しましたが、これをピークにですね、徐々に下ってきているということでございます。一方、この建設部門においてはですね、ご覧の通り2014年以降、正規雇用の就業者を大幅に減らしているというのが現状でございます。

 建設市場の回復が他産業に対して遅れている理由としましては、このように経済リセッションの長期化に加えまして、公共工事の減少、そしてラバ・ジャットの影響、そして不動産市場の低迷が挙げられます。

 公共投資については、全国で中断している工事が今約8200件ということで、総額320億レアルですね。そして、国家予算が下りずに着工に至らない工事も、1万1200件あるというような状況です。昨年9月までの連邦政府の公共投資額は、10年前の水準に逆戻りしまして、公共交通網、あるいはスポーツ・レジャー施設の修復、あるいは衛生インフラですね、このような公共工事はことごとく予算を削られております。

 また、政界汚職事件の影響としましては、ご存知のようにオデブレヒト、あるいはOAS、あるいはカマルゴ・コレアなどの大手ゼネコンがですね、インフラコンセッションの入札への参加を禁じられまして、BNDESのインフラ関連事業融資はですね、凍結されているというのが現状です。2016年9月に政府が打ち出した、インフラ事業のさらなる民営化を目的とする投資パートナーシッププログラム、PPIですね、これに関しても停滞しておりまして、宙に浮いているというのが現状でございます。

 また、不動産市場に関しましては、経済リセッションに伴うインフレとですね、従来の金利高が影響しまして、低迷をしております。他産業と比べて建設市場の回復が遅れているのは、こうした理由からというふうに考えられます。

 次に、このグラフはブラジル貯蓄貸付システム、SBPEですね、これによる融資額でございますが、これも見ての通り、建設、購入ともにですね、2014年を境に大幅に落ち込み、過去3年間は低い水準が続いています。不動産市場は2014年以降、成長は横ばいですが、インフレと従来の金利高が影響して、買い控えが続いております。新築マンションが売れ残ってですね、市場がだぶついているというのが不動産市場の現状でございます。次お願いします。

 ただ、不動産に関してはですね、明るいきざしも見えてきています。先日、サンパウロ住宅不動産組合ですね、ここが発表したところによれば、2017年のサンパウロ市内の新築住宅販売は約2万3600件で、前年比46%の増です。そして新築住宅のリリース、発売ですね、この件数は2004年以降最多のですね、2万8600件に達しておりまして、前年度比48%という大幅増ということになっております。これに加えて、PAC、経済成長加速プログラムですね、この一環の大衆住宅建設プログラムによる低価格の新築住宅リリース件数も大幅に増加しておりまして、クレジット枠も拡大しております。

 公共投資の方は、市政府、州政府、中央政府ともに、今後数年間はかつてのような投資はできないという状況ですが、不動産市場にこのような明るいきざしが見え始めたことで、建設市場も少しは上向くのではないかというふうな期待ができるという状況でございます。

 続きまして、部会内の各社の業績の動向でございます。このグラフはですね、2015年の実績を100としまして、2016年と17年の実績、さらに今年の予測ですね、これを聞いたアンケートをまとめております。

 これによりますと、建設A、Bに関しましては非常に苦戦が続いているという状況です。

 それに対して、不動産Aに関しては、結構好調。不動産のBは、落ち込みましたけども、上向きかけているというような状況です。

 あと、特殊技術ですね。これは主に地下鉄、あるいは上下水道の止水工事の業種ということでございますが、昨年大幅に落ち込んでおります。これは、公共工事の相次ぐ中止、中断によるものです。公共工事の減少はこうして日系企業にも影を落としているというような状況でございます。

 エネルギー関連コンサルタント業。コンサルタント業ですね、そして建物制御といったソリューション系は、コンサル業がやや落ち込み、そして建物の制御に関しましては売上を年々大きく伸ばしているというような状況でございます。

 こういう状況ですので、建設不動産の部会内でもですね、業種によって業績の違いが出てきているというのが状況ということでございます。

 次に、各社の2017年の回顧と今年の展望、または課題についてまとめております。

 まずは、一番上の建設に関しましては、設備投資の抑制で工事量が減り、工事も小型の増改築などの小規模化する傾向にありました。また、受注競争の厳しさは続いておりまして、低い利益率で受注せざるを得ない状況が続いております。価格競争力の向上というのは当然不可欠でございますけども、営業の強化とともに、施工の効率化や工業化により採算を確保していく必要があるということでございます。

 次の不動産に関しましては、工場用地の購入やレンタル需要は、一昨年に引き続き低調なままですが、ショッピングセンターの開発業は後半、復活のきざしを見せてきております。また、駐在員向け住宅の賃貸業ですね、これは駐在員の数の減少により、低調に推移しているという状況です。ショッピングセンター開発業については、ローコストオペレーション化をはかり、賃貸マンション業はですね、営業対象を日本人駐在員に限らず、現地にも拡大していくということで、現状の打破を図っていきます。

 3番目ですね。サンパウロの水道局や地下鉄の仕事を手がける特殊技術ですね。これは工事の中止や中断で大打撃を昨年受けました。再開のめどが立たず、不安定な状況にありますが、検討案件は増加傾向にあるということでございます。

 最後のエネルギー関連コンサルタント業というのは、新規設備に伴う案件は少ないですが、既存設備の改修や契約の更新ですね、これが目立っております。また、工場オートメーションは好調で、今年も堅実な受注に向けて注力していくということでございます。

 最後にですね、シンポジウムの副題であります、いま求められる新たな視点ということで、部会各社のですね、取組みを具体的に紹介しようと思います。まあ各社ともに、方針としましては、日本の最新技術をですね、ブラジルに導入して、コスト以外の付加価値をですね、ブラジルの顧客に提供するという取組みを行っております。

 まずは、地下特殊技術のCGCさんですね。CGCさんではですね、IoTあるいはICT技術の活用した新たな取組みとして、施工状況の見える化を行っています。施工機に各種センサー、あるいは計測器を装着して、取得したデータをですね、リアルタイムにクラウドに転送することにより、タブレットやスマートフォンを使いまして、どこにいても施工状況を把握することができるというようなシステムでございます。つまり、日本にいながらブラジルの現場を確認することも可能で、資料作成もシステムがほぼ自動的に行うため、作業時間が非常に短縮されるというメリットがあります。将来的にはこのシステムで蓄積されたデータや画像を人工知能、AIで分析・解析して、地層の予測や施工の自動制御に役立てたり、資料を全自動で作成したりすることを目指しております。次お願いします。

 次はHOSS建設さんの事例でございます。HOSS建設さんではですね、日本の技術導入の取組みとして、提携先であります清水建設さんとの人的交流を行っております。清水建設の安全衛生講師をブラジルに招きまして、現地エンジニアへの安全衛生講習および現場での実地指導を1週間にわたり行っております。日本や世界の建設現場の事故例を基に、安全衛生管理の知識と行動力を習得させ、法令順守および災害防止の推進者をローカルに育てるというのが目的であります。ブラジルでは専門エンジニアが安全を担当するというのが一般的でありますが、HOSS建設さんでは各工事責任者がですね、災害防止について学ぶことが、品質、コスト、工期、そして環境面における競争力の向上につながると考えておられます。この写真の安全保護服はですね、これ日本のものでございますが、熱中症対策とですね、女性の現場進出を受けて、通気性の良いヘルメットと作業服を開発したものです。ブラジルに関してはですね、まあ安全基準の違いもあり、そのまま採用する予定はありませんが、参考までにご紹介するということでございます。

 最後にですね、当社、ブラジル戸田建設の事例でございます。当社ではですね、建設会社としての発電事業に目を向けています。ブラジルの再生可能エネルギーは、風力、太陽光、あるいはバイオマス等が考えられますが、当社が注目して現在FS調査を行っているのが、風力発電です。水力発電への依存度が高いブラジルは、昨今の異常気象による渇水問題や、あるいは環境保護の観点からですね、水力以外の再生可能エネルギーへの転換が求められています。ブラジルの風力発電の設備利用率はですね、40%強と、世界的に見ても非常に高く、新たなウィンドファームの設置が急ピッチで、各地で進んでおります。発電コストを各国と比較しても、この表の通りですね、ブラジルはコストの低さにおいてぬきんでているということでございます。そこで当社は、建設会社としての技術と経験を生かしまして、風力発電事業をですね、ブラジルで展開することを計画しております。日本の本社では、浮体式洋上風力発電といいまして、海上に浮かぶ風車を建設して、2016年からですね、商用運転を開始しております。ただ、これの場合はコストがかさみますので、ブラジルでは陸上の風力を考えています。有力地としましては、風況や送電距離、港からのアクセスなどを考慮しまして、リオ・グランデ・ド・スル州、あるいはサンタ・カタリーナ、リオ・グランデ・ド・ノルテ、あるいはセアラー州等を考えております。事業としては非常に興味深くですね、3、4年でですね、実現できればというふうに考えております。

 こうして、建設各社ともにですね、新たな事業や、技術の導入、そして日本との連携などにより、現状を打破してですね、来るべき本格的な景気回復に向けて躍進していこうというふうに考えております。以上が建設不動産部会からの報告でございますが、最後に私ごとで恐縮でございますが、私もですね、3月末をもちましてですね、日本に帰任することになりました。商工会議所の皆様にはですね、松永会頭、そして平田事務局長をはじめとして、たいへんお世話になりました。この場をお借りしまして、御礼申し上げます。2014年より約4年間の駐在でですね、まあブラジルの本格的な景気回復を見ずに帰るのは非常に残念ではございますが、帰国後も引き続きブラジルのビジネスに関わって参りますので、今後ともよろしくお願いいたします。最後に、各社様のブラジルにおける事業のご発展と皆様方のご健勝を祈念いたしまして、私の発表を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

 

司会

 奥地部会長、どうもありがとうございました。ちょっと時間は押しておりますけども、質問のある方、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。はい。それでは、奥地部会長、どうもありがとうございました。

 それでは最後の発表になります。繊維部会より発表をお願いしたいと思います。豊田部会長よりですね、発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

繊維部会

豊田明生 部会長

                    

 繊維部会、ユニチカの豊田です。長時間にわたりお疲れのところ恐縮ですけども、よろしくお願いいたします。表紙の写真はですね、朝日の中に輝く綿の実でございます。我々の綿紡の紡績の原料。繊維業界はですね、あまり朝日に輝いていない状況ではございますが、ちょっとこれから報告・説明させていただきたいと思います。

 次のページもですね、あまり明るい話題が少ない繊維業界ですので、ちょっと明るめの写真を貼ってみました。これは、綿花、先程申し上げた綿紡績の原料の畑ですね。ブラジルは世界で5番目の生産量を誇ります。地平線の果てまでずーっと見渡す限りの綿畑、これはブラジルならではの風景ではないかと思います。

 次のページは、そういう綿畑を、昔は手摘みで綿を摘んでいたんですけども、現在はご覧のように機械化が非常に進んで、以前に比べて非常に国際競争力もついておりまして、そういう大型の機械と、それで作った綿を、ああいうふうに海苔巻みたいにまとめて、それをトレーラーで運ぶという、そういうやり方になっております。

 ちょっと農業部会みたいな話になっておりますので、少しずつ繊維の方に話を進めていきますけども、このグラフは、前回もご説明しましたけども、世界の綿花供給量といいますか、生産量の変化。ご覧のように、緩やかに、安定的に増加が続いております。国別の生産量の順位としては、1位がインド、2位が中国、3番がアメリカで、4番がパキスタン、5番目にブラジルが入っております。この順位に関しては、ここ数年間ずっと変わっておりません。次お願いします。

 続いては、世界の綿花の消費量。世界の綿花の消費量というのは、すなわち、ほとんど、糸の生産量に近いんですけども、他に若干、不織布の原料にしたりとか、あるいは脱脂綿としてそのまま使う衛材用途なんかもありますけども、大半が糸に紡績されるというふうに考えてよろしいかと思います。生産量と同じように消費量も安定的に増加しておりまして、国別に綿の消費が多い順位は、1位が中国、2位がインド、3位がパキスタンということで、近年順位は変わっておりません。綿花の生産の、先程全然出てこなかったバングラディシュとか、ベトナムが近年非常に増えておりまして、アメリカやブラジルを追い越しております。これらの国々は、だんだん世界の繊維加工基地として安定的な力をつけてきておりまして、我々ブラジルにいる繊維業界としても非常に脅威となっております。

 次のページ、これはですね、その原綿の相場価格を決めるニューヨーク定期の相場価格の推移でございます。途中、一番高くなっているところが17年の上期、まあ5月あたりですけど、その後6月にですね、ニューヨーク先物綿花相場でアメリカの豊作というのが17年下期以降そういう予想がされました関係で、17年の下期、すなわち6月ぐらいから1年半ぶりぐらいに下がり始めました。そこでまあ、ようやく正常になったんですけども、我々にとっての原料の価格ですね、ところが去年の年末から今年1月、今日現在に至るまで、非常に急騰しておりまして、高値がまだ続いています。次のページお願いします。

 ブラジル国内の綿花の生産、輸出、国内消費の表でございます。途中でいったん下がって、また回復しております。下がっているところが16年度、これはまあ、ブラジル国内の原綿の不作もありましたけども、不況もあって消費の方も減ったんですけども、その後、翌年回復しました。ところが、不況はそのまま続いておりましたので、それほど伸びませんでした。今度、一番右、18年の予測としては、170万トンぐらいが予想されておりまして、最新情報、これ提出した後にですね、昨日あたり資料が出ているのを見ましたら、2月のConabの予想では179万トンぐらいの予想をしておりますので、今年18年も豊作予想となっております。次のページお願いします。

 そういうことで、ブラジル国内の原綿価格相場、我々の原料の相場に関してはこのような推移になっておりまして、16年の不作と輸出志向で非常に高止まりだった原料がですね、17年の上期には超高止まりの状態が続いておりましたけども、先程申し上げた通りに17年の上期、すなわち6月ぐらいから下がり始めて、ようやく17年の下期は正常化いたしました。ただそれが、先程も申し上げた通り、6ヶ月間しか続かずに、昨年末から今年、今日にいたるまで、非常に高い、異常な急騰を見せております。次お願いします。

 これが我々の販売する製品、綿糸でございます。一般消費財ではございませんので、町で売っておりませんから、皆さんはあまり見たことがないかと思いますけども、業界で流通している製品の姿でございます。次お願いします。

 国内販売価格が非常に上方硬直性ということになっておりまして、これはですね、近年ずっと原料が高止まりしていたんですけども、販売価格に転嫁できないという厳しい状況が続いております。理由はですね、長引く不況で需要が伸びていないというものありますけども、やはり輸入品価格が上値を押さえているということで、この表を見ますと、下の原綿価格、右半分、17年下期は若干下がったんですけども、それにも関らず綿糸価格はそのまま横並び。だからその分利益が増えたんじゃないのと思われるかもしれませんけども、そうではなくて、綿糸の販売価格はずっと天井をあそこで押さえられている、だからまあ17年の下期は少し息がつけたけども、先程申し上げた通りに、現在のようなまた原料が高い状況に戻りますと、非常に厳しい状況に戻るというふうに予想されております。

 次のページはですね、綿糸輸入に関して。17年度にですね、前年比の3倍に急増いたしました。これは、レアル高が大きいんですけど、それと景気も若干17年回復いたしましたので、輸入の綿糸に関して、我々にとっての競合になります輸入綿糸は3倍に増えるという非常に大きな伸びを示しております。まあ糸だけが3倍に増えてもですね、ブラジル国内の糸の生産量からすると、それほど大きな量ではございません。とは言ってもですね、おそらく日系の3社、ユニチカ、クラシキ、日清紡の3社の合計の生産量と匹敵するぐらいの量が輸入されるようになっております。

 次のページ。ここからがですね、製品についてでございます。繊維製品の輸入はですね、糸は先程3倍に増えたと申し上げましたけども、繊維製品輸入はさすがに3倍までは増えておりませんけども、15年から16年にかけて落ち込んだ繊維製品の輸入は、2017年には120万トンまで戻って、ほぼV字回復、というかU字回復ですかね、2年かかっていますから、を遂げているんですけども、これは、輸入がやっぱり戻るのが早くてですね、我々国内で生産している紡績メーカーにとっては非常に厳しい状況。ブラジルコストの負担の重い国内生産から最終製品での輸入へという、そういう方向に構造転換が、兆しもちょっと聞かれております。先程の発表の中でローカルコンテンツの概念とかも出ておりましたけども、例えば繊維の業界ではですね、一昨年のリオのオリンピックの時に、まあノベルティーなんかも含めて我々紡績業界として、繊維業界としてオリンピック特需を期待していたんですけど、うちの会社の役員の奥さんがですね、オリンピックのボランティアで参加したんですけど、その時に支給されたユニフォームは、普通だったら、日本だったら、そういう特需の時には地場であるとか、少なくとも国内の産業にメリットがあるように色々取り組み、動きがあるんですけども、なんとリオ・オリンピックのボランティアに支給されたユニフォームは上から下までセット、全部中国製でした。

 ブラジル繊維産業、これは前回も申し上げましたけども、原料を国内で調達できてですね、それから産業全段階を国内に備えておりまして、就業150万人と言われております、そして2億人の消費市場を持つという非常に、自己完結可能な恵まれた経済構造になっているんですが、ところがですね、現在のトレンドとしては、原料をそのまま加工せずに輸出して、原料綿花を輸出して、完成品の衣料を輸入するという、まあ中抜き構造とよく言われておりますけども、そういう構造がちょっと進んでおります。加工付加価値部分のブラジルコストの影響が非常に大きい部分をですね、外国に任せる構造の方が、もうかるし、楽だしという、そういうトレンドがあるんだと思うんですけど、先程、化学品部会でしたっけ、輸入依存度が進んでいるというコメントがございましたし、貿易部会の時にはですね、確か輸入品の中の85%は工業製品だというのを見て私納得いたしましたけど、ブラジルにおいて、特に繊維に関しては、そういう労働集約型ですので、ブラジルコストの負担が非常に大きいということが言えると思います。次のページです。

 したがって、我々としては、早期の市場回復を願う。それから、早期の制度改革。労働法などは少し変わってきておりますけども、そういうところ。その二つは他力本願ですので、まあそれらを待っていてはだめなので、可能な自助努力といたしまして、次のページですけども、今回の副題であります「いま求められる新たな視点は」というところに行きます。ちょっと各社によって色々事情が異なりますから、統一見解というわけではございませんけども。それと、前回も発表した内容とそれほど、ちょっと新鮮味がなくて申し訳ないんですけども、一つは高機能製品での市場開拓。それから差別化志向顧客に対して、そこと連携して品質改善とか、付加価値品を開発すると。この上の二つ、高機能製品と付加価値品という部分に関しては、以前から、ブラジルに日本のそういう得意な部分を持ちこんでがんばろうという動きはありましたけど、やっぱり時期尚早で、中々そういうのがうまくいかなかったという時代が長く続きました。ところが、最近、ブラジル自身もですね、徐々にやはりそういう、付加価値品であるとか、開発品に対する興味が、関心が浸透してきて、まあ変化してきているなという感じがいたします。

 それから3つ目の書いてあります、輸入対抗としてですね、国産原綿地産地消をアピールして、国産品の購買キャンペーンなんかを張ろうじゃないか。これ、一部、Abit、ブラジルの繊維工業協会なんかでは若干そういうキャンペーンをやっているようですけど、まだ少なくてですね、むしろ先程申し上げたような原料輸出、製品輸入の動きがどんどん進んでおります。非常に、悲しい事だなと思いますけども。

 そうはいうもののですね、我々それを嘆いてばかりもいられませんので、我々としてはそういう、環境配慮型製品キャンペーンを張ったり、信頼できる現地パートナーの探索など、その他、これ以前からずっと言っております、日系の強みである顧客に対するフォローと、正確なデリバリーとか、品質安定、などを力を入れていきたいなというふうに思っておりまして、月並みな表現ではございますけども、ブラジル国民は2億人おりますので、やはり、ニッチといっても大きなニッチになると思いますので、我々の生きる道はそういう部分にあるんじゃないかなと思っております。

 一つだけちょっと、面白い話なんですけども、環境配慮型製品キャンペーンのBetter Cotton Initiativeという動きがありまして、これはブラジルでなくて世界、特にヨーロッパなんかが中心になっているんですけども、それでですね、例えばブラジルのAbitあたりが進めてやったとして、ブラジル国民2億人が1人1枚ずつTシャツを買ったら、実際にはですね、すごいマーケットが創造されると。ところが、今の状況では、国内の繊維業界のキャパでは、そのTシャツ1枚国民2億人が買ったら、キャパが足りなくなるんですね。そうすると、また製品輸入が増えてしまうという、ちょっと非常にジレンマがあります。非常にそういう構造的な問題を抱えているのが繊維業界でございます。

 以上で発表は終了でございます。最後にちょっとこういう、しょうもない話の後にですね、ちょっと皆様に癒しを提供させていただきますのは、前回は吹雪ジュンでしたので、今回は2代目ユニチカマスコットガールの手塚理美ですね。私と同い年なんですけども、今おばちゃんですけども、40年以上前のユニチカマスコットガールをやっていた時の写真を提供させていただきました。ご清聴ありがとうございました。

 

司会

 豊田部会長、どうもありがとうございました。ただ今の発表につましてご質問のある方、挙手をお願いできますでしょうか。よろしいでしょうか。はい。豊田部会長、どうもありがとうございました。

 それではですね、以上で計11部会の発表すべて終了いたしました。副題のテーマはですね、いま求められる新たな視点はとなっておりますけども、各部会から様々な視点が提示されたかと思います。それではですね、ここで、本日特別参加いただきました在サンパウロ日本国総領事館の野口総領事に、本日の各部会の発表につきご講評をいただきたいと思います。それでは野口総領事、よろしくお願いいたします。

   

講評

野口泰 在サンパウロ日本国総領事館総領事

                    

 総領事館の野口でございます。本日はこのようなシンポジウムにお招きいただきまして、どうもありがとうございます。長時間にわたりまして、皆様の日ごろの研究、検討の成果を発表いただきまして、私としても非常に参考になったところであります。講評といいますか、感想めいたことをですね、若干、お時間をいただいてですね、お話をさせていただければと思っております。

 言ってみれば、やはりなんといっても、皆様の方から多くご指摘がありましたのが今年の大統領選挙でございまして、大統領選挙の見通しをこの場で申し上げる事ができればですね、非常に格好いいんですけども、まだ私もまだまだ勉強途上でありましてですね、中々たいしたことは申し上げられないんですけども、先日実は、Fiespのスカフィ会長とお話をする機会がありましてですね、彼が言っていたのは、まあ今はですね、大統領選挙、中々、誰が候補になるかということも含めてですね、まあ見通しが混沌としていると。そうした中で、5月くらいからですね、だんだん候補者が絞られてくるんじゃないかと。

 候補者が絞られて、選挙の対立軸といいますか、そうしたものが徐々に明確になってくるんじゃないかと。まあ左派の労働党、ルーラ元大統領の可能性というのはもうないとは思いますけども、労働党がどういった候補が出てくるのか、あるいは中道の政党、このセントロン、中道の政党がですね、統一候補が出てくるのか、出てこないのか。出てくるとして、それがアルキミン州知事なのか、あるいはそれ以外の候補なのか。そして、右派を代表する形で、今非常に快進撃を続けておりますボルソナロ議員ですね、確か先週来アジアを歴訪されていまして、日本ですとか、確か、行かれる前の情報だと韓国、台湾行かれると。まあ中国に行かないのが彼の政治スタイルを表しているのかもしれませんけども、そうしたボルソナロ議員のですね、快進撃がどこまで続いていくのかという、そうしたのが5月ぐらいから、何と言いますか対立軸が見えてきてですね、まあ6月はワールドカップでですね、ブラジル人の注目はそちらに向くんでしょうけども、7月ぐらいから盛り上がって来るだろうというお話があったところであります。

 2点目としましては、そのスカフィ会長の時も話したと思いますが、私よくブラジル人とお話しする時にですね、メキシコのことと比較することがよくあるんです。メキシコと比較してブラジル人はちょっとカチンときているかもしれないんですけど、以前はですね、日本企業が中南米の中で一番進出しているのはブラジルであったと。それが、ここ数年ですね、急速に日本企業がメキシコに進出してですね、いまやメキシコが、ブラジルとの比較でですね、日本企業の進出数という意味では数としては凌駕していると。まあこれはですね、色んな理由があるんでしょうけど、ひとつの大きな理由としましては、メキシコが自由貿易主義、色んな国とFTAを結んでいてですね、非常にプロビジネスな、ビジネスをしやすい環境を作っているということが挙げられるんじゃないかというようなお話を、スカフィ会長にもしたところですね、スカフィ会長は、中南米の国ではですね、右派政権と左派政権で振り子の針が振れるようにですね、色んなサイクルがあるんだと。ブラジルは左派政権から、2年前から中道の政権に移って、よりビジネスフレンドリーな政権になってきていると。

 かたやメキシコはですね、今、左派のロペス・オブラドール候補がですね、非常に勢いがあって、メキシコもどうなるか分からないよという話もしておりました。

 また、今日、色んな方のお話でですね、ラバ・ジャットというのが非常にブラジルの政治・経済危機の発信源になっているわけですけども、先日のスカフィ会長も含めてですね、ラバ・ジャットというのが、むしろブラジルの政治体制といいますか、政治システムをいまきれいにしているんだと。この一連のラバ・ジャットのですね、プロセスが終わればですね、ブラジルは透明性のある、より汚職のない、そうした国になるんだということで、ポジティブにとらえていたのが印象に残っております。

 それから3点目としましては、私もブラジル人をお話しをして、日本企業との関係でぜひ協力を進めたいと言われるのが、e-commerceといいますか,IoTやAI、第4次産業革命、そういったものについて関心の表明を受ける事がよくあります。

 そこでは、商工会議所とFiespが一緒になって、アンケートなんかを取られているというふうにもお聞きをしておるところであります。例えばブラジルでは、Uberなんかですね、これはニューヨークを凌いで世界で一番Uberが使われているというようなお話も聞いておりますし、そうした分野でですね、日本とブラジルの企業の協力関係が進むことを期待をしたいと思っています。

 4点目ですけども、日メルコスールのEPA、これについても多くの方からご関心の表明があったところであります。今この場でですね、日本政府の方針について、スタンスが固まっているわけではありませんけども、日本政府の経済連携の方針につきましてはですね、TPP11、アメリカを抜いたTPP11がですね、3月8日にチリで署名式が行われる状況になっております。

 また、EUとの関係ではですね、日EUのEPA、これが大枠合意に達しまして、今テキストを詰めている、その後署名のプロセスになるだろうというふうに思っております。そうした、TPP11とか、日EUのEPA、これが日本でも国会承認のプロセスがその署名の後ですね、行われて、そうした中で、メルコスールとのEPAについてどのような方針で臨むかという検討がなされていくかとは思います。

 駐ブラジル大使の山田大使もですね、ぜひサンパウロに立ち寄ってですね、商工会議所の皆さんのご意見もじっくり聞いてみたいというふうな希望も持っておりますので、そういった機会を設けることができればと思っております。

 最後に、これは運輸サービス部会のところで、いくつかのご指摘の中で、日系四世の新たな受け入れ制度についての言及がございました。日系四世の新たな受け入れ制度、これはおそらく、3月の下旬にですね、発表になろうかと思っております。三世までは特に制限なく日本での就労ビザ等ですね、受ける事ができる中で、四世の方につきましてはですね、いくつかの条件がありまして、例えば18歳から30歳までとかですね、日本語の能力もN4という、ある程度日本語ができる能力を持っていることが条件ですとか、あるいは家族を連れていけないとか、そういった条件がありまして、こうした新しい制度を第一歩としてですね、前向きにとらえる向きもありますけども、条件が厳しいんじゃないかという声もお聞きすることはあります。したがいまして、どこまでその四世の新たな受け入れ制度でですね、日本へ入国される方が増えるかというのは、まだまだ未知数ではありますけども、制度を開始してですね、その制度が必要があればですね、また不断の見直しを行っていくということになろうかと思っております。

 以上、雑駁ではありましたけども、私のお話として締めさせていただければと思います。どうも今日はありがとうございました。

 

司会

 野口総領事、各部会からの要望ですとか、関心事項についてピンポイントで回答いただきまして、まことにありがとうございます。それではですね、ちょっと6時を若干過ぎましたけれども、以上をもって本日の業種別部会長シンポジウムを終了するにあたりまして、閉会の辞を小池総務委員長にお願いしたいと思います。

 

閉会の辞

小池淳介 総務委員長

                    

 大久保さん、ありがとうございます。本日は、「いま求められる新たな視点は」というテーマでご発表いただきました。まずもちまして、各部会の皆様のプレゼンご準備とご協力に対して深く感謝を申し上げます。お話をうかがっておりますと、経済盤石でないものの、ファンダメンタルズが明らかに反転して回復をしているということが体感できるフェーズに入ってきたというふうに感じました。ただ一方で日本からブラジルへの直接投資が減っていると、厳しい現実も示されたと思います。その中で、プレゼンの中ではですね、本格回復期に入ったとか、今がチャンス、攻める時が来た、進出の相談が増えたという力強いお言葉もありまして、たいへん勇気づけられたかと思います。新たな視点、着眼点という意味でも、多数キーワードをいただきまして、中南米を面でとらえるとか、アルゼンチンへの輸出、日本ならではの新機能・新技術、商品開発、市場の需要創造、教育・医療、量から質、変化に柔軟対応、あるいは税制改革・労働改革をテイクチャンスしようと、E-commerce、IoT、スペシャリティ―の追及、そして最後は手塚理美の癒しを頂戴いたしまして、たいへん前向きな締めくくりとなる会となったと思います。2018年もカマラの皆様の全員でですね、お互い協力させていただきまして、盛り上げていければなというふうに思っております。また、いくつかの部会から頂戴しました日伯政府に対するご要望に関しては、大久保さんからもございましたけども、松永会頭の下ですね、政策対話委員会を通じまして、引き続きカマラで対応させていただければと思います。本日はたいへんありがとうございました。この後、懇親会をご用意させていただいております。出口を出られまして右手の部屋で開催いたしますので、ふるってご参加いただければと思います。本日はたいへんありがとうございました。

 

2017年下期の業種別部会長シンポジウム

Pdf2017年下期の業種別部会長シンポジュームプログラム

テーマ:「2017年上期の回顧と下期の展望」

副題:「回復途上のブラジル経済-いま打つべき戦略は」

Pdf金融部会    
Pdf貿易部会
Pdf機械金属部会    
Pdf自動車部会
Pdfコンサルタント部会    
Pdf化学品部会
Pdf電気電子部会     
Pdf食品部会     
Pdf運輸サービス部会  
Pdf建設不動産部会     
Pdf繊維部会    
Pdf全プレゼンテーション

 

      (2017年下期の部会長シンポジウム発表のテープおこし記事掲載)

前半司会

小池淳介 総務委員長

                        

 それでは、そろそろ開始時間になりましたので、これより2017年下期業種別部会長シンポジウムを開催させていただきます。私、前半の部の司会を務めさせていただきます、小池と申します。現在総務委員長で、三菱東京UFJ銀行に所属しております。後半は、企画戦略委員長の大久保さんに司会をバトンタッチさせていただきます。

 それでは、シンポジウム開会にあたりまして、松永会頭よりご挨拶を頂戴したいと思います。会頭、よろしくお願いいたします。

 

開会挨拶

松永愛一郎 会頭

                        

 皆さん、こんにちは。会頭の松永です。本日の2017年度下期シンポジウムに多数の皆様ご来席いただきまして、誠にありがとうございます。本日は在サンパウロ日本国総領事館より蛭子領事にもご参加いただいております。蛭子領事には最後にご講評、コメントを賜りたいと思っておりますので、後ほどよろしくお願いします。

 さて、半期に一度開催しますシンポジウムは、この商工会議所の目玉行事の一つとなっております。業種別に11の部会に分かれておりまして、この11の部会が本日のプレゼンのために何度も会を開き、経済の状況等分析をして、今日この場で披露して下さるということになっています。

 会員企業数、約350ということで、その中の代表の皆さんの豊富な経験や分析といったものが込められているプレゼンでございますので、今回、今日ご参集の皆様にも非常に有益な情報になっているかと思います。

 また、これもいつも申し上げているんですが、今回のシンポジウムはですね、会員企業以外の皆様にもご参加いただけるような形としております。さらには、今日配布の資料についても、商工会議所のインターネット、これを通じまして、皆様にもアクセスできるようにしております。

 これもひとえに、日本企業のブラジルにおけるプレゼンスを高めるための一助ということになればという思いからそういうことをさせていただいている次第でございます。

 さて、今回の副題は「回復途上にあるブラジル経済、いま打つべき戦略は」ということになっております。前回、今年の2月のシンポジウムの開会の辞で私の方から、ブラジル経済もやっと潮目が変わってきたんじゃないかということを述べさせていただきました。ところがその後の登壇者の皆さんは、ほとんど全員の皆さんがですね、要するにそういう力強さはまだ感じられないという言葉でした。

 その後の状況も、まあ先日政府が発表したように、財政赤字の拡大があったり、政治の混迷は深まるばかり。この先の年金改革の方も、次の大統領選と絡んで、どこに着地するのか良く分からない、といった状況ではあります。しかしながら、労働改革をはじめ、色々な新たな打ち手、これも功を奏してきているのも実態だと思っています。

 特筆すべきは、まあ皆さんご存じの通り、インフレがこの1年で2.7%台という数字になっています。基準金利についても、2014年以来の一桁ということで、確実に経済は戻ってきているという印象を受けております。

 さらに、ブラジル国内だけではなくて、中南米全域に目を転ずるとですね、やはり、アルゼンチン、ブラジルの政権交代、これによってメルコスールが閉ざされたメルコスールから開かれたメルコスールに、またアメリカのトランプ政権の発足、これによってメキシコがメルコスールの方を向いてくるといったような動きも出てきております。

 こういう状況を踏まえてですね、まあ今回皆さんがどのようなプレゼンをしてくださるか、私自身も非常に興味を持っているところでございます。

 最後になりましたが、本日の会議のために色々ご準備等ご尽力いただきました会員のご関係者の皆さんに厚く御礼を申し上げまして、私の開会の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

司会

 松永会頭、たいへんありがとうございました。それでは早速各部会の発表に移らさせていただきたいと思います。何かと行き届かない点が多々出てくるかもしれませんけれども、タイムキープ含めまして、皆様のご協力を賜れればと思います。先程会頭からお話がありましたけれども、今回の副題は「回復途上のブラジル経済-いま打つべき戦略は」とさせていただきました。

 ご記憶されていると思うんですが、前回は「景気回復に向けて今なすべきことは」というふうにテーマを設けまして、各部会よりご発表いただいたところ、景気がですね、長いトンネルから徐々にようやく抜け出す可能性があるなという兆しがある中で、日本企業としては強みの品質や技術力で差別化を図って、基盤強化をすると、そして新規ビジネスを発掘したいというようなお話があったと記憶しております。

 そして今回ですけれども、まだ本格回復には遠いと。多分本日ご発表いただく皆様からもですね、いやいやまだだよ、というご意見も出てこようかと思うんですが、一方で株価は6年ぶりに7万レアルを超えたりということで、少なくとも回復途上のレールに乗っかりだしたかなという雰囲気は感じておられると思います。そんなブラジル経済をとらまえましてですね、副題にあえて「戦略」という言葉を使わせていただきました。

 この3年、経営環境は本当に厳しい状況でしたけれども、ここで後ろ向きな発想とはなるべく決別いたしまして、積極的に未来志向で今後のことを少しでも語り合えればという願いを込めさせていただいております。

 発表者の皆様におかれましては、時間をオーバーされる可能性もあると思いますので、その際は司会の方から合図をさせていただきます。ぜひご協力をよろしくお願いいたします。

 それではまず始めに、金融部会の栗原部会長より発表をお願いいたします。よろしくお願いします。

 

金融部会

部会長 栗原裕二

            

 

 皆さんこんにちは。今年の4月から金融部会長を前任の大谷から引き継ぎました栗原でございます。よろしくお願いします。恒例によりまして、非常にいつもやりづらいんですが、まずは金融部会よりブラジル・マクロ経済動向、それから銀行業界動向、保険業界動向に関してちょっと発表させていただきます。

 なお、各指数につきましては、日々変化しておりますが、本日の資料では便宜的に8月15日現在という体裁をとっておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは最初のスライドに参りまして、2017年の上期を振り返りますと、ご存知の通り、政治・経済ともに非常に大きな出来事がございました。ここでは主なトピックスとして5つ挙げております。

 一番目は、これは皆様ご存知のことと思いますが、説明は省かせていただきますけれども、7月に起訴内容は下院本会議にて否決されておりまして、現在は一旦落ち着きを見せている状況です。今後は9月半ばに任期切れとなるジャノー判事が今まで示唆してきた通り、2度目の起訴に踏み切るかどうかが焦点となっております。

 二つ目は、会頭からもありましたが、労働法改正案の可決でございます。7月11日に可決されました本法案により、労働生産性が向上し、ひいてはブラジル経済の回復にも寄与するということが期待されております。

 三つ目は、年金制度改革についてでございます。これは、財政改革を推進するテーメル政権の最重要施策ではありますが、現在の法案は保険料納付期間や年金受給にかかる計算方式の変更ということで、憲法の改正を必要とすること、依然として政界・国民の反発が強いことなどから、マーケットコンセンサスは原案での可決は難しいんじゃないかということになっております。ただ、まあ、先日たまたまとあるシンクタンクのブラジル担当と話をしましたが、彼曰くは、「可決の可能性はフィフティー・フィフティーより高い。ただし、原案そのままではなく、場合によっては憲法改正を伴わない形に修正して過半数で通すという妥協が行われる可能性があるということでございました。まあご参考までに。

 次、四つ目のトピックスが、政策金利の大幅な引下げです。先程、これもまた会頭からもありましたが、インフレ率は順調に低下しております。また今後とも大きく上がって来るということは予測されておりませんので、ご存じの通り、政策金利が7月26日の政策委員会で100ベーシスポイント引下げられて、9.25%と、4年ぶりとなる一桁台に低下しております。市場は、今年度末の政策金利を7.5%と予想しておりますが、一部では7%という声もいま足元では上がっております。

 最後はソブリン格付見通しの引下げです。5月のJBSショックを機に、Moody’s社はソブリン格付見通しを「ネガティブ」に引下げました。またS&Pは今後格下げの可能性がある「クレジット・ウォッチ・ネガティブ」に指定しました。しかし先週、ブラジル経済に回復の兆しが見えてきたということで、これを解除して、格付見通しを正式に「BB」に据え置くということを決定しました。ただしアウトルックはそのまま「ネガティブ」です。今後の格付見通しにつきましては、年金改革をはじめとする財政改革の進捗が鍵になってくると思います。

 続きまして、経済指標の推移をスライドにしております。

 まずGDP成長率ですが、現在推進している金融緩和策や昨年発表されたFGTSの給付資格発生前の引出し許容などの刺激策によって、わずかながらですが、本年度はマーケットは0.3%というプラス成長が予想されています。

 貿易収支は上半期に425億ドルの黒字と、統計を開始した89年以降で過去最高を記録しております。穀物や資源の輸出増加、価格回復に加えて、消費の低迷から輸入が伸びていないということが寄与したものと思います。今年度の貿易黒字は600億ドル程度というふうに予想されております。

 株価については、5月は70000ポイント近くまで上昇しておりましたが、JBSショックによりまして一時60000ポイント台まで下落。ただしその後はまた、労働法改正案の可決、テーメル大統領に対する起訴の否決などを受けまして、市場リスクセンチメントは改善しまして、本日は70000ポイントを超えております。

 次に政策金利とインフレ率でございます。食料価格、人件費の上昇を背景に、2012年以降、インフレ圧力が強まって参りました。それに伴って、ブラジル中央銀行は金融引締め策を採ってきました。この状況下、2014年には大統領選を控えた当時のルセフ大統領が、電力料金やガソリン価格など政府が価格決定できる財について、市場トレンドとは乖離した形で価格を抑えてきました。これにより、2014年はかろうじてインフレターゲットレンジ上限を下回る水準に押さえ込むことができました。

 ところが、これらの抑制が電力公社や石油公社の業績に大きなマイナス影響を与えることになりましたので、2015年からは介入を控えるということになりました。その結果、2015年には10%台と二桁台に突入してしまいました。この結果中銀は、今度は金融引締めに動きまして、政策金利をご案内の通り14.25%まで引き上げました。

 本年に入りまして、食料価格やガソリンをはじめとする輸送費の安定に伴って、インフレ上昇圧力は次第に収束しております。結果としまして、直近6月の12カ月間累計ベースでのインフレ率が2.7%と、これも99年以降で最も低い数値を記録しております。

 市場予測では、年末にはインフレ率が3.45%と、中銀のインフレターゲット内に収束する見込みです。また、インフレの安定を背景に、先程申し上げましたが、金融緩和が推し進められて、今のところFocusでは7.5%まで低下することを見込んでいます。まあ一部では7%という声も上がっております。

 次は個別に各指標を見ていきます。

 このスライドは四半期ごとのGDP成長率および鉱工業生産推移を示しております。棒グラフがGDP成長率、折れ線グラフが鉱工業生産でございます。2017年第1四半期のGDPは前期比でプラス1%と、8期ぶりのプラス成長を記録しました。ただしこの数字には、天候不順によって不振であった農業部門の急回復、13%ぐらいのプラスだったと思いますけれども、これが大きく寄与しておりまして、個人消費、設備投資というところはまだ盛り上がっておりません。ただ6月単月の個人消費が2.5%増と、まあ予想外に高水準でありましたので、これが持続するかどうか、あるいは設備投資、工業生産というのが回復トレンドに向かっていくかどうかが、本年通年でのGDPの成長率に大きく関わってくると思います。

 次は年率ベースですが、コメントが重複しますので飛ばさせていただきます。

 次のスライドが財政収支になります。2013年までは黒字を維持しておりましたけれども、2014年の景気鈍化以降、昨年まではマイナス。2017年につきましても、その構造は変わらずに、8月15日、先週、今年の財政赤字目標を従来の1390億レアルから1590億レアルに下方修正しております。来年、再来年についても下方修正されております。ただし、一方で、現政権は財政悪化に歯止めをかけるべく、年金改革のほかに、歳出上限法その他増税策というのを打ち出してきておりまして、財政規律の回復には努めております。

 続いて、対USドルでのレアルの推移でございます。

 昨年、ルセフ大統領弾劾の可能性が高まった時期から、政治的不透明感払拭への期待によって、それまでのレアル安トレンドからレアル高トレンドへと反転いたしました。今年に入っても、テーメル政権の各種政策を好感しまして、レアル高トレンドが継続しておりましたが、まあご案内の通り5月のJBSショックを受けて一時3.4レアル台までレアル安が進行する局面がありました。その後は、労働法改正案の可決や、テーメル大統領の不起訴等を受けまして、3.1近辺とJBSショックの前の段階まで戻しております。足元は3.1から3.2の間で推移しているという状況です。

 対円のレアルですけれども、これも財政改革の期待感、円相場が円安に振れたということで、本年の2月あたりは37円台までレアル高が進みましたけれども、いま足元は35円台で推移しております。

 次は株価推移、それから政策金利とインフレ推移ですが、先程のコメントと重複しますので、その次のスライドに移りまして、外国直接投資の推移でございます。

 まあブラジル経済の底打ちというところと、国内の財政改革への期待感ということもあるんでしょうが、海外投資家からは一定の評価を受けておりまして、今年度は750億ドルの投資額が見込まれています。近年、特に中国のブラジルへの投資が非常に活発でありまして、例えば電力会社CPFL社の買収などをはじめまして、中国企業はブラジルでのM&Aに非常に積極的になっております。中国企業による買収額は4月時点で昨年の約半分まで達しております。また、投資額も第1四半期時点で62億ドルと堅調でありまして、今後も中国勢による投資意欲は旺盛だというふうに考えています。

 次は失業率でございます。ここもとの景気低迷を受けまして、今年3月に13.7%まで上昇いたしましたが、4、5、6月と連続で徐々に低下してきております。前月、7月にも、加工業を中心に3万5900人の新規雇用が創出されたという報道もありました。また、33カ月連続で就労者が減少していた建設セクターも、わずかではありますがプラスに転じました。メイレレス財務大臣も、最悪の状況は過ぎ去ったと発言しておりまして、市場も、年末までに失業率が12%台前半まで低下するのではないかというふうに予想しております。

 次は、金融部会所属の各銀行にご回答いただきました2017年、18年の予測について、最大値と最小値のレンジで表記しております。なお、これは8月10日期限で集計いたしましたので、それ以降の材料は織り込まれていないということをご留意いただきたいと思います。

 まず成長率ですが、17年、18年それぞれ0%~0.4%、0.6%~2.5%という予想になっています。いずれも、Focusの指標トレンドと同様で、17年は小幅な成長、18年から本格回復が期待できるという予想になっています。

 インフレ率は3~3.9%、4.02~4.5%と、これも概ねターゲットレンジの内側に収まるという予想になっております。為替レートは3.2~3.4、来年が3.2~3.5という、あまり大きな動きがない、ややレアル安という予想になっております。

 年末の政策金利については、17年、18年両方とも7.5~8%という予想になっておりまして、17年中には金融緩和がさらに進み、18年はその水準がほぼ維持されるという予想になっております。

 次に、今回のテーマに基づきまして、各行の今後の見方についてコメントをいただきましたので、そのサマリーをお示ししております。

 1項目目の「ブラジル経済回復への明るい兆しは?」という質問についてです。

 以前と比べて経済回復への兆候が増えていると同時に、その度合いも徐々に強まっているというコメントが多かったように思います。昨年10月から利下げサイクルに入った後も着実に財政改革への道を歩んでいる。またインフレ率は予想以上に低下しておりまして、それがさらなる金融緩和余地を生んでおります。過去最高の貿易黒字等による経常収支赤字の改善が為替の安定にも寄与している。2015年以降の失業率悪化に歯止めもかかったということ等で、投資あるいは消費を活性化させる条件が整いつつあるというコメントがありました。

 二つ目の質問は「ブラジルに対する投資家の信認が回復するのはいつか?」という質問です。

 格付機関が財政規律を重視しておりますが、中長期的な財政規律を確保するために欠かせない年金改革がまあ鍵になるという意見が大勢です。年金改革を成立させるためには現大統領の議会掌握力が必要となります。加えて、経済回復トレンドの底堅さ、政治的混乱の収拾、それから大統領選に関する不透明感払拭が視野に入ってくるのは、まあ来年の中ごろ以降ではないかという声もありました。また、ブラジルのポテンシャルに対して、そもそも投資家の信認が大きく毀損していないという意見もございました。外国直接投資、M&A、IPOへの底堅い需要や、足元の落ち着いたCDS等がその根拠として挙がっております。

 最後に、「ブラジル経済が最悪期を脱したとみられる中、日系企業が打つべき戦略は?」という質問についてです。

 先ほどご説明いたしたように、景気回復への兆しが見きている中、それを前提とした投資戦略を策定すべきという意見がございました。景気回復の流れや競合他社に遅れを取らない積極的な財務戦略、買収、優秀な人材確保などを綿密に検討する時期、という意見が多数でございます。既にご案内かと思いますが、ペトロブラス、オデブレヒト、JBS等の大インベストメント、それからエレトロブラス、今日もちょっと発表されていましたが、ペトロブラス以外も含めて公社の民営化などの大型の投資機会も目の前にあります。中長期的な視野に立ったビジネス拡大のチャンスでもあるということから、まあ中々難しいんでしょうが、本社への継続的かつ粘り強い説明が不可欠という意見がありました。

 それでは、マクロ経済を一通り終わりまして、銀行業界についてご説明いたします。

 まずは貸出残高推移です。一番下の緑のところですけれども、2011年以降、毎年二桁ベースで増加しておりました融資残高合計は、2015年には6.7%と落ち込み、2016年に至っては3.5%のマイナス成長ということになりました。

 17年上半期の貸出状況は、個人向け貸出は前期比4.3%と微増しておりますが、法人向け貸出は依然として7.3%のマイナス。しかも各部門がそれぞれ減少しております。また、BNDES制度融資も上半期は前期比で16.6%の減少ということになっております。これは、金融機関が依然として保守的な与信運営を行っているということや、景気低迷を背景とした企業の限定的な資金ニーズを要因としているものと考えております。

 次は、新規与信に対する平均貸出利ざや、スプレッドの推移です。

 法人につきましては、ほぼ大きな動きがなく推移しておりますが、個人につきましては、まあ比較的大きなスプレッド縮小という動きになっております。これは、クレジットカードの割賦払いに関する規定が変更されたこと等が背景じゃないかと推測しております。以前まで、消費者はカード残高の最低15%を支払うことによって、支払って、翌月以降もこれを繰り返すことで延滞リストに載ることを免れておりましたが、この割賦払いの金利は月利で平均16%程度と非常に高金利でした。しかし、今回の改訂により、金融機関は、消費者がそのような一部返済を行った場合、消費者側により有利な返済条件に見直すということが義務付けられました。この結果、現在、割賦払いの月利は2~10%程度に低下している模様です。

 次は不良債権比率です。

 これは90日超の延滞債権の比率の推移でございます。2015年以降、金融機関の保守的な与信方針や失業により延滞債権が増加しております。一方で延滞債権が、比率が増加しているということは新規貸金が伸びていないということもひとつの要因です。しかし、今年の6月は半年振りに不良債権比率が低下に転じております。個人につきましては、先ほど述べました、割賦払いに対する貸出利ざやの低下や、FGTSの引出しが寄与したものと思います。

 法人につきましては、個人によるFGTSの引出しがある程度企業のキャッシュフローにも寄与したということもあるかと思いますが、また、返済期限の繰り延べ等、金融機関と企業側で行われて、返済条件の見直しが増加したということが一因かと思います。

 最後に保険業界についてご説明させていただきます。

 ブラジルの保険監督庁であるSUSEPの統計データによりますと、本年の1月から6月の保険料収入の伸び率は2.7 %に留まっております。二桁成長が続いていました2010年から2014年度と比較しますと、2015年以降は名目成長率が1~3%程度と、インフレ率を下回って、低水準で推移しております。これは、経済の低迷が保険マーケットの成長にブレーキをかけているという構図で、その傾向は変わっておりません。

 次は保険種目別の保険料収入を示しております。

 経済活動の低迷が続きまして、企業側では減産・在庫圧縮等によって物流が低迷しており、運送保険、火災保険項目では、この上半期は前年同期比でマイナス成長を余儀なくされております。なお、生命保険・傷害保険項目では、団体信用保険の伸びが影響しまして、前年同期比で7.9%の成長となっております。

 次は、保険種目別の損害率のデータになります。

 全体といたしましては、本年1月~6月累計で損害率45.8%と、前期比若干改善しております。火災新種保険の損害率が前年同期比で大幅に改善したことがその主要因ですが、これは、前年はエルニーニョによる自然災害が多発したということがありましたが、本年はその影響が軽微であったということによるものと考えております。

 最後に、今後の保険市場の成長見通しについてご説明いたします。

 ブラジル保険会社連盟は、2017年通年の成長率見込みとして、損害保険で3.5%、生命・傷害保険7.8%の伸びを予測しておりまして、合計ベースでは、名目で4.9%、すなわちインフレ率を加味した実質ベースではゼロから若干の成長を見込んでおるということです。

 ブラジルの保険業界は、潜在的な伸びしろを有しておりますが、目先、2018年にかけての政治面での不確定要素を払拭するには至っておらず、失業率の高止まりや個人消費の停滞感が続く中で、景気回復の兆しも中々見えず、ブラジルの保険マーケットが本格的な回復基調になるには今しばらくの時間を要するというふうに予想しております。

 しかしながら、中長期的には、社会構造の変革等によりまして、保険商品に対するニーズは間違いなく高まると予想されておりますので、かかる将来の需要の発掘に向けて現時点から準備を進めていくということが保険業界の使命と考えております。

 以上で、金融部会の発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。

司会

 栗原部会長、たいへんありがとうございました。それではここで、ご質問のある方は挙手をお願いいたします。どなたか、ご質問ございませんでしょうか。どうぞ。

質問者

 もし分かったら教えていただきたいのですが、投資のところで、随分と外国からの投資が回復基調にあるということなんですが、これに占める中国の割合というのはどれぐらいなのか。

栗原部会長

 例えば去年の実績の中で中国がいくらだったかというデータがちょっと手元にないんですけれども、上半期だけで中国が68億ドル投資しておるということなので、上半期の実績は290億ドルでしたので、上半期だけで言えば3割弱ですか、くらいになっていると思います。

質問者

 はい、どうもありがとうございます。

司会

 はい、ありがとうございます。ほかに質問ございますでしょうか。中国からの投資は、ルクセンブルク国籍とか、統計上はなっていることもあって、ちょっと分かりづらいところもありますが。

栗原部会長

 今言ったのは中国から来ているものだけなので、経由してきているともっと、その2倍とかいう規模になっている可能性はあります。

司会

 ほかに、よろしいですか。そうしましたら、簡単にまとめさせていただきますと、今のお話の中では、年金改革の行方がポイントにはなるものの、インフレも収まりつつあり、金利も引き下がり、今年はGDPがプラスの0.3%と。で、今お話にありましたように、投資も増えてきて、雇用も多少改善している中での企業戦略としては、長期的な視野で投資戦略の見直しをし、買収、人材確保、そしてこれは一番苦労するところかもしれませんけども、本社の説得というようなところがお話に出たかと思います。それでは、栗原部会長、たいへんありがとうございました。

 すいません。ちょっと冒頭で明るいニュースがあったのをお伝えし忘れたんですが、本日は211名のご参加をいただいておりまして、これは史上最高ということでございます。それから、この会の後の懇親会も100名のご参加のお申し込みをいただいております。お酒を飲まれたい方がたくさんいらっしゃるということで、たいへん明るいニュースということで、ご報告させていただきます。

 続きまして、貿易部会、今井部会長様、よろしくお願いいたします。

 

貿易部会

今井重利 部会長

            

 

 皆さん、こんにちは。高いところから失礼いたします。貿易部会を担当しております、伊藤忠の今井でございます。これから従来と同じで、貿易収支の数字を中心にご説明させていただきますが、私は今回でお話させていただくのは3回目なんですけど、今回は一番数字的には良い結果になっておりまして、そういうベースでご説明を始めさせていただきたいと思います。それでは次のページお願いします。

 これはですね、半期ごとの輸出・輸入の推移を示しておりますが、縦棒の左側、青が輸出、右側、緑が輸入。この折れ線のオレンジが貿易収支。この横の赤の軸が貿易収支ゼロということで、上にこの折れ線が行くところは黒字になっているということでございまして、例えばこの直近の半期ごろ、3期、4期を見ますと、やっぱり輸出がですね、かなり伸びていると。輸入もですね、少しずつ伸びている。ということなので、輸出入の差を見ますと、貿易黒字は、まあ先ほどもございましたけども、かなりのペースになっておりまして。例えば、2016年、これは暦年は貿易黒字がブラジル全体で477億ドル。で、今年の1-6月の上半期だけで362億ドルの貿易黒字ということで、去年の1年間のペースにすると、今、かなり上回った数字で貿易黒字が続いているという状況でございます

 一方で、輸入のところはまだもう少し伸びていないということで、例えばブラジルの景気が良かった2010年、11年から14年ぐらいを見ますと、半期で輸出入ともに1000億のレンジを超えていると。年間で輸出入共に2000億ドルを超えているというのが、まあ良い時の数字でございます。

 例えば今年の上期を見ますと、輸出は1077億ドルということで、だいぶ戻ってきたのかなと。ただ輸入は715億ドルということで、まだ全盛期にはもう少しだなという状況でございます。

 特に輸出が伸びてきました大きな要因は、まあブラジルは農業が好調なので、農産物の輸出量が伸びているということ。あとコモディティ価格、鉄鉱石とか原油のコモディティ価格が上がってきて金額が大きくなったことが大きな要因になっております。

 次のページから輸出と輸入で分けてご説明します。

 これは輸出でございまして、まず一番下から、総論でございますけど、これは半期ごとの金額と数量でございますけど、数量は全体で3.6%の伸びです。金額が19.3%ということで、金額がやはり伸びているということが結果になっております。

 これを一次産品、半製品、工業製品に分けておりますが、一次産品につきましては、先ほどご説明しましたように、大豆もそうですし、鉄鉱石、特に原油は金額もそうですし、数量もかなり伸びているということで、全体、一次産品は金額的には27.2%とかなり伸びております。

 半製品につきましては、数量は若干ですけども、金額がやはり伸びているということで、特に粗糖とか、鉄鋼製品のところが伸びているという結果になっております。

 工業製品につきましては、これもかなり伸びておりますけど、特に乗用車関係、あと貨物車関係というところが伸びているというようなことでございます。次のページお願いします。

 次は輸出相手先でございまして、中国、米国、アルゼンチンというナンバー3はですね、増減としてはかなりの伸びを示しているということでございます。

 中国向けはですね、まあ大豆とか、原油、まあ食料・資源のコモディティ関係でございます。 米国向けは原油や鉄鋼製品。アルゼンチン向けは、自動車とか、一部原油、そういうのが伸びているというところでございます。

 あと、赤い枠で囲ってますけど、日本は残念ながら、ブラジル全体で輸出がこれだけ伸びていても、対日はマイナス3.1%ということで、マイナスになっていると、残念ながら結果でございます。

 あと特記事項はですね、チリとインドというのは従来日本より下だったんですけど、最近貿易量が伸びまして、特に輸出量が伸びまして、チリ、インドがランクの上位になってきたというのがひとつの傾向でございます。次のページお願いします。

 今度は輸入でございます。輸入はですね、まず一番下から申し上げますと、数量、金額とも、8%、7%ということで、こちらも少しずつ伸びているということでございまして、これをジャンル別にいきますと、一次産品はですね、これは数量はマイナス3.7%で、マイナスなんですけども、先ほどの、コモディティ価格が上がっているということで、金額ベースでは伸びているということでございます。

 一方、半製品は今度は逆でして、数量的には伸びているんですけど、これはどうも金額が下っているようで、全体の金額ベースでは下っているということになっております。

 あと、工業製品。これは金額的には全体の85%を占めますけど、これは数量、金額とも伸びていますけど、数量の伸びがかなり寄与しているという状況になっております。次のページお願いします。

 今度は輸入の国別ですけど、これは輸出と同じで、米国、中国、アルゼンチン、これがトップ3でありまして、やはり輸入も堅調に伸びているということでございまして、米国からの輸入はですね、燃料油、エタノール、これは多分ブラジルが農業生産が非常に好調なので、その農業機器に使う燃料油等も増えているのかなと思っております。

 中国はですね、送受信機、半導体等、工業製品の輸入が伸びています。アルゼンチンからは、小麦とか、一部トラクター、トレーラー等の機械が伸びているということで。日本は若干伸びていますけど、2.4%ということで、まあそんなに変わっていないなという状況でございます。次お願いします。

 今度は対日をブレークダウンしましたが、輸出はマイナス3.1%でございます。ジャンル別に見ますと、鉄鉱石は価格が上がったということでプラス50%でございますけども、残念ながらほかの項目で、いくつか、航空機とか食品関係でやはりかなりマイナスがございまして、全体でマイナスになっているということでございます。

 輸入につきましては、トータルではプラスの2.4%でございまして、ある程度まばらになっておりますけど、まあ自動車関係と半導体を中心とする工業製品関係が堅調に推移しているという状況でございます。次のページお願いします。

 今度は対ブラジルの対内投資の状況でございますが、左側のグラフは半期ごとでございまして、これは半期によって大分ぶれがございますけども、全体で見るとまあ横ばい推移なのかなというふうに考えております。今度は右の表にいきますが、金額的に見ましても、16年上期が209億ドルに対して、17年上期は281億ドルということで、16年度、暦年の投資額が、先ほどの金融部会の数字と若干違うんですけど、536億ドルになっていまして、今年の上期を倍にしますと多分昨年よりももう少し上に行くのかなというふうに見ております。

 あと、一方ですね、過去の数年のグラフ、上期と下期を見ますと、対ブラジルの対内投資はこの下重になっておりまして、ずっと下期の方が上期より数字が大きいという統計結果になっておりまして、そうしますと多分、この傾向が続けば、今年の下期も281億ドルを超えるブラジルへの投資になるのかなというふうにみられるので、そうしますと去年の537億ドルよりも大分上に行くのかなと思っております。

 あと、国別にはですね、米国がかなり伸ばしておりまして、前期比だと173%アップというすごい数字でございまして。あとは、バージンアイランド、これは多分、先ほどもお話しありましたけど、中国かなと思っていますけど、4倍以上になっていると。これは多分オランダなんかも中国だと思いますけど、この辺のところがかなり伸びているということでございまして、中国という名前が統計上入っていないんですけど、やっぱり中国はですね、全体の、先ほど3割とありましたけど、3割から3分の1ぐらい対ブラジル投資を占めているんじゃないかというふうに私も想定しています。

 あともう一つ特筆すべきは、残念ですけど、日本が前期比マイナス63%ということで、日本はやはり激減傾向が全く歯止めがかかっていないということで、これは前回も前々回もかなり日本はマイナスが大きかったんですけど、日本は引き続き、残念ながら来ていないというのが結果でございます。次お願いします。

 今度はブラジルへの投資の産業別ですけども、一次産業は、全体のパーセンテージも低いんですけど、伸び率もマイナス53%ということで、一次産業向けへの投資は大分減りました。次の工業関係もやはりマイナス6.4で大分減っています。一方でサービス業関係、これは全体の67%で、全体の3分の2を占めていますけど、ここがですね、プラス97%、倍増しておりまして、その中でもですね、電気、ガス、運送業、水とかありますけど、何しろインフラ・輸送系が圧倒的に多くなっていて、全体の投資を牽引しているというふうに数字上でなっております。次お願いします。

 この表は最初のページと同じでございまして、これはそれに7月分を入れただけなんですけど、7月も貿易統計上は黒字が46億ドルということで、1-6月が先ほど362億ドルと申し上げましたので、1-7月でもう400億ドルを超えております。先ほど申し上げましたように、16年度、年間でですね、貿易黒字が477億ドルなので、先ほどの金融部会の今年の貿易黒字見込みは610億ドルということでございましたけど、数字上もそのぐらい、もしくはそれを上回るペースで黒字が続いているという状況でございます。

 あと、下の方にまとめを書きました。これは今申し上げたことのまとめでございます。貿易収支はかなり黒字がたまっている。ただこれは、輸出が増えているということで、輸入も増加していますけども、輸入の増加はそれほどでもないということ。2番目、対内投資については、米国、あと中国もあるでしょうけども、堅調に推移していますと。最後に日本、特に日本向けの輸出と日本からの投資、これが残念ながらまだ低調に推移しているというのが実態ですということでございます。次のページお願いします。

 これが最後のページなんですけども、「いま打つべき戦略は」ということで、これは部会の中でも話させていただいたんですけど、マジックハンドというのはやはり中々ないと思うので、基本的には皆さんが今考えていらっしゃること、皆さんが今まで経験されて、多分やってきていただいたことをですね、ご意見いただいた中で9個書いたんでございますけども。上から行きますと、やはり日本企業というのは業績が悪くなると撤退しよう、縮小しようということで議論を重ねているうちにですね、最後に縮小する時は大体、底を打つ前か、打った前後でですね、要は、例えば今のブラジルなんかはそうですけど、ピックアップ、あとそれ以降の伸びのところをやはり取りきれないということが結構あるのかなと思っていまして、やはり、今足元固めをすると、そういう体制・組織・人員を維持するというのが、これは守りですけど、まず大切なのかなと。

 次、2番目は投資なんですけど、日本は、これもよく言われていますけど、悪い時に早期に撤退する、逆に高い時に買うということで、やはり中国とかアメリカとかを見ますとですね、底で買いに来る、中長期的な視点から投資・参入を決めていくというのがあるので、日本もですね、中国、米国と同じことをやる必要はないと思いますけど、やはり長い目で見なきゃいけないのかなというふうに考えております。

 三つ目はですね、どうしてもブラジルはボラティリティが高いというふうにはかなり言われていますので、やはりこれは本社を説得するためにもですね、成長分野やボラティリティの変動を受けにくいビジネス分野に対して積極的に投資・ビジネスを行っていくというのが、一つの考え方であるのかなということ。

 四つ目は、今度はファイナンスの方ですけど、まあこういう状況だからこそですね、ブラジルの開発制度、また日本の開発もしくは保険制度など長期の融資・調達制度等をですね、再検討する時なのかなと。その時の視点の一つで、やはり、一方通行でなくてブラジル側の雇用創出・産業育成、この辺の切り口も考えて、ブラジル側から見ても受け入れやすいというところでアプローチするのも一つなのかなというふうに考えております。

 次はですね、ブラジルの案件を本社に持って行く時に、総論じゃなくて、できるだけ具体的な、かつブラジルならではの特徴のある個別案件を提案していくというのが一つ切り口であるのかなというふうに考えております。

 あと、アイテムとしてはですね、汎用品の競争ではなくてですね、やはりその日本ならではと、技術も生かして、ブラジル国内での高機能や付加価値製品の市場開拓をして、そういうビジネスを追求していくというのがあるのかなと思っております。

 あとは、これは悪い時も良い時も継続的にやってきている、またやっていかなきゃいけないことですけど、ブラジル、かなり複雑な色々な制度がありますので、現地制度の経験を積んでいくといううことと、信頼できる地場の現地パートナーを開拓して、人間・ビジネス関係を強化していくということが大切なのかなということで。

 あと、最後の2つはですね、日本・ブラジル両方へのアピールなんですけど、広報、宣伝活動、またブラジルの将来性のアピールということで、今年はジャパンハウスも大分成功裏に進んでおりますし、来週クリチバで日伯経済合同委員会もございますし、やはりブラジルをアピールしていく、その中で、例えばそういう機会をとらまえてブラジルアピール特集記事などの掲載とかですね、そういうところでもブラジルを打ち出していくという努力もしていくべきなのかなというふうに思っております。

 最後、これは前回も同じでしたけど、やはり同じベクトルを持っている、ドイツとかアメリカとかですね、他の商工会議所とのコラボレーションとかですね、このカマラの中でも他の部会と連携の上、貿易・投資促進上の課題を整理した上で、提案を当局へしていくということが必要なのかなということで。すいません、ちょっと羅列になりましたけど、こういうことをやっぱり、よく整理して、グラウンド・ゼロじゃないですけど、ゼロ、1に戻ったと思ってですね、地道にこれからもやっていくということが大切ではないかということで、貿易部会として話をさせていただきました。

 すいません。長くなりました。以上でございます。

司会

 今井部会長、たいへんありがとうございました。そうしましたら、ご質問のある方、挙手をお願いいたします。はい、ありがとうございます。マイクをお願いします。

質問者

 スライドの33番の主要商品別の輸出のところなんですけれど、鉄鉱石とか、粗糖、あと鉄鋼半製品について、数量の増減に対して金額がすごく増していると思うんですけれども、価格の変動とか、あと為替の影響以外の理由がもしあったら教えてください。数量があまり増えていないのに対して、金額が増えているという点です。

今井部会長

 そういう意味では、例えば鉄鉱石ですと、例えば去年の前半ですかね、確か下ではトン当たり40ドルぐらいになったと思います。で今、足元ですね、確かトン当たり75ドルとか、そういう推移なんですけど、その間で動いていますけど、ですので、少なくとも値段は倍ぐらいになっているということでございまして。あと、ブラジルからの鉄鉱石の輸出もですね、まあ金額ほどではないですけども、少しずつ増えているというふうに認識しております。

 鉄鋼製品につきましても、今の鉄鉱石ほどじゃないんですけども、どうでしょう、去年と今年ですと1.5倍ぐらい、かなり上がっているのかなと。まあ1.3倍から1.5倍ぐらいだと思いますけど。例えば、今のブラジルの鉄鋼会社の業績を見ましても、去年はほぼ皆さん、残念ながら全社赤字。確か一部黒字がゲルダウとアルセロール・ミッタルぐらいだったとのかなと思うんですけど、今年はですね、多分、年間で見ると、特に下半期はですね、ほかの製鉄会社も含めてかなり業績は回復しているというふうに、これは巷間出ておりますし、私自身もそういうふうに思っております。

司会

 ありがとうございます。他にご質問ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、今のお話ですけれども、金額ベースでは輸出は19%伸び、輸入も7%伸び、共に伸びている中で、貿易収支は黒字傾向。そして対内直接投資も堅調に増えているというお話であったかと思います。

 ただ、その中で日本のブラジル向け投資が唯一減っているというところがちょっと寂しいというところの中での、今後の戦略のキーワードとしましては、足元固め、中長期的視点、成長分野、ボラティリティを受けにくいビジネス分野、ブラジルならではの個別案件、高付加価値、高機能というというところがキーワードとしていただいたと思います。今井部会長、たいへんありがとうございました。

今井部会長

 どうもありがとうございました。

司会

 続きまして、機械金属部会の池辺部会長にお願いいたします。

 

機械金属部会

池辺和博 部会長

            

 

 皆さんこんにちは。機械金属部会、日立製作所の池辺です。よろしくお願いいたします。

 早速ですけれども、本日の発表内容について。まず最初に、これは前回も同様ですけれども、機械金属部会に関連するマクロ経済指標を3つほど紹介させていただいて、その後、我々機械金属部会は多種多様の業種・分野の方々が会員となっておりますので、これ毎回のことなんですけども、今回のこのシンポジウムに際してレポートを提出していただきました企業をこのように鉄鋼、電力、建設機械・業務用空調、切削工具・ベアリング、トラクター・非汎用圧縮機という形で、5つといいますか、8つに分類して報告させていただきます。そして最後に、本日の副題となっております「回復途上のブラジル経済-いま打つべき戦略は」ということについて触れさせていただきたいと思います。

 それでは早速、機械金属関連に関係するマクロ指標としてですね、まずブラジル鉱工業生産の対前年推移。これは先ほど金融部会の方からもグラフが出ておりましたけども、金融部会の方は四半期単位でしたが、これは月単位となっております。

 前回の時にも紹介したんですけれども、我々の機械金属の製品はですね、生産現場で使用されることが多くて、製造業のお客様が多いんですけれども、2014年4月以降ですね、今年の1月まで、34カ月連続で前年比マイナスが続いておりました。ということで、長い生産活動の停滞が続いていたということが見て取れるんですけれども、ただ、今年の2月にですね、35カ月ぶりのプラスということになっておりまして、その後今年に関して言いますと、2月、それから4月、6月、そして7月とプラスということで、やっとまあ長いトンネルを抜けてきているのかなというのがここで見て取れるかと思います。8月以降もですね、この調子で上方のグラフが続くことを期待している次第です。

 続きまして、これもやはり同じく経済生産活動の指標と言えるかと思いますけれども、段ボールの生産の対前年比較でございます。ご承知の通り、経済生産活動が活発になりますと、梱包や輸送に使用される段ボールの需要が増える訳ですけれども、これもやはり製造業の活動の一つの目安になるかと思い、これを示しております。

 これも前回に示したんですけれども、これは四半期単位の数字ですが、これは2016年の第4四半期まで13四半期の連続のマイナスというふうになっております。すなわちこれは3年以上ですね、マイナスが続いているということになります。

 ただ、今年、これはグラフにはプロットしておりませんが、2017年第1四半期に関しましては、やっと14四半期ぶりにプラスというふうになっておりまして、あとこれは単月になりますが、4月はマイナスだったんですけれども、5月、6月ともにプラスということで、これはまだ合計が出ていませんが、多分第2四半期もですね、プラスに転じたということで、こちらの方も先程の鉱工業生産と同様、生産活動が底を打って、回復基調に向かっているのかなというのは見て取れるかと思います。

 続きまして、これは建設関係の実績でございます。我々機械金属部会の中にはですね、建設機械、あるいは空調設備関連の会社もございまして、建設業の動向というのも非常に気になるところでございます。

 これも先回にお見せしたんですが、ご覧のように、これも四半期単位ですが、2014年の第2四半期から今年の第1四半期まで相変わらずマイナスが続いております。加えて、やはり政府の財政赤字によるインフラ投資の見送り、あるいは企業の設備投資の抑制、またラバ・ジャットによるゼネコンの体力低下等がいまだに影響しておりまして、今回このグラフを追加したのが2016年第4四半期と2017年第1四半期なんですけれども、マイナス幅がですね、さらに大きくなっているということで、先程の製造業と違って、この建設・建築関係に関しましては相変わらずまだ底が見えないと言いますか、先々まだ苦しいというのが見て取れるかと思います。

 以上のマクロ経済の状況を受けまして、我々機械金属部会のですね、業種別の報告をさせていただきます。

 まず鉄鋼関連ですけれども、こちらの棒グラフ、これは先回も使わせていただきましたけれども、昨年、2016年まで5年連続で粗鋼生産が前年比を割り込んでおります。それでですね、今年2017年の前半、1月から6月の状況なんですけど、生産に関しましては、ここにありますように前年比12%のプラスということで、まあ6年ぶりにですね、増加に転じているということが言えると思います。ただ実は、これはですね、Valeと韓国企業の合弁でCSP社という製鉄所が新たに昨年の暮れに稼働しまして、この数字が単純に上乗せしているということが大きく牽引しておりまして、既存メーカーだけで見ますとほぼ横ばいというふうになっております

 その表れとしまして、ここの国内販売なんですけども、国内販売は相変わらずマイナス、マイナス2%というふうになっております。まあ自動車の生産がですね、回復基調になってきていまして、鋼板としては5%伸びているんですけども、やはり先程の建設関係、それから機械等の需要回復は遅くて、全体ではやはり2%の減というふうになっております。

 輸出に関しましては、先程紹介しましたValeと韓国企業の合弁会社でありますCSP社の生産がですね、スラブを生産しているんですけども、ほぼ全量を輸出に回しております関係で、この半製品が14%伸びております。したがって全体もですね、前年比9%の増というふうになっています。

 一方で輸入なんですけど、昨年ブラジルメーカーが値上げをした関係でですね、後半から輸入の増加傾向が続いておりまして、今年の上半期も前年比64%と大幅増となっております。

 2017年下期の展望ですけれども、生産に関しましては、先程来言っておりますCSP社が、輸出専門的な生産ですけれども、この影響がありまして、全体で6年ぶりに増加に転じるだろうというふうにみられております。ただ、後半はCSP社の分が純増とはなりませんので、この分を考えますと全体で前年比3.8%の増かというふうに見られております。

 あと国内販売ですけれども、先程来ありますように自動車の生産は緩やかな回復がされているものの、やはり建設等の需要が弱くてですね、年間でみますと1.3%の微減というのを予想しております。

 ブラジルの鉄鋼院の会長の言によりますと、ブラジル国内販売が最高であった2013年のレベルに戻るのはですね、2028年、すなわち今からまだ10年後というふうに言っておりまして、まだまだやはりV字回復というのは難しく、回復には大きく時間がかかるだろうというふうにみられております。

 というわけで、我々機械金属部会のですね、鉄鋼業界向けの設備関連のビジネスは非常に厳しいものがあるんですけれども、ただ製鉄会社もですね、ここ4、5年ほとんど投資を凍結しておりましたので、やはり保守関係の引き合いが最近はやはり増えてきておりまして、我々としてはそれなりの引き合いを具体的な案件につなげてですね、投資の回復を引き寄せていきたいと思っております。

 続きまして電力ですけれども、こちらの棒グラフ、これも実は先回お見せしたんですけども、やはり生産活動を主体とする経済活動の停滞によりまして、2015年、16年と電力の消費は2年連続で前年比を下回っております。2017年の上期につきましても、経済活動の回復は弱く、前半では0.4%の増、増にはなっているんですけども、ほぼ横ばい状態ということでございます。

 あと、工業分野の方の電力消費もですね、2016年10月まで32カ月の減少が続いておりましたが、昨年の11月にプラスに転じて、2017年の前半はですね、まあこれもほぼ横ばいなんですけども、0.05%の増というふうになっておりまして、ここでもですね、鉱工業生産の活動が多少は上向き傾向にあるのかなというふうに見てとれるかと思います。

 その、需要が減少している中でですね、昨年新しい水力発電とか、あるいは風力発電の稼働が開始した関係で、総発電容量は今152ギガワットとなっておりまして、電力需給のギャップの方は逆に広がっております。したがいまして、2017年の前半にはですね、エネルギーオークションの実施はなく、あと年末に向けて二つほどオークションは予定されているようなんですけども、まだ詳細については未定となっております。ちなみにA-4、A-6と書いてありますのは4年後、6年後稼働の案件ということです。

 また、これは参考になるんですけども、ブラジルの発電に関する構成比なんですが、水力発電が、大型とそれから小型含めますと約67%になっております。それから火力の方がですね、2年ほど前の水不足による発電減をカバーするために若干伸びておりまして、26%。それから風力が約6%ということで、再生可能エネルギーでは風力が伸びております。ちなみに太陽光はまだ0・何パーセントということで、ほとんどまだ数字にならない状態でございます。

 というわけで、電力関係の我々のビジネスも非常に厳しいものがございまして、まだまだ電力会社からの投資もですね、大きなものは期待できないということで、電力関連ビジネス、まだまだちょっと苦戦を強いられるのかなというふうにみております。

 続きまして、建設機械と業務用空調ですけれども、どちらも建設に非常に密接に関係しているものかと思います。その建設業がですね、先程見ましたように、今年に入っても大きく落ち込んでいて、まだまだ不振にあえいでいるという状況でございますので、それを証明するかのようにですね、油圧ショベルの販売台数でみてみますと、すでに2015年、16年と30%以上の前年比ダウンを経験しておりまして、この2年で2014年に対して半減している訳ですけれども、今年1月~6月、上半期をみましてもやはり21%のダウンということで、相変わらずの下降傾向が続いているということでございます。

 下期も大きな回復というのも見込めませんので、3年連続の需要減というのは必至の状況かと思います。ちなみに弊社グループ関連の建設機械の会社はですね、従来北米の方から輸出しておりました南米向けの輸出をですね、このブラジルからの出荷に肩代わりさせていただいてですね、生産と販売をまあキープしているというような状態です。

 そのほかに、小型建機に関しましても状況は同じといいますか、さらに悪くてですね、これも先回紹介したんですけども、小型建機に関しては2015年、16年ともに40%以上の前年比ダウンをしております関係で、こちらの方は2014年に対して3分の1ぐらいの市場になってしまっているんですけども、今年に関しましては、上半期、縮小幅は少なくなっていますけども、相変わらず15%の前年比ダウンということでですね、こちらに関しても3年連続のダウンというのはもう免れられないものだと思います。したがって、建設機械以外のですね、農業や製造業、あるいは墓地等への需要でカバーしているというか、しのいでいるというような状況でございます。

 続きまして業務用空調ですけども、こちらの方もやはりビル、工場等の建設減によって需要が減っておりまして、2015年、16年と2年連続でマイナスが続いております。まあ空調の方はですね、既存ビルの交換だとか、あるいは増設需要も多少はありますので、先程の建機ほどの大きい落ちはないんですけれども、さらに2017年、今年の1月~6月に関しましては前年比96%と、まあ4%ダウンですけれども、減少幅はかなり縮小し、ほぼ底をついたのかなというふうに言えるかと思います。

 2017年の展望ですけれども、やはり先程から言っていますように、建設業界の回復というのはおそらく2019年以降になるだろうというふうにみておりますので、建機に関しましてはまだまだ厳しい期間が1年以上続くだろうと。業務用空調に関しましては、まあこの下期、2017年後半の、天候にも左右されるんですけども、交換需要等で微増を見込んでおりまして、17年通年ではですね、ほぼ前年比横ばいというふうに見ております。

 続きまして、切削工具とベアリングですけども、こちらはどちらも主要顧客が自動車業界ということで、後ほど、私の後に自動車部会の方からも詳しい紹介があると思いますので、簡単にですけれども、これも昨年まで4年連続で自動車の生産がマイナスとなっておりました。ただ、この2017年上期に関しましては、各社さんの輸出増もございまして、前年比23%増というふうになっております。

 また、最近ですね、年間予測も21.5%増へと上方修正されていまして、自動車の生産の方は回復傾向にあるというふうに聞いております。したがいまして、切削工具、あるいは金属加工油剤に関しましても、自動車生産向けに受注が増加傾向というふうになっておりまして、さらには比較的好調な農業機械や金型分野等からの受注もございまして、堅調に推移し始めているということでございます。

 下期に関しましても、まあ自動車の生産は先程言いましたように上方修正されておりますので、自動車生産向けの受注が穏やかに増加傾向になっていくだろうと期待しております。

 ベアリングなんですけども、こちらももちろん自動車生産の回復に応じて良くはなってきているんですが、一方で二輪の方ですね、四輪の方は伸びてきているんですが、二輪の方は相変わらず生産の落ち込みが続いていて、かなり深刻な状態、まだまだ底が見えないというようなふうに聞いております。従来は四輪よりも先に二輪がですね、回復が始まって、それに自動車が付いてくるというパターンだったのが、今現在はそのパターンも崩れて、かつ二輪の方はまだ見えないというふうに聞いております。

 ということで、一般産業機械向けに力を入れているんですけども、農業機械等の生産は大幅な増加になっているものの、全体的にはほぼ横ばいというような状況ということです。

 下期に関しましても、自動車の生産の方は好調ですが、二輪の落ち込みがまだまだ底が見えないということで。さらに言えば、昨年来注力されて来られていました消費者の現有車修理向けアフターマーケット、こちらの方も一時の勢いを失って、反動減が見込まれてですね、全体的にはやはり厳しい見込みというふうにうかがっております。

 続きまして、トラクターと非汎用圧縮機ですけれども、トラクター、農業の方はですね、昨年の後半以降非常に堅調に推移しておりまして、2016年のトラクターの販売で既に96%、要はマイナス4%ということで、まあ今まで見てきました大幅前年割れが続いている他分野に比べればですね、非常に早く底を打っているのかなというふうに見えます。2017年、この上期に関しましても、前年比127%ということで、農作物の収穫も良好、政府の農業向け低利融資も発表されてですね、非常に回復基調だというふうになっておりまして、これ実は機械金属部会の他の分野からは非常にうらやましい限りでございます。

 下期に関しましても、農作物の収穫も概ね良好が続くようで、全体的には回復が続くだろうということで、トラクターの販売もですね、年間では20%ぐらいの伸びが期待できるのではないかということでございます。

 最後に非汎用圧縮機ですけども、こちらは今のトラクターとは正反対と言いますか、主要用途が資源開発、石油精製、石油化学ということで、まあ昨年まではですね、ペトロブラスの投資の抑制、それから資源価格の低下等がありまして、これは先回も使ったんですけども、2016年の数字が前年比でマイナス70%ということで、もう惨憺たる状況であったということが言えます。

 で、今年なんですけども、2017年上期、これは上期、1月~6月までのガスコンプレッサーの輸入額の実績なんですが、上期の累計を2016年通年の累計と比較している、要は進捗でございます。この進捗でみますと、全体で35%ということで、まあレシプロコンプレッサー以外はですね、半年を過ぎてまだ35%ですから、再びマイナスの状況であるということになっております。一方で、原油価格の50ドル近辺での落ち着き、それからラバ・ジャットの方も一段落した関係でですね、ペトロブラスの案件や改造案件等の引き合いも徐々に増えてきているみたいですが、ただまだ低レベルということで、喜べるような数字にはならないというふうに聞いております。

 したがって、下期に関しましても、そのような少ない案件をですね、実案件化、実ビジネス化していくことを期待しながらやるということと、それからプレサルにおけるペトロブラスの30%以上の権益優先権の撤廃ということがありますので、まあ海外資本の投資に期待したいというふうに考えております。

 以上が我々の業種分野の発表でございました。続きまして最後の副題「回復途上のブラジル経済-いま打つべき戦略は」ということで、会員企業のコメントを整理した形で紹介させていただきます。

 最初にこの副題の、回復途上のブラジル経済、回復途上かということにまあ異を唱える訳ではないんですけど、先程来見ていますように、まだまだ、先程の農業と非汎用圧縮機じゃないですけども、業種によって状況がかなり違いまして、機械金属部会全体的にはまだまだ厳しいというのが実感かと思っております。

 加えて、政治的混乱もまだまだ続いておりまして、これが来年の大統領選挙まで続くとすればですね、本格的回復というのは2019年以降になるのではないかということで、先程貿易部会の方でも話していました、日本企業、中々長期の視点で見れないので、真剣にですね、ブラジル事業継続の岐路に立っているという会社もございます。 ということで、逆に、本当に回復途上にあることを、早くうかがえることを切に希望しているというのが、まず最初に言いたかったことでございます。

 それを受けてですね、どの時期においても妙案とか、特効薬というのはないかと思いますので、今のこの時期の戦略というよりもですね、常に行っている事ですけども、その辺をここに書いてございまして。まず最初には、もし景気回復している企業、あるいは好調な企業・業種がございましたら、そこを積極的に攻める。新規開拓、顧客開拓をするということ。で、保守・アフターサービスを含めてですね、小さくとも隠れた需要を発掘するということがまず第一。

 それから、ブラジルの不振をカバーすべく、周辺国への輸出や営業を強化するということを行っております。

 で、当然ですけれども、コストの削減ということで、お客様の投資額が限定されておりますので、相対的価格競争力の強化と、顧客の投資額低減を図ると。一方で、自社の、まあ人員削減、経営の現地化等を図ることによって、人件費の削減等を行うと。

 そして最後に、品質の向上。コストを削減しながらもですね、品質の方は競争力強化、上げていくということで、さらに、何と言いますか、閑散期とは言いませんけども、さほど忙しくない時にですね、親工場なり親会社の支援を受けてこちら現地の技術力をアップするというようなことを進めております。

 以上が機械金属部会の発表となります。どうも、ご清聴ありがとうございました。

司会

 池辺部会長、たいへんありがとうございました。それではご質問のある方は挙手をお願いいたします。どなたか、ご質問ございませんでしょうか。それではひとつだけ、私から。最後の副題のページで周辺国での営業強化というのがあったかと思うんですが、もう少し詳しく教えていただけることがあれば、おうかがいできればと思います。

池辺部会長

 やはりこのブラジルの企業ですね、基本的には、南米においてはブラジルが今まで中心でやってこられたところが多くてですね、そのブラジルがこういう状況なので、それをカバーすべく、チリ、コロンビア、ペルー、あるいはアルゼンチン、最近でいうアルゼンチンとかですね、その辺向けの出荷、あるいはブラジルから出さなくても日本からなりの出荷を増やすべくですね、その辺に力を入れているということです。

司会

 はい、ありがとうございます。他にご質問ございませんか。よろしいですか。はい。そうしますと、今のご発表ですけれども、鉱工業生産はじめマクロ指標は低調ながらもやや底打ち感は出てきたと。ただ建設は引き続き不調であると。そして、鉄鋼はじめセクター別に見ると、それぞれ違いはあるものの、平均として横ばいか、まあやや厳しめかもしれないと。その中で、自動車、あるいは農業関連に明るい材料があると。そして戦略面では好調な業種での新規開拓、隠れた需要の発掘などについて触れていただきました。たいへんありがとうございました。

 そうしましたら、続きまして自動車部会、溝口部会長よろしくお願いします。

 

自動車部会

溝口イサオ 部会長

            

 

 

 皆様、改めまして、こんにちは。それでは、私から自動車部会の報告をさせていただきます。今回は、主に2017年上期の振り返りと、下期の展望について、四輪業界、二輪業界の順に説明させていただきます

 まずはじめに、四輪業界の2017年振り返りでございます。

 2017年上期の自動車市場は約102万台、前年比104%と、4年ぶりに前年を上回り、ようやく底打ちからの回復が数字に表れるようになりました。一方、輸入車比率については、ここ数年のレアル安トレンドの影響を受け、10.4%と6年連続で低下しています。

 続きまして、こちらは月別販売台数です。左側が2016年、右側が2017年上期となりますが、今年3月の販売実績は2014年12月以来、実に27カ月ぶりに前年を上回りました。また、5月、6月も前年を上回り、下期への期待が持てる実績となりました。なお、直近の7月実績も18.5万台、 前年比102%と、引き続き前年を上回っております。

 また、在庫月数については1カ月台前半で推移。引き続き適正な在庫水準となっております。

 こちらは生産と輸出の推移です。2017年上期の総生産台数は126万台。前年比124%と大幅に前年を上回りました。また、輸出台数については37万台。前年比166%と、上半期として過去最高の台数を記録しました。こちらは、昨今の国内市場縮小およびレアル安トレンドにより、各社が輸出シフトを進めてきたためと言えます。

 こちらは輸出台数をカテゴリー別、輸出相手国別に見たものです。上のカテゴリー別を見ていただくと分かる通り、乗用車を中心に大幅に前年を上回っているのがお分かりいただけると思います。

 その下にございます輸出相手国別では、販売が上向きとなっているアルゼンチン向けのほか、中南米域内への輸出が増えています。

 次に、中古車・新車別の販売台数です。新車市場に回復が見られる中、中古車の上期実績も前年を10%上回りました。年間でも昨年同様、約1000万台の規模を維持する見込みでございます。

 続きまして、こちらはブランド別の販売台数とシェアの実績です。右側の16年通期および17年 上期の実績を見ていただくと、昨年と比べて大きな順位の変動はありませんが、Fiatが1.7%ほどシェアを落としている一方、同じFiatグループであるJeepのシェアが1%以上伸びています。また、GMとワーゲンが若干シェアを伸ばすなど、上位に復調の兆しが見える中、日系ブランドも引き続き堅調な販売を続けております。

 次に、上期における最大のトピックは、やはり市場の回復が目に見えて表れたということだと考えますので、こちらのページにそれをまとめております。

 上期に得られた好材料としては、まず経済指標がさらに好転し、特に失業率が低下に転じたこと。また、FGTSという保障基金を引き出せる条件が広がりました。そういった中で、自動車市場も販売台数、輸出台数が前年を上回り、工場稼働率が昨年は半分を下回っていたのに対して、今年は50%まで持ち直しています。

 また、長期的な観点で言うと、労働法改正案が下院・上院で可決され、労働法の近代化が進むといった点も、業界としてはポジティブに受け止めて良いと考えています。

 一方、懸念事項としては、5月にテメル大統領の汚職隠蔽疑惑が発覚したことが挙げられます。自動車業界では、市場回復に向けた準備が整いつつある中、政情不安は払拭されておらず、安定的回復を確信するには至らないといった状況です。

 次に2017年下期の展望に移ります。

 こちらは2017年の自動車業界予測です。左が年初に立てられた予測、右が今回の修正予測になります。

 まず上段の国内市場から見ていきますと、ANFAVEAは通常6月に販売予測修正を発表しますが、今年は6月時点でいまだ予測を分析中とし、前回予測をスライドさせています。

 一方、自動車部会は年初時点で210万台と予測しておりましたが、回復が予想より少し早まったため、5万台ほど上方修正し、215万台とさせていただいております。

 なお、販売についてのANFAVEA修正予測は9月頃に発表されるのではと予測されています。

 次に、その下段にある輸出台数について、ANFAVEA予想は直近のトレンドを反映し、前回より15万台の上方修正。生産台数については20万台の上方修正をしていますので、自動車部会もその数字に合わせた予想としております。

 続きまして長期展望に移ります。

 こちらは現状の経済、市場環境を踏まえた長期予想ですが、先ほどご説明の通り、足元の市場で回復傾向が見られ始め、長期的には緩やかな成長基調と予想されます。一方で、安定的回復に向けては、引き続き政治状況とその経済への影響を注視する必要があると考えております。

 次に、長期展望のトピックとして、今年で終了する「INOVAR AUTO」に替わる自動車政策の枠組み、「ルート2030年」(Rota 2030)を紹介いたします。まだ議論・検討中のため、具体的なことは申し上げられませんが、こちらにございます通り、自動車部品サプライチェーン、技術開発・生産技術、環境、安全、少量生産ブランド、競争力のあるコスト構造、という6つの領域に分け、政府、ANFAVEA、自動車会社など業界全体で議論を推進しておりますので、こういった動きとも連動しながら事業を進めていく必要があります。なお、具体的な方向性は来月末にまとまる予定と聞いております。

 続きまして、日系ブランドの課題への対応についてご説明いたします。

こちらは昨年のシンポジウムより一貫してご説明させていただいております、日系ブランドとして認識している課題と、それに対する各社の取組みです。今回は、上段の事業体質の強化について各社のアップデートがありますので、そちらを紹介させていただきます。

 まず、トヨタさんでは、前回紹介させていただいたエンジン工場に加えて、Etiosのブラジルからコスタリカおよびホンジュラス向けの輸出を今年6月から新たに開始されました。また、カローラの中南米向け輸出もさらに拡大される予定と聞いております。

 一方、日産ではKicksという小型SUVのブラジル生産を今年4月から開始され、今期中に輸出を開始するというアナウンスがされています。

 弊社では、ブラジルで開発いたしました小型SUV「WR-V」を2月からブラジルで生産を開始、3月からは南米域内への輸出を開始しております。

 このように、ブラジルからの輸出拡大を通して、為替影響を回避するとともに、量を束ねることによってコストを低減し、事業体質のさらなる強化を図っています。

 それでは、四輪パートの総括に移ります。

 この半年を振り返りますと、主要経済指標がさらに好転し、販売・生産台数など回復が目に見えて表れ始めました。一方で、政情不安により、持続的回復に向けては懸念があります。

 このような状況への対応としては、やはり、引き続き環境変化に負けない事業体質強化を推進すること、具体的には現調化と輸出によるコストと為替影響の低減が必要です。

 一方で、それらの加速には、先ほど説明いたしましたルート2030年を含め、官民連携の下で自動車産業の枠組み作りが必要と考えております。

 それでは、そのような背景を踏まえた政府への提言でございますが、これまでも申し上げてきました、こちらの1~3の項目に加えて、先程のルート2030年についても入れさせていただいております。

 具体的には、内外差別や過度な国産化要求がされないこと、新技術の導入を推進する政策であること、燃費基準等国際基準に調和した内容であること、といった点について、引き続き業界全体で議論していく必要があると考えておりますので、どうか皆様ご協力賜りますようよろしくお願いいたします。

 四輪については以上となりまして、続きまして二輪業界について簡単に触れさせていただきます。

 まず、生産・販売の動向です。長引く不況や、依然高い失業率による購買力の低下などから、2017年上期の国内卸販売実績は40万台。前年比89%と6年連続で前年割れとなりました。また、生産は42万台。前年比91%となりました。昨年に比べると下げ幅が縮小してきてはおりますが、二輪はまだ回復には至っていない状況でございます。

 こちらは登録ベースの月別販売推移です。

 前年比で見ますと、5月が前年同月を上回り、その他の月も下げ幅は縮小傾向にあります。そのような状況から、クレジットの緩和、金利低下などにより、下期には緩やかな回復を期待しています。

 二輪についても四輪と同様に、市場状況に応じた事業体質強化、および商品競争力強化を推進することにより、回復時の飛躍につなげたいと考えております。

 はい。以上で自動車部会の報告とさせていただきました。ご清聴ありがとうございました。

司会

 溝口部会長、たいへんありがとうございました。それでは質問のある方、挙手をよろしくお願いいたします。はい、お願いいたします。

質問者

 販売の件なんですけども、四輪が回復傾向にあって、二輪がまだまだ減っているという事に関して、見方としましては、中間層の購買力は上がっているけれども、中間層未満の購買力が回復しないという見方なのか、それとも、中間層以下の購買力も上がって、二輪を卒業して四輪へステップアップする層が増えている、どちらかなというのをお聞かせいただければと思います。

溝口部会長

 中間層の購買力が良くなったとは思えないんですけども、例えばブラジル社会はA・B・C・D・Eと分けますね、その、統計的に、所得によりまして。やはり今回の、不況と言うんですかね、C・D・Eが一番影響を受けています。実は、統計的にはいま失業率は13・何パーセントとか言っていますね。

 これをABCで分けますと、実はDとEクラスは30%なんです、失業率は。それがちょうどオートバイを買っていただくお客様なんです。実は地域によってもまだ差があるんですよね。東北と南、これもまた。ということは、ブラジルは平均で語れないわけですよね。統計的には13とか言っていますけども、それをかなり分析しないと分からないんですけども。

 一方、自動車産業、特に日系ブランドですか、これはワーゲンとかFiatに比べると落ち幅が少ないんですよね。ほとんど下がっていないんです、生産が。これは何が理由かと言うと、先程の二輪の説明と同じなんです。ワーゲンもFiatも大衆車が多い訳です。

 だから、失業率とか、まあ失業率以外に、御存知かと思いますけど、ブラジルの世帯の6割がすごい借金しているそうなんですよね。この借金は実は2009年、10年ごろに始まっているんです。いまだに払えないんですよね。払えない上に仕事を失った、だから底辺の方は非常に苦しい訳で、もう少し時間がかかるのかなと、二輪については思っています。

司会

 はい、ありがとうございます。他にご質問ございませんでしょうか。はい、お願いします。

質問者

 輸出の台数が飛躍的に伸びているのも本当にすばらしいことだと思うんですけども、まあブラジルは昔からブラジルコストという、色んなコストアップのファクターが多くてですね、中々輸出にはそんなに向いていないんじゃないかと、勝手にまあ私そう思っていたんですけども、で、為替も安定している中で、なぜこういうふうに競争力を持って輸出が増えたのか。元々ブラジルコストはあったんだけど、それでもやっぱりブラジルの自動車というのは競争力があったのか、あるいはもちろん各社さんの努力でコストを削減されているのか、その辺のことをちょっとお伺いしたいなというのが一つです。

 もう一つは、実際に競争力があったとすればですよ、先程仰った政府への低減、こういうことが本当に認められれば、さらに競争力が出て、もっと輸出が増えるということなので、日系の自動車会社さんだけではなくてですね、外国企業の自動車会社と連携して政府に対するアプローチをしているといったような事情があるのかもちょっと教えていただければと思います。

溝口部会長

 はい、あの、正直言って競争力があるとは思えないんですよね。かなり努力があると思います、各社。やはり、為替リスクヘッジ、それと、国内の工場の稼働率を少しでも上げたいという気持ちがありますから、まあリスク対応と考えられた方がいいのかなと思いますね。よその会社の実力は良く分かりませんけど、多分、ブラジルコストは皆同じですから、多分苦しいとは思います。

 ただ、まあ確かにブラジルコストというのはございますけども、もう、変わらないでしょうねという。じゃあどうやってブラジルコストと共存するかといいますと、やはり、例えば、一人一人の従業員の給料は安いんですけど、会社負担の労務費として出ていくお金は本人の給料の倍以上でしょ。

 そういうのがすごく影響しますよね、コストに。例えば弊社でいいますと、ブラジルの二輪工場でも四輪工場でも、生産効率という観点で言えば、各部門、例えば溶接とかプレスとかございますけども、世界トップレベルなんですよ。生産効率といいますと。だけどコストに換算すると、世界一高いんですよね。だけど働いている人がね、世界一の頑張り屋なんですけど、お金に換えますとたいへんなんですけど、それが労務費、電気代とかですね。

 だからやはり我々は、労務費が高い、しょうがない、もう自動化するしかない、以前からやっているんですけども、さらに自動化を進めていくと。電気代が高ければ自分で作るしかない、うちは風力発電をやっていますよね、例えば。まあ税金は払うなとは言いませんけど、節税、税金も高い国ですから、税金は節税する方法を考えるとか。

 それと、やはり、例えば安定している時期でも次に何が来るか分からないのは、まず為替リスクですよね。あとインフレもございますけどね。インフレは今後少しは安定、過去みたいに月50%というのはもう来ないのかも知れませんが、やはり為替はこわいですよね。そこらはやはり、輸出を、輸入した分くらい、輸入した金額分ぐらいは輸出して、どっちに転んでもいいように。ただ技術的には難しいですよ。ブラジルコストをどうやって。輸出するにも高ければ誰も買ってくれませんので。と考えております。

司会

 はい、ありがとうございました。他にご質問ございますでしょうか。それでは今のご発表ですけれども、四輪の方は販売が回復傾向にございまして、下期がたいへん期待されると。それから生産も大幅に前年を上回り、輸出は過去最高水準に近付きつつあるということで、全体としては安定しているとは言えないけれども、市場の回復が感じられると。

 一方二輪の方は、今お話にありました通り、生産・販売もまだ回復に至っていないと。一方で戦略の方ですけども、現地生産、それから中南米地域への輸出の拡大等、事業体質の強化を進められるということと、それからルート2030での取り組みがしっかり効力のあるものになるよう働きかけていくと。こういうお話だったかと思います。たいへんありがとうございました。

 続きまして、コンサルタント部会、西口部会長よろしくお願いします。

 

コンサルタント部会

西口阿弥 部会長

             

 

 

 コンサルタント部会の西口です。どうぞよろしくお願いします。では早速始めたいと思います。

 構造改革は必要でありますが、ブラジルは世界でも投資するのに魅力的な国です。EYでの世界対象のアンケートを行い、投資をしたいトップ10の国は、1位がアメリカで、中国、イギリス、ドイツ、カナダ、フランスに次いでブラジルは7位となっています。

 経済成長へのドライバーですが、まず政治的、産業環境から申し上げますと、産業によっては厳しい状況にあり、なかなか回復の兆しはこれからであると聞きます。しかし一般的には、2017年からブラジルは景気回復の兆しが見え始め、市場の回復につながるのではと言われています。

 政治的にはまだ不安定で、残念ながら必要な改正成立が遅れる可能性はあります。幸いにも労働法改正は7月に議会で承認され、11月に施行されますが、税制改正、年金改革についてはまだ成立しておりません。

 経済については、一般的には、2016年に底を打ち、2017あるいは2018年から回復し始めるのではと言われております。インフレは落ち着き、政策金利Selicの引き下げも行われましたが、残念ながらまだ消費者用の貸出金利については、経済の不安定性、不透明性から同じ比率で下がっておりません。それでも、天然資源が豊富で、大きな消費基盤を持つブラジルでインフラ開発への投資がされ続ければ、投資するのに魅力的な国であります。

 「回復途上のブラジル経済-いま打つべき戦略は」。コンサルタント部会では、まだ回復途上である間、特に政治的には不安定ではありますが、経済回復の見込みがあり、低いマルチプル、弱い通貨では、M&A環境が好ましいのではとの意見がありました。

 労働法改正によって、以前問題となっていた特定な場合の通勤時間を勤務時間に入れないことや、残業のフレキシブル化によって、社内の人事ポリシーなどについて整理することも考えました。業務プロセスのデジタル化やロボット化については、特にロボットについてはまだ将来先のようですが、他の国などの企業の動向などを見て、特定業務の効率化、アウトソーシング化などについても考えるのはどうでしょうか。

 コンサルタント部会では、特に会計士や、日本で言うブラジルの税理士にあたる業務については、将来93~84%の業務をロボットがこなすことができるとされていて、切実なチャレンジとなっております。

 コンプライアンスでは、2018年に導入されるeSocialとBlocoKについての準備をすること。税務についてはキャッシュフローの圧迫の対応策としてはPERT、連邦税の決算特別プログラムで、国税庁、あるいは裁判で議論になっている連邦税を分割し、罰金などの支払いを税務上の欠損金と相殺可能とするプログラムを利用したり、または貯まったICMSのクレジットの対応で解消することを検討することが考えられます。また可能な場合、移転価格の計算方法を変えたりすることなどで節税も考えられます。

 キャッシュフロー対策としては、多くの日系企業は対応されており、在庫の管理、債権や、債務管理、資金貸借、増資や借り入れの比較分析などの検討をされております。

 コンサルタント部会では特に、景気回復に向けて、M&Aを行う際、現実はブラジルで買収後、中々その後の業績改善が見られない、投資の回収ができないなどと日系企業さんからの声を聞きます。ブラジルの状況も分かっている日系企業の担当者の方は多くいらっしゃいますが、中々日本の本社に、ブラジルの文化、なぜ必要以上なデューディリジェンスが必要なのかが説明が難しいと聞きます。それでは、できるだけ数字で表し、難しさを見えるように、件数や他の国との比較など「見える化」をすれば説明しやすいのではないかと意見がありました。

 また、先進国と発展途上国でのM&Aは気をつけるポイントが異なり、ブラジルでのM&A環境、ブラジルで案件が成立しない主な理由、リスクと課題についてと、労働リスクについての話をという声があり、発表したいと思います。ご参考までに2017年3月から4月にかけて行われた、EYでの45カ国、2300人対象の統計です。ブラジルの回答者は黄色、灰色はその他の回答者となっています。

 M&Aにつき、過去1年に買収計画を取りやめ、あるいは成立しなかった経験があったか。ブラジルの回答者は64%が成立させることができなかったとしています。そのうち、経済と政治の不安定性では65%。DDによって発覚した問題は59%となっております。他の国は43%となっております。ブラジルでのDDと同じ比率で、サイバーセキュリティに関する懸念で成立しなかったことが理由となっております。

 コンサルタント部会では、先程申し上げましたように、M&A環境がいま好ましいのではという意見がありました。またブラジルは、ラテンアメリカでは2億5000万人で最大な人口を持ち、ファミリーオーナーの事業が多く、特定産業については分断化していて、買収しやすい利点もあります。また特定産業分野は高成長の可能性もあります。インフラ投資も高い需要があります。また、特定の地域や産業については、税制優遇策もございます。

 ブラジルで案件が成立しない主な理由としては、大きな要素としてはブラジルと日本の文化の違いを考慮していない点がございます。DDに関しては、税務、労務はもちろん、会社や産業によっては不正リスクについてのDDや、人事のDD、環境のDDなどを行うことが必要な場合もございます。ブラジルコストに含まれる過剰なブロクラシー、M&Aに関する法的手順なども理由の一つです。税務、環境、労働問題などによる複雑な規制環境も挙げられます。特にファミリーオーナーの買収先のインフォーマルな経営品質、その管理も挙げられます。

 また、買収先が中々情報を提供しない。また、入手できても、その財務や他の情報品質が低いということも挙げられます。また、ファミリーオーナーの会社の公表されている情報はほぼありません。M&Aから得られる組織統合などから得られるシナジー、組織再編から得られる効果、ゲインの過剰評価、非効率な取得後、統合後の会社のモニタリングが挙げられます。ジョイントベンチャーなど統合した際のパートナーが財務問題を抱えている場合のリスク、取引が完了するまでの期間の過小評価、つまり考えている期間よりも多く一般的には時間がかかります。

 M&Aのリスクと課題については、文化要素はビジネス、交渉、DDなど色んな場面で異なることがあります。労務問題については後でお話します。財務については、租税、債務者の引き継ぎが注意点です。ブラジルの複雑な税法によるコンプライアンスが行き届いていないことへの税務リスク、組織再編に関わる課税もございます。特に財務・会計に関する情報の品質や、透明性に関するチャレンジは多くあります。オフィシャルに帳簿に記帳されていない取引、債務、見えないリスクがある場合も多くあります。

 ブラジルでCaixa2と言われている、帳簿に記帳されていないキャッシュなどがある小規模な会社、あるいは特定な産業もございます。小中規模の会社は、ITに関しては時代に遅れた、あるいはアップデートされていないERPなどを使用し、買収先のビジネスを理解することができないことで、買収後の統合の際に課題を残すことが多いケースがございます。

 ブラジルの会計基準はIFRSにコンバージョンされておりますが、大規模会社や上場会社を除き会社の義務はなく、IFRSが十分に認知されているとは言えない状況です。その結果、収益認識が曖昧であったり、開発費の資産計上や営業費用の繰り延べ費について会計方針の策定が不適切な場合がございます。また、訴訟損失や長期従業員給付にかかる引当金が計上されていない場合もあります。

 ターゲット会社が大口の売上やその他の収益、費用によって大きく利益が変わる構造であることがございます。変動費用に関しては、顧客への価格転嫁が難しく、結果、営業利益を押し下げる要因となることもあります。また、為替に対するポジションも不適格で、大きな影響を受けることもございます。売掛債務の未回収や入金サイトの長期化はキャッシュフローや経常利益率を減らすことになり、債権にかかる貸倒引当金や在庫のカ陳腐化、引当金不足は一般的です。

 次にブラジルの労働訴訟についてお話ししたいと思います。

 ブラジルでは労働訴訟の数は世界でも多いと言われております。日本の労働関係民事通常訴訟の受理数は2015年でも3389件で、労働審判は3679件、合計7068件です。ご参考までに、労働審判手続きは、労働審判員3人で組織され、個別労働紛争の調停を試み、調停による解決に至らない場合には事案の事情に応じた柔軟な解決を図るための紛争解決手続きです。労働審判に対して当事者が異議の申し立てをすれば、訴訟に移行します。

 ブラジルは2015年で376万8454件訴訟が受理され、日本を大きく上回る受理数となっております。年々増え続けており、2016年には約400万件の受理数がありました。

 また、御参考のため、弁護士の数は2015年では日本は3万6415人、ブラジルは2016年で104万4753人となっております。

 主な労働訴訟の提訴の理由としては、労働法に基づく残業代を支払っていない、ブラジルでいうcargo de confianca、つまりマネージャークラス以上で管理職であった場合は、残業代は支払う義務はありませんが、労働法に従った管理職ではなかったための残業代の要求などが挙げられます。休憩時間、契約内容を超えた業務履行による追加給与支払い、同職種による賃金格差の支払いなどが挙げられます。

 コンサルタント部会では、日系企業はある程度の会社の労務債務、労働訴訟のリスクについて認識しているのではとの意見がございました。

 そこで、ブラジルでは労働債務について顕在的債務と潜在的債務があるのではとの意見がありました。顕在的債務は会社が労働リスクを認識していて、労働裁判になり得ることを見据えている場合となります。潜在リスクは例えば、管理職の残業の例や、契約内容を超えた業務履行による追加の給与支払いのように、会社側は労働法に則った残業や給与支払いをしていたと認識していたが、従業員はそういった認識をしていなかった時のリスクとなります。

 潜在的債務については、弁護士が成功報酬を要求して、悪意に従業員を促したり、以前に退職し労働訴訟を提訴した昔の従業員のケースを聞いたり、会社に何らかの理由で不満を持って提訴されるケースが多くございます。

 コンサルタント部会の懇談会で一番M&Aなどでうまくいかない例として、文化の違いを考慮していない場合があると多く挙げられました。法律に関わる文化の違いは、日本の法律は辻褄がつき、発想は常に簡便化をするとなりますが、ブラジルの法律は皆さんご存じのように、法律、裁判手続き、全て複雑で、辻褄が合わない場合もございます。複雑な法律環境はブラジルで言われるinseguranca juridica、法的不安定性を招き、法律の解釈などの違いから専門家や裁判判事などによって法的見解が異なる可能性がございます。

 労務についての最後のコメントとしては、M&A後の労働雇用、債務の継承に注意すること。多くのブラジル企業は短い間勤務する前提で雇用している事で、日本企業が従業員雇用の際の条件が異なる場合がある事があるので、その再検討。労働訴訟が少しでも起きにくくするためのより良い環境をつくるのはどうかという提言で終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

司会

 西口部会長、たいへんありがとうございました。ご質問のある方、よろしくお願いいたします。はい。

質問者

 非常に分かりやすいご説明ありがとうございました。細かい説明はなかったんですが、税務の所に出ておりますPERTですか、直近の案件だと思いますが、税務上の係争、あるいは訴訟といったことが起きている企業多いと思うんですけども、そういった場合、いまPERTはやっぱり活用した方がいいのか、あるいは活用しようと思った時に、リスク、あるいは注意するような点は何なのか、ちょっとポイントでお教えいただければありがたいです。

西口部会長

 そうですね。PERTはですね、もう議論されている場合の分割なんですけれども、まあ日系企業さんで、将来勝つ可能性が高いという場合には、どちらが良いか考えないといけないんですけれども、その可能性が低い、それによってキャッシュフローがすごくインパクトされているといった場合には、まあ活用することもありなのではないかと思います。こちら、一応8月末までになっておりますので、もしご検討される場合にはできるだけ早くお願いしたいと思います。

司会

 はい、ありがとうございます。先に手を挙げられたので、緑の方にお願いします。

質問者

 NTTブラジルの矢沢でございます。M&A断念の主な理由のところにですね、ページは4ページです、サイバーセキュリティの懸念というふうにあるんですけれども、この懸念というのは具体的に何か、もし分かれば教えて下さい。

西口部会長

 そうですね、まあ、私の方で見るのはですね、会社内での、特に、例えばメールだとか、電子的な情報のリスク管理ができていなくて、本来だったら情報を持ってはいけない、あるいは持つ必要がない従業員が、そういったサイバーセキュリティの管理がなくて、まあ見えてしまっている。あるいは、それを悪用して不正を行っているといった例がございます。

質問者

 了解しました。ありがとうございます。

質問者

 もしお聞かせ願えたらなんですけど、コンサルタント部会に参加なさっている企業の業績の動向というのが、もし伺えたらうれしいです。

西口部会長

 そうですね。申し訳ございません、ちょっと今回ですね、コンサルタント部会での懇談会はどちらかというと日系企業さんへの提言がメインのお話になってしまいまして、次回は業績の方も。

質問者

 私の質問もサイバーセキュリティ関連なんですけども、要するに、M&Aを断念した理由がサイバーセキュリティということは、結構業種によってそれは偏りがあるんですか。例えばIT関係の買収だったり、金融関係の買収であったり、そういったところはそこを重く見ると。逆に製造業だとか他のところだと、まあそんなにこれがノックアウトファクターにならないのか、そこの点が一つと、あと、私なんかの感覚ですと、例えば銀行の、色んなその、個人的な送金にしてもですね、日本なんかよりも、スマホを使ったりですね、非常に多いというふうに、発達していると思っているんですけど、これは逆に、無茶ぶりですけど、小池さんなんかにもお聞きしたいんですけどね、ここはそんなに脆弱なんですか。ちょっと、そんなことをやってて、危ないのかなと。スマホの送金とかですね。他国に比べてここのそういった、銀行のシステムだとか。

司会

 競合他社さんのことはコメントしづらいかもしれないですけど、まあ一般的には、金融界においては、各国の金融当局がですね、このぐらいのレベルのセキュリティ対策をしなさいという目線が示されておりますので、その中で行われていると。国によって水準がやはり違うというのが、確かにあるとは思います。

西口部会長

 サイバーセキュリティについてのご質問は、例えば、もちろん金融機関ですとかなり厳しいセキュリティはないといけないんですけども、ブラジルの場合は、金融機関である場合と製造企業である場合というよりは、会社の規模ですね。やはり会社の規模が小さいですと、そこまで、例えばファミリーオーナーさんの企業さんですと、そこを買収する場合には、そこまでの管理が行き届いていないということで、どちらかと言うと規模の方でリスクが高いという傾向はございます。

司会

 はい、ありがとうございます。それでは最後にもう一方、お願いします。

質問者

 労働法の改正のことでお聞きしたいんですが、メリットとデメリット、日本の企業の方々が感じるポイントをいくつか教えていただけないかなと思いまして。

西口部会長

 私の肌感覚なんですけども、あまりデメリットはないような気がします。メリットとしてはですね、ちょっと先程申し上げましたように、例えば工場を持っていて、近くに従業員の方が住まわれていない場合の、例えばバスとかですね、通勤手段を助けている会社さんとかがあって、以前はその通勤時間も勤務時間としてみなされるということが、これからはみなされないだとか、あと残業についてもですね、週あるいは月によって、例えば1日6時間、今までは8時間ですけども、6時間働いて、あまり業務がない時にはですね、でその分を、その2時間を業務が集中している時に働いてもいいといったようなフレキシブル化がされますので、どちらかと言うと、日系企業さんに有利な労働法改正だと思います。

司会

 はい、ありがとうございます。そうしましたら、今の発表ですけれども、経済回復が期待される中で、現在の為替や株価からすればM&Aのチャンスはあるのではないかと。それから細かい所で言うと、ロボティックスとかの導入の流れなども要注目であると。それからブラジルで日系企業がM&Aを断念する理由には色々ありますけれども、ブラジル固有の問題や課題や文化をしっかり予見して、準備すれば、恐れることもないのではないかといったお話であったかと思います。それでは、西口部会長、たいへんありがとうございました。

 そうしましたら前半の部はここで終了とさせていただきまして、今3時19分ですが、予定通り3時半から後半の部を開始させていただきたいと思います。コーヒーブレイクですので、外にコーヒーをご用意させていただいておりますので、また3時半にこちらにお集まりください。よろしくお願いします。

 

コーヒーブレイク

 

後半司会

大久保敦 企画戦略委員長

             

 

 よろしくお願いいたします。まず、化学品部会の発表をいただきたいと思います。鎌倉部会長より発表をいただきます。鎌倉部会長、よろしくお願いいたします。

 

化学品部会

鎌倉勇人 部会長

             

 

 あらためまして、皆様こんにちは。スリーボンドの鎌倉です。本日は私の方から化学品部会の2017年の上期の回顧と展望について説明させていただきます。お願いします。

 本日は以下の順番で説明させていただきます。業界的に大きな動きがございましたので、世界の化学業界の動向、日本の化学業界の動向、そして、メインになりますブラジル日系化学業界の動向を市場別に、最後に総括と日伯両国政府への要望となります。

 まずはじめに、化学業界の世界的な動向について説明させていただきます。

 こちらのグラフは化学産業界の世界売上規模ランキングを示しております。1位はドイツのBASFとなり、一部、ケムチャイナ、中国とかですね、サウジアラビア、台湾ですね、等々アジアが台頭しておりますが、比較的アメリカとヨーロッパが強い傾向にあります。

 その背景としましては、化学産業の発展というものは自動車産業、石油産業、そして戦争と、そういうものが結びついて成長してきたという背景がございます。そんな中、2015年に2位のダウケミカルと8位のデュポンの合併が決まりまして、現状グループとしては10兆円規模となり、化学産業界でも飛び抜けた存在となっております。それに触発を受け、3位のケムチャイナがスイスのシンジェンタというところを買収し、農業分野ではダウ・デュポンを上回る規模というふうにと言われております。さらに合併の余波は続きまして、2016年下期に10位のバイエルがアメリカのモンサントを買収しております。昨年から世界の化学業界が大きく動き始めております。

 それでは、日本の化学業界の動向はいかなるものでしょうか。化学業界は多岐にわたる分野であることから、その規模を示す指標として、農薬と石油化学をピックアップして説明させていただきます。

 農薬関連では大手日系企業がこぞって買収や子会社を設立しており、攻めの姿勢を見せております。しかしながら、石油化学の方に関しましては、リーマンショック、その後の大震災等々影響がありまして、海外進出が続き、日本国内では各生産工場の停止が続いており、次の方策を模索しなければいけない状況となっております。

 以上のことから、化学業界は世界でも日本国内でも大きな変化点を迎えております。

 そんな中、ブラジルの日系化学企業はどのような状況だったのでしょうか。ここから化学品部会の2017年の上期の回顧と展望について説明させていただきます。

 現在、化学品部会所属企業と団体は約71社となり、今回は約26社から60件のアンケートを取り、本発表をまとめさせていただいております。細かく市場を分けてしまいますと化学業界の動向がわかりにくいことから、今回は大まかに市場を分けさせていただいております。本日は、輸送市場、ヘルスケア市場、農業市場、印刷市場、この4つにフォーカスし、説明させていただきます。

 まずはじめに、輸送市場について説明いたします。主な用途は、エンジン用のシール剤、プラスチック部品、潤滑油などになります。

 2017年の上期の結果はグラフの通りとなり、多くの企業で売上・利益ともに増加傾向となります。先程の自動車部会の説明がございました通り、自動車に関しては販売・生産台数ともに増加傾向であり、市場自体が回復傾向となります。

 バイクに関してはマナウス地区での生産がメインとなりますが、市場の回復が遅延しております。売上増減の原因としては、まだ一部顧客の信用不安は残っておりますが、積極的な設備投資、周辺諸国を含めた市場開拓、また、工場を持つ企業が多いことから、生産体制の見直しなど、随所で各企業の対策が見受けられ、増加につながっていたものと考えられます。

 輸送市場の下期の展望については、市場の回復傾向が顕著になっていくとの予想から、売上・利益ともに増加していくと考えられます。これを機に、失ってしまった顧客の再獲得、コストのかかる輸入品からブラジル内製品に切替など、各社で積極策を検討しております。

 次に、食品、化粧品、医薬品を代表とするヘルスケア市場について説明いたします。主な用途は食品添加剤、スキン&ヘアケア用品、一般医薬品などになります。

 こちらに関しましては、最終的に消費者が扱うものが多く、まあ消費者の購買意欲はブラジルの経済の状況の回復とは少し時間差があり、まだ各市場ではっきりと回復傾向にあるとは断言できない状況です。結果としまして、売上や利益は増加と減少、半々の結果となっております。先程の輸送市場と同様に、新規開拓や新製品の投入などポジティブな要因もありますが、顧客の信用不安、価格競争激化など、ネガティブな要素が昨年から続いております。

 ヘルスケア市場の下期の展望です。消費者の購買意欲が戻ってこないことには対策が立てづらい状況ではありますが、市場活性化のための新製品の導入、プロモーション活動の強化など、各社で積極策を検討していることから、下期は増加に転じていくのではないかと考えております。

 次に、農薬や肥料を代表とする農業市場について説明いたします。主な用途は、殺虫剤、野菜やフルーツの薬剤、検診用の酵素になります。

 こちらの市場は気候の影響が大きいことから、ブラジルの経済の不調に加え、今年は天候に恵まれたことから、苦戦が続いている市場となります。天候に恵まれてしまうと、作物価格が下落し、製品の販売が伸び悩み、結果として在庫が増えてしまいます。そこに加え、中国やインドからの安価なジェネリック製品が攻勢を続けていることから、農業市場としては売上・利益ともに減少傾向が多い結果となっております。

 農業市場の下期の対策として、周辺諸国への展開、新製品の展開、原点回帰とも言える営業活動など、ポジティブな要因はあるものの、先ほど説明させていただいた通り、気候ばかりは予測できるものではございませんので、売上・利益は不変であるという予測になっております。

 最後に、インキ、フィルム、製紙を代表とする印刷市場について説明いたします。こちら、市場自体が低迷しており、高機能製品の投入やブラジルに合った販売戦略の見直しなど、積極策を行っているものの、やはり高い税制が障害となって、他社との価格競争ができないというところがあり、売上・利益ともに各企業でばらつきが多い結果となっております。

 印刷市場の下期の対策として、商流の変更や周辺諸国への展開など企業内努力を続けながらも、我慢が続くという予想となっております。

 その他の市場については以下の結果となります。昨年とほぼ同等の結果となり、全体的に、市場回復についてはまだまだ遅れているなというところになります。

 以上までをまとめます。化学品部会の2017年の上期の結果として、一部の市場で回復傾向にありますが、多くの市場では依然として低迷が続いており、低調な結果となってしまいました。昨年からの経済不振は顧客に与えるダメージも大きく、市場の回復に連動できず、信用不安が続いております。消費者の購買意欲も同様に、一般生活レベルはまだまだ回復していないと言えます。

 2017年の下期の展望になりますが、まだ市場の回復には時間がかかるとの予想から、我慢を続けるしかないというふうに考えております。この状況を打破するため、新製品の投入を多くの企業が検討しております。しかしながら、ここに多くの企業が課題を抱えています。

 特に、化学企業の製品は自社の保有技術とも言えるオリジナルブランドであること、また人体や環境に関わることが多いことから、特許や当局認可が必要となります。こちら、前のグラフに特許、当局認可にかかる日数を記載させていただいております。

 まあ全般的に言えることですが、特許に関しましては、大体、日本では2年か3年ぐらいで申請が終わりますが、ブラジルに関しては6年から8年。農業の認可に関しましては、日本では大体3年ぐらいかかるところが、ブラジルでは5年から7年。また、その認可に関しましても、日本では一つのところに提出すれば終わるんですが、ブラジルでは色んな当局の認可が必要というところもあり、内容自体も複雑であるというところ。医薬に関しましても、日本では1年で済むようなものがブラジルではどうしても3年かかってしまうという状況になります。

 つまりは、日系企業が得意とするオリジナルの保有技術がブラジルでは生かせないということになります。化学品部会としては、このあたりについての改善を熱く、熱望させていただくとともに、ブラジルが国際競争力豊かな国になることを期待しております。

 補足になりますが、スイスのSolAbility社が持続可能な競争力について各国を格付けしております。その評価は、保有資源やガバメント能力などから行われています。保有資源が多く、ガバメント能力が高い北欧が上位を占めておりますが、保有資源の少ない日本でさえ11位にランクインしております。しかしながら、ブラジルは24位となり、まだまだ先進国と差があるということを示唆しているのではないでしょうか。

 最後になりましたが、ネガティブな話が続きましたので、少しだけ明るい話題をさせていただいた上で本発表を締めさせていただきます。

 例えば、化学品部会にも所属していただいているカネカ様、素材メーカーとして非常に有名な企業でございますが、さらなる飛躍を目指しまして様々な分野での挑戦を続けていらっしゃいます。その中でも、自社の保有技術を進化させた結果、こちら、再生細胞のプロジェクトを立ち上げ、今まで未知の領域だった市場に挑戦されております。

 リンテック、こちらは粘着技術で業界をリードする会社様になりますが、同じく保有する技術を進化させ、他社との差別化を図っておりまして、その中でも人口筋肉の開発というのは、まあ異例とも言えるような話になります。

 このように、化学業界の強みは、まず独自の技術を保有していることになり、その用途は多岐にわたるものとなります。そのため、比較的世の中の変化には強い業界と言えます。冒頭にもお話した通り、化学業界自体が大きく変化しようとしています。そこに加え、浮き沈みの激しいブラジルの経済の変化にも対応し、化学品部会一丸となってさらなる飛躍を目指して頑張っていきたいと考えております。

 大分時間は短いですが、以上になります。ご清聴ありがとうございました。

司会

 はい、非常に分かりやすくまとめていただいて、どうもありがとうございます。ただ今の発表につきまして、ぜひ、質問ある方は挙手をお願いできればと思います。

質問者

 三井物産の土屋でございます。私もこの業界に30年関わってきたので、ちょっと質問なんですが、日本の業界が進出するにあたっての、ブラジルの政治だとか経済状況だとか、あるいは法規制とかいうのは、これは全ての業界に共通することなので、それはさておいでですね、高い技術を持った日本の企業が進出するにあたって、例えば原料調達の面とか、そういった面でブラジルが他国、例えば東南アジアあたりと比べて不利、あるいはやりにくいといったような声は部会の中で出ておりますか。

鎌倉部会長

 はい。原料の調達に関しましては、よくよく話題になる話なんですが、そもそもですね、化学品部会のほとんどの原料はですね、石油から大体のものは取れることになるんですが、ブラジルでは石油を加工していないと思います。

 ほとんどが輸出をして、戻って来るというところになりまして、実は化学原料メーカーというのがブラジルにはほとんどございません。そういった関係から、どうしても原料の調達というのは、アジアですとか、近いアメリカというふうになるんですが、やはりどうしても、化学業界、先程もお話ししました通り、オリジナルブランドを保有しているものですから、どうしても原料も高機能なもの、高付加価値を持ったものを輸入してこなければいけない観点から、どうしても一番遠い日本から引っ張って来るケースがございます。そういったところで、まあ移転価格の回避ですとか、商流の見直しというのは各企業やられているんですが、やはりまだまだしんどいところかなというふうに感じている次第です。

司会

 はい。よろしいでしょうか。他に質問ございますでしょうか。時間がまだありますので、ちょっと私から質問させていただいてよろしいでしょうか。

 先程の4つの先見的な事業を創設というところで、自社の保有技術をさらに進化させてということなので、きっとブラジル国内で研究開発的なものをやっているのではないかなと思うんですけども、その際の研究開発資金というのはどのように賄っておられるのか、そういった議論はございましたでしょうか。

鎌倉部会長

 他の会社様の意見、対応というのは聞いていないんですが、弊社の場合で言いますと、基本的にヘッドクォーターの方で研究の基礎がなされます。それをブラジルに持って来まして、ブラジル流にカスタマイズするというところが研究所の方でやっております。

 やはり、日本のものをそのまま持ってきても中々こちらでは通用しないというところがあります。というのは、やはりコストの問題もございますので、ブラジル好みのところのクオリティに合わせていくという作業が各企業あるかと思います。

司会

 はい、どうもありがとうございました。他に質問ございますでしょうか。では、ないようので、ただ今、前半の慣例にならいましてちょっと総括させていただきますと、まず、輸送関連、ヘルスケア、一部の業界ですね、こちらを除くと引き続き我慢が続いている状況ではないかなと。そういった中で、新製品の導入、さらに自社の技術をさらに進化させてブラジル市場に投入していくといったことがですね、対策の一つとして重要に位置付けられているという議論であったかと思います。

 そうした中での環境整備、まあビジネス環境整備になるかと思いますが、当局の認可、特許で言えばINPI、あとANVISAですかね、ANVISAの認可、迅速化というのが重要な課題になっているということで、そういったことを働きかけていきたいということなので、カマラも、うちもそうなんですけど、引き続きですね、迅速化に向けて取り組む必要性を痛感した次第でございます。以上、化学品部会の発表ですけれども、鎌倉部会長、どうもありがとうございました。

 それでは引き続きまして電気電子部会の発表に移りたいと思います。千野部会長より発表をいただきたいと思います。千野部会長、よろしくお願いいたします。

 

電気電子部会

千野浩毅 部会長

             

 

 こんにちは。千野です。電子電気部会の発表ということで、よろしくお願いします。私、今日が実は、ここでお話しするのは5回目になるんですけど、この最初のチャートはですね、実は、過去、2回目からずっと使い続けているチャートで、使い回しをして、手を抜いている訳ではないんですけども。

 電子電気業界、あるいはそれに従事する会社ということで、真ん中にあるようにですね、耐久消費財であったり、産業用の機材であったり、あるいは公共投資関連であったりという、こういうビジネスを生業にしているというのが我々の産業になります。それに対して周りに色々と書いてあるんですけども、レアル高ですとか、リセッションがあり、失業率が上昇し、政治は混乱し、財政赤字だし、インフレだし、高金利だし、良い事は何もないというので、まあご存じのように、これまで皆一緒に苦しんできたということで。去年ぐらいまでの状況で言うと、もう本当にあらゆるものが厳しかったというのが状況だったかと思います。次お願いします。

 今日現在、これは皆さんよくご存だと思いますけれども、為替の方もずいぶん安定してきているし、それからリセッションというのも底を打ったのかなと。インフレもずいぶん下がってきたし、まあ政局の混乱というのが本当におさまったのかどうか分からないんですけれども、まあ一息ついていると。こういった中でですね、これからお話ししますのは、一部のカテゴリーでは確かにかなり、こう、回復というのが見えてきていて、一方でまだまだちょっと回復が見えないと、そういうふうな事業分野もあるということで、かなり、商品のカテゴリーであったり、あるいはそれぞれが入って行っている市場によってずいぶん、まあ回復の速度の違い、あるいはその度合いの違いというのがあるのかなというのが、今回の総括になります。

 これは毎回お見せしている数字ですけれども、主要な家電の製品に関しての、マナウス、あのアマゾンの真ん中の、アマゾン川の上流のところですね、そこで生産している生産数量の推移ということで、14年~16年まではこれは年間、それから17年は上期6カ月分の数字ということで、これは全て前年に対する成長率ということで示しています。

 最初に見ていただくのが、14年から15年にかけてというところなんですけれども、ここを見ていただくと、液晶テレビ、スマホ、電子レンジ、エアコンと皆軒並みがーっと落ちたということで、これはまさしくリセッションの影響だった訳です。オーディオだけ実は例外的に落ちていないんですけれども、オーディオはどちらかというと、カテゴリーとしてかなり、衰退カテゴリーに近いようなところがあるので、また別の要因があります。次お願いします。

 15年から16年にかけてですね、実はこれ生産数量ということで言えば、いち早く液晶テレビとスマホというのは回復に向かっていたというのがデータに表れています。液晶テレビとかスマホ、なんでこうやってぱっと回復したのかというと、やっぱりこれは必需品というところがあるのかなというふうに思っています。

 かなり、景気が急速に悪化する中で、買い控えというのは一瞬は起こるんですけれども、さすがにテレビが壊れるとテレビなしで1年間過ごすというのは中々厳しい事ですし、最近でいうとやっぱりスマホなしでの生活というのは中々考えられないのかなということで、こういう、家電製品の中でもどうしても必要だというものに関しての需要というのはやっぱり一番早く戻って来ると。次お願いします。

 今度は、16年から17年にかけてですね、ここで、今年に入ってから生産数量で回復してきているのが、特に電子レンジ、エアコンといった類の商品群。これは元々リセッションの前にですね、ブラジルの中でも急速に需要が伸びていた成長カテゴリーだったんですけれども、これがリセッションがあったので一時期買い控えが起こっていたと。これが徐々に戻ってきていて、回復率としても非常に高い率を示しているということで。今生産数量がこうやって増えてきているので、これが次に今度は販売数量の増加につながっていくのかなというふうに見ています。

 一方で唯一の例外がオーディオなんですけれども、オーディオカテゴリーというのは唯一こうだらだらだらと落ち続けていると。これはどちらかというと、景気の問題というよりは、元々オーディオの商品というのはCDであったり、USBのメディアであったりという、そういうものをオーディオ機器で聴くというのがオーディオの楽しみ方だったんですけども、最近はSpotifyですとかYoutubeみたいな、ああいうストリーミング系のコンテンツを、それこそスマホだったり、あるいはスマートテレビでそのまま聴いてしまうと。

 そうするとオーディオ機器がだんだんいらなくなってきちゃったと。こういったところで、ずいぶん、カテゴリーとしての変化というのがあって、それも含めてですね、オーディオというのはどちらかというと用途として衰退しつつあるのかなというふうに見ています。

 一方でですね、先程生産の数字を見ていただいたんですけど、今度は販売の方です。これは小売店の店頭での実販の数字ですね。小売の数量の数字になります。テレビとスマホということで二つ用意しています。このブルーの線がですね、これは12カ月の移動累計の販売数量。で、赤線がですね、単月、それぞれの月の前年に対する成長率というものの変化を出しています。

 まずテレビの方なんですけれども、ここを見ていただくと、今年の3月ぐらいから、100%、前年に対して100%というところを上回り始めて、その後それをずっと継続していると。この数字だと、6月までの数字なんですけども、実は8月ぐらいまで前年比30%プラスぐらいのところをずっと継続してきているというのが今の状況です。

 スマホなんですけれども、テレビより若干早く、これは2月ぐらいからですね、2月ぐらいから前年を上回るようになってきて、こちらもその後前年プラスアルファと。これも20%から30%アップというのをずっと続けているということで、この辺はかなり回復が顕著に見えるカテゴリーかなというふうに思います。

 今回このシンポジウムに先立ちまして、2017年の上期の回顧の下期の展望ということで、会員の皆様にアンケートをお願いした結果のサマリーです。これは電気電子部会の各社の販売の動向を、前年に比べて改善しているのか、維持しているのか、悪化しているのかということで示しています。ちなみに維持というのは大体100%~109%ぐらいまでを維持というふうに、皆さんにはパーセンテージで答えていただいているので、そういうふうに類別しています。

 今年の2月の時点で2017年の展望ということでアンケートでうかがった時は、改善もしくは維持というのがありまして、悪化するだろうとお答えになった企業はゼロだったんですけれども、まあその当時でいうと、いい加減2年ぐらい厳しい状況が続いてきて、景気も底を打ったのでそろそろ改善してもいいよねと、そういう期待も非常に大きかったと思うんですけれども、実際にふたを開けてみた上期の回顧として実績を見てみると、改善したとお答えになった企業が9社、64%。維持が1社、7%。悪化しましたというところが実は29%ありました。ということで、確かに回復の基調はあるものの、上期の前半戦だけ見てみるとそんなに単純にみんな改善している訳ではないよねというのが見て取れるかと思います。

 一方で、じゃあこの後、下期、7月以降6カ月間はどうだろうねということなんですけれども、ここでは改善というのが10社、72%、維持が1社で7%、それから悪化というのが、実はまだ3社残っています。まあ悪化するとお答えになった企業は、上期から下期にかけて減ってはいるんですけれども、やっぱりまだまだ改善が見えないというふうなところもあるということです。

 あと、ちなみにですね、これ、14社の回答の中で、上期と下期を比べてどうなんだと。ここにデータはないんですけれども、それを見てみますと、14社中の8社が上期よりは下期の方が改善するだろうというふうに見ているというふうな結果になっています。

 あとこれ、定性的にですね、皆さんのコメントをサマリーしました。マイナス要因、プラス要因ということで。まず上期の回顧について。マイナス要因として言うと、やっぱり厳しいのが産業系の需要、それから官需、この辺の停滞が続いていること。それから、前年の同期はまだオリンピックがありまして、まあオリンピックに関連した特需があったと。

 それが今年はないというのもマイナスの要因になっていると。それからラバ・ジャットの影響というのが相変わらず続いていたり、取引先の経営の困難、これも一部にはまだあると。特に取引先の信用の縮小ですとか、資金難、こういったことで中々売上が上がっていかないというふうなところが残っているということです。

 一方でプラスの方ですけれども、特にこれは一般耐久消費財ですね、この辺の需要に関しての底打ち感が見えてきているということと、まあ回復、実際先ほど見ていただいたようにテレビ、スマホなんていうのは回復していますし、エアコン、電子レンジ、こういったところもずいぶん回復の色が出てきたんじゃないかなというふうに見えます。あとは為替が改善して安定しているということが非常にポジティブに効いていると。

 それと、あと為替だったり、景気だったりということは非常に環境的な要因になるんですけども、この下に書いてある6個ぐらいの要因というのは、実はどちらかというと、それぞれの企業の内部努力、これは、リセッションの最中であったり、あるいはその前からずっと続いてきたような色んな企業努力というのがだんだん実を結びつつありますよといったところで、まあ企業努力で改善した部分ということになるんですけれども、経営体質の強化によって成果が出ている。

 あるいは競争力の強化、これは例えば商品であったり販売戦略であったりというところでの色んな活動というのがシェアの拡大につながっていたり。新規ビジネスを立ち上げたり。この中には企業買収もありますし、それから自社でe-commerceを立ち上げて、そこで新たに販売を拡大していくという活動があったり、こう色んなことをやられていると。

 それから輸出の拡大。それとあと、為替というのも、今はいいんですけど、先行きどうなるか分からないよねというふうな中でも、できるだけそういったメリットを機動的に活用して、それを販売増につなげていくと。こういったようなことをやって、それがうまくいっている例ですとか、あとは、そうした中で投資の方も、これも、非常に選択的ではあるものの、一部分積極的にやって、それが成果に結びついていると。こういったような状況になっています。

 一方で、2017年下期に向けてということなんですけれども、下期に向けてネガティブな要因として見ている事としては、まあ基調としては回復というものの、そんなに急速には回復しないだろうと。時間はかかるだろうねというふうな見方。それから、相変わらず公共投資、それから産業向けの需要というところに関しては、まだ厳しい状況が続いている中で、非常に限られた需要を取り合うために、厳しい競争、これに直面しなきゃいけないということで、こういった厳しさ。

 それからラバ・ジャット、これもまだまだ続くんだよねというところであったり。あるいは、グローバルボラティリティと書いてあるんですけれども、これはどちらかというとブラジル国内というよりは、海外で何か起こるとそれで急にレアルが悪くなっちゃうだとか、トランプさんが何か言うと為替が動くですとか、ヨーロッパの影響ですとか、中国の影響ですとか、まあこういった中々読めないところがあるというところがマイナスとして挙げられています。

 一方でプラスの要因ですけれども、まず3つ。これは外部要因になりますけれども、購買力の回復、これには結構期待ができるんじゃないかと。環境として言うと、インフレの率も低下しているし、金利も下がってきている。失業率も、まあこれ以上は上がらない、これから下がる傾向だろうねといったところへの期待。それから為替も、ここのところずっと安定的に推移していますので、まあこれが安定的に推移してくれればという期待があると。それから政治の安定。こういったところがあれば、結構ビジネスはポジティブな方向に動くだろうという期待があります。

 あとは、それぞれの各社の自社努力として、まあこれはこれまで続けてきたような経営体質強化、こういった活動で、やはりこれが業績に結び付いていくということへの期待であったり、あるいは競争力の強化、あるいは輸出拡大、こういったところ、それぞれ色んな形でやってきている工夫ですとか、施策というのを、ちゃんと成果に変えていくということを挙げられています。

 あとは、最後にもう一つあるのは、改正労働法のメリット。これにはやはり大きな期待があるということです。

 以上、まとめますと、市場回復の速度と度合いというのは、事業の領域ですとか、商品カテゴリーによって結構大きな差があるなということが一つ。特にその中でも、産業用機器、公共投資関連というところは、まあ依然厳しい状況が続いているということです。ただこれは、懇談会の時にもいくつかコメントが出ていたんですけれども、そうは言っても全然ないわけではなくて、ぼちぼちではあるんですけれども、即効性のある投資ですとか、小規模投資みたいな領域ではぼちぼちそういう需要が出始めているといったこともコメントとして挙がっておりますので、まあここにも回復の兆しがあるのかなというふうに思います。

 それからあと、景気回復、政治の安定、それから為替、こういったものが良くなるといいなという期待が、ある意味現実に変わりつつあるのかなという中で、まあそうは言っても、あまり過度の期待はせずに、慎重にやって行こうということと、あとは、リセッションの時、あるいはリセッションの前からということもあるんですけど、色んな取り組みをしてきている会社が多い中で、まあ景気が回復するので量的にまた回復してきてという、ボリュームに頼ったビジネスの改善ではなくて、むしろ色々やってきている、差異化ですとか、新規事業ですとか、体質強化、こういったものをきちっと結実させるというふうなことが一番大事なんじゃないかというふうなコメントになっております。

 これはシンポジウムの副題で、回復途上のブラジル経済、いま打つべき戦略は何なのといったところについてです。回復後も、相変わらずボラティリティは高いんだろうと。まあそういった事業環境の中で、やっぱりリーマンショック以降に、ブラジルなんかは特に典型的だったと思うんですけど、非常に伸びたマーケットなんですけれども、まあある意味新興国バブルに近いようなところがあったのかなと。

 同じことがまた起こるわけではないし、同じことを期待して同じようなやり方をするんではなくて、そうではなくて、不断の経営体質の強化であったり、それから、事業環境の変化ですとか、制度変更、こういったものにいかに迅速に対応できるかという、そういうふうな会社としての体力をきちっとつけていくこと。あとは、自社の強みというものをしっかり見つめて、それに立脚して長期視点で経営判断をしていこうと。

 あとはですね、まあ世の中どんどん技術革新が進んでいく訳で、最近でもIoTですとかAIですとか色んなことがあるわけですけども、そういったものがどうやってビジネスのオポテュニティになっていくのかと、そういうところをしっかりと見極めて、それは社会インフラだったりライフスタイルだったり、色んなところにオポテュニティが出てくるんだと思うんですけれども、そこを何とか業績に結び付けると。こういったところが非常に重要だろうというような意見になっています。

 これは最後のチャートになりますけれども、商工会議所、ブラジル政府、日本政府への要望ということで、まあ一言で言うと、急成長するわけではない、高度成長するわけではないブラジルの経済、もちろん回復はするんでしょうけれども、そうした中で、本当にじゃあブラジルって投資する場所としてどれだけ魅力的なのかということがやっぱり非常に重要だということで、何とかしてやっぱりブラジルを魅力的な投資場所にしていただきたいというのが総括になるかと思います。

 政治、経済、為替、治安、こういったものの健全化、安定化というのはこれはもちろんですけれども、新規事業、輸出拡大、こういったものへのインセンティブ。これもまあ一部では色んな事を言われているんですけども、それもその場しのぎではないようなしっかりしたものというのを整備してほしいということであったり。あるいは、ずっと懸念になっています税制ですね。相変わらず複雑ですといったところ、これにもどんどんどんどんメスを入れていって、やっていただきたいということ。

 それから、労働関連法規。ここは今回非常に画期的な改善がなされる訳ですけれども、まあこれに終わらずですね、さらなる改善というのを目指していただきたいなということ。あと、改正労働法に関するセミナーの開催というのは、これは商工会議所にお願いしたんですけれども、早速9月1日にやっていただけるということで、どうもありがとうございます。

 それと、あとは、まあいくつかの部会からも出ていましたけれども、パートナリングですとか、ファンディング、ファイナンス、こういった、色んな活動をする中で色んなスキームが必要になってくることがあると思いますので、そういったところへの支援、連携の促進。

 それと、あとは南米の周辺国。ここは輸出の拡大というのもある一方で、もう一つはやっぱり、日本企業として言うと、南米のビジネスをやる時にどこに拠点を置くのと。会社によってはアメリカに置いていたり、ブラジルにもちろん南米の拠点を置かれている会社もあると思いますし、あるいは、パナマに置かれている方はちょっと分からないですけど、メキシコだったりとか、こう色んな選択肢がある中で、やっぱり、ブラジル、しかもサンパウロにぜひとも南米の拠点を置きたいんだと、それぐらい思ってくれるぐらいのことをやっていただけると、みんな喜ぶんじゃないかなといったことがあります。

 ということで、発表は以上になります。ご清聴ありがとうございました。

司会

 千野部会長、多岐にわたる報告をいただきまして、どうもありがとうございました。ただ今の発表につきまして、ご質問、ぜひお受けしたいと思います。挙手をお願いできればと思います。いかがでしょうか。前の化学品部会では、知財とかですね、INPIの認可の申請の迅速化という話があったんですけども、電気電子部会ではそういう問題というのは特にないという理解でよろしいでしょうか。

千野部会長

 部会の懇談会の中ではそういう話は出てはいないんですけれども、例えば弊社の例で言うと、電波法関連ですとか、あるいはIT機器に関しての認証ですとか、まあそれなりに時間はかかりますね。だからあれがもっと早く済んでくれればというところは、例えばWi-Fiの認証ですとか、ああいうのも結構時間がかかるので、結局、新しい製品を持ってきてここで作ろうとすると、それなりに、他の国で作り始めるより時間がかかってしまうと、そういうことはあります。改善の余地はいっぱいあると思います。

司会

 ありがとうございます。質問の方はよろしいでしょうか。ではないようなので。事業環境はだんだん良くなってきていると。ただ、商品のカテゴリーによって大きな差があって、まあ必需品、テレビ、スマホは早く回復して、その後成長商品の回復が続いているというような状況があり、産業用機器ですとか公共投資は依然として厳しいんですけれども、まあぼちぼち小規模投資での需要があるということですね。

 それで、あとは、今までも不断の経営体質努力をやってこられて、その成果が出てきていると。また、競争力強化に向けてですね、商品販売戦略を見直して、新規ビジネス、e-commerceですとか企業買収を含めた取り組みもやられてきている。あとは輸出の拡大といったところに取り組んできていて、各社さん、改善への見通しというのが、ウェイトが大きいですけれども、今までの流れで行くと当初の予想よりはちょっと遅れているかなという感じで、今後の回復もあまり楽観は許さないけれども、回復見通しにあるけれども楽観は許さないというような状況ではないかなというふうに思います。

 それから、技術革新の動きですね。IoT、AIの影響ですとかいうのも提起されていたかと思います。また、色々な要望が出されておりますので、こちら、既に改正労働法のセミナーはやってきております。ビジネスインフラの整備というところも、またインフラ会合等もありますので、そういったところでまたフォローしていかないといけないのかなというふうに考えております。また、ファイナンス、ファンディング、パートナリング支援・連携促進というのは、今回初めて出てきた項目なんじゃないかなと思いますので、またちょっと具体的な中身もうかがって、考えられればなというふうに考えております。以上で、電気電子部会の発表を終了したいと思います。千野部会長、どうもありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、食品部会の発表に移りたいと思います。黒崎部会長より発表をいただきたいと思います。黒崎部会長、よろしくお願いいたします。

 

食品部会

黒崎正吉 部会長

             

 

 味の素の黒崎でございます。この7月に前任の藤江から引き継いで、担当をさせていただいております。

 目次としましては、ざっくりこの3点ということでございますが、全体の概要動向と、あと、食品部会、それぞれにですね、当然ですけれども企業さんの事情異なりますので、若干複雑な所もございますが、ちょっとそこの辺を丁寧にポイントでですね、市場と食品部会企業の状況ということを報告させていただいて、ちょっとイメージをつかんでいただければいいのかなと思います。原材料系動向ということでポイントで、下期の展望ということでご説明させていただきます。

 国内市況でございますけれども、まず、我々のメインの市場でありますスーパーマーケットでございますけれども、こちら、食品に限らないで、トータル、全ての商品を含んでの売上高前年比はですね、6月まで直近1年のうち10カ月間で前年を上回っていると。

 まあ2月、3月だけですかね、前年を下回ったのは。その前2年間ずっとマイナスであったのが、ここにきて12カ月のうちの10カ月が上に来ているということで、経済情勢の悪化に底入れ感が出てきております。緩やかな回復基調が続いているという状況でございます。全体としましてはですね。これはブラジルスーパーマーケット協会のデータです。まあ明るい兆しということでございます。

 2点目に、一方、それでは我々が担当しております食品・飲料・日用雑貨の部分はどうかと。これは直近の17年1月-3月のデータをチェックしておりますが、数量前年比、まあ94%と。同金額比、これカッコで実質と書いておりますのは、インフレ率を差し引いておりますので、実際はもうちょっと大きいという数字でございます。

 これが96%強ということで、厳しい状況のように見えますが、3月には若干の回復基調に来ているんじゃないかと。後ほどこれは表でお示ししますが、その表を見ても、本当に回復基調なのかというふうに読み取れるかどうかというのはございますが、で、若干のということで。ただ、ポジティブにちょっと見ていけるんじゃないかなという実感は徐々に湧いてきているのがこの部会でございます。ただし、事業によってですね、色んな出っ込み、引っ込みはございます。

 3点目でございますが、やはりこの不況の中で言えますのは、低価格志向が強まっているということ。嗜好品への支出を抑制する傾向がまだ続いています。じゃあ必需品は回復しているのかという話でございますが、このあたりはちょっと複雑でございまして、必需品も必需品の中で、こちらにありますように低価格志向が強いと。必需品の中でも、高級なもの、あるいは価格が割高なものについては、まだ回復していないという状況でございます。

 全体はそういうことでございますが、ちょっと丁寧に、ポイントでございますけれども、我々の食品部会の状況、各企業のポイントをご報告いたします。

 調味料については、市場はほぼ前年並みでございますけれども、食品部会所属企業では、まあ対前年で107%とか、一部商品は102%とか、良い状況になってきているということが言えます。

 飲料でございますけれども、飲料全体は落ち込んでおりますけれども、カテゴリーとしてはですね、乳飲料のところですね、これはまあどこの企業さんかと言えばヤクルトさんを中心にということでございますけれども、金額ベースで前年並み。数量ベースでは前年比6%減も、新製品投入や販促活動により5月以降回復の兆しを感じていらっしゃると。

 まあ非常につらい時期を我慢しながら、工夫をして、これからさらにやって行くぞといったような状況でございます。粉末飲料については、市場はほぼ前年並みですが、これはもうちょっと、実際は、税の関係がありまして、正確にデータ取れないんですけども、若干伸びてきている。伸びているのが実態です。これ、低価格なんですね。

 続きまして、しょうゆでございますが、こちら輸入をされていますので、非常に、現地メーカー、つまりSakuraというメーカーでございますけれども、販売価格差によって非常に厳しい状況が続いております。日本食材輸入代理店とともに販路拡大の取組み。新たなターゲットや需要発掘を目指していこうという姿勢でいらっしゃいます。

 清酒につきましては、これは非常に厳しい状況でございます。10%程度の減少ということでございますが、これ、酒類全般で言いますと3%の減なんですけども、やはり嗜好品の中でも、高級なもの、つまり価格の張るものはかなりまだまだ厳しい状況が続いているということで、酒に対しても顧客の低価格志向が強まっています。

 コーヒーでございますけれども、レギュラーコーヒーについては、原料相場がですね、豆の方が若干軟化の兆しということで、いい感じにちょっとなってきているのではないかと。かたやインスタントコーヒーの方ですけれども、これはまた原料が異なるんですね。こちらの方は若干いま苦しんでいると。ただし、数量ベースでは12%減ですけれども、金額ベースでは10%増という努力をされています。これはつまり商品力があるということかと思います。

 即席めん市場ですけれども、市場はまあ大体横ばいと。本来、不況になると即席めんって強いんですね。それがまだ横ばいかなというところは、いかにまあ、中々厳しい不況が続いてきたのかなということの表れかと思いますが、ただし、所属企業は金額ベースでも数量ベースでも微増ということで、良い成果を出されているということでございます。

 食肉の方ですけれども、食肉業界は3月の食肉不正問題、これは品質チェックのまあ、一部偽装的なものですね、の中で、ちょっと相場は安定感に欠くという状況です。ただし、輸出は堅調と。まあ国内での活性化が課題といったような状況。

 チョコレートにつきましては、やはり嗜好品ということで、数量ベースでの減少は17年もまだ継続しております。ただ、金額ベースでは値上げが進み、横ばいから微増の方に移ってきている状況ということでございます。食品部会所属企業は不二製油さんですけれども、不二製油さんはチョコレートメーカーに対して加工油脂という原料を供給されているということでございます。こちらについては、金額ベースでは微増ということで、堅実に進めているということかと思います。

 香料でございますけれども、こちらは高砂さんですけれども、事業を拡大しているということでございます。主に清涼飲料、乳製品、ベーカリーが得意先として、数量を拡大していると。これ、飲料自体は落ちている中でですね、こういう拡大を図られているということでございます。そういうこともできるんだということかと思います。

 食品添加剤でございますけれども、こちらは食品部会所属企業では既存顧客への販売はほぼ前年並みも、新規顧客との開発テーマは増加中ということで、今後に期待ということでございます。

 次にアセロラ製品ですね。こちら、原料がちょっと不足していると。ただし需要は非常に堅調ということなので、原料状況が良くなれば確実に良くなっていくという状況。

 種苗事業でございますけれども、こちらの方はかなり今苦しんでいるということでございまして、しっかり状況をウォッチしながらどういう手を打っていくかということが大切な時期と。

 最後に外食産業なんですが、こちらにつきましては、まあブラジル全体の外食産業、つまりレストラン、フードサービスのところが非常に厳しい状況にある中で、こちらゼンショーさん、すき家さんですね、は、こちらにありますように予想以上の売上増と。サンパウロ郊外にも出店したということで、拡大路線を着実に進められています。まあこの不況の中でも、やはりブラジルの生活者の方々、消費者の方々がおいしいと感じる、あるいは品質に安心できる、そして、リーズナブルといいますか、アクセプタブルな価格ですかね、そこがきちんとはまると、こういう拡大路線というのが進めていけるんだなという状況でございます。

 以上が各企業の状況と市場のポイントでございますが、次に原料動向ということで、4つ重要な食品部会として原料をピックアップしております。

 一つは砂糖相場でございますが、2015年度後半の相場は高騰しましたけども、砂糖生産国での減産懸念が軽減したということで、16年以降下げ相場に転じているということであります。国際相場は安値にあるものの、レアル通貨安の影響でレアル建て国内相場の下げ幅は限定的になっているということでございますが、悪い状況ではないというふうに見ております。

 乳相場でございます。この表でですね、先程来出ていますが、茶色がいわゆるブラジル国内、下のもう一つの色が国際相場というふうにざっくりご覧いただければと思います。乳製品、国際相場は大きく下落したんですけれども、国内相場は高値を維持しているという状況でございます。国際相場は比較的落ち着いているが、国内相場は高止まりのちょっといま状況にあるかなということでございます。

 次にコーヒーでございます。これはアラビカ種の価格ということでございますが、左がUSドル、右がレアルということで、同じく茶色がブラジル国内ということで。これ、一番右側の16年と17年をご覧いただきますと、先程申しましたように、ちょっと高値で来ていたのが、ブラジル国内も価格が軟化してきていると。これは期待できる傾向かなというふうに見ております。

 次ですけれども、こちらの方が鶏肉の状況です。これは後ほどご覧ください。簡単に申しますと、鶏肉の価格も安定してきていると。

 今4つ、ざっくりとご覧いただきましたけれども、全般で言いますと、もちろん原料によって色々な違いは、出っ込み引っ込みございますが、全体で言うと、悪くない状況になってきているのではないか、我々メーカーにとってですね、というふうに見ております。それでは、次のページお願いいたします。

 これは最初に申しました、スーパーマーケット全体の傾向ということで、青が単月の前年比、赤色が累計ということで、これ、4%弱、実質というふうにしております。インフレ率を引いておりますので実際の金額ベースではもうちょっと赤も青も上に上がるということでございます。確実にトータルではまあ良くなってきているということを示しております。

 次に、冒頭申しました、2点目の食品部会対象の部分ですね。食品・飲料・日用雑貨は、ということですけれども、これ何だと、17年1月2月3月、右側ですね、マイナスじゃないかということでございますが、これ累計なので表が分かりにくいんですが、要は3月単月ですとこれが5%のマイナスになっていると。ここの1カ月だけで何とも言えないんですけれども、これはしっかりウォッチしながらやっていこうと。ただ、耐えるべきは耐えるけれども、ネガティブにはやりたくないねということでございます。

 食品の方ですね、カテゴリーでざっくりポイントでちょっと見ますと、プラスアルファのポイントで見ますということで言いますと、飲料、これで言いますと赤丸してあります飲料と洗剤のところが、物量的にも金額的にも、緑のところが金額ですね、紫のところが物量です、これマイナスになっているということですね。という意味では、金額的には飲料と洗剤がかなり大きいマイナスには、この中では相対的になっているんですけれども、飲料はやっぱり嗜好品であるというところが大きいと。

 洗剤は必需品じゃないかということでございますが、やっぱり使い方を節約しているのと、洗剤の中にも高いものと非常に安価なもの、安価なものがやっぱり選ばれているというふうに我々見ております。まあ、これがどう変わっていくかもしっかりウォッチしながら、タイミング良く戦略・戦術を打っていく必要があるということかと思います。

 この6つの枠の中で、一番左の食品のところが結構大きいポーションを占めるんですけど、その中をちょっと見ますと、次のスライドでございますけれども、金額が増加している商品、あるいは商品群、コーヒー、砂糖、ミルク、粉ミルクというのは増加しています。逆にアイスクリームなんかはやっぱり嗜好品ということで、落ちてきている。まあ、一部ですね、こういった商品は、コーヒー、砂糖、粉ミルクといったような商品は上がってきているということでございます。

 もう一点だけ、飲料のところもちょっと大きいので、ざくっと見てみますと、飲料全体ではこういうふうに落ち込んでいますと。で、一番落ち込んでいると言っていいのが炭酸飲料ですね。やはり割高なんですね。この非アルコール類のところの大半は炭酸飲料の落ち込みがやっていると。

 ところが、アルコール飲料というと、その中で3%ぐらいしか落ちていないと。嗜好品なんですけど、人によっては必需品だということだろうと。その中では、必需品の中でもやっぱり高級なもの、高いものと価格が安いもので今分かれてきていると。で、全体としてはまだ下であるというふうな見方を我々はしているということでございます。

 それでは、こういった状況を踏まえて、最後に食品部会、いま打つべき戦略はということでございますが、1点目は、ABRAS、スーパーマーケット協会の予測では、2017年度のスーパーマーケットの販売額は、これ1月時点では対前年101.3と初めて上にくるという予測を立てておりましたが、7月予想では今101.5。0.2%上がっているだけじゃないかというふうに見えるかもしれませんが、そうではないと。これから上がっていくようになっていけばいいんじゃないかなと。0.2%も大きいぞと。いずれにしても、それまで2年間続いていた景気低迷が、スーパーマーケット市場全体としては明らかに回復しているということでございます。

 そういった中で、景気回復の波に乗れるような事業基盤の強化、新たな事業の種まき等を進めていこうということでございますが、まあ事業基盤の強化、これは好調な時もピンチの時も当然やるべきことなので、つらくてもやりぬくということ。ここで申し上げています新たな事業の種まきというのは、これは新しい商品という視点もございますし、あるいは新しい事業ということもあろうかと思います。

 その中で、やはり我々の部会で重要だというふうに考えておりますのが、やっぱりブラジルの消費者あるいは生活者の方々、消費者視点で我々は、例えば商品を作っていくのであれば、作っていく。そこにやはり、ブラジルの生活者が認めて下さる価値、あるいはスペシャリティと言ってもいいかもしれませんけど、それをどう作っていくのかということが当然こういう時期にも大切だし、チャンスが来たらそれをぐっとこう押し出すと。

 と同時に、この時期には、やはりある部分謙虚になって、プラス、やっぱり価格のところをどう我々は設定することができるんだろうかと。それは、妥当な価格ということかもしれませんし、簡単に言えばアクセプタブルな価格、消費者の方々のアクセプタブルな価格をどう我々、企業努力で、コストダウンもしながら、作っていけるのかというところかと思います。これを徹底的にやっていこうじゃないかということでございます。

 最後の3番目は、会員企業の新たなビジネスチャンス発掘につながり得るカマラ食品部会の取組みを継続して進めて参りたいということでございます。以上でございます。

司会

 黒崎部会長、どうもありがとうございました。ただ今の発表につきまして、質問をぜひお受けしたいと思いますけれども、身近な話題でもございますので、いかがでしょうか。後半になりますと急に質問がなくなってしまって。

黒崎部会長

 私自身は質問がないのは嫌いな方じゃありませんので、大丈夫でございます。

司会

 よろしいですか。では、ないようですので。ただ今の発表ですけれども、かなりスーパーマーケットの販売というのは底入れ感が出てきて、緩やかですけれども回復基調になっている。ただし、やはり価格低下傾向が強まって、嗜好品が厳しい。低価格のものは逆に良いという状況も生まれていると。

 おそらくそれは、そういったものは、食品もそうですし、外食産業もそういうことなんじゃないかなというふうに考えております。また、そういった販売を維持するために、新製品の投入というものを行ってカバーしてきているということで、今後もですね、まあ私、外食のNew Wave Baulとか、食べましたけれども、そういったものでカバーしているということで、今後もそういったところですね、事業基盤の強化は引き続きやりながらも、新しい商品、それから新しい事業というのは、どういったものなのかなというのは興味があるところではございますけれども、ブラジルの消費者の視点に立って、新たな商品をリーズナブルな、アクセプタブルな価格で投入していくと。

 そのための新商品、新たな事業というのをですね、各社さんが持っている技術ですとか、スペシャリティを生かして投入していくというのが課題と。今後もそういった取組をやっていくということではないかなと思います。そんな感じでよろしいでしょうか。

黒崎部会長

 はい、ありがとうございます。その通りでございます。

司会

 それではですね、食品部会の発表をこれで終了したいと思います。黒崎部会長、どうもありがとうございました。続いて、運輸サービス部会の発表に移りたいと思います。細谷部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 

運輸サービス部会

細谷浩司 部会長

             

 

 こんにちは。それでは運輸サービス部会、説明したいと思います。私、日本通運の細谷と申します。よろしくお願いします。

 まず運輸サービス部会の対象業界なんですが、現在6つあります。物流、これは国内の輸出入とか港湾関係ですね、あと海運、航空貨物、航空旅客、旅行・ホテル、通信、ITという6分野でリーダーを決めまして、色々レポートを書いていただきました。まず、物流業界について説明しましょう。

 上期の回顧としましては、国内空港の民営化に向けた入札が行われました。これはサルバドール、フォルタレーザ、ポルト・アレグレ、フロリアノポリスの4空港が、3月の入札で経営権がドイツ、フランス、スイスの企業によって入札されています。民営化されることになりました。また、Infraeroというのが将来的に廃止が検討されておりまして、2018年末にかけて残る国内54空港の民営化に向けた入札が行われるというふうに聞いております。楽しみですね。輸出入関連にいきます。2行目。

 元々ブラジルではカーニバル休暇後から荷動きが活発化するんですが、今年は意外に順調に活発化しておりまして、いい感じでございます。先程貿易の方でも話がありましたが、上期の輸出総額は対前同19%増、輸入の方は対前同7%増ということで、輸出入ともに取引額は増加傾向でございます。

 三つ目、3行目ですね。港湾関係の話です。税関ストライキというのがいつも悩みのネタなんですが、上期に入ってからも断続的に発生しております。3月にはサントス港の労働者がストライキで一時業務を停止。5月には空港付税関職員のストライキ宣言がされて、その11日後にストライキが実施されています。しかし6月に、税関職員の待遇改善を含む法案が議会にて可決されて以降はストライキは実施されておりませんでした。上期はそんな感じで乗り切りました。

 下期の展望です。今税関のストライキの話をしたんですが、税関関係の待遇改善、中々、法律が決まったんだけどお金が払われていなかったり色々しておりまして、いつストライキが始まるか、これが懸念される材料です。あとは、物量的には、自動車関連部材の荷動きが何か期待できそうな感じ、今までの説明でもありましたけど、自動車関係、電子関係もそうですね。

 この下の表を見て下さい。これは日本通運さんの実績数値より抜粋したんですが、まず引越のデータです。中米向け以外は、全体的には減少傾向にあります。日本もちょっと景気が悪い、海外も景気が悪いのか、あまり外に出る人がいなくなったのかというデータですね。右のデータは航空便のデータですが、これはちょっと面白くてですね、各地域とも増加している事が分かります。

 このグレーの色で見て下さい。これは単身で赴任される方が多くなったようです。単身の傾向は特に南アジアと東アジアにて特に多く見られるんですが、我々のいる南米、ちょっと薄くてあまり見えないかもしれないんですけど、これはですね、船便ほど件数は下がっていないということ。これは輸送日数が長いために、船便が敬遠されて、航空便の利用が増えているというふうに我々は分析しております。

 次、海運いきましょう。まず左下の表を見て下さい。コンテナ船です。ブラジルの経済悪化のため、コンテナ船による輸入貨物量は2015年以降、ここ2年ほど減少を続けてきました。上期の統計数値では、前年同期比約15%の増加を記録しており、回復の兆しがみられております。輸出量は横ばいで、安定した状態が続いています。南米東岸のコンテナサービスは過去2年間の荷動き低迷による採算悪化から、船会社の合理化が続きまして、スペースの供給量が減った状態のところに、輸入量が増加したために、特にアジア-南米東岸航路を中心に運賃市況は反転して、上昇傾向にあります。

 右下の図ですね、ドライバルクですね。業界全体で船舶過剰の状態が続いており、運賃市況は今年3月頃に一時的に市況反転しましたが、いまだに船会社の採算分岐点を大きく下回るレベルで推移しています。完成車輸送の上期ですが、ブラジルの自動車販売低迷から、輸入車の数量は低レベルで推移しており、輸出がアルゼンチン向けを中心に増加しておりますが、船会社にとっては厳しい状況が昨年から継続しております。

 下期の展望です。まずコンテナ船。コンテナ輸送分野では例年クリスマス商戦前に貨物量が増加する傾向にあります。スペースが不足する状況になった場合は、船会社が臨時船を入れ、対処する見込みです。例年この方式をとっているそうです。業界全体では、コンテナ船運航会社の合従連衡が進む見込みであり、既に発表になっている邦船3社、日本郵船、川崎汽船、商船三井によるコンテナサービス統合新会社というものが2018年4月に営業を開始する予定です。シンガポールに本拠地を置くというふうに聞いております。

 ドライバルクの下期なんですが、船舶過剰状態のために各船会社は船腹の合理化を進めており、需給バランスは改善の傾向にあります。しかし、市況を大きく反転させるほどの要因には乏しく、マーケットは先行き不透明な状態が続く見込みです。完成車、自動車船ですね。ブラジルの四輪車市場は回復の傾向にあるものの、こちらも市況を大きく反転させるほどの要因にはなりがたく、上期同様に船会社にとっては厳しい状況が続くと思われます。

 次は航空貨物業界。航空貨物業界というと我々運送業の業界ですね。貨物量の推移を主要3空港の取扱量で見てみました。まずサンパウロの主要2空港、グアルーリョスとビラコポスの年間取扱重量は前年比45.9%増となっております。マナウスが同じように39.4%増となっています。輸出はというと、やはりサンパウロ地域は前年比30.1%増。マナウスも同じように11.3%増となっております。主要3空港ともに、輸出入貨物取扱量が増加しております。特に輸入に関しては自動車関連部材の荷動きが好調に推移している数値となっております。

 あと、ここには書いていないんですが、業界的には上期にエティハド航空の撤退や、輸出増による貨物スペースの不足の懸念がされましたが、特に輸送上の大きな影響はなく過ごしております。一方でカタールが周辺国との外交断絶行いまして、その影響によりカタール航空の利用を控える動きが見られております。

 航空業界下期の展望なんですが、下の図を見てもらいましょうか。下期についても、輸出入ともに貨物取扱量は対前年同増で推移していくものとみております。それによって、貨物量増加によるスペース不足が予測されます。皆様早めにブッキングをしてやっていただくことが必要となると思います。また輸出に関しては、7月より新しい申告システムが開始しまして、手続きが一部簡素化されることが期待されます。たしか7月から始まって、9月から旧システムが使えなくなるというシステムです。次行きます。

 これがキャリアさんですね。航空旅客。17年の上期の回顧としましては、国内線は有償旅客キロが対前年プラス0.6%、提供座席キロはマイナスの0.6%、利用率は1ポイントアップで、需給ともにほぼ横ばいの実績となっております。国際線は、有償旅客キロが対前年11.7%アップ、提供座席キロは7.2%アップ、利用率は3.4ポイント上昇し、供給の伸び以上に旺盛な需要が続いております。

 あと皆様気になるところで、最近航空会社の受託手荷物の預け入れ条件が変わっております。今までエコノミーであれば32kg×2個だったのが、23kg×2に変わりました。これはご注意ください。

 下期の展望です。国内線は各社の不採算路線の運休・減便も一旦終息した感があります。景気動向にもよりますが、下期は緩やかに回復すると思われます。国際線も国内線同様に、下期に主要路線を運休・減便する情報はなく、かつ去年のオリンピック・パラリンピックの特需はほとんどありませんでしたので、下期も引き続き前年を上回る実績が続くことが期待されます。

 特記事項として書いてありますけども、6月上旬にカタールと周辺6カ国が外交断絶したことに伴いまして、カタール航空のサンパウロ=ドーハ線はアラビア半島を横切ることができなくなったので、南北に迂回するルートに変わりました。よって所要時間は約2時間プラスの16時間というふうになっています。あと、お隣の国のアルゼンチンなんですが、アルゼンチン政府がブエノスアイレスの市内にあるホルヘ・ニューベリー空港での国際線の運航禁止を決めたことに従いまして、ブラジル発着の国際線は2018年4月から徐々にエセイサ国際空港に集約されます。今ちょうど飛んでいるのが、ブエノスアイレス市内から大体7キロにあるニューベリーなんですが、来年4月からは市内から28キロ離れたところにあるエセイサ空港に集約されるということです。

 ここから資料が一杯あるので、これが皆様何か分かるでしょうか。緑の線が空港アクセス鉄道です。今一生懸命つくっているやつ、本当はワールドカップに間に合わせないといけなかったやつなんですが、これはですね、12号線、この青い線の、サファイア線とかいったかな、ブラスから直通運航でターミナルに入るようになります。ただですね、ターミナル1のところで止まってしまいますので、1からは巡回バスか、徒歩で1、2、3というふうに行くという。一応環境問題があって、2と3の方には延伸ができなかったということです。ちなみにこれは、2018年上期中に運行を開始するということです。楽しみにしてください。

 いろいろ資料があるんですが、これは国際線ですが、国際線の需要が多い月は1月ですね。

 次、これが、ブラジルから二国間の航空需要が多いのがアメリカ、アルゼンチン、チリの順です。アメリカが全体の21%を占めております。またそれ以外は、移民政策等の歴史的背景から、欧州諸国との旅客流動は比較的大きいということが分かります。

 これも国際線の資料ですが、国際都市間ではサンパウロ=ブエノスアイレスが最も多く、168万人が年間で移動しております。

 国内線の、どこが多いかというものなんですが、もちろん皆さんの期待通りにサンパウロ=リオデジャネイロ線、これは日本でいうと東京=福岡線と同じ規模の人数が乗っているということです。ちょっとびっくりしますね。

 今の航空の資料はウェブにアップしますので、ゆっくり見て下さい。

 次に旅行・ホテル業界。これはこの上の図から読み取ってほしいんですが、2016年が悪かった分、2017年第1四半期の数字を見ると前年同期比、国内線・国際線ともに、発券枚数・売上高ともにプラスへと大きく改善しております。またホテルは、販売可能客室1室あたりの売上は前年同期比マイナス5.3%と落ち込んでおりますが、これはオリンピック・パラリンピックの反動により今年は下がったものとみられます。

 下期展望としましては、航空券は国内線・国際線とも、上期よりさらに改善することが見込まれます。国内ホテルはオリンピック・パラリンピックの反動で今年の下期は大きく落ち込むでしょうから、数値も去年を上回ることは期待できません。航空券の販売実績が前年度比プラスとなっていますが、旅行代理店は地上手配やパッケージの販売が落ちているそうです。

全体的には業績は16年より悪化しています。やはり経済低迷と治安の悪化により、日本からの観光客は衰退の一方だそうです。景気回復と治安改善がない限り、観光客が増加する見込みはないというふうに仰っていますので、裏を返すと景気回復と治安改善があれば日本からどんどん人が来てくれるのかなという感じはします。

 3月25日をもってエティハド航空が撤退しております。その代わりにエミレーツが大きいA380を入れたんですが、格安運賃で飛んでいましたエティハド航空が撤退したために、平均的に日本向け運賃が去年より高めとなっております。この傾向は下期も続くのかなということで、そういうふうに見込まれております。

 また、旅行代理店の数が増えていることで、10年前はカマラの会員であった旅行代理店、まあ日系関係でしょうね、5社程度でしたが、今年は11社あります。それ以外にも多くの旅行代理店が存在するんでしょうけど、狭い日系マーケットで些細な手数料や、例えば30日を超える支払いタームをオファーして、顧客を取り合っている状態だそうです。

 旅行代理店の経営はますます厳しくなっているので、ここを強調していただきたいと言われました。今後、無理な経営により破綻する旅行代理店が出ることも懸念されるそうで、皆様予約に際しては、好条件に目を奪われる前に旅行代理店の経営状況を見極めることも大切だということです。まあ日本でも、旅行代理店、やらかしたりしていますので、お気をつけください。

 トピックスとしましては、先程航空旅客の方でも説明しましたが、今まで無料でした航空機の受託荷物が6月以降自由化されました。航空会社によっては受託荷物の取り扱い規定が異なります。詳細については、航空会社か、もしくは旅行代理店にご確認お願いします。都度確認した方がよろしいそうです。

 次に下の方の、日本政府が日系四世への就労ビザの検討を開始しました。今ニッケイ新聞、サンパウロ新聞で色々出ておりますね。今後出稼ぎ需要がさらに増える事が期待できますが、現時点では就労ビザについての発給条件、運用スケジュールなどは未定です。いろいろ新聞などでは先走りしているようですが、未定です。

 日本政府への要望としましては、日伯間で早く観光ビザの免除協定を結んでもらいたいということ、それとブラジルの運転免許証の取得要件が緩和されるよう日伯間で協定を締結してほしいということです。よろしいですね。次行きます。

 通信業界。通信業界は3つあります。まず一つ目、携帯電話・モバイル関係。

 表Aを見てほしいんですが、全体的な契約者数は、キャリア間の接続料金引下げに伴う複数SIM保有者の減少より、約200万減少しました。4Gの契約者に関しましては、2Gと3Gからの移行が進んでおりまして、約1623万増加しまして、ブラジル市場の31%を占めております。

 下期の展望としましては、この表のBを見てほしいんですが、4Gへの移行はさらに加速し、年内に3Gの契約者数を超える見通しです。IoT/M2M(Machine-to-Machine)に関しては、狭帯域・低電力化に対応したNB-IoT (Narrow Band IoT)の運用が開始され、さらに普及が進む見込みでございます。次に行きます。

 通信業界のテレコム・データ関係ですね。表の真ん中の左側のCを見て下さい。インターネットユーザ数は1億3911万ユーザとなり、多さでは世界4位ですが、総人口あたりの普及率で見た場合、約66%にとどまっておりますので、まだまだ伸びる余地はございます。これは南米の周辺諸国と比べても低い値となっております。

 表の真ん中、Dをいきますと、ブロードバンドのマーケットシェアは、NETが31%、Vivoが27%、Oiが23%で、上位3社ともに16年から減少しております。

 表のE、右側を見て下さい。インターネットの通信速度、皆さんご不満あると思いますけども、徐々に良くなっているそうです。6.8メガビットという単位ですが、前年からみると約1.5倍となっており、周辺諸国と比較しても高い数字となっております。ちなみに日本は20メガビットというふうになっております。まだまだこれも改善の余地があるので、がんばってほしいと思います。

 下期の展望としましては、個人のインターネット利用多角化に加え、ビジネスにおけるインターネット経由でのシステム利用が増加するなど、引き続き増加が見込まれます。また、大都市中心部以外で高速化、安定化、低価格化が求められ、インターネットのエリア拡大や、ハイスピード回線の提供が進むことが想定されます。しかし、個人の動画サービス利用や、企業のサービス型システム利用などの大容量データ通信サービスの提供が進み、帯域の圧迫による回線安定性のさらなる低下が懸念されるところです。

 これが通信の3つ目です。IT業界全般の話です。サンパウロ・ニューヨーク間をつなぐ海底ケーブルSeabras1というのが竣工しました。あと無線通信用の人工衛星の打ち上げも成功しております。通信環境の改善に繋がる取組みがありました。これらインフラ設備の本格的なサービス開始は2017年下期から18年上期に計画されております。

 企業の業務用アプリケーションのクラウド化が進んでいるそうです。あとはITベンチャー企業が外部資本を得て拡大し続けており、特にフィンテック分野、ファイナンスとテクノロジーをあわせるとフィンテックというらしいんですけど、これの利用した金融商品やサービスは、2017年上期までに240以上まで増加しました。例えばスマホでのカード決済とか、クラウドで家計簿つけるとか、複数枚数を一つにまとめるとかという、そんなシステムらしいです。

 下期の展望としましては、このF、右側の表を見て下さい。クラウドやアウトソーシングなど外部へITプロセスを移管する動きは継続するものと考えられており、クラウドサービスの市場は3.4billionまで伸びる見込みです。また、企業向けのセキュリティやマネジメントサービス、サービス提供事業者向けのハイスペックデータセンター、サーバー、高帯域幅インターネットの需要増も見込まれております。

 次、まとめに入りたいんですが、その前にちょっと宣伝させてください。運輸サービス部会、色々セミナーや視察をやっております。今年は二つ考えておりまして、ICTトップセミナー、経営視点から考える日本企業の情報セキュリティと、IoTの最新動向について、講師をお呼びしたセミナーを開催します。時は10月19日、場所はカマラの会議室です。多く入れても50名ぐらいでしょうから、早目に申し込むようにしてください。NTTグループの専門家が来ますので、ぜひ皆様ご参加ください。この写真の下にちょっと1行だけ書いているんですが、11月開催予定で物流施設の視察会を例年通り行います。場所、まだ決めていません。発表できません。乞うご期待です。はい、最後に行きます。

 副題、回復途上のブラジル経済-いま打つべき戦略は、ということで、なすべきことは何かということでまとめました。

 最低限の機能を残した組織を維持し、品質・キャッシュフローの悪化を防ぎ、景気回復を待つ。先への投資能力があれば、システムの強化、社員教育への投資を行う。労働法改正に伴うコスト削減策への一手を検討、それで採用につなげていくと。

 モバイルを活用した新たな商品やサイバーセキュリティ関連のサービスなどの開発による新市場の創出を行う。これに関するセミナーだそうです。魅力的な商品を創出し、需要喚起を行う。

 日系移民110周年、来年です、7月です、に向けた、経済だけでなく文化・スポーツ・芸術などへの様々な分野でのブラジル・日本間の交流活発化と相互理解を高める。

 ブラジルへの旅行者呼び込みのため、相互ビザ免除協定の締結、運転免許証にかかる協定の締結を行うよう働きかける。国際法にならって標準化を進めるように促していく。先程も出ましたね。税制簡素化とか色々ありました。

 とにかく景気が良くなってきたのかどうか、安定してきたのかどうか、まだ判断実際につきません。また業界によってばらつきがありますので、ただ今の表、説明というより実際の数字を見る限りでは、何か明るくなってきたなという感じは、私は思っております。とにかく、やるべきことは行って、もうひと踏ん張り頑張っていきたいと思います。以上です。

司会

 運輸サービス部会、非常に多岐にわたる、毎回毎回、発表で、非常にたいへんだったかと思いますけれども、どうもありがとうございました。こちらの方の発表につきまして、質問等いかがでしょうか。よろしいですかね。

 ちょっとこれをまとめるのは、非常に難しいんではございますけれども、全体の傾向としては物流、海運、航空貨物等々ですね、景気に左右されるところというのは、徐々に、全体的には良くなってきているのかな、まあ急激にではないですけれども、徐々に良くなって、特にその辺の対策が結構とられて、前回はかなり厳しいような話をされていましたので、色々、再編ですとか、コスト対策とかですね、そういったとれるところはかなり改善してきているのかなという気がしました。

 それから、旅行ホテル業界も同様ではありますけれども、ただ旅行業界ですね、非常に代理店の数が多くなっているとか、特殊な事情がありますので、そういった中で、やはり、日系四世の就労ビザの検討が開始されて、それが早く導入されること、そして、観光ビザの査証免除ですとか、運転免許についての協定を締結してほしいという要望は非常に切なる願いなのかなという感じがしております。

 また、成長分野につきましては、堅調にやはり需要が伸びてきていて、またそういった中で新たなサービスを投入するという動きがありますので、こちらの分野というのは引き続きビジネス拡大に向けて各社さん取り組んでいっているという印象を受けました。運輸サービス部会をこれで終了します。細谷部会長、毎回毎回、どうもありがとうございました。

 続きまして、建設不動産部会の発表に移りたいと思います。奥地部会長より発表いただきたいと思います。

 

建設不動産部会

奥地正敏 部会長

             

 

 皆さんこんにちは。戸田建設の奥地でございます。細谷部会長の話が非常に長くてですね、時間も押していますので、まあ皆さんもお疲れのところだと思いますので、建設不動産部会の発表は手短かに切り上げたいというように思っております。

 それではまず、今回の発表の内容でございますけれども、まずは部会内の動向ということで、これはアンケート調査のまとめでございます。2番目に建設不動産市場の現状ということで、これはデータの方から市場の内容をお示ししようということでございます。

 3番目が、現状打開の策ということで、まあどういう策を打つべきかということでございまして、最後にその打開策の一環として、各社の、日本の技術の導入例をご紹介しようということにしております。それでは次お願いします。

 まずは部会内の現状ということで、アンケート調査の集計でございます。その前に、部会の中でちょっと移動がございまして、3月でサッシのYKKさん、プレハブのナガワさんが退会されまして、今回から、機械金属部会に所属されております、ファクトリーオートメーションのアズビルさんと、空調その他、エレベーターの三菱電機さんに一応オブザーバーとしてですね、部会に参加をしていただいております。

 アンケート結果でございますけども、まず建設のゼネコン2社ですね。これは2社とも、前年比で2割減と、上期の実績として2割減ということでございます。まあゼネコン業界としてはまだまだ回復基調に乗っておらず、通期予測も両社とも昨年の8割程度にとどまると、売上がですね、というような見通しでございます。

 不動産業者さんのA、Bというのは、1社は駐在員向け住宅の斡旋業さんですね。まあスターツさんでございますけども。もう1社は、工場用地、レンタル工場の斡旋業さんということで、この2社ともですね、昨年同様。通年予測でも同じような売上と、変わらずということでございます。

 あと、昨年来業績を伸ばしておりました特殊技術、これは地盤改良のCGCさんでございますけれども、インフラ関連事業が停滞しておりましてですね、昨年同期に比べて大幅な落ち込みになるということでございます。下期に関しては、下水道、地下鉄などの公共事業が再開されれば、回復の期待があるということでございます。次お願いします。

 上期の特徴と課題としましては、まず建設としましては、自動車を中心とした製造業の設備投資がまだはかばかしくないということで、工事規模が小さいのとですね、受注競争が激化しておりまして、まあ業界全体がまだ回復していないという見解では一致をしております。現状の打開策としましては、価格競争力を高めて、施工の効率化、あるいは工業化を進めること。また、価格だけではなく、環境性能、あるいは省エネ性能を付加した価値をつけることによって、ローカルゼネコンとの差別化を図るというようなことが挙げられるかと思います。

 不動産に関しましては、駐在員向け住宅斡旋業様はですね、昨年来駐在員の数が非常に減っておりまして、2014~2015年と比べると2割から3割の減、取扱量の減ということになっております。また、家族帯同が減りまして、単身者が増えていると。これは細谷さんからもご指摘ございましたけども、これも特徴であるということでございます。

 賃料に関しましては、2015年以降低下傾向にありましたけども、現在はまあ底を打った感があります。また、最近は同一建物内でもですね、賃料の幅が非常に広がっておりまして、最大25%ほどの差がある物件もあるということでございます。現在はアパートの売買価格が高止まりしておりますので、今後の価格変動に備えて、実利の利益がもう少し高まるのを待ってですね、オーナー業などの新規事業も検討の余地があるということでございました。

 工場用地と工場レンタルの斡旋業はですね、少しずつ相談件数が増えてきているものの、まあクロージングに結び付けるというのが中々難しいというような現状でございます。

 特殊技術に関しましては、前期の大型工事受注のおかげで施工高は前期の9割を確保しておりますけども、受注が大幅に減少しているということで、特に案件の多かったサンパウロの下水工事、あるいは道路、地下鉄関連工事などのインフラ関連事業ですね、これが止まっているというのが大きな影響を与えているということでございます。次お願いします。

 次は建設不動市場の現状ということで、まずは全産業の四半期ごとのGDPの成長率ですね。前年度比を見てみますと、まあ2015年、16年はですね、マイナス成長を続けたものの、今年に入ってですね、1%のプラス成長となり、まあ全体的には景気は緩やかに回復しているということが言えるかと思います。次お願いします。

 しかしながら、やっぱり産業によっては非常にばらつきがあるというのが特徴かと思います。特に、構成比で5%近くを占める農業ですね、これは前年同期比で15.2%の伸びを見せておりまして、全体の産業を牽引しているということが言えるかと思います。あと、構成比で1割を占める製造業ですね、これは昨年第1四半期がマイナス10%だったのが、今第1四半期はマイナス1%%となりまして、まあ回復に向かっているという傾向が見えるかと思います。

 これに対して建設業というのは、非常に厳しい状況に置かれていましてですね、これは池辺部会長の方からもご指摘がありましたけども、マイナス成長のままということで、今年の第1四半期においてはマイナス6.3%でございまして、全産業中最下位ということで、他産業と比べて回復の見通しが立っていないということが浮き彫りになっております。次お願いします。

 これは失業率のデータでございます。これは、ブラジル地理統計院によればですね、今年第1四半期の全体の失業率がまだ13.7%に上っていると。第2四半期は13.2%に改善したものの、まだやっぱり失業者というのは1350万人を数えてまして、ブラジル史上最悪の事態というのは続いているということでございますね。

 その中でも建設業界というのは非常に悪い状況でございまして、過去2年間で100万人就業者を減らしたというようなデータがあります。失業率は14.5%で、全産業中ワースト1位ということになっております。まあ非常に、これを見てもですね、厳しい状況であるということが言えるかと思います。次お願いします。

 次は不動産市場についてであります。マンション価格、まあアパート価格ですね、これは過去1年間、売買、賃料ともにほとんど動きがないということですね。直近12カ月の物価上昇がですね、2.7%に対して、マンションの売買価格は0.08%の上昇。賃料は0.5%の下げというふうに一定しております。ただ、売買価格は現状高止まりをしている状況でありまして、まあ賃料も下げ止まりしたというのが市場の見方で、今後価格変動が予想されるということでございます。

 次に、現状打開に向けてですね、日本企業が打つべき方策ということでございますが、この業界に関しましてはですね、まずは受注競争を勝ち抜くためのコスト低減努力ですね。これは不断の努力が必要であるということでございます。さらに、日本企業ならではの品質ですね、そして納期、アフターサービスの保証ですね。これを付加してですね、競合他社との差別化を図るというのが一つの策かと思われます。

 そして、新規顧客ですね、特にブラジル企業の開拓ですね、顧客の開拓を積極的に行うというのが今行うべきことではないかというふうに思う次第でございます。また、イニシャルコストを重視しがちなブラジル企業に対しまして、ライフサイクルでのコスト提案をするということがかなり有効な手段じゃないかというふうに思っております。その中でもですね、日本の技術ですね、これをブラジルに導入するというのは非常に有効な手段だというふうに我々は思っております。

 で、この例としてですね、部会員が実践している、または今後実践したいと思っております日本の技術の導入の例ですね、これをご紹介いたします。

 まずはじめはですね、特殊技術のCGCさんですね。これは地下工事の総合エンジニアリングの会社でございまして、主に地下水や軟弱地盤の問題に取り組んできております。CGCさんの技術というのは、基本的にはブラジルにはない技術でございまして、これを日本から持ち込んでいるということでございます。

 まずその、左上の写真ですね。これは薬液注入と申しまして、地盤に薬液を注入しましてですね、地下水の流れを遮断して、トンネル工事、あるいは地下工事の掘削をしやすくする技術ということで、これは元来ブラジルにはなかった技術を導入して、去年のリオのオリンピックの時の地下鉄ですね、これを開業までに間に合わしたというのはこのCGCさんの技術があったということでございます。

 その下がですね、ジェットグラウトということで、地下の地盤を高圧のジェット噴射のセメントミルクで混合攪拌させることで、地盤を強固にする技術ということで、これはブラジルにも技術はあったんですけども、大口径の改良ができる新しい機械を持ちこみまして、改良をしておるということでございます。この二つの技術に関しましては、CGCさんが 8年をかけてブラジルで根付かせてきた技術で、実績の件数は150件以上に上るということでございます。

 右側の技術がですね、これは今後導入を検討している技術ということで、これは皆さんニュースでもご存じかと思いますけども、福島原発のですね、放射能汚染の地下水を遮断するために今使われている技術で、凍結管を地中に打ち込んで、凍結帯を作って、凍土を人工的に作って地下水を遮水するというような技術でございます。これは薬液注入をしないということで、水を使ってですね、氷を作って地下水を遮水するということですので、環境に配慮した遮水技術ということで、今後の展開が期待される技術でございます。次お願いします。

 次はオブザーバーの三菱電機さんの実例でございます。これは、今年5月にオープンした ジャパンハウスにですね、空調設備、そしてハンドドライヤー、あるいはエレベーターのほかにですね、省エネのBMSですね、これはBuilding Management Systemといいまして、これを納入しております。省エネの性能に優れる個々の製品のみではなくて、建物全体のエネルギーを監視して、省エネを実現する技術というのがそのBMSということで、これはトータル・ビルディング・ソリューション技術の導入例ということでございます。ジャパンハウスに関しましては、ほかに衛生機器等も含めてですね、日本の建築機材ですね、そのショールームとも言えるような建物になっているということでございます。次、お願いします。

 次も、オブザーバーのアズビル様の技術でございます。これはファクトリーオートメーションですね。工場全体のエネルギーを可視化して管理するBMSですね、これを導入をしております。また、医薬品工場ではですね、専用の空調制御・監視システムを用いまして、データの改ざん防止、あるいは操作履歴の確認システムで製造環境を保証する技術を日本から導入しております。また、製造現場ではですね、1台で長持ち、省エネ、コスト削減につながる日本の計器類や、制御機、またエア漏れの感知器を導入しまして、ライフサイクルでのローコストの提案をされているということでございます。次にいきます。

 これはホス建設さんが今後導入を検討されている技術でございます。これは床面の吹出の空調を用いまして、タスク&アンビエント空調を実現するというような技術です。このタスク&アンビエント空調というのはですね、人が作業をするタスク領域ですね、ここに集中して冷暖房を行う空調方式でございまして、従来の全体を空調する技術に比べて空調の負荷を低減できるというような省エネ技術でございます。日本では最新の省エネビルに採用をしておりますけども、今後ブラジルでも発展していく技術かというふうに思っております。

 最後に弊社の事例でございますが、これもやっぱり空調の省エネ技術ということで、比較的容易にブラジルに導入できる省エネ技術として、我々はですね、クール&ヒートトレンチの導入を計画しております。クールヒートトレンチといいますのは、この図のようにですね、建物の地下にトレンチを設けてですね、地下の温度は比較的年間を通して一定ですので、夏は涼しく、冬は暖かい空気を空調機に取り込むことによって、空調の負荷を低減する技術でございます。これは条件によって異なりますけども、まあケースによっては15%程度のコスト削減につながるという技術でございます。現在、某工場でですね、来年度の設置を目指して設計のシミュレーションを行っているところでございます。

 もう一つの技術はですね、粒子線治療施設ということでございます。これは、がん治療に利用される放射線というのはですね、大きく分けて、図のように光子線と粒子線の2種類があります。光子線というのは従来のX線などの放射線治療に利用されています。それに対してこの粒子線というのはですね、水素や炭素の原子核を利用した放射線で、これらの粒子を用いた放射線治療を粒子線治療と呼んでいて、粒子線の治療の中でも、陽子線の治療がですね、日本では始まっておるということでございます。

この粒子線治療の特徴はですね、高い放射線量を狭い範囲に集中して照射できるというのが特徴でして、がん細胞に致命的なダメージを与えることができて、かつ副作用は少ないというような発展した技術ということでございます。この粒子線治療においては、重い原子核を加速して照射するため、この図のような加速器ですね、シンクロトロン、あるいはガントリーですね、このような大掛かりな装置が必要となります。また、放射線を遮蔽する構造の躯体ですね、これも大きくなるというのが、特徴でございます。

 次はですね、当社がいま施工している物件でありまして、兵庫県の小児がんの治療センターということで、この中に加速器とガントリーが入っていまして、これでございますけども、ここに機械が二つ入っていまして、それを遮蔽する分厚いコンクリートを設置しているということでございます。ちなみにこの機械の方は三菱電機さんの製品ということでございます。

 今年の6月にですね、サンタクルス病院と日本の筑波大学病院が技術提携を行いまして、その中の一つにですね、この粒子線治療のブラジルへの導入を図るという項目がありますので、今後、このような技術がブラジルでも発展してくるというふうに考えられております。

 以上が建設不動産部会の発表となりますが、全体としましてはですね、業界全体としてはまだまだ景気回復の実感はないというのが実情でございます。しかしながら、来年以降ですね、ブラジル経済が回復してくる時期に、我々業界として重要になるのは、今までこの国になかった日本的な付加価値ですね、これをいかにブラジルの社会に提供できるかというのがポイントになってくるかと思います。

 ご存知のように、ジャパンハウスはですね、オープン以来大盛況でございまして、今週で30万人以上の来場者を迎えるということになっております。これは、やっぱりブラジルの方々が、今までの伝統的な日本のカルチャーだけではなくてですね、日本の最先端のテクノロジーですね、これに非常に興味をもっているということの証拠ではないかと思います。これは、我々日本企業にとってもですね、大きなヒントになるというふうに考えております。

 以上、発表を終わりたいと思います。ご清聴どうもありがとうございました。

司会

 奥地部会長、どうもありがとうございました。ただいまの発表につきまして、質問はございますでしょうか。はい。建設不動産部会は非常に厳しい状況ではありますけれども、将来に向けて日本技術を導入していくということが、いま打つべき戦略ということで、重要な戦略に位置づけられている。こういうことではなかったかと思います。奥地部会長、どうもありがとうございました。

 いよいよ最後の発表となります。繊維部会より発表いただきたいと思います。豊田部会長より発表をお願いしたいと思います。

 

繊維部会

豊田明生 部会長

             

 

 こんにちは。繊維部会を代表いたしまして、ユニチカの豊田が発表させていただきたいと思います。皆様たいへんお疲れのところですね、ようやく最後の発表となりましたので、もうひと頑張り、よろしくお願いしたいと思います。

 発表は、17年上期の回顧、それから下期の展望のそれぞれをですね、我々の製造業にとっての原料、それと加工した製品の面から見ていきまして、今のブラジル繊維産業の構造的問題も考えながら要望とか戦略とかを説明していきたいと思います。ブラジルでの繊維部会の現状によりまして、繊維とは言いながらですね、話が綿紡績中心の説明となりますけども、ご容赦お願いします。

 この写真は、今申し上げました我々にとっての原料、綿花です。綿紡績の主原料である綿花。これは、ブラジルというのは世界で5番目の生産量を誇るところの綿花。ただしブラジルの農産物の中ではパーセンテージが非常に小さい、1%未満だと思いますけども、それでも世界の5番目にたくさん作られている綿花の畑でございます。先程来、ちょっと、奥地さんの説明なんかは堅いというか、原子核とか粒子線とかそういうのが出てきましたけど、私の業界は非常にやわらかい、こういうコットンの世界からちょっと話を進めていきたいと思います。

 今の時期ですね、ちょうど8月がブラジルにおける綿の収穫の時期でございますので、今マット・グロッソとかバイーアとか、その辺に行きますと、こういう景色がご覧になれます。次お願いします。

 原料である綿花の価格相場に影響を与えますのは、やはり世界の綿花需給なんですけども、この図はですね、過去、去年と今年と来年の予想ということで、生産量の変化を表しております。生産量は安定的に増加しております。数量的には、2100万トンぐらいから2300万というふうに徐々に増えておりまして、来年は2500万トンぐらいというように、世界あわせますと安定的に増加しております。国別の生産量順位は、1番がインド、2番が中国、3番がアメリカ、4番パキスタンで、5番目がとなっておりまして、この順位は近年不動できております。次お願いします。

 世界の綿花の今度は消費量です。綿花を消費するということは、すなわち糸に作られていくということで、ほぼ糸の生産量と同じというふうに解釈していただけるかと思います。消費量もですね、生産量と同じように、安定的に増加しておりまして、このグラフで見ますと大体2400万トンから2480万。来年予想としては2550万というふうに安定的に増加しております。

  国別の消費量順位は、1番が中国、2番がインド、3番がパキスタンということで、この上位3位も近年順位は変わっておりません。特徴的なのはですね、綿花を生産していないバングラディシュ、あるいはベトナムが最近急増しております。アメリカやブラジルを追い抜きました。これらの国々は、世界の繊維加工基地化しておりまして、ポスト中国ということでそういう繊維の加工基地としても非常に最近増えてきておりまして、そこらで加工された繊維の加工製品がこちらブラジルにもですね、多く輸入されてきているのが現状でございます。次お願いします。

 国際綿花相場というんですけども、いま申し上げました通り、生産も消費も安定的に増加しております、世界全体では。わずかに生産より消費のほうがちょっと多い状態の、そういうトレンドが続いておりますので、結果的にですね、在庫も徐々に減って、ニューヨーク先物綿花相場というのが世界の綿花の価格というのを大体決めている指標となっておりますけども、この1年半ずーっと上昇が続いておりました。ところが17年の、今年の6月、アメリカのですね、農務省が発表しましたけれども、綿作の豊作を予想しまして、久しぶりにその指標の相場が下がり始めた。一番右にちょっと下がり始めたところが特徴となっております。次お願いします。

 今度はですね、ブラジルの国内、世界のそういう相場に影響を受けながら、ブラジルはブラジル国内で特徴的な部分がありまして、ブラジル国内の原料であります綿花の事情を説明いたします。このグラフではですね、先程来の世界の表とちょっと違ってですね、16年度の不作だったということを示すために、そのひとつ前の15年のところから、1年前の実績から示しております。16年はですね、特にバイーア州で綿花の不作がございました。天候が主な原因ですけども。そのためにやはり生産が非常に少なくなりました。それと、生産者のですね、輸出志向がその前の年から続いておりました関係で、国内向けの供給は非常に不足になりました。

 16年はですね、15年ほどのレアル安ではなかったにもかかわらず、綿の輸出に関しては前の年の15年と同じ水準を維持しました。したがって、元々生産量が減っておりますので、国内向けの供給が非常にタイトになりました。その結果、まあ我々紡績メーカーの原料が、取り合いとまでは行きませんけども、当然需要と供給の関係で、非常に値段が上がったということになっております。

 17年の予想としましては、ちょうど今8月で、先程申し上げた通りブラジルの綿の収穫の真っ最中でございます。生産が昨年に比べると回復しまして、輸出もレアル高がちょっと高すぎてですね、さすがに農家さんも輸出にそんなに回せなくなるという予想から、国内向けの供給は増加する見込みとなっております。次お願いします。

 ブラジルの国内原綿価格の相場は、今申し上げたような需給バランスからですね、16年の初めごろから原綿価格はずーっと高止まりしておりました。高いところを、多少のでこぼこはありますけども、ずっと高止まりしておりましたけども、17年の収穫が今ちょうど始まって、豊作の見込みという情報が出ておりますので、それが判明しましたちょうど17年の7月、先月あたりから、原綿価格は1年半ぶりに下がり始めて、まあ我々にとっては適正化に向かいつつあるかなという。具体的に申し上げますと、Esalqという業界での指標、原綿価格の指標価格があるんですけども、ずっと2.8レアル/ポンドあたりまで上がり続けていたんですけども、7月からは一気に2.5レアル/ポンド、キロ当たりにすると5.5レアルぐらいですか、まで下がってまいりました。次お願いします。

 続いては、我々がそういう原料の綿を使って、加工して作る製品の糸についての説明です。綿の写真は先程見ていただきましたけど、糸についても、まあ一般消費者には売られていませんので、皆さんあまり見たことないと思いますけども、こういう形状で販売しております。これを、業界の中でですね、我々の川下の業界である、編み屋さんとか織り屋さんというところに行って、その後染めたりして生地ができあがって、それを縫製して最終的な衣料になるという、そういうプロセスでございます。次お願いします。

 国内販売価格、すなわち我々にとっての製品販売価格ですから、糸の値段のことですけども、この表ではちょっと傾斜がゆるすぎてよく分かりませんけども、要するにですね、17年の上期一杯までは先程来私説明しました通り、原料の原綿代が非常に高止まりしておりましたので、しかしながら我々はそれを販売価格に転嫁できないという厳しい状況が続きました。

 その理由は何かといいますと、まあもちろん長引く不況で需要が伸びない、繊維業界の衣料売れ行きが伸びないということ。それと、差別化しにくい製品、我々の糸は非常に差別化しにくい部分がございまして、意外と簡単に輸入品も入ってきて置き換わる可能性もあるということで、輸入品価格がいわゆる上値を抑えるという形になって、ある程度、我々が高く、値上げをすればするほど、お客さんが輸入品の糸を買ってしまうと、そういう状況にありました。

  この1年弱でですね、原料代は70センターボほどキロ当たり上がったんですけども、我々の売値はまあ40センターボぐらいしか上げられていないと。これは、我々の糸値の売値というのは、繊維部会の推定価格ではございますけど、そういう状況で、スプレッドも維持できていないという状況がこの1年近く続いておりました。次お願いします。

 輸入綿糸の貿易について見てみますと、16年の下期、17年の上期ともにですね、レアル高だったので、輸入が非常に伸びました。輸入が大きく増加しております。この赤いのが輸入、これは半期ごとに、16年上、16年下、それから17年上という半期ごとに見ておりますけども、非常に輸入の量が増えました。17年下もそのままのレベルで、たぶん増えたままで行くだろうというふうに予想されていて、見込んでおります。

  まあ、年間輸入量、糸の輸入量はおよそ2万トンぐらいのレベルですので、国産の糸は70万トンぐらいありますから、それに比べたらたいしたことないような量でございますけども、それでもやはりそういう非常に価格競争の厳しい糸値に関しましては、影響を受けやすいという状況になっております。でまあ、ブラジルコストですね、先程来皆さん色々出ておりましたけど、ブラジルコストを非常にまともにくらうブラジル製の糸というのはですね、輸入の糸との競合にまともにさらされているというのが現状でございます。次お願いします。

 続いてですね、製品。我々紡績メーカーの製品は糸ですけども、それ以外繊維の製品についてちょっと簡単に見ていきたいと思います。どんなものかといいますと、先程ちらっと言いましたように、我々の糸を使って、織物にしたり、あるいは編み物にしたそういう生地ですね、あそこに反物が積んであります、それが生地。あるいは、タオルとかハンカチとか、で右下にありますのは、ご存知の衣料ですね。その辺について見ていきたいと思います。次お願いします。

 生地輸入も、もちろん増加していますね。このように、角度、右向きに上昇している通り、輸入が非常に増加しております。その下は、衣料製品も輸入が増加しております。生地も製品も、輸入品との競合に非常にさらされているというのが、ブラジルの繊維業界でございます。織編物、衣料製品ともに前年同期比、全てのアイテムで輸入は増加しています。国内の繊維産業を非常に圧迫していると。次お願いします。

 ブラジルの繊維産業について、その構造的な部分をちょっと見てみたいと思うんですけども、今申し上げた通り、輸入品に苦しんでおります繊維産業というのは、典型的な労働集約的な製造業でございますので、ブラジルコストの影響を非常に大きく受けます。

  ここに書いてあります通り、ブラジルの繊維産業はですね、元々の特徴としまして、1番、原料の綿花をですね、全部国内で調達できると。それから2番、繊維産業のすべての段階のプロセスをブラジル国内に備えております。就業150万人と言われております。そして3番、2億5000万人ですか、赤ちゃんから老人まで皆さん、衣料を使いますので、大きな消費市場を持っているという、非常に恵まれた経済構造になっているんですね、繊維で見れば。したがってですね、1955年以降、日系の紡績もブラジルに進出してきて、60年以上の歴史がございます。次お願いします。

 ところがですね、現状を見てみますと、繊維では原料の綿花を輸出して、完成衣料品を輸入するという、いわば中抜き構造ですね、が最近ずっと進んでおります。いわゆる加工付加価値の部分である、ブラジルコストの影響が非常に大きい部分、そこを外国に任せるような構造にどんどんなってしまっている。行政面といいますか、ブラジルの現状を見てみますと、長期的視野で産業を育成することができずに、コツコツものを作るよりも、安い、安価な調達が優先されているのが現状。

 したがって、コストであるとか、研究開発とか、そういう部分での国際競争力がどんどん落ちていってしまいました。一方、労働者サイドから見ますと、下の欄ですけども、地道に働くよりも、安易な目先の所得の方についつい皆が目が移ってですね、それと保護政策、労働者保護が長いこと続いておりましたので、そういう保護政策の悪用ですとかが非常に顕著に見られてですね、コツコツ真面目にやっているそういうのが、真面目が損するような雰囲気さえ出てきているんじゃないかなと。

 具体的には、労働訴訟。サンパウロなど大都市近郊では、非常にもう、半ばビジネス化しているんじゃないかと思われるほど、労働訴訟が多くて、我々非常に悩んでおります。それから社会保険。年金ですとか失業保険なんかの社会保険ですね。あるいは補助金への依存、あるいは場合によっては不正利用ですね、それが野放しになっているのが見受けられます。このような厳しい環境の中ですね、2016年は、非常に残念ですけども、日系紡績は6社あったうちの3社が繊維事業から撤退しております。

 まあ日系だけじゃなくて、繊維業界、ブラジル系もかなり、15年から16年にかけて撤退したというのが事実でございます。不況が長引いているということももちろんございますけども、今申し上げたような構造的な問題があるのは事実でございます。次お願いします。

 17年の下期と、それとさらに長期的な展望と、我々の願いでございますけども、1番はやはり早期の市場回復を願う。回復の兆しがあるという話もちらほら出ておりますけども、まだまだちょっと、過去にもそういうのを何度も言われましたけども、ちょっと中々今、うかつに信用できないというような状況でございます。

  2番目、早期の制度改革を願う。まあ労働法の改正とか、年金改革などがようやくちょっと動き始めたと思っておりますけども、まだまだ時間かかるんじゃないかなと思います。それらを待っている、他力本願では、我々生きていけませんので、やはり可能な自助努力を続けていかないといけないということで、次お願いします。

 いま打つべき戦略としましては、これはですね、部会の中の各社それぞれ事情が異なりますので、統一見解というわけではございません。順にちょっと説明していきますけども、高機能製品での市場開拓。長らくですね、高機能品はブラジル市場ではあまり必要とされていなかったんですけども、最近やはりそういうところをようやく攻める時期が来たのかなということと。

 それから、差別化志向メーカーですね。我々の売っているお客さんは同じく製造業でございますので、そういうメーカーの中で差別化を志向するメーカーに対して、日本企業の得意とする付加価値品を提案していくと。そういうやり方、従来のやり方を変えたいという動きも我々のお客さんの中にも出てきています。

 それから、輸入対抗として有力小売店との一体取組み。あるいは国産品の購買キャンペーン。ブラジルの綿花生産者協会がそういうブラジル製の国産品を買おうよという、そういうキャンペーンをやっておりますので、そういうところに我々としても積極的に乗っかっていきたいなと思っています。

 それから、信頼できる現地パートナーの探索。環境配慮の綿製品のキャンペーン。これはヨーロッパなどを中心に、Better Cotton Initiativeという、そういうキャンペーンがはられていますので、日系企業が得意とするそういう品質を売り込むために、そういう戦略に乗っかっていきたいなと。

 それから、日系の強みであります、顧客フォロー、正確なデリバリー、それから品質の安定、そこをまた推していこうと。汎用品をですね、省力化したり、機械に設備投資して量産するブラジル系とか輸入のそういうやり方とはちょっと差別化して、我々日系企業の強みを生かそうじゃないかと、そういう考え方です。

 ブラジル法制に対応する体制構築。それから、まあ継続的なコスト削減、この辺はちょっと、一言で言いますと簡単すぎますけども、この辺は非常に奥が深くて、簡単には説明できないと思います。この辺に各社とも非常に注力しているんだと思います。

 以上で繊維の説明はおしまいでございます。非常に、昼からずっと半日、堅い話がずっと続きましたので、最後にちょっと和んでいただこうと思いまして、癒しの画像を入れておきました。これはちょっと宣伝になりますけど、綿素材の衣料をまとっている風吹ジュンといいまして、40年前の写真、ユニチカの初代マスコットガールでございます。以上で繊維の発表を終わらせていただきます。

司会

 豊田部会長、最後、風吹ジュンの癒しで締めくくっていただきました。どうもありがとうございました。ちょっと時間オーバーしておりますけれども、ご質問のある方いらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。これで一応11部会の発表をすべて終了しまして、色々日本企業が、我々会員企業が今打つべき手はというところで、周辺諸国への輸出だったり、財務体質強化だったり、コスト削減だったり、差別化だったり、いろんなアイデアが出てますけども、非常に印象的だったのは、やはり日本の強みを生かしてですね、中長期的な視点に立って、日本の優れた、新しい技術なり、サービスなりを、今この時期にですね、市場に仕込んでいくと、打ち込んでいくと、そのための研究開発をやるところも出てきているといったことが印象的で、そのための環境整備というものも重要になってくるというのがですね、印象的な気がしました。

  その辺はやはり、成長分野のところをめがけてですね、取り組んでいく話で、ボラティリティの低い分野でもありますし、またそういった分野がですね、非常に、市場としてですね、有望なのではないかなと。

  ルート2030とかですね、ロボット化、デジタル化の動きでしたり、色々ございますけれども、そういった新たな技術を導入する時期でもあるのかなというような気がしております。はい、では以上で各業界の発表がなされましたので、ここでですね、在サンパウロ日本国総領事館より特別に出席いただいております、皆様おなじみのですね、蛭子領事にですね、本日の各部会の発表につきまして講評・コメントをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

講評・コメント

蛭子英稔 在サンパウロ日本国総領事館領事 

             

 

 先程の風吹ジュンの写真を見て、多分一番、緊張している私が和んだのかなと思います。ちょうど1974年の、私の生まれた年だったので、なおさら何か相通ずるものがありました。普段、中前前総領事はですね、ここをジャンプして上がっていたんですが、皆さんにご心配をかけるのもたいへん恐縮なので、普通に登場させていただきました。蛭子でございます。

 シンポジウムでは、例年、総領事の講評と、大使館の参事官のコメントというのが近年の流れでしたが、総領事自体もいま未着任で、小林参事官にあっては帰国直前ということで、たいへん僭越ではございますが、私の方から、コメントというか、一言申し上げさせていただきます。

 総領事にはですね、いつも警備員がついておりまして、私と同じ髪型の警備員が何人もいるんですよね。で、皆様の混乱を避けるために、今一度ちょっと私自己紹介させていただこうと思います。2年半ほど前に厚生労働省から外務省に出向して、サンパウロ総領事館の経済班で領事をしています、蛭子です。蛭子という漢字は、よく言われるんですけど、ギャンブル好きの漫画家の蛭子さんがいますね。親戚ですかと言われるんですが、まったく親戚ではありません。

 私が所属しています経済班には、農林水産省から、本日も来ていますが、農林水産省からの出向者である相原と、キャノンからの出向者である中富という者がおります。中富にあっては、ジャパンハウスを担当しています広報文化班も兼務しております。ジャパンハウスをご活用いただく際はですね、ぜひ中富の方をコンタクトパーソンとして利用していただければ、幸いでございます。

 私、相原、中富の3人で、今回を含めこれまで計5回のシンポジウムに参加させていただきました。シンポジウムに先立つ各部会の懇談会にもできるだけ参加させていただき、色々と貴重なお話を聞かせていただきました。総じて暗い話が続き、皆様にとってもたいへん厳しい状況であることは肌で感じてきたつもりです。そして今回の事前懇談会や、シンポジウムに参加させていただいた印象として、これまでの中では最も回復の兆しが見られるとの意見が多かったように感じております。

 また、景気変動を受けにくい分野への積極的な投資、付加価値品の提案、ローカル競合他社との差別化、買収や有料人材確保、新製品導入、本社への粘り強い説明、説得、そしてその説明資料としての見える化ですね。あとブラジルの高い将来性のアピール、輸出周辺国での営業強化、環境に負けない事業体質の強化の推進、事業基盤の強化、事業機会に結び得る努力、など、これからどう進めていこうかという具体的かつ前向きなご発言も多かったように思います。

 また、本日の出席は最多とうかがっておりますが、まあ皆さんのこれからの活動へ生かそうとする期待の表れではないかなかと思っております。

 シンポジウムでは毎回副題がございますが、回復の兆しが見えない状況下、副題の決定はさぞかし困難なものであったとお察しします。そして今回の副題は、回復途上のブラジル経済-いま打つべき戦略は、でした。この戦略という言葉を分解すると、戦を略す、となります。昔から正面衝突による消耗戦を避ける方が好ましい結果をもたらすと考えられていたことが読み取れます。

  また、まったく話は変わりますが、恐竜は強い生物であったにもかかわらず、絶滅しました。一方で、昆虫は弱い生物にもかかわらず、3億年前から生息しているといわれています。これは、強いから生き残るのではなく、適応するから生き残れるということの証です。

 今申し上げた二つの内容の大元は、残念ながら私が考えたものではなく、以前読んだMBAの本の経営戦略の項目に書いてありました。

 ブラジルのビジネス環境や、文化に適応することは、一筋縄ではいかないことは、少しは理解してきたつもりです。ただ、このカマラには、戦略、適応による生存、この二つの要素を満たすことができる活動があるということをお伝えしたかったわけです。

 皆様はブラジルで事業を進めていく上で、競合することもあるかと思います。そんな中、シンポジウムや、政策対話など、カマラの様々な活動を通じ、知恵を出し合い、力をあわせ、ビジネス改善や適応に向け、地道に活動されてきたことに、疑いはございません。

 シンポジウムに先立った懇談会でも、個別企業の相談に対し、皆様で対応策を提案する姿も拝見しております。このカマラでの皆様の結束力は、他国では中々見ることができないとお聞きしたことがございます。もしこの結束力がなければ、より厳しい局面を迎えていたかもしれません。

 引き続きこの結束力を維持することで、様々な情報を共有、相互補完、そしてビジネス環境の変化にも適応され、皆様の事業が持続的に繁栄されることを切に願っております。そしてその結束力の中に、日本政府、大使館や総領事館も仲間に入れていただけますと幸いでございます。

 官民連携の強化には、問題点などの共有が不可欠であると考えております。政府関係者は様々な決定、判断をする上で、経済感覚のあるなしがどのような経済結果を招くか、理解を深める必要があると思っていますので、引き続きご教授ください。

 総領事館も微力ではございますが、できることは精一杯ご対応させていただきますので、何卒よろしくお願いいたします。

  本日はこのような機会を与えていただき、誠にありがとうございました。

司会

 蛭子領事、恐竜ではなく、昆虫のように適応するために、一致団結するという、明快なご講評をいただきまして、ありがとうございました。それでは、ちょっと時間をオーバーしてしまいましたけども、最後に閉会の辞を小池総務委員長にバトンタッチしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

閉会の辞

小池淳介 総務委員長

            

 

 大久保委員長、たいへんありがとうございます。あらためまして、蛭子領事、たいへん素晴らしいコメントをありがとうございます。それから皆様、長時間にわたりましてご参加いただきまして、本当に心から御礼申し上げます。たいへんお疲れ様でございました。

  本日は、蛭子領事のコメントにもございました通り、戦略をキーワードにさせていただきました。まだまだ景気もまだら模様で、良いとこも悪いとこもあるなと伺っていて思いましたけれども、ただ、皆様のお知恵、そこから生まれてくる戦略、今日いろんなご示唆を賜ってですね、私もたいへん勉強になりましたし、たいへん僭越ではございますけれども、頼もしく感じた次第でございます。ぜひカマラの、このお集まりいただいている皆様の間でですね、さらに、蛭子領事からのコメントにもありましたように、結束をいたしまして、2017年の後半、ますます盛り上げられるように頑張っていければなというように思います。

  それから、いくつかの部会から頂戴しました日伯両政府へのご要望等はですね、松永会頭の下で、政策対話委員会を通じまして、対応をしていきたいと思います。それでは以上で、本日は閉会させていただきます。たいへんありがとうございました。

  なお、懇親会でございますけど、出口を出まして右手の部屋でご用意させていただいております。よろしくお願いいたします。

2017年上期の業種別部会長シンポジウム

Pdf2017年上期の業種別部会長シンポジュームプログラム

テーマ:「2016年の回顧と2017年の展望」
副題: 『景気回復に向けて、いま為すべきことは?』
日時:   2017年2月23 日(木)
13時~18時 シンポジューム(途中コーヒーブレイクが入ります)
18時~19時 懇親会(カクテルパーティー)
会 場: ホテル インターコンチネンタル
(Hotel Intercontinental São Paulo , Alameda Santos, 1123 – Tel.: (11) 3179-2600 Sala Di Cavalcanti )

Pdf金融部会    
Pdf貿易部会
Pdf機械金属部会    
Pdf自動車部会
Pdfコンサルタント部会    
Pdf化学品部会
Pdf電気電子部会     
Pdf食品部会     
Pdf運輸サービス部会  
Pdf建設不動産部会     
Pdf繊維部会    
Pdf全プレゼンテーション

            
           2017 年上期業種別部会長シンポジュームの録音記事掲載


  • 前半司会    大久保敦 企画戦略委員長

                                           

                          

     

      そろそろ開始時間になりましたので、これより2017年上期業種別部会長シンポジウムを開催いたします。プログラムの予定とちょっと変わりまして、私、前半の部の司会を担当いたします企画戦略委員長のジェトロの大久保でございます。よろしくお願いいたします。後半は小池総務委員長の方にバトンタッチをしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

     それではシンポジウム開会にあたりまして、松永会頭よりご挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

  • 開会挨拶     松永愛一郎 会頭

     

                                                

     

     

                             
     皆さん、こんにちは。会頭の松永です。本日はお忙しい中、2017年度上期業種別シンポジウムに皆様お越しいただいて大変ありがとうございます。本日は大使館から小林参事官がお越しいただき、この後半戦にはですね、中前総領事もお越しいただけるということになっております。お二人からは最後にご講評をいただきますので、何卒よろしくお願いします。

     業種別シンポジウムですが、半年に1回開催をしております。カマラの活動の中でも最も重要な活動の一つというふうに位置づけられております。

     現在11の分科会がございまして、このそれぞれの部会が本日のために、それぞれの業種であったり、経済分析を行い、また活発な意見交換をして、本日のプレゼン資料を取りまとめております。このプレゼン資料は皆様のみならず、外部の一般の方にも公表することにしております。

     長年このブラジルで色々事業をなさった会員の皆様の、非常に貴重な情報も含まれておりますので、今後の皆様の企業活動にぜひともご参考いただければというふうに考えております。

     また、本日の副題として、「景気回復に向けて、いま為すべきことは?」ということを副題として掲げております。

     まさにブラジルの2016年度は激動の年であったと言っても過言ではないと思います。リオデジャネイロ・オリンピックの成功といった明るいニュースはありますが、大半は、大統領の弾劾であったり、底の見えない経済リセッション、あるいは政財界を激震させた大型の汚職の捜査といったような、かなりネガティブなニュース、これが満載でした。

     しかしながら、昨年の後半成立したテメル政権は、経済再生を第一義に掲げて様々な手を打ってきました。それも奏功しまして、やっと最近になってですね、インフレの鎮静化、あるいは金利の下方修正、また経済指標についても好転をしているといった明るいニュースも入るようになってきております。

     まさにこの潮目の変わり目において、我々会員企業は何をすべきか、そういうことがですね、本日のシンポジウムの中にも色々ヒントが隠されていると思います。ですので、皆様最後までご清聴いただければというふうに思っております。

     最後になりますが、本日のシンポジウムに向けて色々資料をまとめたり、色んな援助をしてくださった関係者の皆様に私の方から御礼を申し上げ、私の開会の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

     

    司会

     松永会頭、どうもありがとうございました。それでは早速各部会の発表に移りたいと思います。何かと行き届かぬ所が出てくるかと思いますけれども、タイムキープも含めてですね、皆様のご協力をお願いできればと思います。

     先ほど会頭から話がございましたけれども、今回の副題は「景気回復に向けて、いま為すべきことは?」です。前回はですね、「どん底の時期ならではの戦略は 課題整理と対処方策」ということがテーマでしたが、各部会からですね、中々厳しい景況感、じっと耐え忍ぶ会員企業の皆様の状況が明らかになっております。

     今回は、皆様のおそらく最も関心の高いであろうブラジルの景気回復の動きと、その見通しをですね、各部会から可能な限り報告いただきまして、各業界が今でき得る取組み課題ですね、こちらを明らかにしたいと考えております。

     さらに、カマラの活動、ブラジル、日本政府への要望も各部会に議論をいただくようにお願いしました。各部会で活発に議論いただきまして、ありがとうございます。

     それでは、各部会長、もしくは副部会長から発表をいただきます。皆様も大変関心の高いテーマだと思います。発表者の方がですね、少々熱が入って時間オーバーする可能性がございますので、その際は私の方から少し合図をさせていただきますので、ぜひともご協力をお願いいたします。

     それではまず始めに、金融部会の大谷部会長より発表をお願いしたいと思います。大谷様、よろしくお願いいたします。

     

  • 金融部会    大谷隆明 部会長

                                               

     

     

                            

     皆さん、こんにちは。今年より金融部会長を務めさせていただきます、三井住友銀行の大谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。恒例によりまして、まずは金融部会より、ブラジル経済動向、銀行業界動向、また保険業界動向に関して発表させていただきます。

     なお、資料で使っております市場の各指数は日々変化いたしますので、本日の資料では便宜的に2月17日時点という体裁をとっております。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。それでは、最初のスライドをご覧ください。

     ここでは2016年の主なトピックスを4つお示ししております。

     まずはペトロブラス社を巡る汚職捜査の進展です。2014年3月に捜査がスタートして以降、2016年末までその捜査は第37ステージまで進展しております。現在、オデブレヒトグループの司法取引による供述内容に注目が集まっております。その内容次第ではテーメル政権に甚大な影響を与える可能性があります。

     二つ目はブラジルのソブリン格付についてです。政治的混乱に伴う財政再建の遅れ等に対する懸念から、格付機関はブラジルのソブリン格付を軒並み「投機的水準」に引き下げました。ただし、政治的混乱に一服感がある現在、各格付機関はアウトルックの見直しを検討し始めております。

     三つ目は、先ほど会頭からもお話がありましたように、2015年12月から始まりました大統領弾劾、およびテーメル政権成立です。昨年8月末、下院、上院とも圧倒的賛成多数でルセフ大統領の弾劾が成立し、その結果、副大統領であるテーメル氏が正大統領に就任しました。

     しかしながら、テーメル氏は国民の負託を受けて誕生した大統領ではなく、また贈収賄等の面で若干後ろ暗い点があることから、国民からの支持率は10%程度と非常に低い状態が続いております。ただし、調整型政治家であるテーメル大統領の高い議会運営能力や、優秀な政権メンバーの存在により、歳出上限法、景気刺激策といった新しい施策を打ち出すことに成功しており、史上センチメントは大幅に改善しております。

     四つ目は8月に開催されましたリオデジャネイロ・オリンピックです。南米初の夏季オリンピックは準備遅延、ジカ熱、リオ・デ・ジャネイロ州の財政危機等の諸問題で非常に心配されましたが、予想外に成功裏に終了しました。

     次のスライドは2012年以降の主要経済項目推移についてお示ししています。簡単にご説明申し上げます。

     まずGDP成長率ですが、2016年はマイナス3.5%という見込みでありまして、2015年に続いて2年連続のマイナス成長になりそうです。一方、今年は、現在推進している金融緩和策や、昨年12月に発表されましたFGTS、勤続年数保証基金の給付資格発生前の引出し許容等の景気刺激策によりまして、0.5%のプラス成長となる見込みです。

     貿易収支は2014年に2000年以降初の赤字を記録しましたが、2015年、2016年は国内経済低迷による内需停滞、それに伴う低調な輸入を主要因としまして、貿易黒字を確保しております。なお、今年につきましても、コモディティ価格の復調により、昨年と同程度の黒字を確保する見込みです。

     株価につきましては、景気低迷、政治的混乱を背景に、2012年から15年まで4年連続で前年末終値割れを記録しました。このトレンドは2016年の初めまで続きまして、2016年1月には終値37497ポイントまで低下。しかし、当時労働者党と連立政権を組んでいたブラジル民主運動党が連立離脱を決定して以降、ルセフ大統領の弾劾可能性が高まったと好感し、株価は上昇に転じまして、2016年10月には2012年3月以来の64000ポイント台まで回復しました。

     11月の米国大統領選におきまして、市場予想に反しましてトランプ氏が勝利したことから、先行き不透明感が高まったとして、2016年終値は60227ポイントとなりました。

     次に政策金利とインフレについてです。2012年以降、インフレ圧力は食料価格や人件費の上昇を背景に強まってまいりました。当時、2014年の大統領選を控えていたルセフ大統領は、これ以上のインフレを看過できないとして、電気料金やガソリン価格等の政府が価格決定できる財について市場とは乖離した形で価格を統制しました。これによりまして2014年のインフレ率を、ターゲットレンジをかろうじて下回る水準に抑え込むことができました。

     しかしながら、これらの抑制は、電力公社や石油公社の業績に大きくマイナス影響を与えたため、2015年からは政府は介入を控え、その結果、前年対比大きな反動となり、インフレ率は2015年末時点で前年比10.67%と二桁台に突入してしまいました。

     これらの一連の過程におきまして、ハイパーインフレのトラウマを持つ政策決定者は金融引き締め策を志向し、政策金利を14.25%まで引き上げました。

     2016年に入りまして、食料価格の安定、エネルギー価格の安定により、年後半以降インフレ上昇圧力は次第におさまり、結果として2016年は6.29とインフレターゲットレンジ上限を下回りました。これに合わせ、政策金利も10月以降2回にわたり引き下げられ、13.75%となりました。

     2017年につきましても、インフレ圧力は小康状態でありまして、4.5%未満になるとの予測でして、政策金利も9.5%と一桁台になるとの予測です。

     それでは個別に見ていきたいと思います。

     このスライドは四半期ごとのGDP成長率および鉱工業生産推移をお示ししておりまして、棒グラフがGDP成長率を、折れ線グラフが鉱工業生産をお示ししております。

     2016年第3四半期のGDP成長率は前年同期比2.87%と10期連続のマイナス成長ではありますが、そのマイナス幅は縮小しております。

     鉱工業生産につきましても、前年同期比4.6%と12期連続のマイナス成長ですが、GDP成長率同様マイナス幅は縮小に転じております。

     次のスライドはGDP成長率推移です。2015年、2016年と2年連続のマイナス成長ですが、2017年以降はセンチメントの改善や現政権の政策によりプラス成長となる見込みです。

     次のスライドは財政収支についてお示ししております。2013年までは黒字を維持しておりましたが、2014年の景気鈍化以降歳入が伸び悩む一方、歳出がふくらみ、赤字に転じております。テーメル現政権は歳出上限法や年金改革を通じまして、歳出抑制を図り、財政規律の回復に努めております。

     次のスライドは対米ドルのレアル相場推移をお示ししています。2002年の大統領選の過程におきまして、当時急進的な左派勢力であった労働者党のルーラ氏が勝利する可能性が高まり、市場は急激なレアル売りを進めました。その結果、一時的に1ドル=4レアルを突破する事態となりました。しかしその後、ルーラ氏は大統領就任後、市場の予想に反し、前任大統領カルドーゾ氏の政策を引き継ぎ、財政規律と所得格差是正のバランスを重視した穏健な姿勢を示したため、次第にレアルは落ち着きを取り戻しました。

     以降、中国の成長に伴うコモディティバブルの恩恵を受けて、資源国であるブラジル通貨は買われ続けてきました。リーマンショック付近でいったんは売られましたが、内需刺激策推進により先進国に先駆け成長軌道に戻ったこともあり、2011年7月には対ドルで1.5391レアルの最高値を記録しました。

     2011年後半からは徐々にレアル安が進展しました。資源価格の下落による資源国通貨売り、国内景気減速、政治的混乱等により、2015年後半にはそのトレンドは加速しました。2015年9月には4.2レアル台に突入し、2002年以来のレアル安更新となりました。

     2015年後半から2016年2月ごろについては一進一退の状態となりましたが、先ほど申し上げました通り、16年2月にブラジル民主運動党が連立を離脱するという話が出てから、ルセフ大統領弾劾の可能性が高まりまして、急速にレアル高が進展しました。

     その後、ルセフ大統領停職、テーメル暫定政権の発足、ルセフ大統領弾劾成立、テーメル新政権発足という一連の政治イベントが、ブラジルの先行き不透明感を払しょくしたとして、市場はさらに好感しました。

     11月の米国大統領選結果により、一瞬揺り戻しがありましたが、テーメル政権の政策に対する信任は高く、2016年末は3.2552、昨日時点では節目である3.1レアルを割る3.06レアルまでレアル高が進展しております。

     続きまして、次のスライドは対円のレアル相場推移をお示ししております。

     対円のレアル相場は2016年2月時点に、いったん1レアル=28円までレアル安が進みましたが、ブラジルに対するセンチメント改善および対ドル円相場が円安に進んでいることもありまして、昨日時点では1レアル=36円後半までレアル高が進展しております。ドル・レアル相場は激しく乱高下しておりますが、円・レアル相場は比較的落ち着いておりまして、またレアルの最高値、最安値のタイミングもドルとはずれております。

     次のスライドはBOVESPA市場推移をお示ししております。ブラジルに対する投資家センチメントは改善し、昨日時点では68590ポイントまで高くなっております。

     次のスライドは、政策金利とインフレ率の推移をお示ししております。政策金利の推移は実線でお示ししており、2015年7月に14.25に引き上げられて以降、2016年10月まで15カ月間にわたり同水準を維持してきました。

     一方、点線でお示ししておりますインフレ率が2016年後半にかけて沈静化してきたことを受けまして、政策金利は2016年10月に0.25%、11月にも0.25%引き下げられ、2016年末の政策金利は13.75%になりました。

     このインフレ鎮静化を背景に、現在ブラジルの中央銀行はインフレ退治から景気刺激策に舵を切りつつありまして、2017年、今年の1月11日に0.75%、昨日にはさらに0.75%の切り下げを行い、政策金利は現在12.25%と大胆な金融緩和策に転じております。

     次のスライドはブラジルの中央銀行が発表しております外国直接投資推移です。景気低迷の局面ながらも、外国直接投資は比較的安定推移をしております。2017年も変わらない水準を維持するものとみられております。

     次のスライドは失業率をお示ししております。昨今の景気低迷を受けまして、企業の雇用調整局面は継続しておりまして、昨年12月は12.0%まで上昇しました。この数値は今年第2四半期に12.6から12.8%でピークを迎えるだろうと思います。

     さて、次のスライドでは金融部会所属の各銀行に回答いただきました、2017年、18年の予測について、予想最大値と最小値というレンジで表記をいたしました。なお、2月10日を回答期限に集計したものでございますので、その後の材料は織り込まれていないことをご了承ください。

     まず、2017年、18年のGDP成長率ですが、それぞれ0.5%~1%、1%~4%とみております。いずれも、Focusという100以上のブラジル金融機関の予測をブラジル中央銀行が取りまとめた企業トレンドと同様に、17年は小幅な成長にとどまり、18年からはいよいよ本格的に経済回復を実感できる水準に転じるものとみております。

     インフレ率は、2017年、4.5~4.8%、2018年、4%~5%と、概ねターゲットレンジの内側におさまるものとみております。

     為替レートは、2017年、3.1~3.4レアル、2018年は3.2~3.5レアルとみております。

     年末の政策金利につきましては、17年につきましては9.5~9.75%とみており、市場の見方同様、17年中に金融緩和はさらに進み、水準は一桁台になると考えております。

     続きまして、次のスライドをご覧ください。このスライドは各行の今後の見方についてコメントをサマリーしたものでございます。まず、ブラジル経済はいつ回復に転じるのか?、その契機となるものは何か?についてですが、ブラジル経済の回復は、まあ色々意見がありますが、ベースシナリオとしては、2017年、今年の第3四半期以降になると思います。

     テーメル政権の政策に対する市場の信任も高く、政治的混乱も一服したことによりまして、先行き不透明感が払拭されております。また、現在進められている政策金利引き下げや、為替の安定が、今年第3四半期以降には企業投資の増加や個人消費の活性化という形になって現れてくるものと思います。

     次に、経済回復を見据えて、今、我々日系企業が行うべきことは何か?についてですが、景気回復とともに攻めの経営を行うべく、中長期ビジネスプランの策定をすべきだと思います。投資・資金計画を練り、優秀な人材を確保すると同時に、リストラ・経費削減を推し進め、攻守両面にわたる綿密かつ地に足の着いた計画を立てることが重要だと思います。

     また、ブラジルにおける中長期ビジネスプランを遂行するためには、本社のサポート、コミットメントが不可欠でありまして、そのためにはブラジルに関する様々な情報を本社あてにタイムリーに提供することが重要だと思います。

     我々金融部会は、政治経済情勢やマーケット情報の提供等で皆様のお手伝いをさせていただきたいと思います。

     最後に第3項目目の、アメリカ新大統領トランプ氏の政策がブラジルに与える影響はあるのか?それはどのようなものなのか?についてですが、現状を踏まえますと、直接的な影響は限定的と思います。ブラジルの米国依存度は低い一方、トランプ氏の政策スコープにはブラジルが入っていないこと。また、世界が心配する米国の保護主義政策も、幸か不幸かブラジルはそもそも閉鎖的な市場であること等を踏まえますと、あまり心配するような影響はないのではないかと思います。

     続きまして、2016年の銀行業界についてご説明いたします。

     最初に貸出残高推移についてです。2011年以降毎年二桁ペースで増加していた融資残高合計は、2015年には6.7%と一桁の伸び、2016年にいたってはマイナス3.5%となりました。

     2016年の貸出状況は、個人向け貸出はかろうじて微増いたしましたが、邦人向け貸出は全部門において減少しました。これは経済の減速、ペトロブラス社汚職問題等を背景とした大手ゼネコン、造船会社の倒産等により、金融機関が保守的な与信運営を行ったことや、景気低迷による企業の資金ニーズの低下等を要因としたものと考えます。

     次のスライドは、業界全体における平均貸出利鞘の推移になります。2015年以降上昇トレンド、すなわち金利引き上げが行われております。これは昨今の保守的な貸出姿勢を示すものと考えます。

     次のスライドは不良債権比率についてです。これらのグラフは90日超の延滞債権の推移をお示ししております。2015年以降、金融機関の保守的な与信方針や失業によりまして、延滞債権が増加してきました。2016年については、貸出抑制、借入ニーズの低下等により、不良債権は改善傾向にあります。

     銀行業界としては、しばらく保守的な運営が続くものと考えられます。ただし、収益性や財務基盤は非常に堅固であるため、引き続き銀行業界は堅調に推移するものと考えております。

     最後に、2016年の保険業界についてご説明させていただきます。

     このスライドは保険料収入推移をお示ししております。保険監督庁の統計データによりますと、2016年1~11月までの累計の保険料収入の伸び率は前年同期比で0.9%にとどまりました。二桁成長が続いておりました2010年~2014年に比較いたしますと、2015年に続き2016年も、経済が低迷する中、保険マーケットの成長に大きくブレーキがかかっていると言えます。

     次のスライドは、保険種目別の保険料収入をお示ししております。全種目とも成長が鈍化している中、自動車保険について新車販売不振が大きく影響し、前年同期比マイナス成長を余儀なくされています。また、生命保険、傷害保険も失業率の増大に伴って伸び悩んでいるのが実情です。

     次は保険種目別の損害率のデータをお示ししております。全体としては2016年1~11月累計で損害率は48.2%に達し、前年同期比2ポイント悪化しております。特に運送保険、自動車保険の損害率悪化が顕著となっておりますが、景気低迷による治安悪化を背景に、運送貨物の盗難や、自動車車両や部品の盗難といった事案の増大が少なからず影響しているものと考えられます。

     最後に今後の保険市場の成長見通しについてご説明いたします。2016年のブラジル保険市場の成長は、損害保険、生命保険ともに名目1%程度の成長に留まったと見込まれておりまして、インフレ率を加味した実質成長見通しでは大幅なマイナスとなっております。

     2017年以降、ブラジル経済の先行きには薄日が差しているようにも見えますが、実体経済回復の足取りは重い中、ブラジルの保険業界をめぐる目先の環境は引き続き厳しいものと予想されております。

     しかしながら、中長期的には、社会構造の変革に伴いまして、ブラジルにおける保険商品に対する一般的ニーズは間違いなく高まると思われておりますので、かかる将来的な需要の発掘に向けて現時点から準備を進めていくことが肝要かと思います。

     以上で金融部会の発表を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     大谷部会長どうもありがとうございました。ちょっと関心の高い分野でもございますので、ただ今の発表につきましてご質問のある方、挙手をお願いできますでしょうか。いかがでしょうか。はい、どうぞ。

    質問者

     為替について質問させていただきたいと思います。もう一つは先ほどのスライドにあった外国の直接投資の点で。為替についてはですね、今レアルは対円ベースで非常に、円に対してだんだんじり高の状態になっていると思います。

     それについて、色々客観的に言われているのは、先ほど仰られたようなテーメルの歳出制限法とか、年金改革とか、そういうものが功を奏しているような話を言われているんですけども、それは非常に期待度をマーケットが持っているということなんだろうと思いますけど、ではこのじり高がですね、いつまで続くのか、本質的要因はどういうふうに考えられるのかとか、あと先ほどのグラフを拝見させていただきますと、じり高の後急激に下がるという、こういう傾向がブラジルの通貨に対してはあるように思います。

     そこら辺を勘案して、実際今後どうなるのかと。一人事務所で、円ベースでお金をいただいているので、3月決算時期、またレアルが上がると実質値段が下がってしまうことがあるので、その点でちょっと関心を持っていることです。

     もう一つは外国直接投資の関係ですけど、先ほどのスライドでまあ安定的なようなお話をされたと思います。それほど変わっていないと。最後の方のところですね。でも日本企業を見るに、どんどん帰っている駐在員、私も顔の見える駐在員もどんどん帰って行ったり、少なくとも日本は投資をやっていないと。

     代わりにだからどこかの国がやっているという形になると思っているんですが、中国とかありますけど、そこのような代わりにやっているところはどういう視点でどういう目的でやっているのかということを推測できるようでしたら、個人的で結構ですので、ご教示いただきたいと思います。2点で、以上お願いいたします。

    大谷部会長

     ご質問ありがとうございます。まず為替の動きですが、ブラジルの為替は非常に思惑で動くんですね。だいたい市場と、スポット取引と先物取引とあるんですけども、通常でしたら、普通のマーケットでしたら大体6対4のところがですね、このブラジルの通貨に関しては1対10の割合でですね、先物のボリュームが非常に多いんです。

     ブラジルの通貨といいますと、皆さん為替する時に中銀に登録するということで、regulated carrencyだと思われがちですが、実は先物につきましては、シカゴのマーカンタイル市場を通じましてBM&Fとつながっておりまして、そこから先の取引ができるんですね。だいたいボリュームが1対10ぐらいですので、先物の参加者というと大体、昨年のデータで46%がオフショアの参加者というふうになっています。これがですね、思惑でばーっと投機したりするもんですから、はっきり言ってですね、良くわかりません、動きは。

     ブラジル、まあいま経済良くなる良くなるという期待感はありますけど、実体経済はよくなっていないですよね。そんな中でなんで為替はこんなに強くなるんだろう、というのはですね、外からの投資家が、テーメル政権がいろんな政策に取り組んでいると、そういうのを基に、これはブラジルよくなるんじゃないかという思惑でダーッと買っているもんですから、これが大きな動きを呼んでいるんですね。

     これは本当にブラジル独特の特徴でございまして、大体6対4のところが1対10で先物が10倍ぐらいあるというところですので、はっきり言ってですね、ブラジルの為替を予測するのは非常に難しいです。こんなこと言ったら身もふたもありませんけども、大体各銀行さん色んな、ブラジルの銀行含めまして、為替セミナーやっていますけど、大体為替の予想というのは外れています。これは難しいんです。

     で、皆さん、予想を聞きますと、オフィシャルなコメントが大体返ってきます。大体現状より0.2~0.3ぐらい安くなるという予想ですね。これは単に金利差のアービトラージで、セオリーに基づいてコメントしているだけですので、実際のところはよくわかりません。その時々の状況でころころ変わるというのが本当だと思います。ですから、ぜひ、皆さんにはですね、お取引先の銀行のディーラーに声をかけていただいてですね、本当に彼らが皮膚感覚で感じている相場を聞いていただいたらいいのではないかと思います。大体、正面切って銀行に聞きますと、銀行はオフィシャルのコメントを返すというのが普通でございます。

     それから、外国直接投資ですけども、まあ確かに日本からの大きな投資というのは減っていますけども、実際10億とか20億ぐらいのですね、小さな投資というのは、小さなM&Aというのはたくさんありまして、件数的には決して減っていないんじゃないかという気がしております。それと、金額的に大きいのはやはり、まあ統計で中々出てこないんですけども、中国が大きいのではないかと思います。

     あとは、やはりブラジルというのは、まあアジアが日本の裏庭と言ったらアジアに失礼かもしれませんが、第一投資目標地域としますと、やはりヨーロッパにとっては裏庭といいますか、最初に投資するべきところというのはやはりブラジルなんじゃないかなと思っておりまして、そういった意味で、今のような状況でも、ブラジルに対する投資熱といいますか、直接投資額は衰えていないのではないかと思います。

    司会

     どうもありがとうございました。大変貴重なコメントをいただきましてありがとうございます。ちょっと時間がオーバーしておりますので、これで金融部会の発表から今度は貿易部会の発表に移りたいと思います。どうもありがとうございました。

     

     それでは、貿易部会の今井部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

  • 貿易部会     今井重利 部会長

                                                    

     

     

                            
     皆さん、こんにちは。ただ今ご紹介にあがりました、貿易部会、伊藤忠の今井でございます。本日はよろしくお願いします。

     私は昨年に続きまして、今年も貿易部会を担当させていただきます。今日の私の説明は、貿易部会ということなので、貿易収支を中心に説明をさせていただきます。よろしくお願いします。それでは次のスライドをお願いします。

     このグラフは、縦棒が、左側、青が半期ごとの輸出。右の縦棒の緑が半期ごとの輸入。目盛は左側です。右側が、目盛が貿易収支で、これは折れ線グラフが表しております。下の方にですね、横に赤い棒がありますけど、これが貿易収支ゼロのところでございます。

     このグラフで申し上げたいことは3点ございまして、一つは右側のこの貿易収支のグラフの折れ線なんですけども、見ていただくと、2000年からずっと黒字でございまして、これが段々黒字幅が下がってくるんですけども、14年のここまでは黒字で、14年にこれが赤字になりまして、39億ドルの通年で赤字になりました。

     その後ですね、また黒字がどんどんいきまして、15年が年間で197億ドルの黒字、16年が477億ドルの黒字と。ということで、まあ残念ですけど、ブラジルの内需の低迷に比例しまして貿易収支の黒字幅がどんどん広がっているというのが1点目でございます。

     二つ目はこの棒グラフの絶対値なんですが、例えばこの一番高い所、これが2011年の下期でございますが、輸出が1380億ドル前後ございました。輸入が1200億ドル前後でした。これが段々下がっていきまして、16年の下半期は輸出が950億ドル、輸入が710億ドルということで、このピークの11年の下期から5年間で約4割ダウンになりました。全体で4割貿易の総量が減りましたというのが二つ目のポイントでございます。

     三つ目はもう少し、過去2年ぐらいの輸出と輸入を見ますと、輸出はですね、大体900億ドルぐらいで、半期ごとに見ても意外と横ばいになっています。ところが、この輸入の方を見ると、やはり過去2年、半期ごとにやはり基本的には下がっていっていますと。ということで、2年前は半期900億ドル台だったのが、先ほど申しましたけど、直近の16年下期は710億ドルということで、要はですね、輸出は横ばい、輸入は下がっているということで、やはりこれは内需の深刻さが窺われるなという貿易結果になっております。

     次のスライドから輸出、輸入に分けて少しご説明をさせていただきます。

     これは輸出の主要商品別ということでございまして、まず一番下の合計のところからいきますと、これは金額と数量とございますが、数量はプラスの1.2%で増えていますと。ただ金額ベースにしますとマイナス3.1%で減っているというのが現状でございます。

     少しアイテムごとに見てみますと、一次産品と半製品と工業製品と三つに分けているんですけども、例えば一次産品はですね、基本的には大豆以外は数量が伸びている。大豆はですね、統計的には北米産の大豆に輸出は売り負けているんじゃないかというような現象になっています。ただ、金額的には商品相場の下げということで金額は下がっているということでございます。

     半製品の方はですね、まあ若干減っているアイテムもございますけど、基本的には数量増ということで頑張っているということでございます。ただ、価格はですね、かなりアイテムによって違っているなと思っていまして。例えば、粗糖は価格もそんなに落ちていない、若干上がっているぐらい。ただ、木材・パルプはかなり価格が下がっているという状況です。逆に鉄鋼製品は、数量がマイナスでもですね、価格がかなり上がっていることでプラスになっているというような状況でございます。

     工業製品につきましては、基本的には輸出を頑張っているということで、基本的には数量も金額も、まあ一部マイナスもございますけど、大体プラスに推移しているという状況でございます。次のスライドをお願いします。

     今度は国別でございます。これはですね、まず左側の表でございまして、1番中国、2番米国ということで、これはあまり変わっていないと。ただ、輸出総額で見ますと、これは金額ベースでマイナス3.1%でございます。

     ちなみに、中国はですね、まあ先ほどの大豆とか原油のブラジルからの輸出はだいぶ減ったんですけども、鉄鉱石の輸出がだいぶ増えたということで、まあ中国は若干減っていると。2番目のアメリカ、これも若干減っているんですけども、原油とか鉄鋼製品はだいぶ輸出が減っていると。ただ一方ですね、航空機については輸出が増えているということで、トータルで若干減になっております。

     真ん中に緑の線で日本がありますけども、日本は順番で行くと6位なんですけども、比率でいきますとマイナス5%ということで。輸出はですね、全体がマイナス3.1%に比べてマイナス5%、全体よりちょっと下がっているということです。

     あと右側、これは地域別を作ってみたんですけども、地域別は結構、ブラジルの輸出というのは、全方位外交じゃないですけど、かなりバランスが取れているなというふうに思っておりまして。例えば中国、日本、アジア全体ですと33%、輸出比率がございまして、米州、米国、メルコスール、あとそれ以外の南米、これも全部足すと32%ということで、まあ大体3分の1。あとはヨーロッパ、中近東、それ以外も35%。大体3分の1ずつで、まんべんなく地域ごとには輸出しているなという構図でございます。次お願いします。

     次は輸入でございます。輸入はですね、全体でいきますと、右の下、数量についてもマイナス5.5%。金額ベースですとマイナス19.8ということで、20%減。ということで、輸入はかなり下がっているという状況でございます。

     この中で、右のパーセンテージでございますが、一つやはり面白いと思いましたのは、塩化カリウム。これは農業の肥料の原料でございますけど、これはやはりブラジルは農業生産が広がっておりますので、増えていると。で、例えば下の方のですね、農業に比例して殺虫剤とか除草剤も伸びているということで、やはり農業関係は輸入は比較的伸びているなと。

     あと燃料、これはディーゼルとか重油ですけど、これも輸入が増えているという状況です。ただ、やはりですね、一番ひどいのは乗用車。工業製品は全般にかなり下がっているという構図でございます。次お願いします。

     今度は国別でございます。左の表で、1番アメリカ、2番中国になったんですが、これはですね、15年と16年は逆転しました。中国が1番だったのが2番に落ちております。金額を見ますと中国の落ち込み幅が広いんですけど、中国はやはり工業製品一般ですね、ブラジルの輸入がかなり落ちているということで下げていると。1番に米国がなりまして、これは金額ベースは若干下がっているんですけども、例えば工業製品一般はやはり輸入が落ちているんですが、例えば米国からの輸入ということでプラスになったのが先ほどの燃料油ですとか、塩化カリウム、航空機の部品等がプラスでして、トータルで米国は1番になりましたということです。

     次に、緑のが日本でございますが、日本はマイナス26.9%ということで、全体よりもやはりさらに落ちているということで、順位も15年は6番だったんですが、16年は8番目に下がりました。順位も下げているという状況です。

     右側の円グラフですね、これも地域別で輸入を作ってみたんですけど、やはり輸入の方もですね、先ほど申し上げたように、アジアで約3分の1、米州で約3分の1、ヨーロッパ・その他で3分の1ということで、輸出同様輸入もですね、まんべんなく色んな地域から3分の1ぐらいずつ輸入しているという構図でございます。次お願いします。

     今度は日本でございます。左が日本への輸出なんですが、まあ鉄鉱石が1番なんですけど、鉄鉱石も含めて基本的には、全体でマイナス5%なんですが、例えば鉄鉱石は金額もマイナス11%ですが、日本向けの鉄鉱石は例えば数量的にも15年は2900万トン輸出したのが16年は2500万トンということで、まあナンバーワンの輸出産品の日本向け鉄鉱石もやはり減少しているという状況です。

     一つだけ気を吐いているのが航空機なんですけど、航空機は150%アップで、これはですね、JALグループさんがブラジルのEmbraerさんの飛行機を採用したということで、航空機だけはどーんと伸びている状況です。

     輸入につきましては、これは全体的に非常に落ちている。特に乗用車などがかなり落ちているという中で、先ほどの航空機の裏返しで、航空機関係の部品、これはプラスになっているということで、それ以外は総じて全部マイナスというのが対日貿易輸出輸入の構図でございます。次お願いします。

     今度はブラジルへの対内直接投資ということで、左側は年ごとの金額なんですけども、例えば2011年はこのグラフでは一番大きくて、695億ドルでした。それ以降はですね、まあ年によってばらつきあるんですけど、基本的には500億ドル台で、比較的やはり横ばいで安定しているなというのが見て取れます。例えば15年は579億ドルで、16年は537億ドルと、そんな感じでございます。

     右側に国別を書きました。ただこれはですね、中国が直接投資ではなくて、どうもSPCを通しているみたいで、推測ですとオランダとか、ルクセンブルグとか、バージンアイランドとか、この辺は多分実質的には中国から投資が来ているんじゃないかというふうに言われております。全体でですね、例えば16年は537億ドルでしたけど、中国からは多分100億ドル以上の投資が来ているんじゃないかというふうに言われております。

     この赤の所は日本なんですけど、日本はですね、全体でほぼ横ばいの時に日本はマイナス50%強ということで、半減しているということで、日本の地盤沈下、直接投資離れというのがかなり16年は顕著に表れてきた年だなというのがデータ上出ております。次お願いします。

     次は、直接投資の業種別を作ってみました。これを見ますと、例えばですね、一次産品につきましては、金属・鉱物採掘業、これはマイニングですけど、これはプラスになっていまして、16年は25億ドルなんですが、これはたまたま、このうち15億ドルはアングロアメリカンがニオブとリンの権益を中国企業に売りましたと。あと、バーレがですね、銅と金の権益をカナダ企業に10億ドルで売りましたということで、この二つで大体25億ドルという、マイニングは結構顕著な状況になっています。

     次の工業一般なんですが、全体でマイナス4%なんですが、まあ業種によって若干まだらがありますけど、基本的には対内投資は工業は頑張っているというふうに見て取れます。一番下のサービス業。これ、全体ではマイナス13%なんですが、これは業種によってだいぶばらつきがあるなということで、倉庫業、運送業、金融業関係はかなりのプラス。一方インフラ系の通信、電気、ガス、この辺がかなりマイナスというような状況になっていまして、トータルですとまあ7%強のマイナスというのが業種別でございます。次お願いします。

     これはですね、冒頭のまとめの総括に今年の1月のところだけ入れました。1月の貿易黒字は27億ドルということで、元々ですね、16年は500億ドル以上黒字と言われたのが477億になりましたと。17年も500億ドル以上の黒字になると言われていますけど、とりあえず1月は27億ドルの黒字に留まっていると。ただ、やっぱり貿易の絶対値を見ますと、1月単月で輸出が149億ドル、輸入が122億ドルということで、例えばこれを6倍するとですね、16年の下期と同じような貿易量になりますので、基本的には1月も伸びていないというのが結果でございます。次のページお願いします。

     これが最後のスライドです。まず、上の枠は今申し上げたところのまとめでございまして、16年度の貿易収支は477億ドルでかなり黒字なんですけど、輸入、輸出とも減少傾向。特に輸入が減少していますと。ということと、対内投資は537億ドルということで、そんなに落ちていない。という中で、やはり対日は輸出、輸入ともにマイナス5%、マイナス27%ということで、平均よりも下がっている。特に対内投資についてはマイナス51%ということで、全体がマイナス7%なので、日本の地盤沈下がかなり顕著だなというのが統計から見てとれます。

     そういう中で、先日の貿易部会の中でこの次の「いま、為すべきことは?」ということでご相談、アンケート、ご意見いただいたんですけど、そういう中でやはりございましたのは、やはり今の貿易統計を見ても日本との貿易の地盤沈下が非常に顕著に現れた年だなということで、やはり我々日本企業として危機感を持たなきゃいけないというのが現状認識なのかなというところから始まりまして、部会の中で、そういう中で、他との連携の強化、例えばオールジャパンもそうですし、あとアメリカとかドイツとか他の商工会とかそういう団体と連携して動いていくとか、あとはやはり実体経済まだ良くないので、今年は我慢の年、来るべきブラジルの将来の成長に準備をする年ではないかと。

     ということとか、やはりこういう中では、ブラジルをもっと売り込まなきゃいけない、宣伝をもっとうまくやらなきゃいけないというご意見とかですね、あとは政府に対して規制緩和、投資促進の制度改正というのを働き掛けていこうと。それもですね、大きな網でかけるというよりも、アイテムを決めて働き掛けていった方が効果的じゃないかと。というような意見が出まして、その辺をまとめたのが下の表でございまして、いま為すべきことは、ということで、上の三つは定性の総論でございまして、今まで申し上げているように、輸出入ともに貿易の増大が必要だと。そのためにはやはり対内投資も必要だと。やはり対内投資をして、消費の活性化、内需拡大を図っていくというのが定性面かなと。

     そういう中で、次の真ん中の二つですけど、私どもやるべきこととしては、日本・ブラジル双方への広報、宣伝活動を活性化する。やはりブラジルの高い将来をアピールしていくと。例えば今年は 5月にジャパン・ハウスの開所式もありますし、8月にクリチバで日伯経済合同委員会もありますので、そういう機会もとらまえてですね、やはりブラジルを、対ブラジル、対日本両方にですね、うまく宣伝していく、働き掛けていくというのが必要なのかなと。ということと、もう一つ、先ほど申し上げたように他の国の商工会との、もしくは他の部会との交流、連携を深めていく。貿易・投資促進の課題を当局へ提言していくということなのかなと思います。

     最後の二つはですね、今年、欧米、まあトランプ政権から始まってですね、ヨーロッパ側もフランスの大統領選挙とかドイツの総選挙等々ありますし、中国は景気いま変調していますし、10月、11月には5年ぶりの第19回中国共産党大会もありますし、まあ政治の動向が貿易動向を左右する可能性もあるのかなということで注意しなきゃいけないということと、一番最後は、まあ最近日本人、日系企業をめぐって色んな治安、安全等々ありますので、この辺はやはり、仕事をする、貿易をする上でも細心の注意を払ってやっていくということなのかなというふうに思っております。

     これで私のまとめでございます。ご清聴どうもありがとうございました。

    司会

     今井部会長どうもありがとうございました。ただ今の発表につきまして、ご質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。はい。どうもありがとうございました。それでは引き続きまして機械金属部会の発表に移ります。池辺部会長より発表をいただきます。よろしくお願いいたします。

     

  • 機械金属部会     池辺和博 部会長

     

                                                

     

     

                            
     皆さんこんにちは。機械金属部会の池辺でございます。よろしくお願いいたします。2016年の回顧と2017年の展望というテーマで機械金属部会の発表をさせていただきます。

     私の発表の内容ですけれども、まず機械金属部会に関連するマクロ的な指標を三つほど紹介させていただき、その後、まあ多種多様の業種や分野の企業が会員となっております機械金属部会ですので、今回のこのシンポジウムに際してレポートを提出していただいた企業をこのように6つの分類した形で各分野の状況を報告させていただき、最後に本日の副題となっております「景気回復に向けて、いま為すべきことは」ということに触れさせていただきたいと思います。

     まず機械金属部会に関連するマクロ指標ということですけれども、これは先ほど金融部会の発表の中にもございましたけれども、ブラジルの鉱工業生産の対前年比比較ということで、先ほどの金融部会は四半期でのプロットでしたけれども、これは月単位でのプロットになっております。まあ我々の機械、製造現場等で使用されることが多いんですけれども、その生産においてはですね、2014年の4月から34カ月連続での前年比のマイナスというふうになっております。生産活動が長期間停滞しているということで、我々の顧客さんであります製造業が不振になっているというのが改めて思い知らされるところでございます。

     ただ、唯一の光明といいますか、2016年の2月以降ですね、このマイナス幅が減少になってきており、先月、2017年の1月はマイナス0.1%とほぼ前年並みまで戻っているということで、今月以降ですね、プラスに転じていくことを期待しております。

     続きまして、同じく経済生産活動の指標となります段ボールの生産なんですけれども、ご承知の通り、経済生産活動が活発になりましたら製品等の梱包・輸送に使用されます段ボールの需要が増加するということで、これを見ておりますけども、これは四半期単位での前年との比較でございます。

     2013年の第4四半期以降、やはりこちらの方もですね、マイナスが続いております。このグラフには2016年の第2四半期までしかプロットしておりませんけれども、2016年の第3四半期、第4四半期もやはりマイナスで、2016年年間を通してマイナス2.3%であったということになっております。ただ、今年の1月ですね、1月単月ですけれども、5.5%のプラスということで、先ほどの鉱工業生産同様ですね、回復の兆しが見えかけているのかなという期待をしております。

     続きまして、これは建設業界の実績でございます。我々の機械金属部会にはですね、建設機械や空調設備関連等の会社もございまして、建設市場の動向というのは非常に気になるところでございます。

     これも四半期単位の前年比較ですけれども、やはり2014年の第2四半期以降ですね、このようにマイナスが続いております。しかも、政府の緊縮財政策、企業の設備投資の抑制、さらにはラバ・ジャットによるゼネコンの体力の低下等々でですね、ここに関しましてはまだまだ回復の糸口が見えないというのが実態かと思います。

     以上のようなマクロ指標を受けてですね、我々機械金属部会のこの6つの業種別について報告させていただきます。

     まず鉄鋼関連ですけれども、まあ主要の需要先というのが、やはり先程の建設業界ですとか、あるいは自動車業界、不調に陥っていますがやはり自動車業界ということでですね、鉄鋼の生産の方も、このグラフにありますが、過去5年連続で前年割れということになっておりまして、2016年で見ますと生産、それから国内販売ともにマイナスの9%というふうになっておりまして、鉄鋼各社もですね、高炉14基中の3基が休止されておりまして、稼働率も55~60%程度ということになっております。機械金属部会の鉄鋼関連の企業も非常に厳しい1年を強いられたということでございます。

     輸出に関しましても、昨年度、前半はですね、レアル安もあって17%実は伸びたんですけれども、後半に関しましては、レアルの反発、それから中国の過剰生産による世界的な供給過剰ということもございまして、一転してマイナスに転じ、通年でも2%のマイナスというふうになってしまいました。

     2017年の展望ですけれども、国内経済は緩やかな回復に向かうというふうに見られておりますし、まあ自動車の生産もですね、今年は若干回復するというふうに見られておりますので、鉄鋼の生産もですね、後半を中心に微増を予想しております。

     ただ輸出の方は、米国に続いて欧州でもブラジルの鋼板に対するアンチダンピングの調査が始まったということで、先程出ましたけど、それに加えてレアルの高値維持が続いている関係もありまして、輸出に関しては非常に厳しい年であるかと思われております。

     続きまして、電力と社会インフラにおける都市交通についてご説明させていただきます。

     電力に関しましては、やはり生産活動等の経済活動が停滞している関係で、電力の消費は2015年、2016年の2年連続で前年比を割っております。工業分野の電力消費に関しましても、過去32カ月間減少が続いておりました。ただ、2016年の11月と12月の2カ月連続で増加に転じておりまして、2017年は工業電力の需要が増大するような予想が出ております。

     ただ、消費が減少する一方で、昨年度も新規の水力発電や風力発電等の稼働が開始された関係でですね、発電容量は6.7%増加しておりまして、電力の需給ギャップは拡大しております。従いまして、昨年度、2016年度の電力の発電オークションの新設案件もですね、395メガワットということで、過去10年の平均に対して約10分の1程度であったというふうになっております。2017年度に関しましても、新規の発電設備案件はやはり期待薄で、しかも電力各社の設備投資もあまり期待できないということで、電力関連のビジネスもやはり苦戦を強いられていくものと思われます。

     都市交通における地下鉄関連ですけれども、御承知かと思いますけれども、サンパウロ州だけですでに落札された6件のプロジェクトがですね、工事の延期やサスペンド状態となっております。サンパウロ州政府の投資も、2016年度、昨年は前年比で約12%の減少と、2014年度に比べると44.5、約半分になっているということでございます。

    この最大の削減分野が、地下鉄・近郊鉄道を含めた交通輸送分野ということで、当初の予算に対して25%の削減というふうになっております。従いまして、地下鉄や近郊鉄道のほとんどの路線の拡張工事も一時中止や先送りの状態になっておりまして、我が機械金属部会の会員企業の中でももろにこの影響を受けている会社もございます。

     2017年度に関しましては、サンパウロ州政府はですね、民営化による工事の再開等を計画しておりまして、年内にもコンセッションの入札が行われる予定にはなっておりますけれども、いずれにしましても、工事の再開等具体的な動きになるのは2018年以降かなというふうに考えております。

     続きまして、建設機械と業務用空調の関連でして、どちらも建設に密接に関係している業界でございます。建機に関しましては、ラバ・ジャットの関係で大手のゼネコンの公共事業への参加の中止や認可取り消し等がございまして、先程も言いましたように、建設業は3年近く不振が続いております。加えて、2015年度ですけれども、年末にICMSの減免措置が廃止されるという憶測が流れまして、年末に駆け込み需要が発生しました。

     その関係で今年、16年の初めはその反動で激減してしまったと。ということで、例えば油圧ショベルで見てみますと、2014年に対して2015年が34%落ちたのに対して、さらに2016年も30%のダウンということで、2年で約半減というような結果になっております。

     小型建機に関しましても、状況は同じといいますか、さらに非常に厳しくて、2016年で前年比47%。その前年であります2015年が2014年比の42%ダウンということだったものですから、 2016年は2014年に対して約3分の1の市場にまで減ってしまったというのがこの小型建機の事情でございまして、農業や製造業、墓地等の非建設用途の需要を開拓することでカバーしているということでございます。

     業務用空調ですけれども、こちらもやはりビルや工場等の建設減によって、需要は2016年で言いますと前年比マイナス12%というふうになっております。ただまあ、空調の場合はですね、既存ビル等の交換や増設需要もあるせいか、まあ建機に比べたらですね、落ち込みはそれほど大きくはないと言うふうになっております。

     2017年の展望ですけれども、やはり建設業界の回復は2018年以降になるかと予測されますので、建機に関しましても、あるいは業務用空調に関しましても、2017年は横ばいか、あるいはせいぜい後半に微増かというような予想をしております。

     続きまして、切削工具とベアリングですけれども、これはどちらも主要顧客先が自動車業界ということで、このあと自動車部会の方から詳しい市場の説明があるかと思いますけれども、このグラフにありますように自動車の生産は4年連続で減少しておりまして、昨年は対前年比で11%のダウンと。ピークでありました2013年に比べると42%もダウンしているということで、環境は非常に厳しいものとなっております。

     ということで、切削工具に関しましては航空機や医療機器等の自動車業界以外の需要を掘り起こすことによってカバーし、あるいはベアリングに関しましては、新車の買い替えで消費者が現有車を修理するという需要がございます。このアフターマーケットの取り込みを強化することによってカバーしているというような状況でございます。2017年ですけれども、自動車の生産は若干回復するというふうにみられておりますけれども、特にベアリングに関しましては自動車のモデルチェンジとの関連もあってですね、本格回復はまあ数年先になるという見方もあるようです。

     続きましてトラクターですけれども、こちらは農業は比較的、先程の話にもありましたけど、比較的堅調で、一時ストップされていました政府の農業向け低利融資の方も再開されたということで、トラクターの販売台数は16年度前年比マイナス4%と、まあマイナスなんですけども、大幅前年割れの他の分野に比べたらですね、比較的下げ止まりになってきたと言っていいのかなと思います。

     2017年度も農作物の収量増が予想されている関係で、トラクターの需要は15~20%の増加が予想されておりまして、まあ我が業界にとってはですね、唯一と言っていい見通しの明るい分野かなと思っております。

     最後になりますけれども、産業機械の中の非汎用圧縮機とポンプについて。非汎用圧縮機につきましては、主要用途が資源開発あるいは石油関連ということで、ペトロブラスの投資抑制、資源価格の低位安定等でですね、市場はまあ壊滅的と言っていいかなというふうになっておりまして。

     この表はガスコンプレッサーの輸入実績の2年間の比較ですけれども、2016年合計でですね、前年比70%以上のダウンということで、特に大型のターボコンプレッサーに関しましては、まあほぼゼロに近い状態まで落ち込んでいるということです。このクラスのコンプレッサーはほとんどが輸入になっておりますので、この輸入実績イコール市場規模と見ていいかなと思っております。

     2017年ですけれども、ペトロブラスの投資回復はまだ先になるかと思われます。ただ原油価格の回復と、プレサル鉱区におけるペトロブラスの30%以上の権益優先権の撤廃によって海外資本の投資が増えることを期待しております。

     ポンプについても、大型のカスタムポンプに関しましてはやはりコンプレッサーと同様で、主要用途の製鉄や石油化学が不振なことがありまして、需要は大幅な減となりました。ただ一方で、農業向けが主体の標準ポンプに関しましては、市場は前年比の5%増であったということでございます。で、2017年度ですけれども、上期はほぼこの状況が続き、下期に穏やかな回復基調になるのではないかと予想しております。

     それでは最後になりますけれども、本日の副題になっております「景気回復に向けて、いま為すべきことは?」ということを、会員企業よりのコメントを整理する形で紹介させていただきます。

     まず、最初に書きましたコスト削減ですけども、これはもちろん景気回復期に限らず常に必要なことなんですけれども、顧客の投資額が限定されている折ですから、他社よりも割安な価格を提供することによる競争優位とともにですね、顧客の投資額低減を図るということでございます。

     それから、品質の向上。これはもちろん、コスト同様にですね、品質面での競争力を強化するということなんですけれども、まあ閑散期といいますか、この今時間の余裕のある時にですね、日本の親会社、あるいは本社の支援を受けてですね、こちらの現地の技術力をアップしていくということでございます。

     それから、ソリューション提案の強化ということで、単品売りになりますと価格優先の競争になりますので、自社製品を通じてお客様の課題や要望を解決するソリューション型のビジネスに転換していくということでございます。

     それから、客先情報の収集というのは、まあ過去1、2年前にありました引き合いや案件がこの経済状況で中止や延期になった部分がございますので、その案件の再度掘り起こしということで顧客様の訪問。その訪問を通じてお客様の情報を把握することによって、景気回復の後にお客様のご要求に迅速に対応できる体制も整えておくということでございます。

     最後に、やはりこの、時間的な余裕があるといいますか、この時期にですね、新規の業界や顧客、それから未開拓であった地域への開拓も進めていきたいというような意見が出ておりました。

     以上が私の発表でございます。ご清聴ありがとうございました。

     

    司会

     ありがとうございました。ただ今の発表につきまして、ご質問等ございますでしょうか。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。はい。それでは、機械金属部会の発表を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

     引き続きまして、自動車部会の発表に移りたいと思います。溝口部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

  • 自動車部会     溝口イサオ 部会長

     

                                                            

     

     

                 

     はい。皆様、あらためまして、こんにちは。それでは私から、自動車部会の報告をさせていただきます。今回は、2016年の振り返りと2017年の展望について、四輪業界、二輪業界の順に説明させていただきます。

     まず始めに、四輪業界の2016年振り返りです。2016年の自動車市場は失業率の上昇などによる景況感悪化、購買意欲低下の影響を受け、販売は205万台、前年比80%となり、4年連続での減となりました。輸入車比率についても、レアル安の影響を受け、13.2%と5年連続で低下しています。

     続きまして、こちらは2015年と16年の月別の販売台数です。昨年1月以降、市場環境は好転しておらず、左側の2015年に比べ販売がさらに落ち込んでいることがお分かりいただけると思います。ただし、前年比で3割前後減少していた2015年と比較すると、徐々に下げ幅は縮小傾向にあり、底打ち感は出てきたと見ています。

     また、在庫月数は各社生産調整が一巡。最近では1カ月台前半で推移しており、ほぼ適正と言ってよい在庫水準となってきました。

     こちらは生産と輸出の推移です。市場の状況を反映し、2016年の総生産台数は215.7万台、前年比88.8%となりました。一方で、レアル安の影響および国内市場縮小により、各社が輸出向け生産にシフトしているため、輸出は前年比124.7%と増加しました。

     こちらは輸出台数をカテゴリー別、輸出相手国別に見たものです。カテゴリー別では乗用車とバスが約3割増加いたしました。輸出相手国別では、販売が上向きとなっているアルゼンチン向け輸出が増加しました。また、金額は小さいもののアメリカ向けも上位に入ってきており、こちらは昨年から欧州ブランドの一つがアメリカ向けの輸出を開始したためと聞いております。

     次に中古車・新車別の販売台数です。新車については先ほど申し上げた通りですが、中古車市場はその規模を維持しており、2016年は前年とほぼ同等の約1000万台となりました。

     続きまして、こちらはブランド別の販売台数とシェアの実績です。左は2015年から16年のシェア構成の変化を示しておりますが、Fiat、GM、ワーゲン、Fordという、いわゆるBIG4が約5%シェアを落としている一方、日系ブランドは1.5%シェアを伸ばしております。右はブランド別の変化になりますが、厳しい市場環境下でも、日系ブランドがそのブランドや品質などを背景に健闘していることがお分かりいただけるかと思います。

     こちらは昨年、一昨年の新車販売店数の変化とその増減の内訳を示したものです。BIG4が200店近くの販売店を閉鎖する一方、日系ブランド、韓国ブランドは逆に販売網を拡大。市場全体としては、前年比で販売店数が増加しています。

     続きまして、2016年のトピックとして、11月に開催されましたサンパウロモーターショーを紹介させていただきます。厳しい市場環境の中開催されましたが、全ての主要ブランドが参加し、来場者は70万人を超え盛況となりました。日系ブランドについても、トヨタさんは、エティオスの輸出拡大、新車・中古の包括プログラムなどによる事業強化、ニッサンさんは、キックスのブラジル生産と新型フロンティアによるシェア拡大、弊社については、ブラジル開発モデルによる競争力強化、をアナウンスし、各社がブラジル市場へのコミットメントを示しました。

     また、新車発表に加え、先進環境安全技術やコンセプトカーを日系ブランドが積極的に展示し、来場者・メディアでの注目を集めました。

     続いて、今回のサンパウロモーターショーのトレンドとしてSUV市場の活況に触れさせていただきます。左上のグラフにあります通り、全体市場が落ち込む中、SUV市場は前年を上回り、成長を続けています。また右上のグラフを見ていただきますと、SUVの中でもコンパクトSUVが拡大していることがお分かりいただけるかと思います。このような中、モーターショーでも各社から多くのコンパクトSUVが発表・展示され、このセグメントは今後も活況となる見通しです。

     次に2017年の展望に移ります。

     まずは経済指標の予測です。中央銀行の2017年予測ではGDP成長率は2年ぶりにプラスとなり、インフレと金利はさらに低く抑えられる見通しです。

     こちらは、それらの状況を踏まえた2017年の自動車業界予測です。2016年の総市場は205万台でしたが、ANFAVEAは2017年販売台数予測を、総市場で213万台、前年比4%増と、市場が5年ぶりに増加に転じると予想しています。

     一方、自動車部会としては、先月の販売実績が依然前年割れとなっており、上向きとなる時期がまだ明確には見通せないことから、ANFAVEAよりも若干低めではありますが、総市場で前年比2.4%増の約210万台と予想しております。

     なお輸出は、レアル安により増加した昨年をさらに上回ると予想。生産台数は、国内市場の回復、および輸出台数増により、前年比12%増となる予想です。

     続きまして、長期展望に移ります。まずは市場の長期予想をする上で重要となる、各金融機関の経済指標予測を見ていきます。

     GDP成長率は、各行半年前の予想より若干下方修正する一方、インフレ率と金利は直近のトレンドを受け、前回予想より低く抑えられています。いずれにしましても、2016年を底として、2017年から経済が緩やかに回復する予想となっております。

     このような予測や足下の販売状況を総合的に見た場合、ブラジル自動車市場は底打ち状態にあり、回復の時期を正確に見極めるのは難しいものの、市場が好転するのは2017年の後半から2018年だろうと自動車部会では予想しています。

     続きまして、日系ブランドの課題への対応についてご説明いたします。

     こちらは、昨年のシンポジウムにてご説明させていただきました、日系ブランドとして認識する課題と、それに対する各社の取り組みです。前回同様、この項目に沿ってアップデートがあるトピックをご紹介させていただきます。

     本日は、こちらの、事業体質の強化について、トヨタさんのエンジン工場の増強と、弊社からは地域に向けたモデル開発を取り上げさせていただきます。

     トヨタさんでは、部品現調率向上、とりわけエンジン現地生産による為替影響とコストの低減を目指し、昨年5月に中南米で初となるエンジン工場の開所式を実施されました。そして、11月にはその工場の能力拡大のため追加投資を発表されました。

    これにより、投資額は6億レアルから11億8000万レアルに増え、エティオスのエンジンに加え、2019年下期からカローラのエンジンを生産する予定です。また、生産規模は現状の年産10万8000基から17万4000基になる予定と聞いております。このように現地生産を進めることにより、市場競争力と事業体質のさらなる強化を図られています。

     続きまして弊社の事例を紹介させていただきます。ホンダでは、お客様が求める商品をよりスピーディに開発・生産することを目的として、2013年に四輪研究所をサンパウロ市内からスマレ工場敷地内へ移転しました。また2014年には、営業などを含めたSEDBA機能の集約を完了しました。

     その成果の一つといたしまして、南米のお客様に向けたコンパクトSUV、WR-Vをこのブラジルの研究所で開発、今年の3月から発売する予定です。このように地域に根差した商品開発・生産を行うことにより、市場競争力の強化を図るとともに、現調化や輸出を含めた事業体質の強化を推進しています。

     それでは、四輪パートの総括に移ります。

     この半年を振り返りますと、政府からは消費刺激策が出され、自動車業界においても底打ち状態からの回復が期待されています。一方で、失業率は低下しておらず、購買意欲は上向きにはなっていません。このような状況から、回復に向けてはまだ状況への注視が必要であり、急激な変化が今後も起こり得るという認識の下、環境変化に負けない事業体質の強化が引き続き求められます。

     具体的には、為替対応を踏まえた部品現調化や、生産性向上などによるコスト低減、および、輸出促進を長期的な視点で推進していくことが重要だと考えます。一方で、現調化や輸出のさらなる加速には、低いコスト競争力を打開する恒久的な取り組みも官民連携の下で必要と考えております。

     こちらは、そのような背景を踏まえた政府への提言でございますが、自動車政策や自由貿易政策、人材育成、労使関係、人的交流を含め、幅広い領域について取り組みが必要と考えております。引き続き業界一丸となって是正提言を粘り強く続けていくことだと考えていますので、どうか皆様ご協力賜りますよう、よろしくお願いいたします。

     続きまして、二輪業界の状況について、簡単ではありますが触れさせていただきます。

     まず、生産・販売の動向です。長引く不況や、解雇増による購買力の低下により、2016年の国内卸販売実績は86万台、前年比72%と、5年連続で前年割れとなりました。また、低調な販売状況を反映し、生産は89万台、前年比70%となりました。

     こちらは、登録ベースの月別販売推移です。前年比で見ますと下げ幅が徐々に大きくなってきており、例年盛り上がりを見せる12月も低調な販売となり、なかなか回復の兆しが見えない状況です。

     最後に、二輪販売の支払い形態別推移です。緑のグラフはローンによる販売比率を示していますが、与信審査の厳格化に加え、可処分所得の低下などにより、ローン申請数自体が減少しています。これが市場の縮小に大きく影響していることがお分かりいただけるかと思います。

     このような厳しい状況ではありますが、ブラジル二輪市場は日系ブランドがシェア8割以上を占める重要な産業と認識しておりますので、四輪と同様、引き続き市場環境に応じた事業体質強化、および商品競争力強化を図ってまいります。

     以上で自動車部会の報告とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

     

    司会

     溝口様どうもありがとうございました。ただ今の発表につきまして、かなり関心の高い分野かと思いますけども、ご質問のある方、挙手をお願いできますでしょうか。いかがでしょうか。よろしいですか。はい。それではこれで自動車部会の発表を終了させていただきます。溝口様、どうもありがとうございました。

     では、前半の部の最後となります、コンサルタント部会の発表に移りたいと思います。関根副部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

  • コンサルタント部会     関根実 副部会長

     

                                                       

     

     

     

                          

     西口コンサル部会長が今週出張で不在でございますので、今日私関根が代わりに発表させていただきます。よろしくお願いいたします。

     今年に入りまして、ブラジルの金融市場、非常に活性化しておりまして、先程から発表ありましたけども、株式についてはBOVESPA指数が5年前の水準、2012年の水準まで戻ってまいりました。で、為替につきましては、去年の初めは1ドル=4レアルだったところが、今日現在ですと3.06ですけども、約25%レアルが戻してきております。

     それから、金融市場では、CDS、各国のカントリーリスクを示す指数があるんですけども、Credit Default Swap、これが昨年の初めは500ポイントだったんですけど、現在では225ポイントと半分以下に下がってきておりまして、ブラジルの金融市場がブラジルの経済回復を先取りしているという状況になっております。

     まあ我々、ブラジルに住んでおりますと、連日ラバ・ジャットのCorruptionのニュース、治安の悪化、失業率の増加と、良いニュースはほとんどないんですけど、なんでこんなに金融市場が活性化しているのかと、ここら辺をコンサル部会でディスカッションしてみました。

     まず、貿易収支が良いと。先程貿易部会から詳しい報告がありましたので、簡単に。総合貿易収支、このスライドの右上の所なんですけど、これはモノの輸出入プラス、サービスの輸出入を合計したものです。通常ブラジルはこの総合貿易収支がマイナスなんですけども、昨年と一昨年、2年間は若干ですけどもプラスを計上しています。それぞれ150億ドルの黒字でございました。

     このスライドの右下のグラフがその内訳なんですけども、2016年につきましては12月ベースではなくて10月ベースです。10月累積で12カ月間さかのぼって、モノの輸出は1530億、モノの輸入は1145億でプラスになっているんですけども、まあ先程来ご報告のあります通り、経済がさえないので輸入が減ったことによってモノの貿易収支が改善したと。まあ結果オーライなんですけども、中身は決して喜んでいられない数字です。

     それからサービスの輸出入、右下にありますけど、サービスにつきましては輸入超過というポジションになっております。

     スライドの左側の方は品目別の輸出なんですけども、先程来詳しいご説明がありましたので省略させていただきます。

     次に直接投資なんですけども、外国からブラジルに入ってきている直接投資と、それからブラジルから外国に出ていく直接投資。これを棒グラフにしたものが左上のグラフです。2016年で見ますと、流入が639億ドル、流出はわずか88億ドルで、ネットで552億ドル。若干減ってはおりますけども、直接投資はブラジルに順調に入ってきていると。2017年以降の予想なんですけども、徐々に景気回復でこれは順調に伸びていくであろうという予想でございます。

     スライドの右側の方は国別の投資の源泉国なんですけども、先程もお話ありましたけども、オランダとかルクセンブルグ、ヨーロッパの小国が大きなシェアを占めているんですけども、これの実態は、貿易部会からのお話の通り、ほとんどは中国ではないかと見られております。公表されておりませんので詳細は分かりませんけども。

     スライド右下の方は、今年のラテンアメリカにどのくらい直接投資が行われたのかと。外国からの直接投資ですけども、ブラジルが58%ということで半分以上をブラジルが占める予想です。近年ブラジルがちょっと調子悪くなってきたので、ブラジルからメキシコにシフトするという動きがありましたですけども、11月にアメリカの大統領選挙でトランプ大統領が選出されてから、メキシコに非常に厳しい事を言っていますので、今年はメキシコへの投資にストップがかかって、ブラジルは漁夫の利的にその分増加が期待されております。

     ブラジル、まだまだ構造改革が必要なんですけども、外国の投資家から見るとブラジルは現時点では最も魅力的な投資先と、どうも見ているようですね。まず左側の方で、ブラジルの政治的、制度的な環境ということなんですけども、昨年の5月にジルマ前大統領からテメル現大統領に代わりまして、まあ8月から正式にテメル政権が発足しましたんですけども、それまでの政治的な混乱が落ち着いたということがまず第1点ですね。

     2番目に、エンリケ・メイレーレスさんが財務大臣に就任されて、元中銀総裁、その前はBankBostonのアメリカの頭取をやられた方。国際金融界にもよく知られた方なので、オーソドックスな政策で、まああまりひどい事はやらないだろうという、まあ安定感が増したということですね。それから、ジルマ政権の時に財政支出、大盤振る舞いしまして、赤字に陥りました。これがテメル政権になりまして、メイレーレス財務相が支出の天井を作るということで国会を通しまして、一応その公共支出の歯止めがかかったという状況です。

     それから、財政赤字を改善するために、まあ昔から言われていることですけども、年金制度、社会保険、INSSの改革というのがようやく始まりました。拠出期間の延長、それから受給年齢の引き上げと、まあ過渡的な措置が採られておりますけども、長年の懸案がようやく始まったということでございます。

     右側の経済環境の方なんですけども、メイレーレス財務大臣、2018年には330億ドル、合計で、民営化のプランを出されています。中身は従来からあるプロジェクトで、目新しいものはほとんどないんですけども、再度ブラジルで民営化の動きが出てきているということですね。

     2番目に、金利の引き下げ。まあインフレが落ち着いてきているということで、ようやく4回連続で政策金利が下がってきております。今日からは12.25%。で、あと数回やって、今年末には一桁台の金利になるであろうという予想ですね。

     3番目に、産業活動。昨年の下期に底を打ったというのが大方のコンセンサスになってきております。徐々に回復していくけれども、まあ来年10月に総選挙を控えていますので、それまでは徐々に、本格的な回復は選挙後、具体的には再来年からということになるかと思います。

     2017年、今年、外国からの直接投資としては、現在の予想ではブラジルは7番目に多く投資資金が入るであろうという予想です。

     毎年、国別の競争力という統計が発表されておりますけども、直近では138カ国の調査でブラジルの競争力は不名誉なことに81番目です。左の円グラフなんですけども、黄色い線がブラジルです。

     この12項目につきまして、採点して、競争力を数値化しているんですけども、まあ政治体制、教育水準、労働力、技術開発力、金融市場、市場の大きさ、ここら辺12項目でですね、ブラジルが優れているのはグラフの一番左の市場のサイズ、マーケットサイズ、これだけがブラジルは優れていて、他はほとんどだめと。こういう、競争力が落ちるところなのにもかかわらず、ブラジルに投資資金が入ってきていると、非常に不思議なんですけど。なぜか、ということを後ほどご説明したいと思います。

     M&Aにつきまして、部会長の西口さんの会社、EY、Ernst & Youngが毎年6カ月ごとにお客さんからアンケート調査を取られています。直近では昨年の12月なんですけども、上から2行目の所なんですけども、ブラジルにあるErnst & Youngのお客様、多国籍企業が多い訳ですけど、その31%がブラジルの現在の経済をポジティブに捉えられていると。これが昨年の6月の時点ではわずか3%しかなかったということで、昨年の後半に大幅な改善を見たというのがお客様の意見です。

     真ん中へんの所にあるんですけど、6カ月前は11%であったM&Aへの関心が、今63%が前向きに捉えられていると。そのうち42%は今年M&Aをやりたいと思っていると。まあEYのお客様、グローバル企業で、必ずしも日系だけではないので、欧米の企業が中心なんですけども、まあ42%がブラジルでM&Aをやりたいと。すでにその73%は5件以上の案件をもっていらっしゃるということでですね、M&Aの業務は昨年は非常に低調だったんですけども、今年は活発化することが期待されています。

     下の方で、EYのグローバルベースで、世界的に調査をまとめますと、57%がM&Aを前向きに考えていると、あるいはジョイントベンチャーをやりたいと。世界的に今、資金は余っていますから、中国の減速、アメリカの保護主義化、ヨーロッパのEUの混乱、ここら辺から、どこに投資しようかということからしますと、ブラジルはやはり有力な候補として残るということが言えると思います。

     本日の副題の「景気回復に向けて、いま為すべきこと」なんですけども、やはり投資のターゲットとしては、一にインフラ投資であろうと。すでに最近、鉄道とか計画が発表されておりますけども、加えて港湾等ですね、インフラが一番期待できるであろうと。あと一つ、農業も重要なセクターで、これは中国勢が非常に関心を示しております。

     戦略的には、デジタルテクノロジーをもっとブラジルに持ってきて、まあターゲットとなっている候補先の会社の事業分野の融合・統合、セクターコンバージェンスとか言われますけども、そこらへんをやっていこうということですね。

     それから、M&A、ジョイントベンチャーをやるに当たっては、労務ストラクチャリング。ブラジルは前近代的な労働法で労働組合が強すぎるがために、我々日常頭を悩ませている訳ですけども、ロボットをもっと導入して、人的な能力に頼らない製造工程を作っていくということを考えましょうということですね。

     それから、DDを慎重にやりましょうと。DDというのはDue Diligenceの省略なんですけども、M&A、ジョイントベンチャーをやる時には候補先の会社のDue Diligence調査というのを通常監査法人に頼んでやるわけですけども、まあ監査法人が見抜けないDue Diligenceというのも、特にこのブラジルの場合は多いですね。

     まあDue Diligenceで通常出てくるのは、税金の債務の偶発債務、税務署とトラブルになっていて、その税金を払わなければならない確立が100%ある、あるいは絶対こちらが税務訴訟で勝つ、払わないで済むと、それからその間の勝つか負けるか50%の確率であると、そういうような分類があるわけですけど、そこらへんの分類は分類する人のさじ加減でどうにでも変わるわけですよね。

     ですからDue Diligenceの出てくる中身を、背景をよく調べる。そのためには財務諸表の数字だけでなくてですね、取り引き先の銀行とか、あるいは法律事務所、会計事務所、コンサルタント、ここら辺からのサイドインフォメーションを取っていかないと、こういうブラジルではM&Aで失敗すると。まあ早く言えばですね、ロンドンとかニューヨークとか東京で出てくる英文の企業の売り手のドキュメントを見ているだけでは分からないと。現地調査して、現場のサイドインフォメーションを取って慎重にやりましょうということでございます。

     今年、景気回復の兆しが見えるんですけれども、実体的には来年の選挙が終わってからということで、まだ1年10カ月、非常に、現在のような状況が続くと思います。売上が中々伸びないので、売上を上げるために無理な販売をどうしてもしたくなるんですけども、それはまあ回避しましょうと。まあブラジルは市場が広くて、お客さんはいるので、日本の品質の良いもの、あるいはサービスを提供すれば売れるんですけども、問題は代金をちゃんと回収できるかどうか。

     まあ通常90日ぐらいのサイトをつけて売りますと、ブラジルのお客さんは払わないのがむしろ通常であって、2度3度督促してやっと払うと。ひどいお客さんにつきましては、ディスカウントしてくれるんならば払いましょうというような交渉になって来るわけですよね。

     ブラジルの場合、まあご存じの通り、日本から製品を輸入してブラジルで売りますと、高い輸入関税に加えて、IPI、工業製品税、PIS/Cofinsの間接税、それから州税のICMSと、まあ大体平均して40%ぐらいの税金を前払いしなければなりません。

     で、その輸入したものをお客さんの注文通り輸入して売りますと、売上は立つんですけども、期日通り落ちないと、この前払いした税金はずっと残ってしまうと。バランスシート上資産から落とすことができない、でキャッシュフローを圧迫するということで、無理な販売がゆえに現金不足ということになりかねないですよね。したがいまして、与信管理を慎重にして、キャッシュフローをしっかり管理しましょうということでございます。

     最後にまとめなんですけども、現在のブラジル国外の環境、グローバリゼーションの反動が始まったと。かなり歴史的な大きな変換点に入ってきているんだと言えると思います。92年のベルリンの壁の崩壊以降、グローバリゼーション、急速に進んできたんですけども、まあ欧州、アメリカの移民問題もありまして、保護主義化の動きが先進国で出てきております。

     英国で6月にEUから脱退するという国民投票が通ったということ、11月のアメリカの大統領選挙では保護主義を唱えるトランプ大統領が当選したということで、これからの世界的な動きは、日本が熱心で、TPPはじめ多国間協定の動きから、今後は二国間のバイラテラルな協定に移っていくのではないかと、二国間協定を大事にしましょうということなんですけども。

     そこでブラジルと日本との二国間、どういう状態になるかと、整理して締めくくりさせていただきたいと思うんですけども、まず右側の日本の状況は、今までアメリカと中国を中心に貿易・投資をやってきておりますけれども、まあアメリカの保護主義化、中国の経済減速およびその覇権主義が明らかになってきたというところから、貿易・投資の相手国を多様化する必要が出てきていますね。 日本は資源・食料の輸入国ですから、その供給先を確保する必要があると。それから日本の企業の生産余力ありますので、その製品・サービスの売り先をアメリカ・中国以外にも多様化していく必要があると。

     で、どこに行くかということなんですけども、地政学リスクと最近よく言われています、geopolitics、国際紛争のないところに行きましょうと。その中で、マーケットサイズ、日本への親日国、それから海外最大の日系人がいるブラジルというのはやはり、最後に残ると思うんですね。

     で、ブラジルの現在の状況、左側の方ですけども、ブラジル国内の政治・社会の混乱、PT政権が終わりましてようやく出てきたと、社会正義、Justica Socialが醸成されつつあると。ラバ・ジャットのCorruptionの捜査、過去3年間やっておりますけども、具体的に贈収賄の金を出した企業、それからそれを受けた政治家の固有名詞が出てくるというようなことは、かつてブラジルでは考えられなかったことで、まあブラジルの社会でモラルがようやく重視されてきているという傾向にあります。

     PT政権が13年間、初期は良かったんですけど、終わりは非常にみじめな結果になりまして、いわば左翼ポピュリズム、これが減退してきているというのが、投資先としてはポジティブな面で捉えることができます。

     それから構造改革、ブラジルは中々できないでいるんですけど、その方向性は一応見えてきたと。財政支出の削減に一応歯止めがかかったと。でも、ここでちょっと注意しないといけないことは、今財政支出の天井を作っているのは連邦政府予算の方だけであって、地方交付金を受けている各州の財政というのはもう大変な状態、真っ赤っかな訳ですね。

      リオ州が一番ひどいわけですけども、交付金がつかないのに州政府が勝手に支出して、その尻拭いを連邦政府に今泣きついているというのがリオ州、リオ・グランデ・ド・スル州、ミナス・ジェライス州、サンパウロ州、大きな州はみんなそうなわけですね。ですから、出てくる数字は良い数字が出てくるんですけど、実態はそれほど良くなっていないということなんですけども、一応財政収支の削減のマインドは出てきたということはプラスとして捉えていいと思います。

     それから、民営化の動きが再度出てきたと。それから、労働法の改正、社会保険、INSSの改善、ここら辺はもう国会でも審議が始まっておりまして、現在のテメル政権はあと1年10カ月の任期が決まった政権ですので、この間に全部完成するとはとても期待できませんけども、そういう動きが出てきたということはプラスと思います。

     こういうブラジルと日本の二国間を見ますと、友好国で非常に補完性はあるので、まあ我々ブラジル現地にいるものとしては、日本の本社に長期的観点からブラジルにはぜひ直接投資、M&A、やりましょうと案件を上げていただきたいと思うんですけども、まあ会社によってはそんなこと言っていられないと、あと1年10カ月も待っていられないと、売上が伸びないんだから会社を閉めて帰ってこいという会社もいくつかあると思います。

      現に私もそういう相談を受けているんですけども、まあブラジルは皆さんご経験済みの通り、会社を作るのは非常に大変なんですけども、会社を閉めるのはもっと大変なんですよね。ですから、私どものアドバイスとしては、ブラジルは数年後には必ず良くなるので、今我慢の時だけれども、もし帰ってこいというならば、会社は休眠化して、解散しないでですね、休眠化してまた数年後の本格的景気回復時に再開しましょうと、そういうサジェスチョンをしております。もし具体的なニーズがありましたら、私どものコンサルタント部会のメンバーにご相談いただければありがたく存じます。

     最後、少しコマーシャルになりましたですけども、以上でコンサル部会の発表とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

     

    司会

     関根様どうもありがとうございます。お話、かなりグローバルな視点での話とか色々ございましたが、この発表につきまして色々ご質問とかご意見のある方いらっしゃるかと思いますけれども、いかがでしょうか。挙手をお願いできればと思います。どうでしょう。一人おられました。ではお願いします。

    質問者

     アロエイラ・サーレス弁護士事務所のカワカミと申します。よろしくお願いいたします。いくつかラバ・ジャットと汚職事件の話が出てきましたけれども、2015年に正式に反汚職法が発効されまして、その中で、特に去年はコンプライアンスという言葉がやっとブラジルに入って来まして、いくつかのブラジルの企業もコンプライアンス体制の構築を今やっているんですけども、コンプライアンスということはですね、日本は昔からやっていることですし、しっかりしていますし、日本企業もそれに慣れていますが、コンサルタント部会から見てですね、今後のこのブラジルはどうなるかという展望においてコンプライアンスシステムをどうしたらいいか、どう見ればいいかというご意見とか、そういった話はありますでしょうか。

     

    関根副部会長

     コンプライアンスへの対応につきましては、監査法人が専門部門を持っていらっしゃいまして、監査法人の中の弁護士さんが対応されますので。まあ日本とか欧米先進国ほどそう神経質になって対応する必要はないかと思いますけども、一応そういうコンプライアンス遵守の体制を作っておくということは必要でございまして、個別の対応になるかと思いますので、ぜひ監査法人の専門家と御話合いの上対応していただければと思うんですけれども。

     ブラジル、一応法治国家なんですけれども、ラバ・ジャットで見ればですね、過去3年間の捜査で、企業家は、金を出した方はもう刑も決まって、罰せられているんですけども、受けた政治家の方は、収監されている人はいますけども、判決が出て刑が決まった人というのは一人もいないんですよね。

     そういう国ですから、コンプライアンスの尺度が先進国よりも大分較差が大きいと言いますか、甘いと思います。ですから日本あるいは欧米でやっているコンプライアンスのチェックリストそのもの全部使う必要はないかと思います。少し緩くしてですね、較差を大きくして、一応対応はしておくということで、まあそこらへんのチェックリストの改良というのを専門家の監査法人の方と個別にやっていただければと思います。

     

    司会

     ありがとうございました。よろしいでしょうか。他、質問ございますでしょうか。はい。ではちょうど3時15分、予定通りですね、前半の部終了ということで、これでコンサルタント部会の発表を終了したいと思います。どうもありがとうございました。

     それでは、ここでコーヒーブレイクとさせていただきたいと思います。後半の部は、いまちょうど3時15分ぐらいかと思いますので、3時30分からということで、15分間休憩ということでお願いいたします。3時30分から後半の部開始いたしますので、皆様よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

     

  • 後半司会     小池淳介 総務委員長

     

                                                

     

     
     

                          

     そうしましたら、3時半を過ぎておりますので、後半戦を開始したいと思います。後半戦から司会を仰せつかっております小池と申します。本年度、カマラの総務委員長を仰せつかっております、三菱東京UFJ銀行の小池と申します。よろしくお願いいたします。

     不慣れな司会ですので行き届かない点もあろうかと思いますが、よろしくお願いします。それでは後半戦トップバッターということで、化学品部会、鎌倉部会長様、よろしくお願いします。

     

  • 化学品部会     鎌倉勇人 部会長

     

                                             

     

     

                          

     皆様こんにちは。はじめまして、スリーボンドの鎌倉といいます。私1年半前からブラジルの方に駐在させていただいておりまして、2015年の真ん中ぐらいなので、えらい時期にブラジルに来てしまったなと感じていた次第です。

     本日前半のプレゼンテーションを聞かせていただいておりますと、とりあえず経済の底は脱したかなというところを感じておりまして、それを受け、化学品部会が2016年どうであったか、2017年はどうなっていくかというところを、私の方から15分程度で説明させていただきたいと思います。

     まずは化学品部会の所属する企業ならびに団体をご覧下さい。現在、会員数52社となっており、昨年より3社減っております。3社に関しましては、撤退されたというところではなくて、現地化によりまして日本人がいなくなったところで退会されたとお伺いしております。

     今回は28社より2016年の回顧と2017年の展望についてアンケートを発表にまとめさせていただいております。なお、回答いただきました28社中15社が2000年以降にブラジルに進出した企業となり、新旧入り混じっているのが化学品部会の特徴になります。なお皆様、お手持ちの資料と前のプレゼンテーションなんですけど、ちょっと私の資料だけ文字化けしているようで、ちょっと見にくい部分があるかと思いますが、御容赦下さいませ。

     こちらは化学品部会が関わる市場になります。ブラジルの基幹産業である自動車をはじめ、電子機器、建築、印刷、医療や農薬など多岐にわたっております。関わる市場が異なることから、今発表では、他の部会様のプレゼンテーションと重複する部分はございますが、できるだけ市場ごとに2016年の回顧を振り返っていきたいと思います。

     こちらが市場別の2016年の回顧となり、2015年と比較した売上と利益の増減を示しています。

     まず一番左の自動車、二輪車、航空機の市場は一括にさせていただいておりますが、化学品部会がメインとするこの輸送市場では、車やバイクの生産台数が落ちている中で、売上、利益の増減に関しては半々の結果となっております。

     電気電子、工作機械の市場では、消費者の購買意欲の低下とともに生産台数も低下しており、非常に苦戦が強いられた結果となっております。

     建築市場に関しては、なんとか社内努力によって利益は確保できたものの、売上は全ての企業で減少しております。

     食品市場は価格競争が厳しく、利益確保ができなかったものの、売上が増加傾向にあります。

     印刷、製紙市場では、期待されたほどのオリンピック効果も少なく、売上を減少させる結果となっております。

     農薬、肥料、飼料の市場では、気候に恵まれなかった2015年に比べると、2016年は非常に気候に恵まれたこと、ジカ熱やデング熱など蚊の対策により売上を増加させる企業が多くなる結果となっております。

     医療、医薬品、化粧品の市場は、公定価格や国の援助、競合品の台頭など懸念事項が多い中で、積極的な販売策により、景気後退の影響は少なく、好調を維持できている結果となっております。

     コンシューマー市場に関しても、消費者の購買意欲が低下する中で健闘を見せております。

     以上、化学品部会の2016年の結果を簡単にまとめますと、各社対策を打つことで一定の効果を見せておりますが、2015年から続く景気後退の影響が色濃く残る結果となりました。2015年度も市場自体が縮小しているとの意見はございましたが、2016年はさらなる悪化を物語る経営難、すなわち支払いの遅延や倒産という意見が非常に増えております。中でも倒産した企業の従業員に給料が払えないというところから、商品を提供した我々企業に対し、裁判所より支払い命令が来てしまうような事態も起こっております。

     あまりネガティブなことばかり話していても何も始まりませんので、ここからは皆様のモチベーションが上がるような明るい話題に切り替えて行きたいと思います。

     2016年度、景気が後退し、多くの企業が苦しみに耐える中で、確実に売上と利益を増加させている企業も存在しております。どういった企業努力があったのか、少し深掘りして説明させていただきます。

     売上と利益が増加した要因を二つに分けております。多少、運の要素も必要となりますが、お客様よりの要因に関しては外部要因、企業内努力によるものを内部要因としています。

     外部要因の一つ目。景気が後退する中でも他社との差別化を図る販売方法の見直しなどにより、多くの企業で新規顧客を獲得することができています。例えばブラジルにはない技術や材料を提供することで、今まで関わりのなかった顧客と人脈構築を図ったり、販売ターゲットを富裕層に絞るなど、各社知恵を絞った結果となります。

     また、ここにはちょっと記載しておりませんが、競合会社も我々と同様非常にこの難局に苦戦しています。我慢比べに負け、競合会社が撤退したことで結果的に新規顧客を獲得することもできています。

     外部要因の二つ目。ブラジル国内が厳しい、そういった中で、貿易が少しずつ簡素化され始めたアルゼンチン、南米の中では比較的経済が安定しているチリなど、周辺諸国への輸出を強化、販売拡大を目的とした代理店の設置を行っている企業が増加しております。

     外部要因の三つ目。リスクは伴いますが、沈黙する市場を自らで活性させるために新商品を投入し、成功されている企業もあります。購買意欲が低下、すなわち新しい物は買わない、しかしながら持っている物は壊れた場合を想定して、修理用途に特化することで成功されている企業例もあります。

     外部要因の四つ目。お客様からの支払いが遅延する中で、与信管理を強化し、回収率を下げないように努めている企業も増えております。

     次に内部要因に関して説明いたします。化学品部会の企業の多くは自社工場を持っており、今回アンケートをいただいた28社のうち約半分の企業が工場をもっております。そのため、外部要因に頼らずとも、自社の努力による部分、すなわちコストダウンを実施することで、経費を抑え、利益を増加させることができます。

     では内部要因の一つ目。移転価格や運賃など、ブラジルで発生する高い経費を少しでも抑えるために、原料や商品の商流を見直す、すなわちサプライマネージメントの強化を図ったり、労働時間の変更や短縮によりコストダウンを実行された企業もいらっしゃいます。

     余談にはなりますが、弊社、100人規模の小さな工場ではあるんですが、食堂の方も完備しております。皆さんも心当たりがあると思うんですが、ブラジルのスタッフの方、本当によくご飯を召し上がります。弊社の場合、汗水たらして頑張っているスタッフのためにですね、お昼はビュッフェ形式で食べ放題になっております。

     それとは別にですね、毎日3時のおやつとして実はサンドイッチの方を提供しておりました。ただ、経費削減のためにこれをクッキーに変えたところですね、まあある日突然スタッフが集まって私のところにやってきて、頼むからサンドイッチに戻してくれと。泣いて懇願された次第です。ただ、会社の経営がじり貧状態でして、体力がそぎ落としていく中ですね、日に日にボリュームが増していくスタッフの姿を見て違和感を感じている次第です。話を戻します。

     内部要因の二つ目になります。工場設備を増やすことで生産性を向上させ、結果的に経費削減につなげたり、開発スピード向上を目的とした、例えばですが農薬の試験場なんかを新たに設立されている企業様もいらっしゃいます。

     内部要因の三つ目。スタッフを減らすどころか、増員させることで、何が何でも販売拡大につなげてやろうという非常に前向きな姿勢もございました。

     内部要因の四つ目。ブラジル特有の、まあ労働裁判になりますが、顧問を雇う、弁護士による現場教育などを実施することで、将来的な経費を抑えるという意見もございました。

     以上をまとめますと、リスクを恐れることなく、他社が尻込みする中で積極策に出たことは、その市場では注目を集める存在であったと推測されます。また、自分達の不断の努力によって、何とかこの景気を乗り越えて行こうとする姿勢が、2016年の成功の秘訣だったのではないでしょうか。 すみません。

      このページは多分すごく見にくいと思うんですが、こちらは2016年の結果を受けた2017年の展望になります。色のついている部分が2017年良くなっているというところを示しているものになります。ブラジルの経済はまだまだ油断できない状況ではありますが、化学品部会の持つ市場自体は多少の回復傾向の見込みがあり、多くの企業で売上、利益ともに増加と回答しております。

     2017年の展望に対する理由になります。プラス要因の一つ目。日系企業ならではの商品以外の付加価値、すなわちサービスを提供することで、お客様の満足度を向上させ、他社への流出を防ぐ。二つ目。輸出の強化などで販売拡大を継続すること。三つ目。さらなるコスト削減を徹底するというのも多くの企業の意見となります。まあ、為すすべなく、ただただ耐えるしかなかった2015年や2016年に比べては明るい話題が増えているかと思います。

     ただし、当然ながら懸念事項もございます。市場によっては、下請けメーカーさんが倒産してしまっているのですぐには市場が回復しないとの意見もございます、また、中国や韓国など、廉価品が出回る中で、化学品ならではの当局認可や新商品の登録が遅いことから、対策を打てないという問題は依然として残っています。

     医薬品や化粧品などはANVISA、ブラジル国家衛生監督庁というところに申請が必要になりますが、申請期間が最低でも1年以上というところで、簡単には新商品が販売できません。また、農薬の登録審査などでは、日本では2年から3年で完了するものが、ブラジルでは6年から7年もかかってしまいます。せっかく特許を保有していても、ブラジルで販売するころにはジェネリック製品が発売されてしまい、商売としてのうまみが減ってしまいます。

     最後に総括になります。ブラジルの化学協会、通称ABIQUIM、こちらはブラジルにいる全化学メーカーが対象となっておりますが、2016年の速報が発表されておりまして、トータル生産量としてはプラス4.04%、トータル販売量は前年比でプラス3.92%と、非常にポジティブな1年だったと前向きなコメントを残しております。

     そんな中、日系企業は、こちらのアンケート結果が示す通り、2015年や2016年は売上、利益ともに減少と回答した企業が大半を占めておりますが、2017年は減少予測を立てている企業はかなり少なくなっているかと思います。2015年の景気後退に対して対策ができた企業とできなかった企業で、2016年の結果は大きく異なりますが、2017年は概ね明るい兆しがあると考えられます。ただし、まだまだ飛躍できるような段階ではないかと思います。

     日系企業がこのブラジルで飛躍する条件としては、毎回この場で言われていることだとは思うんですが、もっと自由度が高い、かつ安定した仕組みが必要となります。ブラジルコストの見直し、優遇されすぎている労働者の問題。政治が安定しなければ為替も安定しません。先程の繰り返しになりますが、各種手続きの迅速化は必須ではないでしょうか。この辺り、ゆっくりでも確実に前進した成果があることを化学品部会一同期待しております。

     以上、駆け足でございましたが、ご清聴ありがとうございます。この場を借りて、ご協力いただきました化学品部会の皆様、ブラジル商工会の皆様、厚く御礼を申し上げます。以上になります。

     

    司会

     鎌倉様どうもありがとうございます。若干不調に終わった2016年に対して、2017年は自動車、二輪、電気電子、建築関連で多少売上の伸びが期待されるということで、化学品企業の皆様の各社のご努力に加えまして、鎌倉部会長の明るいキャラと、ポジティブシンキングに大変心強く感じた次第でございます。ここで皆様、ご質問、コメント等ございましたら、挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。はい。では、鎌倉部会長、どうもありがとうございました。

     それでは続きまして、電気電子部会、千野部会長様、よろしくお願いいたします。

     

  • 電気電子部会     千野浩毅 部会長

     

                                               

     

     

                        

     皆さん、こんにちは。電気電子部会の千野でございます。よろしくお願いいたします。

     まず、電気電子部会の事業環境ということで、実はこのチャートをお見せするのは4回目になるんですけれども。電気電子部会、会員の皆様の商売の生業としていいますと、耐久消費財であったり、あるいは産業向けの機器であったり、あるいは公共投資の中でもこういった我々の機器が使われるというシチュエーションが非常に多い訳ですけれども、こういったところを生業にしている我々の業界に対して、まあここに四つ要因があるんですけれども、上からいきますと、レアル安。

     これは特に電気電子系の部品について言うと、ほとんど国内調達ができないことから、ほとんど部品の輸入に頼っている訳ですけれども、輸入するものはレアル安で極端に値段が上がってしまうということで、コストの圧迫。それに対して売値はそうそう簡単に上げられるものではないので、非常に経営が厳しくなる。

     それ以外の要因というのは、リセッションであったり、インフレ、高金利であったり、あるいは政局の混乱であったりと、この辺のところというのは需要の要因に効いてくる訳ですけれども、こういったものが一気に爆発したのが15年の夏であったということで、まあ15年の夏から1年半ぐらい非常に厳しい状況が続いてきたというのが電気電子部会の事業環境になります。下にコメントしてありますけれども、どの商売相手のところに行ってもどん底状態という非常に厳しい環境にあったということになります。次お願いします。

     主要な商品カテゴリーごとに、これはですね、アマゾナス州のマナウスというところで、年間でそれぞれのカテゴリー何台生産しているのかという実績を14年、15年、16年というふうにプロットしたものです。これらの商品というのは、もちろん輸入もできるんですけれども、製品として輸入もできるんですけれども、輸入をするととんでもない高い税金を払わなきゃいけないので、競争力がないわけで、しょうがないので皆マナウスという、ジャングルの中で一生懸命ものを作る訳なんですけれども、そうした、マナウスで作られた製品の生産台数の実績になります。

     一番ここで大きいのが携帯電話。これが大体年間で、14年で2000万台ぐらい作られた訳ですけれども、これが14年、15年、16年というふうに見ていただくと、例えば携帯電話の場合でいうと、これはスマホですね、14年から15年にかけて2割落ちました。それが今度、15年から16年にかけての落ち込みは4%。次に大きいのが液晶テレビ。これが大体1000万台ちょっとあるんですけれども、これもやはり14年から15年で26%ダウン。それが15年から16年でいうと10%ダウンということで、これは落ち方そのものは小さくなってきているというのがスマホ、液晶テレビといったところの特徴になります。

     一方で、右端の方にある電子レンジ、エアコン。この辺を見ていただくと、実は2カ年のダウンというのが、それぞれ、例えば電子レンジでいうと27%、21%、エアコンにいたっては、14年から15年はそれほど落ちなかったんですけれども、15年から16年にかけてはかなり激しい落ち込みになっているということで、まあカテゴリーによってですね、結構違いが出ています。

     一言で言うと、テレビなんかは非常に良い例なんですけれども、普及率95%ぐらいあるということで、まあ生活の中でも必需品に近いようなものになると思うんですけれども、そういったもの。あるいはスマホみたいに、何はなくてもまずスマホを買いたいという、お客様にとって非常にプライオリティの高いもの。こういったものに関して言うと、結構底打ち感が出てきた感じがする一方で、そんなにあわてて買わなくてもいいかな、あるいはもうちょっと我慢できるならしちゃおうかなというカテゴリーについて言うと、相変わらず厳しい状況が続いているというのが去年、年末ぐらいまでの状況になります。次お願いします。

     こうしたことも含めてですね、会員の皆様に、いつもやっているんですけれども、アンケートを取らせていただいた結果というのをここにまとめてあります。上段の方には、昨年の8月時点で16年をどう見るかというふうなアンケートをした時の結果が書いてあって、それに対して下段の二つはですね、今回16年が実際にどうであったかということと、17年をどう見るかということで回答いただいた結果になっています。

     ここで改善、維持、悪化というふうに三つに分けてあるんですけれども、改善というのはですね、販売額が前年比で10%以上伸びるというところを改善というふうにしています。維持というのは100%~109%。マイナスになるところは悪化というふうにカテゴライズして分けてみました。

     昨年の8月から、実際に16年締まってみて状況がどうであったかというところを見ていただくと、若干、改善すると思っていたのがそれほどでもなかったというところはあるんですけれども、あまり大きな変化はありません。これ全般的に、先程見ていただいた業界の状況から比べると、そんなに各社悪い状況にないように見えると思うんですけれども、これは後でも述べますけれども、まあ業界は非常に悪い中でも、各社色々な努力をされている結果、何とかビジネスを維持している、あるいは多少なりとも改善させているというふうな結果というのが結構出ています。

     16年から17年にかけてということなんですけれども、17年にかけてはですね、もちろん景気の底打ち感というのが出てきたということもありますし、それから今まで非常に厳しい経済環境の中で色んな企業努力をされてきたというところが一つ一つ実を結んでいるようなところというのもあるようで、そうした結果が出てくる年ということも含めて、17年は総じて非常にポジティブな展望をいだいておられるというのが全体の状況になっています。次お願いします。

     ここからは、会員の皆様からいただいた主要なコメントをまとめてございます。まず16年の回顧について。これ、ネガティブ、ポジティブ、それからニュートラルという形で三つに分けていますけれども、まずネガティブの方から行きますと、まあやはり需要が低迷していて、マーケット自体は非常に厳しいですというところ。それから、ラバ・ジャットの影響。それとやはり、特に取引先ですね、取引先の経営の困難によって、これは取引先が倒産してしまったり、あるいは資金難で中々取引がスムーズにできなかったりと、こういうふうな厳しさがある。

     それからあと、インフレですね。モノが売れない割にインフレでどんどんどんどん、特に労務費が上がっていくということで、コストが圧迫されてしまう。これで非常に厳しい状況になる。それと、あとは、国内の景気が悪い中で、これはいくつかの企業で、じゃあ海外に活路を求めようということで、輸出に力を入れていこうということで取り組まれている会社があったんですけど、そういう企業さんにとってみると、昨今レアルが戻っているという、レアル高になってきたというのがむしろ逆風になっていると、こういったコメントもございました。

     それとあと、ネガティブの最後に書いてあるのは、長期間にわたって税関のストライキが続きまして、これでもう部材が入ってこない、モノが作れない、売れないというような状況が続いたという、この辺がネガティブな方のコメントになっています。

     一方でポジティブな方ですけれども、まあ景気の底打ち感が出てきて、需要の下げ止まりが見られるようになってきている。あるいは為替が安定してきていて、結構先を見て色んな投資ができるようになっている。それと、この後に書いてあるのは各社の独自の企業努力というものになると思うんですけれども、高付加価値商品へのシフト。需要が限られている中でできるだけ付加価値の高いものを売っていくというふうなところへの努力。それから、競争力を強化して、限られた市場であってもそこでシェアを上げていく。

     それとあとは、残存者利益と書いてあるんですけれども、撤退する会社があればそこを取りに行くといったような努力。あるいは新規ビジネスの立ち上げ、拡大。この辺にはですね、今までやっていなかった領域に、企業買収なんかも含めて入っていくというような取り組みをされている会社も多数あります。

     あと、輸出の拡大。それから、コスト削減の努力によって採算性を維持していく、改善していくということですね。あと、まあ昨年あったオリンピック関連。これも、あまり一般の消費自体が盛り上がったという感じではないんですけれども、産業用の需要で一部特需があったということもあって、そういったところでのプラス要因というのが挙げられております。

     最後、ニュートラルのところでは、まあこういった状況の中で投資の厳選をし、経営体質の強化、これを進めていく。従業員の削減というのもかなり厳しい事ではあるんですけれども、こういうことも断行されているというふうなのが16年の回顧に関する主なコメントになっています。

     次に17年の展望についてですけれども、これも同じようにネガティブ、ポジティブ、ニュートラルという分け方をしています。まず、ネガティブな部分を見ますと、まあ底打ち感はあるものの、市場の環境、これは急速には改善しないだろうと。まだ時間がかかるだろうというふうに見ている会社が多いです。二つ目ですけど、特に公共投資、産業重要、この辺はですね、需要そのものが限られているので、かなり競争が激化していると。非常に条件が厳しくなっているというふうなところ。

     それと、あとは税金関連での悪化の懸念。政府も財源がなくなっている中で、増税、それから優遇措置の変更、こういったものがいくつかささやかれていたりする現状もございますので、まあこういったことに対して大きな懸念があるということです。

     それから、ラバ・ジャット。これは、先程どなたかのコメントにありましたけれども、現政権ですら完全にシロな訳ではないという中で、こういったことが懸念として挙げられております。

     それと、グローバルなボラティリティ。これはトランプ政権であったり、Brexitであったり、あるいは中国の動向によってかなり大きく売られるだろうということで、ブラジル国内だけでなくて、グローバルな要因で結構為替相場が大きく変わってしまったりだとか、そういったことへの懸念というのがあります。

     プラスの方ですけれども、底打ちが見えた中で、回復ということに関して言うと、これ以上はまず悪くならないだろうということと、ここから先は少しでも良くなるだろうということに対してはやはり大きな期待があるということです。それと、インフレ率が低下して、金利が低下してくると、やはりこれは一般消費者の購買力の回復というところに行くだろうということで、まあそこに対する期待があります。

     それと、高付加価値商品へのシフト。それから競争力強化等々。これは個別の企業努力を継続してやってきたことの結果が徐々に出てくるだろうという期待があります。あと、新規ビジネスの拡大。これも同様ですね、輸出の拡大。こういったそれぞれの努力をきちっと結果として出す年にするというふうな意思の表れだと思います。

     それとニュートラルな領域ですけれども、まあこういった中でも慎重な経営を志向する。ポスト・リセッションに向けて種蒔きをし、体制を構築するといったことをやっていく。それから、構造改革・経費削減努力、こういったものは維持、強化していかなければならないだろう。それから、資金管理・債権管理・在庫管理、こういったものは非常にボラティリティが高いので、これはぬかりなくやっていかなきゃいけないよねと。といったところが主要なコメントでございます。

     以上、まとめて、サマリーにしますと、ポイント三つ、プラス一つで四つあります。一つ目は、結構電気電子部会の中では、最初のアンケートの結果の改善、維持、悪化という中からも見て取れることなんですけれども、各社、リセッション突入の前から事業構造改革に取り組んできた、そういった会社が結構多くあります。また、どん底の経営環境の中でも業績を改善させている企業が多いということは、そういった努力が形になって表れているのかなということになります。

     一方で、景気回復、それから政治の安定、為替の安定、こういったものに大きく期待はするんですけど、まあそれにあまり頼るわけにもいかないので、そういった、ここから先も何が起こるか分からないよねという中での、そういった環境を意識して慎重な事業運営をしなきゃならないだろうということで、まあ慎重に進めるんだというのが二つ目のポイントです。

    三つ目ですけれども、この後景気の回復、経済の回復というものがあるだろうとしても、ただこれ、ボリュームが回復したのでビジネスが良くなるというよりは、むしろ既存の市場が回復するというよりは、色んなこれから市場のニーズが変化して高度化していく中で、その中で新しい事業機会や、新しい強みを育てるという、そういった努力を軸に据えてビジネスをやっていこうというふうな意図があるかと思います。

    最後にちょっとコメントしたんですけれども、実はこれ、アンケートの結果、12社答えていただいたんですけれども、うちの部会は25社ぐらいあるんですよね。なので、アンケート回答率は実は半分ぐらいでして、残りの会社の方がどうなっているかというのは実は定かではないところがあります。

    実を言えば、過去2年間で退会された会社というのもいくつかありますので、これ、電気電子全体としてこうかと言われるとちょっとそういうところではないんですけれども、アンケートいただいた結果を見る限りにおいては、各社さん、色んな努力をされながらこの難局を乗り切ろうとしているんだろうなということでございます。

     シンポジウムの副題「景気回復に向けて、いま為すべきことは?」ということで、これは特に企業側がやるべきことという観点でのまとめをしています。短期的な業績に左右されずに、長期的な視点で経営を判断していく。急激な回復を期待せずに、慎重な経営・投資判断をしていく。経営の基礎体力、これをしっかりと強化していく。リセッションの出口に向けての準備を今しっかりと進めるんだ。あるいは、これは特に日本の会社ですので、品質の良さ、あるいは新しい価値の提案、こういったところに活路を見出していく。

     こういった色んなことをやる中でも、ビジネスパートナー、この先誰と組んでいくのかということを慎重に見極めて、手を打っていく。それと、様々なスキームを活用し、組み合わせ、メリットを創造していく。こういったことをやっていく、等々が今やれるべきことであろうということです。

     最後になりますけれども、商工会議所、ブラジル政府、日本政府への要望ということで、まとめました。これも、以前から書いてあることとあまり変化はないようですけれども、まあ政治・経済・為替、それから最近特に治安が非常に悪くなってきていますので、治安も含めて健全化・安定化、こういったところへの努力をしてほしいなというのがまず1番目。

     それから新規事業、それから輸出拡大等々へのインセンティブ。このインセンティブというのも、その場しのぎのものではなくて、非常に長期的な視点に立ってコンシステンシーのあるようなものを是非お願いしたいというのが2点目。

     3点目として税制の改善。これは言わずもがななんですけれども、まあ税制の問題点だけ挙げると何時間でも議論できるよねというぐらいに、ここにいらっしゃっている方々はよくお分かりのことだと思います。それから、労働法。これについても同様かと思います。特に我々の部会の中では、現政権がやはりこれから何かこう具体的に一歩踏み出しそうだというふうに見えますので、そういったところには非常に大きい期待をしているということでございます。

     ビジネス・インフラの整備。それから、ブラジル・日本両国間での中長期的な関係の強化。ファイナンス、ファンディング、パートナーシップ、こういったものの支援・連携の促進。そういったものを含めてですね、一番上に戻りますけれども、今景気が悪くて、政治の混乱もあって、非常に悪いどん底の状況にあって、これが元に戻るんだよねということは期待するものの、じゃあ本当にブラジルというのが投資先として何の魅力があるんですかといったようなところが非常に重要なところだと思いますので。

     ポテンシャルが非常に高い国だというのは我々も皆認識しているところなんですけれども、ポテンシャルは高いにしても、本当に実現されている、あるいは実現されようとしている市場としての魅力というものがやはり非常に大事なんじゃないかなということで、それをここにいくつかポイントを挙げましたけれども、こういったことを是非是非改善していただければというふうなまとめになっております。以上です。

     

    司会

     千野部会長様、どうもありがとうございました。それでは、ご質問等ございましたら、挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。お話を伺って、2016年を振り返られると、昨年8月時点で予想したよりは改善が進まなかった。

     一方で2017年は緩やかながらも底打ち感と回復への兆しがみられるというお話であったかと思います。それから、各社様のご努力による強みの創出。そしてボリューム獲得と違って知恵を絞った戦略を取られているということが印象的だったかと思います。では、どうもありがとうございました。

     では続きまして、食品部会の秋元副部会長様、お願いいたします。

     

  • 食品部会     秋元壮介 副部会長

     

                                                   

     

     

     

                         

     皆様こんにちは。ただ今ご紹介に預かりました、キッコーマン・ブラジルの秋元と申します。通常は部会長であられます味の素さんの方から発表させていただくところですが、今回部会長ご不在のため、私の方から僭越ながら発表させていただきたく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

     発表の内容といたしましては、2016年度の業界動向、そして原材料動向、2017年度の展望という流れでご説明申し上げます。

     まず2016年度の業界動向ですが、先日食品部会が行われましたが、皆様共通して仰られていたのは、去年、一昨年は非常に厳しかったと。ただしこれからは少し兆しが見えるんじゃないかという意見が共通の認識です。ブラジル国内市場概況は、長引いた経済状況の悪化に底入れ感が出てきておりまして、回復の兆しが見え隠れしていると。

     昨年下期以降のスーパーマーケットの実質売上前年比も、継続して前年を上回り始めているという傾向もあり、消費者の購入意欲が回復してきているという部分が窺われるかと思います。この点は後ほど資料でお見せしたいと思います。

     また、食品・飲料・日用雑貨。重量、売上とも前年を割っているんですが、半年前より回復の傾向が見られ、前年比マイナス3.7%と、マイナスではありますものの回復傾向が出てきているのが窺われます。一方、購買データを分析すると、低価格指向、そして嗜好品への支出の抑制傾向が出てきている事が窺われます。

     それではカテゴリー別の業界動向ですが、食品部会非常に多種多様のカテゴリーがございますので、いくつか拾ってご紹介させていただきます。

     まず飲料部門ですが、発酵乳飲料。これはヤクルトさんを中心とした発酵乳飲料ですが、食品部会所属企業では数量ベースでは減るものの、健康系の砂糖を使用しないカロリー低減タイプの商品を開発したりと、新商品等の発売によってですね、金額ベースでは前年を上回る結果になったと言われております。

     また一方で、水に溶かして割って飲むタイプの粉末飲料タイプについて、こちらはブラジル市場全体が103%と微増傾向にあるところ、実は食品部会所属企業では重点的な広告活動や流通への販促施策を徹底的にやったことが功を奏しまして、市場伸長率を大きく上回る結果となったと伺っております。

     また、肉などに振りかけて調味する粉末調味料。こちらは市場全体が97%とダウントレンドのところ、味の素さんを中心に消費者キャンペーンや流通施策を行うことで、二桁増を達成したということで、我々食品部会会員企業がですね、市場全体をけん引しているという状況でございます。

     一方で、スープですが、粉末スープ市場になりますが、市場全体が大きく減っている中で、クッキングタイプの新商品が大幅に伸長し、こちらも食品部会が市場をけん引している状況です。

     つづいて、しょうゆでございます。市場全体は日本食の人気もあり、微増はしているんですが、現地メーカーによる低価格商品のシェアが広がり続けており、我々キッコーマンのような輸入商品については、現地製造メーカーとの価格差がかなり高く、厳しい状況が続いております。また懸念事項としまして、さらに、押し寄せる中華系のしょうゆメーカーの新入も見られ、我々キッコーマンとしても非常に気になる状況です。日本食および日本食のプロモーションを通じて、需要発掘を継続して行っていくことが必要であろうというふうに考えております。

     清酒部門ですが、いわゆるカイピリーニャのピンガをサケ、清酒に代えたサケピリーニャなどの需要が好調でして、特に食品部会所属企業では年間では金額ベースで105%伸長したということなんですが、いずれにしても日本食レストランでの消費が落ち込んでいるということで、景気回復を実感するレベルまでには至っていないというのが現状ということです。清酒のような嗜好品への買い控えが引き続き強い状況に思われます。

     続いてコーヒーです。こちらも後に触れますが、ロブスタ種というコーヒーのタイプがあるんですが、ロブスタ種の産地での干ばつにより原料価格が高騰し、製品価格が上昇。国内消費が伸び悩んでいる状況と伺っております。一方インスタントコーヒーは、世界的にインスタントコーヒー需要の伸びがあるということで、市場が伸長しております。

     即席めん市場です。即席めん市場全体が数量ベースで微減傾向の中、食品部会所属企業ではリニューアルなどを徹底し、金額ベースでは微増に至ったと伺っております。

     続いて、畜肉・畜肉加工品です。特に鶏肉についてですが、日本における在庫過多の影響から、ブラジルから日本への鶏肉の輸出が昨年対比で大幅に減少しているという状況ということです。一方で、食品部会所属企業で、2015年12月に日本向けの牛肉加熱加工品の輸出が許可されたものの、その施設の認定に、ブラジルの認定にですね、約1年を要してしまったということで、ブラジルにおける輸出承認への道のりの難しさが露呈いたしました。

     また、加工食品で、唐揚げや餃子といった日本的な加工食品をブラジル国内で生産し、販売、特にBtoBですけれども、行うということでスタートし、好評を博しているということでございます。

     次にチョコレート市場です。市場全体では、数量ベースで2015年から続いていた減少傾向が2016年度に歯止めがかかり、2016年度はようやく横ばいに至ったということです。金額ベースでは、インフレ、原料等の高騰により値上げが進んでおり、微増傾向です。

     一方、その傾向の業務用市場への影響度は非常に少ないということで、食品部会所属企業では数量ベースで微増、金額ベースで二桁の伸びに着地したということです。また、2016年以降ですね、砂糖をはじめとする主原料の高騰から、コスト上昇がまぬがれない状況という問題もあり、市場ニーズに合わせた商品開発が必要になって来るということです。

     それから、香料部門です。食品部会所属企業では主力の菓子カテゴリー、ガムやキャンディー、それから飲料カテゴリー、炭酸飲料や果汁飲料など用の香料が既存市場では非常に低迷ということで、何とか新規開拓で補って、全体として前年並みに着地をさせているという状況です。

     また、食品添加物についても同様で、新規顧客の獲得があるものの、景気悪化の影響で既存顧客の販売低迷や、処方数量の変更、つまりコスト削減のための、添加量を減らすなどの対応が出ているということで、売上としては横ばいに着地しております。

     次にアセロラ製品です。アセロラ主要産地でありますサンフランシスコ中流域は降雨量減少により原料収穫量が非常に少ない状況と伺っております。厳しい干ばつによりアセロラ事業を断念する企業も出てきているということで、非常に厳しい状況です。

     一方で、天然ビタミンCへのニーズが高まっているということで、ビタミンCがより多く含まれる緑化アセロラというタイプの商品に注目が集まり、販売が堅調に推移しているということです。

     次に種苗部門ですけれども、2016年末にですね、ドイツの製薬大手、バイオメジャーのバイエル社が米国のモンサント社を買収したということで、世界的なM&Aが進んでいるということです。ブラジル種子業界では、種子需要は安定するものの、天候不順による影響で販売は減少傾向。

     次に外食産業です。こちらも、長引く経済不況の中、高級レストランを中心に客数・売上とも減少傾向ということです。一方で、価格的に値ごろ感がある業態、例えばポルキロやRodizio、そして日本企業ではゼンショーさんなど、価格的に値ごろ感のある業態は伸長し、食品部会所属企業では前年比を大きく伸ばしております。

     それから、輸出部門ですが、コーヒーやオレンジ果汁はともに天候不順による供給減のため非常に厳しい状況と伺っております。鶏肉原料は年初から日本の在庫が増え続けているため、日本在庫過多により価格低迷が続いております。

     次に、原料の動向について少し触れさせていただきます。先程少し触れましたが、ご覧のグラフは砂糖相場の推移になります。砂糖相場は2012年以降サトウキビの生産が安定して、落ち着いておりましたが、2015年以降ご覧の通り一気に上がっております。グラフは粗糖キロ当たりのレアル単価の推移ですが、2015年9月以降、ご覧の通りニューヨーク相場と比較しても非常に高い水準で推移しております。これにより、関連食品製造メーカーの収益を圧迫していると伺っております。

     次に乳相場です。こちらも2016年は生乳価格の上昇で国内相場が高騰しました。グラフは全粉乳キロ当たりのレアル単価ですが、レアル安の影響で、レアル建て価格の上昇が顕著に見てとれます。

     続いてコーヒーです。こちらも先程少し触れさせていただきましたが、2016年下期はブラジル国内相場が右肩上がりに推移しているのが見て取れます。ニューヨーク市場との価格乖離があり、レアル安が進んだことに加え、国内需要に対する供給不足によるものと言われております。特に、先程触れました、ロブスタ種が不足により、大幅な減産。一方で豊作だったアラビカ種も農家の売り渋りが続いたということで、国内需要がひっ迫し、価格が上昇いたしました。

     次に鶏肉相場です。こちらの紫色のグラフになりますけれども、輸出の好調な手羽の価格が高騰を続けております。昨年末に過去最高に高い水準まで到達しました。一方で骨付きもも肉は、緑色のグラフになりますけれども、輸出減から国内での余剰感から相場が下落しております。

     続きまして、スーパーマーケットの売上になります。こちらは電化製品や洋服、それから食品、日用雑貨全て含んだデータになります。スーパーマーケット売上前年比、名目売上前年比になります。ご覧の通り、累計で約110%前後で推移をしているのが見ていただけます。

     実はこの名目売上前年比というのはですね、インフレ値上がり分が含まれてしまっておりますので、この名目売上率からインフレ値上がり分の率を引いた実質売上前年比がこちらのグラフになってございます。赤でクローズアップしておりますけども、つまり値上がり分を差し引いてみましても、2016年下期以降ですね、各月1%~5%の微増が続いておりまして、一般消費者における景気の回復が見ていただけるかと思います。

     次に、食品、飲料、日用雑貨の購入重量前年比のデータになります。ご覧の通りですね、年間で見ますと各月前年比でマイナス3%~マイナス5%の推移を続けておりまして、消費者の買い控えは引き続き続いているということが推察されます。

     このデータを、ブラジル全土と地域別で割った表になっております。各エリアでマイナスの数字が出ておりますけれども、数量ベースではマイナスになっておりますが、その下の赤の四角と丸で囲っている部分ですね、こちらが売上高前年比実質金額ベースになっておりますけども、こちらを見ていただきますと、マイナス3.7%となっております。これが半年前は実はマイナス4%でしたので、快方傾向にあり、例えばエリア1、エリア2、エリア5、エリア4といったあたりは半年前と比較しますと非常に改善が見られるということで、ブラジル全土でもですね、地域ごとには快方の傾向が見られるということが言えると思います。

     こちらはカテゴリー別に見たデータになります。ご覧の通り、ほぼすべてのカテゴリーで購入重量前年比が低下しておりますが、半年前と比較してみますと、アルコール飲料やお菓子などは快方に転じており、少しずつ回復の兆しが見え隠れしております。

     コーヒー・牛乳・甘味料サブカテゴリー前年比ですが、こちらも、砂糖部門、コーヒー部門、牛乳部門など増加傾向にあり、砂糖はこれは値上がりの影響もあり前年比で30.8%と大きく伸びております。お手元の資料は私ちょっと間違えまして、コーヒーという文字を書かせていただいておりますが、このコーヒーというところは牛乳になります。申し訳ありませんがご訂正をお願いします。

     小麦粉・調味料系サブカテゴリーです。食用油も前年比で5.3%増。一方でパン、即席めん、魚缶詰も前年比でマイナスということで減少傾向が見られます。

     また、肉・乳加工品系のサブカテゴリーデータになります。こちら、ヨーグルト、アイス、冷凍牛肉、発酵乳飲料、冷凍ピザ、デザートなどが大きく減少しており、特に嗜好品を中心に非常に厳しい状況が続いているのが見ていただけるかと思います。

     最後に、テーマでございます2017年度の展望、「景気回復に向けて、いま為すべきことは?」について、食品部会で意見をまとめてございます。

     経済状況については、楽観的な予想が徐々に増えてきておりまして、2017年度の実質GDP成長見込みも3年ぶりにプラスに転じるという見込みも今日何度か発表があったかと思います。食品部会としては、これらの快方のタイミングをじっくり見極めながら、消費者の動向や社会的変化を見据えた商品開発と市場開拓を進めていきたいと考えております。また、一部の会員企業様のご意見では、チリやペルー、コロンビアといったブラジル以外の南米諸国で売上をカバーしながら、ブラジルと両輪で顧客開拓を進めていくということに注力する企業が出てきております。

     また、各会員企業、進出の度合いにそれぞれ違いがありますので、何とも言い難いですが、景気回復時の波にですね、乗れるように、そしてその波に乗り遅れないように、今のうちから事業基盤の強化、そして新規事業の種まきなど、現段階からしっかり進めていくこと。そしてこのブラジルで、様々な局面で同じような課題・問題を抱えている会員企業様がいらっしゃいますので、情報共有を密に行いまして、より効率的にビジネスを進められるように協力体制を築いていくことが肝要かと存じます。

     簡単ではございますが、食品部会からの発表は以上になります。ご清聴ありがとうございました。

     

    司会

     秋元様、どうもありがとうございました。ご質問等ございませんでしょうか。ちょっと後半になって皆様お疲れかと思うんですが、もしご質問等あれば是非お願いいたします。特にございませんか。

     ではちょっと私から、個人的な興味で、今2017年の展望で消費者の動向や社会的変化を見据えた商品開発・市場開拓というお話ございましたけれども、もし差し支えなければ具体的な事例とか、どんな戦略がおありなのかというのをもしお話しいただける部分があるのであれば、お願いいたします。

     

    秋元副部会長

     はい。ちょっと食品部会の各企業様のご意見は、私の方からは申し上げられないので、我々キッコーマンとしての意見になってしまうんですが、我々キッコーマンは南米全体を担当しておりまして、他のメルコスール圏ですとか、太平洋同盟のエリア、それぞれ市場を見て回ってみますと、やはりアメリカの影響を非常に受けているエリアと、それからメルコスールのようにブラジルを中心に自分たちの文化が根付いているところ、そこで嗜好がだいぶ違うことが分かっております。

     なので、我々は特に軸足をブラジルに置くのであれば、ブラジル向けの、ブラジル人の人たちの嗜好に合った、あるいは食生活の嗜好に合った商品開発、あるいは味の嗜好に合ったもの、そういうものを開発していく必要が重要なのではないかというふうに考えております。

    司会

     ありがとうございます。ご質問ございませんでしょうか。ちょっと時間が余り気味で進んでおりますので、もしあればお願いします。

     元々食品業界さんは比較的景気の下振れに対して耐性がおありな方かなというふうには理解しておりますけれども、それでも景気の底入れとか、回復に向けて、先取りする形で、業界平均を超えるような伸長を見せていらっしゃる分野がおありで、一方でご苦労されている分野もまだおありだというふうに理解いたしました。どうもありがとうございました。

     それでは、続きまして、運輸サービス部会、細谷部会長様、お願いいたします。

     

  • 運輸サービス部会     細谷浩司 部会長

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     こんにちは。私、ここに数回立つんですけど、今回皆さんの顔が一番暗いような気もしますけど、時間的なものなのか。運輸サービス部会、部会長の細谷です。日本通運から来ています。よろしくお願いします。次のページ行きましょうか。

     我々、こういった、物流、海運、航空貨物、航空旅客、旅行、ホテル、通信、ITというふうに多岐にわたっていますので、その分野ごとに1ページずつプレゼンを作っておりまして、各々16年の回顧、17年の展望ということで説明していきましょう。

     まずは、物流業界に入ります。先程電子部品さんの話でもありましたけど、去年8月に待遇改善を目的とする税関ストライキが入りました。税務調査官というか、税金関係全箇所なんですが、ブラジル全土において開始されまして、かなり皆さんの業務にも支障が発生したことと思います。あとは、これがすごい良いニュースで、やっとブラジルも世界基準に近付いてきたかなというネタなんですけど、世界基準に則した、農務省による木材規制強化というのが2月に開始されまして、海運、航空貨物両方とも農務省検査官が通関前後に、木材で梱包しているやつの検査を実施することになりました。

      写真が出ているんですが、木材、パレットなんですが、あそこにスタンプがありますけど、あれがない貨物というか、あの刻印の確認という作業が入りました。画期的なことだと思います。次に、オリンピック、もうすでに古い話になりますけど、オリンピックの時に、事前に、物流がギブアップというか、一杯一杯になるのかなと思いましたが、リオの空港とか港の混雑の事前回避ということで、サンパウロなりその周辺の港・空港に荷物を逃がしていただきまして、物流的には大きな影響は出ておりませんでした。ありがとうございます。

     次に、その下の段の17年の展望に入りますが、先程言いました、ブラジル全土で行われた税関ストライキは、1月19日だったかな、収束しております。ただ今後も、物流に大きな影響を与える、税関、農務省、および港湾関係のストライキについては、今後も大きな懸念材料となると思っております。

     ちょっと引越の話になりますが、引越の荷動きの面から見る限りでは、日本人駐在員は確実に減少しているのかなというふうに私ども推測しております。ちょっとこの下の図を見ていただけますか。これはですね、引越の日本発の船便の件数データなんですよ。これで駐在員の移動先の動きをちょっと検討してみようということで、サンプル数が年間19000から20000件のサンプルです。

     上から一番長いグラフになりますけど、南アジア・オセアニア向けはまあ落ち着いた傾向かな、過去3年の動きを見ていると。東アジアは急激にやっぱり減少しております。まあ中国が入っていますので。欧州は波がありますが、落ち着いた傾向。南米向け、ここですね、南米向けはというと、やっぱり減少気味です。下の二つが中米、北米ですか、増加傾向にあるというふうに結果が出ております。まあ、現地化が図られているのか、それとも単に駐在員を減らしているのか、色々企業様で理由がおありでしょうけど、まずこんな結果です。

     次、海運業界に入ります。まず、コンテナ船の話をしましょう。コンテナ船は供給スペースが半分近くに減らした関係で、運賃レベルは改善しております。まあ、適正水準近くにまで戻ったという話です。このコンテナ船の関係で、2015年に色んな会社がくっついたり離れたりしたんですけど、2016年もかなり進みまして、かつて17社ありましたコンテナ主要船社が現在では10社にまで絞られております。ちなみに、コンテナ船社でいうと、邦船3社と言われるMOLさん、日本郵船さん、川崎汽船さんも2018年にコンテナ関係はくっつくことに決まりましたので。

     それで、2017年のコンテナの展望なんですが、先程言った、競争船社は減っているものの、なんと2015年以前に、景気のいいころですね、発注した大型コンテナの竣工が今年多く竣工されます。ということで、マーケットについては予断を許さないというのが大方の見方です。ちょっとタイミング悪いですよね。

     次にもう一回黄色い方にいきまして、完成車、自動車船ですね、その輸送に関してなんですが、2016年は原油をはじめとした資源安で、資源国、例えば中東、アフリカ、南米の購買力が下がり、これらの国向けが落ち込んでおります。

     ブラジルについては従来のアルゼンチン向けだけでなくて、他の南米諸国やメキシコ向け輸出が増えて、15年対比で25%の増量となっております。完成車の17年の輸送なんですが、ブラジルについては輸出車台数はさらに伸び、輸入車台数はさらに減るのではないかというふうな予想を立てております。

     次、ドライバルクの説明をしたいんですが、ドライバルクというのは、ばら積み船ですね、船の腹の中に入れる、コンテナ輸送じゃないやつなんですが、これは中国の輸入需要増、鉄鉱石とか原料炭により市況は若干回復を見せました。

     しかし、中国以外の需要の鈍さから、引き続き厳しい市況が続いているようです。17年の展望については、やはり中国の市況のけん引力には懸念がありまして、例えば国内景気対策の脆弱さとか、国内鋼材、中国のですね、中国向けの鋼材輸出に対する保護主義的措置が強められる傾向があり、ブラジルからの鉄鉱石の輸入、輸出の伸びも比較的穏やかになるのではないかというふうに見ております。次のページお願いします。

     航空貨物です。主要3港というのがありまして、我々日系社会の工場さんが存在しているマナウス、あとサンパウロにあるグアルーリョス空港、あとサンパウロにある貨物専用空港であるビラコポス、これを主要3港として名付けているんですが、これの比較をしております。この数字を使っております。

     輸入は景気後退の深刻化により、部品などの原材料を含む品物の輸入が大きく落ち込んでおりまして、対前年同期で6.9%のマイナスという数字が出ております。輸出は前年同期比で3.9%の増です、これは。この増の理由は、生鮮品、あと自動車部材関係、あとは飛行機関連の部材の輸出の増加というふうに推測されています。これもあまり詳しい数字が出ていないので、各飛行機の貨物部門に聞いたレポートでございます。

     17年の展望としましては、関係機関によれば本年は、輸出貿易額では昨年比で7.2%増が見込まれておりまして、航空輸出についても増加傾向が今年も続くようです。また、エティハド航空が3月でブラジル路線から撤退します。それによりまして、2016年より色んな航空会社が撤退をもう行っておりまして、貨物輸送のスペース不足による貨物運賃の値上げ傾向が出てくるのかなというふうに懸念をしております。

     下の表は主要3空港の貨物取扱数量と為替変動の相関性を表しています。普通、レアル高、レアル安によって輸出が増えたり、輸入が増えたり、バランスを取って動くんですが、作ってみて分かったんですけど、あまりバランス、今回は取れていません。もうレアルの高い安いだけでものが動かないようなこの国の状況、なってきているのかなというふうに思っております。物流、我々、この運送の関係では、何としても今後の輸出入の取扱数量の伸長に期待したいところです。次のページお願いします

     航空旅客。これはですね、回顧としましては、国内線は旅客と座席がほぼ同規模で減少しております。近年にない前年割れの実績となっております。国際線については、ブラジルの航空会社の計しか出ていないんですけど、利用率は2.3ポイント上昇しているんですが、全体では需要調整による規模減が続いています。多くの会社が利用率低迷の打開策として、廉価な運賃での営業を展開、安売り競争でしょうね、したため、利用数の減少以上に収益は悪化しているとのことです。

     次、展望いきます。ここら辺から皆さんに関係するかもしれませんが、国内線はLATAM航空やGOL航空の業績悪化に伴って、両社とも低需要路線を中心に運休・減便する可能性が高いというふうに言われております。国際線につきましては、リオ・オリンピック以降に実施されたサンパウロ、リオ関係路線や地方都市発着路線の縮小により、渡航者数は減少もしくは横ばいになると推測されております。

     下の特記事項をちょっと読み上げますが、3月26日からエティハド航空が路線から撤退すると言いましたけど、同じ日、3月26日からエミレーツ航空が大型機を投入します。A380という、今言われているエアバスの一番大きいやつ、それがサンパウロ=ドバイ=成田線に大型機材導入ということで、3月26日より始まります。

     日本政府が目標に掲げる訪日外国者数の拡大に関連して、航空業界としては、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、ブラジルからの訪日旅客数をいかに拡大させるか、これが課題となっていますが、そのためにはスポーツや経済だけでなくて、文化・教育・芸術などの様々な分野でのブラジル=日本間の交流の活発化と相互理解が必要であるというふうに思われます。

     旅行・ホテル業界なんですが、上の2016年の回顧。一言で言いますと、オリンピック・パラリンピックが開催されたにも関わらず、国内線航空券、国際線航空券、国内ホテル、すべての分野での売上が10%前後減少しております。この数字に不況による影響が大きく表れているのかなというふうな業界のお話でございます。

     展望いきましょう。会社は経費削減のため出張を減らす傾向にあるようです。また個人さんは、失業などへの不安から個人旅行、特に海外旅行を控える傾向にございます。昨年はオリンピックという一大イベントがあったのですが、今年は何もイベント、大きなものがないということ。

     また、エティハド航空が3月をもってサンパウロ線を廃止することで、航空運賃が全体的にまた上がってしまうのかなという懸念がございます。さらに、昨今の治安悪化、黄熱病の流行などにより、日本からブラジルへ来る観光客が減っていくかなという懸念もございます。このような理由から、旅行業界にとって2016年以上に厳しい年になるかなということが考えられております。

     一方でホテル業界は、2017年は効率・創造性を優先した少額投資の期待から、緩やかな市場の回復を見込んでおります

     トピックスがあるんですが、二つあります。今年の3月14日より、一人2個手荷物OKとか、3個OKとかありましたけど、受託貨物を航空会社が有料で預かるということができるようになります。受託貨物の有料化を採用するかどうかというのは各航空会社の裁量にゆだねられていますので、3月14日以降飛行機に乗られる方は事前のご確認をお願いします。

     もう一つ、これは良い知らせなんですが、皆さん赴任の際に黄熱病のイエローカードですか、黄熱病の予防注射を打ってイエローカードを持っていると思うんですが、これの有効期間が10年間だったのが、生涯有効というふうに変更になりました。すでにお持ちの、有効期間が経過した予防接種証明書も有効ですので、生涯大切に保管して、パスポートと一緒にお持ちになって、色んな国に行かれる時にお持ちになっていただいた方が良いと思います。

     次、がらっと変わりまして通信業界の話です。通信業界でも色々ございまして、このページは携帯電話、モバイル関係のお話です。16年の回顧としては、全体的な契約者数は、長引く景気低迷の影響に加え、キャリア間の接続料金引下げに伴って、複数SIMを持たれていた人が少なくなりまして、前年より約1400万件減少しております。今はやりというか伸びてきている4Gの契約数に関しては、この左の表ですが、2Gと3Gから4Gへの移行が順調に進んでおりまして、前年から約3500万件増加。ブラジル市場の25%を占めました。これは伸びていくと思います。

     17年の展望としましては、これは右の図を見てほしいんですけど、折れ線グラフ、4Gへの移行はさらに加速して、年内に3G、3Gが青い線ですから、3Gの契約数を超える見通しです。あと、前回も話題にしたんですが、会社更生手続きをしておりますOi社については、債権者との交渉が継続中で、具体的な対処については2018年にずれ込む模様です。

     次、テレコム・データセンターのからみです。インターネットユーザー数、ここは世界第4位で、1億3900万ユーザーです。人口が多いので、日本より多いユーザー数です。ブロードバンドのマーケットシェア。NETが32%、Vivoが28%、OI社が24%。若干昨年と比べるとOi社が減ってきているような感じです。ブロードバンドのアクセス数も毎年増えておりまして、2672万回。あとインターネットの普及率は約66%で世界第64位。これも伸びてくる傾向です。

     展望としましては、個人のインターネットの利用多角化に加え、ビジネスにおけるインターネット経由でのシステム利用が増加するなど、引き続き利用者の増加が見込まれます。大都市中心部以外、郊外の工業団地とかですが、ここでの高速化、安定化、低価格化が求められています。ハイスピード回線の提供が継続的に進むことが見込まれます。しかし、個人の動画サービスの利用や、企業のサービス型システム利用の大容量データ通信サービスの提供が進むことで、回線の安定性のさらなる低下が懸念材料として考えられます。

     次、IT業界が最後になります。ハード、ソフト、サービス、インフラ関係です。システムのサービス化に伴い、サーバーやソフトウェアを一般企業が保有する形態ではなく、ベンダーが一元的に提供する傾向になってきております。

     MicrosoftによるWindows10への乗り換え、というか無料アップデートも対応が終了しております。またWindows Server 2016が販売開始され、ライセンス形態が大きく変更されています。ライセンス携帯の変更というのは、今までプロセッサーかなにかの回数で契約していたのが、コアと言われる、今一つのサーバーに色んな頭脳が入っていますので、性能によって課金されるという契約が、金額が上がるというシステムに変わっていくそうです。

     17年の展望としましては、Windows7と8.1と10を混在利用する企業が増加し、ソフトウェア導入時において対応確認事項が増加する見込みです。コスト削減の目的で、サービス利用によるシステム更改の需要が高まる見こみというふうに仰っています。またクラウドサービス、マーケットは成長を続けておりまして、2012年、USドルで217ミリオンあったものが、17年にはUSドルの1.1ビリオンに達することが予想されます。さらに多くの企業でクラウドサービスの導入が進むというふうに見ております。

     最後に来ました。この副題の、「景気回復に向けて、いま為すべきことは?」ということで、我々運輸サービス部会、色んな意見が出されまして、それをまとめたのがこのコメントでございます。 最低限の機能を残した組織を維持して、品質・キャッシュフローの悪化を防ぎ、景気回復を待つ。労働法改正、年金制度改革案の採用に期待する。モバイルを活用した新たな商品やサービスなどの開発による新市場の創出を行っていく。

     あとは、魅力的な商品を創出して需要喚起を行っていく。次は旅行の方ですね。ブラジルへの旅行者呼び込みのハードルとなっています、治安の安定化、ビザの簡略化要求を継続し行っていきましょうと。あと、国際法にならって標準化を進めるように、強くこのブラジル政府に促していきましょうということが出ました。

     今話した内容は、先程皆さんの発表の中にも同じようなものが出ていたんですが、決して我々の業界独自の内容ではなくて、色んな場面、色んな業種さんに通じるところがある方向性であると思っております。

     これをもって、運輸サービス部会の説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

    司会

     細谷さん、どうもありがとうございました。ご質問等ございましたらお願いいたします。よろしくお願いします。

    質問者

     スターツピタットハウスの森口と申しまして、駐在員様の住宅の斡旋を行っております。先程の資料によりますと、南米においては今年も駐在員の流入の減少が見られるというお話でしたが、実際に御社の引越の状況から勘案しますと、サンパウロにおける駐在員様の増減の傾向はどの程度とお考えでしょうか。よろしければお教え下さい。

     

    細谷部会長

     2014年のワールドカップがございましたよね。あれが終わった辺りから、こちらからの輸出、帰る人ですね、帰る人の数の方が入る人よりも多くなってきているんですよ。そして2015年、2016年と、大体数字ばーっと見てみると、帰る人が10、入って来る人が8.5ぐらいの比率で来ています。

     今2019年の引越の、オーダーというんですかね、受付とかを見ていると、普通受付あった時に、帰る人があれば来る人の情報もあるですけど、10対9ぐらいですかね、という比率です。皆様も送別会の時に、後任者いないよという話があると思うんですが、そんな比率だと思います。以上でよろしいですか。

     

    司会

     はい、他にご質問ございますでしょうか。

    細谷部会長

     確かに、8.5から9ぐらいに変わっているので、景気は良くなっていくはずだと思います。

    司会

     ありがとうございます。よろしいでしょうか。今の話、海運は引き続き世界的な需給との兼ね合いでやや厳しい。それから航空貨物は輸出増もあるので、多少上向き。航空旅客、旅行、ホテルはオリンピックの反動で利用率が若干低下と。全体観としてはやや厳しいけれども、景気回復に向けて備えると、こういうお立場、こんなような総括でよろしかったでしょうか。どうもありがとうございました。

     続きまして、建設不動産部会、奥地部会長様、お願いします。

     

  • 建設不動産部会     奥地正敏 部会長

     

                                                 

     

                          

     皆さん、こんにちは。今年から部会長を引き継いでおります、戸田建設の奥地と申します。本日はよろしくお願いいたします。

     それではまず、今日の発表内容でございます。まず、建設不動産部会として2016年の回顧と17年の展望ということで、まずは建設市場、そして不動産市場の現状をご説明いたします。それに基づいて、部会の皆さんのご意見、あるいはその動向ですね、その辺を説明をさせていただきます。

     あと、本日の趣旨とちょっと異なりますけれども、弊社が今ジャパン・ハウスの施工を承っておりまして、今年の2月末に完成の予定です。この辺の、建築としての魅力ですね、ジャパン・ハウスの建築としての魅力を一部ご紹介させていただければというふうに思っていますので、よろしくお願いいたします。

     それでは、まず最初に建設市場の現状ということで、これはGDPの成長率、あるいはこの失業率、そして建設コストの数字の面から見ていこうと思います。

     このグラフは実質GDP成長率ということで、グレーが建設業のGDPの変化。黄色が全体の変動ということになります。どちらもやはり2014年を境にして下落傾向にありまして、全体のGDPとしましては、最新の数字で去年でマイナス4.3という数字が出てきております。これに関して、特に建設業の特徴としましては、悪い時により悪くなるというような傾向がありまして、2014年以降ですね、一般のGDPよりもさらに悪い数字を示しているということですね。

     ですが、好調な時にはですね、経済好調の時には比較的伸びがいいんですけども、まあ悪くなるとやはり一般より悪くなってですね、より回復が遅れるというのがこの業界の、何と言いますか、流れかなというふうに感じております。

     続きまして、これは失業率ですね。これは、去年の暮れに発表がありまして、全体の失業率が12%ということで、ブラジル全土の失業者数は1230万人に達しているということになっています。この中でもやはり建設業界というのは、まあワースト1位の、失業率は14.5%という数字になっております。これを裏付ける数字として、倒産した建設会社ですね、特に昨年は多かったんですけれども、1300社以上の会社がですね、倒産をしているというような現状があります。

     次にこの、建設コストの推移ということで、2007年から昨年までの10年間の推移を表しております。この棒グラフは平米単価ですね。平米の建設コスト。このオレンジが建設コストの上昇率を表しております。このグレーが一般の物価上昇率、まあインフレ率ですね。これを表していると。ということで、やはり経済が良い時はですね、建設コストもより上がっているんですけれども。まずは建設コストですね。10年間で約1.8倍になっているということで、これはインフレ率とほぼ一緒の数字ということでございます。

     コストの変動に関しましては、経済が良い時はより大きな上昇率を示しているんでございますけれども、特に経済が悪くなると急激な市場の冷え込みがありまして、まあ価格の抑制が起こって来るということですね。コストは上がっているんだけれども、抑制が効いているということになっているということでございます。

     これは当社のデータなんですけども、建設コストの内訳の平均でございます。大体建設コストとしましては、人件費、資材、材料ですね、それと一般管理費とレンタル費ということに分けられますけども、特徴的なのは、昨年、人件費が半分を超えているということですね。56%という数字になっています。これは、一般的な日本の数字でいきますと、大体人件費は3分の1程度なんですけども、やはりブラジルの人件費の高さということで、こういう比率になっているということですね。

     これが人件費と資材費の変動率ということで、これ2012年を境にですね、従来は資材費の方が、鉄骨とコンクリートですね、このコストの方が大きかったんですけども、2012年を境に人件費の方がどんどん増大をしているという状況になっているということですね。

     これは、2012年から昨年までの4年間でどれぐらいコストがアップしたかということで、資材費、これは12.4%のアップ。これはインフレ率よりちょっと低い数字ですけれども。それに対して人件費ですね。これが41.3%も上昇していると、4年間で、ということでございまして、全体では、建設コストで4年間で27.8%の上昇になっているということでございます。

     一般に建設コストとして、まあメーカーのお客様が工場を建設する時のコストとして、これは当然為替の条件もありますけども、まあざっくり言いまして、日本で工場を建てる場合を100としますと、大体東南アジアの場合は70~75というぐらいの数字になります。

      ところがブラジルの場合は、90~95ということで、まあ場合によっては日本とあまり変わらないコストになってしまうという。大きな原因はこの人件費とですね、あとは税率の問題ですね。大きな要因があるということでございます。

     これは当然ブラジルコストとして、まあここにおられる皆さんは当然ご理解していただけると思うんですけども、これが日本から初めて進出するお客さんに中々説明するのが難しくてですね、我々見積もりを持っていきますとですね、必ず言われるのが「戸田さんえらく高いね」というようなご意見をいただきまして、中国の工場だったら半分でできるよというようなお話をされるんですけども、これは決してうちの見積もりが高い訳じゃなくて、こういう要因があると。まあ皆さんご理解いただけるかというふうに思っております。

     次に、不動産市場の現状ということでございます。これは不動産の、青が販売ですね。このオレンジが賃貸価格ということになりますけども、全国的に見ますと、賃貸価格の上昇は2014年でストップしているような状況でございます。販売価格に関してはやはり、頭打ちになっているというような状況ですね。

     地区別に見ますと、まあ大都市のサンパウロとリオですけども、サンパウロでは賃貸価格が去年ぐらいから幾分か下がっているような状況ですね。リオに関しましては、もう去年から下降傾向が続いているということで、まあ一部オリンピックの部分的な需要というのはあったんでしょうけども、年間を通しますと去年からもう下降傾向にあるというような状況で、中々不動産に関しても芳しくないような状況です。

     あと、これは工業用地の価格。サンパウロの周辺の価格でございますけども、大体2年前に比べて約20%ダウンしているような状況ですね。レンタル工場の賃料にしても、やはり10%ほどダウンしているということで、新たに工場を作られるお客さんにとっては、まあ良い条件になっているということが言えるかと思います。

     3番目として、部会内の動向ということで、まあ経済についての各社の意見と、それと政府への課題、お願いしたい事ですよね。それと部会様の業績。それと回顧と展望ということで進めてみたいと思います。

     まずは、これは部会員のアンケート調査でございます。今後どうなるかということでございますけども、多いのはですね、変わらないということですね。約47%ですね。これは、今年は去年と変わらない状況であろうという回答でございます。それに対して、良くなるというのが大体3分の1ぐらいですか、これは経済政策等でですね、良くなっていくんじゃないかということですね。で、まだまだ厳しい状況が続くんじゃないかというのがこのぐらいの部分ということで、中々、今年も厳しい認識をされておるということでございます。

     次に、政府に期待したいことということですけども、大きく集約して4つですね。まずは、対外的な信用を回復することということですね。それと、経済政策を打ち出してほしいということで、特に建設に関係するのがPPI、あるいはMCMVですね。この辺を強力に進めてほしいということと、制度改革ですね。これは年金、労働法、あるいは税制ですね。この辺の改革を進めていってほしいと。あるいは、先程のブラジルコストですね。これは税金と人件費になりますけども。そのほかにも、インフラの不備とか、教育の不備、あるいは高金利ですね、この辺を是正をお願いしたいということが挙げられています。

     次に、これは部会員様のですね、業績の推移ということで、2015年と2016年の実績と、あとは2017年の期待値ですね、どれぐらいいくかという数値を表したものでございます。大体右肩下がりになっているというのが現状ですけども、特にプレハブ業界様ですね、これはオリンピックの景気が良かった時の反動でかなり去年は落ち込んだというような事情があります。あと、例外なのは特殊技術ですね。これはCGCさんなんですけども、これは特殊な止水技術、日本独自の技術でございますけども、これを使って、リオの地下鉄とか、そういった止水の工事をやっておられる。業績としてはかなり伸びているというような状況になっております。

     各業種さんの回顧と展望ということで、2016年と、それに対して2017年に向けてどういうことをやっていくかということでございます。

     建設に関しては2社ですけども、これは設備投資抑制により工事が非常に減っているということと、受注競争の激化によって利益率が大幅にダウンしているというような事情があります。あるいは、工事が小規模化している。あるいは日系企業の仕事はほとんどなくなっているというような現状ですね。

     それに対して、対策としましては、価格競争力をより向上させるということと、営業拡大に注力。これはまあ日系企業だけでなくてローカル企業に注力するとかですね、あるいは工場だけではなくて、病院とか学校、他の用途も取り込むというようなことでございます。

     これはホス建設さんの昨年の竣工の実績でございますけども、例えばユニリーバさんとかですね、Ambevさん、ピレリ、グッドイヤーというようにですね、多国籍の企業、あるいはブラジルの企業の仕事を取り込んでおられまして、大体非日系の仕事で8割を確保しているというような状況ということでございます。

     次は不動産ということでございますけども、工場用の用地としましては購入、レンタルともに需要今ほぼない状況であるということですね。あと、これはアパートの方ですけども、駐在員減少に伴う業務依頼の減と。ただ、借り換え需要ですね、これは安定しているというような状況でございます。

     今年に関しましては、新事業で売上増ということで、これは仲介だけではなくて、オーナー事業でですね、より売上を拡大しようというような方策を立てておられるということでございます。

     あと、プレハブ業界さんですね。これは先程言いましたように、オリンピック需要が終わりまして、新規需要、新規受注、これがなくて、非常に昨年は厳しい状況であったということですね。これに対しても、営業を強化するということと、クロージングというのは、案件はあるけどブラジル企業というのは中々すぐ決めてくれないと、まあずるずる行っていると、これを何とかクロージングに持ち込みたいというようなご意見でございます。

     あと、サッシ業界さんですね。これはYKKさんなんですけども、これほとんどアパート向けのサッシですので、不動産市場の低迷でですね、受注が2割減しているというような状況です。これに関しては建設市場の回復を待つしかないというようなご意見でございます。

     あと、やっぱり特色がありますのは、というか特筆すべきはこの特殊技術ということで、CGCさんですね。前部会長の藤井さんの会社でございますけども、大型工事の受注で売上、完工ともに好調と。で、売上は4年間連続右肩上がりということで、これはリオの地下鉄を去年止水工事をやられたということで、大幅に売上が上がったということでございます。 

     今年も大型工事、これはサンパウロの地下鉄工事ですけども、その辺がこれはどうなるかちょっと分かりませんけども、まあ状況によりますよね。これを受注できたら大きな仕事になると。あとは下水道の小型工事もかなり数が出ているということで、見通しとしては明るいということでございます。

     今後、日本企業が生き残っていくヒントとしてですね、やっぱりこのCGCさんのやり方というのは一つ大きなヒントになるんじゃないかというふうに思っています。というのはですね、日本の独自の先進技術ですね、これはやはりブラジルにはない技術を持ち込むことで、やはりローカルの企業と差別化をしようと。価格競争に陥らない売り込みができる、営業ができるということかと思います。

     建設業界のキーワードとしては、これからやはり環境技術、あるいは省エネ技術ですね、この辺をブラジルに対して売り込んでいくということが重要じゃないかというふうに考える次第です。それにはやはり、我々の業界だけじゃなくて、例えば空調機メーカーとかですね、あるいは太陽光発電のメーカーさんとかと一緒になって、オールジャパンでこういう技術を売り込んでいくというのが今後重要になっていくというふうに考えております。

     ここで、部会の発表は終わりまして、ジャパン・ハウスの建築としての魅力をちょっとご紹介をしたいと思います。

     ジャパン・ハウスはご存じの通り、今年の5月にオープンということで、商工会議所でも新年会において中前総領事、あるいはアンジェラ館長の方から事業のご説明があったと思います。皆さん、その辺に関してはよくご存じかと思いますけども、今回この建築にスポットを当てて、建築としてのどういう魅力があるかということをちょっとご紹介したいと思います。

     まずはその設計者ですね。これは皆さんご存じと思いますけども、隈研吾さんということで、日本を代表する建築家の一人でございます。代表作としましては、最新のものでは去年かなり話題になりました新国立競技場ですね。これがもう着工をしております。あとは、これは新しい作品ですけども、新品川駅が今度できるんですね。新駅が。これの駅舎ですね、これの設計が決まっているということでございます。

     隈さんの建築の特徴としましては、このように木とか石とか自然素材をふんだんに使った、柔らかな建築と言っておられますけども、例えば安藤忠雄さん、もう一人代表的な建築家いますけど、彼のコンクリートの建築と両極端をなすような柔らかい建築というのを主張されている先生でございます。

     隈さんの設計なんですけども、一番特徴的なのはこの檜のファサードですね。これ今完成して外から見れますけども、これが一番建物として特徴的なファサードになっています。

     これを施工しましたのが中島工務店さんということで、これは日本の岐阜の中津川に会社がある工場でございまして、報道でも言われている通り、皆さんご存知かと思いますけども、一昨年から去年にかけてイビラプエラの日本館の修復工事をボランティアでやられていたという所ですけども、その時に偶然隈先生が訪れましてですね、中島工務店の社長がおられたんですけど、その人と社長と意気投合しまして、急遽この檜を使ったファサードに変更になったというようないきさつがあります。これは元々アルミパネルの、金属パネルのファサードだったんですけども、これが木材に変わったということですね。

     これが通称地獄組みと言われまして、これは釘を使っていない日本古来の木材の組み方ですね。実際ボルトを補強で使っているんですけど、こういう形で大工さんが5人、このはっぴを着ている大工さんが5人来られまして、組み立ててもらったということでございます。

     これは去年の11月から今年の1月までやってもらったんですけども、ひとつは、先程細谷さんのお話にもありましたように、税関のストがありまして、この木材がサントス港に1カ月留め置かれまして、非常に工期的に切迫した状況になったんですけど、この大工さん非常に頑張ってもらいまして、正月返上で、休日も返上でやってもらいまして、何とか1月末にですね、全体の姿を現したということでございます。本当によくやってもらったと思っております。

     もう一つこの外壁として、これはコボゴブロックということで、これはブラジルの伝統的な素材ですね、穴あきのブロックです。これは風通しが良くて、よくブラジルでも使われていますけど、住宅とかに。これを新たに隈先生がデザインしまして、特注のコボゴを焼いて、この外壁に使っているということですね。

     これは内側から見た写真で、これ内側にはガラスのカーテンウォールが入っていて、その外側にコボゴがあるということで、隈先生の建築の特徴として、現代的なガラスのカーテンウォールと、素材ですよね、例えばブロックとかあるいは木材とかの組み合わせ、これが非常に対照的な組み合わせで、隈建築の特徴の一つということになります。

     もう一つ、建築で特筆すべきなのは、この内装で和紙パネル天井というのを使っています。これは、小林さんという方がおられまして、越後の門出というところで和紙を作っておられる非常に有名な和紙職人さんですけども、この方が、ブラジルに来ていただいて、これを作ってもらったということでございます。

     これは製作風景なんですけども、作り方としては和紙の塊を日本から空輸しまして持って来まして、これはうちの倉庫なんですけども、そこで一旦水に溶かします。その上で、このワイヤーメッシュというか、金属のメッシュですね、これに和紙を貼りつけるわけですけども、こうした形でメッシュを作っていくということですね。

     これができあがった和紙のパネルということで、このようにメッシュ状に和紙が巻きついていると。非常に見た目も斬新な内装材ということで、これを天井とか、あるいは壁に現在ジャパン・ハウスでは使っているということでございます。

     中島工務店さんもそうですけども、これはうちの社員と作業員ですけども、一緒に作業をして、やっぱり彼らも本当の日本の職人ですよね。職人の、何と言うか、スピリットというか、そういうものを非常に感銘を受けたということを彼らも言っていますので、うちとしても非常に良い機会に恵まれたというふうに思っております。

     これが内装のイメージですけども、ここに和紙の天井が、これはメインのホールですけど、ここに使われるということになります。

     最後のこの写真ですけど、この裏側のビルに壁画がありますが、これ、皆さん誰かご存じですかね。これ、書いてありますけど、オスカー・ニーマイヤーさんといって、ブラジルを代表する建築家でございます。もう3年前に確か101歳で亡くなられていますけども、ブラジリアの建築群ですね、あれはほとんどこのニーマイヤーさんが設計をされたということで、このニーマイヤーさんの肖像の下に今ジャパン・ハウスが建っているということになっています。

     ジャパン・ハウスの大きなテーマとしてですね、やはりブラジルの文化と日本文化の相互理解というのが一つの大きなテーマになりますけど、この構図はやはり象徴的なものを表しているんじゃないかというふうに思っております。

     最後になりましたけど、ジャパン・ハウスの見学会を3月15日の16時からやることになっています。これは先週のカマラの昼食会の後にメールで皆さんに募集しましたけども、ちょっと予想外で、その日のうちに定員を超えてしまいまして、今ちょっとウェイティングリストに載せていただいている状況ということになっています。

     今ジャパン・ハウスの事務局とちょっと協議をしていまして、定員を増やして開催するか、あるいは日を分けるかということで、ちょっと今協議中ですので、しばらくご連絡をお待ちいただきたいというふうに思っていますので、是非よろしくお願いいたします。

     それでは私の発表をこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

     

    司会

     奥地部会長どうもありがとうございました。ご質問等ございますでしょうか。建築コストが引き続き上昇していると。それから不動産市況は全体的に低調であるけれども、逆に工業用地の取得には良いタイミングかもしれない。

     それから部会としての経済の見方は概ね、引き続き厳しくて、特殊技術を除くと昨年の業績も全体的にはご苦労も多かったと。今年に向けては新規事業の投入、日本の技術も生かした営業強化を図られるというお話であったかと思います。どうもありがとうございました。

     それでは最後になりますが、繊維部会、南村部会長様、よろしくお願いします。

     

  • 繊維部会     南村幸彦 部会長

     

                                               

     

     

                       

     皆さん、こんにちは。ただ今ご紹介いただきました、繊維部会部会長を務めております東洋紡ブラジルの南村と申します。皆様結構お疲れのことと思いますので、できるだけ簡潔に発表いたしますので、どうぞよろしくお聞きください。次お願いします。

     発表は、2016年の回顧、2017年の展望、副題の3部構成にて、それぞれスライドに示した項目別に行いいます。では次のスライドお願いします。

     まずは世界の綿花動向を説明します。こちらにお見せしているグラフは、2012/13綿花年度から2016/17綿花年度、この間の綿花の消費量の推移を表したものです。この期間、ご覧の通り消費量はほぼ横ばいでございます。そのうち中国がおよそ3分の1程度を占めておりました。ただ、スライドの下の方に、ちょっと見にくくて恐縮ですが、書かせてもらいましたけれども、綿花の輸入量ではバングラディシュ、ベトナム、これに次ぐ第3位のところまで下がっておりまして、中国の影響力が緩和されたと言えるかと思います。では次のスライドをお願いします。

     次のグラフは、同じく2012/13綿花年度から2016/17綿花年度までの季末の在庫量の推移を表しています。グラフの上に矢印を書いているんですが、この折れ線グラフは国際綿花価格の代表的な指標であるニューヨーク綿花相場の推移を表しています。綿花の余剰在庫の減少傾向が続いておりまして、ニューヨークの綿花相場は右肩上がりの高値で推移いたしました。

     需給のバランスを見ますと、2017年は堅調な相場動向を予想しますけれども、これまでの各部会のご発表にもありましたように、アメリカのトランプ政権の下での経済政策、またそれに伴う為替相場、そのあたりの動向次第では綿花相場も影響を受けるということが懸念されます。次のスライドお願いします。

     続きまして、ブラジルの国内の綿花動向がどうなのかということを説明いたします。こちらは各年の綿花の生産量と綿花相場の関係を示しています。2016年シーズン、ブラジルの綿花生産量は、バイア州、こちらの不作が響きまして、前年比でご覧の通り減少いたしました。同時に、経済不況であったり、繊維メーカーの撤退あるいは減産によって需要の方も減少したんですけれども、国内への綿花供給は不足気味となりました。

     ブラジルの綿花農家さんは、国内市場よりも輸出に優先的に出荷される、そういうところがございまして、それが綿花不足の原因でございます。このことから、原綿の価格はブラジルにおいても高いレベルで推移しまして、綿糸、綿の糸の製造原価を上昇させることとなりました。次お願いします。

     続きまして、次のテーマである綿糸価格の動向の説明に移ります。綿の糸といいますのは、より上質なコーマと呼ばれる種類の糸と、中程度の品質のカードと呼ばれる糸の2種類に大別されます。コーマの糸の方を赤色、カードの糸の方を青色でそれぞれ価格をグラフで示しております。

     ご覧のグラフはその糸の市場価格の推移なのですけれども、2016年、先程ご説明しました通り、原料である綿花の相場が上昇いたしました。これに伴い糸の市場価格も、ご覧の通り上げ基調であったと言えるかと思います。とは言うものの、ブラジル国内のローカルの紡績会社さん、こちらの方が安値販売で攻めてまいりまして、価格競争の方は非常に厳しいものとなって、2016年、先程申し上げた綿花コスト、この綿花のコストの増えた分を補うほどまでには綿糸の価格というのは上がりませんでした。

     ただ、2016年下半期になりまして、受注環境の方がまあ良くなりました。スライドの一番下に書かせてもらいましたけれども、ちょうど為替相場がどうなるかちょっと分からない状況だったので、輸入品、特に衣料品の輸入品が減りまして、そのことによる国内生産回帰が生じて、綿糸の受注は堅調になったという2016年の下半期だったと思います。では次のスライドお願いします。

     続きまして、ブラジルの繊維産業、これを説明する上で欠かすことのできない輸出入の動向、これを繊維の種類ごとにご説明いたします。まずは綿糸の輸出入の動向です。2016年の綿糸輸出は、レアル安が続いて南米諸国向けの輸出が好調に推移いたしました。このため、数量・金額ともに、ご覧のグラフの黄色で表した通り、大幅に増えました。逆に綿糸の輸入は、市況の低迷もありまして、20%を超える減少となりました。

     2017年の展望ですけれども、レアルが反発してきて、非常に輸出の採算が悪化しております。そのことから綿糸の輸出は、2015年から16年に見られたような、このような勢いをなくすだろうというふうに思っております。他方で、紡績糸の需給タイト感が増せば増すほど、輸入の方が増えるということが考えられます。次お願いします。

     次のグラフは合成繊維。ポリエステルであったり、ナイロンであったり。そういった合成繊維の輸出入の動向でございます。2016年、衣料品、総じて国内消費が悪化しました。有力な企業であれば、こういった繊維であっても輸出に活路を求めようとしたんですけれども、為替の動向、影響を強く受けまして、特にレアル安からレアル高に持ち直したことで成約は低調なままに終わりました。2017年も、どうも需給の改善は期待が薄いなと考えておりまして、今の為替水準が続きますと、綿糸でご説明した時と同様、輸入増、国内生産減となるおそれがございます。次お願いします。

     こちらのグラフは、ニット生地と既製服の輸入の動向です。これまでの綿糸、合成繊維と同様に、ニット生地の輸入は19%ぐらい、既製服の輸入はこれは43%という非常に大きな減少となりしました。こちらも消費の停滞によって小売業界の売上がダウンして、大統領が罷免された後で少しは環境良くなるかなという期待もあったんですけども、為替と同様、先行きどうなるか分からないという不安から、このマーケットは2016年、回復することはありませんでした。次のスライドお願いします。

     次はファスナー。ジーンズとかジャケットに使われるファスナーの輸入の動向です。 14年から15年と同様に、15年から16年にかけましても、ブラジル全体の景気低迷、これが続いて、消費が冷え込んだ。それによって、国内のジーンズやジャケットを製造されるアパレルメーカーさんの生産が減少し、そのことでファスナーの輸入も14%、前年同期で減少した。というのが2016年でした。消費の低迷というのは中々、衣料品の場合には回復しがたいところがございますので、本格的に国内の生産が回復するのはまだ先であるというふうにみられております。次お願いします。

     2016年の総評でございますけれども、原料高と製品安が年間を通じて継続いたしまして、繊維事業にとっては厳しい1年間であったと言えるかと思います。ブラジルの景気後退が続く中で、上からは家計購買力が低下し、衣料品に使うお金が減りました。

     日本のちょっと景気の悪かった時もそうなんですけれども、たいがい家計を預かる主婦の皆様は、景気が悪くなってきたなと感じると、衣料品、服を買うタイミングをちょっと1年ぐらいずらすと。衣服というのは結構丈夫にできておりまして、1年、2年ぐらいなら去年のやつ、一昨年のやつを着ていても問題ない。

     日本企業の衣料品の技術というのは非常に高いものがありまして、それが逆に景気の悪い時には、会社にとってはマイナスに作用して、何年たってもくたびれない、穴の開かない靴下なんていうのは本当に作っていいのかなと、作っといていいのかなと思ったりもするんですけれども、まあそういうことで衣料品支出が下がって、そうすると、服の値段が下がると、アパレルメーカーさんは当然糸とか織物の値段を下げてくれというふうに言ってきますので、糸と織物の価格が中々上がらない。上からぎゅーっと押さえつけられて。

     他方で、さっき申し上げましたけれども、ブラジルの綿花については国際競争力がすごくついたものですから、綿花農家さんは輸出の方でお金儲けしようとして、国内の方に中々良い綿花、ここらへんが回ってこないものですから、供給不足ということで綿花の値段はぐっと上がる。

     これまでの部会の皆様の発表にもありましたように、人件費というのは毎年確実に上がると。おまけに、一番右に書きましたけれども、ニューヨークの綿花相場もずーっと高いところにあるということで、下からはグーッとコストインフレに突き上げられて、上からはモノの値段が中々上がらないということで、間にはさんで我々繊維事業というのは厳しい1年でございました。次お願いします。

     続きまして、発表の第2部である2017年の展望を説明いたします。次お願いします。

     2017年の展望ですけれども、まず世界の綿花需給、こちらの方は前季に続いて消費が生産を上回ると。そのことによって在庫は減少すると予想しています。需給バランスから堅調な相場動向になるんじゃないのかなというふうに見込んでおります。

     また、国内の綿花需給についても、7月後半、新綿がそのころ出るんですけれども、それまでは特に高品質品の供給が不足するんじゃないかという懸念を持っております。

     レアル高につきましては、これまでも発表いたしましたけれども、綿糸と製品の輸入がまたぞろ増えてくるんじゃないのかなと。そのことによって国内生産と価格に大きなマイナス要因となるというふうに思っております。

     ただ、綿糸の市況そのものにつきましては、先程カード糸とコーマ糸の赤と青のグラフでお見せしました通り、底打ち感が見られて、非常に良い状況が出るのかなと思うんですけれども、このあたりは各社さんによってまちまちでございまして、部会としてはもう少し先になるのかなというふうに思っております。

     最後に、2017年、繊維業界におきましては、今まで申し上げてきた輸入品との競合もさることながら、ブラジルのローカルの紡績会社、こことの価格競争がこれまで以上に激しくなる、そういうふうに言えるかと思います。次のスライドお願いします。

     では最後の第3部、副題につきましては、課題整理と業界の取組みの順に発表いたします。次お願いします。

     まず課題整理として4点を挙げさせていただきました。一つ目は、汎用品を中心に輸入品が増えまして、販売競争が激化して、市場シェア、販売量が減るというところでございます。

     2点目は、複雑な税制、労働コスト、未整備なインフラといったブラジル特有の阻害要因が挙げられます。

     3点目は、この新しい市場をどうやって創り出すのか、15年16年のようなブラジル国内の不況、こういう時にも、強い販路、こういうものをどうやって見出すかということだと思います。

     あと、4点目は、繊維部会特有の課題だと思うんですけれども、糸だけでは、綿糸だけでは中々付加価値を出せない。日本の消費者のように、はっきり言って目の肥えた、非常に、手触りとか光沢にこだわる消費者の方にとっては、この綿糸とこの糸はだいぶ違うと、だからそういうものについて高いお金を払うということがあるんですが、中々そういうものはブラジルでは難しいので、衣料品トータルで付加価値を表現する。そうすることによって国内不況に強い業態に変わりたいと、これが4つ目の課題でございます。次お願いします。

     最後はその課題に関連して、業界としての取り組みをまとめました。一つは、高機能製品、先端素材、こういう市場を開拓すること。二つ目はブラジル企業として実務経験を蓄積して、先程申し上げたブラジル特有の課題、こういうものを解決できるような、そういう社内体制を築くこと。

     あと、三つ目は、どうやって新しい販路を見つけるかということなんですけれども、アパレルメーカー、その他加工メーカー、繊維業界の中の有力企業と連携する。営業活動を強化する。そういうことで、特に海外市場、アルゼンチンをはじめとした南米市場への販路を拡大するということが必要かと思います。

     四つ目は、輸入衣料、今トップセンターのところにあるForever21とかH&Mとか、衣料品全体、世界的に衣料品というのは、その時代その時代一番安く作れるところで大量に作って、それを全世界に輸出する。だからブラジルもかなり輸入衣料品の浸透率が上がってきております。それに対抗するために、国産品への回帰を呼び込むということで、業界を挙げて国産品のキャンペーンを提案する、そのようなことに繊維業界としても協力していくということが我々の為すべき取り組みの一つではないかなというふうに思っております。

     ではこれで繊維部会の発表を終わりたいと思います。どうもご清聴ありがとうございました。

     

    司会

     どうもありがとうございました。ご質問等ございますでしょうか。今のご発表ですけれども、2016年のブラジルの綿花相場が上昇し、綿糸の製造原価が上昇してしまったと。

      一方でブラジル国内の紡績各社の安値販売で競争が激化していると。その意味で各社様まだご苦労されている局面におありであるけれども、今年に関しては、他国を含めた販路の強化であるとか、先端素材など付加価値創造を通じて基盤強化に取り組まれると。こういったお話であったかと思います。どうもありがとうございました。

     以上で11部会の発表を終わります。皆様、大変ありがとうございました。ここで、ブラジル日本商工会議所の名誉顧問で在サンパウロ日本国総領事の中前隆博様よりご講評をいただきたいと思います。中前総領事、よろしくお願いいたします。

     

  • 講評     中前隆博 在サンパウロ日本国総領事

     

                                           

     

     

     

      皆様こんにちは。今日はお招きをいただきましてありがとうございます。毎度ながら、いつも遅刻をいたしまして、大変申し訳ございません。今日お話を伺いまして、そこで伺いましたこと、それから、これまでの各部会の会合に私どもの館員が、当館の館員が出席をさせていただきまして、色々お話を伺いました。その報告も一つ一つ注意深く読ませていただきました。

     それを踏まえまして、私感じます事は、個々の業界の皆さんによってまだ評価に様々な差があるかと思いますけれども、概ねのトレンドとしてはやはり、景気回復が近いと、それを前提にどうするかという行動方針にマインドが変わりつつあると。いつ良くなるんだろうかというこれまでの議論とは違うものを強く感じております。

     まさに、今回の副題であります、「景気回復に向けて、いま為すべきことは何か」というこの副題自体が、皆様方の概ねのコンセンサスを反映したものであろうかと思っております。

     その中で、各社様それぞれ基盤の強化をされながら、新しいビジネスの発掘を模索されると。そこで日本の強みは、日本独自の品質の重視の文化であり、独自の先進技術を用いた、そういう形での差別化であろうというふうに伺いました。

     そういうふうに認識をさせていただいた上で、当面の私ども日本政府として、あるいは大使館と総領事館の行動方針といいますか、大きなアジェンダとして、以下の三つ、注目点といいますか、留意点、以下の三つを申し上げたいと思います。

     一つは、言うまでもなく、ジャパン・ハウスでございます。これが今年5月に開館になります。先程建設不動産部会様から建物についてのご説明をいただいたところでありますけれども、私ども、これは、建物も素敵なものをお陰様で作っていただきましたけれども、その中に何を入れるかと、そこで何をやるかということがこれからとても大切なことだろうと思っております。幸い非常に優秀な面々を事務局にお迎えすることができて、非常に創造的な、クリエイティブな仕事をもって準備をしていただいているように思います。

     二つ申し上げますが、一つは昨月アンジェラ・ヒラタ事務局長からご説明いたしました中にもありましたように、ジャパン・ハウスが伝える価値、バリュー、いくつかありましたが、そのうちの一つは品質とprecision、精密、この文化を伝えることというのがございます。

     それから、もう一つはジャパン・ハウスの一つの大きなミッションの中に、日本の多様な魅力を提示するということでありますけれども、この多様な魅力というのは具体的に何かというと、民間のビジネスの皆様方の活力、それから地方の様々な魅力、これをもって訴えていくということでございますので、企業の皆様方とのこれからの、色々な形でのパートナーシップ、連携というのが非常に大きな勝負になると考えております。

     事務局から様々な形でのお声掛け等、あるかもしれませんし、また積極的にジャパン・ハウスと対話を重ねていただきまして、どういう形のものができるのかということを是非一緒に追及させていただければと思っております。それが一つ目。

     二つ目は、当館にとりまして大きなアジェンダの一つでありますけれども、来年は、2018年、これがブラジルの日本人移住の110周年にあたります。これに向けて当地の日系社会の方々は、これを記念すべく様々な準備をすでに始めておられる所でございます。

      ご案内の通り、安倍総理大臣は2014年、それから2016年、2度にわたり中南米の各国を訪問されまして、日系社会との連携の重要性を強く打ち出しております。それを対した上で、私どもも様々な具体的な日系社会との連携を推進しつつあるところでありまして、またさらに、来月、3月には、その連携の在り方に、新たな連携の在り方に関する懇談会、これが東京で開催され、これからの日本と日系社会の方々の関係の在り方、これのコンセプチュアルな考え方の議論が行われることになっております。

     私どもサンパウロ総領事館としましては、現在のところ引き続き、日系の若い人たちの指導力、これをいかに養成するかということ。それから地方の日系社会をいかに活性化するかということ、特に若い日系人の方々に、日系としての誇り、これをどうやって持っていただくかということ、それから最近増加傾向にございますが、在日就労ブラジル人の方々およびその子弟の方々をいかにご支援申し上げるか、その中には日系社会からご要望いただいている、4世以降の方々への定住ビザ、これの扱いをどうするかということも大きな課題でありますが、そういう所に焦点を当てて施策を考えていきたいと思っております。その中におきまして、企業の皆様方との意見交換も非常に重要なことだと思っておりますので、よろしくご協力をお願いいたします。

     三つ目ですが、これは当館として何をするかというよりは、環境として注目いたしておりますが、今年1月に発足しました新しい市長、就任しましたジョアン・ドリア市長でありますけれども、この方の市政の運営の手法がこれまでと大きく違うことに注目をいたしております。ドリア市長はご案内の通り、ビジネスマンの出身で、いかに市政の中にビジネスの活力を取り入れていくかということを積極的に打ち出しておられます。

     早速私も呼ばれまして、日本の企業の方々とどういう形で協力ができるだろうかという宿題といいますか、課題をいただいたところで、他の国の企業の皆さんともそういう話を進めている。主要なインフラを含めた民営化も積極的に進めておられる。そういう新しいアプローチに対して、各国の企業がどういうふうに反応するかと、しているかということも注意深く見ていきたいと思っております。

     ご案内の通り、先週ドリア市長はアラブ首長国連邦に出張いたしまして、投資の促進、あるいは民営化について大きなキャンペーンを行ったところであります。4月には2回目の外遊として韓国のソウルを訪問する予定だということも伺っております。そういう活動の状況をみながら、新しい市政と日本との関係の在り方、これを改めて模索しなければいけないと思っている中で、また積極的に情報を収集し、また分析していく中で、企業の皆様方との情報交換、情報提供もさせていただければと思っております。

     以上が、私どもとして当面重要なアジェンダとして認識している事項でございます。本日は色々とまた教えていただきまして、ありがとうございました。

     今後とも、総領事館、それから本日は小林参事官も来ておりますけれども、大使館と一緒になりまして、どういう形で日本企業の方々をご支援できるかということは、これは非常に大きな政府としてのアジェンダ、課題でございますので、引き続きご相談させていただきながら、できるだけのことをさせていただきたいと思いますので、遠慮なくご相談にお出でいただければと存じます。どうもありがとうございました。

    司会

     中前総領事、大変貴重で心強いご講評をいただきまして、誠にありがとうございます。続きまして、在ブラジル日本国大使館の小林和昭参事官様よりコメントを頂戴したいと思います。よろしくお願いします。

     

  • コメント     小林和昭 在ブラジル日本国大使館 参事官

     

                                             

     

     

      ただ今ご紹介に預かりました、ブラジリアにある日本大使館で経済班で参事官をしております小林と申します。僭越ながら、コメントをさせていただきたいと思います。

     今日は、会員の皆様がまとめられたレポート、プレゼンを聞かせていただきまして、大変勉強になりました。毎回出席させていただいておりますけれども、本当に感謝しております。

     実はこの場に立たせていただくのは今回が7回目になります。1回目は2014年の2月。まだワールドカップの前で、オリンピックはまだちょっと先というような時期で、ブラジルはまだまだ成長していくんだろうと、その時は結構前向きな話を聞いておりましたが、その後ブラジルは政治の混乱に巻き込まれ、リセッションが続き、5回ほど続けて悲観的、少し暗いレポートを聞く形になっておりまして。

     ただ、私は良い時代のブラジルに出会っていないので、その時のレポートがどうだったのか存じておりませんけれども、こういった厳しい中で皆様が知恵を出して、色々対処を考えていただいたその発表を聞くという、まさに皆様の知恵を見ることができて、日本人の強さというのをそういうところからも感じることができて、本当に心強く思っております。

     さて、ブラジリアの状況をここで私お話するのがいいのかなと思って、毎回少しずつ話しておりますけれども、ここ半年の状況ですけれども、まずブラジリアでは皆さんご存じの通り、数々の制度改正、政治改革が取り組まれております。財政、労働問題、税制、まあ残念ながら減税の内容のものは多分全く出てこないとは思うんですけども、そういったものについて前向きに取り組まれています。

     サンパウロにいると非常に支持率の低い政権で、ブラジリアはどういう状況なのだろうと感じることがあるかもしれませんけれども、関係者の皆様、官公庁、議員の人たちはですね、意外なほどに自信を持って、また自信に満ち溢れて今仕事をしている感じがあります。

     これはラバ・ジャット事件等を通して、汚職などできない状況になって、政治に専念できる状況ができているからかもしれませんけれども、彼らは自信を持って今やらなければいけない政治問題、やっていこうという、今までにない雰囲気ができています。そういった雰囲気に乗って、やはりブラジルコストというのを少しでも解決してもらうように、我々も支援していく。そういう姿勢が必要なのかなと考えております。

     また、10月にはテメル大統領は日本に訪日しました。急なことだったのでイベント的なことはあまりない、少し、まあ我々の目から見ると寂しいというところもありましたけれども、この相当早い段階での訪日というのはやはり日本重視をテメル大統領が示したということで、そういったところについては好意的に受け止めております。

     テメル大統領も訪日に関して非常に満足していたと聞いております。その場ではインフラ関係についても覚書が結ばれて、今後そういったところでの協力が進んでいくことを期待しております。

     もう一つ変わったことがありまして、ブラジル大使館の内部のことですけれども、大使が交代いたしました。新しい大使が到着して、1月には信任状を奉呈し、本格的な活動を開始しておりますけれども、現在ブラジリアで各関係閣僚の方々の表敬を始めております。私もいくつか同席しておりますけれども、どの閣僚に会っても日本への大きな期待というのを示されています。

     我々としてはこの期待についてどうやって応えていくか、その中で、期待に応えて何かサービスしていくだけではなく、日本が何を要求していくか、そういったところを考えていかなければならないと思います。例えばAGIRについても実現のためにはもう一歩踏み込んだ行動が必要になると思っておりますので、今後皆様と知恵を出し合って、どのように連携してブラジルコスト解消に向けてやっていくかというのを考えておりますので、大使館等も支援していく予定ですので、是非引き続きよろしくお願いいたします。

     今後は日伯間の大きな機会がございます。4月上旬には賢人会議、また日本の経済産業省とブラジルの産業貿易サービス省内での定期会合である貿易投資促進委員会の中間会合、5月はジャパン・ハウスが開所しますが、そのほかにインフラ覚書に基づく会合が予定されており、初夏になりますと農業対話、8月下旬にはクリチバで日伯経済合同委員会、また貿投委の本会合等、夏に向けてたくさんの日伯間のハイレベルでの協議がございます。この機会を最大限に生かしていきたいと大使館としては考えておりますので、皆様のご協力をお願いいたします。

     日伯関係の良好な状況というのは、こういった不況の状況になっても全く変わらないものですし、今年はテメル大統領も非常に改革に前向きである。来年は選挙になりますので、どこまで進むか分からないので、まさに今がチャンスだと思っております。経済的には非常に厳しい状況でありまして、皆様そういった大変な状況の時に協力していきましょうというのも中々厳しい部分もあるかと思いますけれども、我々も色々とやれることはやっていきたいと思っておりますので、是非今後とも一緒に行動できればと思っております。

     最後に、ブラジルの景気回復ができるだけ早く実現すること、また会員企業の皆様のご活躍を祈念しまして、コメントとさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

     

  • 閉会の辞     小池淳介 総務委員長

                                             

     

     

        小林参事官、大変ありがとうございました。本日は「景気回復に向けて、いま為すべきことは」をテーマに皆様より発表をいただきました。お話を伺っておりますと、ブラジルはまだ本格回復に程遠いということではあろうかと思いますけども、一方で回復の兆しは確かに見えてきているというのが共通認識かと思います。

     是非カマラの会員企業の皆様、お互い協力し合いまして、オールジャパンで2017年を良い年にできればなというふうに思います。いくつかの部会から頂戴しました、カマラ、あるいは両国政府に向けた様々なご要望、これらに関しましては、松永会頭の下、政策対話委員会を通じまして、皆様と力を合わせて引き続き検討・対応させていただければと思います。本日は大変ありがとうございました。

     なお、このあとの懇親会でございますけれども、先程のコーヒーブレイクの会場とその隣の部屋で開催されます。是非皆様ふるってご参加いただければと思います。ありがとうございました。

     

2016年下期の業種別部会長シンポジウム

テーマ:「2016 年上期の回顧と下期の展望」

副題:『どん底の時期ならではの戦略は?-課題整理と対処方策-』

Pdf 2016下期の業種別部会長シンポジウムプログラム

 

  • 前半司会  大久保敦 総務・企画委員長

    大久保敦 総務・企画委員長

     皆様、こんにちは。時間が参りましたので、これより2016年下期業種別部会長シンポジュームを開催させていただきます。私本日の司会を担当いたします、総務・企画委員長の大久保でございます。よろしくお願いいたします。私、今回、司会は2回目なんですけども、人前で話すのは非常に苦手で、不慣れでですね、何かと行きとどかぬところが出てくるかと思いますが、タイムキープを含めまして、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

     本日は部会長の発表の前にですね、神戸大学教授で経済経営研究所副所長の浜口伸明様に特別講演をお願いしております。また、在サンパウロ日本国総領事の中前隆博様にもご参加いただき、今日4時ごろ参りますが、その際にですね、部会長発表後のご講評をいただくことにしております。また、在ブラジル日本国大使館の小林参事官にもお越しいただいております。小林様にもですね、最後にコメントをお願いしておりますので、よろしくお願いいたします。

     本日の参加者でございますが、200名に達しました。前回190名で、10名増えております。24名の一般客の皆様にご参加いただいております。これはですね、ニッケイ新聞、サンパウロ新聞両紙に記事にしていただきまして、多くの方が参加いただいております。この場を借りまして御礼申し上げます。

     それでは、まず松永愛一郎会頭より開会の挨拶をお願いしたいと思います。

     

     

  • ブラジル日本商工会議所  松永愛一郎 会頭

    ブラジル日本商工会議所  松永愛一郎 会頭

     ただいまご紹介あずかりました、ブラジル三菱商事の松永でございます。先週金曜日の会議所の理事会におきまして、前任の村田会頭の後任としてですね、会頭職を拝命いたしました。どうぞよろしくお願いします。(拍手)ありがとうございます。

     先日の昼食会で私の会頭就任のご挨拶をさせていただきましたので、今回長々とここでお話、繰り返しするつもりはございませんが、会頭としまして、より開かれた会議所、またチャレンジする会議所ということを目指してですね、皆さんの話をゆっくりとお聞きし、相談をしながら運営を進めていきたいと思っております。

     具体的には3つほど挙げさせていただければというふうに思っていますが、まず一つ目としまして、サンパウロ以外の会議所の皆様と連携を深めていくと。これによって、会員の皆様にはブラジル全土の情報を逐次に共有いただくという体制にしたいと思っております。

     2つ目としましては、ここの商工会議所に政策対話委員会というものを設けておりますが、これはですね、いわゆるブラジルコスト、この改善をブラジル当局に対して提言をしていくという活動でございます。この活動をさらに強化してですね、皆様方のブラジルにおける活動の障害を少しでも取り除けていければというふうに考えています。

     3つ目としまして、会員の皆様の3分の1が地場の企業の皆さんでございます。地場の皆様との会話をですね、もっと密に行うことによって、我々日本からの派遣企業とのWin-Winの体制を作っていきたいというふうに思っております。

     そういう地道な活動をもってですね、会員の皆様の数を増やして、皆様に裨益する、そういった会議所にしていきたいというふうに思っております。

     それでは本日、2016年下期のシンポジウムに多数皆様お集まりいただき、大変ありがとうございます。私の方から簡単に、このシンポジウムの位置づけをご説明させていただきます。

     現在会議所には11の業種別の部会がございます。会員の皆様にはそのうちどれか一つに所属いただくようにお願いしており、この部長会をベースにして情報交換を行っていただく、あるいは商工会議所のプレゼンスを高めていただく、また日系企業がこのブラジルにおいて活動を活発化できるような素地を作っていただく、というような活動をしていただいております。その成果を半年に1回ここで披露いただくと。それがこのシンポジウムの位置づけということになっております。

     加えまして、本年度は事業別の部会というものを導入しまして40年目に当たる節目の年でございます。そのため、先程大久保委員長からご紹介ありましたように、先ごろ発売されました「現代ブラジル事典2016年度版」、こちらの編集長をしてくださった神戸大学の経済経営研究所副所長の浜口教授に特別講演をいただくということになっております。加えまして、サンパウロ総領事、中前総領事の方からもご講評をいただき、さらに大使館の小林参事官からもコメントをいただくということにしております。

     本日のテーマは、2016 年度の上期を回顧し、下期の展望ということで、副題としまして「どん底ならではの戦略」ということをつけさせていただいております。私ここに着任して2年半になります。これは先日の昼食会でも申し上げましたけども、この2年半の間、ブラジルの政治経済、非常に厳しい状況でありました。

    しかしながら、ここに来まして、経済の方にも薄日がようやく差してきていますし、まあ業界ごとにいろんなまだら模様にはなっておりますが、明るいニュースも飛び込んできております。何よりも、当初あれだけ心配されていたリオのオリンピック、これを非常に高いレベルで運営をし、やりきったということにつきましては、ブラジルの底力を全世界にしっかりと発信できたというふうに思っております。

     こういう状況を踏まえて、私自身、今このブラジルはまさに潮目の変わり目というふうにとらまえております。従いまして、本日のシンポジウムがですね、会員の皆様がこの波に、潮目の変わり目に乗り遅れないで、さらに事業を推進していただくといったようなことの一助になれば幸いでございます。

     最後になりますが、今日のこのシンポジウムのために色々とご準備をいただいた部会長の皆様、ご関係者の皆様に厚く御礼を申し上げ、私からの開会のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

    司会

     松永会頭どうもありがとうございました。それでは、各部会の発表に移る前に、浜口教授による特別スピーチをお願いしたいと思います。その前に平田事務局長より浜口教授のご紹介を簡単にさせていただいた上で、特別スピーチの方に移りたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • 平田藤義 事務局長

    平田藤義 事務局長

     皆様こんにちは。ただ今ご紹介にあずかりました平田でございます。私の方からは、今回10年ぶりに出版した現代ブラジル事典の編集長として大変ご尽力いただきました浜口伸明教授の略歴と、事典出版に至るまでの簡単なエピソードについてちょっと説明させていただきます。

     浜口教授は1987年4月、大阪外国語大学のポルトガル・ブラジル語学科をご卒業後に、95年5月、ペンシルバニア大学大学院地域科学研究科を修了され、博士号を取得されました。職歴といたしましては、アジア経済研究所の研究員をスタートに、2004年、神戸大学経済経営研究所准教授、さらに2007年、同研究所の教授、12年には同研究所所長にご就任され、現在は副所長および大学評議員も兼務されておられます。

     浜口先生はですね、英語、ポルトガル語、スペイン語が非常に堪能なお方で、研究分野としては経済統合、空間経済学、国際開発論、ブラジル地域研究がありまして、その第一人者でございます。英語による出版業績は約24作品ありまして、日本語の書籍は今年4月に出版しましたこの「現代ブラジル事典」

    をはじめ、さらに2014年11月、「ラテンアメリカ社会学ハンドブック」、同年3月出版の「中南米経済と日本企業の動向」と、色んな著書が21作品あります。さらに日本語による論文も数多く、今年7月に「五輪開催都市リオの変容」と題しまして発表されたほか、2001年以降現在までにラテンアメリカおよびブラジルに関する論文を中心に何と43本も発表されておられます。

     ところで、これからは先生と私の出会いの関係なんですが、正直な理由を一言で告白しますと、前回の2005年度に発行した現代ブラジル事典の苦労をもう二度と繰り返すまいということで、全ての執筆を浜口新編集長にお任せということでありました。これは内情を知らない方からしますと全く無責任のように見えますが、事実は決してそうではありません。会議所として10年に1度の事典発行は何が何でもやり遂げなければならないという責任感、使命感があり、また一方では、2015年の日伯外交関係樹立120周年行事が立て込んでおりまして、中々私にはとてもとても及ばない能力の限界が背景にあったからです。

     2005年の事典というのは大変色んな問題がありまして、立命館大学の小池編集長が陣頭指揮をされて、その執筆陣にブラジルから100名、日本55名の教授陣、合計155人が携わって、2005年に出版しましたあの500ページの事典が出来上がった訳でございます。

    その時たいへん、色々、ブラジル側の執筆者を選んだり、探したり、原稿を書いていただいたり、あるいはその修正をしていただいたりとか、あるいは執筆者が途中で日本にお帰りになって不在になりまして、行方不明になったりとか、あるいはまた、執筆を断られて、非常に大事な分野に関しては自作自演を強いられたりとか、大変な思いで深夜ずっと2、3年やって参りましたけど、これはちょっとやっぱり、日本の錚々たる造詣深い専門家の方々にご依頼しないととてもじゃないけど責任を果たせないということでですね、浜口先生に小池先生の方から白羽の矢を立てていただいてですね、目出度く今回執筆完了したことになります。浜口先生、改めて、どうかお許しください。本当に御無礼なことをしたと思いますけども、何卒ご容赦のほどよろしくお願いいたします。

     浜口先生とは東京の居酒屋でですね、十分この執筆に当たっての事典の構想を練ってですね、無事今年4月出版の運びとなりました。そういうことで、昔のことを語り出したらきりがないので、このあたりで浜口先生にご講演をお願いしたいと思います。最後になりますけども、このシンポジウムに、事典執筆に大変ご協力いただきました神田外語大の舛方講師、並びに本日多分ジェトロの二宮さんもいらっしゃっていると思いますけど、厚く御礼申し上げます。さらにですね、毎年毎年会議所をご訪問いただいています明治大学商学部教授の中林真理子さん、IDBの六浦吾朗さんにもご参加いただいております。本当にありがとうございます。ぜひこのシンポジウムが終わった際にカクテルもございますので、意見交換をさせていただきたいと思います。そういうことで、ちょうど5分たったところで、私のご紹介とさせていただきます。本当にありがとうございます。

    司会

     平田事務局長どうもありがとうございました。それでは浜口教授による特別スピーチの方に移りたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • 特別スピーチ  浜口伸明 神戸大学経済経営研究所教授・副所長

    浜口伸明 神戸大学経済経営研究所教授・副所長

     皆様こんにちは。浜口でございます。よろしくお願いいたします。高い所から失礼いたします。

     先程、9時40分ごろにグアルーリョスに着きまして、何か今こうしているのが夢のようでございますけれども。先程平田事務局長からご紹介いただきました通り、2年ほど前ですかね、ちょうど、東京の居酒屋で「あなた、やりなさい」というようなことで。皆様の社会もそうかもしれませんけども、研究者の社会というのも中々の縦社会でございまして、先程名前が挙がった小池先生というのは私が前に勤めておりましたアジア経済研究所時代の上司でありましたので、そう言われますと断れないということで、有無を言わさずというようなところがございましたけれども、非常に名誉なことというふうに感じまして。この商工会議所の方で10年ごとに事典を編纂されておられて、以前は経済事典といっていたんですかね、それが10年前に現代ブラジル事典ということで、その一部の執筆を私の方も担当させていただいたこともあったんですけれども、小池先生の方からはそろそろ世代交代もしなくちゃいけないというふうに尻をたたかれまして、私も能力の足りないところも重々承知しておりましたけれども、お引き受けしたような次第でございます。

      

     その事典を作ります時にいくつか前提条件があったんですけれども、前の事典は確かすごく分厚くて、値段が6000円以上したんですかね、それで中々売るのが大変だったというようなことを聞いておりましたので、今回は3000円台に抑えなさいというのが、それがまず前提条件になりました。

    それを踏まえて今回は分量を削るということを考えまして、その中で、前回の部分が、使える部分ですね、例えば文化とか自然・地理とか、それから歴史の部分ですね、この辺はそれほど大きな変更がありませんので、その部分は前回の事典をそのまま活用していただくことにして、今回は日本ブラジル関係、そして政治・外交、そして経済、ビジネス、環境問題、法律、社会開発問題、この7本立ての章立てで構成するということで決まったことになりました。

    で、まあ1年足らずの間で仕上げるということで、前回からの大きな変更点は、今平田さんからもありましたように、日本の研究者、総勢約50名を中心にですね、書くということになりました。色々な分野の研究者がそのために集まってくれまして、普段あまり交流のない研究者ともこれをきっかけにずいぶん話をさせていただくことができました。それも大変良かったかなというふうに思っています。

     で、何とかですね、本当は3月に出版ということをお約束していたんですが、約半月ほどずれまして、4月の中頃にようやく出版することができました。たまたまオリンピックということもありまして、中々、出版元の新評論によりますと、期待していたよりも売れているというふうに言われていまして。日本側では1000部印刷したんですが、5カ月でほぼそれを売り切ったというような状態でございまして、今増刷の計画を立てております。まだまだ今後売れるということが期待されてまして、出版社の方でも大いに期待をして、増刷の方に取り掛かっていただいている状態です。

     という、まあ中々、日本でもですね、少し評判が良かったということが我々にとって何より励みでありますけども、今日このようにして私を受け入れて下さいました商工会議所に、松永会頭をはじめ、大変私感激しております。これも今回事典を作ったことに対して一定の評価をして下さったものというふうに考えておりまして、こういった喜びをまた日本に持ち帰って、執筆にあたった、特に編集委員として加わってくれた8名の仲間とですね、この喜びを分かち合いたいというふうに考えております。

     さて、もう少しお時間をいただきまして、私今回ブラジルに参りましたのは、ブラジルに参りましたのは今年は2回目なんですが、アジア経済研究所に1987年に入ってから大体毎年1回か2回来ておりますので、それぐらいの回数を来ているということになりますが、特に今回はですね、大きな、政治的にも今日からimpeachmentの上院の最終審議が始まるというようなことが先程ニュースでも拝見いたしましたし、また先程松永会頭からのお話にもありましたように、色んな経済のメディアを見ておりますとようやく景気の底を抜けだしたというようなことが色んなところで言われているようでございます。

    そういう今、大きな変化の最中にあるブラジルの状況というものを調査するということで今回参りました。この中にいらっしゃる企業の皆様方の中にも、今回私のインタビューをお受けいただいた方がいらっしゃると思います。お忙しい中、色々と勉強させていただきまして、またそういう知識を日本に持ち帰ってそれを必要としている皆さんと共有させていただきたいというように考えております。

     今日は特に私の方から、講演ということではなくてですね、この後出てくるお話、私も学ばせていただくことが多いと思いますので、大変楽しみにしております。今日はどうもありがとうございました。

    司会

     浜口教授、どうもありがとうございました。それではこれから各部会の発表に移りたいと思います。今回発表いただく各部会では、熱心な議論が行われたかと思います。発表者の方がですね、熱が入って若干時間をオーバーしてしまうというようなこともあるかと思いますので、その際は私の方から何らかの形で合図をさせていただきますので、私の方をちょこちょことご覧いただければと思います。それでは始めに、トップバッターですけども金融部会の発表に入ります。井上秀司部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • 金融部会  井上秀司 部会長

    金融部会  井上秀司 部会長

    Pdf金融部会    井上秀司    部会長       (三井住友海上)

     皆さんこんにちは。金融部会会長を務めさせていただいております、三井住友海上の井上でございます。よろしくお願いいたします。恒例によりまして、まずは金融部会より、ブラジル経済動向、銀行業界動向、並びに保険業界動向に関して発表をさせていただきます。

     私自身は今年ブラジルに赴任したばかりでございまして、皆様方諸先輩方の前でですね、ブラジル経済をお話しするというのは非常に憚られる状態ではあるんですけれども、役割でございますので何卒お許しいただければというふうに思います。余談ではございますが、そういう私がブラジルのことを知る上で、先程からちょっとお話が出ている現代ブラジル事典というのが非常に、大変役に立ちまして、他の本とちょっと違ってですね、コンパクトにそれぞれの項目がまとまっていまして、本当に参考になりました。これは平田さんからこう言ってくれと言われた訳ではなくてですね、本当にそう思っているので、ぜひ皆さん一人一冊お手元に置かれることを心からお勧めさせていただきたいと思います。

     さて、ルセフ大統領の弾劾裁判、今仰った通りですけれども、まさに最終局面を迎えつつあります。全般の状況としては、大統領の罷免はですね、既に織り込み済みの状況というふうに言ってよいかもしれません。

     現時点は国内外のブラジルに対するセンチメント、期待値が改善しているという状況で、世界的なリスクオンの傾向もあってですね、為替や株価が反応していますけれども、まあブラジル経済を取り巻くファンダメンタルズそのものはですね、まあインフレ率の低下傾向はありますけれども、大きな変化はなく、過去経済成長を牽引していた内需は引き続き低調。失業率も高くなっています。ブラジルの経済がですね、我々の期待通りに成長を取り戻せるかどうか、これはまさに来るべき新政権が緊縮財政路線を進めてですね、またそれに伴う各種改革を実行できるかどうかがポイントというふうに考える次第でございます。

     テメル新大統領、まだ言ってはいけない訳ですが、新大統領を支える布陣としては、メイレレス財務相はじめ大変期待できる布陣だというふうに思っています。一方でですね、まあ一定の痛みを伴う改革ということもあって議会や市民の反発も多々あろうかと思いますし、これから大型の地方選挙も始まるということでございまして、まあ中々物事は簡単には進まないんだろうなというふうには思いますが、ぜひですね、強力に進めていっていただきたいなというふうに思う次第でございます。

    皆様方におかれましては、弾劾裁判後に示されるであろう新政権のより具体的な政策、今まで話があったような政策が骨抜きになっていないかどうかと、そんなことも含めてですね、議会対策、結果を注視されて、各社の戦略に反映いただければというふうに考える次第でございます。

     なお、今日の各種指標につきましては、日々数字が変化することから、便宜的に8月12日時点の数字を使わせていただいておりますので、よろしくお願いします。

     それでは早速、最初のスライドをご覧ください。2016年上期を振り返ってみますと、引き続き政治・経済 ともに動きの激しい半年でした。主なトピックスとして4つ掲げています。

     まずはペトロブラス社を巡る汚職捜査の進展です。2014年3月にスタートした本件は、ゼネコントップや現職上院議員の逮捕という政財界を巻き込んだ大スキャンダルに発展しており、6月末時点で警察・検察における捜査、いわゆるラバ・ジャット作戦は第30ステージまで進展しました。3月には連邦警察がルーラ元大統領を一時拘束するという事態まで進展しています。

     2つ目はですね、政治的混乱に伴う財政再建の遅れの懸念を背景とした格付け機関によるブラジル信用格付けの格下げでございます。2月にS&P社がBB、ムーディーズ社もBa2とするなど、6月末時点ではフィッチを加えた主要格付け3社がブラジルのソブリン格付けをBBクラスの、いわゆる投資不適格な水準というふうにしております。

     3つ目はですね、5月の上院本会議の可決におけるルセフ大統領の180日間の大統領職停止でございます。

     4つ目はこれに関連しますが、弾劾手続きによるルセフ大統領の職務停止に伴いテメル副大統領が大統領代行に就任し、暫定政権が発足したことでございます。しかしながら、暫定政権発足から1カ月以内にペトロブラス社汚職関係で閣僚3名が辞任。また弾劾手続きをリードしてきたクーニャ下院議長も収賄関係容疑により議長職を辞任するなど、不安定な政局は引き続き継続しております。

     次のスライドは、これらを受けて、直近の主要経済項目について2016年度の予測も含めてまとめてみました。2016年予測とあるのは、ブラジル中央銀行がとりまとめております、民間銀行ですとかエコノミスト予測の平均値でございます。

     まずGDPの成長率です。2015年はここ数年の低成長傾向がさらに落ち込み、マイナス成長となりました。2016年もマイナス3.2%とマイナス成長が続くものと見込まれています。ちなみにこの予測では2017年の成長率は、直近19日の数字でございますが、プラス1.2%との数字が示されています。また、政府財務省からはプラス1.6%という数字が出ていることも皆様ご承知かと思われます。

     貿易収支はですね、2014年には2000年以降初となる赤字となりましたが、2015年はレアルが対ドルで大きく下落したことが輸出を下支えした一方、国内景気が景気後退に陥り、輸入品の購入が手控えられたことを主因に黒字に転換しております。

     株価を見ていただきますと、3年連続で年末の終値が前年を下回る状況が続いておりましたが、直近はご承知の通り58000レアル前後の株価となっております。

     政策金利につきましては、ここ数年インフレ圧力に伴い引き上げられてきましたが、2016年は年初より14.25%が維持されております。インフレ率の低下がさらに進めば、年末には13.75に下がるというのが予測でございます。

     インフレ率ですが、これは2015年末に10.67%と、2002年に12.53%を記録して以来の13年ぶりの高い水準となりましたが、2016年に入り大きな流れとしては低下傾向にございます。

     為替レートは2015年末1ドル=3.9608レアルと大きくレアル安となりましたが、上期は暫定政権の発足や中銀総裁の交代がマーケットで好意的に捉えられるなど、レアル高の傾向にあります。

     なお、明日26日にはですね、FRBのイェレン議長の講演が予定されているということで、その場での発言が注目されているところでございます。

     それでは、個別に見てまいります。まずはGDP成長率のスライドをご覧ください。

     第1四半期のGDP成長率は前年同期比マイナス5.4%と、8四半期連続のマイナス成長になりました。これまでのレアル安を背景に輸出は堅調で、前期比マイナス0.3%とマイナス幅が縮小するも、投資や国内消費がいまだに低調であり、景気浮揚までには今しばらく時間を要する模様です。

     次のスライドは四半期ごとの数値を示しており、棒グラフがGDPの成長率、折れ線グラフが工業生産指数を示しております。棒グラフのGDP成長率と折れ線グラフの工業生産指数を見ると、ともに2013年後半から成長率が低下していることが分かります。

     次のスライドは財政収支について示しております。2013年までは基礎的財政収支は黒字を維持しておりましたが、2014年よりマイナスに転じております。2016年も歳出削減に向けた動きはあるものの、景気低迷による税収の減少も影響するなど、引き続き赤字の予測となっております。また2017年もですね、赤字幅は縮小するものの、1390億レアルの赤字ということで政府が発表していることはご承知の通りかと思います。

     次に政策金利とインフレ率の推移でございます。政策金利の推移は実線で示した通りでございまして、2015年には5回にわたり引き上げられ、14.25%となりました。2016年は14.25%を維持しております。インフレ率は点線で示しております。2015年はインフレ圧力が高まり、12月には10.67%に達しましたが、2016年は低下傾向にあり、6月末では8.84%というふうになっております。通年では7.31%という予測であり、引き続き政府目標の4.5%プラスマイナス1.5%のレンジは超えておりますが、2017年には5.12%に下がるとの直近予測となっております。

     続いて為替の推移について見てまいります。まず対USドルですが、2002年の大統領選の過程で社会政策の拡充、対外債務支払い停止等の過激なスローガンを掲げていた労働者党のルーラ氏が勝利する可能性が高まったことを受けて、市場はレアル売りを進めて、一時は1ドル=4レアル台になりました。その後、ルーラ氏が大統領選挙に勝利すると、市場の予測に反し、財政規律と所得格差是正のバランスを重視した現実的な政策を打ち出したことにより、レアルは戻し、2011年7月には対ドルで最高値1.5391レアルをつけるまでレアル高が進展いたしました。

     2011年後半からは徐々にレアル安に進み、米国の利上げ実施、資源価格の下落による新興国・資源国の通貨売り圧力、政治的不安要素の拡大、格下げ等が重なり、2015年後半にかけてレアル安の傾向が加速いたしました。しかしながら、ここにきて暫定政権の発足や中銀総裁の交代がマーケットで好意的に捉えられるという状況のほか、全世界的なリスクオンといったような状況もあり、現時点レアル高の傾向にあり、6月末時点では1ドル=3.2130レアルとなっております。この状況はその後も、一進一退はありますけれども、このレンジで継続しております。

     続いて、円レアルでございます。対円では、レアル相場は2015年を通じて32.6%下落いたしました。2016年に入ってもその傾向は加速し、2月19日に最安値の28円をつけています。6月末時点では1レアル=32.11となっております。

     次は、ブラジルの格付けの推移です。S&P社およびフィッチ社が2015年にそれぞれ投資不適格級であるBB+としていましたが、2016年2月にムーディーズ社も格下げを実施し、これにより6月末時点で主要格付け3社のブラジル格付けが、BBクラスの投資不適格の水準というふうになっております。

     続きまして、CDS、クレジット・デフォルト・スワップの推移を示しております。これは、ご承知のように国の信用力のバロメーターとなる指標でございまして、まあ信用リスクに対する保険料率、マーケットの評価というふうに見ていただければというふうに思います。

    ちなみにここに出ているベーシスポイントというのは、100ベーシスポイントが1%ということのようでございます。先程ご説明した格付けの低下とともにですね、CDSも高くなり、2015年9月には533.3ベーシスポイントというふうになりましたが、2016年に入りブラジル政治の先行き不透明感の和らぎなどから低下傾向にあり、6月末時点では317ベーシスポイントとなっております。また8月12日時点では257.6ということでさらに下がっているという状況です。

     これはちょっと気になる指標ですけれども、失業率でございます。昨今の景気低迷による企業の雇用調整が本格化したということを受けて、失業率は昨年から急上昇しております。2016年6月末では11.3%ということで、景気低迷の深刻さがまあこの指標に顕著に表れているというふうに言えると思います。

     続きまして、外国直接投資と外貨準備高の推移でございます。景気低迷の局面ながらも、外国直接投資は、レアル安等の要因もあるのでしょうが、比較的安定的に推移していることが分かります。長期的視点でブラジルへの投資が継続されているということが言えようかと思います。また、6月末時点の外貨準備高は約3767億ドルということで、2016年6月単月輸入の約30カ月分に相当するボリュームを確保しており、仮に急激なレアル安に直面しても十分にレアルの買い支えをできる水準にあるというふうに考えられます。

     さて、次のスライドはですね、我々金融部会所属の各銀行様による2016年の予想を、各項目ごとに最大値と最小値というレンジの中で表記させていただきました。なお、8月5日を回答期限に集計しておりますので、その後の材料は織り込まれておりませんことにご留意いただければと思います。

     まず、2016年のGDP成長率はマイナス2.2%からマイナス3.8%のレンジと見ています。2016年も2015年に引き続きマイナス成長を予測しているということです。なお、隣に上期とありますのは前回のシンポジウムで使わせていただいた予測値でございますので、まあその差ということをご参考までに表記させていただきました。

     2016年末のインフレ率は6.91%から7.5%というふうに見ております。昨年比落ち着きは取り戻しつつあるものの、物価上昇圧力は引き続き強いものというふうに予測をしております。

     為替レートにつきましては1ドル=3~3.4レアルということで報告を受けております。

     年末の政策金利につきましては、13.25%から現状維持の14.25%の幅で見られています。

     続いて次のスライドをご覧ください。ちょっと字が小さくて恐縮でございます。このスライドではですね、前スライドのご説明の2016年末の予測とともにいただいた各銀行様からのコメントを集約させていただいております。

     本日のテーマとなっております課題と対策に絞り紹介させていただきますと、課題ではですね、高金利を要因とする当地における資金調達の難しさ、ブラジル・レアルのボラティリティの高さに対する対応といった、資金面での課題が挙げられるとともにですね、硬直的な労働市場の中で従業員削減の難しさ、あるいはそのコスト負担、一方でですね、今後の回復を見越した熟練度の高い労働者の確保の必要性と、まあこういったことが挙げられています。また、代金回収リスクの高まりに伴う資金繰り、キャッシュフローマネージメントの必要性等も挙げられております。

     対策としてはですね、関連情報を幅広く収集し、知見を蓄えておくこと。具体的には日系企業間や同業種間における情報共有、ノウハウの共有が有効であると。また、ブラジルに関する意思決定は日本語・英語メディアの情報に左右されがちなので、地場における幅広い情報ソースを活用し、正確な状況認識を本社にしてもらうことが第一歩というようなコメントでございます。

     私自身はですね、ブラジルに来る前6年間東南アジアにおりまして、まあ単純に日本の視点で言えばですね、例えば東南アジアとブラジルを比較した時に、どうしてもやっぱりアジアの強みとブラジルのリスクということで際立ってしまうんですけれども、やはり違う観点、視点で長期的な取り組みをすることの必要性というのをこちらに来て実感している次第で、皆さん仰ったようにですね、正確な状況認識を本社にしてもらうということの重要性を非常に感じるところでございます。

     続きましてですね、銀行業界の動向について数字とともにお話させていただきたいと思います。

     最初に貸出残高の推移でございます。毎年二桁ペースの増加率で伸びていた融資残高は、2015年は6.7%の伸び率にとどまりました。一番下の数字でございます。

    経済成長の失速が見えていた2014年には法人向け貸出ペースは既に鈍化しておりましたが、個人消費を支えるために消費者ローンを中心に個人向け貸出は13.3%という伸び率を記録しました。しかしながら、2015年には高い金利による借入ニーズの減退、また金融機関の保守的な貸出姿勢なども相まって個人向け貸出も低調になり、全体では6.7%の伸びということになりました。2016年上期もこの傾向は続いておりまして、上期の伸び率は、一番下ですけれども、1%ということにとどまっております。

     こちらはですね、新規与信に対する平均スプレッドの推移ということでございます。まあ銀行様としてのですね、実質的な金利というふうに見てもよいかもしれません。一番上の折れ線グラフが個人向け貸出、一番下の線が法人向けの貸出、真ん中の線が個人と法人の合算といったものでございます。かかるスプレッドの大きさというのは、まあブラジルの一つの特徴になっているんだというふうに思います。2014年まではですね、ブラジル国内におけるスプレッドは低下傾向にありました。2015年以降は 景況感の悪化からスプレッドの引き上げがなされているということが見て取れるというふうに思います。

     次のスライドは不良債権比率でございます。こちらのグラフは90日超延滞の不良債権比率を示したグラフになっています。一番上の折れ線グラフが個人、一番下が法人、真ん中が合算と、同じでございます。2014年までは貸出残高が大きく伸びていたということもあり、延滞率は下方傾向にありました。

    2015年に入ってからは保守的な与信および借入ニーズの減退など、貸出残高の伸びが緩やかになったことに加え、景気悪化を背景に個人、法人の延滞額も増加したことから、延滞率の上昇が見て取れます。なお最後の月にちょっとガクッと減っておりますけれども、これはまあ期末ということでですね、6月末ということで各社不良債権処理をした結果ということで、見かけの数字は減っているということです。

     大手銀行の不良債権比率はその後も引き続き増加傾向にあるというふうに認識をしております。ただ、この影響はあるものの、大手銀行を中心に収益性は依然として高く、銀行部門は引き続き堅調に推移をしているというふうに見ております。ただし、不良債権比率の増加についてはまあ注視をしていく必要があるのかなというふうに思います。なお、各銀行の自己資本比率は相応に厚く確保されていることに加えて、ブラジル中銀により保守的に管理されていることから、金融問題によって経済が混乱するリスクというのはまあブラジルにおいては限定的というふうに見ております。

     最後に保険業界動向についてお話をさせていただきます。

     ブラジルの保険監督庁であるSUSEPの統計データによりますと、2016年1月~6月の保険料収入の伸びは2.4%と、二桁成長が続いていた2013年度までと比較すると、経済の低迷に連動して保険マーケットの成長も鈍化をしております。

     次はですね、保険種目ごとの収入保険料のデータです。特に自動車保険につきまして、販売台数の減少等も受けてですね、あるいは競争の激化も踏まえて、保険料が減少しているという状況がございます。

     次のスライドは保険種目ごとの損害率のデータでございます。全体では1.2%、損害率、いただいた保険料に対してお支払いする保険金の額ですけれども、が増加しているという状況ですが、内訳を見ると、やはりここもですね、自動車保険が2.7%のプラスというふうに悪化傾向がございます。競争の激化ととともに、まあこういう環境の下盗難事故も増えておりましてですね、まあそれが一つの大きな拡大の原因になっているというふうに見ております。皆様方も自動車の盗難につきましてはですね、引き続きご注意いただければというふうに思う次第です。

     当地の保険業界はですね、保険会社数が多いということもありまして、競争が大変厳しく、保険事業の低い収益性を運用収益によってカバーしていると、まあこういう実態がございます。

     最後に2016年のブラジル保険市場の成長見通しについてご報告させていただきます。

     ブラジル保険会社連盟が2015年(●(※注)●2016年では?●)5月に公表した成長見通しでは、自動車保険、火災新種、運送といった損害保険の成長率は1.4%~5.2%。生命保険・傷害保険ではマイナスの1.8%からプラスの3.3%。全体では0.4%~4.6%というふうになっております。

    今年度のインフレ率、先程お話した通り7.3%ということで言うと、まあここら辺を加味した実質的な成長のペースということでは、まあ実質的には若干縮小しているというふうに言ってもよろしいかもしれません。経済の不透明さ、自動車新車販売の低迷、個人消費の停滞ということで、保険業界を巡る環境も厳しくなっているという状況でございます。

     中期的にはですね、ブラジルは引き続き有望な市場であることは間違いないというふうに考えておりますが、やはり先ほど申し上げた通りですね、他地域との単純な比較ではなくて、ブラジル独自の観点で長期的に戦略を立てていくことの必要性というのを改めて感じているところでございます。

     以上で金融部会からの報告を終わります。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     井上部会長、大変ありがとうございました。ちょうど時間ぴったりに終わりましたので、すいません、質問もあるかと思いますけれども、このまま次の貿易部会の発表に移りたいと思います。それでは今井重利部会長よりですね、発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • 貿易部会  今井重利 部会長

    貿易部会  今井重利 部会長

    Pdf貿易部会    今井重利    部会長    (伊藤忠)

     高い所より失礼します。ただ今ご紹介いただきました、伊藤忠商事の今井でございます。今年貿易部会を担当させていただくということで、よろしくお願いいたします。次のスライドをお願いします。

     これからスライドが出てきますが、上期の回顧と下期の展望ということで、15年度の上期と今年16年度の上期の比較を中心にこれからご説明させていただきます。

     最初に結論めいたことを申し上げますと、去年から非常に、やっぱり、貿易黒字がかなり巨額になっているということなんですが、結果としてはですね、輸入・輸出とも金額が落ちていると。特に輸入が落ちているということなので、絶対量がやはり減っていますので、黒字がかなりたまっていますけど、これは一概に喜べる状況じゃないなと。というのがですね、今のブラジルを取り巻く貿易環境かなというのが、今の見方でございます。それでは次のスライドをお願いします。

     まず、貿易量。輸出はですね、棒グラフの半期ごと、左側の青でございます。輸入量がですね、右側の緑でございます。目盛は左側でございます。オレンジの折れ線グラフが貿易収支でございまして、右側が目盛でございます。この横の赤の線が貿易収支のゼロの線でございます。

     まず貿易量の絶対数で見ますと、2008年まで増えてきましたと。で、2008年の9月のリーマンショックを境に減ってきたと。これがずっと持ち直してきてですね、2011年、12年、13年は大体輸出・輸入とも1200億ドルぐらいでまあ横ばいだったと。これがですね、13年、14年にかけて絶対値がどんどん下がってきたというのが今の現象でございます。

     貿易収支を見ますと、基本的には2000年以降ずっと黒字でございました。13年はですね、半期は赤字でしたけど、年度で見ると13年は黒字。で、14年にですね、2000年以降で初めて年間で39億ドルの赤字になりました。ところが15年になりまして、これがですね、経済の状況、あとはレアルが4を超えたということもありまして、黒字幅がドラスティックに上がっていったということで、15年度全体で貿易黒字が197億ドルでございます。これが16年の1-6月上期だけで15年を超えまして、237億ドルの貿易黒字というのが現状でございます。次のスライドをお願いします。

     今の貿易を輸出、輸入と分けていきます。まず主要商品別でございまして、ジャンルは一次産品、半製品、工業製品というふうに分けますが、全体観から言いますと、下の輸出金額・量で見ますと金額は下がっていると。マイナスの4.3%ですと。ただし数量が非常に伸びていると。プラスの10.6%ということで、数量の伸び、特に一次産品ですが、数量の伸びで金額を補っていますが、金額のマイナスはそこまでカバーできていないという状況でございます。

     主なアイテムで見ますと、大豆が19.6%増と。あと、粗糖、砂糖が31.1%。あと大きいのは、まあこの二つが大きいんですけど、あと乗用車、航空機系統もプラスだと。ということでですね、業界によってまだら模様はありますが、基本的には金額の落ちを数量で補って、金額は若干のマイナスというのが輸出の全体像でございます。次のページお願いします。

     今度は主要国別でございます。中国、米国、それ以下の順位はあまり変わっていないんですが、やはり中国と米国の差がですね、非常にはっきりしてきたのかなと。中国は先程の大豆、粗糖等々の一次産品の輸出の伸びでプラス、これは金額ですが7%。一方米国はマイナス11.3%ということで、これは米国が特に航空機と原油関連の輸出がかなり落ち込んでいるということでこういう数字になっております。日本についてはプラス6.4%で、これは後でまた別途ご説明します。全体ですと、輸出はマイナス4.3%で、金額ベースはマイナスですけど多少でおさまっているという状況です。次のページをお願いします。

     今度は輸入でございます。これもジャンル別には一次産品、半製品、工業製品というふうに分けておりますが、まず全体観から言いますと、輸入は非常にミゼラブルでございまして、金額もかなり落ちていますし、数量もかなり落ちていると。金額ベースですとマイナス27.7%、数量ベースですとマイナス10.8%でございます。基本的にはですね、例えば、数量ベースですと軒並み落ちているんですけど、一つ、塩化カリウムというのが15年上期に比べて16年上期は21.9%プラスということで、これは塩化カリウムなので工業原料にも使いますけども、肥料原料にもなりますので、先程の大豆・粗糖等の一次産品の数量が伸びているので、肥料が伸びていてその原料であるカリウムの輸入が伸びているという構図だというふうに理解しております。次のページお願いします。

     今度は輸入の主要国別で、基本的には中国、米国はじめ順位は変わらないんですけど、ここは輸出と違いまして中国も含めて軒並みマイナスですと。金額ベースのマイナス、全体で27.7%ということでございます。日本もマイナス36%ですが、これもまた後ほどご説明します。次のページお願いします。

     今度は対日をもう少し掘り下げまして、まず輸出です。全体で見ますと、金額ベースですとプラス6.4%なんですが、このうち特筆すべきはトウモロコシと航空機でございまして、トウモロコシは900%以上の前期比アップでございまして、これはまあレアル安や、ブラジルの増産能力の増大ということで、米国産に比べて競争力が増しまして、日本向けが圧倒的に増えたという状況でございます。あと航空機につきましては、JALさんがですね、Embraer製品を採用したというのがこの期にございまして、これはちょっと特記事項として増えたのかなというふうに理解しております。

     一方輸入の方はですね、これはもう軒並み下がっておりまして、全体でマイナス36.2%。特にですね、やはり機械、自動車関係、この辺がですね、かなり落ちているのかなというふうに理解しております。次のページお願いします。

     今度はブラジルへの対内直接投資でございまして、まず左側のグラフ、これは半期ごとですけど、先程井上部会長からもございましたけど、貿易量に比べたらまあなだらかな減少なんですけど、やはり金額としても少しずつ下がってきているのかなと。例えばですね、2011年は年間で695億ドルの対ブラジルへの投資でした。去年、15年度の1年間はですね、579億ドルということで、やはり100億ドル強落ちているのかなということでございます。

     国別に見ますと、ドイツが158%アップということで、これはですね、去年の下期もそうなんですけど、ドイツはフォルクスワーゲン、ベンツ、化学会社のBASF等ですね、かなり継続的にブラジルへの工場新設もしくは増強投資をしているということで、ドイツは伸びています。あとイタリアが82.5%プラスで、これはテレコムイタリアがかなり巨額の投資をブラジルに決めたということで、ドイツとイタリアだけはかなり大きなプラスになっています。

    あとオランダとかバージン・アイランドもかなりプラスになっていますが、これは、この国の中で中国が入っていないので、中国が直接じゃなくて、まあオランダとかバージン・アイランド等SPC経由で投資しているので、そういう国というのは伸びているのかなというふうに理解しています。ただ全体では前期比マイナス14.1%の投資金額でございます。次のページお願いします。

     今度は主要業種別の対ブラジルの直接投資でございます。これもジャンルとしては一次産品、工業品、サービス業というふうに分けましたが、全体ではマイナス14.1%なんでございますけど、特筆すべきは工業に対してはプラス46.8%ということで、これが非常に大きな特徴でございまして、一次産品もマイナス18.7%、サービス業もマイナス35%なんですが、工業業界に対する投資は主要な産業全部伸びていると。

    あとそれにまつわって倉庫・輸送業系、これも伸びているということで、やはり地に足ついたところの海外投資、特に先程申し上げたヨーロッパ系が顕著のようですけど、これはかなり継続的な投資をしているというふうに理解しております。次のページお願いします。

     これはですね、最初の総括のページに7月の貿易統計を入れただけなんですけど、7月も45億ドルの黒字でした。これで、1-7月累計で今年は282億ドルの累計黒字でございまして、多分年間ですと500億ドルを超えるレベルで黒字になると思います。一方、冒頭でもご説明しましたけど、この貿易量絶対値がですね、かなり低くなっているというのが、やっぱり今のブラジルの現状を反映しているのかなということで、ここが課題というふうに認識しております。それでは最後のページ、まとめをお願いします。

     今申し上げたことを簡単にまとめましたけども、まず今年は500億ドルを超える黒字だと思われます。ただこれ、実態はですね、大幅な輸入減少、これはレアル安、ブラジルの景気悪化等々で輸出ドライブがかかっているということで、輸入がかなり減少。輸出も絶対値は下がっているということで前年比マイナスということでございますので、やはり一概に黒字ということでで喜べないなと。

    一方ですね、まあ今状況悪いんですけど、最近のアナリスト等々のプレスリリースとか分析してみますとですね、まあブラジル経済も底を打って、来年にかけて少しずつ上昇に転じていくのかなという観測が増えておりますので、やはりそういうのもですね、追い風にしながら、貿易部会としましては輸出入ともにですね、両方とも増加に尽力したいと。で、貿易量・金額ともにですね、絶対値を上げていきたいということで、まあ弊社も貿易会社でございますし、皆様とご一緒にですね、微力ながらブラジル経済、貿易に貢献していきたいと思います。

     すいません、簡単ですけど以上でございます。どうもご清聴ありがとうございました。

    司会

     今井様どうもありがとうございました。2時10分までなのでちょっと時間がございますので、質問の時間が取れましたので、ここで質問のある方挙手をお願いできればと思います。いかがでしょうか。ちょっとまだシンポジウム前半ですので、中々手を上げにくいと思いますけども、いかがでしょうか。

    コメント 今井部会長

     ではすみません、私の方から一つコメントしてもよろしいですか。このブラジル経済が底を打ったという観測の話なんですけども、私どもも日々商売をしていて、残念ながらあまり感じられなくてですね、まあ業界によってまだら模様ありますけど、相対的に言うとまだまだやっぱり、デイリービジネスは、まあ先程の失業率の話にもありましたけど、もう少し時間がかかるかなというのが私どもの体感温度でございます。

    ただ一方、うちの駐在員とかですね、出向者の、家のですね、家賃交渉とか、借りる契約交渉の話を聞いていますと、2,3カ月前と現状では大分マーケットが変わってきたのかなと。タイトになってきたのかなという報告をかなり受けてまして、聞いていますとやはり、先程の話でヨーロッパ系と中国系がかなり早目に、要するに駐在員も送ってきて動いているのかなというのをちょっと感じていまして、ですのでデイリーのビジネスはもう少し時間がかかるのかもしれませんけど、そういうインフラのところはですね、まあ少しずつやはり傾向が表れているのかなというのをちょっと体感温度としては感じ始めているところでございます。すいません、皆様のご参考までということで。

    司会

     はい。では大体、今10分ぐらいになりつつありますので、まあヨーロッパ系と中国系の動きに要注意ということで締めくくりたいと思います。

    今井部会長

     どうもありがとうございました。

    司会

     どうもありがとうございました。引き続きまして、次は機械金属部会の発表に移りたいと思います。池辺和博部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • 機械金属部会  池辺和博 部会長

    機械金属部会  池辺和博 部会長

    Pdf機械金属部会    池辺 和博    部会長     (日立南米社)

     皆さんこんにちは。機械金属部会の池辺と申します。私は前回のシンポジウムの直後、3月に前任の川崎重工の渡辺さんから部会長を引き継ぎまして、私にとっては今回初めてのこのシンポジウムということで、よろしくお願いいたします。

     本日の発表内容ですけれども、機械金属部会、多種多様の業種・分野の方が会員となっておられますので、このシンポジウムにあたって会員の皆さんからレポートを提出いただきまして、その提出していただいた企業をですね、このように6つに分類させていただいて、その個々の状況についてご報告させていただきます。そして最後に本日の副題となっております「どん底の時期ならではの戦略は」について触れさせていただきたいと思います。

     冒頭松永会頭から、ブラジル経済明るい日差しが出てきたという話もございましたけれども、今の今井貿易部会長の話じゃないですが、我々機械金属部会においてはですね、中々そういう明るい日差しの兆しは見えずにですね、ちょっと暗い話が多いんですけれども、ご勘弁いただきたいということと、先程の金融部会、それから貿易部会とも表やグラフを駆使されてほとんど定量的な話でしたけれども、私の方はちょっと定性的な、文字の多い発表ということで、ご勘弁ください。

     まず鉄鋼関連ですけれども、2016年上半期の粗鋼の生産・販売についてですが、国内景気の低迷を受けて、需要先であります建設業や自動車業界が不振ということを受けまして、生産に関しては前年比13%のマイナス。国内販売も16%のマイナス、前年比マイナスということになっています。昨年まですでに4年連続の前年比減少ということに加えてのこの減少ということになっておりまして、その影響で鉄鋼各社主要5社の高炉 14基のうち5基が休止状態となっておりまして、機械金属部会の鉄鋼関連の企業もですね、かなり厳しい状況を強いられておられます。

     輸出に関しては、前半のレアル安を受けまして、これは前年比17%の伸びということになっておりますが、ただ中国の過剰能力による安値輸出を受けて国際市況は依然低レベルにあること、あとアメリカがですね、ブラジルの鉄鋼に対するアンチダンピングの手続きを開始したということに加えて、ここ最近はレアルも反発傾向ということで、この最近の状況としては厳しいものとなっております。

     下期の展望ですけれども、ブラジル鉄鋼協会が出しております通年の予測から計算した下期の生産は、前年比ほぼ横ばい。国内販売はマイナス4%と、上期に比べてかなり改善はしているんですけれども、通年ではやはり5年連続の減少ということになりそうでございます。輸出に関しても先程申し上げましたような理由からですね、一転して大幅なマイナスということで、やはりまだ苦しい状況が続くものかと思われます。

     続きまして電力、社会インフラの中の都市交通についてご説明させていただきます。電力に関しましては、まあ経済活動の停滞により、一昨年までは電力の需給逼迫感があったんですけども、それは緩和され、さらには設備の余剰感さえ出ているというふうにみられます。したがいまして、今年上半期に行われましたエネルギーオークションの新設案件も529メガワットと、過去10年間の平均の3.6ギガワットに比べて7分の1程度というふうになっております。電力会社の方も資金不足から送配電を含めた設備の投資の先送りということで、こちらの方もかなり状況としては厳しくなっております。

     下期に関しましても、状況に大きな変化というのは期待できず、年内に予定されておりますエネルギーオークションも、小型の水力発電関連、あるいは再生可能エネルギー関連ということだけになっているようでございます。ちょっと話は違うんですけれども、電力料金の値上がりによって太陽光による小型発電の需要というのが伸びているようで、まあ大型ではないんですけども、この辺に我々のビジネスのチャンスを見出していくしかないかなというふうに考えております。

     続きまして建機とトラクターですけれども、建機の上半期の需要はですね、前年同期比27%のマイナスと。建築業の不振に加えて、まあラバ・ジャットによる、大手ゼネコンが公共事業への参加を中止したり、あるいは認可が取り消しを受けたことによって、BNDESからの融資がストップされているということに加えて、昨年末に建設機械に対するICMSの減免措置の廃止という憶測がありまして、駆け込み需要があった関係で、今年の前半1月、2月はその反動があったというのも影響しているかと思います。

     下期に関しましてもこのレポート企業はかなり悲観的に見ておられまして、下期は前年同期比42%のマイナス、通年でも35%のマイナスというふうに見ておられます。建機の平均稼働時間の前年同月比割れが止まって、底入れ観測というのも多少あるんですけれども、やはり新規の建機需要というのは来年以降になるのではないかというふうに見ておられます。

     小型建機に関しましても、状況としてはほとんど同じでして、この企業様の小型バックホーの販売は前年同期比約半分と。さらにその前年も約半分近かったということで、このような状況で下期に関しては農業や製造業等の非建設用途の需要を開拓していかれるというふうにおっしゃっていました。

     さらにトラクターに関してですけれども、こちらの方も前年同期比で上期は31%のマイナスと。農業は比較的堅調かというふうに見えていたんですけども、政府の農業向け低利融資の停滞というのがこの辺に影響しているようでございます。下期に関しましては、まあ季節的な要因、来期シーズンへの準備というのがありまして、上期に対しては20%ほど伸びるというふうに見ておられますけれども、年間ではやはりマイナス15%というふうに推測されておられるようです。

     続きまして切削機械と板金機械ですけれども、切削機械に関しましては主要の需要先が自動車業界ということで、この後自動車部会の方から詳しい市場状況があるかと思いますけども、上半期の新車の販売は前年同期比で25%のマイナス、生産の方もマイナス21%ということで、こちらの方もかなり苦労されておられます。ただこの会員企業の方はですね、新製品の投入や他社品からの切り替え等を行われて、前年同期比増、あるいは横ばいを確保されたということでございます。

     下期に関しましても、厳しい状況が続くことは変わりなく、比較的堅調な航空機や医療分野等の新規分野の開拓をされていくというふうに仰っておられました。

     板金機械に関しまして、こちらの方も主要顧客先が第1四半期で稼働率がほぼ半分であったというようなこともありまして、あと農業機械メーカーは多少の動きはあるものの、やはり新規投資は来年以降かということで、かなり苦しいというふうに報告を受けております。下期に関しましても、建設機械メーカー関連は回復の望みは薄く、農業機械に関しても稼働率はアップしているものの、やはり新規の投資までは結び付かずに、来年まで持ちこたえないといけないというふうに考えておられます。

     続きまして産業機械ですけれども、非汎用圧縮機に関しましては主要の用途が資源開発や石油関連ということで、ペトロブラスの投資の抑制や、資源価格の低位安定でかなり苦労されておられまして、メンテナンスやアフターサービス等の案件の掘り起こしが中心の活動となっておられたということです。下期に関しましても、ペトロブラスの生産計画がさらに下方の修正の見通しもあったりして、市場の好転の兆しはなく、やはり継続してメンテナンス、アフターサービスの案件を粘り強く追いかけていくということになりそうです。

     続きまして、ポンプに関してですけども、カスタムポンプに関しましてはやはり主要用途が製鉄、石油関係ということで、需要先の企業で従業員を40%もカットしたという企業もあったということで、この辺からも推して量るべしかと思います。標準ポンプに関しましては、主な用途が農業、建築設備ということで、こちらの方は前年同期比5%伸びたということですけれども、下期に関しましてはどちらも投資の見送り傾向が強くてですね、需要は減少するというふうに見ておられます。

     ホイストとクレーンですけれども、こちらはやはり主要先が自動車、鉄鋼関連ということで、需要は前年同期比で20%から30%の減ということで、ドイツの大手クレーンメーカーは天井クレーンの事業から撤退を決定されたというふうに聞いております。ただこのレポートいただいた企業はですね、風力発電タワーの特需的なものが上期にあった関係で、業績はアップされたというふうに聞いております。ただ下期に関しては、やはり回復の見込みは薄く、その風力発電の特需も上期に一巡してしまったということで、下期に関しましてはホイストの交換需要やライトクレーン等の小さな案件を拾い集めていくということになりそうでございます。

     竪型ミルに関しましては、主要用途はセメントですけれども、その重要が前年同期比で14%マイナスというふうになっておりまして、新規の受注どころかですね、注文のキャンセルや延期が続出したというふうに聞いております。従って下期の方も需要の回復は見込めず、その注文の延期やキャンセルの影響が残りますものですから、既存顧客を巡回し、スペアパーツの需要を探っていくというふうに考えておられるようです。

     最後になりますけども、小型エンジン・ベアリング・潤滑油です。小型ディーゼルエンジンに関しましても、やはり状況としては変わらず、この会社の販売は前年同期比台数で39%のマイナスというふうになっておられます。下期に関しましても、回復は早くて10月以降を見ておられまして、年間で台数で70%程度という見通しを立てておられます。

     ベアリングに関しましては、自動車や二輪向け、アルゼンチン向けの輸出が若干伸びたんですけれども、国内需要の低迷がありまして、全体では15年の下期に比べて若干微増だということでございました。ただ一般産機向けは客先の在庫が多く、受注が低迷しているというような状況でございます。下期に関しましては、やはり自動車・二輪向けは国内は若干減なんですけども、これをアルゼンチン向けの輸出で少しでもカバーを期待されておられます。一般産機向けに関してはまだまだ在庫水準が高く、回復の見込みが立たないものですから、医療や鉄道等新市場への進出を図っておられます。

     最後に金属加工油剤ですけれども、こちらの方もやはり主要顧客が自動車関連ということで、上期は前年同期比14%のマイナス。下期に関してもやはり回復は2017年以降と見ておられますので、全体で全年同期比10~15%のマイナスというふうに推定されております。

     以上が機械金属部会の各業種別・分野別の報告でございます。

     最後に本日の副題となっております「どん底の時期ならでは戦略」について、レポートいただいた企業の皆さんのコメントを整理した形で報告させていただきます。結論としましては、奇策や妙案はなくてですね、やはり地道に基本的な対策を実行していくことであろうと思います。

     すなわち、コストの削減ですけれども、部品等の製品コストの削減に加えて事務処理の効率化等によるオペレーションコストの削減の両面になるかと思います。

     また、これもコスト削減の一環になりますけども、スリム化の実施で、人員の削減に加えて経営の現地化や現地人の幹部登用というようなこともなされておりまして、これは日本人の削減にもつながり、さらにコストの削減につながるものかと思います。

     ただ、削減だけではこれはじり貧になってしまいますので、受注、売上の確保も当然必要になって来ます。サービス、保守等の中小型案件もですね、積極的に受注に行く。それから従来手がついていなかった新規市場への参入を図る。あるいはローラー作戦やトップセールスによる顧客への巡回。さらには周辺国への輸出の拡大というようなことも実施されておられます。

     また、こういう時期ですので、社員のモチベーション維持というのも重要になってまいります。従いまして、現地人管理職への経営情報の開示や、従業員の教育機会の充実等を実施されておられるということです。

     またこのような経済・経営環境でですね、業界の再編や集中が起こりうる業界もございますので、その辺の動向のウォッチ、分析、そして対応の検討というのも重要だというふうに仰っていた企業もございます。

     駆け足になりましたけども、以上が機械金属部会の発表でございます。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     池辺様どうもありがとうございました。ちょっと時間がございますが、ご質問等ございますでしょうか。いかがでしょうか。よろしいですか。それでは質問ないようなので、池辺様どうもありがとうございました。続きまして、自動車部会の発表に移りたいと思います。溝口功部会長より発表をお願いしたいと思います。溝口様、よろしくお願いいたします。

     

     

  • 自動車部会  溝口功 部会長

    自動車部会  溝口功 部会長

    Pdf自動車部会    溝口 功    部会長    (ホンダ)

     皆様、改めましてこんにちは。実は私、ブラジル生まれですから、ちょっと日本語の発音がうまくいかないところがあるかもしれませんけど、我慢して聞いてください。それでは、私から自動車部会の報告をさせていただきます。カマラからいただいたテーマに沿って四輪業界、二輪業界の順に動向を説明させていただきます。

     まず始めに、四輪業界の上期振り返りです

     上期の自動車市場は金利引き上げや失業率の上昇による景況感悪化の影響を受け、販売は98万台、前年比74%となりました。4年連続で前年を下回る結果となりました。輸入車比率についても、レアル安の影響を受け、14.2%と5年連続で低下しております。

     続きまして、2016年の月別販売台数です。1月以降、景況感の悪化により、左側の2015年に比べ販売がさらに落ち込んでいることがお分かりいただけると思います。一方、在庫月数は各社生産調整により、若干の落ち着きが見られるものの、依然高いレベルであります。

     こちらは生産と輸出の推移です。市場の状況を反映し、上期の総生産台数は101万台、前年比で78%となりました。一方で、レアル安の影響で輸出は増加しており、前年比114%となりました。

     こちらは輸出台数をカテゴリー別、輸出相手国別に見たものです。カテゴリー別では乗用車が前年比116%、ライトトラックが110%となり、レアル安を受け増加しました。輸出相手国別では販売が上向きとなっているアルゼンチンに輸出が増えました。それと、メキシコ向けも増えております。

     こちらは昨今の市場低迷によるメーカーと販売店への影響をまとめたものです。左は自動車メーカーの生産調整の状況です。ビッグ4を中心に集団休暇やレイオフなどの生産調整を継続しており ブラジル全体の稼動率平均は44%となっております。右側は販売店への影響です。ここ1年で、四輪・商用車・二輪合わせて1400店以上の販売店が閉鎖となり、雇用影響は5万8000人と推定されています。なお、このうち四輪の新車販売店は約960店含まれております。

     このような厳しい市場環境ではありますが、直近のトレンドとしてはSUVマーケットの活況をご紹介いたします。

     左のグラフはカテゴリー別の販売推移です。黄色で示したところがSUVとなりますが、ご覧いただくと分かる通り、他のカテゴリーが販売を落とす中、SUV市場だけが前年を上回り成長を続けております。これは、以前からトレンドとなっていたSUVマーケットへ各社が相次いで新車を投入したことによります。

     今月には日産さんが小型SUV であるKICKSをリオ五輪とあわせて発売され、SUVマーケットはさらに活況となる見込みです。

     続きまして、こちらはブランド別の販売台数とシェアの実績です。一番右は昨年と今年の上期における販売台数の差異を示していますが、ビッグ4と呼ばれるブランドが大きく販売台数を落としております。一方で、日系ブランドは各社がシェアを伸ばしており、厳しい市場環境でもそのブランドや品質などを背景に健闘していることがお分かりいただけるかと思います。

     続きまして、下期の展望に移ります。

     まずは経済指標の予測です。中央銀行の2016年予測はGDPの成長見通しおよびインフレ見通しが前回予想よりも若干悪化した一方、金利は13.25%へ引き下げられると予測されております。

     こちらは、それらの状況を踏まえた2016年の自動車業界予測です。ANFAVEAは今年1月時点で2016年の市場を237万台と予測していました。その後6月の発表では、直近の販売状況を反映し、208万台に下方修正しました。一方、自動車部会としては年初に200~210万台と予測しましたが、市場状況は年初から大きく変わっていないと認識しており、前回と同様の200万台と予測しております。生産台数についてはANFAVEA予想と同様の230万台と自動車部会では予測しております。

     次に中古車・新車別の販売台数です。新車については先程申し上げた通りですが、中古車市場は新車ほどの落ち込みが見られず、2016年は前年比10%減の900万台前後を予測しております。

     次に長期展望に移ります。

     まずは、マーケットの長期予想をする上で重要となる各金融機関の経済指標予測を見ていきます。年初の予想と比べると、直近の政治動向などにより各指標とも自動車産業にとってはプラス方向に修正されております。GDPについては2017年からプラス成長に転じるという予想となっております。このような経済予測や現状の販売状況を総合的に見た場合、ブラジル自動車市場が回復に転ずるのは来年2017年以降であると自動車部会では予測しております。

     続きまして、上期に起こった政変による自動車業界への影響予測でございます。左側にございます通り、現在テメル暫定政権は財政赤字削減を最優先し、いくつかの改革に着手しております。一方で、主要な経済政策は維持しており、暫定政権下では自動車業界への直接的な影響は少ないと考えております。 また、右側にございます通り、仮にテメル政権が正式に発足した後は、新体制の下、経済政策を含め本格的な改革を実行するものと思われます。具体的には、増税を伴う税制改革、現地調達や輸出の促進政策などであります。

     今後、自動車市場は緩やかな回復に転ずると予測されますが、税制改革など経済政策の転換による影響も注視する必要があります。2017年で終了するInovar-autoの今後も含め、政府に対する業界一丸となった取り組みが必要と考えております。

     続きまして、日系ブランドの課題への対応についてご説明させていただきます。

     こちらは、前回シンポジウムにて説明させていただきました日系ブランドの課題と、それに対する各社の取り組みでございます。今回はこの項目に沿って、前回からアップデートがあるトピックをご紹介させていただきます。

     まずは事業体質の強化について。トヨタさんのエンジン工場を取り上げさせていただきます。

     トヨタさんでは、部品現調率の向上、とりわけエンジンの現地生産による為替影響とコストの低減を目指し、今年5月に中南米で初となるエンジン工場の開所式を実施されました。ポルト・フェリス市にあるこの工場では年間10万基のエンジンが生産される計画です。また、「シンプル&スリム」、「フレキシブル」をキーワードに、革新的な生産技術が導入され、その結果、コンパクトで需要変動に強い工場となっております。

     さらに、ブラジルのお客様に適した商品の提供を目指し、今年8月に中南米で初となるトヨタ技術センターの開所式を実施されました。こちらではデザインラボにおけるブラジル固有のデザインの研究や、材料ラボにおける部品現調化に向けた材料の独自研究をされる計画です。

     続きまして、ブランド強化の観点で環境安全関連のトピックをご紹介させていただきます。

     まず環境関連の上期トピックとして、今年6月にトヨタさんのnew Priusが発表されました。new Priusはブラジルの自動車産業の未来を牽引して行く車としてアナウンスされ、輸入関税引き下げや自動車保有税の返還など、官民一体での普及が進められております。

     次に安全規制関連の直近の動向をアップデートさせていただきますと、側面衝突の技術規格が2018年8月から有効になることが確定したほか、灯火器に関する法規改訂提案が今年2月に提出されております。

    将来的な国連法規への正式加盟を見据えて、ブラジル法規も国際基準に調和していくものと思われます。このような環境安全領域は、技術で優位に立つ日系メーカーにとってはブランド強化の切り札となり得ることから、より一層の取り組みが必要になると考えております。

     それでは四輪パートの総括に移ります。

     この1年間を振り返りますと、昨年後半に始まりました急激なレアル安および景況の悪化から一転、今年はジルマ大統領の罷免手続きが採択された4月以降、為替含めた経済指標で若干の改善が見られました。このような状況から、ブラジルでは政治経済の急激な変化が今後も起こりうるということ、またそれを前提に急激な変動に耐えることができる事業体質の強化が大変重要であると改めて認識いたしました。

     引き続き為替対応を踏まえた部品現調化や、生産性向上などによるコスト削減、および輸出促進を長期的な視点で推進する必要があると考えます。一方で、現調化や輸出のさらなる加速には低いコスト競争力を打開する恒久的な取り組みも官民連携の下で必要と考えております。

     こちらはそのような背景を踏まえて政府への提言でございますが、自動車政策や自由貿易政策を含め、幅広い領域について取り組みが必要と考えております。引き続き業界一丸となって、是正提言を粘り強く続けていくことだと考えております。どうか皆様ご協力賜りますようよろしくお願いいたします。

     続きまして二輪業界について状況を説明させていただきます。

     まず生産・販売の動向でございます。インフレ、レアル安、解雇増等の経済指標悪化により、2016年上期の卸販売は45万台、前年比69%と、5年連続で前年割れとなりました。また低調な販売状況を反映し、生産は46万台、前年比67%となりました。一方でレアル安を背景に輸出台数は前年比170%と大幅に増加しました。

     こちらは登録ベースの月別販売推移です。失業率の上昇や顧客の購買力低下によって、16年上期は前年比70%前後の販売となりました。負債や金利の高止まり等により、下期も厳しい市場環境が予測されます。

     最後になりますが、二輪販売の支払い形態推移でございます。3月までの実績ではありますが、ファイナンスの与信審査厳格化も続きまして、ローン販売比率は低下しております。このローン販売比率の低下は市場が大きく減少に転じた2012年から継続しており、ローン販売の減少が市場に大きく影響していることがお分かりいただけるかと思います。

     以上で自動車部会の報告とさせていただきました。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     溝口様どうもありがとうございました。大変厳しい状況にある中、具体的な対応策、そして提言に至る発表をいただきまして、誠にありがとうございました。まだ時間がかなりございますので、非常に興味深い内容だと思いますので、ここで質問等ございましたら挙手をお願いできればと思います。いかがでしょうか。中々、初めに手を上げるというのはちょっと勇気がいると思いますが、かなり時間がありますので、この際にという方はいらっしゃいますでしょうか。溝口様の方で何か補足したい点はございますでしょうか。よろしいでしょうか。

    溝口部会長

     先程色んな方から、少し景気回復が見えてきた感じだというようなコメントありましたけど、確かに実商売ではまだ何も、多分学者の話かもしれません、我々日々の商売では何も影響ないんですけども、まあ今月末、31日、1日あたりまでにブラジリアの方で大分決まってくると思いますので、その後を楽しみにしております。

    司会

     溝口様どうもありがとうございました。それでは前半の部最後の発表となります。コンサルタント部会の発表でございます。西口阿弥部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • コンサルタント部会  西口阿弥 部会長

    コンサルタント部会  西口阿弥 部会長

    Pdfコンサルタント部会     西口阿弥    部会長     (EY)

     高い所から失礼します。コンサル部会、EYの西口です。どうぞよろしくお願いします。

     コンサルタント部会では会員である主に人材派遣会社、広告会社、コンサルティング会社で話し合いを8月10日に行い、一般的な動向をまとめました。

     人材派遣会社ですが、景気は良くないが、基本的に求人数は減っていない。ただし失業率の上昇のため、履歴書が送られる数は6カ月前に比べ12%増加したそうです。現状も、日本企業の日本語を話せる従業員の雇用希望は減っていないようです。給与削減などの理由から、従業員の入れ替えをしている企業はまだ多いそうです。失業率が上昇したため、良い人材が今余っている状況です。

     広告会社ですけれども、広告のデジタル化が多くなり、ソーシャルメディアの広告が増えているようです。一般的に、これは日系企業だけでなくて、自動車や飲料会社の広告数は増加している傾向にあります。

     次ですけれども、法律事務所。法律の事務所さんは基本的に新規の投資の案件はないそうです。また、訴訟は一般的に増えており、特に労働訴訟が多くなっているようです。また、延滞債権が増えているため、その関係の案件で忙しいようです。

     コンサルティング会社ですけれども、やはりあまり新規の投資案件はない様子です。M&AやJoint Ventureを検討している会社はあり、買収案件など、検討しているが実際に踏み切れていない状態にある傾向です。また、在庫の整理に関連した税務のコンサルティング。主に在庫処分についての問い合わせ、税務クレジットの解消に関わる問い合わせが多くあります。また、在庫管理、節税や、たまった税務クレジット解消のための物流の変更を検討される会社もあります。

    以前は高いコストなどを考えて物流の変更まで検討される会社は少なかったのですが、最近は前向きに考える会社がいくつかあります。また、コンサルティング会社でも、延滞債権に関連した問い合わせも同様ございます。また、

    借り入れに関連し、増資、減資、デットエクイティーコンバージョンを検討している会社が増えました。その税務についての問い合わせが増えました。前回、労務とリストラに関する問い合わせがあると申し上げましたが、まだ続いているのが現状です。また、不正防止、不正調査や、その対応の問い合わせもあります。

     次のスライドですが、経済概況についてちょっと歴史背景からお話ししたいと思います。

     皆さんご存知かと思いますが、1980年代から90年までは失われた80年代と言われています。70年代後半における石油ショックと輸入依存体制により、ブラジルは80年代に多額の対外債務を抱え、価格の上昇を抑えることができず、超インフレ状態に至ります。所得配分の不平等、膨大な低所得層、高金利、さらに信用も得られない状態が続きました。

     1990年から2000年までは90年代における構造調整と改革と言われ、90年代初頭、ブラジル政府はインフレを抑制し、著しい民営化制度でブラジル市場は自由化します。90年代を通して厳格な財政政策が導入され、政府の規模と支出が縮小され、対外債務を返済します。所得水準の低下、政府の支出削減と高金利による10年間は消費が減退しました。

     2000年以降は継続的な成長があったと言われた時期であり、2000年以来安定した経済と対外債務の全額返済により金利は低下、信用市場も回復し、所得再配分政策により5000万人は新中間所得層に加わりました。所得の増加と信用が得られることにより、ブラジル人の消費は拡大しました。これらの要素と、政府の産業全般への優遇政策、さらに自動車産業への優遇措置が人為的な成長と国内債務の増大につながりました。

     その後の経済概況ですが、2000年以降第一期に持続可能な成長時期と言われたルーラ大統領の第2政権。第二期はルセフ大統領第1政権の投資グレードと言われ、第三期は不安定である時期と言われているルセフ大統領の第2政権です。見通しとしては、2017年以降は回復するのではないかと言われています。

    こちらは、ちょっと古いデータ、5月現在の指数となりますが、ブラジル中央銀行が今週発表したBoletim Focus、市場に関わるレポートでは、2017年の経済活動とインフレに関する市場の予測は以前よりも良くなりました。

    GDPにつきましての予想は、2016年も同じですけれども、2017年については1.2%成長があると修正しています。2016年についても、以前はマイナス3.86%でしたが、今ではマイナス3.2%としています。ブラジル財務相はマイナス3.1%からマイナス3%に先週予測を修正しました。またインフレにしても、IPCAインデックスは2017年は5.14%から5・12%と修正しています。

     次のページですが、今行われているルセフ大統領の弾劾、2月以降のまとめです。下院は4月に必要な3分の2の票を得てルセフ大統領の弾劾手続き開始を承認しました。承認された後、本件は上院に移され特別委員会が審議します。2016年5月12日、上院は単純多数決で弾劾手続きの開始を承認し、ルセフ大統領は最大180日職務の停止となり、裁判が始まりました。同じ週に、暫定政府は当時の副大統領のミシェル・テメルにより発足しました。

     ルセフ大統領は政権第一期、第二期に連邦政府の支出に違法な金融取引を行った容疑で裁判にかけられています。裁判での審理の後、上院はまた採決を行い、大統領が完全に失職するには3分の2の弾劾賛成票が必要であります。裁判は始まっており、30日に投票が始まり、30日あるいは31日に弾劾についての結果発表がされる予定です。

     暫定政府の今後の政策ですが、ミシェル・テメル大統領代行はブラジルの成長を再び確保するために、緊縮を提唱するPMDBが当初2015年11月に掲げた「将来への架け橋」と題した改革案を公表しています。インフラに関する可能な分野の民営化、また増税を好まないと言っています。しかし、側近によると税率の引き上げもやむを得ないことを認めています。

     ブラジルのM&Aについてですけれども、経済、政治状況につきまして、2015年に比較しまして取り引きの量は減少の傾向にあります。18カ月前に比較しEBITDAsの減少、米ドルに比較しレアル安により、ブラジルの企業は国内、海外企業にとって魅力的であり続けます。

     ブラジルでのM&A取り引き件数ですが、こちらは2015年1月~6月末、2016年の1月~6月末を比較したものです。国内とアウトバウンドは減っていますが、インバウンドの案件数は増えています。

     最後になりますが、6月9日のVeja誌では、GDPは底を打ったのではないかとの記事が載りました。ブラジル株式市場も良くなっている傾向にあります。また、ルセフ弾劾手続きも終わりに近づいています。また、1万1480人の選手、205カ国が参加したオリンピック、成功に終わりましたが、その力がブラジル経済回復の後押しをすることを期待しています。

     コンサルタント部会からのメッセージおよび、今回の副題「どん底の時期ならではの戦略は?課題整理と対処法」ですが、まずは良い人材の採用、確保を、です。良い人材が余っているため、その採用をする機会ではあるのではないでしょうか。また、リストラされている会社もあると思いますが、景気が良くなることを期待し、可能であれば良い人材を確保できればと思います。

     次は、M&Aの準備を。今M&Aに踏み切れない場合、近い将来恵まれた環境になってきたらすぐできるよう資金を準備するのはいかがでしょうか。

     また、不動産やM&Aは掘り出し物を探そう。すべての不動産や会社の価格が下がった訳ではないですが、目を凝らして探したら良い物件、オポチュニティーがあるのではないでしょうか。

     キャッシュフローで悩まれている会社さんは、いま整理をする機会ではないでしょうか。

     また、労務訴訟はブラジルの場合なくなることはありませんが、この機会に人事ポリシーや人事管理などを考える機会ではないでしょうか。

     以上になります。

    司会

     西口様、どうもありがとうございました。コンサルタント部会から色々な提言が出されておりますが、こちらの発表につきましてご質問等ございますでしょうか。挙手をお願いできればと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、西口様どうもありがとうございました。

     それでは前半の部、金融部会、貿易部会、機械金属部会、自動車部会、コンサルタント部会の5部会の発表を終わりました。予定よりもかなり早く進行いたしまして、若干時間がございますが、前半の部でですね、ちょっと質問の時間が取れなかった部会もございますので、ここで前半の部のところで何か質問をぜひしたいという方は挙手をお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。

     「どん底の時期ならではの戦略は」ということで前半5部会から報告がございましたが、皆さんの報告を伺っておりますと、やはり今、ブラジルの期待値とですね、今まさに非常に苦しい現況のギャップがすごく浮き彫りになったのではないかなと思います。そうした中でもですね、自動車部会様のように具体的な対応策、それから要望といったものが出てきていたかと思います。前半の部以上で終了いたしますけれども、また後半もですね、色々な対応策、要望等出てくるかと思いますので、その辺を期待しまして、まず前半の部を終了したいと思います。

     まだ時間がすごくあるんですけれども、後半の開始はちょっと早く開始してもよろしいでしょうか。支障なければ、これから20分間休憩しまして、後半の部を、3時30分の予定なんですけれども、3時20分ぐらいに開始したいと思いますが、よろしいでしょうか。それではこれから20分間コーヒーブレイクとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。また20分後に再開いたしますので、こちらの方集合いただくようにお願いいたします。では前半の部終了させていただきます。ありがとうございました。

    コーヒーブレイク

    司会

     シンポジウム後半を開始したいと思いますので、席の方についていただきますようお願いいたします。よろしいでしょうか。シンポジウムの後半開始いたします。大方席につかれましたようですので、これより業種別部会長シンポジウムの後半戦に移りたいと思います。よろしくお願いいたします。まずは電気電子部会の発表から始めたいと思います。それでは磯村恵次郎副部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • 電気電子部会  磯村恵次郎 副部会長

    電気電子部会  磯村恵次郎 副部会長

    Pdf電気電子部会    磯村恵次郎    副部会長    (EPSON)

     電気電子部会の発表をさせていただきたいと思います。本日残念ながら部会長の千野がちょっと都合が悪いということで、私磯村が代行させていただきます。よろしくお願いします。

     まず我々業界が置かれている事業環境の認識ということで、このようなスライドにまとめさせていただきました。ここにありますように、大きく4つの観点からですね、レアル安、インフレ・高金利、政局の混乱、リセッション・失業率上昇というような環境の中で、耐久財の消費、生産用機器、公共事業、まあ全ての面でですね、まあ事業環境はどん底 の状況にあるという認識を私どもの業界は持っております。

     今の認識を数値的に表わしているのが、このマナウスでの主要の家電製品の生産量です。2014年から15年、16年という形で、ご覧になって分かりますように、全てのカテゴリーで右肩下がりという状況にあります。中でも液晶テレビに代表されるオーディオビジュアルの世界ですね、それについては年々30%の減少。

    それから携帯電話は従来この業界でどんどん伸びてきたカテゴリーですけれども、携帯電話についても生産が減少していると。右側二つ、電子レンジとエアコンといういわゆる白物家電。ここのカテゴリーにおいても、ご覧になって分かりますように、大幅な減少をしているというのが今の状況です。

     一般的にはですね、市場自体は2割~3割程度減少しているというふうに言われております。ただ、それ以上に生産量が落ちている分野というのはですね、その後の流通チャンネルの在庫の調整というような部分もあるかと、そういうふうに見ております。

     ここで会員の企業様のアンケート結果を簡単に、今年の上期の状況をまとめております。まず上の表が半年前、今年の2月時点での今年1年間の展望がどうだったかというのを出しております。ここにありますように、62%の企業が今年は業績が回復するだろうと、改善するだろうという、そういう見方をしておりました。

    それを今回のアンケート、下半分のところと比べてみますと、まず上期だけで見ますと、残念ながら実際に改善をしたという企業が42%ということで、半年前よりも少し悪化をしていると。逆に業績が悪化しているという企業が、半年前は15%でしたけれども、今は33%というような傾向にあります。ただ一番下の表を見ていただくと、下期の展望という観点では半年前の見方とほとんど変わっていないと。67%の企業がですね、業績が下期には改善するだろうというふうな形で見ております。

     今のところを分析をしますと、まず、リセッションの突入前からですね、事業構造の改革に取り組んできた企業が多くて、どん底の今のこの経済環境の中でも着実に改善に向かっている。先程ご覧に入れましたように、着実に改善に向かっているところが、全体の40%の企業が業績が回復してきているというところです。

     さらにですね、2点目でいきますと、上期は、15年の上期と比較をしておりますので、15年の上期というのがいわゆるリセッションの突入前であっただろうというところから、業況悪化は、特に半期ずつで比べてみると多く増えているんですけども、下期に向けての展望についてはほとんど半年前から変化はないということです。

    で、景気の底打ち感、政治混乱の決着、為替安定への期待はありますけれども、各社ともですね、非常に慎重な事業経営を目指していると。下期に回復はするだろうという見方はしていますけれども、慎重に状況を見極めながら経営判断をするというようなところがポイントだと考えています。

     上期についての、各企業のアンケートのコメントを、ネガティブなコメントとポジティブなコメント、ニュートラルという、この三つの形でグルーピングをしてまとめております。

     ネガティブなポイントは、景気の低迷だとか、取引先の資金難、値上げによる販売数量減、それから資金管理、債権管理という問題がありました。一方、上期でも景気の底打ち感というのが一部の企業さんで出てきていると。さらに高付加価値商品へのシフトということで、やはりブラジルでも富裕層にターゲットを絞ってですね、付加価値の高い商品の製造販売にシフトするというような形で業績を回復させている。

    あるいは、市場全体はシュリンクしているんですけれども、その中でシェアを拡大することで何とか数量を維持する、あるいは事業を伸ばすというような形ですね。それから輸出拡大。このレアル安という状況を最大限に利用して輸出拡大をする。一部の企業さんではですね、オリンピック特需というような形でプラスアルファで特別な需要を獲得されたところもあります。

     下期についてのコメントについてはですね、まず同じようにネガティブなところでは、市場環境の急速な改善は望めないと。回復はしてくるだろうけれども、やはり時間がかかるという、そういう見方をしています。それから、まあ色んな形で、政治についても為替についても安定をしてほしいという希望的観測も含めてあるんですけれども、本当にそうなるかという色んな意味での懸念はありますと。ポジティブなところについては、ほとんど上期のコメントと同じですので、そこは割愛します。

    ニュートラルのところでいきますと、やはり慎重に経営判断をしていきたいということで、投資の厳選ですね。それからまあ企業の構造改革、あるいは経費削減というようなところで体質を強化するというところ。ポスト・リセッションに向けた種まきの時期ということで、実際に景気が上向いてきた時のために事前に体制を構築していくというような形で考えております。

     それでは、シンポジウムの副題の「どん底の時期ならではの戦略は」ということについてのまとめですけれども、まずは、短期的な業績に左右されずに長期視点での経営判断が重要ということで、これは必ずしもブラジルだけの判断ではなくて、日本の本社に対してのメッセージというところもあります。一部の企業さんが撤退されているというそういう中でも、そうは言っても頑張ってブラジルでこれからも伸ばしていくんだというような形でですね、中長期的な観点での経営判断が重要な時期だろうというふうに考えております。

     またこの時期はですね、経営上の基礎体力の強化ということで、事業戦略だとか財務、人材を見直しをする。それからリセッションの出口に向けての準備をしっかりと固めるというような、この時期でなければできないような戦略があるのかなというふうに考えております。それから、スペイン語圏でのビジネス伸長というところでは、やはり輸出ですね、このレアル安という状況を最大限に活用した輸出ビジネスというところを見直しをするということかと思います。

     最後にですね、商工会議所、ブラジル政府、日本政府への要望ということで、特に目新しい話はないかと思いますけれども、やはりその、ブラジルでのビジネスの難しさというところ、税制の面だとか、あるいは労働法の面、インフラ、そういったところでですね、少しでもビジネスがやりやすいような環境を作ってもらいたいということです。

    一番最初にありますように、政治・経済・為替の健全化、安定化というところがやはり一番の基本になります。昨年のような大幅な変動のある中では、非常にまともなビジネスを続けるというのが難しい状況ですので、とにかく安定に向けた努力を、官民一体となってですね、進めていただきたいということです。

     私の方からの発表は以上でございますご清聴ありがとうございました。

    司会

     磯村様どうもありがとうございました。非常に手短かに対処方策、それから要望事項まで広範囲にまとめられまして、どうもありがとうございました。この電気電子部会は以前のプレゼンでも既に構造改革、経営構造改革がかなり進んでいて、前回の時もまあブラジル経済の低迷にも対応できるというようなコメントをされていまして、まさにそのコメントを裏付けた形に、まあちょっとマイナスになっている部分はありますけれども、そういった状況なのかなと思います。この報告発表で皆さんから質問はございますでしょうか。

    いかがでしょうか。ちょっと皆さん質問しづらそうなので、私から一つ質問させていただいてよろしいでしょうか。確か私の記憶では、以前の報告で、インターネット販売の取り込みというか対応というか、そういったことも対応策として挙げられたというふうに記憶しておるんですけども、そちらの方は今回アンケート等で反応ございましたでしょうか。

    磯村 副部会長

     前回の発表では、海外から安い商品がネット経由で販売されて、個人輸入のような形で入ってきているというのが一つ脅威だというようなポイントがあったかと思いますけれども、今の状況はですね、まあその後半年、1年経ってから、実はそういったビジネスが減少してきています。

    というのは、もう、為替によってですね、やはり海外からドルベースで購入するというところ、海外から購入する際の価格のアドバンテージというのが少なくなってきているというところで、いわゆる個人輸入で外から物が入ってくるという部分については自然となくなってきているというような状況です。

    司会

     分かりました。どうもありがとうございます。皆様の方から質問ございますでしょうか。他に、何かこの際質問したいという方、ぜひ挙手をお願いできればと思います。いかがでしょうか。中々質問しにくい感じですかね。はい。

    三菱商事 松永氏

     三菱商事の松永です。これは電子電気の業界さんだけではないと思うんですけど、まあブラジルの経済がここまで弱っていて、先程から皆さん良くなっていると言われる割には実感がないということなので、やはりブラジルの国内だとかですね、あとメルコスールに目を転じてみてもですね、まあアルゼンチンが変わるといってもまだ時間がかかると。

    こういうことになると、やはり域外、先程のプレゼンの中でもスペイン語圏でのビジネス伸長を目指した活動ということなので、ポル語とスペイン語の違いはありますけども、文化的にはかなり近くて、距離も近いということなので、域外、とりわけやはり太平洋同盟だとか、あっちの方に向いていくと。今テメル政権もそんなことを言っていますけども、例えば電気電子業界の皆さんでそういった対応に対するアプローチだとかですね、提言だとか、あるいはそういうことをされていなくても、どういった方向でそういったメルコスールの殻を破ったそういった協定ですか、今動いているのか、その辺ちょっとお聞かせいただければなというふうに思います。

    磯村 副部会長

     実際のところ、メルコスールの枠を外れたような形でのアプローチというのは、私の知っている限りではちょっとないんじゃないかなと思います。やはりメルコスール域内を中心としたビジネスの拡張というのをまず一次的には考えていると。やはりブラジルコストという、このコスト構造の中で輸出をして、コスト競争力があるかどうかというところを見ますと、やはりメルコスール以外では難しいんじゃないかなというふうに私は見ています。

    司会

     他に質問いかがでしょうか。はい、では質問ないようですので、磯村様どうもありがとうございました。続いて化学品部会の発表に移ります。発表の方ですね、中村博部会長よろしくお願いいたします。

     

     

  • 化学品部会  中村博 部会長

    化学品部会  中村博 部会長

    Pdf化学品部会     中村 博    部会長    (久光製薬)

     皆さんこんにちは。久光ブラジルの中村と申します。化学品部会の説明をいたします。よろしくお願いします。次お願いします。

     私ども化学品部会では従前より会員各社によるアンケートを行いまして、その結果から2016年上期の回顧と下期の展望を明らかにするという試みを行っております。現在化学品部会の会員企業はこちらの53社ございます。そのうち28社から回答をいただいております。複数の事業をお持ちの会社様も多くいらっしゃいますので、今回38回答をいただいております。画面で青色の文字が回答をいただきました企業様でございます。次お願いします。

    最初におことわりをしておきます。アンケート集計にあたってのおことわりでございます。先程申しました通り、回答数は企業ベースで28、事業ベースでは38ございました。当部会の会員企業の事業は極めて多岐にわたりますので、仮に同一の企業であってもその業況は大きく異なることがございます。例えば同じ企業の中でもある事業部門では黒字、他方では赤字というケースが珍しくございません。そこで、このアンケート集計におきましては事業ベースの38回答を基に業況などを検討しておりますので、その点はご留意願います。次お願いします。

     アンケートの主な項目でございますが、ご覧の通りでございます。2016年の上期の回顧、下期の展望ということで、最後に展望に関連したカマラ活動、ブラジルあるいは日本政府への要望ということでまとめております。次お願いします。

     それでは集計結果の説明に入ります。まず回答いただきました38事業の業況でございます。向かって左側が本年上期の売上と利益が前年に比べてどうであったかというのを、こちらですね、緑の枠で囲ったところでございます。上期は売上が増加したと回答された事業が18ということで、約半数の47%を占めております。この青色の部分でございます。各種経済指標が芳しくない状況の中で、私個人としては、上期に限った話でございますので、私としてはちょっと意外な結果でございました。次お願いします。

     次に、上期における特筆すべき出来事、環境変化というものはどういうものがありましたかという質問に対して、プラスに作用した出来事を向かって左側に、マイナスに作用したものを右側に示しております。

     プラス、つまりOpportunityですが、天候、疫病。これはオリンピック需要も含めたところでございますが、3事業ございました。競合の撤退というのが、 2。以下、デジタル化の進展、公定価格の上昇、中国製品からのシフト、規制強化、これは品質向上に作用したという回答でございましたけども、そういったものですね。それから、顧客の需要回復というのがございました。

     逆にマイナスのThreatでございますが、顧客の倒産、需要減、それから経営不振、これらのものを合わせまして16ということで、他のお答えを圧倒しております。続いて価格の競争の激化が5ということで、これもプラスの出来事に比べて非常に多くなっていることが分かります。つまり、事業環境としては景気低迷を強く反映していると、それだけ極めて厳しい状況であったということが言えると思います。これ下に書いております。次お願いします。

     次に、このような状況の中で、上期に行った現状への対応策はどのようなものがありましたかということで、尋ねております。当然ながら多様な回答が得られた訳ですけども、これを私の独断でもって4つに区分をしております。向かって左側が、損益計算書に直接表れる売上、それから費用、これについて。逆に右側は質的な取り組みについてそれぞれ書いております。

    また、もう一つの見方がございます。上側、売上とかその他とか書いております、ここの上側の方が効果的・積極的な取り組み。つまり事業活動のプラス面をさらに拡大させるようなもの。下側が効率的な取り組み、いわば事業活動のマイナス面を縮小させるものという見方でございます。このように見てみますと、左上に挙げました売上の増加、こちらに作用する取り組みが30ということで、他の回答を圧倒していることが分かると思います。

    つまり、厳しい事業環境ではございましたけれども、積極策で対応した事業が多数派であったというふうに考えることができると思います。しかしながら、先程申しましたように、上期に売上が増加した事業は半分に満たなかった訳ですから、その効果は限定的だったのではないかというふうに考えております。まあ裏を返せばそれだけ事業環境が厳しいものであったという見方もできると思います。次お願いします。

     次に、対応策としての周辺諸国向け対応、これについてはどのようなものがありますかという質問に対しては、現時点ではブラジル国内のみを事業対象としているため特にございませんというような回答が多くて、23ということでございました。一方で、強化したい、あるいは強化中である、そういうお答えが13ということでございました。周辺諸国に活路を見出したいという企業が少なくないという結論でございます。また、中南米を一括管理するように組織を変更してしまおうというようなお答えもございました。以上が上期の回顧ということになります。

     続きまして下期の展望に入ります。これは同じグラフでございますけども、先程も出しました。先程は上期、左側を説明いたしましたが、下期は右側ということでございます。売上・利益ともに青の前年よりも増加すると、それからオレンジの前年と変わらないというふうに書きましたところが非常に多くなって、増えていることが分かるかと思います。まあやや明るい見通しではないかというふうに思います。景気の底打ち感が出てきたというふうに見れると思います。これを裏付けますのが次のスライドでございます。次お願いします。

     これは同じように下期に予想される特筆すべき出来事ということでございますけれども、上期同様にマイナス面であります顧客の倒産、需要減、こちら16でございますね、こちらが他の項目を圧倒していることが分かる訳ですが、プラス面として市場・需要の回復というのが7も出てきたということがございます。まあこの傾向を一般化することは早合点というふうに思われますけれども、前半のプレゼンテーションからございましたように、最悪の状況の中で少しの光明が差してきたということは言えるのではないかと考えております。次お願いします。

     次に下期に必要と思われる対応策については、上期同様に積極策が多数を占めております。こちらの、上の方ですね。特に、新製品それから新サービスの導入というのが、上期が実はこれは5つの回答だった訳ですが、このように10に倍増しております。また、設備投資におきましては、上期は1件でございました。これが6ということで、これも大幅に増えている。これが下期にかけての特徴というふうに言えると思います。一方では、まあそうは言いながらも、回復を待つとか、じっと耐えますというような厳しさを窺わせる回答もまあまだまだあるということも申し添えておきたいと思います。

     これまで見てきましたアンケート結果から、今回のシンポジウムの副題でございます「どん底の時期ならではの戦略は」ということで、課題整理と対処方策に対する化学品部会としての結論を出すとしましたら、このようになると思います。

     長い景気低迷により、厳しい事業環境が続いております。しかしながら、新規顧客の開拓、新製品投入、設備投資、あるいはコスト削減といったような事業者の積極的な対応は衰えてはいないということでございます。やがて訪れる本格回復を信じて、継続することが重要であろうというふうに当部会としては考えております。

     最後に、下期展望に関連したカマラ活動あるいは日伯政府への要望は何かありますかというふうに尋ねましたところ、ご覧のように、課税に関して検討していただきたいというのがおよそ8割、労働に関してはおよそ6割ということで、まあほとんどの会社さんが課税・労働というのを重視されているということがお分かりいただけると思います。

    以下、通関、あるいはインフラの整備、産業競争力や中小企業の育成をしていただきたいと。その他、先程来話が出てきております、政治の安定、為替の安定、規制緩和、審査の迅速化、公的債務の削減、観光の振興といったようなことが続いております。

     化学品部会からの説明は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     中村部会長どうもありがとうございました。非常に興味深い分析結果だったのではないでしょうか。やはり、上期で新規顧客を開拓するというのが一番多くて、下期でですね、新製品投入というのが一番多くなって、しかも下期で設備投資というのが結構増えてきているということで、まあ業界によってかなりの差があるのかとは思いますけれども、非常にアンケートの集計結果でおもしろい結果が出ているというふうに感じました。この発表につきまして、皆様からの質問を受けたいと思いますけれども、挙手をお願いできればと思います。いかがでしょうか。はい。ではまた引き続き、会頭よろしくお願いいたします。

    三菱商事 松永氏

     すいません、また松永です。これはご質問という訳ではないんですけれども、最後のカマラ、日伯政府への要望というところで、まあ課税、労働、通関、インフラ、産業競争力・中小企業育成ということを挙げられていますが、まさにこれはカマラの政策対話委員会で取り組んでいるテーマそのものなんですね。

    これはもう2年近く、いわゆるこういうブラジルコストの改善というのをブラジル政府に働きかけてきたんですが、実は、本丸は課税・労働、ここのあたりだというふうに思っていたんですけども、最初から高めの球を投げるとですね、ブラジル政府の方が取り合ってくれないんじゃないかということで、最初のアプローチはこの産業競争力とかですね、中小企業育成、ブラジル側が飛びついて来そうなここを最初にやってきたんです。

    これがある程度の成果が出てきたということで、いよいよこの課税・労働というところに力を入れようということで、今月の初めにですね、ブラジリアに行きまして、下院の公聴会でこの辺の必要性を初めてかなりフォーカスを当てて話をしたんです。このアンケートの結果を拝見して、やっぱり皆さんここが一番本丸だと思っていらっしゃるということなので、今後もですね、この政策対話委員会、この辺をやっぱり強化していきたいというふうに改めて思った次第です。質問じゃないんですけども、ちょっとご参考までと思いまして。

    司会

     ありがとうございました。他に質問等ございますでしょうか。いかがでしょうか。よろしいですか。はい、中村部会長どうもありがとうございました。続いて、食品部会の発表に移りたいと思います。藤江太郎部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • 食品部会  藤江太郎 部会長

    食品部会  藤江太郎 部会長

    Pdf食品部会     藤江太郎    部会長    (味の素)

     皆さんこんにちは。食品部会の藤江でございます。それではただ今より食品部会からこの4点についてご報告を差し上げたいと思います。7月に食品部会開催いたしまして、各会社からのレポート、また議論を基にですね、まとめさせていただいております。

     まず上期、業界全体の動向ということで、国内市場の概況ということでありますけれども、この2年間ほど続きました経済状況低迷に底入れ感が出てきているものの、食品市場の全体としては、やはりまあ低調と言わざるを得ないということかと思います。また、低価格指向が強まって、嗜好品はどうしても支出が抑制されるという傾向も継続をしているということであります。

    また、外食を控える傾向の中で、内食における、ご家庭における低価格、また基礎食品等の一部カテゴリーで、また地域的にもですね、大都市圏の市場の一部ということで、明るい兆しも見え隠れしているということで、他の業界の部会長からもご報告ありましたように、全体としては雨模様ですけれども、時折晴れ間も見え隠れしているというような状況かと思います。

     引き続きまして、食品部会の中のそれぞれの業種・業界の状況ということであります。まず飲料。発酵乳飲料につきましては、食品部会の所属の会社では、まあ金額ベースで105、数量で前年並みと。また、比較的安価な粉末飲料の市場。これはやはり伸びているということで、18%伸びている。

     調味料につきましては2%増。

     スープにつきましては、嗜好性が高いということもありまして、10%ほど市場自体が減少していると、縮小しているということであります。

     コーヒーにつきましては、経済状況悪化と、まあ流通在庫が少し多めということもありまして、国内消費は伸び悩みということと、またこちらも低価格製品へのシフトが進んでいるということであります。

     即席めんは対前年で93%ということでありますけれども、底打ち感が出てきているということで、下期にまあ期待ということでございます。

     畜肉、また加工品ということでありますけれども、ブラジル産の鶏肉、日本に多くかなり輸出しておりますけれども、日本サイドの在庫がまあ多めということもありまして、輸出は大幅に減っているということであります。一方、畜産の各社は日本向けの数量を中国向けにまあ切替えているということで、結果的には中国向けの数量が過去最高を更新しているということであります。

     清酒、日本酒につきましては、所属会社では、まあ4月に値上げした影響がありまして、上期通期で一桁%の伸びに留まっているというようなことであります。

     チョコレートにつきましては、嗜好性もあるということで、イースター商戦あまりふるわずということで、10%程度の落ち込み。

     加工油脂につきましても、チョコレートの低迷に伴いまして、ココアバター代替用脂の販売も対前年でダウンと、こういう状況でございます。

     香料につきましては、主力の菓子・飲料向けが低調。これを新規開拓で補って、全体としては前年並み。

     食品の添加剤につきましては、既存の取引は前年並み。新規開拓は期待を下回るというようなことでございます。

     種につきましては、世界的にM&Aが進んでおりまして、業界の再編の動きが活発ということは継続をしております。ブラジルの種子の業界では、景気後退にも関わらずに、付加価値型の商品、この需要が伸びているということで、食品部会所属企業におきましては野菜の果物、その種の売上が好調ということで、一方草花については前年比で減少ということでございます。

     タバコにつきましては、食品部会所属会社では販売が好調ということで、レアル安や投資等が利益を圧迫しておりますけれども、当面このブラジルの中で事業拡大していこうということで努力をしているということでございます。

     アセロラ製品につきましては、食品部会所属会社では、レアル安の影響を受けて輸出は好調に推移ということでございます。

     外食でございますけれども、外食、伸長率は一昨年16%ということで大きく伸びておりますけれども、去年、今年ともその伸びは鈍化してきているということで、特に高級レストランを中心に売上、お客様の数が減ってきているということであります。

     輸出につきましては、他の業種別部会同様レアル安は貢献して、鶏肉の生産増加も、まあ日本向けは在庫過多で価格は下落ということであります。オレンジ果汁は在庫払底により反転をしているというようなことであります。

     続きまして2点目の原料の動向ということで、砂糖相場の推移、2012年から直近までということで、粗糖のキロ当たりレアル単価ということでございます。ご覧の通り、2015年の後半あたりから値段が上がってきております。これは一つには異常気象ということによる収穫減の懸念から高騰。あわせてレアルの通貨安で国内相場がさらに高くなったというようなことでございます。

     乳相場の推移。同じく12年から。全粉乳のキロ当たりのレアル単価ということであります。2013年に大供給基地のオセアニア、ここで干ばつによりまして高値のピークを付けたということでありますけれども、14年に入ってからは国際的に大きく価格は下落したということでありますが、国内相場への影響はほとんどなく、まあ乖離してきているというようなことであります。

     続きましてコーヒー相場。こちらはアラビカ種60キロ現物渡し価格の推移と、レアルベースということですけども、16年の上期は450レアイスから510レアイスのレンジで推移をしていると。レアル安継続による米ドル建て競争力が維持をされて、海外市場からの旺盛な買いが継続した結果というようなことでございます。2016年につきましては、アラビカ種は豊作が見込まれているんですけれども、ロブスタ種、大幅な減産が見込まれているということに加えまして、引き続き相対的レアル安の影響が根強くて、高値維持が予想されるというようなことでございます。

     続きましてチキンでございます。中国向けのWING、手羽ですけれども、この輸出が引き続き好調ということで、国内価格も、価格は若干落ち着いておりますけれども高止りということであります。その他のアイテムでは、骨付きのムネ肉、この価格が下落をしていると。また骨付きのモモ肉、これは中国向けの輸出が増加して価格が上昇と。また、中東向けにですね、安定的に輸出されています丸鶏の国内価格、これも上昇をしているというような状況でございます。

     続きまして、2016年度5月までのスーパーマーケットの売上の前年比、名目ベースでございます。青が短月ベース、赤の折れ線が累計の前年比ということでございます。5月までの累計の前年比、スーパーマーケットの売上名目は9.7%増というような状況であります。一方で実質ということで言いますと、こちらにもございますように、5月までの5カ月間、累計で前年比0.1%増ということで、ほぼ横ばいというような状況であります。

     引き続きまして、スーパーマーケットで販売されております重量ベースの購入量ということでありますが、若干回復しつつあるものの、重量ベースでは引き続き厳しい状況ということが続いているということであります。

     引き続きまして、地域別ということでございますけれども、全地域で昨年より購入の重量は減少しているということで、地域的には北部、またサンパウロの中心部、南部、こういった購入量が平均よりも落ちているということであります。

     続きましてカテゴリー別ですけれども、左から2番目のアルコール飲料、3番目の非アルコール飲料、この落ち込みが他に比べると大きいということであります。

    一方、伸びているカテゴリーということでありますけれども、防虫スプレー、また殺虫剤、こういったものですとか、コーヒー、オリーブオイル、粉乳、チーズ、コンデンスミルク、トマトソース、マグロ・カツオ缶、魚の缶詰等々は伸びているということでございます。一方で減少しているサブカテゴリーで言いますと、先程申し上げました飲料、ヨーグルト、アイスクリーム、チョコレート、大豆飲料、パン、トイレットペーパー、石鹸等々ということであります。

     引き続きまして、2016年下期の展望ということで、お題の「どん底の時期ならではの戦略は」ということで食品部会でも議論を進めてきております。4点ございまして、1点は、この2年間続いた経済状況に対する悲観的な予想を修正し始めていて、楽観的な予想が徐々に増加しているというようなこと。

    また、6月には本年度と来年度のGDPに関した予想を上方修正された主要銀行さん、またコンサルトさんの数がまあ増加をしたということも踏まえまして、消費者の動向、また社会的変化を見据えた商品開発、市場開拓、こういうものがですね、やはりより重要になってくるということと、景気低迷期のビジネス機会、これが現れる訳ですので、例えば好条件での投資ですとか、買収・提携による将来の成長への布石、こういったチャンスも出てくるということであります。

     2点目。様々な要因によるコスト上昇、これは継続しますけれども、市場環境が厳しい中で中々価格への転嫁は困難ということで、短期的には収益が引き続きまあ悪化する部分があるのではないかということでありますが、この変化の時期を構造変化、または体質強化のチャンスととらえて取り組むということでありましょうし、3点目には、近い将来、景気回復の波に乗れるように、事業の基盤の強化、または新たな事業の種まき等の準備を進めていくということかと思います。

     4点目には、会員企業の新たなビジネスチャンスの発掘につながり得るような、そういったカマラの食品部会の取り組みもぜひ強化してやっていきたいですねというような議論を食品部会でしております。

     続きまして、2月29日から3月1日に行われました第2回の日伯農業・食料対話への積極的参画ということで、若干簡潔に報告をさせていただきたいと思います。農林水産省、また在ブラジル日本国大使館が主催されたこの対話にですね、食品部会としても積極的に参画していこうということで、第1部、穀物輸送インフラ改善、マトピバ地域農業開発等々ということと、第2部、ブラジルへの投資環境の改善・整備ということで、松永会頭も第1部で講演を、当時政策委員長としてされました。

    その中で、先程もお話しされたような、ブラジルサイドが興味を持たれるようなそういう提言もしつつ、第2部では各企業が困っている税制、関税の問題、また鶏肉・牛肉の輸出入に関する提言、また残留農薬の問題、日本食普及とブラジル農業食品産業のビジネスチャンス、こういったことについてですね、提起をして参りました。

     最後のスライドになりますけれども、こういった提言、農産物、また畜産物につきまして、やはりブラジルは世界に冠たる農業大国としてさらに発展できる。その中で日本の技術または品質、そういったもので貢献できる。

    その中で我々のビジネスチャンスもですね、出てくる可能性もあるのではないかということで、中々あの、政権も交代して一進一退でありますけれども、引き続き粘り強くこういった活動も、カマラ、または大使館等々とも連携をさせていただきながら尽力して参りたいというふうに思います。

     食品部会からは以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     藤江様どうもありがとうございました。皆様からの質問を受けたいと思いますけれども、いかがでしょうか。挙手をお願いできればと思います。はい、ではまた会頭よりですね、質問をお願いしたいと思います。

    三菱商事 松永氏

     3回目の質問ですみません。今ですね、農産物、畜産物、それと前のスライドで鶏肉とかオレンジジュースというのがございました。まだこれは時間がかかると思うんですけど、例のイギリスのEUからの脱退というところでもってですね、イギリス向けへのこういう競争力のある農産物とか畜産物、このブラジルからの輸出というのは、まあかなり恩恵を受けるんじゃないかというふうには思っているんです。

    一方で、最初の貿易部会のプレゼンの中ではですね、ブラジルから輸出しているトップ10の中にイギリスは入っていないんですけども、そうは言ってもですね、ある程度の国民がいて、そういったところに狙いを、ある程度絞って、今から下準備をしていくといったような対策については、いかが、味の素さんに直接関係あるかどうかは承知していないんですけども、お聞かせいただければというふうに思います。

    藤江氏

     ちょっとそのあたりはですね、畜肉のイギリスへの輸出等々についてはちょっと私も承知していないんですけども、こういう変化のあった時というのは必ずビジネスチャンスは生まれるよね、というようなことのお話もしておりまして、先日もジェトロ主催のアルゼンチンミッションございましたけれども、中心はインフラのミッションだったんですけれども、私も参加させていただきましたが、農産物の拡大をアルゼンチンとしてもですね、積極的に進めていきたいというようなお話もありました。

    これもマクリ政権に交代したという変化がチャンスにつながるということかと思いますので、そういったEUの変化等々も我々のチャンスになるかどうか、また色々議論なりですね、検討していくのもいいかなということで、色々なアイデアを今いただきまして、ありがとうございます。

    司会

     はい。いかがでしょうか。ご質問の方をですね、この際に。どうでしょう、後ろの方とか、いかがですか。よろしいですかね。はい。非常に食品部会様、色々具体的な対応策ですとか、あと畜肉加工品では日本向けを中国向けに切り替えて数量が過去最高更新中とか、面白い報告があって、非常に興味深かったのではないかなと思っております。

    また、食品部会からの非常に具体的な提案が出ておりますので、こちらの方どういった対応ができるか考えていかないといけないのではないかなというふうに感じております。藤江様どうもありがとうございました。続きまして運輸サービス部会の発表に移りたいと思います。発表の方を細谷浩司部会長様、よろしくお願いいたします。

     

     

  • 運輸サービス部会  細谷浩司 部会長

    運輸サービス部会  細谷浩司 部会長

    Pdf運輸サービス部会     細谷浩司    部会長     (日本通運)

     こんにちは。お疲れのことと思いますが、お付き合いください。運輸サービス部会、私日本通運の細谷と申します。

    構成グループはこの7業種、物流、構内物流・機工・整備、海運、航空貨物、航空旅客、旅行、ホテル、IT、通信という運輸関係とサービス部門、この大きく分けて2つをまかなっております。7月と8月、各1回ずつミーティングをしまして、会員各社から色々レポートをいただきまして、ぜひ全部しゃべってくれというふうに言われていますので、駆け足で参りたいと思います。

     まず物流業界。ここは通関とか国内物流の業界なんですが、上期回顧から見ます。まず、トピックスでもありますけど、今年に入り農務省は木材使用貨物に対してのくん蒸処理の規制の再徹底を行うことになりました。それまで、輸入貨物と一緒にその梱包材がくん蒸処理されてなくても、到着地、こちらのサントスとかに来た時に焼却や再くん蒸を行うことができたんですが、この規制強化によって、くん蒸したと認められない梱包材というのは、そのまま輸出元へ戻さなくちゃいけないということになりました。

    かなり費用、またこれはブラジルコストと言われるのかあれですけど、これは大分荷主様にとって脅威なことでございますのでご注意ください。もうひとつは、ここに書いてありますように、税関ストライキが慢性化しているということです。2012年に大きなストライキがあって、それからちょこちょこっと下がってきたなと思いましたら、またストライキが始まっていると。部門によっては牛歩戦術的なストライキが行われておりまして、輸出入通関のスピード化の妨げになっています。

     下期の展望なんですが、今言ったこの税関ストライキ、ちょっとややこしくなってきまして、今全国で行われているのが、給与改定の未実施を不服とした税務監査官の無期限ストライキ、現在進行中です。港湾、空港および国境における税関処理に影響を及ぼしております。あとはですね、下期、レアル変動、安定と言った方がいいですかね、輸入の活性化に期待したいと思います。

     次、この表を見て下さい。赤、黄色、緑の表なんですが、これは引越件数のデータです。皆さん駐在員のイン・アウトの動きなんですけど、これはインの方の、日本発の各地域向けの船便引越の発送件数の調査結果です。伸びがあるのは、一番上の南アジア、オセアニア、あと下にいきますけど中米も伸びがあります。

    北米、カナダも対前年伸びがありまして、上から2番目の東アジア、中国を含む東アジアですが、これが減少。欧州向けも減少しております。当地南米はというと、まあ微減といったところでしょうかね。詳しくは、帰任者増で赴任者微減の実績というふうになっています。この傾向は当面続くのではないかなということで、今受付件数とか見ていると、推測されます。

     次に鉄鋼業界内の機工、整備、構内物流の部門です。上期の回顧としましては、まずはブラジルの粗鋼生産量はこの図の通り、ピークが2011年でした。それ以降減少が続いています。主要客先である鉄鋼業界は、中国の経済減速に伴う鋼材市場の急落、そして国内市場の冷え込みなどの要因で減産体制に入っています。

    それによって、鉄鋼業界はコスト維持のために給与インフレ調整率を0%としまして、一時金の支払いでしのいでおります。同様に外注協力業者、まあ我々物流業者なんですが、においてもインフレ調整を0%として、一時金での対応を実施しております。

     この業界、下期の展望としましては、2016年の国内の鉄鋼消費量の予想としては1820万トン。これは2006年のレベルでございます。作業量減少はこれまで以上と予測されまして、今後さらなる経営体質の強化、業務領域の拡大が必要となってくると想定しています。

     次行きましょう。海運業界。まず上期としては、コンテナ船の荷動きは昨年第2四半期より輸出が輸入量を上回る状況となっています。全体としての物量は20フィート・コンテナ単位で236万コンテナで、前年同期比で約5%の減少となっています。

    下の図のですね、この右側の表。ばら積み船の荷動きは主要産品である鉄鉱石の輸出量が約4%の伸び。穀物輸出も、先程どこかの部会でおっしゃっていましたけど、伸び率としては20%近くということで、全体で約7%増えております。運賃市況はというと、コンテナ船もばら積み船も共に供給過剰による競争激化で記録的な低水準となっています。もう投げ売りみたいな感じですね。各社生き残りをかけてコスト削減、運賃修復に取り組む厳しい状況が続いているというので、運賃修復ということは運賃を上げていくということですから、皆さんご勘弁ください。

     下期の展望です。市況の回復、事業環境の健全化にはまだ相当の時間を要するものと思われます。今後の対応策としては、非経済船の処分の促進、アライアンスの再編、サービスの改編等、配船の効率化を図りながら余剰輸送能力の削減に努めること。また、コスト構造改革などあらゆる面で競争力を高めるチャンスというふうに考えています。

     トピックスとして、ちょっとここに小さくしか書いていないんですが、これ大事なことなので読み上げます。輸出コンテナの総重量の厳格化が世界的に始まりました。従来より、荷送人は国際海上コンテナ輸出の総重量申告を義務付けられていましたが、誤申告に起因するコンテナの荷崩れなどの事故が陸上・海上で多発していますため、今般、SOLAS条約というんですけど、「海上人命安全条約」の改正が行われまして、コンテナ総重量の確定方法が今年の7月1日より世界中で始まりました。万一、総重量の誤申告が判明した場合は、当局による罰金、船積み予定船への積載がされない、不積みですね、こともありますので、荷主関係者にはご注意をお願いいたします

     次に航空貨物業界です。上期の回顧としましては、一番上の表なんですが、VCPというのがビラコポス、GRUというのがグアルーリョス、次はマナウスですね。日系企業の多くが所在する三つの空港の過去3年間の1月から6月までの数値を比べてみました。各空港とも取扱数量は前年比減というふうになっています。全体的にみると、輸入量は対前年比18%減となっています。この表ではちょっとないんですけど、輸出量は対前年微減という形で数字が出ております。

     16年の下期の展望ですが、輸入の月別取扱数量。1、2、3、4、5、6月という数量では、ちょっと明るい話題になるかもしれません。徐々に数量が上向きになっております。ということで今後の輸入量の増加に期待したいと思います。

    あと下の表、ここですね、航空輸出入貨物と為替動向のどんなふうに連動するのかなというのを見た表なんですが、赤の縦線グラフが輸出数量、緑の薄い線が輸入数量で、青の折れ線グラフが米ドルに対するレアルの為替変動値です。輸出入動向を予測するためには、為替動向のみに依存する訳じゃないんですけど、為替は重要な変数でありまして、そろそろ物の動きが始まってくるのかなというふうな期待を込めて、というか期待をしております。

     次、航空旅客。我々の業界ではANAさんとJALさんからのレポートなんですが、国内線はブラジルの景気低迷の影響で、有償旅客キロは近年にない前年割れ。国際線は、ブラジル系の航空会社の実績しか出ていないんですが、これは有償旅客キロは小幅な減少にとどまっている。航空業界では利用率低迷の打開策として、廉価な運賃での営業競争が激化しておりまして、各航空会社とも旅客数の減少以上に収益は悪化しております。

     下期の展望なんですが、国内線はTAMやGOL航空の業績悪化に伴って、下期は両社とも低需要路線を運休もしくは減便する可能性が高いです。2015年に比べて提供座席数や旅客数は低減することが想定されています。国際線は今真っ最中のリオ・オリンピック、パラリンピックの開催に伴って海外からの旅行者は増えるものの、ブラジル経済の低迷と為替の影響でブラジルからの出国者数は減少するものというふうに予測しております。今後は国内線・国際線ともに、需給調整やコスト抑制による運休・減便で旅客流動が鈍化することを懸念しております。

     下に特記事項を書かせていただきましたが、路線の廃止の話です。まず大韓航空。9月25日からロサンゼルス経由のサンパウロ=仁川便の運休を決めております。またシンガポール航空がバルセロナ経由で今飛ばしているんですが、サンパウロ=シンガポール便の運休を10月21日から止めるということで正式に発表しています。またデカセギ需要が再び増加しておりまして、それをチャンスというふうに見ております。

     旅行業界。皆様も国内旅行とか色々お世話になっていると思うんですが、ここはですね、国内線も国際線も昨年同期比、売上高、搭乗者数の両方で大きく落ち込んでおります。特に国際線は前年に比べて発券枚数で14%減、売上高では12.8%減と大幅に減っております。ホテルはというと、宿泊数、売上ともに前年比約10%減というふうになっております。やはり客離れ、いわゆる旅行離れが為替の不安定な影響で進んでいるものと推測しております。

     下期の展望なんですが、オリンピック、パラリンピックのお陰様で、国内線航空旅客とホテル稼働率の増加は、数的には期待されます。一方でそれ以降、終わった後ですね、増加が期待できるネタがなくて、ブラジルから海外に出る旅客数も引き続き減少するものと見込まれます。

    ホテルがインターネットサイトで今、買えますよね。旅行代理店による販売価格よりも安い金額でオファーされているということで、旅行代理店によるホテルの販売が落ち込んでいます。さらに、旅行代理店間での航空運賃の割引競争が激化しておりまして、航空券販売による収益が激減。ちょっと厳しい。ちょっとというか大分厳しい状況です。

     トピックスとしてここも一行、最後の行書いてあります。オリンピック、パラリンピックに向けてビザの緩和というか免除が、今この時期、9月18日入国までされているんですが、それと並行して、ブラジルと国際運転免許の協定のない国、まあ日本もそうですね、今年の12月31日まで、例えば皆さんであれば日本の免許証があればブラジルで運転が認められているということ。これ一般的に広まっていないはずなので、それを報告いたしたいと思います。

     次、通信業界。テレコム、まあ固定電話関係、あとデータセンター関係ですが、上期の回顧としましては、インターネットユーザーは1億3911万ユーザーで、世界4位。ブロードバンドのマーケットシェアは、NETが32.3%とやや優勢で、Vivoが28.6、Oi社が24.7と僅差で追っております。

    インターネット普及率は、前回の調査の時に58%で世界81位だったんですが、今年の調査では66.4%、世界第64位と伸びております。固定電話。シェアNo.1のOi社が、皆さんも知っているんでしょうが、ブラジル史上最大規模となる会社更生手続き、今進めております。ブラジル電気通信庁の監視の下、業務は継続中ですが、今後様々なシナリオが噂されておりますけど依然として有力なものはなく不透明な状況です。  

     下期の展望としましては、ブラジルのみならず南米全体で通信業界の再編が進んでおります。ここには書いてないですけど、ちなみにアルゼンチン新政権も本格的に通信インフラ整備を計画しておりまして、日本企業へのアプローチも開始しているようです。あと電子メールやサーバーなどインターネット関連サービスでは、一層コモディティ化が進み、自前サーバー設備から柔軟でコスト効果の高いクラウド型へシフトが進みますが、通信インフラ基盤の脆弱性が問題となっております。

     これも通信業界で、これは携帯電話、あとモバイル関係ですね。右の図を見ていただきましょうか。この赤、黄色、青。青が4Gの携帯です。4Gの携帯の契約数は順調に増加傾向で、前年から1100万件伸びまして、3655万件となっています。しかしながら、全体としては、全体的な契約者数は微減。それによって通信事業大手4社の収益はいずれも落ち込んでおります。

     下期の展望としましては、4Gは今後も堅調に普及が進み、年末までに契約数が4000万件を超える見込みだそうです。Internet of Thingsと言われるIoT、Machine to Machine向けのモバイル回線の需要が高まっております。年間約10%の増加が見込まれております。

     IT業界全般、まあソフト関係ですね。当初、前年比微増ぐらい、約0.5%ぐらい伸びるかなと予想されていましたが、IT投資額が伸びていません。市場は停滞気味でございます。今まで企業は成長のためにIT投資を行ってきたということが、今はコスト最適化のためのIT投資へとシフトが加速しているということです。あとは、企業用の基幹システムの開発、オンライン化の税制対応、会計情報申請制度の対応は引き続き順調に伸びております。

     下期の展望です。2016年度のIT投資額は前年度を下回ると予想しております。IT活用の促進による業務効率化、コスト削減化のサービス需要は引き続き増加が見込まれるところです。あとはブラジルの税制、会計対策の複雑化により、システム対応の投資は継続される見込みとのことです。一番下なんですが、毎回発表していることなんですけど、優秀なIT人材の育成やIT専門家の確保、人件費の高騰への対応が大きく課題としてのしかかっております。

     いよいよ最後です。「どん底の時期ならではの戦略」。今どん底かどうかちょっと分からないんですけど。まず、経済回復期はいつか。まあ今の動きを見ている限りでは、直近すぐ、来年とかから回復しちゃうということはないでしょうけど、期待値も入っていますが、今徐々に何か伸びているんじゃないかなという足音は聞こえております。ただ、完全に回復するのは2018年かなという、これは期待値を込めた表現でございます。

     この時期の戦略として課題を整理してみました。まず取扱顧客とか、色々収入の減少に対しましては、先程他の業界でも出ていましたけど、新規サービスの展開を行う。収入の柱となるセグメントを増やして、何とか今を生き伸びて行こうと。まあ2億人の人口がある中での物流業界ですから、何か方策はあるはずです。同じ中南米でもメキシコが顕著だということは皆さんご存じだと思いますけど、ブラジル政府にはぜひ工業界の発展を促す政策を実施していただきたいというふうに考えております。

     航空旅客とあと旅行分野からの意見になりますが、文化、スポーツ、芸術などの分野で日伯間での交流を活発化させて、来伯者を多くしていくことが必要であるのではないかなというふうに考えております。

     あと、この低迷期を乗り越えるために、削減施策が各社考えられ、色々実践をしているんですが、やっぱり根本的なことで、税金面などのブラジルコストの抜本的な見直しを政府が本気で実践することを要請するとともに、何らかの政策対話を利用してぜひ達成してほしいというふうに考えを持っております。

     今まで説明した中で、各種資料のプレゼン、後ろの方につけてあるんですが、これは商工会議所のホームページからちょっと拾ってみて、参考にしていただけたらなと思います。これで運輸サービス部会からの説明を終わります。ありがとうございました。

    司会

     細谷部会長どうもありがとうございました。大変、毎回毎回この運輸サービス部会は非常に幅広い分野の報告を取りまとめしなければならないので、大変だったと思います。どうもありがとうございました。

    こちらの発表ですけども、皆様からのご質問等受けたいと思いますが、いかがでしょうか。ちょっと私から質問させていただいてもよろしいでしょうか。確か運輸サービス部会で、オリンピック対応ということでですね、オリンピック会場の視察を企画されていたと思いますが、今年はこの後何かそういった対応とか企画とかは考えていらっしゃいますでしょうか。

    細谷氏

     去年11月にちょうどオリンピック視察と称して、オリンピックの交通機関はどうなっているのかなとかいうことで、40人ほどで一泊視察旅行をして、その前の年はサントス港の港湾視察で、これもやっぱり40~50人参加していただきました。

    今年はちょっと趣向を変えまして、とあるブラジルの航空機産業の工場内を視察しようかなというふうに一応計画は練っております。まだ今8月ですから、年内にできたらなというふうに考えておりますので、それはカマラを通じて皆さんに案内したいと思います。ぜひご参加ください。よろしくお願いします。

    司会

     どうもありがとうございました。大変おもしろい企画の情報がありますので、ぜひ実現の際は皆様参加いただければと思います。それでは細谷様どうもありがとうございました。続いて、建設不動産部会の発表に移りたいと思います。藤井健部会長、発表の方をよろしくお願いいたします。

     

     

  • 建設不動産部会  藤井健 部会長

    建設不動産部会  藤井健 部会長

    Pdf建設不動産部会     藤井 健    部会長    (CGC)

     はい、それでは建設不動産部会の藤井でございます。それでは建設不動産部会の話をさせていただきます。

     ブラジルの建設業者500社の現状としましては、今週昨年度の実績がまとまって出たんですけれども、軒並み30%~50%ダウンです。その中でも、リオの業者だけが170%プラスということが出ておりました。まあこれはオリンピック景気が表れていたということです。

    あと、当会議所のメンバーの現状は、日本企業の仕事が非常に激減いたしまして、非日系に活路を見出さなければならない状況です。まさに今期が正念場となっております。まあ中には何もせず、金利で食べようかという話もありますが、その中で各部会員が取り組んでいる事を発表いたします。

     まず最初に部会のメンバーの上期の回顧と通期の展望。次に業界ごとの情報を報告いたします。ではこれがアンケート結果です。

     ゼネコン業界、まあ日本企業の激減によりまして、大型工事がなく、メンテナンスや小型工事をこなしております。その中で病院や学校の案件が期待できるそうです。しかしながら、非日系の工事を受注するためには厳しい価格競争をしなければならず、体力勝負となっております。

    その状況の中で通期の展望は、一つは非日系企業への営業強化。もう一つは、低価格競争に打ち勝つために、工期や安全、品質、その辺を落とさず、施工方法と提案力と、ブラジルの企業ができない差別化工法を実施したいということです。

     不動産業界。ついにサンパウロの工業用地の価格が下がり始めました。サンパウロのマンション、この販売価格はまだ下がりません。パウリスタ界隈の賃貸価格はまだ下がりません。日本企業の新規賃貸契約、今年3割減っております。厳しい状況です。不動産業界全体としては、今期の好転はまず見込めないと。長期で考える必要があるということです。

     次はプレハブ業界。ゼネコン同様厳しい状況です。通期では、今年始めましたレンタルというものがどのようになるかです。

     サッシ業界。上期は前年期ずれで受注は目標を達成しました。しかしマンションの新規登録が昨年より9割減です。まあマンションの事業が非常に停滞するということになります。

     あと、特殊技術です。これはリオの地下鉄の開通の陰に日本技術ありです。これ自分で言わないと誰も言ってくれませんので、ちょっとお話しします。残念なことは、オリンピック会場まわりの下水道工事、これは昨年12月に実は中断しました。まあお金がなかったということですね。仕事ができなかった事がまあ残念ですけども、今年10月再開するようです。

    一つ良い事は、昨年財政削減で1年間止まっておりましたサンパウロの下水道工事が動き始めました。下期は4つの学会発表、工業大学での講演、オデブレヒトでの社内技術発表会などをやっていきたいと思います。次お願いします。

     次はアンケート結果のその2ですけども、お客様比率です。ゼネコンが日系企業の減少を非日系で埋めるという努力が見れると思います。不動産は日本人の方のために情報を集めています。プレハブもゼネコン同様です。特殊技術とサッシはブラジル企業と共に動いております。次お願いします。

     それではゼネコン業界です。7月にジャパンハウスが着工いたしました。これはパウリスタの大通り、国際交流基金前のブラデスコビルを改修しまして、ブラジルの方々に日本をより良く知ってもらうための発信拠点となります。オープンは来年1月が予定されており、日本の木材をふんだんと使用しました一種独特の建物がパウリスタにお目見えします。完成式典には皇室をはじめ日本国政府の方々のご出席があるかもしれません。現在、施工中の現場見学会の開催を準備中であります。これもカマラを通じてご参加を呼び掛けると思います。次お願いします。

     先程言いました、ブラジル企業の行き過ぎた価格競争の結果が今年出始めました。これはマンションのモデルルームが崩壊した事故です。残念ながら死亡事故となっています。次お願いします。

     これはもう一つです。行き過ぎた価格競争の結果、実はこれはブラジルの大手の建設会社が建設したものです。これ、完成した高級マンションの2階部分が崩壊しています。地震があった訳ではありません。施工中、鉄筋を切ったか省いたか、定かではありませんが、まあ明らかに手抜きか設計ミスです。まあ日本で問題になっております、傾いて建替えたマンション、これからですけども、もうレベルが異なりますね。日本の要求品質の高さを痛感いたします。まあこのブラジルの作りは、台湾の地震で崩壊したマンション以下です。次お願いします。

     次は不動産業界。マンションの賃料と販売の価格です。これ2008年からの動きです。左が賃貸、右が販売です。赤線がリオ・デ・ジャネイロ、青線がサンパウロです。サンパウロの新築販売価格だけが下がっておりません。新築契約が9割減の中、いつまで持つかですね。

     2008年から2.5倍、250%ですね、なりましたリオ・デ・ジャネイロの販売価格、オリンピック後にどれだけ落ち込むか、これからが注意です。

     マンション購入者の解約率が半年前の40%から30%に緩和されました。しかしまだ異常な数値です。最近では解約して戻ってくる金額が先に払ったお金より非常に少なくなりますので、不動産屋は別の案件を紹介するようになったそうです。田舎の小さな物件ですね。次お願いします。

     それでは、サンパウロ近郊の工業用地の価格です。実は2年間そのままずっと横ばいでした。ところが今年になりまして、長引く不況と政局不安が影響しているか分かりませんが、じわっと下降し始めました。

    2年前と比べまして平均で20%下がりました。黒字が平米あたりの単価で、赤字が下がった割合です。アルジャの40%もかなり大きいですが、最大下落は日本企業の進出が多いサルト、イトゥー、ソロカバ、20~58%になっております。用地購入を検討されている企業の方は今がチャンスかもしれません。まだ下がるかもしれません。次お願いします。

     次にプレハブ業界です。日系企業の事業凍結が現在相次いでいます。ブラジル人に安定した品質と施工の早さ、移設・増設が簡単にできる事を非常に認知されております。ブラジルで初めてレンタル、日本では当たり前ですけど、ブラジルでレンタルを始めました。これがどのようになるかですね。次お願いします。

     これは皆様ご存じの、オリンピックにやっと間に合った地下鉄4号線です。ケミカルグラウト社は今年3月31日まで、マルの所3カ所書いてありますけども、ここにはりついておりました。弊社が呼ばれる前の昨年の暮れ、右下の写真です。これ昨年の6月ですね。駅部が水に水没している状況です。この時は先が見えない状況でした。右下の写真は水がなくなりやっと掘れると、作業員が笑い出したところですね。ちょっと見えないですね。4月の中旬には全てが貫通しまして、そこから線路を敷いて、電気を通し、駅を作り、電車を走らせました。さすがブラジルの底力です。あの状況で間に合わせたことに驚きです。

     また、ガレオン空港からリオ・デ・ジャネイロ市街地に向けての掘削中の高速道路トンネルは、緊急で呼ばれ6月まで仕事をやっておりましたが、残念ながらこれは2本中1本だけが開業しています。次お願いします。

     次は学会の発表をお知らせします。今年はベロ・オリゾンテで10月19日から開催されます4つの団体の合同会議にブースを出します。今回は先程紹介しましたリオ・デ・ジャネイロの地下鉄やトンネルの止水をメインに発表します。

    実は中南米の土木業界というのはブラジルが実はリードしている事が分かって参りました。そのブラジルが技術の影響を受けているのは、欧米です。しかし今回、欧米にはない技術を日本から導入しております。狭い国土と地盤の悪い地震の国の日本の土木技術というのは、繊細で確実な部分で欧米を凌駕しております。9月17日にはサンパウロ工業大学の修士課程でこれらの技術を紹介いたします。実はそろそろ好景気になるかなということで、サンパウロに実は5000を超える汚染の土地があります。その辺を掃除できるように、工法も紹介したいかなと考えております。あとは環境にやさしい工法が、景気が良くなれば使っていただけるかなと思っております。次お願いします。

     最後、まとめです。どん底の経済が建設不動産業界に影響している事は、仕事がなくなり、不動産が動かない事です。この状況で建設業が縮小してよいのか、優秀な技術者や作業員も放出してしまって良いのか。実は日本のバブルが崩壊した時、地方の建設業界が軒並み潰れました。その時、台風や大雨で、それを補修する人たちがいなくなりました。それが日本で起きた事です。

     三つ目はブラジルのコスト。価格の下げにも限界が実は来ております。マンションや土地の価格は下がると思います。ヨーロッパ企業のM&Aというのは怖いですか。脅威か、といった懸念があります。その中で、欧州企業のM&Aは実は怖くありません。デフレで鍛えられました日本の技術で十分対抗できます。 失業率が高いうちに優秀な人材を集めると。

     最後には、今こそぜい肉をそぎ落とせと。私のことではございませんが、不況の今、各方面に注力いたしましょう。ビジネスチャンスは待っていてもやって来ませんので、これからです。

     以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     藤井部会長どうもありがとうございました。大変面白い発表で、この発表に対しまして、皆様からの質問を受けたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。

    タニグチ氏

     栄進のタニグチです。藤井さんと、この僕がする質問はゴルフしながら聞いた方がいいのかもしれないけど、大久保さんが質問してもいいと仰っているので。

     今回、ブラジルの経済の一つは、まあ政治的な問題が多かったというふうに言われているんですけど、僕が特に不動産関係で興味を持っているのが、今までは汚職だらけでオークションを勝っていた企業が多かった。

    このような背景から今、弾劾裁判も続いている訳ですけれど、今後こういった不動産関係も、政治の公的な事業に関しても、オークションを行った場合、これからは少しは改善されて、まともな所が選ばれてくれるんじゃないかなと。そういう動きになってきた場合、これは日本企業に大きなチャンスなんじゃないかと思うんですよね。

     古い話になるんですけれど、新幹線のプロジェクトがあった時に、まあ特に日本の場合はコストばかり見られて、コストが高いからというふうに無視されたきらいがあったんですよね。ずっとニュースを見ていたら、皆さんもご存じと思うんですけれど、中国がオークションで勝ったような形でやっていた事業のほとんどが今問題が起きています。技術的な問題が多いということですね。

    だから、今後、こういった背景を利用して、技術面のコストというものをもう少し評価して、安ければいいというものは絶対にためにならないというのを不動産関係、建築関係から呼びかけていただければ、うれしいなと思うんですが、いかがでしょう。

    藤井氏

     いま一番最後のところが良く聞こえなかったんですけども。

    タニグチ氏

     今後、汚職とかそういったものが注意されて、牽制されるような格好になるので、だから今後は技術、そしてしっかりしたコストを出すところがこれから政界に認められて、そういったオークションでも勝てるような状況が来るんじゃないかと。

    というのが、今まで日本企業は、ロビイストなんか、そういった汚職だらけの連中に、金払いのいいところばかりに持っていかれていたきらいがあるということを思っているもので、そういうことをちょっとお尋ねした訳です。

    藤井氏

     はい。最近の感触なんですけれども、インフラの整備の工事において非常に、今まで中々決まらなかった話が割とスムーズに決まるようになってきました。ということは、今まで、実は色んなお金が出たり入ったりしていたような話はちょっと聞いておりますが、今それが、これだけの汚職事件の捜査によって非常に下火になってきているのかなという感じは今、実は、公の席であまり話せないことですけども、そういう感じは実はしております。

    ですから本当、純粋な技術で、これからは対抗できる時が、これからの次の政権によって作っていただければ、さらに良い状態になるんじゃないかなと思っております。こんなもんでよろしいですか。

    司会

     ありがとうございました。他に質問ございますでしょうか。よろしいですか。それでは、藤井様どうもありがとうございました。続いて本日のシンポジウム、最後の発表になります。繊維部会の南村幸彦部会長、よろしくお願いいたします。

     

     

  • 繊維部会  南村幸彦 部会長

    繊維部会  南村幸彦 部会長

    Pdf繊維部会     南村幸彦    部会長     (東洋紡)

     高い所から失礼します。ただいまご紹介いただきました、繊維部会部会長、東洋紡ブラジルの南村です。皆様お疲れだと思いますので、できるだけ簡潔にしますので、どうぞ最後までよろしくお聞きください。では次お願いします。

     発表は、上期の回顧、下期の展望、副題の三部構成にて、それぞれスライドに示した項目別に行ないます。次お願いします。

     上期の総評でございますが、一言で申しあげると、原料高と製品安の間で利益なき戦いを強いられた、苦境の半年間でございました。ブラジルの景気が後退する中で、家計の、家の購買力が下がりまして、衣料品に使うお金が減りました。上から、衣料品の価格が下がることによって、糸ですとか織物ですとか、そういったものの価格が抑えつけられている状態です。

    他方で、ブラジルの綿花の品質が向上いたしまして、国際競争力がアップしております。で、輸出が増加しまして、原料の綿花価格の方は上がりました。さらには、綿花も農産物の一つとして国際的な価格指標がございます。これがニューヨークの綿花相場でございますが、こちらの方も高止まりとなりまして、まあ下からはコストインフレで突き上げられました。次お願いします。

     まずは世界の綿花の動向を説明いたします。このグラフは2011/12年度、綿花年度から、15/16綿花年度、この消費量の推移を表したものです。まあ見ての通り、11/12年度から15/16年度まで消費量は横ばいでございます。特に、世界の消費量の3分の1を占める中国の市場が停滞しております。他には、グラフにはありませんが、EUの景気低迷もありまして、世界の綿糸市況や織布、布の市況は好転しませんでした。次お願いします。

     こちらのグラフは2012/13綿花年度から16/17綿花年度の季末の在庫量の推移を表しています。そのグラフ上の緑の矢印が、先程申し上げた国際綿花価格であるニューヨーク綿花相場の推移を表したものです。消費量が足踏みになってまして、需給のポジションで言えば緩和と言えるんですけれども、どうも商品市場に投機マネーが流れ込んできているようでして、そのためニューヨーク綿花相場が高値で推移しています。

    これ年末に向けては沈静化するというのが我々の予測でありますが、綿花というのも農産物でございます。まあ農産物の一つである以上、天候不順などがあれば価格に影響いたしますので、この点は要注意であると考えています。では次お願いします。

     では続きましてブラジル国内の綿花の動向を説明します。こちらは為替相場とブラジルの綿花相場の推移を表したグラフです。近年、マット・グロッソ州とかバイア州でですね、完全機械化の非常に大規模農法が進んでおりまして、先程申し上げました通りブラジルはもう世界屈指の綿産国となりました。今や世界第5位の生産量で、世界第3位の綿花輸出量となっております。特に生産量の7割が、昨年1年間中国をはじめとしたアジアの国々に輸出されました。

     まあそういったことから、国内のブラジル綿花相場なんですが、国際価格、特にドル・レアル相場の変動に非常に大きく影響されております。15年4月以降、レアル安が加速しまして、綿花相場はグラフの通り大きく上昇いたしました。で、今年に入ってレアルが反発しまして、これは価格が下がるんやないかなと期待しとったんですが、さっき言いました通りニューヨークの綿花相場の方がずーっと高止まりになっておりますもんですから、綿花農家さんの多くがですね、いやいやニューヨークの相場はこんなもんですよということで、この指標を引合いに出して価格を下げません。いいとこ取りされているというのが実態です。次お願いします。

     次は引き続きブラジル国内の綿花動向の説明なんですが、綿花の生産量と相場の関係を示しています。世界の需給バランスと同様、ブラジル国内におきましても消費が減りましたんで、需給バランスは緩く回復いたしました。

    ただ、これまでの説明の通り、綿花価格、我々の使っております指標でESALQというのがあるんですが、その相場は高止まりのままでした。なおかつ下期は降雨不足、綿花生産の州での降雨不足により生産量の減少が予測されておりますので、価格の高騰は続くものと見込んでいます。次お願いします。

     続きまして、次のテーマと言える綿糸価格の動向の説明に移ります。綿の糸は、より上質なコーマと呼ばれる糸と、中程度の品質のカードと呼ばれる糸の2種類に大別されます。ご覧のグラフはこれらの糸の市場価格の推移です。この上期はほぼ横ばいで推移したと言えると思います。

    こうなりますとちょっと市況が悪くなってきたということで、一部の日系紡績とブラジルの国内の紡績会社は減産を余儀なくされました。しかしながらブラジルの東北部、こちらの方を中心としたブラジルの大手紡績会社というのは非常に高いコスト競争力、まあ人件費ですとか、色々な問題があるんですが、非常に高いコスト競争力を持っておりますので、フル生産と安値販売を続けるということでありました。まあそのために相場価格が上がらなかったというのがこの半年でございます。次お願いします。

     次はオープンエンドと呼ばれる糸の価格の動向の説明に移ります。このオープンエンドの糸というのは、先程説明したカード糸やコーマ糸とはちょっと製法が違うもので、品質は劣るんですが安く作れるという、そういう特徴を持っております。

    この糸がこの上期は好調でした。この冬、厳しい寒さが続きましたもんですから、この糸の用途であるニット用の太番手や細番手、あるいはスライドに記載した用途で需要が高まりまして、相場価格もご覧の通り右肩上がりとなりました。この下期も上半期と同じく好調に推移するものと見込んでおります。次お願いします。

     続きまして、綿糸の輸出入と書かせていただきましたが、やはりブラジルの繊維産業を説明する上では輸出入の動向というものの説明が欠かすことができません。従いまして、繊維の種類ごとにご紹介したいと思います。この上期、綿糸の輸出入につきましては、レアル安が進んだことで、大手ブラジル紡績、先程申し上げました大手ブラジル紡績を中心として南米各地への輸出が好転いたしました。前年同期比25倍と書かせていただいております。

    逆に、綿糸の輸入というのは半減しております。下期の見通しにつきましては、レアルが反発しておりますので、ある程度輸出に関してブレーキはかかるとは思いますけれども、一定量の輸出というのは継続すると思います。輸入につきましては、希望的観測も含めて、このまま低位で推移すると考えております。次お願いします。

     ブラジルでは綿の次に需要の多い繊維というのは合成繊維です。合成繊維の多くはファッション性の高い婦人衣料品や、機能性のあるユニフォーム、そういったものに使われています。この上期は、まあ景気の低迷ということがあって、企業向けのユニフォーム、この需要が大幅に減少いたしました。特に織物としての輸入量は大変減っております。下期は、今度は逆にドルが切り下がることによって、期待していた海外への輸出販売というものが難しくなってくるかなと、そのように見込んでおります。次お願いします。

     次に紹介するグラフはニット生地、あるいは既製服の輸入動向です。これまでの綿糸や合成繊維と同じように、生地と既製服の輸入も前年同期に比べて40%減という大きな減少となりました。衣料品の小売業界は、まあ軒並み売り上げがダウンしております。店舗数の方も減少しております。この小売店の売り上げが回復するころまでは、やはり厳しい状態が続くのではないかなと見込んでおります。では次お願いします。

     次のグラフは主にジーンズやジャケットなどに使われるファスナー、この輸入動向です。これまでの説明と同様に、衣料品の販売店の売上が全然だめになりまして、輸入衣料の方が減少しました。その減少と並行して、ファスナーの輸入も同じく40%を超える減少となっておりました。

    下期、レアルの反発がありますと、実は衣料品、最終製品と我々は呼んでいますが、縫製品の輸入が増えることがやはり予想されます。そうすると国内産業の収益を圧迫して、例えばユニフォーム用途の需要が低迷するとか、あるいは賃金が上がらず消費が低迷するとか、まあそういうことが危惧されるというのが我々の見立てでございます。次お願いします。

     続きまして、発表の第二部である下期の展望について説明したいと思います。お願いします。

     これまでの項目をぎゅっとまとめて、簡潔に書きました。世界の綿花需給につきましては、バランスは緩む方向でございます。ただ、投機マネーの流入が続くことで、綿花相場の下げは弱いままではないかというふうに見込んでおります。で、レアルが反発することによって綿糸の輸出にどういう影響があるかということですが、先程申し上げましたように、一定量の輸出は継続されるというふうに考えております。ただ、それ以上に、縫製品の輸入、最終製品の衣料品の輸入が再び増え始めましたら、糸と織物の売値を下げるそういう要因となると思います。

     市況について言いますと、こういった環境ではやはり市況を好転させる材料が乏しい下期となるのではないかなと思います。この期間は新しい市場をつくる、そういう準備期間として考えたいというふうに思っています。一番下にありますように、まとめますと、本格的な回復は2017年以降であるだろうと。それまでは損失を最小限に食い止めて、まあ来る春を待つというところです。では次お願いします。

     最後の第三部の副題については、課題整理と政府への提言、この順に説明します。次お願いします。

     課題整理として4点を挙げさせていただきました。1点目は、長期的な視野で地道にブラジル国内市場、これを開拓していくということです。繊維部会においてはこれまでもそうしてきましたし、これからもそうしていくというふうに考えております。

     2点目としましては、現地のパートナー、我々が糸や織物を販売する時に協力してもらっているパートナー、そういう方との繋がりをより一層密にしていく。時々日本企業が陥りがちな100%自前主義というものからは脱するということが不況での抵抗力をつける方法ではないかなというふうに思っています。

     3つ目は、こういう景気後退の時も、まあ言うたらブラジルに出てきた現地企業としては貴重な実地体験であると、そう前向きにとらえてですね、ブラジル独自の制度をもっとこの機会に深く理解していくということが課題だと思っております。

     4点目は、繊維部会独特の課題ですが、糸だけ売っている、織物だけ売っているということでは中々消費者に受け入れられる新しい価値というものを作るのは難しいです。それを、衣料品、例えばアパレルメーカー、あるいは加工会社、そういうところと一緒になってトータルで表すことによって、この後また何年後かに不況が来ても、この商品だけは継続的に売れる、まあそういう価値を持った商品を売れる状態に変わる、そういうことが4つ目の課題であるというふうに考えております。次お願いします。

     最後は副題に関連して、ブラジル政府への提言をまとめました。

     まあ今、景気のどん底であると。今だからこそ、思い切った政策を打ち出す機会ではないかなというふうに期待しております。一つ目ありますように、次に来る、必ずやって来る経済成長期、それに備えて、ブラジルの工業の競争力、特に国際競争力を強める、そういうことを進めたらどうかなというふうに思います。

     昨年来、もしくは一昨年来続いている政治の混乱、これに終止符を打って、政治を安定させる。政治を安定させることでブラジルの経済政策に対する信頼と信用を回復させる。そういうことを望んでおります。いま景気が悪い、何とか景気を回復させなきゃいけないということで、景気回復のためだという理由でブラジルコストと呼ばれるものを改善するとか、あるいは国内からの抵抗があっても、ここは景気を良くするためだということで、海外からの技術導入、こういうものを優遇するとか、そういう今だからこそできる大胆な変革、そういうものの絶好のチャンスであるというふうに考えていただきたいなと思っております。

     まあ、ピンチの後にチャンスありという言い回しがありますから、次のチャンス、確実にやってくると思っております。そのチャンスを捕まえるために、あの手この手で今の苦境を乗り切るということ、そう申し上げたいと思います。

     ではこれで繊維部会の発表を終わります。どうもご清聴ありがとうございました。

    司会

     南村様どうもありがとうございました。こちらの発表ですけれども、質問を受けたいと思いますけれども、いかがでしょうか。よろしいですか。南村様どうもありがとうございました。

     これで11部会すべての発表が終わりました。各部会長、副部会長の皆様、発表どうもありがとうございました。ここで我がブラジル日本商工会議所の名誉顧問で、在サンパウロ日本国総領事の中前隆博様よりご講評をお願いしたいと思います。中前総領事、よろしくお願いいたします。

     

     

  • 講評  中前隆博 在サンパウロ日本国総領事/ブラジル日本商工会議所名誉顧問

    中前隆博 在サンパウロ日本国総領事

     ただ今ご紹介いただきました中前でございます。今日ちょっと午前中地方に出張しておったため、遅刻をしてしまいました。まずこれをお詫び申し上げたいと思います。私が参るまでの各部会の皆様のご発表の内容、これは担当から報告を受けたところでございます。また、参りましてからの各部会のお話を伺うことができました。これを踏まえつつ、私なりの思うところを述べたいと思います。

     今回のシンポジウムのテーマが「どん底での戦略」ということでありますけれども、その中でやはり私どもが少し光を当てたら良いのかなと思うようなことをいくつか考えておる訳でございます。例えば、国外に注目すればですね、南米大陸の各国において、政治的にはいわゆる左派勢力、あるいはポピュリストと言われている政権が勢いを少し弱めて、そして、中道政策、中道右派と言っていいのかも知りませんけれども、中道に回帰しているという傾向が報告されております。

     特にお隣のアルゼンチンでの動向が顕著であるということ、これは注目すべきだろうと思いますし、また一部のご発表にもありましたけれども、メキシコをはじめとして太平洋同盟の経済状況、対外投資の動向、それからTPPの合意、これが今後締結に向けてどういくかというのはともかくとしても、課題はありますけれども、とにもかくにも合意をされたということ、そういうものができたということ、これはブラジルの官民の話を聞いている限りそれなりのインパクトを与え、このままでは自分たちはいけないのではないかという問題意識を持っておられる、そういう変化を産んでいるように見えます。

     また、国内に目を転じますと、確かに状況は厳しい訳でありまして、また苦しみの時期ということではありますけれども、ただし、この先どうなるんだろうということではなくて、いつ底を打ち、好転するのかという議論が主流になっているということ。これは他のいくつかのエマージング・マーケットの国の状況と比べても、ブラジルについてはそれは注目できる環境なのではないかというふうに思います。

     政治のプロセスは、苦しいプロセスが続いております。どちらの勢力の言っている事が正しいかということについて、軽挙に申し上げるのは控えるべきかもしれませんけれども、少なくとも最近の政府が打ち出したいくつかの経済政策、これらが基本的には良い方向に向かっている。経済政策と外交政策がビジネスにとって好ましい方向に向かっているのではないかという認識は、おそらく内外で概ねのコンセンサスがあるのではないかというふうに観察しております。

     また、ご案内の通り、リオ・デ・ジャネイロのオリンピックが、治安対策を含めてですね、非常に成功に終わったという、こういうグッドニュースがいくつか出てきているということは、やはり国内の雰囲気を改善する材料にもなって、また、ブラジルの人たちが自信を取り戻す契機ともなっているように思われます。

     そして、先日の昼食会で大使の梅田からお話を差し上げた時にも申し上げたことでありますけれども、一連のプロセスが、基本的には、法的な手続きに則って行われていること。報道や言論の自由が完全に保証された形で進んでいること。また、司法の独立が確保されていること。こういう形で現下の問題を解決しようとしている。

     多かれ少なかれ、今エマージング・マーケットの国々は、様々な問題を抱えて、特にBRICSの国々はそれぞれの問題を抱えているというふうに、課題を抱えているというふうに承知しますけれども、そういう比較の中で、ブラジルの進んでいる道というものは、これは一つ大きく注目すべきものではないかというふうに思います。

     それらのことから、トンネルを抜けた時には、以前よりもよりオープンで、透明で公正なマーケットが現実化するということを、ぜひ期待したい、信じたいというふうに思っているところでございます。

     その中での日本との関係であります。品質ですとか、納期ですとか、そういう日本ならではのクオリティの高さに対する評価は定着をしているところでございます。これは言うまでもないことであります。さらに、先のオリンピックでの開会式。ここでブラジルは世界中の30億人の視聴者の前に、ブラジルが、特に移住者の歴史を通じて、日本との関係の歴史を誇りに思っているということを示してはばからないところがありました。また閉会式でのハンドオーバーセレモニー。そこでの日本による東京オリンピックのプレゼンテーション。また、それに対する反応。内外の反応。これは日本のソフトパワーをいかんなく発揮し、それが評価された証ではないかと思っております。

     ブラジルは歴史的に多様な文化を受容し、統合するという能力に長けている国だと思います。その中で、日本は、歴史的、文化的に極めて優位にある国ではないかというふうに感じております。

     各部会からのお話の中で、今後の基本戦略は基本的に、基本に帰る。また、長期的視野を持って対応する。日本のクオリティを強調する。高い付加価値を強調する。基礎的な体力を強化する。そして、変化をチャンスに変えるというご認識でほぼ一致しておられたようにお見受けをいたしました。私としてもそれは、まさに仰る通りで、その通りであろうと思う訳でございます。

     その中で、私ども総領事館として、どういうことができるかということであります。一つには、もちろん、在ブラジル大使館と十分に協調しながら、ブラジル政府への様々な働きかけについてお手伝いをしたいと思いますし、それから、いわゆる日本のブランド、ジャパンブランドの強化・普及という観点から、戦略的な対外発信というものを一層強化したいと思います。

    そこの中に、先程ご紹介もいただきましたジャパンハウスもある訳でございます。また、対外交流委員会、新しく設置していただきました商工会議所の委員会と協力しながら、若手に一層注目しつつ、日系社会の方々との連携を進めていく、そのお手伝いもしたいなというふうに思っております。

     そう申し上げた上で、一つ具体的に、これはあくまでご提案でございますけれども、私ども毎年12月に天皇誕生日のレセプションを行います。これはブラジル官民、それから日系社会の方々、合わせて大体400名から500名の方がご出席になります。

    実は今まで当館、総領事館ではやっていなかったんですけれども、そこに、日本企業の方々に何らかの形でご出馬をいただいて、プレゼンテーション、プレゼンテーションと言いますか、そこで自社のプロモーションをしていただくということ。これは実は数年前からご案内の通り、色々な在外公館でやらせていただいておりますし、ブラジリアの大使館でも行わせていただいておりますので、皆様方の中にはおなじみの方もいらっしゃるかと思います。当館、色々な事情で中々できなかったんですけれど、まあちょっとやってみようじゃないかという話をしております。

    ちょっとですね、公邸の構造ですとか、色んな理由で、色々と試行錯誤しながら、どういうふうにできるかというのはこれから具体的に考えていかなきゃいけないんですけれども、これは一つのご提案として、企業の皆様方にご検討いただいて、もしやってみようという方が、企業様がいらっしゃいましたらですね、ぜひ一緒にやっていきたいなと思っております。具体的なところはこれはまた、事務局さんを通じてですね、色々ご相談したいと思いますので、ぜひご検討してみていただければと思います。

     以上で私の話を終わります。どうもありがとうございました。

    司会

     中前総領事、貴重なご講評をいただきまして、ありがとうございました。大変心強いお言葉と、また、新たなご支援のご提案もいただきましたので、我々、このトンネルの出口に向けて、この難局を乗り切るように、頑張っていければと思います。続いて、在ブラジル日本国大使館の小林和昭参事官よりコメントを頂戴したいと思います。小林参事官よろしくお願いいたします。

     

     

  • コメント  小林和昭 在ブラジル日本国大使館参事官

    小林和昭 在ブラジル日本国大使館参事官

     在ブラジル日本国大使館で経済の担当の参事官をしております、小林と申します。皆様お疲れ様でした。本日は貴重なプレゼンを聞かせていただき、本当にありがとうございました。誠に僭越ではございますが、コメントをさせていただきたいと思います。

     このシンポジウムの参加ですが、実は今回で6回目になります。毎回新しい発見があり、本当に私の仕事の上でも有意義なものとなっておりまして、今後も、ブラジルにいる限りは出席したいと思っております。 6回目になりますが、コメントについては中々慣れません。まあ田舎者なのでなまりもたまに出てしまうかもしれませんが、そこはご容赦いただければと思います

     本日のプレゼンでもブラジルの経済の厳しさというのを改めて知ることができました。この厳しい状況の中で、まさにビジネスの最前線で活動されている皆様に対して、敬意を表したいと思います。大使館をはじめ、在ブラジルの日本総領事館、在伯公館は、日本企業支援というのを今後も力を入れていく所存でございますので、皆様何かお困りのことがあれば、気軽にご連絡いただければと思います。

     ブラジリアの話題ですが、来週、何も大きな問題がなければ、罷免プロセスのクライマックスを迎えることになっております。それが無事終わればですけれども、報道に出ていますけれども、新政権は9月から外交の問題についても色々と取り組むということになっております。スケジュールだけで言えば、9月頭にはG20が中国で、9月下旬にニューヨークで国連総会、また10月中旬にインドでBRICS首脳会合ということで、大きなイベントが9月から10月に続いてあります。

    その中で、アジア、その中の日本というのにも訪問したいというのが、報道で出ておりますが、そういう動きが出てくれば、色々な問題が一気に動き始める可能性がございます。この中では、官だけではなく、官民一緒になって取り組む課題というのも出てくると思いますので、その際はよろしくお願いしたいと思います。

     会議所のAGIR活動について一言言いたいと思います。松永会頭からお話がございましたが、今まで、簡単な課題から始めておりましたが、まさにこれからが本番になると思います。これからは、松永会頭が先程高いボールを投げるという表現を使っておりましたが、まさにこれから高いボールを投げていかなきゃならないという時期ですが、最近ブラジリアで、国会・行政の方と話をする機会がございますが、関係者皆も、ブラジル人も、やはりこの高めのボールを処理しなければいけないというふうな話をすることが、話を聞くことが出てきました。

     まあブラジル人のことですので、どこまでこれを100%信じるかどうかというのはちょっと難しい所はございますが、今まではその、例えば、労働、年金問題、税制問題というのはアンタッチャブルな形で、全く出てなかった問題が、まさに時が来たというような形で話がされるようになっております。

     今後のスケジュールについては、2018年が選挙の年ですので、まさに来月9月から2017年いっぱいというのが勝負の期間になると思いますので、この中で少しでも成果が挙げられるよう、商工会議所と大使館、総領事館も含め一体となって取り組んでいければと思っております。引き続きよろしくお願いします。

     大使館は、最近私の面談の申し出を受けていただいた方には言っていますが、明るいニュースを探しております。皆さん明るいニュースがあれば、今後の色々な日伯のハイレベルの会合に向けても必要ですので、明るいニュースがあればぜひまたいただければと思います。

     明るいニュースの続きということで、オリンピックの話題をちょっと触れさせていただきたいと思います。オリンピックは最後の土曜日にブラジルがサッカーで優勝し、日曜日にバレーボールで優勝し、最高の形で成功を締めくくることができたと思います。

    その中で、先程中前総領事も仰っていましたように、開会式では日本移民が、閉会式では日本の東京への引き継ぎのプレゼンテーションが大きな話題になり、ブラジルの中で日本がまた再注目されている状況でございます。この良い印象をもって、ビジネスの世界でも流れに乗っていければと思っております。

     また、競技では、私が一番感銘を受けましたのは、日本の男子100M×4のリレーでございます。一人一人は体格で劣り、これまでの記録でも劣るものが、チームワークを発揮して銀メダルという大きな成果を得ました。まさに一人一人、ブラジルでは日本企業というのは他の企業に比べて小さい部分がありますが、協力して色々取り組んでいけば大きな成果が出せるという、一つの例ではないかと思っております。その他、日本選手がブラジルのこの地で色々な成果を出してくれましたが、我々もそれを受け継いでいければと思っております。

     最後に、繰り返しになりますが、大使館、総領事館はブラジルで活動している皆様の支援を続けていく所存でございます。引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

    司会

     小林参事官、どうもありがとうございました。今ですね、ちょうど5時45分となりました。本日は皆様、長時間にわたりシンポジウムに参加いただきまして、ありがとうございました。

    そして、発表者の皆様、そして資料を準備いただきました部会メンバーの皆様、大変お疲れ様でした。また、本日ですね、慣れない私の司会にも関わらず、皆様のご協力をいただきましたお陰で、時間よりも早く終了することができました。どうもありがとうございました。

     また本日はですね、「どん底の時期ならではの戦略は?-課題整理と対処方策-」をテーマに、各部会から様々な課題や対処法が発表されました。各社、各業界ですね、どん底のブラジル経済に苦しみながらも、地道な取り組みもあり、アイデアあり、この難局をですね、乗り切る動きが多く披露されたと思います。

     また、化学品部会ですとか、いくつかの部会では、低迷するブラジル国内の市場を補完するために周辺諸国市場での事業展開を模索するような事例も発表されたかと思います。また、テメル新政権への期待と不安、そして景気低迷の出口に備えた取り組みも数多く発表されたかと思います。本日のシンポジウムでの内容は、本日参加いただきました企業の皆様のですね、取り組みに必ずや参考になり、力を与えるものになったのではないかなと、このように確信しております。

     また、本日のプレゼンは、カマラのWebサイトに近日中にアップする予定にしておりますので、資料の方を後でご活用いただくようにお願いできればと思います。

     それから最後に、いくつかの部会からカマラやブラジル政府等に向けた様々な要望が取り上げられました。こちらの方をですね、今回のシンポジウムの新たな企画ということで、こういったところも取り上げていただくように各部会にお願いしたところでございます。

    これらの要望は、松永新会頭の下、私も含め、これから引き続き、戦略・戦術を練って、皆様と力を合わせて検討・対応するように取り組んでいきたいと考えております。

     また、部会長シンポジウム、半年に1回開催されておりますけれども、今回ちょっと私、中々皆様のご質問を拾い上げることができなくてちょっと反省しておりますけれども、よりよいプログラムになるように頑張っていきますので、これからも皆様のご支援、ご指導をよろしくお願いいたします。

     これで本日の部会長シンポジウムを閉会したいと思います。この後、隣の部屋で懇親会がありますので、皆様ぜひ参加いただければと思います。参加費用をお支払いになった方は大丈夫なんですけども、飛び込みで参加もできると思いますので、その際、80レアルでございますけども、ぜひとも参加いただければと思います。それでは皆様、どうもありがとうございました。

    (終了)

Pdf全プレゼンテーションPDF

2016年上期の業種別部会長シンポジウム

2016年上期業種別部会長シンポジウム「2015年の回顧と2016年の展望」

副題:「景気低迷期だから見えてくるビジネス機会~経済回復期はいつか?日系企業はどう備えるか?~」

Pdf2016年上期業種別部会長シンポジュームプログラム

 

  • 前半司会 樹神幸夫 総務委員長

    樹神幸夫 総務委員長

     それでは、時間が参りましたので、2016年上期業種別部会長シンポジウムを開催させていただきます。私は本日前半の司会を担当いたします、総務委員会委員長、三菱重工の樹神でございます。どうぞよろしくお願いいたします。このような司会は不慣れでございまして、何かと行きとどかぬ所が出てくるかと思いますけれども、タイムキープ含めて皆さまのご協力とご容認をお願いしたいというふうに思います。

     そして後半の司会は、隣におられます企画戦略委員会委員長、ジェトロの大久保様にお願いします。一言お願いします。

     

     

  • 大久保敦 企画戦略委員会委員長

    大久保敦 企画戦略委員会委員長

     企画戦略委員長の大久保と申します。ジェトロの所長をやっております。私もこのようなシンポジウムの司会というのは初めてでございますが、皆さまからの質問や意見等ですね、活発に出るように盛り上げていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

     

     

  • 司会 樹神総務委員長

     なお本日は、在サンパウロ日本国総領事の中前隆博様、ありがとうございます。日本からはですね、経済産業省中南米室長の菅原廣充様にお越しいただいています。後ほどご講評をいただくことにしておりますので、よろしくお願いします。また、在ブラジル日本国大使館の小林和昭参事官にもお越しいただいております。小林様には最後にコメントをお願いしております。よろしくお願いします。

     本日は190名を超える方々にご来場いただいております。いつものことですけれども、ここに来ていただいて5時間ほど、ブラジル経済の動向がですね、議論も含めて良く分かるということでございます。少しこれから眠くなる時間でございますけれども、しっかりと聞いていただいて議論していただければというふうに思います。

     今回の副題はですね、隣の企画戦略委員長の大久保さんのご提案で、「景気低迷期だからこそ見えてくるビジネス機会~経済回復期はいつか?日系企業はどう備えるか?」といった内容になっております。ここ2年間の、この半年ごとの今回の議題を振り返ってみますと、「どうしたブラジル経済」「どうする日伯関係」「再生目指すブラジル経済」「どう頑張る日系ビジネス」「必ず復活」ということで、この2年間、どうしたブラジル、どうする、頑張る、という話だったわけですが、昨年2015年度を終えてですね、まあ現実となった深い景気低迷に対して、我々は腹を据えて、どう考え、どう行動していくかということであると思います。

     この副題をですね、今日発表していただく各部会で熱心に議論していただきまして、本日各部会長・副部会長から発表をいただきます。皆さんも大変関心の高い話題だと思いますが、発表者の方も熱が入って若干時間オーバーということになるかとも思いますので、その時には我々の方から少し合図をさせていただきますので、発表者の方にはぜひご協力をお願いしたいと思います。

     それではまず、村田俊典会頭より開会のあいさつをお願いいたします。

     

     

  • 開会挨拶

     

  • 村田俊典 ブラジル日本商工会議所会頭

    村田俊典 ブラジル日本商工会議所会頭

     皆さまこんにちは。お忙しいところ、2016年度上期業種別部会長シンポジウムにご参加いただきまして、大変ありがとうございます。本日は、先ほどもご案内ありましたように、日本より経済産業省通商政策局の菅原廣充中南米室長をはじめ計3名の方々、また在ブラジル日本大使館より小林参事官、またジャパンハウスのイベントで大変お忙しい中ですね、在サンパウロ中前総領事にもご参加いただきまして、大変ありがとうございます。後ほど御三方にはですね、講評とコメントをいただくことになっております。何卒よろしくお願いいたします。

     まず、業種別部会長シンポジウムの位置づけについて一言申し上げたいと思います。カマラの会員は11ある部会のうちいずれかに必ず所属していただくことになっております。カマラの活動は部会単位で日常業務の情報をシェアし、切磋琢磨していくわけですが、とりわけこのシンポジウムは、半年に一度、部会の皆さまが日々直面する難局へ立ち向かうその英知を集約し、発表し、その結果をカマラの会員のみならず一般に公開し、あらゆる人に情報を提供する大きなイベントでございます。黎明期を加えますと、これまで既に約40年続けており、毎年内容を濃くしてきていると思います。これは我々カマラ全員の、会員全員の誇りでもあると思います。初めて参加される方も多いと思います。各業界のエッセンスが詰まった発表ですので、どうかじっくり内容を理解していただき、今後の業務に役立てていただきたいと思います。

     さて、私は19年ブラジル勤務をしております。また色んな危機も経済プランも経験して参りました。しかし、おそらく今回のこの危機が、トンネルの出口が見えないという恐ろしさという意味では一番厳しい危機ではないかと思います。しかし、危機と申しましても、まあ中東のどこかの国のように国がなくなるというような危機ではなく、決して2億人のブラジルが消えてなくなることはないと思います。つまり、パンや車や病院がなくなり、電気がなくなるというようなことは起こらないと思います。

     ただ、何が起こるかと申し上げますと、業界の中でですね、flight to qualityが起こると私は予想をします。弱いところが消えていき、強いところが生き残る。厳しい環境の中で対応できるところが生き残る世界が来るのだと思います。

     我々会員企業はどのような心構えと経営戦略でこの危機を乗り切るのか、今日の各部会の発表の中に数多くの示唆が含まれていると思います。単なるマクロデータの勉強に終わることなく、今後の企業運営に役立つ何かを掴んでいただければ、このシンポジウムの目的は大きく達成されるのだと思います。

     最後に、各部会を取りまとめ、および、発表のためご尽力をいただいた数多くの会員企業の皆さまに御礼を申し上げまして、開会の挨拶といたします。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     村田会頭ありがとうございました。それでは早速各部会の発表に移りたいと思います。まず初めは金融部会の発表を三井住友海上の原敬一部会長からお願いいたします。

     

     

  • 金融部会 原敬一 部会長

    金融部会 原敬一 部会長

    Pdf金融部会    原 敬一 部会長

     皆さんこんにちは。金融部会長の三井住友海上の原です。金融部会よりブラジル経済動向、銀行業界動向、保険業界動向について発表させていただきます。

     ここ数カ月のブラジルをめぐる情勢は、外的には世界的な株安、原油価格の下落、中国経済の減速、内的には格付け機関による信用格付の格下げ、大統領の弾劾プロセス開始、レヴィ財務相の辞任、財政赤字、ペトロブラス汚職スキャンダルの拡大など、まさに内憂外患の真っただ中にあり、非常に予測が難しい状況におけるご説明であること、あらかじめよろしくお含み置きいただきたく、よろしくお願いいたします。なお、市場の各指数につきましては、日々変化するということで、本日の発表は便宜的に1週間前の2月18日という時点の体裁をとっておりますので、よろしくお願いいたします。

    それでは早速、最初のスライド、3をご覧ください。2015年を振り返ってみますと、政治・経済ともに混乱した一年でした。主なトピックスとして5つ挙げております。

     一つ目として、1月にルセフ大統領の2期目の政権がスタートいたしました。しかしながら、財政再建、経済回復と多くの難題に直面し、大統領支持率が低下。12月には正式に弾劾プロセスが開始となりました。

     二つ目は、ペトロブラス社をめぐる汚職事件です。2014年3月にスタートした本件は、ゼネコントップや現職上院議員の逮捕という、政財界を巻き込む大スキャンダルに発展しています。

     三つ目は、財政見通しの悪化や政局の混迷化を背景に、格付け機関によるブラジルの信用格付の格下げです。S&Pが9月に、またフィッチ社が12月にそれぞれ投資不適格級であるBB+としております。なお、先週2月17日にS&P社はさらに1段階の格下げを実施し、BBとし、また昨日ムーディーズ社も格下げを実施して投資不適格級のBa2としております。したがって、3大格付け会社がブラジルを投資不適格級という格付けに下げたことになります。

     四つ目は、レアル通貨が史上最安値を更新したということです。2015年9月22日、まさに2002年の10月以来13年ぶりに1USドルが4レアルを突破しました。9月の24日には4.24レアル台後半まで到達し、最安値を更新いたしました。

     五つ目として、レヴィ財務大臣の辞任が挙げられます。ルセフ大統領2期目がスタートした1月以降、財政改革・改善を推進してきたレヴィ財務大臣が12月18日に辞任いたしました。

     次のスライド4では、これらを受けて2015年の主要経済項目についてまとめてみました。

     まずGDPの成長率です。まだ確定値ではありませんが、ここ数年の低成長傾向がさらに落ち込み、2015年はマイナス3.7%とマイナス成長に落ち込むものと見らます。

     貿易収支は、昨年2014年には2000年以降初となる赤字となりました。しかしながら、レアルが対ドルで大きく下落したことが輸出を下支えした一方、国内経済が最悪の景気後退に陥り、輸入品の購入が手控えられたということで、黒字に転換しております。

     株価を見ていただきますと、3年連続で年末の終値が前年を下回る状況が続いております。

     政策金利は、景気低迷にもかかわらずインフレ圧力が根強いため、2015年には5回にわたって引き上げられました。2015年末では14.25%と、2014年末から比べると2.5%上昇しています。なお、現在も年末同様14.25%です。

     インフレ率は10.67%と、2002年の12.53%を記録して以来13年ぶりの高水準となりました。

     為替レートは年末1USドル=3.9608レアルと、2014年末と比べて49%のレアル安ということになりました。

     これを総括しますと、2015年は2014年に引続きブラジル経済が大きく減速し、主要マクロ経済指標が軒並み悪化したということが言えます。

     それでは個別に各指標を見ていくこととします。まずGDP成長率です。ルーラ政権の8年間の平均成長率は4%でした。その後、2011年からの第1次ルセフ政権4年間の平均成長率は2.2%と大きく失速いたしました。ブラジル中銀が100行以上の金融機関の予測値を取りまとめるFOCUSに基づきますと、2015年の推定成長率は、先ほども申し上げました通りマイナス3.7%となっております。また2016年につきましてはマイナス3.0%と、2015年と同様マイナス成長を予測しています。

     次のスライドは四半期ごとの数値を示しております。棒グラフがGDP成長率、折れ線グラフが工業生産指数を示しております。棒グラフのGDP成長率と折れ線グラフの工業生産指数を見るに、共に2013年後半から成長率が低下してきていることが分かります。

     このスライドは財政収支について示してあります。2003年以降、2013年までは基礎的財政収支は黒字を維持しておりましたが、2014年よりマイナスに転じております。2015年は景気低迷による税収の減少も影響しております。

     相関関係の強い政策金利とインフレ率の推移です。政策金利の推移は実線です。2015年には5回にわたり引き上げられ、現時点14.25%となっています。インフレ率は点線で示してあります。2015年に入りインフレ圧力は強まり、12月には10.67%に達しました。インフレ率上昇の背景には、燃料、公共料金等の値上げなどもあります。

     為替の推移について見ていきます。まず対USドルですが、2002年の大統領選の過程で社会政策の拡充、対外債務支払い停止等の過激なスローガンを掲げていた労働者党のルーラ氏が勝利する可能性が高まったことを受けて、市場はレアル売りを進めて一時は1ドル=4レアルとなりました。その後、ルーラ氏が大統領選挙に勝利すると、市場の予想に反し、財政規律と所得格差是正のバランスを重視した現実的な政策を打ち出したことにより、レアルは戻して、2011年7月には対ドルで最高値1.5391レアルをつけるまでレアル高が進展いたしました。

    2011年後半からは徐々にレアル安に進み、米国の利上げ実施、資源価格の下落による新興国・資源国の通貨売り圧力、政治的不安要素の拡大、中国株式の下落、先ほども申し上げたS&P、フィッチ社等の格下げが重なり、再びレアル安の傾向が加速しております。

     対円では、レアル相場は2015年を通じて32.6%下落しました。2016年に入ってもその傾向は加速して、2月16日には最安値の28.02円をつけています。

     次はブラジル格付けの推移です。スライド11では、冒頭に申しました通り、政府財政の見通しの悪化や政局の混迷化を背景にS&P社およびフィッチ社が2015年にそれぞれ投資不適格級であるBB+としております。繰り返しとなりますが、直近先週2月17日にはS&P社はさらに1段階格下げを実施し、BBとしました。また昨日ムーディーズも格下げをしたことは先ほども申し上げた通りです。

    これによって主要格付け3社のブラジルの格付が投資不適格級となっております。ただ、ブラジルのエグゼクティブの中にはですね、BBBを持した期間というのがほんの数年で、実はブラジルというのはBとBBの国だったんだということを堂々と言う人もまだおりますので、そういう考え方も実は一方であるんじゃないかなと思っております。

     このスライドでは、CDS、クレジット・デフォルト・スワップの推移を示してあります。これは国の信用力のバロメーターとなる指標で、信用リスクに対するリスク料とお考えください。ちなみにギリシャ危機の時はポイントが1000まで上がって、大体600が一つのアラームのメルクマールとなっています。先ほどご説明した格付の低下とともにCDSも上がってきて、昨年9月28日は533ポイントと、600に限りなく近づいてきているということが言えます。2016年以降も不透明感は払拭できないことから、高止まりする傾向と考えています。

     労働市場については失業率と最低賃金推移をご覧になってください。失業率は2014年12月末には4.3%と歴史的な低水準を記録したと。一時は完全雇用の宣言を政府はしたんですが、昨今の景気低迷による企業の雇用調整が本格化したことを受けて失業率は急速に上昇しています。2015年12月は6.9%と、12月の実績としては2007年以来の高失業率を記録しています。ここでも景気低迷の深刻さが顕著に現れています。

     このスライドは外国直接投資と外貨準備高です。景気低迷の局面ながらも、外国直接投資はレアル安の影響もあり、比較的安定的に推移しています。また、2015年末時点の外貨準備高は約3500億ドルと、輸入の33カ月分にも相当するボリュームを確保しています。したがって、急に過激なレアル安に直面したとしても、潤沢な外貨準備があるため、レアルの買い支えが可能な状況にあると思います。これはブラジルの強い一面だと思っています。

     このスライドでは金融部会所属の各銀行による2016年の予測を、各項目ごとに最大値と最小値という形でレンジで表記してみました。ご参考までに左側の2015年を見ますと、2015年8月時点のシンポジウムで予測したメインシナリオとリスクシナリオを比べますと、これと実績を比べますと、ほとんど実績はリスクシナリオに貼りついたということが言えると思います。この2016年予測の集計値は2月5日時点ですので、その後の材料は織り込まれていないことをご留意ください。

     まずGDP成長率は、マイナス2.5%からマイナス4%と見ています。2016年も2015年に引き続きマイナス成長を予測しています。インフレ率は6.5%から9%というレンジで見ています。食糧品の価格上昇など、物価上昇圧力は引き続き強いものと予測しております。

     為替については、1USドル=4~4.5レアルを見ています。ブラジルを取巻く、マーケットにおける市場心理の悪化、政治的不安要素の拡大などからレアル安基調と見ています。

     年末の政策金利については、13.25%から15.25%と見ています。インフレ圧力が引き続きあることから政策金利は高止まりを予測しています。

     このスライド16では、前スライドでご説明の2016年の予測とともに各銀行からのコメントを集約しております。皆さんのご関心があると思われる、現在の景気低迷はいつ好転するのか、につきましては、ここで2017年説、2018年説、その他と3つの説に分かれてありまして、それぞれ記載しておりますが、いずれにしても非常にこの時点では予測が難しい状況にあります。

     また、「景気低迷期だからこそ見えてくるビジネス機会」と本日の副題ともなっております、今の状況における日系企業にとってのビジネスチャンスとしては、レアル安によるブラジル企業の買収チャンス、輸出可能性を探るチャンス、またブラジル企業によるリストラを契機として事業や資産等について以前よりも良いものに巡りあえるチャンス、などを挙げさせていただいております。

     続いて2015年の銀行業界についてご説明いたします。

     毎年二桁のペースの増加で伸びていた融資残高は、2015年は6.6%の伸び率にとどまりました。経済成長の失速が見えていた2014年には法人向け貸出ペースは既に鈍化しておりましたが、個人消費を支えるために消費者ローンを中心に個人向け貸出は13.3%という伸び率を記録していました。しかしながら2015年には、高い金利による借入ニーズの減退、また金融機関の保守的な貸出姿勢等も相まって個人向け貸出も低調となり、全体では6.6%の伸び率となりました。

     平均貸出金利の推移を示したものですが、2014年まではブラジル国内における貸出金利は低下局面にありましたが、2015年以降は 景況感の悪化から金利の引き上げが見て取れます。

     不良債権比率ですが、これらのグラフは90日超延滞の不良債権比率を示したものです。一番上の折れ線グラフが個人向け貸出の延滞率、一番下のグラフが法人向け貸出の延滞率、真ん中のグラフは個人と法人の両者合算の延滞率を示しています。2014年までは貸出残高も大きく伸びていたこともあり、延滞率は下方傾向にありましたが、2015年に入ってからは保守的な与信および借入ニーズの減退などにより、貸出残高の伸びが緩やかになったことに加え、景気悪化を背景に個人・法人の延滞額も増加したことから、延滞率の上昇が見て取れます。

     不良債権比率は増加傾向にありますが、大手銀行を中心に収益性は依然として高く、銀行部門は引き続き堅調に推移しています。また、各銀行の自己資本は相応に厚く確保されていることに加え、ブラジル中銀により保守的に管理されていることから、金融問題によって経済が混迷するリスクは限定的なものと考えています。ここの、金融に強いというのが、ブラジルのまた一つの特徴だと思います。

     最後に2015年の保険業界についてご説明させていただきます。ブラジルの保険監督庁のSUSEPの統計データによりますと、2015年の保険料収入の伸び率は前年比で3.2%となりました。二桁成長が続いていた2013年度までと比較すると、204年、2015年と、経済成長が低迷する中、保険マーケットの成長も鈍化してきていると言えます。

     続いてこのスライドは保険種目別の保険料収入のデータとなります。全種目とも成長が鈍化傾向にあることがお分かりいただけます。

     このスライドは保険種目ごとの損害率のデータとなります。全体としては前年比0.2ポイントとわずかながら改善しておりますが、内訳を見ると損害保険は悪化し、生命保険・傷害保険は改善という状況になっています。損害保険では、主に企業を中心とした火災・新種保険において損害率が5ポイント以上悪化しています。また、運送保険の損害率は2ポイント改善してはいますが、65.7%と依然として高い水準にあります。ブラジルの保険業界は、保険会社数が非常に多いということも相まって競争が激しく、保険事業における低い収益性を運用収益でカバーするという実態にあります。

     最後に今後の保険市場の将来性ですが、ブラジル経済の不透明さ、自動車新車販売の落ち込み、個人消費の停滞などで、保険業界をめぐる環境の先行きも厳しくなってきています。しかしながら、大手再保険会社のスイス・リーの調査によりますと、2014年度のブラジル国民一人当たりの保険料水準は日米の10分の1程度であることから、中長期的には貧困層の富裕化によって今後も一定の成長が見込まれています。

     以上で金融部会の発表を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     原様ありがとうございました。何かご質問ございますでしょうか。せっかくの機会ですからどうぞご気軽に質問いただきたいと思います。よろしいでしょうか。なければちょっと私の方から一つ。景気回復がいつごろになるかというのは非常に関心の高いところで、まあ要因別に17年説、18年説、それ以降という形になっているんですけれども、やっぱりこういう時には、18年以降の最悪の事態を想定しながら17年という楽観的な状況に備えると、そういうことかなというふうに思いますけれども、日本人的な考え方でいくと一番真ん中の18年説が、数も多いし、ストーリー的にも成り立ちやすいんじゃないかなというふうに思うんですけど、金融部会の中ではこの説の中のどこが一番強いという状況だったんでしょうか。

    回答

     まさに三者三様で、大手3行とも分かれていたという、そんな感じですね。

    司会

     原様自身はどこが。

    回答

     私自身はですね、やっぱり国民の心理面が重要だと思います。だからやっぱり、国民が安全に消費ができるような国に早くなれればよろしいんじゃないかなと思いますし、そういう意味ではやはり政治、経済というよりも政治の果たす役割が非常に重要だと思っています。

    司会

     ありがとうございます。原様どうもありがとうございました。

     

    原 金融部会長

     質問が余った時間で、すみません、私事なんですが、5年間のサンパウロ勤務を終えまして3月末に帰国ということになりまして、次回のカマラの昼食会は先約があって欠席となりますので、カマラの公式行事という点では今日が最後になります。カマラでは監事を2年、理事を2年務めさせていただき、ここにいらっしゃる皆さまに大変お世話になりました。改めて、ありがとうございました。あと、後任の井上がですね、既に着任しておりますので、私と同様にご愛顧のほど何卒よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

    司会

     はい、ありがとうございました。それでは引き続きまして、貿易部会の発表を副部会長の住友商事の寺本様からお願いいたします。

     

     

  • 貿易部会 寺本将人 副部会長

    貿易部会 寺本将人 副部会長

    Pdf貿易部会    寺本 将人 副部会長

     皆さんこんにちは。貿易部会副部会長の住友商事の寺本です。本日はどうぞよろしくお願いします。では2015年通期のブラジルの貿易動向についてご説明いたします。

     まず貿易額の推移です。グラフをご覧ください。これは半期ごとの貿易額の推移を示したものです。左側の青色の棒グラフが輸出額、右側の緑色の棒グラフが輸入額で、折れ線グラフは貿易収支を表しています。また赤の横線は貿易収支の黒字ラインを示しています。

     点線で囲った2014年の貿易収支をご覧ください。上期・下期ともに赤字となり、2000年以来14年ぶりに39億ドルの通期赤字を記録いたしました。

     2015年に入りましても、中国経済の減速や資源価格の低迷は続いておりますものの、国内市場が低迷したことにより企業が海外市場を志向したことや、急激な通貨安などによって輸出にドライブがかかり、通期では197億ドルの貿易黒字となっております。実は半年前のこの場での発表では、2015年の通期の貿易収支予想を95億ドルの黒字と紹介いたしました。結果的には、昨年12月にブラジル中銀が予想した150億ドルをも大幅に上回る197億ドルという結果になっております。

     輸出促進の要因となった為替なんですけれども、2014年の期中平均が対ドルで2.35レアルであったところ、2015年の期中平均は3.3レアルとなり、約30%の下落を見ております。

     次のスライドでは2015年通期の輸出入について前年と比べながらご説明いたします。

     まず輸出動向について商品別にご説明いたします。輸出商品を、一次産品、半製品、工業製品の三つに大別しております。それぞれの輸出額の構成比を見ますと、一次産品が金額で全体の約半分を占めておりますので、ブラジルは一次産品の国際市況に大きな影響を受けがちな構造と言うことができます。

     オレンジ色で囲みました一次産品の増減率をご覧ください。数量ベースでは昨年比で11.2%増加しておりますが、金額ベースではマイナス20.4%と大幅に減っています。赤で囲みました部分ですけれども、鉄鉱石は金額ベースでマイナス45.5%と最も減少幅が大きくなっています。これは2014年の平均市場価格が1トン当たり96.7ドルであったのが、2015年では55.5ドルと10年前の水準にまで低下したことが原因です。ちなみに輸出数量自体はプラスの6.3%と若干増加しております。

     次にその下の原油ですが、主に中国向けの輸出が増えましたことで、数量ベースでは41.9%増加しておりますが、原油価格が下落したことにより金額ベースでは27.9%減少しております。原油価格は2014年の平均が1バレル当たり99ドルだったのが、2015年には53ドルと約半分に下落しております。

     続いてブラジルの輸出相手国についてご説明いたします。左の表は輸出相手国上位10カ国、右の円グラフは地域別の構成比を表しています。

     左の表の赤枠をご覧ください。各国の輸出額増減を表しておりますが、ほとんどの国で二桁以上の減少となっております。前のページでブラジルからの一次産品の輸出額が20.4%減ったとご紹介いたしましたが、これら上位の10カ国はブラジルの一次産品の主要輸出先でもありますので、この影響を受けたものです。

     一番上の中国向けの輸出をご覧いただきますと、12.3%減少しておりますが、それでも2009年以来1位の座をキープしております。2位のアメリカ向けは10.9%の減少です。内訳ですが、航空機の輸出が約4割増加した一方で、原油の輸出が約4割減少しています。6位の日本については後ほどご説明いたします。

     また、右側の円グラフは地域別の構成比ですが、地域による偏りがほとんどなく、ブラジルの経済が特定地域の景況に大きな影響を受ける構造になっていないことを示しております。

     続いて輸入についてご説明いたします。金額ベースでは一次産品と工業製品が大幅に減少しています。その中でも赤で囲った原油は、数量は約16%の減少ですが、金額では52%もの減少になっています。これは原油需要の落ち込みと価格の下落が相乗効果をもたらしたためとなっております。工業製品である燃料油につきましても、油価の低迷により数量では約37%減少のところ、金額ベースでは約60%の減少となっております。

     続いてオレンジ色で囲った乗用車をご覧ください。工業製品の中では燃料油に続く下落率となっております。国内景気の低迷を受けて新車の生産台数は前年比で約2割減少しておりますが、完成車の輸入も約35%と大幅減となっております。

     次に輸入の相手国を見ます。左の表の赤枠を見ていただきますと、いずれの国からの輸入額も二桁以上の減少となっております。それでも中国は2012年以降輸出同様にトップの座をキープしております。日本は昨年と同じく6位なんですが、詳細は輸出とあわせて次のスライドでご説明いたします。

     右側の地域別構成比を表したグラフをご覧ください。中国を含むアジアで33%、次に中南米で16%、EU向けで21%となり、輸出と同様に地域による偏りは見られません。つまりブラジルは輸出入ともに特定の国や地域に依存しない貿易体制が構築されていると言うことができます。

     次に日本との貿易状況についてご説明いたします。左の表がブラジルから日本への輸出です。オレンジで囲った輸出金額の伸び率をご覧ください。マイナス27.9%と大きく減少しています。商品別に見ますと、鉄鉱石の輸出が約マイナス50%と大きく減少しております。日本への輸出最大品目である鉄鉱石は、数量自体は前年の3080万トンから2900万トンへと約5%の微減でしたが、対日輸出価格が半減したため金額ベースで大きく減少しております。

     全般的に対日輸出額が激減する中で、トウモロコシはプラスの98.1%と大幅に増加しています。これは為替安により輸出価格が下がったため、日本の買い付けが一部米国産からブラジル産へシフトされたことによります。

     次に右側の日本からの輸入をご覧ください。全体では17.4%マイナスの48億ドルとなりました。商品別に見ますと、自動車関連の輸入の減少が目立っております。

     続きまして、ブラジルへの直接投資についてご説明いたします。左側のグラフは2011年からの直接投資額の推移を表しております。2011年に695億ドルを記録して以降、2012年、13年と減少傾向が続いていましたが、2014年に若干持ち直し、2015年には前年比で3.2%増の579億ドルとなっております。為替安により、ドルベースでのブラジル企業の資産価値が下がっており、中・長期的なブラジルのポテンシャルを見据えて外資企業による買収が活性化したものと見られております。

     右側の表は国別のランキングですが、特に5位のドイツが前年比119%と大きく伸ばしております。これはドイツの大手鉄鋼メーカーが自動車部品工場を建設したほか、化学品関係の投資があったことによるものです。

     次のスライドは投資額を業種別に示したものです。一次産品は47.8%、工業は23.9%増加しましたが、全体の構成比で約5割を占めるサービス業は14.8%と減少しております。これは2014年の大幅増の原因となった金融セクターでの大型投資が2015年にはなく、その反動でマイナスになったものです。

     それぞれの産業のうち、伸び率が大きな分野について若干触れてみたいと思います。一次産品では石油・天然ガス分野が100%以上の増加を示しています。これは上半期の発表でご説明しましたロイヤルダッチシェルによるブリティッシュガスの買収が主な原因と考えられます。

     次に工業製品のうち煙草製品をご覧ください。前年と比べて5360%もの大きな増加率を示していますが、これはブリティッシュ・アメリカ・タバコ社が従来保有しておりましたソウザ・クルス社の株式を買い増したことが主な原因です。

     サービス業では電気・ガス分野が増加しております。これは三井物産さんによるガスペトロ社の買収も影響しているものと思われます。

     最後になりましたが、2016年の見通しについてご説明いたします。これは冒頭にお見せしました半期ごとの貿易額の推移表ですが、表の右端に今年1月の単月実績を追加しております。一月単月の貿易収支は9億2300万ドルの黒字となり、2007年1月以降単月では最大の貿易黒字を記録しております。ブラジル中銀は今後の貿易収支を、2016年に360億ドル、2017年に390億ドルの黒字と予想しております。レアル安により輸出が促進される一方で、輸入には一定の歯止めがかかることで、貿易収支の大幅な拡大予想となったものです。

     昨年6月にブラジル政府は国家輸出計画を発表しております。一次産品に依存した輸出構造から脱却し、付加価値の高い製品の輸出増加を狙うとしており、そのための貿易手続きの合理化、簡素化、輸出ファイナンスの拡大等、市場アクセスの改善に向けた積極的な政策が盛り込まれております。またこの計画の目指すところは、輸出増加のみならず、メルコスル等の特定の枠組みにとらわれないグローバル経済への統合を図ることとされています。

    貿易の活性化はブラジル経済の回復に貢献するため、この計画の実行が強く望まれるところであり、貿易部会といたしましても、今後もこの動向を注視していきたいと思います。

     以上で部会からの発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     ただいまの寺本様の発表に関しまして何かご質問ございますでしょうか。発表をさっとやっていただきましたので、少し時間がございます。ぜひご質問いただきたいと思いますけども、いかがでしょうか。どうぞ。今マイクをお持ちします。

    質問

     未熟な質問になってしまったらすみません。ブラジル経済のことを考えまして、ブラジルは結構その、表にもあったように輸出入ともに減少しているということで、鎖国したら一番強い国に、資源がある国になるのかなと思うんですけれども、日本国としまして、貿易部門では、ブラジルに輸出していく商品としまして、どういったものが強いものとなっているのでしょうか。

    回答

     ありがとうございます。ご質問の点につきましてですね、貿易部会の中で特に議論したりコンセンサスを得たというわけではございませんけれども、やはりブラジルで仕事をしていますとですね、日本の高い技術に対する期待が非常に大きいと思います。

    おっしゃられたようにブラジルは、食糧とか資源とか、そういったいわゆる一次産品は非常に豊富な国でございますし、人口も約2億人おりますので、おっしゃられた通り仮に鎖国しても何とかやっていけるというのはよく聞くところではございますけれども、やはり高い技術力、これをやはり日本のような国から導入して、より付加価値の高いものを輸出したいというようなブラジル企業の意向というのは非常に高く感じております。そういったところにまた日本とブラジルとのですね、次の可能性があるのではないかと思っております。

    質問者

     ありがとうございます。

    司会

     他に質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。はい。それでは寺本さんありがとうございました。

     では引き続きまして、機械金属部会の発表、部会長の川崎重工の渡辺さんからお願いいたします。よろしくお願いします。

     

     

  • 機械金属部会 渡辺健司 部会長

     機械金属部会 渡辺健司 部会長

    Pdf機械金属部会    渡辺 健司 部会長 

     ありがとうございます。機械金属部会の渡辺でございます。よろしくお願いします。まず、先週17日にですですね、部会の方を持ちましてセグメント別のレポートをまとめております。出席会社が約20数社ありまして、それを8つのセグメントに分けまして後ほど紹介させていただきたいと思っています。そのまとめとしまして、我々の顧客の事業状況、それと市場環境、それと企業の対応ということを各1ページでまとめております。

     本題に入る前にですね、実は、このシンポジウムでは常に副題というのがついておりまして、その副題のご紹介を、回顧と展望といいますか、それをちょっとご紹介しようと思ったんですけども、総務委員長の樹神さんと全くかぶってしまいました。事前の打ち合わせがなくて申し訳ないんですけども、簡単に、文字であらわすとこうなるというのをここにまとめてあります。

    実は副題は2013年の下期から採用されていまして、その以前はなかったんですね。それが3年ぐらい前からこういう副題が付けられています。大体副題を読んでいると、ブラジル経済の状況が何となく見えてくると。だんだん暗くなっているわけですね。で、文字が長くなっていると。今年の下期、8月に行われますシンポジウムのタイトルも大体読めてくるんじゃないのかなということで、まあこの辺につきましては期待しながら見させていただきたいと思っています。

     続きまして、本題に行きます。1番の鉄鋼から8番の潤滑油・軸受けというふうにまとめております。次のページお願いします。

     鉄鋼関係ですが、2015年の鉄鋼生産の状況を数字でまとめております。まず粗鋼生産。3320万トン。これは前年比2%の減ということで、4年連続減少しております。それと国内販売の量が1820万トン。これは前年比なんと16.3%落ち込んでおります。鋼材の輸入も約20%ほど落ち込んで、輸出が1370万トンということで40%、量的には増えております。これは北米市場で伸びがあったということです。ただし、製品価格の下落ということで、価格ベースでは2.3%の増にとどまっているという状況です。

     2016年の展望ということなんですけども、まあブラジル鉄鋼業界にとっては非常に、去年同様厳しい1年となると読んでおります。各種業界の需要見通しは軒並み前年比10%ぐらいダウンしています。自動車メーカーさんにいたりましては、販売見通しは7.5%のダウンということで。粗鋼生産、トータル3150万トン、昨年比5%ぐらい減るのではないかと。国内販売の方もですね、4%ダウンということで、1740万トン。輸入は5%ぐらいダウン。ただ輸出が今年のような伸びは見込めないということで、今年の1370万トンを若干下回る1300万トン、5%ダウンと。この背景としましてはアメリカ向けの熱延、冷延鋼板が訴訟対象になっておりまして非常に不透明な状況にあるということであります。

     次のページ、発電・社会インフラ関係。2015年の回顧としましては、水不足もありまして電力代金の高騰は電源の多様化ニーズを拡大したということはあるんですが 大型の火力発電所の増設が期待されましたが、それが実現せずと。また小型ディーゼル・ガスエンジン発電設備の販売に関しましては、南米諸国を含めて非常に堅調であったと。それと北東部の水不足・電力不足解消の目的で風力発電所が多数建設されております。これが非常に特徴的であると。都市交通案件、インフラ案件ですが、州政府の税収減というのがありまして、新規商談の入札の先送り、既発注工事の中断ということもありまして、全体としては低調な様子でした。

     2016年はどうなるかということなんですが、今年の3月の電力入札によって大型発電所案件が落札するかというのを非常に注目したいというふうに考えております。それと、水不足は一部の地域で解消されつつありますが、電源の多様化という方向性は加速される見通し。風力・バイオマス発電案件など再生エネルギー活用の案件増加が見込まれる。それと2015年同様小型ディーゼル・ガス発電セットの需要増も見込まれると。都市交通案件ですけども、大都市を中心に都市交通インフラ改善のニーズは依然高いものの、複数の都市で地下鉄等建設計画は有するものの、施主となる州・市政府の税収見込みが落ち込んでおりまして、商談プロセスは遅れるだろうというふうに考えております。

     3番目。プラント機械・造船分野。ここに製鉄、石油、石油化学と赤文字で書かれていますが、簡単に状況を説明させていただきます。製鉄は先ほども言いましたように、まあ高炉の生産自身ですね、数量的にはキープしているんですけれども、高炉の停止、従業員解雇などもあり、新規投資案件が大体見合わせになっております。非常に厳しい年であった。石油ガス関連では、中心でありますペトロブラスの業績不振が改善されておらず、新規投資案件は実質凍結状態と。油井管の引合いも停止状態です。

    2016年1月に発表になりましたペトロブラスの設備投資計画は2014年比6割減の980億ドルということで、数字的には非常に下がっております。石油化学分野もですね、上流工程に引きずられて新規投資活動は鈍化しております。樹脂関係ではレアル安を背景に輸出が増えてですね、売上げを上げた企業もございました。

    製紙パルプ関連ですけども、世界的パルプ需要は依然堅調。各社設備投資を検討しておりましたが、陰りが見えてきていると。造船。この分野にいたりましては、ラバ・ジャットの影響でペトロブラス案件、石油掘削船、FPSO、実質的に停止を余儀なくされております。既発注案件も中断状態ということで、全く、商談、ほとんど実施されていない、実現していないという状況です。産業機械、まあセメントが中心になります。景気減速によりまして、ブラジルのセメント各社は設備新増設計画を延期しております。客先からのスペアパーツの販売という程度の閑散とした状況です。

     2016年はどうなるのかということなんですけれども、経済環境に大きな変革が見込めないということでですね、製鉄関連は資源価格の下落で明るい材料乏しく、改造・補修需要程度かと。石油・ガス。内需が堅調なガソリン・軽油などへの設備投資を期待しているが、全体的には低調と。石油化学。大型プロジェクトの計画は遅延。 好調な個別分野に注目したい、樹脂関係ですね。

    それとパルプは、中国のパルプ需要も衰えてきまして、パルプの価格下落を予想しますと。 各社の設備投資にも飽和感が出始めているということでちょっと陰りが見えてきている。造船に関しましては、造船会社の資金難を回避できるような融資・出資スキームの構築を早期に行わないと、多数の造船企業が危機的な状況になるんじゃないかというふうに考えております。産業機械に関しましては、南米全体のセメントの消費は拡大していますが、ブラジルは低調という感じです。

     4番目の建設機械セグメントなんですけれども、15年の回顧としまして、ここに数字を上げておりますけども、かなり厳しい数字が出ております。建設機械、2014年、おととしの話ですけども、総需要台数が15800台。そのうち農業開発省で3200数十台という特需がありましたので、こういう数字になっておりますけれども、2015年の総需要台数が6500台。その特需を除いた数字で前年比48%減っております。これは政府の緊縮予算、ラバ・ジャットに起因しますインフラプロジェクトの中断、融資の打切り、与信厳格化、建設会社の投資見送りとかですね、色々そういう影響があった結果です。油圧ショベルはですね、これも37%ダウンと。小型の建設機械ビジネス。こちらも約6割ぐらい減っているという悲惨な状況になっております。

     2016年の展望としましては、建設機械の需要を取り巻くビジネス環境に大きな変化は見込めないと。政治の混乱も続くということで、2016年の総需要は昨年比30%下回る4500台程度かなという予想をしております。油圧ショベルに関しましても10から15%ぐらい減るんではないかと、規模が縮小するのではないかと。小型建機ビジネスに関しましても、労働賃金の上昇により小型建機の増加トレンドというのは変わらないと推測するんですが、2015年同様厳しい状況が継続するという見方です。

     農業機械。小型ディーゼルエンジンビジネスという部門はまあまあの数字が出ておりまして、発電機セット・農耕車両向けのエンジンの販売が比較的好調であったということで、前年ベースを大体キープできているような状況です。今年の展望としましては、大体横ばいかなというふうに予想しております。トラクタービジネスは、2014年は業界全体で前年比85%という不調だったんですが、15年はさらに67%になっております。これは農作物の収穫は良好であったんですが、その反面市場価格が低落。また政府の農業向け低金利融資も滞ったということもありまして、67%まで落ち込んだと。それぞれ2016年の展望としましては、まあ横ばいならいいのかなと。トラクタービジネスの方の予想によると、今年は日本の機種を投入して何とかブランド力で販売増を狙いたいという希望があります。

     6番目。切削工具 計測機器ということなんですが、切削機械に関しまして、主力のお客様が自動車産業であるということで、販売不振、前年比約26%ぐらい落ちていると。それに伴いまして自動車の生産台数も23%ほど低下していると。トラックにいたっては48%となりまして、2015年度の切削機械の販売実績はマイナス10%台というふうになりました。これを今年2016年はどうするかということなんですけども、比較的堅調に推移している市場、金型、航空機、農業、医療分野の需要取り込みを図るということで、新規分野の開拓を努力したいというふうに考えております。

    それと、計測機器関連はですね、主力の顧客がエネルギー、自動車産業界ということもありまして、現状、投資抑制の状況が継続しており、営業環境が厳しい。何とか、この分野も同様ですね、比較的好調な医療分野への営業シフトとかを考えていると。また、ブラジル社会に根差した経営の確立とか、レアル安を生かした投資というようなことも今後の取り組みということでお聞きしました。

     7番、産業機械ですけども、ホイスト・クレーン。主要顧客は自動車、全体としては非常に低調なんですけども、日系のメーカー、韓国の現代は堅調であると。それと鉄鉱業のバーレ。購買量はですね、バーレの購買量は2014年比40%減少したと。石油業界。プラットフォーム用の需要は激減ということで、全体の市場規模は約半分になった。非常に厳しい状況です。

    かたや競合他社、欧米の既存メーカーは、市場縮小、特に天井クレーンに厳しい数字になっていると聞いていますが、ブラジル市場からドイツメーカーの撤退の動きも出ていると。つまりこれほどの市場縮小の中ではもう耐えられないというような動きがあると。それに対しまして、日本のメーカーさんはですね、有望市場としての農業機械分野、自然再生エネルギーに注目しております。風力・太陽光発電分野に参入を図りたいと。

    また、一部、従来輸入販売という形態だったんですが、一部を現地化することによってローカルコンテント基準に沿って検討していきたいと。それと、先ほども触れましたが、競合他社の撤退によりまして、顧客需要を確実にフォローする体制を作ると。我慢の後のリターンが期待できる市場と、ブラジル市場をそういうふうにとらまえておりますということです。

    それと鋳造設備機械。顧客はブラジルの鋳物業界、自動車関連、造船業、バーレということで、いずれも低落基調にある産業でありまして、投資・購買量が急落しております。2015年の状況は非常に減収減益ということです。2016年、これからですね、顧客の購買意欲は2016年も継続して低迷が予想されるということで、レアル安を生かしてですね、輸出販売の拡大を図りたいと。特にメキシコ、アメリカというような計画をお持ちになっています。

     潤滑油・ベアリング。金属加工油剤と。これは自動車と直結している産業ですので、自動車生産台数が減った分だけこの分野の販売量も減ったということで、マイナス約15%。今後の展望としましては、まあ販売は横ばいになるでしょうけども、レアル安を武器にしてブラジル企業が輸出を拡大していくということで、間接的ながら輸出を目指したいというお考えです。

    ベアリング関連もですね、色々、自動車産業の操業短縮、生産調整ということで影響があり、25%の落ち込みになっております。今後、今年は販売横ばいということを見ているらしいんですが、客先の在庫調整というのも今続けられております。その後の反動需要を期待したいということであります。

     以上の内容を簡単にまとめますと、顧客の事業状況、分野と2015年の状況を簡単に書いてあります。赤文字が好調分野ということで、まあ発電、小型再生エネルギー、風力、パルプ、農業・アグリビジネス、医療、航空機というところが比較的好調な分野なんですが、裾野産業が小さいということもありまして、ブラジルの経済をけん引していくという力にはまだ不足なのかなというふうに考えております。

     その次のページ、ブラジルの市場環境。為替・金融関連はですね、2015年の当初レアルが1ドル=2.6だったのが、4レアルまで通貨下落ということで、輸入材料が非常に高騰しております。政策金利の方もですね、上昇基調で14.25%で高止まりということで、金利負担が大きくなっている。プラス、インフレでですね、10%のインフレですから、金融コストが非常に増えている、こういう問題が出ています。それと融資枠の厳格化で倒産・再生申請企業が増加していると。先日の昼食会の時もエコノミストのゼイナ氏が、昨年の再生申請70%増というようことも言っていましたので、かなり厳しい状況かなというふうに考えています。他方、通貨安ということで、輸出産業の後押しになったということもまた事実だというふうに考えています。

     それと、景気が全体に低迷しておりまして、市場が縮小しております。産業全般で生産・販売量が落ち込んでいると。で、失業率の上昇と。税収不足で予算化が難しくなってきてプロジェクトが実行されない。それと、好調産業分野はですね、セグメント的には非常に少数で限定的。まあ農業・医療・航空機・再生エネルギーとかですね。

    それと、政局の不安定と政策実行の遅延。世界的には中国経済、新興国の輸入余力の減退ということで、コモディティ価格が全面的に低迷しております。それで世界全体の輸入力の減退ということで、経済環境の改善には非常に時間がかかるのではないかというふうに考えております。2、3年は我慢だろうというのが大体皆さんの意見でした。

     最後に企業の備えということで、どういうふうに対応を考えるかと。実は輸入販売をやっている会社と、こちらで生産拠点を持っている会社で、全く対応が異なります。この辺をまとめまして、ここにちょっと書きましたけれども、まあレアル安ということがあって、本社のネットワークを活用して輸出攻勢を積極的にかけたいという会社。増資などでこちらの高金利を活用して、その金利によって現地の経費を低減すると。それとブラジル産業資本の取得。これはM&Aということですね。実はこの、アイデアはあるんですけども、M&Aを具体的に抱えている会社は全くありませんでした。これはブラジル市場への期待が最近落ちているのと、やっぱり日本の本社の関心が薄れているというようなことがですね、その背景にあるのかなというふうに思います。

     それとブラジル市場が縮小しているという現状ですが、農業・医療・航空機・再生エネルギー分野へ営業をシフトして、販売を少しでも回復させたいと。させると。で、好調な太平洋同盟地区とか北米地区への展開を積極的に図りたいと。

     それと、倒産件数が非常に増加しておりますと。まあ我慢のあとには価値が出る市場というとらまえ方で、競合他社の撤退で特需もあるので何とか我慢をしたいと。在庫調整後の反動需要も期待しております。まあ倒産件数が多いということもありまして、与信の管理の徹底化を各社図っているという状況です。

     それと、ブラジルの輸出産業の補助という政策も最近出されております。BNDESの資金を活用したり、ローカルコンテンツの達成とか、輸入販売から現地組立への形態変更とかですね。それとブラジルの輸出産業をターゲットに販売を促進するというような考えもあります。

     それと今回の長期低迷ということで、V字回復は困難な状況にブラジル経済は置かれているということで、今こそですね、顧客との関係の構築、技術者の育成、長いスパンでの経営を考える時期であると。日本の企業の一つのメリットとしまして、本社の資金力・技術力・ネットワークを活用してですね、2、3年は乗り切っていきたいという考えです。

     以上です。ありがとうございました。

    司会

     渡辺様、ありがとうございました。副題の件につきましては、ちょっと気がつきませんで、失礼いたしました。非常に幅広い企業・分野の方の集まる部会ですけども、何かご質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。では時間も押していますので、ありがとうございました。

     それでは引き続きまして、自動車部会の発表を部会長のホンダの溝口様からお願いいたします。よろしくお願いします。

     

     

  • 自動車部会 溝口イサオ 部会長

     自動車部会 溝口イサオ 部会長

    Pdf自動車部会    溝口 イサオ 部会長

     皆さま、改めましてこんにちは。昨年まで自動車部会長を務めていただきましたトヨタ・ブラジルの近藤社長に代わりまして、今年から私、イサオ・ミゾグチが部会長に就かせていただきます。近藤部会長に引き続き、部会をより一層盛りたてていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。それでは報告に入らせていただきます。

     商工会議所からいただいたテーマに沿って、四輪業界、二輪業界の順で動向を説明させていただきます。まずはじめに四輪業界、2015年の振り返りでございます。

     2015年のブラジル自動車市場は、金利引き上げや失業率の上昇による景況感悪化の影響を受け、販売実績は257万台、前年比73%となり、3年連続で前年を下回る結果となりました。輸入車比率についても、レアル安の影響を受け、16.4%と4年連続で低下しています。

     続きまして、2015年の月別の販売台数です。昨年1月以降、IPI税率が引き上げになったことと、景況感の悪化により、左側の2014年に比べ販売が落ち込んでいることがお分かりいただけると思います。またこのような状況により、在庫月数も2015年に入り高いレベルで推移しています。

     こちらは生産と輸出の推移です。市場の状況を反映し、2015年の総生産台数は243万台、前年比77%となりました。一方で、レアル安の影響で輸出は増加しており、前年比125%となりました。

    こちらはその輸出台数をカテゴリー別、輸出相手国別に見たものです。カテゴリー別では乗用車が前年比120%、ライトトラックが156%となり、レアル安を受け増加しました。輸出相手国別ではメキシコが増えたほか、2014年はほとんど輸出がなかったインドネシアへの輸出が急増しました。

     続きまして2016年の展望に入ります。

     まずは経済指標の予測です。インフレが抑制される見通しである一方、GDPのマイナス成長、レアル安、金利の上昇は2016年も継続する予測となっております。

    こちらは、それを踏まえた2016年の自動車業界予測です。先ほど申し上げましたように、2015年実績は257万台でしたが、2016年はそれを7%下回る237万台になるとANFAVEAでは発表しています。一方で、他の業界団体では200万台を下回るという予測もあり、自動車部会では1月の販売実績なども考慮し、ANFAVEA予測よりも慎重な200万台から210万台と予測しています。生産台数については、輸出が増えることを鑑みながら、ANFAVEA予想と同様前年比から微増の244万台と自動車部会では予想しています。

     次に中古車・新車別の2016年販売台数予想です。新車については先ほど申し上げた通りですが、中古車市場は年々拡大傾向にあり、2016年は前年に引き続き1000万台前後を予想しています。

     続きまして、自動車市場低迷による影響を振り返ります。こちらはメーカーと販売への影響をまとめたものです。左のグラフは自動車メーカーの雇用者数推移です。

    2015年の総雇用者数は13万人。前年比1割減となり、市場低迷の影響により2年連続で減少しました。またレイオフ、集団休暇などにより、3万5000人の従業員に影響していると言われています。

     そして、右側は販売店への影響です。ここ1年で四輪・商用車・二輪あわせて約1000店の販売店が閉鎖となり、雇用影響は3万2000人と推定されます。なおこのうち、四輪の販売店は約550店含まれています。一方でAudiやJeepなど高級車や新規ブランドの販売店が約400店増えています。

     続きまして、こちらはブランド別の販売台数とシェアの実績です。真ん中の2014年と右の2015年を比較すると、ビッグ4が台数・シェアともに落とす中、日系ブランドはシェアを伸ばしており、厳しい市場環境でも健闘していることがおわかりいただけるかと思います。

     次に中長期展望に移ります。まずは市場の中長期展望を予想する上で重要となる、各金融機関の経済指標予測を見ていきます。左上のGDPについては各行とも2017年、または2018年からプラス成長に転じると予測しています。インフレと金利は2016年以降抑制される見通しであるのに対し、為替は引き続きレアル安が続くと予測しています。このような経済予測および、2018年に大統領選挙があることを踏まえると、自動車市場も2017年までは厳しい状況が続くと思われますが、2018年以降は回復の可能性があると自動車部会では予測しています。

     続きまして、そのような中長期展望を踏まえた日系ブランドの課題と対応をご説明いたします。

     まず課題認識ですが、中期的には先ほどご説明させていただきました通り厳しい状況が続くと予想しますので、為替状況も踏まえた事業体質の強化が急務になると考えております。具体的には部品現調化と輸出の促進の取り組みです。一方で長期的には、市場回復時の飛躍に向けたブランドの強化が求められると考えております。

     それでは中期課題である事業体質の強化について各社の取り組みを紹介させていただきます。

     こちらはトヨタさんの部品現調化と輸出促進の取り組みです。部品の現調率向上にはサプライヤー様の技術力向上が不可欠ですが、トヨタさんではサンベルナルド工場内にエンジンベンチを導入しました。これまで日本で行っていたエンジンの検査をブラジル国内で行うことができるようになり、現調化のスピードアップを図っております。また2016年稼働予定のPorto Feliz市のエンジン工場では、部品の現調率を向上し、為替の影響とコストの低減を図ります。

     二つ目は為替対応を踏まえた輸出の促進についてです。トヨタさんは2014年から小型車のEtiosを、これまでのアルゼンチンに加えウルグアイ・パラグアイに輸出を始めました。ブラジルでの現地調達率を高め、為替の影響を抑えるとともに、税還付措置も活用し、輸出競争力を高める取り組みを行っております。

     続きまして弊社の部品現調化の取り組みです。ホンダではサンパウロ市内にあった四輪研究所を2013年にスマレ工場内へ移転しました。また2014年には、本社機能を同じくサンパウロ市内からスマレ工場内へ移転しました。このようにSEDBA、つまり営業・生産・開発・購買・管理機能をスマレ工場内に集約することにより、お客様が求める部品をスピーディーに開発・生産するとともに、現調化含めた事業体質の強化を促進しています。

     こちらは日産さんの部品現調化と輸出促進策です。日産さんは小型SUVである Kicksを今年発売する予定ですが、国内市場だけではなく近隣諸国への輸出も予定しております。これによりレゼンデ工場の稼働率を上げるとともに、国際競争力強化や為替リスク回避を目的として部品の現調化推進を目指しています。

    最後に生産性向上による体質強化の事例としてトヨタさんの取り組みを紹介させていただきます。

     トヨタさんではサンベルナルド工場における労使宣言締結により、労使間における相互信頼と相互責任の確認を行ったほか、柔軟な需要変動への対応として、例えばテンポラリー雇用契約の活用をされています。これらの取り組みを通して生産弾力性向上による競争力の強化を図っています。さらに製造現場の生産性向上を目指し、製造現場のリーダー候補を日本へ派遣するなど、製造のノウハウ取得やトヨタウェイの教育などに取り組まれています。

     こちらは中期課題である事業体質強化のまとめです。ご説明した通り、市場の低迷やレアル安を背景として、現調化や輸出の重要性が増しています。一方でそれを加速させるには、ブラジルのコスト競争力向上が鍵となり、複雑な税制改革や裾野産業の育成など、恒久的な取り組みが官民連携の下で必要になってくると考えております。

     続きまして、長期課題であるブランド強化についてです。ここではブラジルにおける環境安全規制の強化を中心にお話させていただきます。

     まず環境規制強化について紹介させていただきます。こちらは2017年に始まるブラジルの燃費規制です。赤い線で示した2012年の実績から12%の燃費向上が義務付けられ、そこからさらに向上した場合はIPI減税の恩典が受けられます。また先進国の流れと調和し、ブラジルでも長期的にはさらなる規制強化が予想されています。

     続きまして安全について紹介させていただきます。安全規制については、車両の挙動安定化を総合的に制御するESCという技術が2022年から全車適用義務化の見通しです。そのほかにも側面衝突やバンパーに関する規制強化の可能性もあります。このようにブラジルでも安全規制強化が継続する見込みです。

     一方、安全評価についても、2010年にLatin NCAPが発足して以来、各モデルの衝突テストと評価が積極的に実施されており、こちらにございます日系ブランドのモデルも最高の安全評価を受けております。Latin NCAPについても今後欧州のNCAPと調和していく見通しで、さらに評価基準が厳しくなる可能性があります。

     こちらは長期課題である環境安全規制強化についてのまとめです。ご説明させていただきました通り、今後環境安全に関する規制強化がさらに進行する見通しですが、メーカーにとっては先進技術導入によりコストアップなどの課題もありますので、優遇税制や促進策など、今後も官民連携した環境安全の普及が求められます。一方、環境安全技術で優位に立つ日系メーカーにとっては、将来の市場回復に向けたブランド強化の切り札の一つとなる可能性もあると考えております。

     それでは四輪パートの総括としまして、政府への提言内容をご説明させていただきます。これまでご説明させていただいた通り、今後自動車メーカーが新技術導入、現調化および輸出促進をさらに強化していくためには、適切な自動車政策や自由貿易政策などが求められると考えております。引き続き業界一丸となって、是正提言を粘り強く続けていくことだと考えておりますので、どうか皆さまご協力賜わりますよう、よろしくお願いいたします。

     続きまして、二輪業界について概況を説明いたします。 まず生産・販売の動向です。インフレ・レアル安・解雇増等の経済環境悪化により、2015年の国内卸販売実績は119万台、前年比83%と4年連続で前年割れとなりました。また低調な販売状況を反映し、生産は 126万台、前年比83%となりました。

     こちらは登録ベースの月別販売推移です。コンソルシオ需要の高まる3月と年末商戦の12月を除いて前年割れが続き、各社、環境規制であるPromot4対応の新モデルが上市しましたが、落ち込みを補いきれない結果となりました。

     最後に二輪販売の支払い形態別推移です。2011年後半以降、支払い不履行が急増したことから、ファイナンスの審査が厳しくなりました。その結果ファイナンス販売が伸び悩み、ファイナンス比率は急速に減少しました。このファイナンスの審査の厳しさについては、2015年も変化はなく、全販売におけるローン比率の減少が続いております。

    以上で自動車部会の報告とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     溝口様、ありがとうございました。若干時間押しておりますが、ご質問ございますでしょうか。ではちょっと私の方から二つほど。日本のメーカーさんの中期課題の中で、トヨタさんがサンベルナルド工場で労使の間の宣言を締結されたというのがありましたけども、これはブラジルの自動車業界の中で初めてなのか、あるいは他社もやっておられることなのか。その辺ちょっとおわかりになればお教え願いたいんですけども。

    溝口氏

     近藤さんいらっしゃいますか。近藤さんの方がいいかもしれない。

    司会

     すみません、マイクをお願いします。ではトヨタさんの方から、お教えいただけますか。

    トヨタ・ド・ブラジル 近藤氏

     ありがとうございます。ブラジルトヨタの近藤でございます。我々が知る限りでは、労使共同宣言というのは自動車業界では初めてだと聞いていますが、こちらの労働組合は地域別に細かく細分化されていますので、もしかしたら我々が知らないところでどこか地域別にやっている可能性はないとは言えないと思います。我々が調べている限りでは初めてだと認識しています。

    司会

     ありがとうございました。こういう形態というのは日本的なやり方で、我々ここに集まっている日本企業の皆さんが本当は参考にしたい内容じゃないかなというふうに思いますので、もし公開できる範囲であれば、お話しいただければと思うんですけども。

    近藤氏

     特に新しいことをしているわけではないんですけれども、我々が所属するサンベルナルドという所は、サンカエターノとかあわせてABCユニオンという、ブラジルの自動車業界の中では一番強い金属労協でございまして、ルーラ大統領それからジルマがこの労働組合の党首から大統領に上り詰めたという背景のある労働組合です。

    当初から我々本社を置くサンベルナルド工場を大事に考えていますということで、本社は我々も、ホンダさんと同じようにですね、サンパウロの営業部門を引き揚げて本社を移しまして、あわせて部品の内外製というか、サンベルナルドの工場の部品の生産を出したり入れたりする中で、従業員の雇用を守るということを前提に、組合と2年間にわたって協調路線を話をしてきました。その中で最終的にこういう合意に達したということでございます。

    司会

     ありがとうございました。それともう一点はですね、最後に四輪のところでブラジル政府への提言というのをまとめておられるんですけども、これは具体的にどうやってブラジル政府へ提言していこうと、何かこういうプロセスでというようなことはお考えでしょうか。それとも、カマラとして何かやらないといけないとか。

    溝口氏

     当然ながら我々、ダイレクトにやるつもりはございませんでして、自動車部会の集まりの中でもカマラの渉外部門と一緒に進めたいと思っております。

    司会

     大使館の方も、あるいは領事館の方もお見えですので、ぜひこの辺ご協力いただければと。何か会頭の方からございますか。

    村田会頭

     政策対話委員長の松永さんに代わりましてちょっとお答えしたいと思いますけども、自動車部会のこういう提案に関しましてはまさにカマラの政策対話委員会がブラジル政府との交渉を進めてきていまして、昨日ブラジリアで中間会合をやって、自動車業界に関しての色んな提案というのはかなり、開発商工省のブラジルの方々も乗り気になって、色んな声を聞いていただけるという状況になってきておりますので、これはカマラの政策対話委員会を通じてですね、提言をしていきたいというふうに考えております。

    司会

     どうもありがとうございました。それでは他に質問ございますか。よろしいですか。はい。どうも溝口様、ありがとうございました。では前半の部の最後、コンサルタント部会部会長のEYさんの西口様の方から発表をお願いします。

     

     

  • コンサルタント部会 西口阿弥 部会長

    Pdfコンサルタント部会     西口 阿弥 部会長

     皆さまこんにちは。コンサルタント部会、EYの西口です。どうぞよろしくお願いします。今月の初めにですね、コンサルタント部会でのミーティングを開催しまして、会員の皆様の現在のビジネスの状況を話し合いました。その結果をご紹介し、皆様がご興味があるかもしれない今後の日本からブラジルへの投資についてのチャンスとリスクについても話したいと思います。そして最後に日系企業様がどう備えるかを題にコンサルタント部会からの日系企業様へのメッセージをお伝えできればと思っております。

     2月上旬に開催しましたコンサルタント部会では主に人事派遣会社とコンサルティング会社の参加がありました。その中で皆様のビジネスの現状について話しました。

     人事派遣会社の方々の最近の日系企業の動向としては、日本語を話せる従業員の雇用希望の数は減少していないようです。ただし、ブラジルの場合、毎年組合で決められています調整率で毎年給与が上昇しております。企業の給与削減などの理由で、高所得の従業員の入れ替えなどをされている企業が増加しているそうです。平均的に新規雇用案件に際しての給与のオファーの金額が減少。つまり新しいポストに関しましては、以前よりも給与の金額が減少している傾向にあります。トップクラスの従業員に関しても同じで、オファーする給与額が減少している傾向にあります。以前は30000レアル台のオファーもありましたが、最近はあまりないそうです。

     コンサルティング会社につきましては、M&Aの件数は減少気味だそうです。2015年の末までは、M&Aを考えられて問い合わせなどありましたが、2016年に入ってからはあまりないようです。2015年以前から始まっている案件については続行中ですが、新しい案件についてはあまりありません。問い合わせも労務やリストラに関する問い合わせが増加しました。あと、たまに生産に関するお問い合わせもあります。

     次のページですが、ブラジルへの直接投資についてのグラフとなっております。上の段の統計はブラジルへの対内直接投資となっておりまして、下の段はご参考までに外国直接投資のフローとなっております。上の段ですが、ご覧の通り、黄色の棒線グラフは総合投資金額を10億米ドル単位で表しまして、灰色の折れ線グラフはその総合の金額に対し日本の直接投資の比率を表しています。2015年はまだこちらの金額は予想額となっています。2012年に急激に減ったものの、比率で表していますが、金額でもその後は上昇しています。

     2015年からの日本からの直接投資は、公表されているデータでは、産業に関しましては特に生産業、石油ガス産業、自動車産業です。この投資に関しましては、2015年に始まり、数年にわたるものも含みます。主な投資内容はビジネスの拡大、新商品モデルの販売の準備、予定していたビジネスのimplementationとなります。ビジネス拡大は新しい販売店舗や施設の開設、工場や施設などの拡大が挙げられます。

     コンサルティング会社のM&Aの専門家と話しましたところ、これからのビジネスチャンスとしては、ヘルスケア、インフラ、アグロビジネスが挙げられるそうです。また輸出を目的とした製造業もチャンスです。 次のページですが、景気は良くありませんが、その中でのビジネスチャンス、あるいはチャンスとなる要因について話したいと思います。

     まずはPublic Private Partnership、民間パートナーシップによるインフラへの投資機会です。ルセフ大統領は2015年6月9日に1980億レアル相当の第2回のインフラ投資のプログラムを発表しました。そのうちの690億レアルまでは2018年までに投資が必要とされています。第1回のプログラムでは最低価格のプロジェクトを選ぶのではなく、コンセッションモデルを選びました。プログラムの内容ですけれども、鉄道が860億レアル、高速道路が660億レアル、港が370億レアル、空港が90億レアルとなっております。

     次のビジネスチャンスの要因は、有利な人口動態、大きな消費者基盤、裕福な天然資源です。ラテンアメリカにおける最大な消費基盤があるため、長期間の投資家の興味を引き付けることができます。主要セクターへの投資企画は外国投資にとっての魅力ともなります。

     ブラジルへの長期見通しは、大国であること、成長を続ける中級階級と裕福な天然資源によって良くなります。またブラジルには戦争や紛争がないことも利点になります。

     ブラジルの市場での売り上げで、世界ランキングですけども、自動車は4位、コーヒーは2位、チョコレートは5位となっております。次のページに入りたいと思います。

     次のビジネスチャンスの要因としては、輸出の機会を増やすこととなるレアルの下落、新しい協定が挙げられます。輸出主導による経済成長は、好ましい対ドルレートを基準とした、短期から長期にかけて企業利益を高めるオプションです。弱いレアルは輸出業者にとって、砂糖、コーヒー、自動車部品などの商品のグローバル市場での競争力を高めることになります。メルコスルはEUと貿易協定を締結しつつあり、輸出志向のビジネス機会を高めることになります。

     ブラジルの生産、世界市場に占める割合ですけども、砂糖に関しましては21.5%、大豆は30.8%、コーヒーは35.8%、オレンジについては34.3%となります。

    次ですけれども、民主的な組織・制度が挙げられます。ブラジルはしっかりした行政府があり、政治的調和の保障と憲法を守るため立法・行政・司法に分かれております。残念ながら政治リスクについては2015年の中旬までは安定しておりました。ただ、その後悪化し、失業率の低下やインフレにより経済も悪化しました。失業率につきましては、本日のエスタード紙で7.6%まで上昇したとされていまして、2009年の1月と同じ指数になってしまいました。ペトロブラスの汚職の件や、ルセフ大統領の弾劾の可能性から、立法府の分裂により、今後の政治政策を決めるのも困難になっています。現在はラテンアメリカの国の中でもリスクがある国とされております。

     ではビジネス上の課題について次のページから話したいと思います。まず最初は、皆さんご存じのブラジルコストです。ブラジルコストは複雑で時代遅れの法律、および複雑な税務、インフラ設備の不足、治安の悪さ、過剰なbureaucracyがブラジルコストです。利益に対する総税率ですが、アラブ首長国が14.9%に対しまして、ブラジルは159位になっていまして、68.3%となっております。物流評価指数につきましても、ドイツが1番で4.12ですけども、ブラジルは2.94となっております。

     次にコモディティ価格の低下です。鉄鋼価格は中国の製鉄生産および高い在庫を背景に2015年は下落しまして、石油価格も下落しました。

     次のページですが、軟弱なマクロ経済パフォーマンス、およびビジネスマインドの縮退ですね。GDP成長率の悪化、財政収支の悪化、インフレ率の増加や為替レートのレアル安から、当面はあまり良い指数の期待はできません。2015年第2四半期の投資調査では、投資家間での事業環境が悪化していることが取り上げられております。

     最後にフィッチ、ムーディーズによる外貨長期格付けの格下げです。スタンダード・アンド・プアーズは2015年9月に格付けを下げ、それに次いで12月にフィッチも下げ、昨日ムーディーズも下げました。投資家はブラジルから資本を引き出すことを余儀なくされるとしております。

     最後ですが、コンサルタント部会からのメッセージで、ミーティングでお話しした際に副題の「景気低迷期だから見えてくるビジネス機会 ~経済回復期はいつか、日系企業はどう備えるか」という点を話しまして、景気は2年、3年後には良くなると言われております。ただし、撤退するのではなく、休眠を考えることはいかがでしょうか。

    撤退して再投資される場合には設立などをする時間もかかりますし、M&Aもその時には企業価値が高くなっている可能性があります。ブラジルの場合、税務の時効は5年、労働訴訟については解雇してから2年まで提訴できることになっていることから、その間に会社内での税務・労務に関して整理をして、景気が良くなった時に事業を再開することもできます。

     ブラジル経営はユニークなビジネス環境にありまして、特有の習慣、ブラジルビジネス方法があります。したがいまして、駐在員にかかるコスト削減などを考えられている場合は、特に営業部門などを現地化することはいかがでしょうか。

    これはコンサルタント部会での意見ですけれども、緩やかですけれども、ブラジルは前進しているのではないかという意見もありました。ペトロブラスの汚職に関しても、政治家やブラジルの資本家も逮捕されています。以前はそういった汚職事件があってもそこまで追求されることがなかったことも多々ありました。最後に、今はビジネスのイノベーションをしないといけない時代になっています。この機にどのようにビジネス、あるいは商品・サービス、社内でのイノベーションについて考えることはいかがでしょうか。

     以上となります。ご清聴どうもありがとうございました。

    司会

     西口様、ありがとうございました。コンサルタント部会の方からの発表に関しまして何かご質問ございますでしょうか。最後にコンサルタント部会から、この副題に関してのコンサルト結果が五つ出ておりますね。まさにこの通りかなというふうに思いますけども、この五つに関して何かもう少し細かいお話とかそういう点ございませんでしょうか。まったくこの通りだと、そういう理解でよろしいですかね。分かりました。どうもありがとうございました。

     それではここでコーヒーブレイクとさせていただきたいと思います。若干ブレイクの時間短くなりましたが、後半の部は3時10分から、約15分後開始ということにさせていただきますので、よろしくお願いします。

     

     

  • 後半司会 大久保敦 企画戦略委員長

    大久保敦 企画戦略委員長

     後半に移りたいと思いますので、コーヒーブレイクで大変盛り上がっておりますけれども、早く席についていただきますように何卒お願いをいたします。よろしいでしょうか。

     間もなくシンポジウムの後半を始めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

     はい。大方皆様席につかれましたようですので、これより2016年上期業種別部会長シンポジウムの後半戦に移りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

     私、後半の司会を担当いたします、企画戦略委員長の大久保でございます。このようなシンポジウムの司会というのは大変不慣れでございますが、時間厳守で多少盛り上がったシンポジウムにしていきたいと思いますので、何卒よろしくお願いいたします。まずは化学品部会の報告をお願いしたいと思います。部会長で久光製薬の中村様より報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

     

     

  • 化学品部会 中村博 部会長

    化学品部会 中村博 部会長

    Pdf化学品部会     中村 博 部会長  

     改めまして、こんにちは。久光ブラジルの中村と申します。よろしくお願いいたします。私も大久保様に従いまして、時間厳守で参りたいと思います。

     私ども化学品部会におきましては、会員各社様によるアンケートを行いまして、その結果から2015年の回顧と2016年の展望を明らかにするという試みを行っております。現在化学品部会の会員企業・団体は55社ございまして、そのうち27社から回答をいただいております。複数の事業をお持ちの会社様もいらっしゃいますので、合計35回答をいただきました。画面で緑色の文字が回答をいただきました企業様でございます。次お願いします。

     このグラフは回答いただきました27社を創業年代別、いわゆるブラジル進出年代別に並べたものでございます。最も古い企業様は1930年代に進出されておられますから、すでにブラジルで80年ほどの歴史をお持ちでございます。一方で年代別の進出企業数におきましては、2010年代が最も多くて、2000年を境にそれより前に進出された企業様とそれ以後の企業様とが半々になっているということで、まあ新旧が混在しているというような状況でございます。次お願いします。

     創業年代別に売上と利益について景況、景気の状況ですね、の違いがあるのかと、これを質問しましたところ、まあ当然ながらばらつきがございますんですが、意外だったのは、比較的若い企業といいますか、2000年以降に進出した企業様が健闘されているということでございました。次お願いします。

     次に回答企業27社ベースでの景況を見てみます。売上と利益につきまして、2015年実績と2016年の見込みを示しております。2015年と2016年を比べますと、売上・利益ともに、青の、前年よりも増加するというふうに答えた企業はあまり変化がございません。グレーの前年よりも減少するというふうにお答えいただきました企業が減りまして、その分オレンジであります前年とは変わらないというような企業様が増えております。つまり2016年は前年よりもやや前向きというふうに考えられるのではないか思われます。次お願いします。

     前のページの傾向は、事業ベースで見ました35回答の景況でも同様でございます。やはり2016年は前年よりもやや前向き、もしくは、まあ底を這っているような状況ではなかろうかというふうに考えられます。次お願いします。

     化学品部会の会員企業の事業は、まあ扱っているものが化学品でございますから、きわめて多岐にわたっております。ですから分類方法はいくつも考えられる訳ですが、大雑把にですね、左側の生産財、あるいはBtoBビジネスと、右側の消費財、BtoCビジネスというものに分けまして景況を見てみました。35回答のうちの生産財あるいはBtoBビジネスが31回答、消費財あるいはBtoCは4つということでございます。次お願いします。

     まず生産財あるいはBtoBでございますけれども、先ほど説明いたしました回答企業ベースで見た傾向と、まあ同様ということでございます。つまり2016年は売上・利益ともに前年同様とする企業が増えたということでございます。次お願いします。

     消費財あるいはBtoCでございます。こちらは、サンプル数が非常に少ないということもございまして、きわめて明快な結果が出ております。2015年は売上・利益ともに増加した企業様が2社、減少した企業様が2社という結果でございました。2016年は売上・利益ともに4社全てが増加するというふうに見込んでおります。まあこの結果から見る限りでございますけれども、今年のブラジル消費財市場、BtoCビジネスは堅調に推移するということが期待できるのではないかなと考えております。次お願いします。

     次に合計35回答の景況の理由というものを、自社にとってのプラス要因とマイナス要因に分けまして、さらにそれが自社に起因することなのか、あるいは外部環境に起因することなのか、ということで分けております。 はじめに2015年の回顧の方でございますが、プラス要因かつ自社に起因するというものでは、新規顧客開拓というものが一番多くて、12。次に設備投資あるいは能力アップによるというものが4。新製品投入、差別化によるものが3。コストダウン、これが3。その他6ありまして、内訳は、買収によるもの、あるいは流通政策の変更、値上げ、あるいは変わったところでは現地社員の士気向上といったようなお答えもございました。

     外部環境に起因することでございますけれども、為替レートというふうにお答えになった企業が7。その他ということで、その他の内訳は、競合相手が衰退してしまったということ、それから天候がプラスに作用したと、原料価格が低下したということ、それから感染症の流行などがございました。

     逆にマイナス要因かつ自社に起因することといたしましては、少数意見の2ということですけども、販売費を減らした結果だという回答。あるいは、そもそも生産性が低いというようなお答えがございました。

     マイナス要因で外部環境に起因することといたしましては、もう単純に売れないということで、まあ不況であると。あるいは在庫が非常に多すぎてしまっていて物が売れないというような回答が24で一番多いということでございました。次に為替レート、18。競合激化、販売価格の下落、これが8。インフレなどによりますコストアップ、これが8。高金利によるものというのが6。与信不安が3。その他、6と。その他の内訳は、天候が非常にマイナスに作用したと。あるいは人材不足、設備不具合などというようなことでございました。次お願いします。

     2016年の展望におきましても、まあ同じようなことが要因になるであろうというふうに皆さんお答えになっております。はい、次お願いします。

     これらをまとめますと、真ん中から下の辺りに書いておりますように、景気低迷、レアル安、インフレ、高金利、競合など、厳しい事業環境にさらされながらも、新規顧客開拓、あるいは新製品の投入、設備投資、コスト削減など、各社の不断の努力によりましてブラジルにおける事業継続、あるいは拡大に努力することが重要であるということになります。これがすなわち今回の副題でございます、景気低迷期だから見えてくるビジネス機会、経済回復期はいつか、日系企業はどう備えるか、ということに対する答えでございまして、化学品部会の結論ということにさせていただきたいと思います。

     またもう一つ、化学品部会のアンケートではですね、ブラジルで改善すべき課題は何ですかというようなことを質問しております。先ほど申しましたように、各社の不断の努力が確実に実を結ぶためには、課税を改善してほしいというような企業が最も多くて、85%。30回答ございまして85.7%。次に労働が77%。まあほとんどの企業が課税や労働を一番の問題に挙げているという状況でございます。

    以下、通関、インフラ、産業競争力あるいは中小企業の育成、その他というようなことで、先程来ほかの部会さんの方で出ておりましたように、まあ政治の安定、通貨の安定、あるいは司法制度の改革、技術の振興、あるいは変わったところでは観光の振興もしてほしいというような要望もございました。

     最後にですね、各社様からいただきました、生のコメントをそのままご紹介したいと思います。まずは厳しさを反映したコメントからになります。まず、複雑で高い税金は製品競争力をそいでいる。給料を下げられないルールは労働者にとっても良くない。人件費削減は首切りになる、というようなこと。ブラジル政権が代われば景気の風は変わると。逆に労働者党政権があと3年ほど続くというこの限りにおいては、経済もこのまま停滞が継続するのであろうと。2017年、18年までは、それで底を打つと、それまではじっと耐えるというようにお答えになっておられる企業様がございます。もう一つは、厳しすぎてもう瀬戸際ですという非常に切実なお答えもございました。

     最後に、前向きで力強いコメントで締めさせていただきたいと思います。上の方から、積極的な企業買収の好機ととらえ、新規買収検討を進めるべきだというような答えがございました。あるいは、○○社、これは具体的な企業名が入るわけですが、○○社としての本来の事業目的である新規事業探索からすると、景気低迷期こそ事業機会があるという信念で探索活動に注力したいとおっしゃっておられます。

    それから、景気低迷で消費者の品質に対する要求は厳しくなるので、日本製品の性能、耐久性、アフターサービスの充実など、長所をいかしてマーケットシェアの拡大に注力するといったこと。それから、この時期に市場調査や需要家への高機能品の売り込みを強化して、景気回復後の事業拡大につなげたいと。あるいは、社員への教育、研修の機会を増やしまして、知識およびスキルの向上をはかることにより、会社運営の質の向上、営業力の強化につなげるというようなお答えでございました。

    以上が化学品部会の発表になります。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     中村様、どうもご報告ありがとうございました。化学品部会、副題に沿ってアンケートを取って、しっかりと今後の方向性を導き出せるということで、すばらしい取り組みをやられているなと感じましたので、この機会にですね、こちらの報告に対しまして何かご質問あれば、一点ぐらい受けたいと思いますけども、いかがでしょうか。ないようですので、ちょっと私、一点だけ、消費財が堅調という話だったと思うんですけども、どういったものなんですかね。

    中村氏

     化粧品ですね。それから、医薬品ですね。

    司会

     なるほど、分かりました。どうもありがとうございます。他、質問よろしいでしょうか。それでは中村様、どうもありがとうございました。続いて電気電子部会の報告に移りたいと思います。部会長でソニーの千野浩毅様よりご報告をお願いしたいと思います。

     

     

  • 電気電子部会 千野浩毅 部会長

    Pdf電気電子部会    千野 浩毅 部会長  

     こんにちは。ソニーの千野です。電気電子部会ということで、代表しましてご報告をさせていただきます。

     まず2015年の回顧ということで、我々電気電子部会というところ、最終製品であったり、部品であったり、こう色んな形のビジネスがあるんですけれども、特に、これは前回のシンポジウムの時にも同じチャートを使ったんですけれども、去年の7月ぐらいにリセッションとインフレが同時に起きて、ついでにレアルも安くなって、政局は混乱しているという、四重苦みたいな中で、特に耐久消費財、我々でいうと家電の製品、あとは代表的なので言うと、自動車なんかはそうだと思うんですけれども、ここがもう一気に冷え込んでしまったというのが去年の状況だったかと思います。

    全般的な状況として言うと、昨年の7月ぐらいからリセッションだということが言われ始めて、その後マーケットが急速に冷え込んで、今日現在もあまり、冷え込んで落ちた状態から全然変わっていないという状況になっているかと思います。次お願いします。

     これはですね、13年、14年、15年と3カ年のマナウス、アマゾンの方ですね、での家電製品の主だったものの生産数量の動向をまとめたものです。この辺に書いてある商品というのは輸入できるわけではなくて、ブラジルで売るためにはマナウスで作らなければいけないということになっていますので、まあここで作っているものというのは大体売れているものというふうに見ていただければいいと思います。

     見ていただくと、テレビ。テレビは13年から14年にかけては堅調だったんですけれども、15年になって大幅に、35%の落ち込みという数字になっています。オーディオは、実はこれ、4、5年前だともっとオーディオのビジネスというのは大きかったんですけれども、オーディオはもう落ちるところまで落ちちゃったんで、これ以上落ちようがないと。デジカメはですね、これは景気の動向プラス、あとやっぱり需要が、スマートフォンを使ってスチール画を撮っちゃうという方向に傾いているのもあって、ダブルパンチでもって6割減、7割減といった、今もうほとんど生産がないというような状況になっています。

     右の二つ、電子レンジ、エアコン。これはですね、実は、13年、14年、この辺にかけていうとかなり普及率も広がって非常に良い状況がずっと続いてまして、かなり成長株のカテゴリーであったんですけれども。年率にして2割から3割伸びていくと。普及率の方もまだ相変わらず3割とかそのぐらいのかなり低いレベルなので、プロミッシングなカテゴリーというふうに見られていたんですけれども、こういう非常に成長まっ盛りのカテゴリーについても、かなり不況の影響を受けて、一気に落ち込んだというのが去年の状況でございます。

     これはですね、生産数量ではなくて、小売店での販売数量、これを家電の中でもかなりボリュームの大きいテレビとスマートフォンという二つのカテゴリーについて月別に前年比をまとめたものです。ブルーのライン、テレビはですね、実は年の初めの方というのは、前年にワールドカップがあったので、まあワールドカップ重要ということでインダストリーが通常の年よりも5割アップぐらいで盛り上がっていたという特別な要因があったので、元々、それに比べると15年というのはマイナスになるというのは想定していたんですけれども、ワールドカップが終わった後もずーっとマイナスのまま行ってしまったというのがテレビです。

     スマートフォンはですね、実は14年までは毎年倍々ゲームで増えていたんですね。成長率が鈍化してきたというのが年初の状況だったんですけれども、それが4月、5月、6月とどんどんどんどん悪くなって行って、ついに12月にはテレビよりも悪いというふうな状況になっています。下の方に数字が書いてあるんですけれども、まあ台数で言うとテレビは年間で39%減。スマートフォンはマイナス9%。ただし見ていただくと、後半にかけて3割ぐらい落ちているというふうな状況になっています。

     それに対して平均単価なんですけれども、平均単価のアップというのがテレビでは7%、スマートフォンで17%。かたや、実は為替はその間に5割ぐらい悪くなっているわけで。ということは、実は去年の12月ぐらいまでの状況で言うと、為替の分がマーケットプライスにきちっと転嫁された状況になっていないということで、今年、まあすでに1月2月のマーケットを見ていると、かなり値段が上がってきているというのがありますので、さらに値段が上がるということも結構消費に水を差すような状況があるかと思っています。次お願いします。

     これはですね、会員の皆様にアンケートをお願いしたもののサマリーになります。去年の2015年、去年の7月時点ですね、下期どうなりそうですか?というのを聞いた時に、改善しそうだ・維持できそうだ・悪化しそうだと、こういう三つぐらいで分けてみると、去年の7月に思っていたよりも実績として2015年というのは、若干ではありますけれども、良くなっているところもあります。

    7月時点で改善するであろうと答えた企業が4社あったんですけれども、実際に改善したというのが6社ということで、これは改善していると。ただ一方で、悪化するであろうという回答が去年の7月で2社だったんですけれども、これが実際に締めてみると5社が実際に悪化してしまいましたということなので、かなりこれ、まあ明暗が分かれたというのが去年の結果になっています。

    去年の結果に関してのコメントを主要なものをまとめています。ネガティブな要因としては、まあ一般消費。あとは自動車関連の需要が落ちると、自動車関連の産業に色々電子部品を供給していたりとか、そういうところもインパクトを受けますので、そういったところでの部品事業。それから官需。こういったところが低迷したと。

    それから取引先、特に小売店ですね、ここが資金難でもって販売が低迷したり、あるいはお金がないのでものが仕入れられない、まあそういうことが起きていると。それから、為替が悪化した分をどうしても値段に転嫁しなきゃいけないので、値上げはするんだけれどもそうすると数が落ちてしまうと。

     それから為替の悪化、それからインフレ。これがですね、全部が全部値段に転嫁できるわけでないとすると、やっぱりその分利益を圧迫すると。なので、何とか売り上げは保てても、利益が保てないと、こういうことが起きていると。それから、こうした中で資金管理、それから債権管理というのが非常に難しかったと。それと、さらにはですね、これは今に始まったことではないんですけれども、ICMS、付加価値税ですとか、PIS/COFINS、こういった諸々の税金に対する変更ですとか、あるいは増税、こういったものに関しての悪化というのがかなり足を引っ張ったというのがネガティブな方向。

     一方でポジティブな方ですけど、これはこういった悪い環境の中でも収益を改善できたという企業さんのその取り組みの中身にもなってくるんですけれども、まあ全体として数は落ちるんだけども、その中で高付加価値商品へシフトして、まあそこでしっかり売上、利益を稼いでいく。あるいは競争力、実際にマーケットでの競争力を上げていって、シェアそのものを拡大する。

    あるいは新規ビジネス。今までやっていなかったようなマーケット、今までやっていなかった商品というところにチャレンジをしていく。次がですね、買収。まあ企業買収というのを通じてですね、今まで入っていなかったような領域に入っていき、またさらにそれを拡大していくといったこと。それから輸出の拡大ですね。国内の市場があまり良くないので、外にチャンスを見出していく。直販の拡大。これはリテール全般には非常に悪い状況なんですけれども、実はオンラインのビジネスというは非常に伸びていると。オンラインセールスというのは非常に伸びているというのがあるので、そういったところに入っていく。で、最後にオリンピック関連の事業。特に色んなインフラ関連の事業ですね。こういったところでの特需、こういうものをしっかりと獲得していく。こういったところでプラスを稼ぎだしたということになっています。

     あと下の、toward futureと書いてあるんですけども、これはプラスともマイナスとも言えないようなところをここに書いたんですけれども、まあ各社ともこうした中で、単に投資を削るんではなくて、投資は厳選をしながら将来に備えていく、あるいは経営体質を強化していく。まあその中には従業員の削減というのも含まれるわけですけども、こういった努力をされているということです。

     2016年の展望。これもアンケートの結果をまとめておりますけれども、先ほど見ていただいた15年の実績に関する回顧との比較で見ていただくと、2016年に関しては改善するであろうとお答えになった企業は62%、8社。悪化するであろうというのは2社、15%にとどまるというふうな結果になっています。

    まあこうやって数字で並べてみると、一言で言うと、まあこれ以上は悪くならないだろうと、今がボトムであろうという中で、かなり各社さんとも色んな形での企業努力を進めてきているというのがありますので、そういったものがかなり結実してくるという年に16年は、なるであろう、あるいはそのようにしたいというふうな意図の現れかというふうに思います。

    特に電気電子の部会に関して言うと、リセッションよりももっと前の時点、経済成長が高度経済成長からかなり低成長に移行してきたぐらいの2013年、14年ぐらいからかなり経営が厳しくなってきて、ビジネスのやり方を考え直さなきゃいけないということで、色んな取り組みをしてきた企業さんが多々ありますので、そういった企業さんにとってみると、まあリセッションだからというのではなくて、その前から色々準備してきたとようなことというのを、今こういう厳しい状況ではあるけれども、その中できっちりものにしていくという取り組みをされているというふうなことだと思います。次お願いします。

     これが16年の展望に関するコメントになります。ネガティブ面としては、市場環境、これの改善は当面は望めないだろうと。収益確保というのは非常に厳しい状況が続くであろうと。で、悪いという中でも、特に為替なんかがそうだと思うんですけれども、かなり暴れるという中で、高いボラティリティがある中で、例えば部品を輸入してきて売るよという時に、部品を輸入してきた時の為替と売る時の為替が違っちゃったらやっぱりそれは収益に響く訳で、こういったかなりボラティリティが高い中でビジネスをコントロールしなきゃいけないと。これが非常に難しいであろうと。まあ一方で、ボラティリティが高いんだから、あまり無理なことはできないよねと。それから税金関係。これも増税だとか色んな制度変更だとか、実際今決まりつつあるものですとか、噂レベルとか色んな話が出てくるんですけれども、こういったところに対する懸念があると。

     それからプラス面ですけれども、これは15年、先ほどの回顧の中でも出てきたような取り組みを引き続き続けて強化していくということで、高付加価値商品へのシフト、競争力強化によるシェア拡大、新規ビジネス拡大、買収事業の成長。それからあとは、レアル安というのは悪いことばかりじゃないので、これを何とかうまく活用できないのかと、ポジティブな方向で活用できないのかということで、まあ輸出の拡大というのは一つですし、あるいは部品の現地調達、これを増やしていくというふうなことを検討すると。

    それからオンライン販売の拡大であったり、オリンピック関連ビジネス、まだまだこれ今年もありますので、まあそういったところを取っていくということです。まあプラス、マイナス両面あると思うんですけれども、投資の厳選。それと構造改革。経費削減努力の継続・強化。こういったことをやりながらも、まあいつかはリセッションというのは終わるんだから、それに向けた種まきはしっかりして、体制を作っていこうというふうなことが利になるということでございます。次お願いします。

     これは副題。景気低迷期だから見えてくるビジネス機会、経済回復期はいつか。本当にいつなんでしょうという感じなんですけれども、我々の部会で話し合われたこととして言いますと、これも前回7月の時とあまり変わってはいないんですけれども、まあブラジルの中長期的なポテンシャルは高いと。なので、耐えるべきは耐えるんですけれども、やっぱりポテンシャルの高さというところにしっかりと賭けていこうということ。

    それから、悪い時期であっても新規に取り組む価値のある事業領域というのも目を凝らして見るといっぱいあるよねと。それと、これは特に長くこのブラジルで商売されている企業さんのコメントなんですけれども、まあ過去のクライシスに比べれば、今は景気循環の一局面みたいなものなんだからと。昔に比べれば全然ましよと、何を言っているんだと、こういう力強いコメントもございました。

    で、こういう時期であるので、守りを固め、リセッションの出口に向けてやるべきことをやる時期なんじゃないかと。レアル安も悪いことばかりじゃないし、特に不動産価格の下落、不動産だけじゃないんですけれど、全体的にアセットの価値が下がっているということは投資・買収の好機と言えなくもないよねというふうなことで。まあ、厳しいのではありますけれども、ポジティブにやっていこうというふうなことだと思います。

     これは最後のチャートになりますけれども、こうした中で、ブラジル政府への要望というか、我々企業側だけではなかなか、何ともしがたいところというのをここにまとめてあるというふうに理解していただければいいと思うんですけれども。リセッションが終わった後に、先進国が軒並みダメな中で、やっぱりブラジルというのはシャイニングスターであった時期もあって、すごい高い成長率に引かれてみんなこうワーっと入ってきた時期もあって、まあその当時はブラジルというマーケットは高い成長率が最大の魅力だったと思うんですけれども、この先どうなのかというと、そんなに高い成長率じゃないと。

    じゃあ何が魅力なんだといったようなところが非常に大事だと思っていて、そんな中でもですね、やっぱり安心して安定的にビジネスができるような環境をぜひぜひ整えていただければなというのが切なる願いかなというふうに思います。ここに為替の安定ですとか、消費の活性化、公共投資の正常化、税制の問題、それから治安の問題等々ありますけれども、まあこういったことをきちっとやっていくことで、魅力ある市場、ブラジルというのは本当に投資をする価値があるし、すごく魅力的な市場なんだよねといったようなところをですね、ぜひぜひ作っていただければなというふうに切望している次第でございます。以上でございます。

    司会

     千野様どうも、大変ありがとうございました。こちらも非常に業界として、すでに準備されてきてですね、今回の報告も示唆に富む内容であったかと思います。まだ3分ぐらいございますけれども、こちらの内容についてご質問のある方、挙手をお願いできればと思います。はい、どうぞ。マイクをお願いいたします。

    質問

     リオの堤といいます。輸出という動脈も輸入という静脈も、まあ物は売れても値段が安いということで数字にならないと。末梢神経も非常に麻痺していると。で、本来キャビンにて運転するはずのブラジリアも非常に混乱の極みで、なかなか塞がりが解けるのが見えないという状況なんですが。あと、リオにいるということで、オリンピックがあるんですけども、普通GDPの5%から10%プラスに働くというものも、なかなか現地にいてオリンピックの効果というものも出てこないと。

    これはまあ総じて全てが暗いと、こういうことなんですが。M&Aという表現が今日も何回も出てますけども、私もこういう業界にいて、M&Aという、どういうセレクティブにやるかというのを考えてやるんですけども、この国の三つの構成している柱といいますか、国営企業と外資系企業と、それと民族系。私は、その中身をよく見ないとですね、M&Aというだけではなかなかターゲットが絞りにくいかなと。国営企業が一連のPrivatizationをやった時代はまあある意味では良かったタイミングだったかもしれない。

    で、民族系企業はなかなか、伏魔殿もあってですね、奥が見えなくて、ダッチロールの中心にいるような企業も数多くいて。で、一番良いのはですね、たぶん、我々の露払いをやったかもしれない欧米の外資系資本が入った企業、これは大中小色々あるんですが、かなり専門的な分野を小さくやってうまく儲けている外資系企業があって、こういうところはかなりきれいにですね、リーガルにも、アカウンタビリティの上でもきれいに摂取してくれていると。

    こういうところをうまく、狙えればというのかな、儲けどころがありそうな業界にいらっしゃるんであれば、絞って煮詰めるのもいいのかなというような私なりの、ちょっとコメントなんですけども、結論があります。だからM&Aと言う時にむやみやたらに、100%入ってくるんだったらこれは考え方はあるんですけども、フィールドを良く見てやらないと、なかなかこう、得も言われぬような難しい課題がですね、大体半年後ぐらいに出てくるとか、特にリーガルな面とかですね、なかなか掴みどころがない世界に入っていくので、もうちょっと突っ込んでM&Aを中身を見ていくというふうな形でやっていけば、ある意味で活路の、方向性というのかな、が見えるような気がしている今日この頃であると。コメントなんですが、そういう感じです。

    司会

     貴重なコメントをいただきまして、ありがとうございました。大変参考になるかと思います。その意味でこちらに、やはり投資の厳選というのはそういう意味もあるのかなと思いましたけれども、いかがでしょうか。

    千野氏

     多分、いくつか電気電子の中で聞いた話で言うと、M&Aの中でも、例えば家電メーカーが同じ家電メーカーを買収するわけではなくて、どちらかと言うと、まあハードウェアそのものというのは結構グローバルどこ行っても一緒なんですけれども、その使い方が国によって違うだとか、そういう意味で言うと、非常にソフトな部分であったり、アプリケーションであったり、コンテンツであったりという、やっぱりそういうものというのはあまりグローバルじゃなくて、非常にローカルな部分があるので、そういったところを一緒になって、もっとブラジルのマーケットにもっと深く入っていくみたいな、そういうふうなアプローチというのが非常に見てとれるかなというふうに思っています。

    司会

     分かりました。すみません、時間になりましたので、こちらの電気電子部会の報告はこれで終わりにさせていただいてよろしいでしょうか。それでは千野様、どうもありがとうございました。続いてですね、食品部会の報告に移りたいと思います。部会長で味の素の藤江太郎様より報告をお願いしたいと思います。

     

     

  • 食品部会 藤江太郎 部会長

    食品部会 藤江太郎 部会長

    Pdf食品部会     藤江 太郎 部会長

     はい、こんにちは。それでは食品部会、藤江が発表させていただきたいと思います。次お願いします。

     本日は4テーマ。15年の業界動向、原材料の動向、16年展望、第2回の日伯農業・食料対話に向けて、ということで4点でお話をしたいと思います。

     まず15年の業界動向ですけれども、やはり経済情勢の悪化が消費マインドに影響を与えております。一般的に、不況期でも相対的には底堅い食品市場というふうに言われますけれども、全体としてはですね、内食、外食とも低調というのが全体の傾向かと思います。また、低価格の指向が強まったり、嗜好品の支出を抑制するような傾向も出ているということ。輸入の食材についてはですね、レアル安で輸入価格の上昇で厳しい状況にありますけれども、一方でブラジルの食品・食料を輸出する、そっちはですね、レアル安の追い風を受けてまあ堅調という状況でございます。

     簡単に各業界の前年比等々の動向ですけれども、発酵乳飲料、数量で 98。果汁、数量で108。粉末ジュース、金額で105。調味料、106。粉末スープ、98。こういう状況でございます。コーヒーは国内消費は概ね前年並みですけれども、低価格の傾向が表れていると。即席めんですけれども、食数のベースで前年比で96%。去年の前半までは低所得者の方が購入をしていただいたということですけれども、このあたりの需要低下、これがですね、96%ということにつながっているという見方をしております。次お願いします。

     畜肉・畜肉加工品ですけれども、輸出の方は日本側の好調な需要に下支えをされているということで、高水準で推移をしております。特に、所属会社の日本向けのブロイラー、前年比120%ということ。またですね、ブラジル産の鶏肉の輸出競争力が向上しているということが見て取れると思います。2015年の末にはですね、ブラジルから日本向けの牛肉加工品、またブラジル向けの牛の生肉の解禁が発表されましたので、今後期待ということでございます。

     チョコレートは、ブラジルでは嗜好品ではないというぐらいよく召し上がりますけれども、チョコレートも近年稀なるマイナス、もしくはゼロ成長になった模様ということ。それに伴い加工油脂も、ココアが高値なので、それを代用するココアバター代用脂、好条件だったんですけれども、チョコレートが消費低迷ということで、数量は減少しているというような状況です。

     清酒は、皆様も召し上がっていただいているかもしれませんけども、サケピリーニャということで、ブームが少し来ておりますので、市場拡大により経済環境低迷の中でもまあ横ばいと。香料につきましては、数量の多い飲料向けは低調だったんですけども、全体としては成長を確保という状況であります。

     種ですけれども、世界的にM&Aが進んだ一年となったということで、ブラジルの種子業界、需要は安定しているんですけれども、レアル安で収益が圧迫されたということであります。所属企業におきましては、販売は大きく成長したんですけども、まあ利益は伸びましたけども、圧迫はしている要因はあるということでございます。タバコは、全体には3~5%減ということで、所属会社におかれましては販売好調なるも、利益はレアル安等で圧迫をされていると。

     日本食材。全体にはですね、日本食の広がりによって底堅いという面がありますけれども、一方で値上げを余儀なくされる傾向にあって、輸入販売の方については前年を下回る食材が多いということでございます。外食は2014年、124%ということで大きく伸びてきているんですけれども、15年については成長が鈍化しつつあるということであります。輸出は先ほど申し上げた通りでございます。

     利益面の状況。輸入原料が値上がる、また国際価格の傾向、これはプラス要因ということであります。人件費が収益へ大きく影響と。電気代についてはご存じの通り、下がりつつあるということでございます。

     砂糖相場の推移ですけれども、2015年後半からですね、異常気象による収穫の減の懸念に加えて、レアル安の影響で、相場が急に上がってきている傾向でございます。

     こちらは乳相場の推移ということで、2012年以前の水準に戻ったものの、国内への影響は限定的ということでございます。次お願いします。

     コーヒー相場ですけれども、2015年の下期については国内相場、500レアルということで、まあ比較的高値で推移をしたと。レアル安の影響によって輸出の競争力が増しまして、海外市場からの旺盛な買いが入ったということですけれども、16年は豊作が見込まれておりまして、引き続きですね、レアル安の影響が根強く、高値安定を予想しているということでございます。

     こちらはサンパウロの鶏肉の各パーツの卸売価格ということでございますけれども、国内相場では骨付きのムネ肉、また骨付きのモモ肉、これが過去5年間で最高値を更新したということですけれども、景気後退があって、高値圏から価格が下落をしつつあるというような状況であります。

     こちらはブラジル・スーパーマーケット協会様が公開をされている2015年度のスーパーマーケットの売上高の前年比、名目でございます。1月~12月ということで、右肩に下がっているという傾向でございます。次が実質ということで、実質の成長で見ますと、1月は4%弱ということでしたけれども、3月、4月からですね、前年を割って、年末にはまあ2%程度の減少というような状況でございます。

     こちらはスーパーマーケットの取扱高。重量ベースはですね、15年度になっても伸長しているというようなグラフでございます。ただですね、一番上からですね、1~4というのはこれはレジの台数です。下に行くほどレジの台数が多いということで、まあ傾向としては大規模店からご自宅の近くの中・小規模のスーパーマーケットでお買い物をされる。また、まとめ買いをしないで、毎日の必要なものだけを買うというようなことで、小口買い、客単価がやはり下がってきている。また、購入数が減少しているというような傾向もあるということであります。

     次は地域別ということですけれども、各地域まあばらつきはございまして、真ん中から少し下のあたり、エリアの4、Grande Sao Pauloというところがですね、最も顕著な減少ということで、一方でしっかり伸びている地域もあるということで、まあ地域間の格差が拡大をしてきているという傾向かと思います。

     次が主要カテゴリーでの取扱高の伸長率ということで、上からアルコール飲料、非アルコール飲料、ヘルスビューティー、洗剤、甘いお菓子、しょっぱいお菓子、生鮮というようなことで、こちらにつきましてもカテゴリーごとの色々な差異があるということがあります。

     次は伸長しているトップ10ということで、まあ食品の中でこういうカテゴリーが、食品またグロサリーの中で伸びているということで、上から肉製品、ハム、ビール、ロングライフ牛乳、脱臭剤、クラッカー、コーヒー、コンデンスミルク、おむつ、冷凍の肉、トマトソースということで、日常品の中ではこういった食品、また日用品がですね、伸びている、そういうカテゴリーということであります。

     一方で減少しているカテゴリーということで言いますと、上からソフトドリンク、チョコレート、アイスクリーム、豆乳の飲料、ソルティスナック、粉末ジュース、乳酸飲料、エナジードリンク、シリアルバー、洗濯石鹸と。こういったものがですね、減少をしている、ブラジル・スーパーマーケット協会さんがとらえているデータの中ではこういう傾向があるということでございます。

     以上、業界の動向を踏まえまして、2016年の展望、副題、ご覧の通りでございますけれども、2点申し上げたいと思います。

     一点目は、消費マインドの低迷はまあ当面は継続するのではないかという想定の中で、全体的には底堅い食品業界の特長を活かすということと、先ほど申し上げた、カテゴリーによっては良いものもある、厳しいものもある、また地域によっては良い地域もある、また厳しい地域もあるというようなことで、消費者の動向、また社会的な変化をしっかり見据えて商品開発なり市場開拓をいかにしていくのかということかと思います。またこういった景気低迷期だからこそ、まあピンチはチャンスになるという部分もあると思いますので、ごらんのようなビジネス機会を活かしていくということかと思います。

     次が、様々な要因によるコスト上昇は継続をするという一方で、 市場環境が厳しい中で、販売価格への転嫁は、なかなかですね、コスト上昇分を全部転嫁することはなかなか難しいということが想定されますので、まあ構造変化、また体質強化のチャンスということで、他部会様も報告されているようなそういう構造改革、また体質強化とチャンスと見て取り組むということかと思います。

     4点目、結びにですね、第2回の日伯農業・食料対話に向けて、ということで、大使館またカマラの政策対話委員会、また領事館、JICA、JETROさんとも色々連携しながら取り組んでいることをですね、ご紹介をしたいと思います。

     来週の月曜日と火曜日、トカンチンスの州都パルマスで、ブラジル側はアブレウ農務大臣に加えまして、マトピバの4州の知事も参加をされて、日本側約50名が参加して、第2回目の日伯農業・食料対話。1回目は安倍総理がお見えになられた2014年に開催をして、毎年1回開いていこうというようなことでございます。

    内容につきましては、ご覧の1番から5番まで、日本側からの提案、また両国の提案、ブラジルからの提案、またAGIRの提言ということでカマラの政策委員長の松永委員長からもですね、こういったような内容の対話を行います。食品部会の対応としましてはご覧の通りということで、関係各位と連携をして、この対話を通じた日伯の関係強化、また食品部会の加盟会社の要請事項の実現に向けて取り組んでいきたいということであります。提言の内容ですけれども、まあ一回ではなかなか解決できる問題も多くはないというふうに思いますけれども、粘り強く丁寧に、ひとつひとつ提言をしていきたいというふうに考えておりまして、今回アブレウ農務大臣からも、具体的な提言を伝えてほしいというような要望もいただいているので、こういった機会も最大限活かしていきたいということで、バリューチェーンごとにご覧のような政策提言等々をしていきたいなと思っています。

     これは食品加工に適した作物の検討ということで、ブラジルは世界に冠たる農業大国でありますけれども、例えば手前ども味の素で色んな食品の原料を使っておりますけれども、ブラジルの食品原料があまりなくて、中国、またはヨーロッパ・アメリカ等々から食品原料を逆に輸入して使わなければいけないと。できればブラジルのものを使って、ブラジルにもっともっと貢献していきたいということですけれども、農産物をそのまま輸出はされますけれども、加工業がなかなか育っていかないと。

    どうしたらそういった食品加工に適した作物、またそういう環境ができるのかというようなことですとか、まあハーベスト、特に残留農薬の分析、または農薬の管理の技術、日本は長けておりますので、そういったことで支援をしていくということですとか、まあICMSの問題ですとか、許認可の問題、野菜の加工技術の育成、アレルゲン分析技術、こういったものでの提言をしていきたいと思っています。

     最後のページですけれども、日本の和牛の明確な定義づけ、こういったものもやはりいるだろうということですとか、輸出の許認可ライセンス制、また必要書類の簡素化。またカスタムでは湾岸の費用がかなり高くかかると。また、通関の検査、これも迅速化もっともっとしていきたい。また適切なブランド定義による、正しい製品認識と、バラエティある市場形成。こういった提言もですね、行いながら、食品部会の加盟会社もですね、少しでも事業が前進するようなことも、力を合わせて取り組んで参りたいというように思います。

     食品部会からは以上でございます。ありがとうございました。

    司会

     藤江様、どうもありがとうございました。非常に食品業界、底堅い動きということでですね、今2分ほどありますけども、何か質問ございますでしょうか。いかがでしょう。よろしいでしょうか。はい。それではですね、藤江様どうもありがとうございました。続きまして、運輸サービス部会の報告に移りたいと思います。部会長で日本通運の細谷様、プレゼンよろしくお願いいたします。

     

     

  • 運輸サービス部会 細谷浩司 部会長

    Pdf運輸サービス部会     細谷 浩司 部会長

     こんにちは。運輸サービス部会、日通の細谷と申します。よろしくお願いします。なかなか景気良い話がないんですけど、引き続き景気のあまり良くない話になるかなと思います。

     この部会はですね、ここにあるように物流、あと鉄鋼構内関係の構内物流関係、海運、航空貨物、航空旅客、あと旅行・ホテル、通信、IT。皆さまの会社の物流とか、皆さんの一般的な生活に必要なことが今日発表されるかなという感じがしますので、お聞きください。

     まず物流業界から行きます。物流業界はなかなか、データ的に信頼されるデータが取れない業界で、我々の業界も報告義務もないですし、なかなか上がってくる数字もない中での話になります。

    まず港湾関係。特にサントスなんですが、事務処理面で港湾各社がシステムのチェックが緩やかながらも進んでおりまして、それによって貨物の搬出の時間短縮が始まってきています。なかなか良い傾向で動いているような感じです。また、前回のシンポジウムでも発表したんですが、去年の5月から、10年間ほど凍結していましたサントスの港湾諸料金が31%の値上げということで、皆様には大分港湾のブラジルコストの増というふうにつながっていると思います。

    今年の展望としましては、実は去年の8月から税関ストが続いていまして、まだ続いております。先ほど食品部会の方から通関が早くしてくれないかという提言がありましたけど、なかなか終わらない上に、最近また港湾の各社、民間ですね、このストが始まっております。ちょっとボディーブローで効いてくるかなという感じがします。これが懸念材料です。

    また、既に、これも輸入者にとってはコスト増になることなんですが、2012年から輸入資材の梱包材料、木材関係なんですが、これの燻蒸しなくちゃだめだよという案内を出していたんですが、なかなか守っていただけません。それでまた政府の方、MAPAという組織なんですが、強化しますよという案内が2月から始まります。それによって輸入検査の審査、および検査が厳しくなって、また通関期間が長くなるような感じはします。梱包材料に燻蒸済みというハンコがあればいいんですけど、なかなか守ってくれないみたいなんで、その辺輸入の時には気をつけた方がよろしいと思います。あと、期待値ですけど、レアル安から来る輸出の活性化に期待したいところです。

    また、この下の表を見ていただきたいんですが、青が2015年、赤が2014年の、実は日本発の駐在員の引越の件数です。サンプル数は20000件ほどあるんですが、これを見る限りでは、南アジア、オセアニア、東アジア、欧州、中米に日本から向かう駐在員が増えております。ただ悲しいかな、南米と北米に駐在する駐在員は減っております。私ども引越もやっているんですが、なかなかここのブラジルに入ってくる人間よりも出ていく人間の方が今多いので、ちょっと寂しいなという感じはしております。

     次に鉄鋼業界内の構内物流なんですが、まず上の図をご覧ください。粗鋼の生産量、今年が3320万トンだと思います。2011年をピークにして徐々に下がってきています。特に鉄鋼業界きついみたいで、コスト事情のためにやはり固定費用と言われる人件費削減に向けて頑張っているようですが、給与のインフレ率を調整するんですが、それを公定インフレ率の0%~60%程度の調整率で2015年からまだ交渉しているんですが、まだ定まっていないとのことです。2016年の展望としては、高炉メーカーの資金繰り悪化に伴い今後さらに厳しい状況が継続するというふうになることは確実で、経営環境もさらに悪化。最低4年間はこの状況は継続するということで、メーカーさんからも言われているそうです。その先を見た経営体制の確立が今年ちゃんとやらないとだめだなというコメントがありました。

     次、海運業界に進めます。大きく分けてコンテナ船の動きと、ばら積み船ですかね、不定期船の動きで説明します。コンテナ船は前年同期に対して輸入が14%減少、輸出は8%増加しています。輸出入合計で見ると、全体の物量では3.4%の減少となっています。海外トレードのコンテナ貨物だけの荷動きを見る限りでは、ブラジル全体では6年ぶりに輸出量が輸入量を超えています。

    これは輸入の減少プラス、農産物の輸出というのは通常不定期船でやるんですが、これが在来船からコンテナ船にシフトしてきているというふうに思われます。また輸入貨物減少のために、特にアジアから南米の東岸、こちらですね、トレードでの運賃レベルは記録的な低レベルとなっております。

    次に不定期船なんですが、船腹供給量は大幅超過の状態です。ケープサイズ船の、ケープサイズ船というのはすごい大きい船というふうに理解してください。スエズ運河もパナマ運河も通れない。ですから喜望峰とかそっちの方を回るしかない船なんですが、これの傭船料市況が歴史的低水準だそうです。

    2016年の展望としましては、コンテナ船は経済不調の影響を受けて、輸入の停滞傾向は今年も続く見込みです。レアル安は輸出には追い風ですが、中国をはじめとした輸入国側の経済減速による買い付け量の減少が輸出量の伸びに影響を与える可能性もございます。不定期船はというと、運賃市況が運航コストを大幅に下回る水準にあるために、係船される船腹が増加傾向にあります。もう使わない、留め置きですね。一方で、今年新たに竣工する新造船もありますので、マーケットがどの程度反発するか、今不透明な状況、暗中模索の状況です。

     次に航空貨物業界にいきます。皆さまがよく、日系のメーカーさんがよく使われる3大空港と言われている、グアルーリョス、ビラコポス、この二つはサンパウロなんですが、あとマナウス、これの1月~10月の実績でちょっと比べてみます。

    1月~10月の実績というのは、まだ空港では発表していない数字がありますので。輸入量は対前年同期比マイナス16.9%、輸出量は対前年同期比で5.9%です。特にマナウスでの輸入量が下期にどんどんどんと落ちてきているのが気にかかるところです。やはり全体的には、各メーカーの部材や製品の輸入に現在のこの経済状況、レアル安等ですね、が大きくインパクトを与えているものだと思われます。2016年の展望ですが、当面輸入の停滞傾向が続くと思われます。期待値となるんですが、レアル安により今までは国内向けだった製品の輸出品目が発生してくるのではないかなというふうに期待しております。

    またオリンピック・パラリンピックに関する特需での荷動きの活性化に期待したいところです。この下の表、青色が輸入で赤が輸出、緑が為替の動きですね。為替の動きの数字がこちらの右側の数字なんですが、通常ですね、航空貨物というのは高付加価値の貨物を運ぶんですよ。それで、レアル安になったことで、緑の線が上に上がっていったことで、赤い線がそれによってレアル安で動きがあるのかなというふうに見てみましたが、やはりまだブラジルでは高付加価値の商品というのが少ないのか、もしくはこれから動くのか、その辺が今後のデータ、どのように変わっていくか、興味あるところでございます。

     次、航空旅客業界です。こちらにはJALさんやANAさんが来ておりますので、その辺からデータをいただいています。国内線は年計で見ていくと、座席拡大に応じて旅客増。色々な係数があるんですが、有償旅客キロ、提供座席キロ、利用率とも座席拡大に応じて増となっております。ただどうも、下期のみで言うと、景気悪化の影響がボディーブローで効いてきて、前年割れしているようです。

    また国際線はブラジル航空会社計で、有償キロはプラス、提供座席キロもプラス、ただ利用率は1.1%ほど下がっている。ただ引き続き旅客は10%以上伸長しているとのことです。あとは、ブラジル経済の伸び悩みの影響で、日本へのデカセギ需要が増加する傾向にあるとのことです。

    2016年の展望としましては、国内線はTAMやGOL航空の業績悪化にともない、低需要路線を減便・運休する可能性が高くて、旅客数は横ばい、もしくは低減すると想定しております。国際線はオリンピック・パラリンピックの開催にともなって海外からの旅行者は増加すると見ております。ただ為替の影響で、ブラジルからの出国者は減少するものというふうに予想しております。

     特記事項書いてあるんですが、2015年6月に全日空さんが成田-ヒューストン線を開始し、その後2015年の11月に日本航空さんが成田-ダラス線を新規就航しております。これにより皆様、北米経由で日本行きの乗継空港の選択肢が増えていくと思います。

    またサンパウロ国際空港のターミナル、今まで1、2、3、4あったんですが、名称変わりました。お気をつけ下さい。サンパウロ側からいくと、昔はターミナル4番だったのがターミナル1、そして1、2だったのが2番、新しくワールドカップの時にできたターミナル3はそのまま3番ということで変わっておりません。また各ゲートが三桁に統一されました。一桁目はターミナル番号で、その後末尾二桁が通し番号になるということです。

     次に旅行ホテル業界でございます。ドル高レアル安により海外旅行客が減少すると見ていましたが、見込みに反して国際線航空券の発券枚数と売上高は増加しております。特に売上高が大幅に増加したのは、1ドルが4レアルに跳ね上がったという、この為替の計算のあやのせいに大きく起因しております。

    あと国内線航空券の発券枚数も大きく増えております。これはドル高によって海外旅行を諦めた、国内組ですかね、諦めて国内組にシフトした旅行者が増えたものと思われています。また国内線旅行券が増えると普通はホテルも増えるんですけど、ホテルの売上率が減少しているのは安いホテルの利用者が増えたのかなというふうなコメントがありました。

    2016年展望 では、オリンピック・パラリンピックという大きなプラス要素があります。一時的に国内のホテル、航空業界などが潤うことが期待されますが、一方で、デング熱、ジカ熱、この辺の感染症や、あとは景気低迷による治安の悪化などが原因となり、来伯者数が当初の期待を下回ることがちょっと懸念されるかなということです。またドル高レアル安の恩恵で海外からの旅行者の増加が見込まれる一方、ブラジルからの海外旅行は減少し、その分国内旅行にシフトされ、まあ去年と同じですね、国内のホテル、航空業界は2016年は好景気が期待できます。

    あとはちょっとマイナス要因なのかもしれませんが、2016年1月1日より、旅行費用の海外送金に対して源泉徴収所得税、IRRFですね、が25%課税されます。そのために、ただでもドル高レアル安でブラジルからの海外旅行が減る傾向にあるのが、さらに大幅に減っていくのかなという。業界としてはこの税金の見直しに政府に向けて陳情を開始しております。

     またトピックスとして赤で書かせていただいたんですが、日伯間において有効期限が最大3年で、1回の滞在が最大90日のマルチ観光ビザですね、皆さんビジネスビザですけど、観光の方に対してマルチ観光ビザを相互に発給することが合意されました。確か日本政府は昨日か一昨日ぐらいに、日本ではもう手続きを始めますよというふうな記事が出ておりました。

     次に通信業界。通信業界二つありまして、携帯電話業界、あと固定という、何と言うんですかね、テレコム関係の発表をしたいと思います。年々増加傾向にあった携帯電話契約数は経済の減速により8%減となっております。携帯電話の販売台数のうち、フィーチャフォン、昔の古い電話ですけど、の落ち込みが大きく、全体としては約2割減。しかしながらスマートフォンの販売台数は堅調で、全体比率の9割近くにまで増えております。また、急速に2Gから3Gもしくは4Gに移行が進んでおります。

    2016年においても景気低迷がちょっと続くのかなという予想から、携帯電話の加入者数および販売台数が上向く可能性は低いというふうに見ています。ただ4G、4Gサービスですね、4Gに関してはスマートフォンの販売増および2Gからの買い替えも手伝って、今後も順調に契約数は増加する見込みと見ております。あと、IoTと言われる、Internet of Things、あとMachine to machine  と言われるM2Mというんですが、その関連のサービスの普及およびニーズの世界的な高まりにともなって、Machine to machine専用のモバイル回線の契約数も増加していく見込みです。次に行きましょう。

     通信業界でもう一つ、テレコム関係、固定電話関係ですね。2015年回顧としては、インターネットユーザー数は今ブラジルは世界4位で、1億1700万ユーザーです。ブロードバンドのマーケットシェアは、NETが32%、Vivoが29%、Oiが25%となっております。またブロードバンドアクセス数は2557万で、昨年比較で9.4%アップしております。あとインターネット普及率は、ちょっと低いんですが、世界第81位で58%というふうになっています。Windows10のアップグレードなどアプリケーションの提供が従来のメディアからクラウド型へのシフトが大分進んでおります。

    次2016年の展望なんですが、通信業界再編が活発化し、通信インフラ基盤の安定化、低廉化が期待され、今後、光ファイバーの利用ですね、Fiber to the Home、実際皆さんのお宅まで光ファイバーが通ったり、あとFiber to the Officeといってオフィスに通ったり、が普及、利用が増加する見込みです。インターネットがビジネス基盤化する中、大都市中心部以外、郊外の工業団地なんですが、で高速化、安定化、低価格化がいま求められているところです。あと悩みとしては、技術者不足、人件費や経費の高騰、IT専門家の確保が難しくて、それが慢性化しており、それが課題というふうに考えております。

     最後のセグメントになりますが、IT業界です。15年の回顧としては、ITへの投資額、2015年ですが、これはレアルの急落および不安定な景気の影響を受け、年度当初はUSドルで125ビリオンを見込んでいたものが、最終的には95.8ビリオンにまで下がっております。2015年は前年比で5%成長。まあ2014年は9.2%、13年は15%ですので、ちょっと下がっているという感じというふうに数字を見ております。またハードウェアも、輸入して持ってくるんですが、輸入価格高騰の影響により販売は低迷しました。

    ソフトウェアについては、Windows Server 2003のサービス終了、去年の7月ですが、サービス終了にともないまして買い替え現象が起きて、パソコンとしてはWindows 10が登場したということもあって、一定の需要は確保したと思われます。

    2016年の展望としては、ITの投資予想額は、前年比コンマ6%、微増ですね、の96.4ビリオンを見ております。IT投資の機会は存在するものの、景気低迷の継続が予測されることから、投資の様子見や買い控えが想定されております。ハードウェアは為替がレアル安で推移する場合、ブラジルのパソコン部品はほとんど輸入品ですので、コスト増となり、買い控えがさらに発生するのかなというふうに危惧しております。

    また引き続きですね、優秀なIT人材の育成やIT専門家の確保、人件費の高騰への対応は大きな課題となっております。競争力強化のためには氾濫する情報の中から本当に必要な情報を分析する重要性があるんですが、それはビッグデータというものに蓄積されて、それをどうやって引っ張ってくるか、この情報分析が基本的な鍵となるというふうに見ております。

     最後のページに来ました。副題に関してなんですが、難しいですよね。各業界で色々な意見出されております。セグメント多いので、皆ばらばらです。今年1年は我慢の年。2017年以降の景気回復に期待。回復は2020年と考える。根拠のある意見、あと根拠はないけど、どうせ今年はだめだろうから来年に期待というようなのがちょっと表れているのかなと。ちょっと回復までの道のりはまだ、何ですかね、看板が出てこないというか、ちょっと先が見えていない状態だと思います。

    それに対してどう備えるか、なんですが、今までの皆さんの発表にあったように、コスト削減や業務効率化、この時期にやっちゃおうと。あと回復までの期間に優秀な人材の発掘、既存の人材と新規人材への教育、トレーニングを重点的に行って、来る経済回復時に向けてジャンプできるように、じっと我慢していようという感じです。あと、この状況を乗り切るために、新規事業領域の模索を継続的に行う必要がある。

     あとドル高により国内観光のチャンスも見出せますが、旅行の方ですかね、観光シーズン以外のパッケージ企画に対して大きな想像力、革新、販売促進策、製品、サービス、およびプロセスなどの開発が必要であると。 あと次は、航空旅客だと思うんですが、ブラジルおよび欧米系の航空会社と協業事業を強化し、アライアンスを組むということですね、ブラジル-日本間の路線網の拡大と乗継ぎの利便性向上を促進すると。

     といった、皆さん前向きな意見が出されており、これは決して業界独自の内容ではなくて、他業種にも通じると思います。まあ景気の悪い話が先に立ってしまいましたが、とにかくブラジルは2億人の人口があって、それにともなう消費物流がある、ということで、自ら切り開いていく力を持つ気持ちが大切だというふうに思っておりますので、皆さん頑張りましょう。

     ということで、運輸サービス部会の説明を終わります。ありがとうございます。

    司会

     細谷様、どうもありがとうございました。運輸サービス部会、非常に幅広い内容なので、かなり報告大変だったかと思いますが、どうもありがとうございます。ちょっと時間オーバーしておりますので、質問はですね、ちょっと飛ばしまして、次の報告に移りたいと思いますので、御容赦をお願いできればと思います。続いて建設不動産部会の報告に移りたいと思います。部会長でCGCの藤井様、報告をお願いいたします。

     

     

  • 建設不動産部会 藤井健 部会長

    建設不動産部会 藤井健 部会長

    Pdf建設不動産部会     藤井 健 部会長

     ケミカルグライトの藤井でございます。それでは建設業界の話をいたします。経済の低迷が建設業界に及ぼしている現状は、新規物件がなく、あと手持ち物件も完了し、会社の規模を半分以下にした会社や、ヨーロッパ企業に吸収された企業が増加している現状です。

    まさに本年度が正念場になってまいりました。まあ中には金利で稼ぐという話もありました。その中で当建設不動産部会員が取り組んでいることを発表いたします。

     それでは最初に部会メンバーの前期の回顧と今期の展望を話します。次お願いします。

    アンケート結果です。ゼネコン業界は日本企業さんのブラジル進出の激減によりまして、日本からの問い合わせもなくなりました。まあその中で非日系企業の工場拡張がありました。まあしかしながら、労務費や材料費の高騰で、非日系工事を受注するためには激しい価格競争をしなければならず、体力勝負となっております。その状況の中で今期の展望としましては、非日系企業への営業強化。非日系比率を上げなければならないと考えております。もう一つは、ブラジルの建設会社ができないこと。施工方法や提案力でコストの削減を図りたいという話です。

     次、不動産業界は、サンパウロの工場用地が少し下げ止まり感が出てまいりました。マンション価格も下がり始めました。今期は低価格の中、付加価値を付けて、賃貸や販売を提供していくことが問題だということです。

     次はプレハブ業界。日本企業の延期、これはゼネコンと同様厳しい一年でしたと。まあ今期はプレハブのレンタルに初めてチャレンジするということです。

     サッシ業界。これは新規が少ない中、現在持っている工事がスムーズに行われた一年だったと。しかし、失業率にともなうマンションの解約が増加しまして、また今年1年も集合住宅事業は停滞する見込みだということです。

     次は大型発電機業界。元々、ショッピングモールの停電時の非常用電源として取り組んで参りましたが、昨年は電力料金の高騰にも助けられまして、業務用ビル、工場にも進出いたしました。

     あと、特殊技術。財政削減でサンパウロの下水道工事が止まりましたが、サンパウロの地下鉄やオリンピック関連の突貫事業がありました。リオ・デ・ジャネイロの地下鉄、高速道路、トンネルですね、から非常に信頼を受けて奮闘しております。また特別講演を依頼されましたトンネル学会では日本の技術を発表いたしました。次お願いします。

     これはアンケート結果のお客様比率です。ゼネコン業界は日本企業の巻き返しを願いながら、非日系営業を強化しています。不動産は日本人の方のためにですね、情報を集めております。プレハブはゼネコン同様、日本企業の設備投資復活を願いながら、非日系で頑張っております。特殊技術はインフラに引っ張り回されております。次お願いします。

     それではゼネコン業界です。カジッチによりますと、離職率、昨年は13.6%。一昨年3.4%を非常に大きく上回りました。公共・民間とも建築投資が減少し、少ない案件に各社が集中するため、競争が激化。並大抵の努力では受注にこぎつけられないそうです。まあそのような中、今回戸田建設さんはジャパン・ハウスの建設工事を受注しました。パウリスタ大通りの国際交流基金前のブラデスコビルを改修し、外国に日本をより良く知ってもらうための発信拠点となります。

    ジャパンハウス・プロジェクトへの参加は単なるビジネスチャンスではなく、日本政府とコラボし、安倍政権の目指す、民間の活力、地方の魅力など積極的に活用したオールジャパンでの発信を協力し、ブラジルの日本企業としまして、日伯の架け橋的な役割を果たせることに意義を見出しております。

    本日は折しもプレイベントを行っているということです。午前中はFIESPで記者会見を行い、ブラジルメディアに周知し、午後は現在MASPの近代美術館において、来伯中の設計者、隈研吾先生と、ブラジルの建築家によるトークショーを行っているそうです。残念、こちらには来れませんですね。戸田さんは企画運営にも大きく関わっておりまして、ジャパン・ハウスプロジェクトを通じまして、施工のみを行うゼネコンから新たな道にチャレンジしたいと言っています。次お願いします。

     これは不動産業界。マンションの賃料と販売価格の推移です。左が賃貸、右が販売。赤線がリオ・デ・ジャネイロ、青線がサンパウロ。サンパウロの新築マンションの販売価格以外はすべて下がりはじめました。これでいつごろ、どこまで下がるのかが問題ですけれども、部会で様々な意見が出ました。残念ながら今日は公表しません。調べたい方はですね、スターツの森口社長に個別で聞いていただければ。

    昨年も発表しましたが、賃貸料に比べまして販売価格は上昇率が2倍以上と高い。必ず下落がやってまいります。昨年は失業率のアップによりましてマンション購入者の解約、実は40%になりました。問題は解約前に支払った分のお金、これ10%しか返されないケースがありまして、当然裁判となったそうです。判決は、もっと返せ、だそうです。次お願いします。

     次に不動産市場の動向ですが、サンパウロ近郊の工業用地です。地価は1年半前から変わっておりません。むしろインフレを加味すれば実質的には値下がりしているかなと。今後しばらく様子を見ることになりますが、昨今の不況では設備投資は冷え込んでおりますので、不動産業者によれば土地は全く売れていないということです。

    ちなみにモルンビーの車のディーラーの跡地、これ800万レアルと前言われていたんですけども、先日聞いたところ300万レアルに下がったという情報が入りました。ブラジルでも半値、八掛けがありました。次お願いします。

     プレハブ業界。これも日系企業様の事業凍結が相次ぎました。安定した品質と施工の早さ、移設・増設簡単にできるということで、ブラジル人に認知されております。また今年はオリンピック関連で、これは仮設の仕事があります。そこでブラジルで初めてレンタルを始めるということです。次お願いします。

     次、特殊技術です。昨年11月からカーニバルまで土日返上、昼夜突貫工事をしてまいりました。この写真はリオ・デ・ジャネイロの地下鉄工事です。この丸の部分が現時点未貫通です。先週の情報であと200メートルだという話が入りました。超突貫工事を継続中で、現在既に貫通した部分に関しましては、線路を引き始めております。営業運転開始まで安全走行テストの時間がどれだけ取れるのかが、これからの課題です。

    もしこの地下鉄が開通しない場合、オリンピック会場とリオ・デ・ジャネイロ中心街の交通手段は、現在でも大渋滞をしている3本の道路とヘリコプターと船になります。オリンピック開催時の交通手段がどのように変化するのか、注意が必要です。

     また、これはガレオン空港からリオ・デ・ジャネイロ市街地に向けて、皆さんもご存じかもしれませんけど、高速道路を延長5キロに爆破して、その下をトンネルを掘るというプロジェクトがありまして、現在トンネルを掘っております。これも現時点未貫通です。これによりまして、ガレオン空港からリオ・デ・ジャネイロの市街地までいく高速道路がまだできていないということですので、現状は市街地を走らないといけない。リオ・デ・ジャネイロ市はオリンピック開催地の交通手段をどう考えているか。一般車両を締め出して、バスだけにするのか、などなど、実はまだ発表はありません。次お願いします。

     次はトンネル学会での発表です。ブラジルのトンネル学会は現在ブラジルで施工されております地下工事の大プロジェクトの関係者が一堂に集結しました。これは地下構造物の止水がテーマでしたので、まあこの写真、図面は青函トンネルです。左の図面が青函トンネルの異常出水時ですね。右が四国の四万十川の上流、自動車トンネルの異常出水です。まあこれを止めた理由ということを今回説明いたしました。まあちなみに、最近日本で施工開始いたしました、日本のリニア、南アルプストンネルというのは、この青函トンネルの240メートルの水圧の約6倍の水圧と戦うことになります。次お願いします。

     次は地下鉄工事の道路の陥没です。日本のテレビでこのような場合、専門家のコメンテーターが出てきます。原因が明確になりまして、対策が理解できます。しかし今回、ブラジルのテレビは、アナウンサーがそのままコメンテーターになっていました。まあ残念ながら専門知識を持たずですね、表面上の現象を見まして、視聴者を不安に陥れているのがよく分かりました。

    今回の根本的な原因の一つとして考えられるのは、実はブラジルではシールド機を国内で生産することができません。海外からレンタルの場合が多いので、今回もそうですし、リオの地下鉄もそうです。まあそのため、一日の損料が莫大になります。そうしますと掘進を最優先させます。ちなみに日本の場合は、シールド機はほとんどが購入です。掘進に際しては、万全の検討を行い、着実にゆっくり推進させます。これからサンパウロ6号線が始まります。次お願いします。

     まとめです。今回、経済の低迷で建設不動産業界が直面し、それに対応しなければならない事を4つ挙げます。

     一つ。オリンピックの駆け込み需要に対応できるか。不動産価格の低下を販売チャンスに結び付けられるか。 ヨーロッパ企業のM&A攻勢に対抗できるか。失業率の低下により優秀な人材を確保できるか。まあこのようなことを考え、あと、各方面にアンテナを立て、真の情報を得る事が重要と考えております。まあビジネスチャンスは待っていてもやって来ません。少し古いですが、チャレンジは今、です。

     以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

    司会

     藤井様、どうもありがとうございました。時間が押しておりますので、続いて繊維部会の発表の方に移りたいと思います。部会長で日清紡の浅川様、よろしくお願いします。

     

     

  • 繊維部会 浅川哲 部会長

    繊維部会 浅川哲 部会長

    Pdf繊維部会     浅川 哲 部会長

     日清紡の浅川です。簡潔にまとめますのでどうぞよろしくお願いいたします。次お願いします。

     発表は綿花、国内市況、展望の順番で発表させていただきます。次お願いします。

     世界全体ではポリエステルなどの合成繊維に次ぐ綿花ですけども、ここブラジルでは50%以上を占める繊維原料ですので、まずは世界の綿花から説明していきます。次お願いします。

     これは2011/12年度と2015/16年度の消費量と生産量の推移を表したものです。2011年度から2014年度まで5年連続して生産量が消費量を上回る状況が続いておりましたが、国際綿花価格が低い水準にあるため、中国、インド、アメリカ、パキスタンと、北半球の主要な綿産国が減産となり、2015/16年度は6年ぶりに消費量が生産量を逆転する予定です。次お願いします。

     これも同じく2011年度と2015年度の季末在庫量の推移を表しています。グラフ上の矢印は国際綿花価格の代表指標であるニューヨーク綿花相場の推移を表しています。2015/16年度の季末在庫量は、生産量が消費量を下回ることから、減少に転じると予想されます。ただ、中国の季末在庫占有率は60%以上と、依然として高い状態のため、中国政府の綿花政策に大きな変更がなければ、ニューヨーク綿花相場は現在の低い水準から上昇局面へと転じるおそれがあります。では、次お願いします。

     次は2015年の国内市況回顧。ブラジル綿花相場の推移から始めまして、綿花価格の動向、また綿花に次ぐ繊維原料である合成繊維の市場動向、衣料品までの各種繊維製品の輸入動向、最後に国内繊維市況総括の順で説明いたします。次お願いします。

     これは為替相場とブラジル綿花相場の推移を表しています。ブラジルは世界第5位の綿花生産国で、第3位の綿花輸出国です。また南半球に限って言えば、生産・輸出ともオーストラリアを抜いて第1位です。2010年ごろからマト・グロッソ州、バイア州で完全機械化の大規模農法が進み、世界屈指の綿産国に変わりました。生産量の約半分が中国をはじめとしたアジアの国々に輸出され、2015年は中国経済減速の影響でベトナム、インドネシアが輸出先の第1位、2位となりました。したがってブラジル綿花相場は、ドル・レアル相場の変動に大きく影響されます。ご覧のように2015年4月以降のレアル安の加速によって、国内綿花相場は大きく上昇しました。次お願いします。

     これは2015年の綿花相場、黄色ですね。綿花を原料とした綿糸のうち、細かい繊維や、ごみ、熱風を取り除いた上質なコーマ綿糸の市場価格、青色です。それと紡績各社のコーマ綿糸の標準的な損益分岐コスト、緑色、の推移を表したものです。年初から電気料金アップと、この4月からの綿花相場急上昇で、損益分岐コストは右肩上がりとなりました。一方でコーマ綿糸の市場価格はカーニバル以降、衣料品消費の冷え込みが顕著となったことから、在庫が積み上がり、価格が下がる状況が続きました。5月に赤字に転落したまま、赤字幅が広がった状況は、現在も続いております。次お願いします。

     ブラジルで綿の次に需要の多い合成繊維は、主に石油等を原料とする繊維で、ファッション性や機能性のある衣料に使われることが多く、ここ数年ブラジルでも需要が伸びてきたものです。しかし2015年は景気低迷の影響を受けて、ファイバー、織物とも、生産量・輸入量は減少しています。レアル安によっても輸出量は伸びていません。次お願いします。

     これは今まで見てきた主な繊維原料の綿と合成繊維について、それぞれ糸と織物のブラジル現地調達率を表したものです。綿糸と織物は、原料の綿花がほぼ100%国内産であるため、約95%が国内生産品となっています。また2015年、加速したレアル安から、数量的には非常にわずかですけども、輸出量は増加しました。綿糸の主な仕向け地はコロンビア、ペルー、アルゼンチンです。一方合成繊維は国際競争力の低下から、特にファイバーは55%以上の輸入品に置き換わったままの状態が続いています。次お願いします。

     これは主に綿を原料とした繊維製品と衣料品の輸入量の推移を表したものです。2015年のレアル安と景気低迷から、綿糸、綿織物、ニット生地、ともに大幅な減少となりましたが、輸入関税率が30%以上もする衣料品の輸入量は横ばいの状態のままです。景気低迷によって大手衣料小売企業間の価格競争が激化したことも影響しているのではないかと思われます。次お願いします。

     これは衣料品と主にジーンズ、ジャケットなどに使われるファスナーの国別輸入量を表したものです。衣料品の輸入先では依然として中国の比率が高く、全体の70%以上を占めています。わずかですが、これにベトナム、バングラディシュ、インド等が続きます。ファスナーの輸入量は2013年以降減少しています。これはジーンズ、ジャケットの国内生産が減少し、価格の安い輸入品が増加しているためです。ブラジルのジーンズ消費量は中国、アメリカに次ぐ世界第3位です。一方、ジーンズの生産量は中国に次いで世界第2位ですが、景気低迷で生産量は昨年比10%以上減少しました。次お願いします。

     これは、原料から中間製品、衣料品製造を経て、主に衣料品小売りまでの2015年市況総括を表したものです。綿花が相場の上昇のプラス要素と、主要産地バイア州における天候不順による生産性低下のマイナス要素で、綿花農家にとっては前年並みとなった以外、全ての分野が悪化しました。糸、織物、ニットを含むテキスタイル製造と、衣料品アパレルが、それぞれ14.5%、10%、昨年比生産減となりました。ブラックフライデー、クリスマス、母の日など、軒並み前年割れとなった影響で、靴・衣料品の小売全体も8.7%前年比大幅にダウンとなりました。では、次お願いします。

     三部目の展望は、2016年の展望、2016年の課題、政府への提言の順に説明します。では次お願いします。 先ほど皆様ご説明のように、景気低迷は長引くと見込まれるため、2016年はさらに厳しい局面を繊維部会でも予想しています。先ほど説明した国際綿花の需給バランス改善、レアル安基調による国内綿花相場の上昇など、特に私ども綿紡績業にとりまして、現在の原料高で製品安状況が解消されないのではないかと非常に不安です。唯一、衣料品輸入に歯止めがかかり、一部が国内生産品に回帰することを期待しています。ブラジル繊維5業界も、今年の繊維製品生産量は昨年比増加すると、期待を込めて予想しています。では次お願いします。

     副題である、経済回復期はいつか、日系企業はどう備えるか、について、戦略・連携・開発・信頼・教育と、5つのキーワードで課題を表してみました。この中で、やはり日系企業としては、過去の日系移民の方々や、ブラジルに赴任された先輩方が築かれ、今ブラジルで頑張っておられる皆様方が受けついでいる、メイド・バイ・ジャパンの日本的な良さ、きめ細やかさや誠実さを生かして、地道に市場と顧客の信頼を勝ち取っていくことが重要であると思っています。そして、その信頼を将来継承する礎となる人材への教育です。次お願いします。

     最後は副題に関して、ブラジル政府に対する提言をまとめました。過去のシンポジウムでの提言の繰り返しになりますが、ブラジルで数百人以上の雇用を維持して、製造に携わっているものとしては、ブラジルコストの改善、例えば複雑な税制の整理、撤廃、減税、旧態依然とした労働法の見直し、インフラの整備などは、改めて要望します。特に繊維部会としては、繊維産業の重要性の再認識をお願いしたいところです。

     ブラジルは世界第5位の綿産国、繊維製品の生産国で、かつ、巨大、しかも拡大傾向にある消費市場を備えた恵まれた国です。すなわち、入口と出口がしっかりと存在していて、しかもその間の繊維産業には現在150万人が従事しています。これが、原料が輸出され、最終製品である衣料品が輸入されるという、要は中間にある紡績、テキスタイル、アパレルが疲弊した状況になっています。

    今一度繊維産業の重要性を再認識していただき、単に産業保護というだけではなく、繊維産業を強くするような政策、例えば繊維産業に携わる人、特に縫製作業員の技能教育機関の充実等、前向きな政策を望みたいと思います。 以上、これで繊維部会の発表を終わります。どうもありがとうございました。

    司会

     浅川様、どうもありがとうございました。これで11部会の発表を全て終わりました。各部会長の皆様、どうもありがとうございました。ここでですね、在サンパウロ日本国総領事館の総領事であります中前隆博様よりですね、ご講評をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

     

     

  • 講評 中前隆博 在サンパウロ日本国総領事館 総領事

    中前隆博 在サンパウロ日本国総領事館 総領事

     恐れ入ります。本日は誠にありがとうございました。各部会の皆様方からのお話をうかがって、大変、私も勉強になりましたし、今後我々が何をしていくべきかということの指針もいただいたような気がいたします。

     私の話を申し上げる前に、ひとつ最初にお詫びを申し上げたいと思います。今日はちょっと様々な行事が重なっておりますものですから、私ここでお話させていただきましたら、そのまま退場させていただきますけれども、これは決して今日のシンポジウムに不満があるとか、抗議するとか、そういう意図があるわけではございませんので、そういうものとしておおらかに見ていただければと思います。

     その上で、3点ほど申し上げたいと思います。

     本日の各部会からのお話、やはり共通して現状の厳しさ、その中で今後一両年は耐えていねばならないという御認識が示されたものだと思います。ただその中で、やはり打ち出すべき、我々の強みは、日本としての強み、すなわち品質であり、技術であり、また信頼性、日本のセンス、またはネットワークと、そういうものを大切にしたいというお話、すなわち日本というものを、Japanというものをブランド化していき、また差別化していくという認識でいらっしゃるかなと。そういう形で、日本全体のモラルポジションを上げていくということ。そこは、お話をうかがいながら、私どもが今目指しているものとの共通点があるのかなというふうに思いました。

     すなわち私どもも、遅ればせでありますけども、戦略的な対外発信という政策を打ち出し、かつ実際の行動に移しつつございます。単に日本の文化を目的意識なく伝えると、伝播するということだけではなくて、そこから日本は得るものを得るのだという、一般的に申せばそういう意識で様々な情報、メッセージを発信していくということでございます。そういうものを通じて、企業の皆様方の、何らかのお手伝いができる部分があるのではないかなと思っております。それが一つ目。

     二つ目。これに関連いたしますけれども、先ほど建設不動産部会の藤井部会長様からもお話がありましたけれども、私どもの大きな今年のアジェンダとしてジャパンハウスというものがございます。これは、正しい日本、多様な魅力、こういうものをこの地でですね、従来日本を必ずしも知らないという人、幅広いブラジルの方々に見ていただいて、親日派、知日派を増やしていくというのが事業の目的でございます。

     今日、先ほどお話ありましたが、ジャパンハウスの発足にともなう、作業の発足にともなう記者会見を行いました。来年の3月に開館を目指して仕事をして参ります。今日はジェネラル・コーディネーター、総合コーディネーター、これはロンドン、ロサンジェルス、サンパウロの3カ所でまず開きますけれども、その3カ所を統括する原研哉さん。この方は日本の著名なデザイナーで、約15年無印良品を引っ張ってこられた方でございます。

    それから、ジャパンハウス、アベニーダ・パウリスタに建設するその設計をされる隈研吾さん。これはご存じの通り、2020年の東京オリンピックの国立スタジアムを設計される方でありますけれども、その二人が来られて、今日イベントを行いました。それぞれに非常にいいお話をされましたけれども、総じて言いますと、日本の伝統をですね、過去の記憶として打ち出すのではなくて、その本質を現代の形で打ち出すのだと。すなわち、I know I knowと、知っているよそれは、というものではなくて、見る人の目から鱗が落ちるようなそういう日本を打ち出したいというお考えを出されたように思います。

     そういう事業を始めるにあたりまして、どうやっていくか。これは大きな挑戦でありますけれども、グッドニュースが二つございます。

    一つ目はこのジャパンハウスをやるにあたって、至上命令として私ども与えられていますのは、この企画運営に私ども官僚が一切口を出してはならないと言われていることでございます。それから2番目に、事務局長にアンジェラ・ヒラタさんという2世の方ですけれども、この方が任命されました。この方は皆様よくご存じのHavaianas、このブランドを世界ブランドに仕立てた、ブラジルビジネスの立役者の一人でいらっしゃいます。

    また企画局長、キュレーターにマルセロ・ダンタスという、これもブラジルを代表するキュレーター、こういう有能な方々をチームとしてお迎えすることができたわけです。ヒラタ事務局長は非常にビジネス感覚の鋭い、強い方でいらっしゃいまして、このジャパンハウスというものも、単に国の何らかの事業だというのではなくて、これは日本の政府がこのブラジルに投資をしたのだと。投資をした以上、一定の期間内に必ず回収をせねばならないというのを口癖のように言っておられる方でございます。

    ジャパンハウスを企画するにあたって、ビジネスの観点、ジャパンハウスは企業それからもう一つは地方、この企業と地方、この二つをコンテンツのリソースとするというのがありますけども、そういう中で企業の方々と、ビジネスの感覚を、あるいは視点を取り入れた企画をしたいという強い意志を持っておられますので、今後様々な形でですね、企業の皆様方とご相談をしたり、一緒にお話をしたりして、組み立てていくような場面もあるいはあるかと思いますので、その時はよろしくお願いいたします。

     それとの関連で一つだけエピソードを申し上げますけれども、先日そのヒラタ事務局長に連れられてですね、ある方の家にお邪魔いたしました。そのお家はブラジルの最大手の金融機関の社長さんのお家だったわけですけれども、そこの奥さんがですね、仲間を集めて、10人ぐらい集まって料理をしておられました。

    それをコーディネートしておられたのが日系人の方でしたけれども、日本人・日系人が作っている野菜などを使って、日本の調味料も使いながら、ブラジルと日本の料理のフュージョンを実験的に作っていく。それを写真を撮って、文を作って、本にしていくというプロジェクトをやっておられる現場でありました。しかしその10人の方々というのが、奥さんと同様のこのブラジルの経済界をリードする非常に有力な、ものすごいハイランクのセレブリティの方々でありましたけれども、そこで面白い話をうかがいましたのは、実はこの時までエプロンというものをしたことがなかったと。つまり御察しの通り、こういうクラスの方々は、台所に立つということがないわけであります。

    しかし、ブラジルの社会も変わってきたと。相当高収入の人たちも実は最近は自ら台所に立つことが多くなってきたと。だから私たちもこういうことをやらないとねと言いながら、それでちょっと聞いてみますと、それで、エプロンってやっぱりこれよね、と皆口をそろえていっておられたのが、半分が無印良品、半分がユニクロでありました。すなわち、ブラジルにはそういう社会的な構造があったために、エプロンにおしゃれを追及するという文化がなかった。ところが最近そういうふうに変わってきて、そういう人たちはわざわざ日本からそういうものを取り寄せてですね、おしゃれよねと言いながら、こうアクセサリーとコーディネートしながら、着ておられる。私もそこで一つ目から鱗が落ちた気持ちがいたしました。やはりブラジルも社会の環境が変わっていく、そして市場がそれにともなって変わっていく、そこに日本の魅力を打ち出す余地もまた出てくると、そういうふうな思いがしたわけでございます。

     三つ目に、これはいつも申し上げておるところでございますけれども、私どもの総領事館、それからブラジリアにあります大使館、こぞってですね、企業の皆様方のこちらでの活動をご支援申し上げるということが一つの大きなミッションでございます。

    どういう形でお手伝いができるか、様々なことがあると思いますけれども、あるいは私どもの持っている施設を何らかの形でご利用いただくとか、あるいは様々な行事にですね、御邪魔をいたしまして、何らかのお話をさせていただくことによって何らかの貢献ができるようであれば、私どもも喜んで参加させていただきますので、ぜひお声がけをいただければと思います。

    また大使館では、ブラジルの中央政府との関係でですね、様々な調整、申し入れ等について、梅田大使以下一丸となって高い問題意識を持って対応させていただいておるところでございます。その辺はまた小林参事官からお話があるかと思いますけれども、そういうことでございますので、ぜひ今後とも密に連絡を取りながら、協力をさせていただければと思います。 どうも、ありがとうございました。

    司会

     中前総領事、どうもありがとうございました。総領事様からはですね、日本としての強み、ブランド化、そして戦略的な情報発信に加えて、ジャパンブランド、そして大使館としての企業の取り組みをバックアップする、心強いお言葉をいただきましたので、我々もですね、しっかりですね、この難局を乗り切るように頑張っていければと思います。続いてですね、経済産業省中南米室長の菅原廣充様よりご講評をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

     

     

  • 講評 菅原廣充 経済産業省中南米室長

    菅原廣充 経済産業省中南米室長

     皆さまこんにちは。ただいまご紹介いただきました、経済産業省で中南米室長をしています菅原と申します。皆さんの中にはですね、すでにご挨拶をさせていただいている方もいらっしゃいますが、改めてどうぞよろしくお願いいたします。

     今回初めてこの会に出席をさせていただきました。またあとで少し紹介しますが、私は今週の日曜日からブラジルにおりまして、月火水とブラジリアで、今回初めての試みとなりますけれども、日本とブラジルとの間でやっております貿易投資産業協力委員会の中間会合という形でですね、ブラジリアの開発商工省の方で開催をいたしまして、その帰りというか、まだ当分、あと1週間ぐらいブラジルにいるんですけども、ここサンパウロに立ち寄りましてですね、今回このイベントがあるというふうに前もってうかがっておりましたので、ちょっと私自身、勉強も含めてですね、出席をさせていただきました。

     講評というほどの講評ではないんですけれども、全体を通してちょっと感じたところをいくつか申し上げたいと思います。

    まずですね、皆さんの発表の中で、私もうんうんと思ったところが、マクロ経済全体の統計やら分析につきましてはですね、私こういう仕事なものですから必然的にブラジルを含めた、私ども中南米33の国と地域を担当している訳なんですけれども、それぞれの、まあ全部とはいきませんけれども、ブラジルとか、南米であればアルゼンチンやチリ、ペルー、そして中米に上がりますけれどもメキシコ、こういった国のマクロ経済動向というのはいつもチェックをするというのは、普通に業務としてやっているんですけれども、そういった意味ではですね、今日いくつかありました統計、それから分析についてはですね、大体私どもが普段見ている数字と、皆さんの方が多分実体経済あっているので、どちらかというとそちらの方が正解かもしれないのですが、私どもが普段見ている数値とそうそう変わりがないということでですね、そういう意味ではブラジルの経済非常に厳しいというのは我々も同じような、あまりこういうことで同じですねと言い合うというのはあまり楽しいことじゃないんですけど、現実としてはですね、まあなかなか厳しい経済情勢ではないのかなというふうに考えておりました。

    次に政治の話でありますけれども、ご案内の通りいま大統領、大変、まあ何が原因かはよく分からないんですけども、厳しい状況にあるわけですけれども、たまたま今カーニバルとそれに続く休みということでですね、国会が静かになっているというだけで、最近ちょっとニュースを耳にしているわけではないんですけど、また1、2週間も経てばですね、おそらくまたそれでニュースが出てくるだろうというふうに思っておりますが。

    で、それがいつまで続くのかというので、今日いくつか分析がありまして、2017年とか18年とかいくつかありましたけれども、まあただいまのところで申し上げれば、今の大統領が続く限り、混乱はなかなかおさまらないかなというのが私個人的には、いくつかレポートとか拝見していてもですね、むしろそちらの方が納得感がある感じではありますけれども、何分その、どこそことは言いませんけれども、政治の世界というのはやはり一寸先は闇でございますので、何がどうなるのかというのはあまり予断を持って決めつけることはないのかなというふうには思っておりますが。

    その関係ではですね、今日お話にございました、じゃあブラジルの経済、今日のテーマだと思うんですけども、いつ例えばプラスに転じるか、ということでありますけども、17年というご意見もございましたし、18年というご意見もございました。私自身、じゃあ何年というふうに考えているかというと、そうはいってもブラジルを担当するとですね、ブラジルのことについてちょっとフェイバーな気持ちになってしまうんですけども、まあ2017年にプラスになればいいなというふうに思っておりますが、そういうふうに予測を立てている国際機関のレポートも拝見していますので、まあ2017年というのは一つですね、注目してもいいと思いますし、逆に言うとこの2016年、まだ2月でございますので、始まったばかりでありますけども、じゃあ今年1年間というか、1年弱ですね、ひたすらに耐え忍ばなければならないのかというとですね、まあマクロ経済というのは別に、いつどうなるか、何かの要素があれば変わることもありますので、あまりそこに悲観的なものを持つ必要もないかなというふうに思っています。

    何より今年はですね、オリンピックもございますので、過去のオリンピックイベントもですね、経済的に見ればそれをきっかけに経済が持ち直す例とか、例えばそれをきっかけにその都市の近代化が進んだという例も実際あるものでございますから、一つにはそのオリンピックがですね、まあそれがトリガーになるかという保証はあるわけではないんですけれども、イベント的にはちょっと、スポーツのイベントということでありますけども、景気全体のですね、それを引っ張っていくイベントになるかというのは注目してもいいかなというのが私個人としては考えているところでございます。

    それが全体の横の話でありまして、あと縦の、各産業のお話で言うと、むしろですね、今日皆さんの、各部会長様のお話をうかがいまして、アンケートの結果とか、改めて拝見させていただきました。なかなか、正直ですね、こちらから気がつかないところが多々あったと思います。そういう意味ではですね、大変勉強になりました。

    今日のこの資料ですね、よく自分でも読み返してみて、またお話を反芻させていただきながらですね、皆さんがどういう状況にあるのかというのをしっかり把握した上でブラジルとの付き合い方というのを、仕事でありますけれども、きちんと考えてまいりたいなというふうに思っております。

    次にですね、もう一つだけちょっと申し上げさせていただきますけれども、今週のブラジリアでの中間会合の話でございますけれども、少し紹介させていただければと思います。今回初めての試みで中間会合というのを行いました。そもそも日伯のですね、貿易投資産業協力委員会というのは、この名前になってからすでに3回行っているわけなんですけど、元々は2008年から始まっているものであります。

    これまでは年に1回だけの会合で、東京とブラジリアを、これを基本として交互に行っていたわけでございますけれども、本委員会の方は昨年の9月にブラジリアの方で開催をいたしました。その際ですね、私自身は7月に今の部屋に来たわけなんですけれども、その前後にですね、省内で色々ディスカッションをして、そして日本の産業界、経団連の皆さんと色々こうディスカッションをしてですね、やはり色々出た意見としてはですね、日本とブラジル、今日色々ブラジルコストやら様々な課題というのをたくさん指摘していただいたんですが、まあこれだけ深い付き合いで、色んな問題があって、皆様をはじめとする日本企業の皆さんたくさんここに出ていると。

    で、年一回の会合だけで、それでいいんでしょうかねということをですね、ある経団連の非常に偉い人からも言われてですね、まあ言われて気がつくというのも我々情けないことではあるんですが、他方で、それはそうだなというふうに私自身思いまして、そうではなくて真ん中でもう一回会合を行ってですね、アジェンダを絞り込んで、フリーディスカッションというか、きちんと議論をして、まあ納得いかない結論もどうしても会議と言うのは出るものなんですが、いずれにせよ議論をしてですね、課題の解決なり、その道筋をつけていくべきではないかということに考えいたりまして、今回初めての試みとしてやったものであります。

     まあ一日の会議でどこまで議論が深められるかということはもちろん限度はあるんですけれども、今回ですね、投資、自動車・裾野産業、それからインフラストラクチャーのですね、この3点にアジェンダを絞りまして、こちらにいらっしゃる皆様、カマラの皆様にもですね、ご協力いただきまして、プレゼンテーションはもちろんそうですけれども、むしろ議論の方に重きを置いた形で一日開発商工省でやってきた次第でございます。

    どういう成果が上がったかというのはちょっとまだ私自身が出張の途中でございますので、こうだこうだという決めつけた話を今ここで申し上げるのもなかなかあれなんですけども、終わったばかりの感想で申し上げればですね、例えば州間の税の話とか、それからロイヤリティーの課題であるとか。他方ですね、昨年の9月に本委員会で合意いたしました、カマラと開発商工省とのですね、政策対話をすでに2回やっているわけなんですけども、これが継続していることに対しての評価、等々ですね。

    そういった、個別にはですね、半年置いてやったことの甲斐はあったというふうに思っております。ただ、会議を準備した事務局側の私の立場から申し上げれば、もう少しまだ会の進め方とかですね、議論のやり方、工夫するところがあるのかなというふうに思ってますので、少しそういった事務局ならではの反省を含めてですね、また進め方を考え、またカマラの皆様とも連絡を取りながら、やっていきたいなというふうに考えております。

    最後にもう一点だけちょっと申し上げさせていただきます。今日は、講評の方に話戻りますけれども、今日の話に出た中でですね、企業の買収というお話がございました。それがいくつかの部会長様の方からあったわけなんですけども、私が実は、今年に入ってからで申し訳ないんですけど、気がついたのはですね、レアルが安いというのはもしかしたらこれはなるほどそういう企業買収の動きが出てくるのではないかなということでですね、昨年も実はいくつかの例がありました。

    ある商社さんがですね、こちらのエネルギー系の企業の方を買収をしたというニュースも拝見しましてですね、もしかしたらそういうタイミングが今後起きるのではないかなと思ったんですね。これが今皆さんの周辺のジカ熱が話題になっていると思いますけれども、今週はここにいるのでニュース的には先週か先々週ぐらいだと思うんですけれども、日本のとある企業さんがですね、ブラジルで虫よけの塗料をですね、を展開するということで、早速にそういう動きがあったりとかですね、していますので、そういううまくタイミングをとらえたですね、ビジネスのやりかたというのは、これはブラジルに限ったことでございませんけれども、あるなというふうに思って、なお今日お話をうかがってですね、例えばその企業買収のお話もですね、時節を捉えたお話ではないのかなというふうに考えております。

    私自身は役所なもんですから直接こうビジネスを手掛けて何かするわけではないので、むしろ皆様の方がお詳しいと思いますし、そういう意味では教えをこちらがうかがう方だと思いますけれども、ブラジルの経済、それから政治、今私自身とりとめなく申し上げて恐縮なんですけども、なかなかこういう状況の中でどういうふうに仕事を進めていくのかと。

    まあ一言でいえば必ずしもチャンスがないことはないし、現にチャンスをつかんでいる企業さんもいらっしゃいますので、そういった意味ではですね、皆さんの方がお詳しいと思いますし、むしろ私どもの立場としてはですね、先ほどご紹介しました中間会合なりですね、ブラジル連邦政府との対話を通じて、どうやってビジネス環境を整備していくのか、もっと言えばどうやって皆様が普段の業務の中で抱えているリスクを、ゼロにするというのはなかなか厳しいと思いますけれども、それをどうやって小さくしていくかというのが、政府の役割だと思っております。

    その意味ではですね、今日本当に大変勉強になりましたし、またサンパウロにそうちょくちょく来るというのもなかなか難しいんですけれども、機会を見てまた皆様との意見交換をさせていただきながら、現実的なビジネスに私どもがどうやって寄り添って、どうやって問題解決をしていくのかということをですね、強く意識しながら、またご一緒させていただければと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

    司会

     菅原様、どうもありがとうございました。続いて在ブラジル日本国大使館の参事官であります、小林様よりですね、コメントをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

     

     

  • コメント 小林和昭 在ブラジル日本国大使館 参事官

    小林和昭 在ブラジル日本国大使館 参事官

     在ブラジル日本国大使館の小林でございます。本日は貴重なプレゼンを聞かせていただきまして本当にありがとうございました。

    私は今回このプレゼンを聞くのは5回目になりますけれども、毎回新たな発見がありますが、さらに今回プレゼンを聞いて改めて思ったことは、プレゼンをされている皆様方のプレゼンの内容、あと面白さというのも毎回毎回向上しているというか、良くなっているということで、退屈せずに今回も聞くことができました。皆さんがこの準備に対して非常に時間をかけて、手間をかけてやっていただいているということにもまた感謝をさせていただきたいと思います。

    ブラジル経済ですけれども、今年はオリンピックの年ですが、非常に厳しい状況になっていると認識しております。オリンピックの年にここまで景気が悪かった国というのは、これまでの歴史でないんじゃないかと思いますが、さらにそれを変えていく力がある政治はまあ大混乱の中にありますし、さらにブラジルではジカ熱が流行して、さらにジカ熱でなかなか目立ちませんがデング熱もかなり流行しているということで、本当にマイナス材料がたくさんあるというところ、非常に不安に思う所ございますが、まあそれにともなってですけども、なかなかラテンアメリカの方って危機意識がないんですけれども、ブラジルの方々はさすがに危機意識が出てきていて、ブラジリアで仕事をしていても最近ブラジル人の危機意識というのを感じることが結構出てきております。

    これはやはりブラジル社会の大きな意識の変化ではないかと思っていて、そこは期待しているところでございます。

    以前、ブラジルの役人が日本に対しての期待が大きいということで、態度が変わってきたということがございますが、最近はそれよりもう一歩進んだ雰囲気の変化というのを私は感じております。昨日も中間会合ございましたが、その準備を進めている中でも、ブラジルの役人がやはり経済は保護主義だけではいけない、やはりグローバルを意識しなきゃいけないということを言う、そういう担当者というのが増えてきたように思います。

    まあこれは全員が全員でないというところに問題はあるんですけれども、やっぱりそういうことを言える雰囲気というのはブラジリアにも出てきているということで、そういったことには期待していきたいと思います。

     今回のプレゼンではビジネス環境整備に関して皆様からブラジル政府に対する要望がございました。このブラジル政府への要望というのは、ほぼイコールとして、日本政府、在ブラジル日本国大使館、各総領事館への要望ということにも置き換えられると思います。我々は一歩ずつ、そんなに劇的に変わる国ではないので、皆様のご期待にどれだけ添えるか分かりませんけれども、一つずつ改善できるように、日本企業の皆様がビジネスの活動をしやすくなるように頑張っていきたいと思っておりますので、今後とも情報交換等よろしくお願いいたします。

     最後に皆様、昼間の蚊には十分気をつけて、ジカ熱、デング熱にならないようにご健康に気をつけて頑張っていただければと思います。以上でございます。

    司会

     小林参事官、どうもありがとうございました。それでは、ちょうど予定通り5時35分になりました。最後に樹神総務委員長より閉会の辞をお願いしたいと思います。ではよろしくお願いいたします。

     

     

  • 閉会の辞 樹神幸夫 総務委員長

    樹神幸夫 総務委員長

     本日は皆様、長時間ありがとうございました。特に発表者の方々、そしてその資料を準備いただきました部会のメンバーの皆様方、本当に御苦労さまでございました。ありがとうございました。

     私、自己紹介で申し上げましたように、初めての司会でして、皆様のご協力のおかげでですね、本当にジャスト・イン・タイムというか、時間通りに終わるということができるようでありますので、ありがとうございました。

     今日のお話、皆さんそうなんですけど、景気低迷のこの時期にですね、このブラジルにおられる皆様方がそれぞれ所属される会社、あるいは分野で、どうやってビジネス機会をとらえて発展させていくかということでございますけども、本日のシンポジウムでの内容がですね、その発展に対して大変参考になったのではないかなというふうに思います。

    このシンポジウムは半年に1回開催されます。次回半年後のシンポジウムでどういう状況になっているか、これは天のみぞ知るということでございます。まあ色々今日の発表の中でもございましたけども、やはり気長に回復の機会を待つというのが基本的なスタンスじゃないかなというふうに思います。まあそれをどうやって取り組んでいくかと、まだまだ色々と皆様と議論を、あるいはお話をさせていただきたいというところでございますけれども、時間が参りましたので、閉会にいたしたいと思います。

    この続きはですね、これから懇親会が先ほどのコーヒーブレイクの会場とその隣の部屋でございますので、ぜひ皆様参加いただいてですね、今度はある程度時間の限りはないと思いますので、存分にやっていただければというふうに思います。ちなみに参加費用は70レアルでございます。すでにお支払いの方はそのまま、まだお支払いになっていない方はぜひお支払いいただいて、参加いただきたいというふうに思います。

    それではこれでシンポジウムを閉会させていただきます。本日はどうも有難うございました。